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特開2024-80939OF・CVケーブルテーピング端末処理工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080939
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】OF・CVケーブルテーピング端末処理工法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20240610BHJP
   H02G 15/23 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G15/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194308
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】三留 豊
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直樹
【テーマコード(参考)】
5G355
【Fターム(参考)】
5G355AA02
5G355BA08
5G355CA30
(57)【要約】
【課題】火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく端末処理作業を行うことができる。
【解決手段】ケーブル端部1aにおいてOFケーブル1の防食層11を除去し、防食層11の下層に設けられた金属層12の端部を露出させる金属層端部露出工程と、油路が露出したケーブル端部1aの断面を覆うように形成された蓋部材2を用いて金属層12の端部の側面の一部を露出した状態でケーブル端部1aを覆う蓋部材取付工程と、金属層12の側面と蓋部材2の側面2aとに接着ボンド31を用いて接着層3を形成する接着層形成工程と、接着層3の上層側を、シリコンテープを用いて覆い、金属層12の端部と蓋部材2とを被覆する油漏出防止層4を形成する油漏出防止層形成工程と、を備えるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油路を有するケーブルの端部に施工されるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法であって、
前記ケーブルの前記端部において前記ケーブルの被覆を除去し、前記被覆の下層に設けられた金属層の端部を露出させる金属層端部露出工程と、
前記油路が露出した前記ケーブルの端部の断面を覆うように形成された蓋部材を用いて前記金属層の端部の側面の一部を露出した状態で前記ケーブルの端部を覆う蓋部材取付工程と、
前記金属層の側面と前記蓋部材の側面とに薬剤を用いて接着層を形成する接着層形成工程と、
前記接着層の上層側を、第1被覆部材を用いて覆い、前記金属層の端部と前記蓋部材とを被覆する油漏出防止層を形成する油漏出防止層形成工程と、を備える、
OF・CVケーブルテーピング端末処理工法。
【請求項2】
前記油漏出防止層形成工程において、前記油漏出防止層の両端部において前記油漏出防止層の径方向に拘束する拘束部材を取り付け、前記油漏出防止層と前記金属層との間を密着させると共に、前記油漏出防止層と前記蓋部材との間を密着させる拘束部材取付工程を備える、
請求項1に記載のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法。
【請求項3】
前記油漏出防止層の上層側を、第2被覆部材を用いて覆い前記ケーブルの端部を補強するケーブル端部補強工程を備える、
請求項1に記載のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法。
【請求項4】
前記第1被覆部材は、自己融着性を有するテープ部材である、
請求項1に記載のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法。
【請求項5】
前記第2被覆部材は、硬化性を有するテープ部材である、
請求項3に記載のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法。
【請求項6】
前記薬剤は、硬化性を有し油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能である、
請求項1に記載のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OF・CVケーブルテーピング端末処理工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油路を有するOF(Oil-Filled)ケーブルでは、絶縁用の油を所定の圧力で内部に注入、充填することで、絶縁性を担保したケーブルである。OFケーブルは、内部に絶縁油を多量に含んでいるため、OFケーブルの設置または撤去の際には、地中等に敷設された長尺のOFケーブルを切断してから移送や保管する必要があり、切断した端部を有するOFケーブルは、内部に存在する絶縁油が端部から外方に絶縁油が漏れ出す場合が多い。このため、OFケーブルは、切断した端部に封止処理を施してから撤去されるのが一般的である。そして、OFケーブルを切断した後の端末処理については、その作業性およびコスト面から、鉛工処理を行っているのが一般的であるが、特許文献1、2に示すような処理方法も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、OFケーブルの端部外面のプラスチックシースを剥ぎ取ってアルミニウムシースを露出させ、はんだによりアルミニウムシース表面の凹凸を埋めた後、先端側の一部のアルミニウムシースも剥ぎ取り、その箇所でケーブルコアとアルミニウムシースとの間をキャップにて封止し、さらに、OFケーブルを一端が開口した鋼管の開口部に挿入して、鋼管の開口部付近とアルミニウムシースとの間にリングスペーサーを設けて接触をとり、はんだ付けして密閉封止する方法について記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、OFケーブルの端部外面のプラスチックシースを剥ぎ取って金属シースを露出させ、その金属シース表面の凹凸に合成樹脂製のテープを巻き、その端部を、一端が開口した金属製の筒状体の開口部から挿入してOFケーブルに筒状体を被せた後、専用の装置を用い、筒状体の側面外周から5~10トンもの圧縮力を印加してOFケーブルと筒状体を圧縮一体化して密閉封止する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-99427号公報
【特許文献2】特開2004-343864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に示すような従来のOFケーブルの鉛工作業を伴う端部処理では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1、2は、施工のためには鉛工の特殊な技能が必要であり、しかも、その作業には多くの時間を要し、また、施工現場で火気を扱う必要があるという問題があった。
また、特許文献2のOFケーブルの端部処理では、圧縮のために専用の装置が必要であり、装置にかかる費用が増大することから、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく端末処理作業を行うことができるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るOF・CVケーブルテーピング端末処理工法の態様1は、油路を有するケーブルの端部に施工されるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法であって、前記ケーブルの前記端部において前記ケーブルの被覆を除去し、前記被覆の下層に設けられた金属層の端部を露出させる金属層端部露出工程と、前記油路が露出した前記ケーブルの端部の断面を覆うように形成された蓋部材を用いて前記金属層の端部の側面の一部を露出した状態で前記ケーブルの端部を覆う蓋部材取付工程と、前記金属層の側面と前記蓋部材の側面とに薬剤を用いて接着層を形成する接着層形成工程と、前記接着層の上層側を、第1被覆部材を用いて覆い、前記金属層の端部と前記蓋部材とを被覆する油漏出防止層を形成する油漏出防止層形成工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明に係るOF・CVケーブルテーピング端末処理工法によれば、切断したケーブルの端部の金属層に蓋部材を取り付け、蓋部材とケーブルの端部を上層側を薬剤からなる接着層を介して第1被覆部材で覆って油漏出防止層を形成するという簡単な作業により、ケーブルの端部の油路を封止し、油の漏出を防止したケーブル端末処理を短時間で効率よく行うことができる。
また、本発明によれば、薬剤の硬化による接着層を形成する方法となるので、必要な資機材を最低限にすることができ、薬剤の効果時間を任意に設定することが可能となるので、硬化時間の早い薬剤を採用することで、迅速に作業を行える。さらに、本発明では、大きな作業スペースが必要なく、狭い場所でも作業を行えるという利点がある。
【0010】
また、本発明によれば、従来のように鉛を溶かすためにバーナーを使用する鉛工処理をともなうケーブルの終端処理作業と比較して、鉛を使用しないため、特殊な技術が不要となり、高度な施工技術を有する作業者を確保する必要がなく、作業効率の向上を図ることができ、コストを低減できる。しかも、鉛工処理を行う場合に比べて、火気の取扱いが不要な端末処理を行うことができる。
【0011】
(2)本発明の態様2は、態様1のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法において、前記油漏出防止層形成工程において、前記油漏出防止層の両端部において前記油漏出防止層の径方向に拘束する拘束部材を取り付け、前記油漏出防止層と前記金属層との間を密着させると共に、前記油漏出防止層と前記蓋部材との間を密着させる拘束部材取付工程を備えることが好ましい。
【0012】
この場合には、油漏出防止層が取り付けられた拘束部材によって径方向に拘束された状態となる。これにより、油漏出防止層と金属層との間、および油漏出防止層と蓋部材との間をそれぞれ密着させることができ、油漏出防止層による油漏出防止効果をより向上させることができる。
【0013】
(3)本発明の態様3は、態様1のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法において、前記油漏出防止層の上層側を、第2被覆部材を用いて覆い前記ケーブルの端部を補強するケーブル端部補強工程を備えることが好ましい。
【0014】
この場合には、油の漏出を防止する機能をもつ油漏出防止層の全体を第2被覆部材によって上層側から覆って包み込むようにして設けることで、第2被覆部材で覆ったケーブルの端部を補強することができる。そのため、油漏出防止層が第2被覆部材によって保護された状態となり、油漏出防止層が破損する等、その機能が低下することを抑制でき、長期にわたって油漏出防止層を維持することができる。
【0015】
(4)本発明の態様4は、態様1のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法において、前記第1被覆部材は、自己融着性を有するテープ部材であることを特徴としてもよい。
【0016】
この場合には、接着層を覆うようにして自己融着性を有するテープ部材を巻くことで、第1被覆部材による気密性を常に維持することができる。
【0017】
(5)本発明の態様5は、態様2のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法において、前記第2被覆部材は、硬化性を有するテープ部材であることを特徴としてもよい。
【0018】
この場合には、油漏出防止層を覆うようにして硬化性を有するテープ部材を巻くことで、取り付け作業を容易に行うことができ、全体にわたって気密性も常に維持することができる。
【0019】
(6)本発明の態様6は、態様1のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法において、前記薬剤は、硬化性を有し油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であることを特徴としてもよい。
【0020】
この場合には、薬剤は油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であるので、蓋部材の側面および金属層に塗布された薬剤が硬化してケーブルの端面をより確実に封止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るOF・CVケーブルテーピング端末処理工法によれば、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく端末処理作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるOFケーブルの処理構造を示す軸方向に沿って切断した断面図である。
図2】OFケーブルの断面図である。
図3図1に示すA-A線断面図である。
図4】(a)~(c)は、OFケーブルの処理工法による作業手順を示す図である。
図5】(a)、(b)は、図4(c)に続く作業手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るOF・CVケーブルテーピング端末処理工法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0024】
図1および図2に示すように、本実施形態のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法は、内部に油が注入された油路15を有するOFケーブル1の端部(ケーブル端部1a)を閉塞処理する施工法である。すなわち、本実施形態のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法は、OFケーブル1が切断されたケーブル端部1aに蓋部材2を外側から嵌合するように被せて封止し、OFケーブル1の内部に注入されている油が流出するのを防止するための端末処理部をなすケーブル処理構造10が施される方法である。
【0025】
OFケーブル1は、防食層11、金属層12、絶縁層13、および芯線14が外周から中心に向けた順で積層されている。すなわちOFケーブル1は、防食層11によって被覆された遮蔽部材からなる金属層12の内部において絶縁層13を介して芯線14が一体的に設けられている。芯線14は、導体により形成され、金属層12によって遮蔽され、複数の芯線が螺旋状かつ筒状に束になって形成される。芯線14の内側には隙間が形成されている。絶縁層13の内側には、芯線14を含みを油が注入された油路15が形成されている。
【0026】
ここで、本実施形態によるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法は、恒久的な対策である本補修に先だつ最初期の対応として行う仮補修を適用対象としているが、漏油状態やOFケーブル1の使用年数、設置環境などによっては、本補修として適用されるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法であってもよい。
【0027】
図1および図3に示すように、ケーブル処理構造10は、ケーブル端部1aにおけるOFケーブル1の最外層(防食層11)を剥ぎ取って露出した金属層12に被せられる蓋部材2と、金属層12の外周面12a(側面)と蓋部材2の側面2aとに形成される接着ボンド31(薬剤)からなる接着層3と、接着層3の上層側を覆うシリコンテープ41(第1被覆部材)によって形成される油漏出防止層4と、油漏出防止層4の両端部4a、4bにおいて油漏出防止層4の径方向に拘束するめっき線5(拘束部材)と、油漏出防止層4の上層側を覆うキャスティングテープ6(第2被覆部材)と、キャスティングテープ6の上層側をさらに覆う防食テープ7と、を備えている。
【0028】
図1に示すように蓋部材2は、一端(開口端2b)が開口し、他端が閉口した形状の円形断面の有頂筒体をなし、側面2aを有する筒体21と頂壁22とを備える。蓋部材2は、OFケーブル1の外径よりも大きい内径を有する。本実施形態では、蓋部材2の内径はOFケーブル1の金属層12の外径よりも大きい。筒体21は、OFケーブル1の端部1aを挿入して収容し、OFケーブル1を切断して開口したケーブル端面1bを閉じるための蓋材(キャップ)としての機能を有している。
【0029】
蓋部材2の材料としては、OFケーブル1内に注入されている油が、ケーブル端面1bから漏れ出す(吹き出す)際の圧力に耐えるとともに、OFケーブル1の重量などにより破壊されないような強度を有する材料であればよい。例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタンなどの金属、あるいはこれらの合金、または繊維強化プラスチック(FRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの強化プラスチック類などを用いることができる。
【0030】
蓋部材2の形状としては、一端が開口していること以外、とくに限定されることはなく、例えば筒体21が本実施形態のような円筒状の他、楕円筒状、多角筒状(三角筒状、四角筒状等)の形状が挙げられる。OFケーブル1の断面が通常円形を有しているので、OFケーブル1の形状と適合させるとともに、外部からの力が、OFケーブル1の外面に対して特定の箇所にだけ作用するのを抑制し、均一に作用するように構成するため、円筒状とすることが好ましい。
【0031】
接着ボンド31からなる接着層3は、蓋部材2の側面2aと金属層12の外周面12aとにわたる領域を覆う面積で塗布される。接着層3の接着ボンド31としては、硬化性を有し、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能な特性をもち、例えば、変性アクリルを主成分とし、高強度かつ加熱不要な常温速硬化型の接着剤メタルロック(セメダイン社製)におけるY618Hタイプを採用できる。Y618Hタイプの接着ボンドは、同社製のY610タイプに比べて金属に対して更なる接合強度を有する。Y618Hタイプを使用する場合には、接着層3の上層側に被覆されるキャスティングテープ6の面圧等に関係なく油止めの機能を発揮できる。また、Y618Hタイプの場合には、引火性のある溶剤を含まず、粗い混合であっても硬化し、温度0℃から硬化可能であり、さらに多少の油面状態であっても接着強度が得られる特性をもつ。さらに、常温5~25℃で長期保管が可能であり、従来のアクリル接着剤のような悪臭が発せられることもない。また、金属とCFRPなど異種材料の接合にも採用できる。
【0032】
油漏出防止層4を構成するシリコンテープ41は、自己融着性を有するテープ部材であり、塗布した接着ボンド31の全域に巻き付けられている。シリコンテープ41は、OFケーブル1の周方向に少なくとも1周以上で、かつ軸方向に重なり合うように巻き付けられている。これにより、シリコンテープ41は、蓋部材2の側面2aと金属層12の外周面12aとにわたる領域で周方向全周にわたって油漏出防止層4を形成している。
【0033】
めっき線5は、例えば外径2mm程度の銀めっき軟銅線が使用され、油漏出防止層4の両端部4a、4bのそれぞれにおいて、OFケーブル1の周方向に少なくとも1周以上巻き付けられている。なお、めっき線5の設置数は、上記油漏出防止層4の両端部4a、4bの2箇所であることに限定されることはなく、少なくとも油漏出防止層4の両端部4a、4bを含み、例えばOFケーブル1の軸方向に所定の間隔をあけて3箇所以上に設けることも可能である。油漏出防止層4は、巻き付けられためっき線5によって、径方向に拘束された状態となる。これにより、油漏出防止層4と金属層12との間を密着させると共に、油漏出防止層4と蓋部材2との間も密着させることができる。
【0034】
キャスティングテープ6は、シリコンテープ41の全体を上層側から覆って包み込むようにして巻き付けられ、OFケーブル1の端部1aを補強する機能を有している。キャスティングテープ6の大きさ、面積は、シリコンテープ41よりも大きくなるように設定されている。キャスティングテープ6は、OFケーブル1の周方向に少なくとも1周以上で、かつ軸方向に重なり合うように巻き付けられている。キャスティングテープ6の材料としては、フィット性、追従性の観点から縦横方向および斜め方向の伸縮性に優れた材料が好ましく、また巻き付け作業性、張り替え性の観点から粘着性が小さい材料が好ましく、例えば、ガラス繊維ニットにポリウレタン(PU)樹脂を含有させた材料からなるテープを採用することができる。この場合、ガラス繊維ニットに含浸したポリウレタン樹脂が水と反応することで硬化しやすい特性が得られる。
【0035】
防食テープ7は、キャスティングテープ6の全体を上層側から覆って包み込むようにして巻き付けられ、キャスティングテープ6で補強された部分を防食する機能を有している。防食テープ7の大きさ、面積は、キャスティングテープ6よりも大きくなるように設定されている。防食テープ7は、OFケーブル1の周方向に少なくとも1周以上で、かつ軸方向に重なり合うように巻き付けられている。防食テープ7の材料としては、耐久性、防食性に優れる材料が好ましく、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等が採用される。また、本実施形態では、キャスティングテープ6の上層側に防食テープ7が向けられることで、巻き付けられたキャスティングテープ6の凹凸を隠すように平滑に仕上げることができる。
【0036】
次に、OFケーブル1の端末におけるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法の作業手順について、図4(a)~(c)及び図5(a)、(b)を用いて詳細に説明する。
【0037】
先ず、図1及び図4(a)に示すように、OFケーブル1の端部(ケーブル端部1a)において、防食層11を除去し、防食層11の下層に設けられた金属層12の端部を露出させる(金属層端部露出工程)。具体的には、OFケーブル1の切断端末(ケーブル端部1a)において、金属層12の外側に被覆された防食層11を、例えばシースカッター等を用いて剥離し、金属層12の外周面12aを露出させておく。
【0038】
このとき、OFケーブル1は、図2に示すように、金属層12と、金属層12の外周に巻き付けられた防食層11と、金属層12の内部に芯線14とともに油が注入された中空状の油路15と、を備え、OFケーブル1を切断すると、油路15に充填されている油が外に漏れ出してしまう。ここでは、OFケーブル1のOF・CVケーブルテーピング端末処理工法では、切断位置のOFケーブル1のケーブル端部1aから油が漏れ出すことを防止するために行う。
【0039】
次に、図4(b)、(c)に示すように、上述した被覆除去工程の完了直後に、油路15が露出したケーブル端部1a(ケーブル端面1b)の断面を覆うように形成された蓋部材2を用いて金属層12の端部の外周面12aの一部を露出した状態でケーブル端部1aを覆う(蓋部材取付工程)。蓋部材2は、露出した金属層12の外周面12aの全体を覆うようにして外嵌され、装着される。このとき、蓋部材2は、蓋部材2の開口端2bと防食層11の切断端部11aとが軸方向に一致するように設けられる。そして、蓋部材2の装着は、OFケーブル1の切断後、なるべく早いタイミングで行うことが好ましい。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、金属層12の端部と蓋部材2の側面2aとに接着ボンド31を用いて接着層3を形成する(接着層形成工程)。接着ボンド31は、蓋部材2の側面2aと金属層12の外周面12aとにわたる領域を覆う面積で塗布される。すなわち、金属層12と防食層11の切断端部11aとの境界部分は、全周にわたって接着ボンド31が塗布された状態となる。接着ボンド31は、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であるので、塗布した領域において接着ボンド31が硬化して後述するシリコンテープ41と防食層11および蓋部材2の側面2aとの間で隙間なく封止することができ、OFケーブル1の油路15内の油が境界部分より漏れ出すことを防止できる。
【0041】
次に、図5(a)に示すように、接着層形成工程の後、接着層3の上層側を、自己融着性を有するシリコンテープ41を用いて覆い、金属層12の端部と蓋部材2とを被覆して油漏出防止層4を形成する(油漏出防止層形成工程)。具体的には、シリコンテープ41を蓋部材2の側面2aから防食層11にわたって上層側から覆って包み込むようにして巻き付ける。シリコンテープ41は、蓋部材2および防食層11に対して接着層3を介して液密に密着した状態になる。
【0042】
また、図5(a)に示すように、油漏出防止層形成工程において、油漏出防止層4を形成した後、油漏出防止層4の両端部4a、4bにおいて油漏出防止層4の径方向に拘束するめっき線5を取り付ける。これにより、油漏出防止層4と金属層12との間を密着させると共に、油漏出防止層4と蓋部材2との間を密着させる(拘束部材取付工程)。めっき線5は、油漏出防止層4の両端部4a、4bに設けられ、それぞれの箇所においてOFケーブル1の周方向に少なくとも1周以上巻き付けるようにする。
【0043】
次に、図5(b)に示すように、シリコンテープ41による油漏出防止層4の上層側を、硬化性を有するキャスティングテープ6を用いて覆いケーブル端部1aを補強する(ケーブル端部補強工程)。具体的には、キャスティングテープ6を油漏出防止層4の上層側から覆って包み込むようにして巻き付ける。キャスティングテープ6は、シリコンテープ41に液密に密着した状態で設けられる。
次に、図5(b)に示すように、防食テープ7をキャスティングテープ6の全体を上層側から覆って包み込むようにして巻き付ける。これにより、防食テープ7の防食性によってキャスティングテープ6で補強された部分が防食される。
【0044】
次に、OF・CVケーブルテーピング端末処理工法の作用について、図1図5に基づいて詳細に説明する。
本実施形態によるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法は、油路15を有するOFケーブル1のケーブル端部1aに施工される。OF・CVケーブルテーピング端末処理工法は、ケーブル端部1aにおいてOFケーブル1の防食層11を除去し、防食層11の下層に設けられた金属層12の端部を露出させる金属層端部露出工程と、油路15が露出したケーブル端部1aの断面を覆うように形成された蓋部材2を用いて金属層12の端部の側面の一部を露出した状態でケーブル端部1aを覆う蓋部材取付工程と、金属層12の側面と蓋部材2の側面2aとに接着ボンド31を用いて接着層3を形成する接着層形成工程と、接着層3の上層側を、シリコンテープ41を用いて覆い、金属層12の端部と蓋部材2とを被覆する油漏出防止層4を形成する油漏出防止層形成工程と、を備える。
【0045】
本実施形態によるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法によれば、切断したケーブル端部1aの金属層12に蓋部材2を取り付け、蓋部材2とケーブル端部1aを上層側を接着ボンド31からなる接着層3を介してシリコンテープ41で覆って油漏出防止層4を形成するという簡単な作業により、ケーブル端部1aの油路15を封止し、油の漏出を防止したケーブル端末処理を短時間で効率よく行うことができる。
【0046】
また、本実施形態では、接着ボンド31の硬化による接着層3を形成する方法となるので、必要な資機材を最低限にすることができ、接着ボンド31の効果時間を任意に設定することが可能となるので、硬化時間の早い接着ボンド31を採用することで、迅速に作業を行える。さらに、本実施形態では、大きな作業スペースが必要なく、狭い場所でも作業を行えるという利点がある。
【0047】
また、本実施形態では、従来のように鉛を溶かすためにバーナーを使用する鉛工処理をともなうケーブルの終端処理作業と比較して、鉛を使用しないため、特殊な技術が不要となり、高度な施工技術を有する作業者を確保する必要がなく、作業効率の向上を図ることができ、コストを低減できる。しかも、鉛工処理を行う場合に比べて、火気の取扱いが不要な端末処理を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、油漏出防止層形成工程において、油漏出防止層4の両端部4a、4bにおいて油漏出防止層4の径方向に拘束するめっき線5を取り付け、油漏出防止層4と金属層12との間を密着させると共に、油漏出防止層4と蓋部材2との間を密着させる拘束部材取付工程を備える。
そのため、油漏出防止層4が取り付けられためっき線5によって径方向に拘束された状態となる。これにより、油漏出防止層4と金属層12との間、および油漏出防止層4と蓋部材2との間をそれぞれ密着させることができ、油漏出防止層4による油漏出防止効果をより向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、油漏出防止層4の上層側を、キャスティングテープ6を用いて覆いケーブル端部1aを補強するケーブル端部補強工程を備える。
そのため、油の漏出を防止する機能をもつ油漏出防止層4の全体をキャスティングテープ6によって上層側から覆って包み込むようにして設けることで、キャスティングテープ6で覆ったケーブル端部1aを補強することができる。そのため、油漏出防止層4がキャスティングテープ6によって保護された状態となり、油漏出防止層4が破損する等、その機能が低下することを抑制でき、長期にわたって油漏出防止層4を維持することができる。
【0050】
また、本実施形態では、シリコンテープ41が自己融着性を有するテープ部材である。
そのため、接着層3を覆うようにして自己融着性を有するテープ部材を巻くことで、シリコンテープ41による気密性を常に維持することができる。
【0051】
また、本実施形態では、キャスティングテープ6が硬化性を有するテープ部材である。
そのため、油漏出防止層4を覆うようにして硬化性を有するテープ部材を巻くことで、取り付け作業を容易に行うことができ、全体にわたって気密性も常に維持することができる。
【0052】
また、本実施形態では、接着ボンド31は、硬化性を有し油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能であるため、蓋部材2の側面2aおよび金属層12に塗布された接着ボンド31が硬化してケーブル端面1bをより確実に封止することができる。
【0053】
上述のように構成された本実施形態によるOF・CVケーブルテーピング端末処理工法では、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく端末処理作業を行うことができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0055】
例えば、上記実施形態では、シリコンテープ41による油漏出防止層4を取り付けた後にその上層側からキャスティングテープ6および防食テープ7を巻き付ける施工をしているが、これらキャスティングテープ6および防食テープ7のいずれか一方、あるいは両方を省略することも可能である。
【0056】
また、本実施形態では、油漏出防止層4の両端部4a、4bにめっき線5を設ける構成としているが、油漏出防止層4を径方向に拘束できる部材であればよく、めっき線5であることに限定されることはない。また、油漏出防止層4における拘束部材の位置も両端部4a、4bであることに制限されず、また拘束部材の取り付け数も2箇所であることに限定されない。さらに、拘束部材は、省略することも可能である。
【0057】
さらに、例えばガムテープのような接着層3および油漏出防止層4が一体になったものを採用することも可能である。この場合には、接着層3を形成する手間、作業を省略できるので、より作業効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 OFケーブル
1a ケーブル端部
1b ケーブル端面
2 蓋部材
2a 側面
2b 開口端
3 接着層
4 油漏出防止層
4a、4b 端部
5 めっき線(拘束部材)
6 キャスティングテープ(第2被覆部材)
7 防食テープ
11 防食層(被覆)
12 金属層(遮蔽)
12a 外周面
13 絶縁層
14 芯線(導体)
15 油路
31 接着ボンド(薬剤)
41 シリコンテープ(第1被覆部材)
図1
図2
図3
図4
図5