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  • 特開-OFケーブル漏油箇所補修工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080941
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】OFケーブル漏油箇所補修工法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/16 20060101AFI20240610BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20240610BHJP
   H02G 15/20 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H02G1/16
H02G1/06
H02G15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194310
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】三留 豊
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直樹
【テーマコード(参考)】
5G352
5G355
【Fターム(参考)】
5G352CD01
5G352CH07
5G355AA02
5G355BA06
5G355CA14
5G355CA35
(57)【要約】
【課題】火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく処理作業を行うことができ、さらに処理作業後に長期的に維持することができる。
【解決手段】油漏洩箇所Pの大きさに比して大きい面積を有する金属層11と同素材の金属板3の一面側と油漏洩箇所Pのうち少なくとも一方側に硬化性を有する第1接着ボンド2を塗布する第1薬剤塗布工程と、金属板3の一面側を金属層11の油漏洩箇所Pに貼り付け第1接着ボンド2を硬化させ金属板3と金属層11の表面との間に液密性を生じさせる金属被覆形成工程と、を備えるOFケーブル漏油箇所補修工法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油路を有するケーブルの金属層における油漏洩箇所に施工されるOFケーブル漏油箇所補修工法であって、
前記油漏洩箇所の大きさに比して大きい面積を有する前記金属層と同素材の金属板の一面側と前記油漏洩箇所のうち少なくとも一方側に硬化性を有する第1薬剤を塗布する第1薬剤塗布工程と、
前記金属板の一面側を前記金属層の前記油漏洩箇所に貼り付け前記第1薬剤を硬化させ前記金属板と前記金属層の表面との間に液密性を生じさせる金属被覆形成工程と、を備える、
OFケーブル漏油箇所補修工法。
【請求項2】
前記金属板の他面側と前記金属層の表面とに第2薬剤を塗布する第2薬剤塗布工程と、
第2薬剤の上層側から前記金属板と前記金属層とを被覆部材により覆い被覆層を形成する被覆層形成工程と、を備える、
請求項1に記載のOFケーブル漏油箇所補修工法。
【請求項3】
前記油漏洩箇所を含む前記金属層の所定領域をハンマーで殴打して油の漏洩量を低減する漏洩低減工程を備える、
請求項1に記載のOFケーブル漏油箇所補修工法。
【請求項4】
前記金属被覆形成工程は、前記第1薬剤の硬化開始後、所定時間待機し前記第1薬剤の粘度が上昇したタイミングで前記金属板を密着させ、密着後の前記第1薬剤の硬化時間を短縮すると共に、前記油漏洩箇所から漏出する油の油路形成を防止する油路形成防止工程を備える、
請求項1に記載のOFケーブル漏油箇所補修工法。
【請求項5】
前記金属層及び前記金属板は、鉛により形成されている、
請求項1に記載のOFケーブル漏油箇所補修工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFケーブル漏油箇所補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油路を有するOF(Oil-Filled)ケーブルでは、絶縁用の油を所定の圧力で内部に注入、充填することで、絶縁性を担保したケーブルである。OFケーブルでは、油圧を保持している金属被覆が経年劣化によって損傷したり、工事の際に誤って損傷したりすることに伴って漏油が発生する場合がある。このような場合、漏油箇所を含めて所定長さだけOFケーブルを切断して、張り替える必要があるが、張り替えには多大な時間と労力とを要するため、張り替え(本補修)に先だって漏油量を極力抑えるために、初期対応として漏油箇所を補修(仮油止め処理)する必要がある。
【0003】
このようなケーブルの補修として、OFケーブルの外周の被覆の亀裂部の外周上にゴムやプラスチックテープを高張力で巻き回して仮止め層を設け、そのさらに上にガラス繊維テープの巻回層とエポキシ樹脂層とを積層して、油止め層を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、漏油箇所周囲の防食層を剥ぎ取り、漏油箇所を囲むように台座を設け、この台座を跨って銅管を装着して、銅管と台座とを鉛工によって接合する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02-037530号公報
【特許文献2】特開2000-341820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に示すような従来のOFケーブルの鉛工作業を伴う端部処理では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、漏油を停止させるように施工するには、ゴム、プラスチックテープ、およびガラス繊維テープを適正な張力を付与する必要があり、しかも2つのテープを重ね合わせながら順次巻かなければならない。このため、施工のためには特殊な技能が必要となるうえ、作業には多くの時間を要すという問題があった。
また、特許文献1に示すような従来の処理方法では、鉛工上に貼り付けた油止めテープにかかる面圧は均等でないことから、例えばめっき線等で補強する必要があるが、防食構造自体が大きくなるおそれがあり、コストが増大するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2においても、銅管と台座とを鉛工によって接合する作業となることから、鉛工の特殊な技能が必要であり、しかも、その作業には多大な時間とコストを要し、また、施工現場で火気を扱う必要があるという問題があった。
【0007】
さらに、従来のように、油止めテープ同士を重ね合わせて巻き回す補修方法では、一定期間が経過すると油止めテープが油で膨潤し、損傷しやすくなり、一度、油が漏出すると、漏れ続けることになり、長期的な維持が困難であり、その点で改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく処理作業を行うことができるOFケーブル漏油箇所補修工法を提供することである。
また、本発明のOFケーブル漏油箇所補修工法の他の目的は、処理作業後に長期的に維持できるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るOFケーブル漏油箇所補修工法の態様1は、油路を有するケーブルの金属層における油漏洩箇所に施工されるOFケーブル漏油箇所補修工法であって、前記油漏洩箇所の大きさに比して大きい面積を有する前記金属層と同素材の金属板の一面側と前記油漏洩箇所のうち少なくとも一方側に硬化性を有する第1薬剤を塗布する第1薬剤塗布工程と、前記金属板の一面側を前記金属層の前記油漏洩箇所に貼り付け前記第1薬剤を硬化させ前記金属板と前記金属層の表面との間に液密性を生じさせる金属被覆形成工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るOFケーブル漏油箇所補修工法によれば、ケーブルの金属層における油漏洩箇所より大きな範囲に第1薬剤を介して金属層と同素材の金属板を貼り付けるだけの簡単な作業により、金属板と金属層とを第1薬剤の硬化に伴い密着させることができ、油の通路が形成されにくい構造となる。これによりケーブルの油漏洩箇所を封止し、油の漏出を防止したケーブル補修処理を安価な材料を使用して、短時間で効率よく行うことができる。
また、本発明によれば、第1薬剤の硬化による密着層を形成する方法となるので、必要な資機材を最低限にすることができ、第1薬剤の効果時間を任意に設定することが可能となる。そのため、硬化時間の早い第1薬剤を採用することで、金属層と金属板との間に油の通路が形成される前に第1薬剤が硬化して漏油を防止でき、さらに迅速に作業を行える。さらに、上述したように第1薬剤を硬化させることで金属板を金属層に貼り付けるため、耐剥離性に優れ、従来のような漏止めテープのみの防食方法よりも長期的かつ安定的に維持することができる。
【0011】
また、本発明によれば、従来のように鉛を溶かすためにバーナーを使用する鉛工処理をともなう補修作業と比較して、鉛を使用しないため、特殊な技術が不要となり、高度な施工技術を有する作業者を確保する必要がなく、作業効率の向上を図ることができ、コストを低減できる。しかも、鉛工処理を行う場合に比べて、火気の取扱いが不要な端末処理を行うことができる。
【0012】
さらに、本発明のOFケーブル漏油箇所補修工法によれば、金属板が油漏洩箇所に硬化した第1薬剤とともに貼り付けられる処理構造となるので、従来のような複数の漏止めテープを巻き付ける処理に比べて、高い靭性を確保できる。すなわち、油路の油からの内圧や外部からの外圧等に耐え得る高靭性で強固な処理構造が得られ、長期的かつ安定的に維持することができる。
さらにまた、本発明では、第1薬剤が多少の油があっても金属板と金属層との間に隙間無く充填されて硬化することになる。
【0013】
(2)本発明の態様2は、態様1のOFケーブル漏油箇所補修工法において、前記金属板の他面側と前記金属層の表面とに第2薬剤を塗布する第2薬剤塗布工程と、第2薬剤の上層側から前記金属板と前記金属層とを被覆部材により覆い被覆層を形成する被覆層形成工程と、を備えることが好ましい。
【0014】
この場合には、金属板の上層側にも第2薬剤が塗布されるので、硬化した第2薬剤によって金属層の強度をさらに大きくさせることができ、より外傷に強い構造となる。しかも、第2薬剤を介して金属板を覆うようにして被覆部材が設けられているので、さらに漏油が生じにくくなる利点がある。
【0015】
(3)本発明の態様3は、態様1のOFケーブル漏油箇所補修工法において、前記油漏洩箇所を含む前記金属層の所定領域をハンマーで殴打して油の漏洩量を低減する漏洩低減工程を備えることが好ましい。
【0016】
この場合には、ハンマーによるコーキング処理を行って油漏洩部分を小さく塞いでから、第1薬剤を塗布して金属板を貼り付けることで、油漏洩箇所で漏油量が多い場合であっても、上記効果を発揮できるケーブル処理構造を設けることができる。
【0017】
(4)本発明の態様4は、態様1のOFケーブル漏油箇所補修工法において、前記金属被覆形成工程は、前記第1薬剤の硬化開始後、所定時間待機し前記第1薬剤の粘度が上昇したタイミングで前記金属板を密着させ、密着後の前記第1薬剤の硬化時間を短縮すると共に、前記油漏洩箇所から漏出する油の油路形成を防止する油路形成防止工程を備えることを特徴としてもよい。
【0018】
この場合には、第1薬剤の粘度が上昇したときに金属板が金属層に貼り付けられるので、貼り付けた後に金属板と金属層との間に油の通路が形成されにくく、金属板の密着性を向上させることができる。
【0019】
(5)本発明の態様5は、態様1のOFケーブル漏油箇所補修工法において、前記金属層及び前記金属板は、鉛により形成されていることを特徴としてもよい。
【0020】
この場合には、鉛板同士を密着させることで油の通路がより形成しにくい処理を行うことできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るOFケーブル漏油箇所補修工法によれば、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく処理作業を行うことができる。
また、本発明に係るOFケーブル漏油箇所補修工法によれば、処理作業後に長期的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるOFケーブルの処理構造を示す側断面図である。
図2】(a)~(c)は、OFケーブル漏油箇所補修工法による作業手順を示す図である。
図3】(a)、(b)は、図2(c)に続く作業手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るOFケーブル漏油箇所補修工法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のOFケーブル漏油箇所補修工法は、内部に油が注入された油路を有するOFケーブル1の外周に配置される金属層11における油漏洩箇所Pを閉塞処理する補修工法である。すなわち、OFケーブル漏油箇所補修工法は、油漏洩箇所Pに対してケーブル処理構造10を施すことにより補修する。油漏洩箇所Pは、OFケーブル1の接続部におけるメタ鉛板からなる鉛工処理部(金属層11)に生じたピンホールである。
【0025】
ここで、本実施形態によるOFケーブル漏油箇所補修工法は、恒久的な対策である本補修に先だつ最初期の対応として行う仮補修を適用対象としているが、漏油状態やOFケーブル1の使用年数、設置環境などによっては、本補修として適用されるOFケーブル漏油箇所補修工法であってもよい。
【0026】
ケーブル処理構造10は、金属層11に対して金属板3が貼り付けられた構造である。ケーブル処理構造10は、OFケーブル1の油漏洩箇所Pを含む表面(金属層11の外周面11a)に塗布される第1接着ボンド2(第1薬剤)と、第1接着ボンド2を介して金属層11の外周面11aに接着により貼り付けられる金属板3と、金属板3の外面3a(他面側)と金属層11の外周面11aに塗布される第2接着ボンド4(第2薬剤)と、第2接着ボンド4の上層側から金属板3と金属層11とをキャスティングテープ51(被覆部材)で覆って形成された被覆層5と、を備えている。
【0027】
第1接着ボンド2は、油漏洩箇所Pを覆うように、その油漏洩箇所Pより大きな面積で塗布される。すなわち、第1接着ボンド2の塗布領域は、金属板3の貼り付け領域に相当する。第1接着ボンド2としては、硬化性を有し、例えば、変性アクリルを主成分とし、高強度かつ加熱不要な常温速硬化型の接着剤メタルロック(セメダイン社製)におけるY618Hタイプを採用できる。Y618Hタイプの接着ボンドは、同社製のY610タイプに比べて金属に対して更なる接合強度を有する。Y618Hタイプを使用する場合には、金属板3の面圧等に関係なく油止めの機能を発揮できる。また、Y618Hタイプの場合には、引火性のある溶剤を含まず、粗い混合であっても硬化し、温度0℃から硬化可能であり、さらに多少の油面状態であっても接着強度が得られる特性をもつ。また、硬化時間は、例えば2分30秒~10分0秒程度で迅速に硬化するものが好ましい。さらに、常温5~25℃で長期保管が可能であり、従来のアクリル接着剤のような悪臭が発せられることもない。また、金属とCFRPなど異種材料の接合にも採用できる。
【0028】
金属板3は、金属層11と同素材の例えば鉛より形成されている。金属板3は、油漏洩箇所Pの大きさに比べて大きい面積を有する。そのため、金属板3の平面形状は、例えば矩形状に設定できるが、とくに限定されることはない。金属板3の厚みは、例えば、0.3~1.0mm程度である。
【0029】
金属板3は、第1接着ボンド2によって金属層11の外周面11aに対して接着され、第1接着ボンド2が硬化することで金属層11の外周面11aとの間に液密性が生じた状態になっている。
金属板3を金属層11の外周面11aに貼り付けるタイミングとしては、第1接着ボンド2の硬化開始後、所定時間待機し、第1接着ボンド2の粘度が例えば23℃において15000mPa・sまで上昇したタイミングで金属板3を密着させることが好ましい。
【0030】
第2接着ボンド4は、金属板3の外面3aの全体にわたる領域と、金属層11の外周面11aのうち金属板3を含み、金属板3の周囲の所定領域まで塗布される。第2接着ボンド4としては、硬化性を有する。具体的には、第1接着ボンド2と同様の材料のものを使用できる。
【0031】
キャスティングテープ51は、塗布した第2接着ボンド4の全域にわたって巻き付けられている。これにより、キャスティングテープ51は、金属板3の外面3aの全体にわたる領域と、金属層11の外周面11aのうち金属板3を含み、金属板3の周囲の所定領域を被覆した被覆層5を形成している。キャスティングテープ51による被覆面積は、金属板3の大きさに比べて大きい面積を有している。被覆層5の一方の面(内周面5a)は、第2接着ボンド4が塗布された状態となる。
【0032】
次に、油路を有するOFケーブル1の金属層11における油漏洩箇所Pに施工されるOFケーブル漏油箇所補修工法の補修手順について、図2(a)~(c)及び図3(a)、(b)を用いて詳細に説明する。
【0033】
図1及び図2(a)に示すように、OFケーブル1の金属層11には油漏洩箇所Pが生じている。
先ず、油漏洩箇所Pを含む金属層11の所定領域をハンマーで殴打して油の漏洩量を低減する(漏洩低減工程)。すなわち、ハンマーを使用してコーキング処理を行うことで、油漏洩箇所Pの油漏洩部分の穴や亀裂を小さく塞ぐ処理を行っておく。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、油漏洩箇所Pの大きさに比して大きい面積を有する金属層11と同素材の金属板3の一面側と油漏洩箇所Pのうち少なくとも一方側に硬化性を有する第1接着ボンド2を塗布する(第1薬剤塗布工程)。第1接着ボンド2は、油分が含まれた塗布面に塗布された状態において硬化可能である。
【0035】
次に、図2(c)に示すように、金属板3の内面3b側を金属層11の油漏洩箇所Pに貼り付け、第1接着ボンド2を硬化させ、金属板3と金属層11の外周面11aとの間に液密性を生じさせて金属被膜を形成する(金属被覆形成工程)。金属被覆形成工程は、第1接着ボンド2の硬化開始後、所定時間待機し、第1接着ボンド2の粘度が上昇したタイミングで金属板3を密着させるようにする(油路形成防止工程)。このように油路形成防止工程を行うことにより、金属板3が密着した後の第1接着ボンド2の硬化時間を短縮することができ、油漏洩箇所Pから漏出する油の油路形成を防止することができる。すなわち、第1接着ボンド2を塗布した領域において第1接着ボンド2が硬化して金属板3と金属層11との間で隙間なく封止することができ、OFケーブル1の油路内の油が油漏洩箇所Pから漏れ出すことを防止できる。
【0036】
次に、図3(a)に示すように、金属板3の外面3a側と金属層11の外周面11aとに第2接着ボンド4を塗布する(第2薬剤塗布工程)。第2接着ボンド4は、油分が含まれた塗布面に塗布された状態においても硬化可能である。第2接着ボンド4は、図3(a)において金属層11に塗布される第2接着ボンド4は、金属板3の周囲の全域にわたる範囲である。
【0037】
次に、図3(b)に示すように、第2接着ボンド4の上層側から金属板3と金属層11とをキャスティングテープ51により覆い被覆層5を形成する(被覆層形成工程)。具体的には、キャスティングテープ51を第2接着ボンド4の上層側から覆って包み込むようにして巻き付ける。キャスティングテープ51は、第2接着ボンド4に液密に密着した状態で設けられる。
【0038】
なお、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等の不図示の防食テープを被覆層5の全体を上層側から覆って包み込むようにして巻き付けるようにしてもよい。これにより、防食テープの防食性によってキャスティングテープ51で補強された部分が防食される。このように、防食テープをキャスティングテープ51の上層側に巻き付けることにより、防食効果に加え、キャスティングテープ51の膨らみを防止することができる。
【0039】
次に、OFケーブル漏油箇所補修工法の作用について、図1図3に基づいて詳細に説明する。
本実施形態によるOFケーブル漏油箇所補修工法は、油路を有するケーブルの金属層11における油漏洩箇所Pに施工される。OFケーブル漏油箇所補修工法は、油漏洩箇所Pの大きさに比して大きい面積を有する金属層11と同素材の金属板3の一面側と油漏洩箇所Pのうち少なくとも一方側に硬化性を有する第1接着ボンド2を塗布する第1薬剤塗布工程と、金属板3の一面側を金属層11の油漏洩箇所Pに貼り付け第1接着ボンド2を硬化させ金属板3と金属層11の表面との間に液密性を生じさせる金属被覆形成工程と、を備える。
【0040】
本実施形態によるOFケーブル漏油箇所補修工法によれば、ケーブルの金属層11における油漏洩箇所Pより大きな範囲に第1接着ボンド2を介して金属層11と同素材の金属板3を貼り付けるだけの簡単な作業により、金属板3と金属層11とを第1接着ボンド2の硬化に伴い密着させることができ、油の通路が形成されにくい構造となる。これによりケーブルの油漏洩箇所Pを封止し、油の漏出を防止したケーブル補修処理を安価な材料を使用して、短時間で効率よく行うことができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、第1接着ボンド2の硬化による密着層を形成する方法となるので、必要な資機材を最低限にすることができ、第1接着ボンド2の効果時間を任意に設定することが可能となる。そのため、硬化時間の早い第1接着ボンド2を採用することで、金属層11と金属板3との間に油の通路が形成される前に第1接着ボンド2が硬化して漏油を防止でき、さらに迅速に作業を行える。さらに、上述したように第1接着ボンド2を硬化させることで金属板3を金属層11に貼り付けるため、耐剥離性に優れ、従来のような漏止めテープのみの防食方法よりも長期的かつ安定的に維持することができる。
【0042】
また、本実施形態では、従来のように鉛を溶かすためにバーナーを使用する鉛工処理をともなう補修作業と比較して、鉛を使用しないため、特殊な技術が不要となり、高度な施工技術を有する作業者を確保する必要がなく、作業効率の向上を図ることができ、コストを低減できる。しかも、鉛工処理を行う場合に比べて、火気の取扱いが不要な端末処理を行うことができる。
【0043】
さらに、本実施形態のOFケーブル漏油箇所補修工法によれば、金属板3が油漏洩箇所Pに硬化した第1接着ボンド2とともに貼り付けられる処理構造となるので、従来のような複数の漏止めテープを巻き付ける処理に比べて、高い靭性を確保できる。すなわち、油路の油からの内圧や外部からの外圧等に耐え得る高靭性で強固な処理構造が得られ、長期的かつ安定的に維持することができる。
さらにまた、本実施形態では、第1接着ボンド2が多少の油があっても金属板3と金属層11との間に隙間無く充填されて硬化することになる。
【0044】
また、本実施形態では、金属板3の他面側と金属層11の外周面11aとに第2接着ボンド4を塗布する第2薬剤塗布工程と、第2接着ボンド4の上層側から金属板3と金属層11とをキャスティングテープにより覆い被覆層5を形成する被覆層形成工程と、を備える。
【0045】
そのため、金属板3の上層側にも第2接着ボンド4が塗布されるので、硬化した第2接着ボンド4によって金属層11の強度をさらに大きくさせることができ、より外傷に強い構造となる。しかも、第2接着ボンド4を介して金属板3を覆うようにしてキャスティングテープが設けられているので、さらに漏油が生じにくくなる利点がある。
【0046】
また、本実施形態では、油漏洩箇所Pを含む金属層11の所定領域をハンマーで殴打して油の漏洩量を低減する漏洩低減工程を備える。
そのため、ハンマーによるコーキング処理を行って油漏洩部分を小さく塞いでから、第1接着ボンド2を塗布して金属板3を貼り付けることで、油漏洩箇所Pで漏油量が多い場合であっても、上記効果を発揮できるケーブル処理構造を設けることができる。
【0047】
また、本実施形態では、金属被覆形成工程は、第1接着ボンド2の硬化開始後、所定時間待機し薬剤の粘度が上昇したタイミングで金属板3を密着させ、密着後の第1接着ボンド2の硬化時間を短縮すると共に、油漏洩箇所Pから漏出する油の油路形成を防止する油路形成防止工程を備える。
そのため、第1接着ボンド2の粘度が上昇したときに金属板3が金属層11に貼り付けられるので、貼り付けた後に金属板3と金属層11との間に油の通路が形成されにくく、金属板3の密着性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、金属層11及び金属板3は、鉛により形成されているので、鉛板同士を密着させることで油の通路がより形成しにくい処理を行うことできる。
【0049】
上述のように構成された本実施形態によるOFケーブル漏油箇所補修工法では、火気を使用することなく、かつ特殊な技能が必要なく、作業に掛かる手間やコストを低減でき、短時間で効率よく処理作業を行うことができる。
また、本実施形態によるOFケーブル漏油箇所補修工法では、処理作業後に長期的に維持することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0051】
例えば、上記実施形態では、金属板3を取り付けた後にその上層側からキャスティングテープ51を第2接着ボンド4を介して巻き付けて被覆層5を施工をしているが、これらキャスティングテープ51および第2接着ボンド4を省略することも可能である。
【0052】
また、本実施形態では、油漏洩箇所Pを含む金属層11の所定領域をハンマーで殴打して油の漏洩量を低減する漏洩低減工程を備えているが、漏洩低減工程は必要に応じて行えばよく、省略することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 OFケーブル
2 第1接着ボンド(第1薬剤)
3 金属板
4 第2接着ボンド(第2薬剤)
5 被覆層
51 キャスティングテープ(被覆部材)
10 ケーブル処理構造
11 金属層
11a 外周面
P 油漏洩箇所
図1
図2
図3