(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080937
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】タンク内の液化ガスの状態予測方法、タンク内の液化ガスの状態予測システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20240610BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240610BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20240610BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
F17C13/02 302
B63B25/16 D
B63H21/38 B
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194306
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 祐二
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BD02
3E172DA90
3E172EB02
3E172HA08
3E172KA03
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】タンク内の液化ガスの状態を予測する。
【解決手段】タンク内の液化ガスの状態予測方法は、第一時点における、タンク内の液化ガスの状態量を取得し、タンク内に液化ガスの状態予測をするのに必要なタンクに関する情報を取得し、第一時点と第二時点との間における、液化ガスを燃料として使用する燃焼装置によるタンク内の液化ガスの消費量に関する情報を取得し、第一時点と第二時点との間における、タンク内で液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得する。さらに、取得された液化ガスの状態量、タンクに関する情報、液化ガスの消費量に関する情報、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報に基づいて、第二時点におけるタンク内の液化ガスの予測状態量を予測する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯留しているタンク内の前記液化ガスの状態を予測するタンク内の液化ガスの状態予測方法であって、
第一時点における、前記タンク内の前記液化ガスの状態量を取得するステップと、
前記タンク内に前記液化ガスの状態を予測するのに必要な前記タンクに関する情報を取得するステップと、
前記第一時点と、前記第一時点よりも後の第二時点との間における、前記液化ガスを燃料として使用する燃焼装置による前記タンク内の前記液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップと、
前記第一時点と前記第二時点との間における、前記タンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップと、
前記液化ガスの状態量を取得するステップで取得された前記液化ガスの状態量、前記タンクに関する情報を取得するステップで取得された前記タンクに関する情報、前記液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップで取得された前記液化ガスの消費量に関する情報、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップで取得された前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップと、
前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力するステップと、を含む
タンク内の液化ガスの状態予測方法。
【請求項2】
前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップで予測された前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量に基づいて、前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップ、を更に含み、
前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力するステップでは、前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップで更新された、前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力する
請求項1に記載のタンク内の液化ガスの状態予測方法。
【請求項3】
前記タンク内の前記状態量の管理条件に関する情報を取得するステップと、
前記液化ガスの予測状態量を予測するステップで予測された前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量が、前記状態量の管理条件に関する情報を取得するステップで取得された前記状態量の管理条件を満足しているか否かを判定するステップと、
前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量が、前記状態量の管理条件を満足している場合に、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力するステップを実行する
請求項1又は2に記載のタンク内の液化ガスの状態予測方法。
【請求項4】
前記液化ガスの予測状態量を予測するステップで予測された前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量と、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの実際の状態量とに基づいた学習を行うステップを更に備え、
前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップでは、前記学習を行うステップにおける学習結果に基づいて、前記液化ガスの予測状態量を補正する、
請求項1又は2に記載のタンク内の液化ガスの状態予測方法。
【請求項5】
前記第二時点と、前記第二時点よりも後の第三時点と、の間における、前記タンク内に流入する前記液化ガスの状態量を取得するステップと、
前記液化ガスの予測状態量を予測するステップで予測された前記第二時点における前記タンク内の予測状態量と、前記タンク内に流入する前記液化ガスの状態量を取得するステップで取得された、前記タンク内に流入する前記液化ガスの状態量と、に基づいて、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスと、前記第二時点から前記第三時点までの間に前記タンク内に流入する前記液化ガスと、が混合した状態における、前記タンク内の前記液化ガスの状態量を予測するステップと、を更に含む
請求項1又は2に記載のタンク内の液化ガスの状態予測方法。
【請求項6】
液化ガスを貯留しているタンク内の前記液化ガスの状態を予測するタンク内の液化ガスの状態予測システムであって、
第一時点における、前記タンク内の前記液化ガスの状態量を取得する液化ガス状態量取得部と、
前記タンク内の前記液化ガスの状態予測をするのに必要な前記タンクに関する情報を取得するタンク情報取得部と、
前記第一時点と、前記第一時点よりも後の第二時点との間における、前記液化ガスを燃料として使用する燃焼装置による前記タンク内の前記液化ガスの消費量に関する情報を取得する液化ガス消費量情報取得部と、
前記第一時点と前記第二時点との間における、前記タンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するボイルオフガス消費計画取得部と、
前記液化ガス状態量取得部で取得された前記液化ガスの状態量、前記タンク情報取得部で取得された前記タンクに関する情報、前記液化ガス消費量情報取得部で取得された前記液化ガスの消費量に関する情報、及び前記ボイルオフガス消費計画取得部で取得された前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測する液化ガス状態量予測部と、
前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力する情報出力部と、を含む
タンク内の液化ガスの状態予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンク内の液化ガスの状態予測方法、タンク内の液化ガスの状態予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス、液化石油ガス等の液化ガスを貯蔵するタンクにおいて、外部からの入熱により、液化ガスがタンク内で蒸発して、ボイルオフガスが発生する。タンク内でボイルオフガスが発生すると、タンク内の圧力が上昇する。このため、タンク内の圧力が過度に上昇しないよう、タンク内の圧力を調整することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液化ガスを貯蔵するタンクの内外の環境に関するデータを取得し、タンク圧力を変動させる事象を予測し、その予測結果に基づいて、タンク内の気体を吸引する圧縮機の稼働計画を策定する構成が開示されている。
【0004】
また、タンクが船舶に搭載されている場合、タンク内のボイルオフガスを、例えば、船舶に搭載された主機等の燃料として消費することで、タンク内の圧力を調整することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、タンク内で発生するボイルオフガスの量が、タンク内の圧力を調整可能な範囲を超えてしまうことがある。具体的には、例えば、タンク内で発生するボイルオフガスの量が、主機等の燃料として消費可能なボイルオフガスの量よりも多い場合、等である。この場合、タンク内の圧力上昇を抑えるには、ボイルオフガスを焼却するなどして処分せざるを得ないことから、このようなボイルオフガスの処分を抑えるために、タンク内の液化ガスの状態を予測することが望まれている。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、タンク内の液化ガスの状態を予測することができるタンク内の液化ガスの状態予測方法、タンク内の液化ガスの状態予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法は、液化ガスを貯留しているタンク内の前記液化ガスの状態を予測する。前記タンク内の液化ガスの状態予測方法は、液化ガスの状態量を取得するステップと、タンクに関する情報を取得するステップと、液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップと、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップと、第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップと、情報を外部に出力するステップと、を含む。前記液化ガスの状態量を取得するステップでは、第一時点における、前記タンク内の前記液化ガスの状態量を取得する。前記タンクに関する情報を取得するステップでは、前記タンク内に前記液化ガスの状態予測をするのに必要な前記タンクに関する情報を取得する。前記液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップでは、前記第一時点と、前記第一時点よりも後の第二時点との間における、前記液化ガスを燃料として使用する燃焼装置による前記タンク内の前記液化ガスの消費量に関する情報を取得する。前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップでは、前記第一時点と前記第二時点との間における、前記タンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成される前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得する。前記第二時点におけるタンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップでは、前記液化ガスの状態量を取得するステップで取得された前記液化ガスの状態量、前記タンクに関する情報を取得するステップで取得された前記タンクに関する情報、前記液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップで取得された前記液化ガスの消費量に関する情報、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップで取得された前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測する。前記情報を外部に出力するステップでは、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力する。
【0009】
本開示に係るタンク内の液化ガスの状態予測システムは、液化ガスを貯留しているタンク内の前記液化ガスの状態を予測する。前記タンク内の液化ガスの状態予測システムは、液化ガス状態量取得部と、タンク情報取得部と、液化ガス消費量情報取得部と、ボイルオフガス消費計画取得部と、液化ガス状態量予測部と、情報出力部と、を含む。前記液化ガス状態量取得部は、第一時点における、前記タンク内の前記液化ガスの状態量を取得する。前記タンク情報取得部は、前記タンク内の前記液化ガスの状態予測をするのに必要な前記タンクに関する情報を取得する。前記液化ガス消費量情報取得部は、前記第一時点と、前記第一時点よりも後の第二時点との間における、前記液化ガスを燃料として使用する燃焼装置による前記タンク内の前記液化ガスの消費量に関する情報を取得する。前記ボイルオフガス消費計画取得部は、前記第一時点と前記第二時点との間における、前記タンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成される前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得する。前記液化ガス状態量予測部は、前記液化ガス状態量取得部で取得された前記液化ガスの状態量、前記タンク情報取得部で取得された前記タンクに関する情報、前記液化ガス消費量情報取得部で取得された前記液化ガスの消費量に関する情報、及び前記ボイルオフガス消費計画取得部で取得された前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量を予測する。前記情報出力部は、前記第二時点における前記タンク内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力する。
【発明の効果】
【0010】
本開示のタンク内の液化ガスの状態予測方法、タンク内の液化ガスの状態予測システムによれば、タンク内の液化ガスの状態を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法、タンク内の液化ガスの状態予測システムが適用される船体の側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る液化ガスの状態予測システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る液化ガスの状態予測システムの機能ブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法の使い分けを示すチャート図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法としての、第一の液化ガスの状態予測方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法としての、第二の液化ガスの状態予測方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法、タンク内の液化ガスの状態予測システムについて、
図1~
図6を参照して説明する。
(船舶の全体構成)
図1に示すように、この実施形態のタンク内の液化ガスの状態予測方法、タンク内の液化ガスの状態予測システムは、ボイルオフガスを燃料として燃焼させたり、焼却処理したりする燃焼装置を備えた船舶に適用される。
図1に示すように、本開示の実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造4と、燃焼装置9と、タンク10と、タンク10内の液化ガスの状態を予測する液化ガスの状態予測システム60(
図2、
図3参照)と、を少なくとも備えている。なお、この実施形態の船舶1は、主機等により航行可能な船舶を一例として説明する。船舶1の船種は、特定の船種に限られない。船舶1の船種としては、液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等を例示できる。
【0013】
船体2は、その外殻をなす一対の舷側5A,5Bと船底6とを有している。舷側5A,5Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底6は、これら舷側5A,5Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側5A,5B及び船底6により、船体2の外殻は、船首尾方向FAと垂直な断面においてU字状を成している。
【0014】
船体2は、最も上層に配置される全通甲板である上甲板7を更に備えている。上部構造4は、この上甲板7上に形成されている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。この実施形態の船舶1では、例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首2a側に、貨物搭載区画(ホールド)8が形成されている。
【0015】
燃焼装置9は、燃料を燃焼させることで熱エネルギーを発生させる装置であり、上記の船体2内に設けられている。燃焼装置9としては、船舶1を推進させるための主機に用いられる内燃機関、船内に電気を供給する発電設備に用いられる内燃機関、作動流体としての蒸気を発生させるボイラー等を例示できる。
【0016】
タンク10は、船体2に配置されている。本実施形態では、タンク10が水平方向に延びる円筒状をなし、貨物搭載区画8内の船首尾方向FAに複数が並んで配置されている場合を例示している。しかし、タンク10の形状、数、複数のタンク10の配置については、何ら限定するものではない。例えば、タンク10は、曝露甲板上に配置することもできる。また、例えば、タンク10は、球形、方形等であってもよい。
【0017】
タンク10は、その内部に、複数成分を含む液化ガスを貯留する。複数成分を含む液化ガスとしては、低温状態で液化された液化ガスである、LNG(Liquefied Natural Gas),LPG(Liquefied Petroleum Gas)等を挙げることができる。本実施形態では、複数成分を含む液化ガスとして、LNGを一例にして説明する。
【0018】
タンク10内の液化ガスは、外部からの入熱により蒸発し、ボイルオフガスとなる。タンク10内の液化ガスの液体、及びタンク10内で生成されたボイルオフガスは、燃焼装置9における燃料として、燃焼装置9に供給されたり、焼却装置(図示せず)に送られて焼却処分されたりする。
【0019】
(ハードウェア構成図)
図2は、本開示の実施形態に係る液化ガスの状態予測システムのハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、液化ガスの状態予測システム60は、CPU61(Central Processing Unit)、ROM62(Read Only Memory)、RAM63(Random Access Memory)、ストレージ64、信号送受信モジュール65を備えるコンピュータである。信号送受信モジュール65は、例えば、タンク10内の圧力、温度等の状態量を検出するセンサー等(図示せず)からの検出信号を受信する。
【0020】
(機能ブロック図)
図3は、本開示の実施形態に係る液化ガスの状態予測システムの機能ブロック図である。
図4は、本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法の使い分けを示すチャート図である。
図3に示すように、液化ガスの状態予測システム60のCPU61は、ROM62やストレージ64等の記憶装置に予め記憶されたプログラムを実行することにより、液化ガス状態量取得部71と、タンク情報取得部72と、液化ガス消費量情報取得部73と、ボイルオフガス消費計画取得部74と、液化ガス状態量予測部75と、学習部76と、情報記憶部77と、情報出力部78と、流入液化ガス状態量取得部79と、の各構成を実現する。
図3、
図4に示すように、液化ガスの状態予測システム60は、第一時点T1よりも後の第二時点T2、第三時点T3における、タンク10内の液化ガスの状態を予測する。ここで、タンク10に与えられた入熱は、液化ガスの蒸発と、液化ガスの液状態での温度上昇と、に配分される。例えば、タンク10内のボイルオフガスの流出がない蓄圧状態であっても、液状態の液化ガスの温度が上がった場合、飽和蒸気圧が上がる。そして、このように飽和蒸気圧が上がることで、液状態の液化ガスの一部が蒸発する。つまり、液化ガスの蒸発と、液化ガスの液状態での温度上昇とは、相互に関連する。そのため、本実施形態のタンク10内の液化ガスの状態は、液状態の液化ガスの蒸発量に限られず、液状態の液化ガスの温度、圧力等の状態も含んでいる。
【0021】
液化ガス状態量取得部71は、第一時点T1、第二時点T2、第三時点T3等の様々な時点における、タンク10内の液化ガスの状態量を取得する。タンク10内の液化ガスの状態量としては、例えば、タンク10内の液化ガスの圧力、温度、密度、メタン価、液化ガスの保有量(換言すれば、液化ガスの液面高さや質量)等が挙げられる。液化ガス状態量取得部71は、タンク10内の液化ガスの圧力、温度、密度、メタン価、液化ガスの保有量等のうちの少なくとも一つを取得する。液化ガス状態量取得部71は、信号送受信モジュール65で受信した検出信号に基づき、例えば、タンク10内の圧力、温度等の状態量を検出するセンサーに検出された実測値のデータを取得する。なお、液化ガス状態量取得部71では、タンク10内の液化ガスの状態量として、センサー等による実測値に限らず、他の状態量の実測値から予測される予測値を取得するようにしてもよい。
【0022】
タンク情報取得部72は、タンク10内の液化ガスの状態予測をするのに必要なタンク10に関する情報を取得する。タンク情報取得部72は、後述する情報記憶部77から、タンク10の数量、容積、保温性能、外部からの入熱量等の情報を取得する。後述する情報記憶部77には、タンク10の数量、容積、保温性能、外部からの入熱量等の情報が予め記憶されている。また、タンク情報取得部72は、少なくともタンク10内の液化ガスの状態を予測する期間における、外気温等の天候情報を外部の気象データ等から取得するようにしてもよい。なお、以下の説明においては、タンク10内の液化ガスの状態を予測する期間を、単に予測を行う期間と称する。
【0023】
液化ガス消費量情報取得部73は、予測を行う期間における、燃焼装置9によるタンク10内の液化ガスの消費量に関する情報を取得する。液化ガス消費量情報取得部73で取得する、燃焼装置9によるタンク10内の液化ガスの消費量に関する情報としては、例えば、予測を行う期間の船舶1の運航計画、運航計画に基づいた燃焼装置9における液化ガスの消費量の計画値、等が含まれる。
【0024】
ボイルオフガス消費計画取得部74は、予測を行う期間において、タンク10内で液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得する。ボイルオフガスの消費計画に関する情報は、事前に設定されたボイルオフガスの消費計画を含む。ボイルオフガスの消費計画に関する情報は、ボイルオフガスの消費計画に基づく、ボイルオフガスの消費量等であってもよい。ここで、ボイルオフガスの消費計画は、例えば、タンク10内の液化ガスの液の組成を、燃料として使用可能な組成に維持可能なものである。
【0025】
液化ガス状態量予測部75は、現時点以降のタンク10内の液化ガスの予測状態量を予測する。液化ガス状態量予測部75は、液化ガス状態量取得部71で取得された液化ガスの状態量、タンク情報取得部72で取得されたタンク10に関する情報、液化ガス消費量情報取得部73で取得された液化ガスの消費量に関する情報、及びボイルオフガス消費計画取得部74で取得されたボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測する。
【0026】
学習部76は、液化ガス状態量予測部75で予測された、タンク10内の液化ガスの予測状態量と、液化ガス状態量予測部75で予測状態量を予測した時点(第二時点T2、第三時点T3)で実測された液化ガスの実際の状態量とに基づいた学習を行う。学習部76は、タンク内の液化ガスの状態予測方法S10による予測処理を、過去に複数回行っている場合、過去の液化ガスの予測状態量、液化ガスの実際の状態量等のデータを蓄積し、蓄積されたデータを解析することで、学習データを生成する。
【0027】
情報記憶部77は、液化ガスの状態予測システム60で、タンク10内の液化ガスの状態の予測処理を実行する際に必要となる、各種の情報を記憶している。情報記憶部77は、例えば、タンク10の仕様情報として、タンク10の数量、容積、保温性能、外部からの入熱量等の情報を記憶している。情報記憶部77は、例えば、タンク10の管理条件として、タンク10内の圧力の上限値、タンク10内の液化ガスに含まれるメタンの割合を示すメタン価の下限値等を記憶している。また、情報記憶部77は、タンク10内の液化ガスの状態の予測処理を繰り返し行うことで得られる、各種の推定結果、学習部76における学習によって生成される学習データ等を記憶している。
【0028】
情報出力部78は、液化ガス状態量予測部75で予測された、タンク10内の液化ガスの予測状態量、及び、ボイルオフガス消費計画取得部74で取得された、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力する。
【0029】
流入液化ガス状態量取得部79は、タンク10内に流入する液化ガスの状態量の情報を取得する。具体的には、流入液化ガス状態量取得部79は、第二時点T2と第三時点T3との間における、タンク10内に流入する液化ガスの状態量の情報を取得する。ここで、タンク10内に流入する液化ガスの状態量は、タンク10内に流入する液化ガスの量、及びタンク10内に流入する液化ガスの組成等であり、例えば、タンク10内に流入する液化ガスの供給元となる陸上の供給施設側等から取得することができる。なお、流入液化ガス状態量取得部79で取得する、タンク10内に流入する液化ガスの状態量の情報は、予測値であってもよい。この予測値は、船舶1内で予測した予測値や、供給元から取得した予測値であってもよい。
【0030】
(タンク内の液化ガスの状態予測方法の手順)
図5は、本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法としての、第一の液化ガスの状態予測方法の手順を示すフローチャートである。
図6は、本開示の実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法としての、第二の液化ガスの状態予測方法の手順を示すフローチャートである。
図5、
図6に示すように、本実施形態に係るタンク内の液化ガスの状態予測方法S10は、第一の液化ガスの状態予測方法S10Aと、第二の液化ガスの状態予測方法S10Bと、を含んでいる。
第一の液化ガスの状態予測方法S10Aは、外部からタンク10内への液化ガスの流入が行われない状態A1、例えば、船舶1の航海中に実行される。第二の液化ガスの状態予測方法S10Bは、外部からタンク10内に液化ガスが供給される、いわゆるバンカリング中等の状態A2で実行される。
【0031】
第一の液化ガスの状態予測方法S10Aは、外部からタンク10内への液化ガスの流入が行われない状態A1(
図4参照)において、現時点、現時点以前の過去の時点、現時点よりも未来の時点の何れかを第一時点T1とし、第一時点T1より後の第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの状態を予測する。第一の液化ガスの状態予測方法S10Aは、適宜のタイミングで、複数回繰り返し行うようにしてもよい。
【0032】
図5に示すように、本実施形態に係る第一の液化ガスの状態予測方法S10Aは、液化ガスの状態量を取得するステップS11と、タンク10に関する情報を取得するステップS12と、タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップS13と、タンク内の状態量の管理条件に関する情報を取得するステップS14と、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップS15と、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16と、管理条件を満足しているか否かを判定するステップS17と、情報を外部に出力するステップS18と、学習を行うステップS19と、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップS20と、を含んでいる。なお、ステップS11からステップS15を行う順序は、
図5に示す順序に限られない。例えば、ステップS11からステップS15の順序を適宜入れ替えたり、並行して同時に行ったりしてもよい。
【0033】
液化ガスの状態量を取得するステップS11では、液化ガス状態量取得部71で、第一時点T1における、タンク10内の液化ガスの状態量を取得する。本実施形態では、第一時点T1を、例えば、タンク10の使用開始時点T0からある程度時間が経過した時点としている。
【0034】
液化ガスの状態量を取得するステップS11で液化ガス状態量取得部71が取得するタンク10の状態量は、例えば、タンク10内の圧力、温度、密度、液化ガスの組成、メタン価等のうちの少なくとも一つである。液化ガスの状態量を取得するステップS11で取得するタンク10の状態量は、センサー等により検出された実測値であってもよいし、過去の実績に基づく予測値等であってもよい。
【0035】
タンク10に関する情報を取得するステップS12では、タンク情報取得部72によってタンク10内の液化ガスの状態予測をするのに必要なタンク10に関する情報を取得する。タンク情報取得部72は、第一時点T1と第二時点T2との間における、タンク10内に液化ガスの状態予測をするのに必要なタンク10に関する情報を取得する。タンク情報取得部72は、タンク10に関する情報として、情報記憶部77に予め記憶されている、タンク10の数量、容積、保温性能、外部からの入熱量等の情報を取得する。また、タンク情報取得部72は、第一時点T1から、第二時点T2までの外気温等の天候情報を外部の気象データ等から取得するようにしてもよい。
【0036】
タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップS13では、液化ガス消費量情報取得部73は、予測を行う期間である、第一時点T1から第二時点T2までの間における、燃焼装置9によるタンク10内の液化ガスの消費量に関する情報を取得する。液化ガス消費量情報取得部73によって取得するタンク10内の液化ガスの消費量に関する情報としては、例えば、予測を行う期間の船舶1の運航計画、運航計画に基づいた燃焼装置9における液化ガスの消費量の計画値、等が含まれる。
【0037】
より具体的例を挙げると、タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報としては、船舶1の運航計画に基づいて、予測を行う期間である、第一時点T1から第二時点T2までの船舶1の航行距離、航行速度、その航行速度で船舶1を航行させる際の燃焼装置9の回転数等の情報を取得するようにしてもよい。
また、タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報としては、船舶1の運航計画における船舶1の航路と同一の航路で、船舶1が過去に航行した際の、液化ガスの消費量の実測値の情報を取得してもよい。
また、運航計画が未定の場合等には、タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報として、過去の運航実績から推定される仮定の運航計画や現在の運航状態を維持し続ける事を仮定した運航計画等の情報を用いても良い。
また、当該船舶1と同型、又は類似するタンク10を有する他の船舶が存在する場合、タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報として、その船舶が、船舶1の航路と同一の航路を過去に航行した際の、液化ガスの消費量の実測値の情報を取得してもよい。
【0038】
タンク内の状態量の管理条件に関する情報を取得するステップS14では、液化ガス状態量予測部75によって、情報記憶部77に記憶されている、タンク10内の状態量の管理条件に関する情報を取得する。タンク内の状態量の管理条件に関する情報を取得するステップS14で取得するタンク10の管理条件としては、タンク10内の圧力の上限値、タンク10内の液化ガスに含まれるメタンの割合を示すメタン価の下限値等を挙げることができる。タンク内の状態量の管理条件に関する情報を取得するステップS14で取得するタンク10の管理条件は、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された、第二時点T2における、タンク10内の液化ガスの予測状態量との比較が可能なものとする。
【0039】
ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップS15では、ボイルオフガス消費計画取得部74によって、第一時点T1と第二時点T2との間における、タンク10内で液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得する。ボイルオフガスの消費計画に関する情報は、事前に設定されたものを用いる。例えば、タンク内の液化ガスの状態予測方法S10による予測処理を、過去に行っている場合、過去に設定されたボイルオフガスの消費計画の情報を取得するようにしてもよい。
【0040】
タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16では、液化ガス状態量予測部75によって、第二時点T2における、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測する。液化ガス状態量予測部75は、液化ガスの状態量を取得するステップS11によって取得された液化ガスの状態量、タンク10に関する情報を取得するステップS12によって取得されたタンク10に関する情報、タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップS13によって取得された液化ガスの消費量に関する情報、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップS15によって取得されたボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測する。液化ガス状態量予測部75は、第一時点T1で取得された、液化ガスの状態量、タンク10に関する情報、タンク10内の液化ガスの消費量に関する情報、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量を予測する。
タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で液化ガス状態量予測部75が予測する、タンク10内の液化ガスの予測状態量としては、例えば、タンク10内の液体状態の液化ガスの量(保有量)、温度、組成、メタン価、タンク10内のボイルオフガスの量、温度、組成等のうち、少なくとも一部を含んでいる。
また、タンク内の液化ガスの状態予測方法S10による予測処理を、過去に行っており、後述する学習を行うステップS19において学習部76による学習が行われている場合、その学習結果である学習データに基づいて、タンク10内の液化ガスの予測状態量を補正する。
【0041】
管理条件を満足しているか否かを判定するステップS17では、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量が、タンク内の状態量の管理条件に関する情報を取得するステップS14で取得された状態量の管理条件を満足しているか否かを判定する。この判定の結果、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量が、管理条件を満足している場合(ステップS17でYes)、情報を外部に出力するステップS18に進む。
【0042】
情報を外部に出力するステップS18では、管理条件を満足しているか否かを判定するステップS17で、管理条件を満足していると判定された、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量と、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップS15で取得されたボイルオフガスの消費計画に関する情報、又は、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップS20で更新された、ボイルオフガスの消費計画に関する情報と、を外部に出力する。情報を外部に出力するステップS18における、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報は、例えばモニター画面への表示、外部の端末へのデータ送信、紙への印刷等によって、外部に出力することができる。
【0043】
その後、液化ガスの状態予測システム60では、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測した第二時点T2に到達した時点で、実際のタンク10内の液化ガスの実際の状態量を実測する。
学習を行うステップS19では、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量と、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの実際の状態量(実測値)とに基づいた学習を行う。
【0044】
その一方で、管理条件を満足しているか否かを判定するステップS17における判定の結果、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量が、管理条件を満足しない場合(ステップS17でNo)、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップS20へ進む。
【0045】
ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップS20では、液化ガス状態量予測部75において、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新する。具体的には、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量としてタンク10内の圧力値が予測された場合、予測された圧力値が、例えば管理条件に含まれる、タンク10内の圧力の上限値を超えてしまっている場合、上記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップS15で取得されたボイルオフガスの消費計画の消費計画に関する情報とは異なるボイルオフガスの消費計画の消費計画に関する情報に更新する。そして、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16に戻る。この場合、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16では、更新されたボイルオフガスの消費計画に関する情報に基づいて、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量を予測する。そして、この予測された第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量により、再度、管理条件を満足しているか否かを判定するステップS17が行われる。
【0046】
図6に示すように、第二の液化ガスの状態予測方法S10Bは、バンカリング中で、外部からタンク10内への液化ガスの流入が行われている状態A2(
図4参照)において、タンク10内への液化ガスの流入が開始された時点Tsよりも後の第三時点T3におけるタンク10内の液化ガスの状態を予測する。第二の液化ガスの状態予測方法S10Bでは、タンク10内への液化ガスの流入が開始された時点Tsよりも前において、既にタンク10内の液化ガスの状態量の予測が行われた時点(例えば、第二時点T2等)を基準として、第三時点T3におけるタンク10内の液化ガスの状態を予測する。
【0047】
本実施形態に係る第二の液化ガスの状態予測方法S10Bは、液化ガスの状態量を取得するステップS21と、タンク10内に流入する液化ガスの状態量を取得するステップS22と、タンク10内の液化ガスの状態量を予測するステップS23と、予測結果を外部に出力するステップS24と、を含んでいる。
【0048】
液化ガスの状態量を取得するステップS21では、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16において、液化ガス状態量取得部71で予測された、第二時点T2における、タンク10内の液化ガスの予測状態量を取得する。液化ガスの状態量を取得するステップS21で液化ガス状態量取得部71が取得するタンク10の予測状態量は、例えば、タンク10内の圧力、温度、密度、液化ガスの組成、メタン価、液化ガスの保有量等のうちの少なくとも一つである。
【0049】
タンク10内に流入する液化ガスの状態量を取得するステップS22では、流入液化ガス状態量取得部79で、第二時点T2と第三時点T3との間における、タンク10内に流入する液化ガスの状態量の情報を取得する。
【0050】
タンク10内の液化ガスの状態量を予測するステップS23では、液化ガスの状態量を取得するステップS21で取得した、第二時点T2におけるタンク10内の予測状態量と、タンク10内に流入する液化ガスの状態量を取得するステップS22で取得された、タンク10内に流入する液化ガスの状態量と、に基づいて、第三時点T3における、タンク10内の液化ガスの状態量を予測する。第三時点T3においては、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスと、第二時点T2から第三時点T3までの間にタンク10内に流入する液化ガスと、が混合した状態となっている。
【0051】
予測結果を外部に出力するステップS24では、タンク10内の液化ガスの状態量を予測するステップS23で予測された、第三時点T3における、タンク10内の液化ガスの状態量の予測結果を、外部に出力する。予測結果を外部に出力するステップS24における、予測結果の外部への出力は、例えば、モニター画面への表示、外部の端末へのデータ送信、紙への印刷等によって行うことができる。
【0052】
(作用効果)
上記実施形態のタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10、及びタンク10内の液化ガスの状態予測システム60では、第一時点T1における液化ガスの状態量、タンク10に関する情報、第一時点T1と第二時点T2との間における液化ガスの消費量に関する情報、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報に基づいて、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量を予測することができる。また、第一時点T1における液化ガスの状態量と、タンク10に関する情報とに基づいて、タンク10内の液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの量を予測することができる。さらに、液化ガスを燃料とする燃焼装置9における液化ガスの消費量、タンク10内で生成されたボイルオフガスの消費計画とに基づいて、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガス、及びボイルオフガスの量を予測することができる。
その結果、タンク10内の液化ガスの状態を予測することができる。
【0053】
上記実施形態では、タンク10内の液化ガスの予測状態量に基づいて、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新することで、ボイルオフガスの消費計画に関する情報の精度を、タンク10内の液化ガスの状態量に応じて高めることができる。
【0054】
上記実施形態では、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量が、状態量の管理条件を満足している場合に、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報が外部に出力される。したがって、タンク10内の液化ガスを適切な状態に管理しつつ、ボイルオフガスの消費計画に基づいたボイルオフガスの消費を行うことができる。これにより、ボイルオフガスの発生によってタンク10内の圧力が過度に上昇するのを抑えつつ、発生したボイルオフガスを焼却することで処理する量をなるべく抑えて、燃焼装置9の燃料として有効利用することができる。
【0055】
また、液化ガスがLNG等の複数の成分からなる場合、これら複数の成分のうち、沸点の低い成分が、沸点の高い成分よりも先に蒸発してボイルオフガスとなる。液化ガスがLNGである場合、LNGに含まれる他の成分よりも沸点が低いメタンが、先行して蒸発する。このため、ボイルオフガスには、メタンガスが多く含まれる。すると、タンク10内に液体状態で残る液化ガスにおいては、メタンの含有率が低下してしまう。タンク10内の管理条件を、タンク10内に存在する液体状態の液化ガスにおけるメタンの含有率の過度な低下を抑えるように設定することで、液体状態の液化ガスにおけるメタンの含有率が過度に低下することが抑えられる。
その結果、タンク10内の液体状態の液化ガスを燃焼装置9に燃料として供給する場合に、液化ガスの燃焼状態への影響を有効に抑えることができる。
【0056】
上記実施形態では、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量と、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの実際の状態量とに基づいた学習を行い、その学習結果に基づいて、液化ガスの予測状態量を補正している。
これにより、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量の予測を、より高い精度で行うことが可能となる。
【0057】
上記実施形態では、第二時点T2と第三時点T3との間で、タンク10内に液化ガスが流入する。この場合、第三時点T3では、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスと、第二時点T2から第三時点T3までの間にタンク10内に流入する液化ガスと、が、タンク10内で混合した状態となる。上記実施形態では、第二時点T2と第三時点T3との間における、タンク10内に流入する液化ガスの状態量を取得しているため、第二時点T2におけるタンク10内の予測状態量と、取得したタンク10内に流入する液化ガスの状態量と、に基づいて、外部からタンク10内に液化ガスが流入した後の状態における、タンク10内の液化ガスの状態量を予測することができる。
これにより、第二時点T2と第三時点T3との間で、タンク10内に液化ガスが流入する場合であっても、タンク10内の液化ガスの状態を予測することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態では、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップS20において、タンク10内の液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測されたタンク10内の液化ガスの予測状態量が管理条件を満足しない場合に、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するようにしたが、これに限られない。例えば、タンク10の使用開始後、初期の段階等においては、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新しないようにしてもよい。
【0059】
また、タンク10内の液化ガスの状態量の予測は、例えば、タンク10内の液化ガスの組成を推定した組成の推定値を用いてもよい。タンク10内の液化ガスの組成を推定するには、例えば、第一時点において、タンク内の液化ガスの組成を推定するための基準情報を取得するステップと、基準情報を取得するステップで取得された基準情報に基づいて、第一時点における液化ガスの組成に関する第一時点組成情報を設定するステップと、第一時点とは異なる第二時点と、第一時点と、の間におけるタンク内の液化ガスの流出量に関する情報を取得するステップと、第一時点組成情報を設定するステップで設定された第一時点組成情報、及び、タンク内の液化ガスの流出量に関する情報を取得するステップで取得された液化ガスの流出量に基づいて、第二時点における液化ガスの組成に関する第二時点組成情報を推定するステップと、を含むようにしてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、液化ガスの状態予測システム60を船舶1に搭載する場合を一例にして説明したが、液化ガスの状態予測システム60の設置場所は、船舶1に限られない。例えば、液化ガスの状態予測システム60を陸上に設置するようにしてもよい。この場合、陸上に設置した液化ガスの状態予測システム60に、船舶1で計測された計測データを無線通信により送信して状態予測を行うようにすることができる。
【0061】
<付記>
実施形態に記載のタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10、タンク10内の液化ガスの状態予測システム60は、例えば以下のように把握される。
【0062】
(1)第1の態様に係るタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10は、液化ガスを貯留しているタンク10内の前記液化ガスの状態を予測するタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10であって、第一時点T1における、前記タンク10内の前記液化ガスの状態量を取得するステップS11と、前記タンク10内に前記液化ガスの状態予測をするのに必要な前記タンク10に関する情報を取得するステップS12と、前記第一時点T1と、前記第一時点T1よりも後の第二時点T2との間における、前記液化ガスを燃料として使用する燃焼装置9による前記タンク10内の前記液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップS13と、前記第一時点T1と前記第二時点T2との間における、前記タンク10内で前記液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップS15と、前記液化ガスの状態量を取得するステップS11で取得された前記液化ガスの状態量、前記タンク10に関する情報を取得するステップS12で取得された前記タンク10に関する情報、前記液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップS13で取得された前記液化ガスの消費量に関する情報、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップS15で取得された前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップS16と、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力するステップS18と、を含む。
液化ガスの状態量、予測状態量の例としては、タンク10内の液化ガスの圧力、温度、密度、組成、メタン価、液化ガスの保有量等が挙げられる。
タンク10に関する情報の例としては、タンク10の数量、容積、保温性能、外部からの入熱量等が挙げられる。
【0063】
このタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10は、第一時点T1における液化ガスの状態量、タンク10に関する情報、第一時点T1と第二時点T2との間における液化ガスの消費量に関する情報、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報に基づいて、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量を予測することができる。第一時点T1における液化ガスの状態量と、タンク10に関する情報とに基づいて、タンク10内の液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの量を予測することができる。さらに、液化ガスを燃料とする燃焼装置における液化ガスの消費量、タンク10内で生成されたボイルオフガスの消費計画とに基づいて、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガス、及びボイルオフガスの量を予測することができる。その結果、タンク10内の液化ガスの状態を予測することができる。
【0064】
(2)第2の態様に係るタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10は、(1)のタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10であって、前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量に基づいて、前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップS20、を更に含み、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力するステップS18では、前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップS20で更新された、前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力する。
これにより、タンク10内の液化ガスの予測状態量に基づいて、ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新することで、ボイルオフガスの消費計画に関する情報の精度を、タンク10内の液化ガスの状態量に応じて高めることができる。
【0065】
(3)第3の態様に係るタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10は、(1)又は(2)のタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10であって、前記タンク10内の前記状態量の管理条件に関する情報を取得するステップS14と、前記液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量が、前記状態量の管理条件に関する情報を取得するステップS14で取得された前記状態量の管理条件を満足しているか否かを判定するステップS17と、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量が、前記状態量の管理条件を満足している場合に、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力するステップS18を実行する。
これにより、予測された、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量が、状態量の管理条件を満足している場合に、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量、及びボイルオフガスの消費計画に関する情報が外部に出力される。したがって、タンク10内の液化ガスを適切な状態に管理しつつ、ボイルオフガスの消費計画に基づいたボイルオフガスの消費を行うことができる。
【0066】
(4)第4の態様に係るタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10は、(1)から(3)の何れか一つのタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10であって、前記液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量と、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの実際の状態量とに基づいた学習を行うステップS19を更に備え、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量を予測するステップS16では、前記学習を行うステップS19における学習結果に基づいて、前記液化ガスの予測状態量を補正する。
このような構成では、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量と、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの実際の状態量とに基づいた学習を行い、その学習結果に基づいて、液化ガスの予測状態量を補正する。これにより、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスの予測状態量の予測を、より高い精度で行うことが可能となる。
【0067】
(5)第5の態様に係るタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10は、(1)から(4)の何れか一つのタンク10内の液化ガスの状態予測方法S10であって、前記第二時点T2と、前記第二時点T2よりも後の第三時点T3と、の間における、前記タンク10内に流入する前記液化ガスの状態量を取得するステップS22と、前記液化ガスの予測状態量を予測するステップS16で予測された前記第二時点T2における前記タンク10内の予測状態量と、前記タンク10内に流入する前記液化ガスの状態量を取得するステップS22で取得された、前記タンク10内に流入する前記液化ガスの状態量と、に基づいて、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスと、前記第二時点T2から前記第三時点T3までの間に前記タンク10内に流入する前記液化ガスと、が混合した状態における、前記タンク10内の前記液化ガスの状態量を予測するステップS23と、を更に含む。
このような構成によれば、第二時点T2と第三時点T3との間で、タンク10内に液化ガスが流入する場合、第三時点T3では、第二時点T2におけるタンク10内の液化ガスと、第二時点T2から第三時点T3までの間にタンク10内に流入する液化ガスと、が、タンク10内で混合した状態となる。第二時点T2と第三時点T3との間における、タンク10内に流入する液化ガスの状態量を取得することによって、第二時点T2におけるタンク10内の予測状態量と、タンク10内に流入する液化ガスの状態量と、に基づいて、タンク10内の液化ガスの状態量を予測することができる。これにより、第二時点T2と第三時点T3との間で、タンク10内に液化ガスが流入する場合であっても、タンク10内の液化ガスの状態を予測することができる。
【0068】
(6)第6の態様に係るタンク10内の液化ガスの状態予測システム60は、液化ガスを貯留しているタンク10内の前記液化ガスの状態を予測するタンク10内の液化ガスの状態予測システム60であって、第一時点T1における、前記タンク10内の前記液化ガスの状態量を取得する液化ガス状態量取得部71と、前記タンク10内の前記液化ガスの状態を予測するのに必要な前記タンク10に関する情報を取得するタンク情報取得部72と、前記第一時点T1と、前記第一時点T1よりも後の第二時点T2との間における、前記液化ガスを燃料として使用する燃焼装置9による前記タンク10内の前記液化ガスの消費量に関する情報を取得する液化ガス消費量情報取得部73と、前記第一時点T1と前記第二時点T2との間における、前記タンク10内で前記液化ガスが蒸発することで生成されるボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するボイルオフガス消費計画取得部74と、前記液化ガス状態量取得部71で取得された前記液化ガスの状態量、前記タンク情報取得部72で取得された前記タンク10に関する情報、前記液化ガス消費量情報取得部73で取得された前記液化ガスの消費量に関する情報、及び前記ボイルオフガス消費計画取得部74で取得された前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報、に基づいて、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量を予測する液化ガス状態量予測部75と、前記第二時点T2における前記タンク10内の前記液化ガスの予測状態量、及び前記ボイルオフガスの消費計画に関する情報を外部に出力する情報出力部78と、を含む。
これにより、タンク10内の液化ガスの状態を予測することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…船舶 2…船体 2a…船首 4…上部構造 5A,5B…舷側 6…船底 7…上甲板 8…貨物搭載区画 9…燃焼装置 10…タンク 60…状態予測システム 61…CPU 62…ROM 63…RAM 64…ストレージ 65…信号送受信モジュール 71…液化ガス状態量取得部 72…タンク情報取得部 73…液化ガス消費量情報取得部 74…ボイルオフガス消費計画取得部 75…液化ガス状態量予測部 76…学習部 77…情報記憶部 78…情報出力部 A1,A2…状態 FA…船首尾方向 S10…タンク内の液化ガスの状態予測方法 S10A…第一の液化ガスの状態予測方法 S10B…第二の液化ガスの状態予測方法 S11…液化ガスの状態量を取得するステップ S12…タンクに関する情報を取得するステップ S13…タンク内の液化ガスの消費量に関する情報を取得するステップ S14…タンク内の状態量の管理条件に関する情報を取得するステップ S15…ボイルオフガスの消費計画に関する情報を取得するステップ S16…タンク内の液化ガスの予測状態量を予測するステップ S17…管理条件を満足しているか否かを判定するステップ S18…情報を外部に出力するステップ S19…学習を行うステップ S20…ボイルオフガスの消費計画に関する情報を更新するステップ S21…液化ガスの状態量を取得するステップステップ S22…タンク内に流入する液化ガスの状態量を取得するステップ S23…タンク内の液化ガスの状態量を予測するステップ S24…予測結果を外部に出力するステップ T0…使用開始時点 T1…第一時点 T2…第二時点 T3…第三時点