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  • 特開-計測システムおよび計測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080935
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】計測システムおよび計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240610BHJP
   E21D 9/10 20060101ALI20240610BHJP
   G01C 15/00 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
G01B11/24 Z
E21D9/10 Z
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194302
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青野 泰久
【テーマコード(参考)】
2D054
2F065
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054GA62
2D054GA65
2F065AA53
2F065CC40
2F065DD03
2F065DD04
2F065FF11
2F065GG04
2F065GG12
2F065HH04
2F065MM16
2F065MM26
2F065PP22
2F065QQ17
2F065QQ34
2F065QQ38
(57)【要約】
【課題】濡れている箇所などの形状計測を精度よく行える計測システムおよび計測方法を提供する。
【解決手段】二台以上のスキャナ5(1,2)と、分割した領域ごとに全てのデータに対応する位置とスキャナ5の間の第一の距離と、第一の距離の平均値を算出し、平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応するデータを正確でないデータとして抽出するデータ抽出手段と、抽出したデータに対応する位置と、データを取得したスキャナ5を通る直線を求め、直線を軸線とする円筒領域を設定する領域設定手段と、円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置とスキャナ5の間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない代表位置に対応するデータを用いて、正確でないデータを補完するデータ補完手段を備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナと、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するデータ抽出手段と、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定する領域設定手段と、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するデータ補完手段を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項2】
計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナを用いた計測方法であって、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するステップと、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定するステップと、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するステップを有することを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば山岳トンネルの掘削時に使用される計測システムおよび計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネルの掘削時に、掘削の過不足を簡易かつ的確に認識するために、本発明者は、三次元スキャニングとプロジェクションマッピングを組み合わせた技術を特許文献1において既に提案している。
【0003】
一方、発破後の切羽の形状データ(点群データ)を分析し、次の発破を行う際の地山の削孔を行うドリルジャンボの差し角の制御方法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-58312号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「安全性と生産性の向上を実現する差し角自動制御システムの開発」、大川了、他、トンネル工学報告集、Vol.29、2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、三次元スキャニングには三次元レーザースキャナを使用する場合があるが、濡れている箇所を三次元レーザースキャナで計測した際に、正確な点群データが得られず、計測対象物の実際の表面とは離れた箇所に点群データが記録されることがある。
【0007】
山岳トンネルの施工中では、湧水により掘削箇所が濡れている場合があり、上記の特許文献1の発明や、上記の非特許文献1の技術を使用する際に、濡れている箇所を計測した際に得られた座標が正確でない点群データを分析し、その分析結果に基づき掘削や差し角の制御が行われる可能性がある。
【0008】
このような問題に対し、本発明者は、複数の三次元レーザースキャナを使用することで、濡れている箇所の表面を計測した際に得られる正確でない点群データを補完する本発明に至った。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、濡れている箇所などの形状計測を精度よく行える計測システムおよび計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る計測システムは、計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナと、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するデータ抽出手段と、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定する領域設定手段と、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するデータ補完手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る計測方法は、計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナを用いた計測方法であって、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するステップと、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定するステップと、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る計測システムによれば、計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナと、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するデータ抽出手段と、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定する領域設定手段と、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するデータ補完手段を備えるので、正確でないデータが得られやすい濡れている箇所などの形状計測を精度よく行うことができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る計測方法は、計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナを用いた計測方法であって、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するステップと、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定するステップと、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するステップを有するので、正確でないデータが得られやすい濡れている箇所などの形状計測を精度よく行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る計測システムの実施の形態を示す図であり、(1)は概略平面配置図、(2)、(3)は構成機器の概略構成図である。
図2図2は、本発明に係る計測方法の実施の形態を示す概略手順図である。
図3図3は、本実施の形態の説明図であり、(1)はスキャナで取得した点群データの平面概念図、(2)、(3)は分割した領域の概念図である。
図4図4は、本実施の形態の説明図である。
図5図5は、本実施の形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、上記の問題に対し、複数の三次元レーザースキャナ(以下、単にスキャナということがある。)を使用し、濡れている箇所の表面を計測した際に得られる正確でない点群データを補完するものである。
【0016】
以下に、本発明に係る計測システムおよび計測方法の実施の形態について、2台のスキャナを使用し、施工中の山岳トンネルの切羽を対象に点群データを補完する場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
<構成>
図1(1)に示すように、本発明の実施の形態に係る計測システム10は、点群データ取得装置(親機)1と、点群データ取得装置(子機)2と、トータルステーション(TS)3を備えており、トンネルT内の切羽(計測対象物)の近傍に配置される。
【0018】
図1(2)に示すように、点群データ取得装置(親機)1は、プリズム4、スキャナ5、無線LAN(Local Area Network)ルーター6、演算装置7で構成される。
図1(3)に示すように、点群データ取得装置(子機)2は、プリズム4、スキャナ5、演算装置7で構成される。
【0019】
プリズム4は、TS3で位置の測量を行い、親機1、子機2の各装置のスキャナ5の位置、姿勢を推定するために使用する。
スキャナ5は、計測対象箇所の点群データを取得するために使用する。
無線LANルーター6は、子機2の演算装置7で分析したデータを親機1の演算装置7に転送するために使用する。
演算装置7は、スキャナ5で取得した点群データを保存し、データ分析を行うために使用する。この演算装置7は、本発明のデータ抽出手段、領域設定手段、データ補完手段として機能する。
【0020】
点群データ取得装置(親機)1と、点群データ取得装置(子機)2は地面に設置してもよいし、湧水により水たまり等がある場合は三脚に設置してもよい。TS3は、点群データ取得装置(親機)1と、点群データ取得装置(子機)2に取り付けたプリズム4を測量できるように配置する。
【0021】
<実施手順>
次に、上記の計測システムを用いた計測方法の実施手順について、図2を参照しながら説明する。
【0022】
図2に示すように、本実施手順は、大きく分けて事前準備(ステップS1,S2)、計測(ステップS3~S6)、分析(ステップS7~S16)の3つの工程で構成される。
【0023】
<事前準備>
まず、事前準備について説明する。
ステップS1では、TS3で親機1、子機2に取り付けてあるプリズム4、スキャナ5の位置を測量して、これらの相対座標を計算し、データAを作成し、各演算装置7に保存する。
【0024】
次のステップS2では、分析の工程で扱う以下のパラメータを設定する。
・点群データを分割する領域の数j
・距離パラメータD、D
・半径パラメータr
なお、Dは本発明の第一の閾値、Dは本発明の第二の閾値である。
上記のステップS1、S2の作業は坑内に限らず事務所などで実施してもよい。
【0025】
<計測>
次に、計測の工程に進める。
まず、ステップS3では、図1(2)に示すように、各機器(親機1、子機2、TS3)を計測対象物(切羽)の近傍に設置する。
【0026】
次のステップS4では、TS3で親機1、子機2に取り付けてあるプリズム4を測量して、それぞれの絶対座標を取得し、データBを作成し、各演算装置7に保存する。
【0027】
次のステップS5では、親機1、子機2のスキャナ5で計測対象物を計測し、点群データ(データC)を各演算装置7に保存する。図3(1)に示すように濡れている箇所を計測した場合、取得した点群データは、実際の計測箇所よりも離れた箇所の座標として得られることがある。
次のステップS6では、各機器(親機1、子機2、TS3)を撤去する。
【0028】
<分析>
次に、分析の工程に進める。
まず、ステップS7では、データA、Bから親機1、子機2のスキャナ5の絶対座標、姿勢を演算装置7で計算する。以降のステップの分析処理は、演算装置7で行う。
【0029】
次のステップS8では、図3(2)、(3)に示すように、i番目(i=1,2)の点群データ取得装置(親機1、子機2)のスキャナ5を中心として、仰角、方位角ごとに領域をj個に分割し、分割した領域(i、j)ごとにデータCの計測点のグループ分けを行う。なお、図3(2)、(3)の例では、スキャナ5を中心とする放射状の分割線で8個の領域に分割した例を示している。
【0030】
次のステップS9では、グループごとに各計測点とスキャナ5の距離di,j,k(第一の距離)を計算し、距離の平均値dm,i,jを算出する。下付きの文字であるiは点群データ取得装置の番号である。本実施の形態では親機がi=1、子機がi=2である。jは分割した領域の番号、kはi番目の装置で取得した点群データのうちj番目の領域にある計測点の番号、mは平均値を意味する。
【0031】
次のステップS10では、di,j,k>dm,i,j+Dを満たす計測点を抽出し、点群データ取得装置(親機)1の演算装置7に計測点の座標、i、jの情報を保存する。図4(1)に、ステップS10にて抽出する計測点のイメージ図を示す。濡れた表面をスキャナ5で計測したとき、計測対象物よりも離れた箇所の座標が取得されるため、di,j,k>dm,i,j+Dを判定基準とする。
【0032】
次のステップQ1にて、j個の全ての領域に対し、ステップS9、S10の処理を実施した場合はステップQ2に移行し、実施していない場合はステップS9に戻る。
【0033】
次のステップQ2にて、全てのスキャナに対し、ステップS8の処理を実施した場合はステップS11に移行し、実施していない場合はステップS9に戻る。
【0034】
次のステップS11では、ステップS10にて抽出した計測点と、その計測点を取得する際に使用したスキャナ5を通る直線の式を計算する。図4(2)に、ステップS11にて計算する直線のイメージ図を示す。
【0035】
次のステップS12では、半径パラメータrを用いて、ステップS11で計算した直線を軸線とする半径rの円筒の領域(円筒領域)を設定する。図4(3)に、ステップS12にて設定する円筒のイメージ図を示す。
【0036】
次のステップS13では、円筒どうしが交差する各領域(交差領域)の重心の座標A(x,y,z)を計算する。座標Aは、本発明の代表位置の座標に対応する。下付きの文字であるnは、円筒が交差するn番目の領域を意味する。図5(1)に、ステップS13にて計算する座標Aのイメージ図を示す。
【0037】
次のステップS14では、i番目の点群データ取得装置のスキャナ5と、ステップS13で計算した座標Aの距離dAn,i(第二の距離)を計算する。
【0038】
次のステップS15では、座標Aが位置している各点群データ取得装置の領域のグループ番号を推定する。本実施の形態では、1番目の点群データ取得装置1のスキャナ5の領域のグループ番号1、2番目の点群データ取得装置2のスキャナ5の領域のグループ番号8に座標Aが存在しているものとする。
【0039】
次のステップQ3では、dAn,iが以下の条件を満たしているか、各点群データ取得装置に対して判定を行う。
m,i,j-D<dAn,i<dm,i,j+D
【0040】
上記の条件を満たしている場合はステップS16に進み、満たしていない場合はステップQ4に進む。図5(2)に、ステップQ3の判定で扱う領域のイメージ図を示す。
【0041】
次のステップS16では、親機1のスキャナ5で取得した点群データに座標Aをプロットする。
【0042】
次のステップQ4では、ステップS13で計算した全ての座標に対し、ステップS14~S16の処理を実施したか否かの判定を行い、実施していない場合はステップS14に戻り、実施した場合は作業を終了する。
【0043】
以上の手順により、濡れている箇所の表面を計測した際に得られる座標が正確でない部分の点群データを補完することができる。
【0044】
本実施の形態によれば、特許文献1の発明や、非特許文献1の技術を使用する際に、三次元レーザースキャナで濡れている箇所を計測した際に得られた座標が正確でない点群データを分析し、その分析結果に基づき掘削や差し角の制御が行われる可能性がある場合に、座標が正確でない点群データを補完することができる。
【0045】
なお、上記の実施の形態では、施工中の山岳トンネルの切羽を対象に、2台の点群データ取得装置を使用する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、山岳トンネルの断面の底部を掘削する場合に適用してもよいし、3台以上の点群データ取得装置を使用してもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
以上説明したように、本発明に係る計測システムによれば、計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナと、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するデータ抽出手段と、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定する領域設定手段と、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するデータ補完手段を備えるので、正確でないデータが得られやすい濡れている箇所などの形状計測を精度よく行うことができる。
【0047】
また、本発明に係る計測方法は、計測対象物の三次元形状のデータを異なる位置から取得する二台以上のスキャナを用いた計測方法であって、前記スキャナから見た角度に応じて前記計測対象物を複数個の領域に分割し、分割した前記領域ごとに、分割した前記領域に含まれる全ての前記データに対応する位置と前記スキャナの間の第一の距離を求めるとともに、求めた第一の距離の平均値を算出し、算出した平均値との差が第一の閾値を超える位置に対応する前記データを正確でない前記データとして抽出するステップと、抽出した前記データに対応する位置と、前記データを取得した前記スキャナを通る直線を求め、求めた前記直線を軸線とする所定半径の円筒領域を設定するステップと、異なる前記スキャナにおいて設定した前記円筒領域どうしが交差する交差領域の代表位置と前記スキャナの間の第二の距離を求めるとともに、第二の距離と第一の距離の平均値との差を求め、求めた差が第二の閾値を超えない前記代表位置に対応する前記データを用いて、正確でない前記データを補完するステップを有するので、正確でないデータが得られやすい濡れている箇所などの形状計測を精度よく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明に係る計測システムおよび計測方法は、山岳トンネルの切羽などの形状を三次元レーザースキャナで計測する場合に有用であり、特に、濡れている箇所などの形状計測を精度よく行うのに適している。
【符号の説明】
【0049】
1 点群データ取得装置(親機)
2 点群データ取得装置(子機)
3 トータルステーション(TS)
4 プリズム
5 スキャナ
6 無線LANルーター
7 演算装置(データ抽出手段、領域設定手段、データ補完手段)
10 計測システム
T トンネルT
図1
図2
図3
図4
図5