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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080942
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194312
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】垣内 加奈
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161DD20
5H161FF01
5H161FF07
5H161GG03
5H161GG04
5H161GG16
5H161GG23
5H161GG24
(57)【要約】
【課題】列車の各車両や駅構内の各乗車口の混雑の緩和に役立つ監視システムを提供する。
【解決手段】列車内の各車両に設けられ、その車両内を撮影する車内カメラ121~125と、駅構内に設けられ、各乗車口に対応する乗車待機エリアを撮影する構内カメラ231~234と、車内カメラにより撮影された画像と列車内のレイアウト情報に基づく車両毎の混雑度の判定、および、構内カメラにより撮影された画像と駅構内のレイアウト情報に基づく乗車口毎の混雑度の判定を行う混雑度判定部530と、混雑度判定部により判定された車両毎の混雑度および乗車口毎の混雑度に基づいて、列車の利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定する推奨車両・乗車口選定部540と、駅構内に設けられ、推奨車両・乗車口選定部により選定された車両または乗車口を通知するモニタやスピーカとを備える。
【選択図】図15

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車内の各車両に設けられ、前記車両内を撮影する車内カメラと、
駅構内に設けられ、各乗車口に対応する乗車待機エリアを撮影する構内カメラと、
前記車内カメラにより撮影された画像と前記列車内のレイアウト情報に基づく車両毎の混雑度の判定、および、前記構内カメラにより撮影された画像と前記駅構内のレイアウト情報に基づく乗車口毎の混雑度の判定を行う混雑度判定部と、
前記混雑度判定部により判定された車両毎の混雑度および乗車口毎の混雑度に基づいて、列車の利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定する選定部と、
前記駅構内に設けられ、前記選定部により選定された車両または乗車口を通知する通知装置とを備えたことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記列車内のレイアウト情報は、列車の車両毎の優先席または車いす・ベビーカーエリアの配置情報を含み、
前記混雑度判定部は、前記車内カメラにより撮影された画像と前記列車内のレイアウト情報に基づいて、車両毎の優先席または車いす・ベビーカーエリアの混雑度を更に判定し、
前記選定部は、前記混雑度判定部により判定された車両毎の優先席または車いす・ベビーカーエリアの混雑度を考慮して、優先席または車いす・ベビーカーエリアの利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定することを特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の監視システムにおいて、
前記混雑度判定部は、複数の優先席または車いす・ベビーカーエリアが対面する配置で存在する車両について、その車両内の優先席または車いす・ベビーカーエリアの総合的な混雑度を判定し、複数の優先席または車いす・ベビーカーエリアが対面しない配置で存在する車両について、前記車両内の優先席または車いす・ベビーカーエリアの個別の混雑度を判定することを特徴とする監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記選定部は、駅毎のエレベーターの配置情報を考慮して、次の駅でエレベーターの利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定することを特徴とする監視システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の監視システムにおいて、
前記通知装置は、前記選定部により選定された車両または乗車口の情報を、駅のプラットホームまたは駅の改札外に向けて表示出力するモニタであることを特徴とする監視システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の監視システムにおいて、
前記通知装置は、前記選定部により選定された車両または乗車口の情報を、駅のプラットホームまたは駅の改札外に向けて音声出力を行うスピーカであることを特徴とする監視システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内や駅構内をカメラの映像により監視する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駅の利用者(つまり、列車の乗客)は、一般に、混雑を避けて列車に乗車することを望んでいる。このため、利用者は、乗車しようとする車両の混雑情報を、携帯端末上で動作するアプリケーションにより判断したり、各乗車口の混雑状況を目視で確認して判断したり、あるいは両方を行って総合的に判断した上で、所望の車両の乗車口に並んでいた。
【0003】
本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、複数の監視カメラの映像データを基に車両内に存在する人物を検出し、その人物が車両をどれくらい占める割合で検出されたかにより乗車率Aを判定すること、複数の監視カメラの映像データを基に乗降車する人数を計測し、最大乗車可能人数に対する現在乗車している人数により乗車率Bを判定すること、および、これら2通りの方法で算出された各乗車率の平均値を取る等して精度の高い乗車率を判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5988472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯端末のアプリケーションは、高齢者や子供、身体障がいを持つ者などにとって、取り扱いが難しいという側面がある。また、優先席や車いす・ベビーカーエリアを必要とする者にとっては、従来技術で提供される車両の混雑情報は、必ずしも優先席や車いす・ベビーカーエリアの実際の利用状況に一致するとは限らない。また、駅プラットホーム(以下「駅ホーム」という)の乗車口の混雑状況の目視確認も、列車の車両数が多い場合は駅ホームを長い距離移動する必要があり、現実的ではない。そして、混雑情報を十分に得られない者は、乗降する駅ホームのエレベーターや階段が近い乗車口を選ぶ傾向にある。その結果、特定の車両や乗車口が混雑しやすい事態となっていた。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、列車の各車両や駅構内の各乗車口の混雑の緩和に役立つ監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る監視システムは、以下のように構成される。すなわち、本発明に係る監視システムは、列車内の各車両に設けられ、その車両内を撮影する車内カメラと、駅構内に設けられ、各乗車口に対応する乗車待機エリアを撮影する構内カメラと、車内カメラにより撮影された画像と列車内のレイアウト情報に基づく車両毎の混雑度の判定、および、構内カメラにより撮影された画像と駅構内のレイアウト情報に基づく乗車口毎の混雑度の判定を行う混雑度判定部と、混雑度判定部により判定された車両毎の混雑度および乗車口毎の混雑度に基づいて、列車の利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定する選定部と、駅構内に設けられ、選定部により選定された車両または乗車口を通知する通知装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、上記の監視システムにおいて、列車内のレイアウト情報は、列車の車両毎の優先席または車いす・ベビーカーエリアの配置情報を含み、混雑度判定部は、車内カメラにより撮影された画像と列車内のレイアウト情報に基づいて、車両毎の優先席または車いす・ベビーカーエリアの混雑度を更に判定し、選定部は、混雑度判定部により判定された車両毎の優先席または車いす・ベビーカーエリアの混雑度を考慮して、優先席または車いす・ベビーカーエリアの利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定し得る。
【0009】
また、混雑度判定部は、複数の優先席または車いす・ベビーカーエリアが対面する配置で存在する車両について、その車両内の優先席または車いす・ベビーカーエリアの総合的な混雑度を判定し、複数の優先席または車いす・ベビーカーエリアが対面しない配置で存在する車両について、その車両内の優先席または車いす・ベビーカーエリアの個別の混雑度を判定し得る。
【0010】
また、選定部は、駅毎のエレベーターの配置情報を考慮して、次の駅でエレベーターの利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定し得る。
【0011】
また、通知装置は、選定部により選定された車両または乗車口の情報を、駅のプラットホームまたは駅の改札外に向けて表示出力するモニタであり得る。
【0012】
また、通知装置は、選定部により選定された車両または乗車口の情報を、駅のプラットホームまたは駅の改札外に向けて音声出力を行うスピーカであり得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、列車の各車両や駅構内の各乗車口の混雑の緩和に役立つ監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る監視システムにおける列車内システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る監視システムにおける駅構内システムの構成例を示す図である。
図3】列車内システムによる監視の運用形態を示す図である。
図4】駅構内システムによる監視の運用形態を示す図である。
図5】車両内の混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示す図である。
図6】車両内の優先席の混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示す図である。
図7】車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示す図である。
図8】駅ホームの乗車口付近の混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示す図である。
図9】車両内の混雑度判定に関するフローチャートの例を示す図である。
図10A】車両内の総合的な混雑度判定に関するフローチャートの例を示す図である。
図10B】車両内の優先席の混雑度判定に関するフローチャートの例を示す図である。
図10C】車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度判定に関するフローチャートの例を示す図である。
図11】駅ホームの乗車口の混雑度判定に関するフローチャートの例を示す図である。
図12】混雑度のモニタ表示に関するフローチャートの例を示す図である。
図13】混雑度の音声アナウンスに関するフローチャートの例を示す図である。
図14】駅ホームや改札外より見える位置に設置されたモニタによる混雑度の表示例を示す図である。
図15】各駅の管理室に設置された管理サーバの構成例を示す図である。
図16A】一般の利用者に推奨する乗車口の選定例を示す図である。
図16B】優先席の利用者に推奨する乗車口の選定例を示す図である。
図16C】車いす・ベビーカーエリアの利用者に推奨する乗車口の選定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
以下では、本発明の一実施形態に係る監視システムを列車に適用した場合を例にして説明する。本例の監視システムは、列車側に設けられる列車内システムと、駅構内側に設けられる駅構内システムとを有する。
【0016】
図1には、列車側に配備される列車内システムの構成例を示してある。図1に示す例では、列車が4台の車両11~14で編成されている。第1の車両11の車内には、複数(本例では5台)の監視カメラ21~25と、ネットワークスイッチ31と、記録装置32と、表示装置33と、管理装置34と、伝送装置35と、伝送アンテナ36とが備えられている。監視カメラ21~25、記録装置32、表示装置33、管理装置34、伝送装置35、および伝送アンテナ36は、ネットワークスイッチ31に接続されている。また、管理装置34と伝送装置35が接続されており、伝送装置35と伝送アンテナ36が接続されている。
【0017】
第2の車両12~第4の車両14のそれぞれには、管理装置34と伝送装置35と伝送アンテナ36を除き、第1の車両11と同様に、監視カメラ21~25と、ネットワークスイッチ31と、記録装置32と、表示装置33とが備えられている。なお、第2の車両12~第4の車両14の車内の構成部については、図1では参照符号を省略してある。
【0018】
また、隣り合う車両のネットワークスイッチ同士が、互いに接続されている。具体的には、第1の車両11のネットワークスイッチ31と第2の車両12のネットワークスイッチ31が接続され、第2の車両12のネットワークスイッチ31と第3の車両13のネットワークスイッチ31が接続され、第3の車両13のネットワークスイッチ31と第4の車両14のネットワークスイッチ31が接続されている。列車内の各機器の接続は、例えば、有線や無線の回線を介して、又は直接的に行われる。
【0019】
各車両の車内の監視カメラは、車内の混雑度の把握に適した画像を撮影できるような配置及び台数で設置される。本例では、1つの車両につき5台の監視カメラ21~25を設置しているが、それより多くてもよく、あるいはそれより少なくてもよい。列車内システムを構成するその他の機器についても同様に、設置数は限定されず、種々な数の機器が設置されてもよい。
【0020】
図2には、駅構内側に配備される駅構内システムの構成例を示してある。図2では、駅構内41、およびその中にある駅ホーム42や管理室43の概要を示している。駅構内41(ここでは、駅ホーム42や管理室43を除く領域)には、ネットワークスイッチ51と、監視カメラ52と、表示装置53と、スピーカ54とが備えられている。監視カメラ52、表示装置53、およびスピーカ54は、ネットワークスイッチ51に接続されている。
【0021】
駅ホーム42には、列車の各車両に対応させて、ネットワークスイッチ61と、複数(本例では4台)の監視カメラ62~65と、表示装置66と、スピーカ67とが備えられている。監視カメラ62~65、表示装置66、およびスピーカ67は、ネットワークスイッチ61に接続されている。本例では、4台の車両で構成された列車を想定して、これら機器(ネットワークスイッチ61、監視カメラ62~65、表示装置66)が4セット備えられている。また、列車内のネットワークスイッチ31と同様に、隣り合う配置のネットワークスイッチ同士が、互いに接続されている。
【0022】
管理室43には、ネットワークスイッチ71と、記録装置72と、表示装置73と、管理装置74と、伝送装置75と、伝送アンテナ76とが備えられている。記録装置72、表示装置73、管理装置74、伝送装置75、および伝送アンテナ76は、ネットワークスイッチ71に接続されている。また、管理装置74と伝送装置75が接続されており、伝送装置75と伝送アンテナ76が接続されている。
【0023】
駅構内41のネットワークスイッチ51は、駅ホーム42のネットワークスイッチ61(図2では、駅ホームの左端のネットワークスイッチ61)と、管理室71のネットワークスイッチ71とにも接続されている。駅構内の各機器の接続は、例えば、有線や無線の回線を介して、又は直接的に行われる。なお、図2に示した駅構内システムにおいても、図1に示した列車内システムと同様に、各機器の設置数は限定されず、種々な数の機器が設置されてもよい。
【0024】
図1図2に示した監視システムの動作の概要を説明する。
列車内システムでは、各車両に設置された監視カメラ21~25により車内を撮影する。そして、管理装置34による制御の下、撮影により得られた画像又はその処理結果などを、記録装置32に記録し、表示装置33に表示し、及び/又は伝送装置35から伝送アンテナ36を介して駅構内システムに無線送信する。また、管理装置34による制御の下、伝送装置35が伝送アンテナ36を介して駅構内システムから無線受信した画像などを、記録装置32に記録し、及び/又は表示装置33に表示することも可能である。
【0025】
また、駅構内システムでは、駅の各所に設置された監視カメラ52,62~65により駅構内を撮影する。そして、管理装置74による制御の下、撮影により得られた画像又はその処理結果などを、記録装置72に記録し、表示装置53,66,73に表示し、及び/又は伝送装置75から伝送アンテナ77を介して列車内システムに無線送信する。また、管理装置74による制御の下、伝送装置75が伝送アンテナ76を介して列車内システムから無線受信した画像などを、記録装置72に記録し、及び/又は表示装置53,66,73に表示することや、音声アナウンスをスピーカ54,67から出力することも可能である。
【0026】
なお、列車内システムと駅構内システムの間のデータ伝送は、例えば、列車が駅に近づいて無線通信が可能な距離になった状態において、直接的に実施することができる。あるいは、列車の走行中を含む任意のタイミングにおいて、他の無線通信システムを介して、間接的に実施してもよい。
【0027】
[運用形態]
次に、本例の監視システムによる監視について具体的に説明する。
以下では、列車の各車両の監視カメラにより、優先席含む座席、通路、車いす・ベビーカーエリアを監視する運用形態を想定している。また、以下の説明における「前駅」は、直前に列車が発車した駅を表しており、「次駅」は、前駅の次に列車が停車する駅を表している。つまり、前駅と次駅は、互いに隣り合う駅である。図3には、列車側に配備された列車内システムによる監視例を示してある。なお、図3は、前駅を発車した直後の時点における車両内の様子を表している。
【0028】
車両100内に設置された監視カメラ121~125(図1の監視カメラ21~25に対応)は、優先席含む座席、車内通路、車いす・ベビーカーエリアを撮影する。本例では、監視カメラ121~125を車両100のドア110の近傍に配置してある。また、より正確な混雑度判定を実現すべく、映像内における人同士の重なりが少なくなるように、監視カメラ121~125を車内の上方位置(例えば、天井付近)にやや下向きの姿勢で設置してある。
【0029】
図3には、監視カメラ121~125のそれぞれの撮影範囲(視野角)を破線130で示してある。すなわち、監視カメラ121の撮影範囲には、座席141、優先席151、通路161,162が含まれている。監視カメラ122の撮影範囲には、座席142,143、通路163,164が含まれている。監視カメラ123の撮影範囲には、座席144、通路165,166、車いす・ベビーカーエリア171が含まれている。監視カメラ124の撮影範囲には、座席145、優先席152、通路161,162が含まれている。監視カメラ125の撮影範囲には、座席146,147、通路163,164が含まれている。
【0030】
この場合、例えば、優先席152にいる人物181は、監視カメラ124により撮影される。座席145にいる人物182は、監視カメラ124により撮影される。通路163にいる人物183は、監視カメラ122や監視カメラ125により撮影される。車いす・ベビーカーエリア171にいる人物184は、監視カメラ123により撮影される。通路162にいる人物185は、監視カメラ121や監視カメラ124により撮影される。座席141にいる人物186は、監視カメラ121により撮影される。座席143にいる人物187は、監視カメラ122により撮影される。なお、図3に示したカメラ配置は一例に過ぎず、他の配置でも構わない。
【0031】
図4には、駅構内側に配備された駅構内システムによる監視例を示してある。なお、図4は、前駅を列車が発車した直後の時点における次駅の駅ホームの乗車口付近の様子を表している。なお、図中に点線で示す車両100およびドア211~214は、駅ホームに列車が停車した場合の想定位置を仮想的に表したものである。
【0032】
駅ホーム220に設置された監視カメラ231~234(図2の監視カメラ62~65に対応)は、列車の各車両のドア211~214の対応する乗車待機エリア251~244を撮影する。乗車待機エリア251には乗車待ちの人物251が並んでおり、乗車待機エリア252には乗車待ちの人物252が並んでおり、乗車待機エリア253には乗車待ちの人物253が並んでいる。本例では、監視カメラ121~125を、乗車待機エリアに並ぶ待ち行列を横方向から撮影するように配置してある。また、より正確な混雑度判定を実現すべく、映像内における人同士の重なりが少なくなるよう、監視カメラ231~234を駅ホームの上方位置(例えば、天井付近)にやや下向きの姿勢で設置してある。
【0033】
[前駅を列車が発車した直後の処理:列車内の監視]
上記の運用形態で監視を行っている状態で、前駅を発車した列車の車両において、発車直後に監視カメラ121~125により撮影された画像を、次駅の管理室に設置されている管理サーバ(図2の管理装置74)に伝送する。管理サーバは、監視カメラ121~125で撮影された画像を画像処理により分析し、各車両の混雑度を判定する。本例では、車両内の混雑度判定のために管理サーバに供する画像として、列車の発車直後の静止画を用いているが、発車から所定時間の経過後の静止画を用いてもよいし、発車直後(あるいは所定時間の経過後)から一定時間が経過するまでの期間の動画を用いてもよい。
【0034】
[前駅を列車が発車した直後の処理:次駅の駅ホームの監視]
上記の運用形態で監視を行っている状態で、列車到着前の次駅の駅ホームにおいて、乗車口付近を監視する監視カメラ231~234により撮影された画像を、次駅の管理室に設置されている管理サーバに伝送する。管理サーバは、監視カメラ231~234で撮影された画像を画像処理により分析し、各乗車口の混雑度を判定する。本例では、乗車口の混雑度判定のために管理サーバに供する画像として、列車の発車直後の静止画を用いているが、発車から所定時間の経過後の静止画を用いてもよいし、発車直後(あるいは所定時間の経過後)から一定時間が経過するまでの期間の動画を用いてもよい。
【0035】
[車両内の総合的な混雑度判定]
列車到着前の次駅の管理サーバは、走行中の列車の各車両の監視カメラ121~125により撮影された画像に基づいて、車両内の混雑度を判定する。図5には、車両内の混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示してある。管理サーバ300は、走行中の列車の監視カメラ121~125によって撮影された画像311~315を受信すると、これら画像内の車両混雑度判定領域321~325を分析して、車両内の混雑度を判定する。車両混雑度判定領域321~325は、事前に設定されているものとする。
【0036】
本例では、各画像における、優先席を含む座席、通路、車いす・ベビーカーエリアの各領域を車両混雑度判定領域とし、各車両混雑度判定領域について、その判定領域を人物が占める割合から混雑度を判定する。例えば、車両混雑度判定領域毎に、その判定領域に対する人物領域の割合を算出し、人物領域の割合が30%未満の場合は混雑度:低とし、30%以上70%未満の場合は混雑度:中とし、70%以上の場合は混雑度:高とする。各車両混雑度判定領域の混雑度を分類する割合の程度(閾値)は、運用状況に応じて設定変更が可能であるものとする。
【0037】
その後、車両内の総合的な混雑度を、各車両混雑度判定領域の混雑度の加点制により判定する。例えば、混雑度:低の判定領域1つにつき1点、混雑度:中の判定領域1つにつき2点、混雑度:高の判定領域1つにつき3点と定め、最大点数のうち総合点数が占める割合に基づいて、車両内の総合的な混雑度を高/中/低で判定する。車両内の総合的な混雑度を分類する割合の程度(閾値)は、運用状況に応じて設定変更が可能であるものとする。例えば、混雑度:高を3点、中を2点、低を1点とした場合、1車両あたりの判定箇所が5箇所あるならば、3点(混雑度:高)×5箇所=15を最大点数とする。総合点は1車両の混雑度の合計を表しており、混雑度:高が2箇所、中が2箇所、低が1箇所の場合には、3点×2箇所+2点×2箇所+1点×1箇所=11点が総合点となる。そして、総合的な混雑度に関しては、前述の総合点数が予め定めた閾値(例えば、高:10点、中:5点、低:2点など)と比較して、高/中/低のどこに含まれるか判定する。
【0038】
[車両内の優先席の混雑度判定]
列車到着前の次駅の管理サーバは、走行中の列車の各車両の優先席を監視する監視カメラ121,124により撮影された画像に基づいて、車両内の優先席の混雑度を判定する。図6には、車両内の優先席の混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示してある。管理サーバ300は、走行中の列車の監視カメラ121,124によって撮影された画像311,314を受信すると、これら画像内の優先席混雑度判定領域331,332を分析して、車両内の優先席の混雑度を判定する。優先席を監視する監視カメラ121,124の識別情報および優先席混雑度判定領域331,332は、事前に設定されているものとする。
【0039】
本例では、各画像における優先席の領域のみを優先席混雑度判定領域とし、その判定領域を人物が占める割合から混雑度を判定する。例えば、優先席混雑度判定領域に対する人物領域の割合を算出し、人物領域の割合が30%未満の場合は混雑度:低とし、30%以上70%未満の場合は混雑度:中とし、70%以上の場合は混雑度:高とする。優先席混雑度判定領域の混雑度を分類する割合の程度(閾値)は、運用状況に応じて設定変更が可能であるものとする。
【0040】
また、車両内に複数の優先席が対面で存在する場合、優先席の総合的な混雑度を、各優先席混雑度判定領域の混雑度の加点制により判定する。例えば、混雑度:低の判定領域1つにつき1点、混雑度:中の判定領域1つにつき2点、混雑度:高の判定領域1つにつき3点と定め、最大点数のうち総合点数が占める割合に基づいて、優先席の総合的な混雑度を高/中/低で判定する。優先席の総合的な混雑度を分類する割合の程度(閾値)は、運用状況に応じて設定変更が可能であるものとする。なお、車両内に複数の優先席が対面ではなく離れて存在する場合、総合的な混雑度の判定ではなく、個別の混雑度の判定を行うものとする。
【0041】
[車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度判定]
列車到着前の次駅の管理サーバは、走行中の列車の各車両の車いす・ベビーカーエリアを監視する監視カメラ123により撮影された画像に基づいて、車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度を判定する。図7には、車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示してある。管理サーバ300は、走行中の列車の監視カメラ123によって撮影された画像313を受信すると、これら画像内の車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域341を分析して、車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度を判定する。車いす・ベビーカーエリアを監視する監視カメラ123の識別情報および車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域341は、事前に設定されているものとする。
【0042】
本例では、各画像における車いす・ベビーカーエリアの領域のみを車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域とし、その判定領域を人物が占める割合から混雑度を判定する。例えば、車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域に対する人物領域の割合を算出し、人物領域の割合が30%未満の場合は混雑度:低とし、30%以上70%未満の場合は混雑度:中とし、70%以上の場合は混雑度:高とする。車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域の混雑度を分類する割合の程度(閾値)は、運用状況に応じて設定変更が可能であるものとする。
【0043】
また、車両内に複数の車いす・ベビーカーエリアが対面で存在する場合、車いす・ベビーカーエリアの総合的な混雑度を、各車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域の混雑度の加点制により判定する。例えば、混雑度:低の判定領域1つにつき1点、混雑度:中の判定領域1つにつき2点、混雑度:高の判定領域1つにつき3点と定め、最大点数のうち総合点数が占める割合に基づいて、車いす・ベビーカーエリアの総合的な混雑度を高/中/低で判定する。車いす・ベビーカーエリアの総合的な混雑度を分類する割合の程度(閾値)は、運用状況に応じて設定変更が可能であるものとする。なお、車両内に複数の車いす・ベビーカーエリアが対面ではなく離れて存在する場合、総合的な混雑度の判定ではなく、個別の混雑度の判定を行うものとする。
【0044】
[駅ホームの乗車口付近の混雑度判定]
列車到着前の次駅の管理サーバは、その駅ホームの監視カメラ231~234により撮影された画像に基づいて、乗車口付近の混雑度を判定する。図8には、駅ホームの乗車口付近の混雑度判定に使用する画像および判定領域の例を示してある。管理サーバ300は、列車到着前に駅ホームの監視カメラ231~234によって撮影された画像351~354を受信すると、これら画像内の乗車口混雑度判定領域361~364を分析して、乗車口付近の混雑度を判定する。乗車口混雑度判定領域361~364は、事前に設定されているものとする。
【0045】
本例では、各画像における乗車待機エリアの各領域を乗車口混雑度判定領域とし、その判定領域を人物が占める割合から混雑度を判定する。例えば、乗車口混雑度判定領域に対する人物領域の割合を算出し、人物領域の割合が30%未満の場合は混雑度:低とし、30%以上70%未満の場合は混雑度:中とし、70%以上の場合は混雑度:高とする。乗車口混雑度判定領域の混雑度を分類する割合の程度(閾値)は、運用状況に応じて設定変更が可能であるものとする。
【0046】
次に、本例の監視システムによる処理の流れを、図9図13を参照して説明する。
[車両内の混雑度の判定フロー]
図9には、車両内の混雑度判定に関するフローチャートの例を示してある。列車が前駅を発車すると(ステップS101)、列車の各車両の監視カメラにより車内の撮影が行われ、その画像が次駅の監視サーバへ送信される(ステップS102)。各車両の車内の画像を受信した監視サーバは、処理対象の車両を表す変数n(ここで、1≦n≦車両数)を1に初期化した後、n車両目の各画像に基づいて、n車両目の総合的な混雑度を判定し(ステップS103;図10A参照)、n車両目の優先席の混雑度を判定し(ステップS104;図10B参照)、n車両目の車いす・ベビーカーエリアの混雑度を判定し(ステップS105;図10C参照)、変数nをインクリメント(1を加算)する(ステップS106)。これらの処理を、n≦車両数の条件を満たす間繰り返す。これにより、列車の車両毎に、総合的な混雑度、優先席の混雑度、車いす・ベビーカーエリアの混雑度を得ることができる。
【0047】
図10Aには、車両内の総合的な混雑度判定(図9のステップS103)の詳細に関するフローチャートの例を示してある。監視サーバは、車両内の全ての監視カメラの画像を選択し(ステップS201)、処理対象の画像を表す変数x(ここで、1≦x≦車両数)を1に初期化した後、x番目の選択画像内の車両混雑度判定領域に対する人物領域の割合を算出し(ステップS202)、人物領域の割合に基づいて混雑度を高/中/低で評価し(ステップS203)、変数xをインクリメントする(ステップS204)。これらの処理を、x≦画像数の条件を満たす間繰り返す。その後、各車両混雑度判定領域の混雑度を統合することで、車両内の総合的な混雑度を判定する(ステップS205)。
【0048】
図10Bには、車両内の優先席の混雑度判定(図9のステップS104)の詳細に関するフローチャートの例を示してある。監視サーバは、車両内の優先席を監視する監視カメラの画像を選択し(ステップS221)、処理対象の画像を表す変数y(ここで、1≦y≦優先席を映した画像数)を1に初期化した後、y番目の選択画像内の優先席混雑度判定領域に対する人物領域の割合を算出し(ステップS222)、人物領域の割合に基づいて混雑度を高/中/低で評価し(ステップS223)、変数yをインクリメントする(ステップS224)。これらの処理を、y≦優先席を映した画像数の条件を満たす間繰り返す。その後、複数の優先席が対面で存在する場合には、それらの優先席混雑度判定領域の混雑度を統合することで、対面する優先席の総合的な混雑度を判定する(ステップS225~S226)。
【0049】
図10Cには、車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度判定(図9のステップS105)の詳細に関するフローチャートの例を示してある。監視サーバは、車両内の車いす・ベビーカーエリアを監視する監視カメラの画像を選択し(ステップS241)、処理対象の画像を表す変数z(ここで、1≦z≦車いす・ベビーカーエリアを映した画像数)を1に初期化した後、z番目の選択画像内の車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域に対する人物領域の割合を算出し(ステップS242)、人物領域の割合に基づいて混雑度を高/中/低で評価し(ステップS243)、変数zをインクリメントする(ステップS244)。これらの処理を、z≦車いす・ベビーカーエリアを映した画像数の条件を満たす間繰り返す。その後、複数の車いす・ベビーカーエリアが対面で存在する場合には、それらの車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域の混雑度を統合することで、対面する車いす・ベビーカーエリアの総合的な混雑度を判定する(ステップS245~S246)。
【0050】
[乗車口の混雑度の判定フロー]
図11には、駅ホームの乗車口の混雑度判定に関するフローチャートの例を示してある。列車が前駅を発車すると(ステップS301)、次駅の駅ホームの監視カメラにより乗車口付近の撮影が行われ、その画像が監視サーバへ送信される(ステップ302)。駅ホームの乗車口付近の画像を受信した監視サーバは、処理対象の車両を表す変数n(ここで、1≦n≦車両数)を1に初期化し、処理対象の乗車口を表す変数m(ここで、1≦m≦乗車口数)を1に初期化した後、n車両目の乗車口mを映した画像に基づいてn車両目の乗車口mの混雑度を判定し(ステップS303)、変数mをインクリメントする(ステップS304)。また、m≦乗車口数の条件から外れた場合には、変数nをインクリメントし(ステップS305)、変数mを初期化し直す。これらの処理を、n≦車両数の条件を満たす間繰り返す。これにより、列車の各車両のドアに対応する乗車口毎に、混雑度を得ることができる。
[混雑度の通知フロー]
【0051】
図12には、混雑度のモニタ表示に関するフローチャートの例を示してある。列車が前駅を発車すると(ステップS401)、次駅の監視サーバは、図9図11に示した判定フローに従って混雑度判定を行った後に、表示対象の車両を表す変数a(ここで、1≦a≦車両数)を1に初期化した後、a車両目の総合的な混雑度、優先席の混雑度、車いす・ベビーカーエリアの混雑度を取得して、駅構内のモニタ(例えば、図2の表示装置53,66,73)に表示させる(ステップS402~404)。また、表示対象の乗車口を表す変数b(ここで、1≦b≦乗車口数)を1に初期化した後、a車両目の乗車口bの混雑度を取得してモニタ表示し(ステップS405)、変数bをインクリメントする(ステップ406)。また、b≦乗車口数の条件から外れた場合には、変数aをインクリメントし(ステップS407)、変数bを初期化し直す。これらの処理を、a≦車両数の条件を満たす間繰り返す。また、監視サーバは、各車両の総合的な混雑度、優先席の混雑度、車いす・ベビーカーエリアの混雑度に基づいて、総合的な混雑度が基準より低い車両、優先席の混雑度が基準より低い車両、車いす・ベビーカーエリアの混雑度が基準より低い車両などを特定し、その情報を追加でモニタ表示させる(ステップS408)。その後、監視サーバは、次駅からの列車の発車が確認された場合に、モニタ表示を消去させる。
【0052】
図13には、混雑度の音声アナウンスに関するフローチャートの例を示してある。列車が前駅を発車すると(ステップS501)、次駅の監視サーバは、図9図11に示した混雑度判定を行った後に、各車両の総合的な混雑度に基づいて、総合的な混雑度が基準より低い車両の有無を判定し、該当する車両が存在する場合には、その車両を乗車待ちの利用者に知らせる音声アナウンスを、駅構内のスピーカ(例えば、図2のスピーカ54,67)から出力させる(ステップS502~S503)。また、各車両の優先席の混雑度に基づいて、優先席の混雑度が基準より低い車両の有無を判定し、該当する車両が存在する場合には、その車両を乗車待ちの利用者に知らせる音声アナウンスをスピーカ出力する(ステップS504~S505)。また、各車両の車いす・ベビーカーエリアの混雑度に基づいて、車いす・ベビーカーエリアの混雑度が基準より低い車両の有無を判定し、該当する車両が存在する場合には、その車両を乗車待ちの利用者に知らせる音声アナウンスをスピーカ出力する(ステップS506~S507)。これら音声アナウンスは、次駅からの列車の発車が確認されるまで定期的に繰り返してもよい。
【0053】
[混雑度の通知方法:モニタ表示]
図14には、駅ホームや改札外より見える位置に設置されたモニタ(例えば、図2の表示装置53,66)による混雑度の表示例を示してある。図14に示すモニタ400は、例えば、液晶ディスプレイにより構成される。モニタ400には、車両内の優先席の混雑度、車両内の総合的な混雑度、車いす・ベビーカーエリアの混雑度、駅ホームの乗車口の混雑度などを、車両内や駅ホームを模式的に表した簡易図により表示する。なお、複数の車両の混雑度を表示する場合には、1つのモニタに纏めて表示してもよく、複数のモニタを横に並べて設置して、1つのモニタあたり1車両分の表示を行うようにしてもよい。または、1つのモニタで、複数の車両の混雑度を横方向スクロール等により切り替え表示してもよい。
【0054】
図14に示す簡易図は、車両内の優先席の混雑度を表示する領域411と、車両内の総合的な混雑度を表示する領域412と、車いす・ベビーカーエリアの混雑度を表示する領域413と、駅ホームの乗車口の混雑度を表示する領域414とを有している。これら領域411~414には3本のバーアイコンを設けてあり、混雑度の高/中/低に応じてバーアイコンの色塗り具合を変化させることで、混雑度を直感的に把握できるようにしてある。また、モニタ400には、テキストメッセージを表示する領域415も設けられており、総合的な混雑度の低い車両の情報、優先席や車いす・ベビーカーエリアの混雑度の低い車両の情報、乗車口の混雑度を踏まえた推奨車両や推奨乗車口の情報など、種々の情報をテキスト形式で表示することが可能である。
【0055】
[混雑度の通知方法:音声アナウンス]
駅ホームや駅改札外に聞こえる位置に設置したスピーカ(例えば、図2のスピーカ54,67)より、総合的な混雑度の低い車両の情報、優先席や車いす・ベビーカーエリアの混雑度の車両の情報、乗車口の混雑度を踏まえた推奨車両や推奨乗車口の情報など、種々の情報を音声にてアナウンスする。また、混合度に関わらず、車両内の総合的な混雑度、車いす・ベビーカーエリアの混雑度、駅ホームの乗車口の混雑度などの情報を、音声にてアナウンスしてもよい。
【0056】
[管理サーバの情報管理]
図15には、各駅の管理室に設置された管理サーバの構成例を示してある。図15の管理サーバは、列車情報データベース510と、駅構内情報データベース520と、混雑度判定部530と、推奨車両・乗車口選定部540と、モニタ表示処理部550と、音声アナウンス処理部560とを備えている。管理サーバは、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェア資源を備えたコンピュータにより実現され、本発明に係る各機能に関するプログラムをメモリから読み出してプロセッサにより実行するように構成される。
【0057】
列車情報データベース510には、列車内のレイアウト情報が予め登録されている。本例では、列車内のレイアウト情報として、運行する列車及びその車両数の情報511と、車両毎の優先席の配置情報512と、車両毎の車いす・ベビーカーエリアの配置情報513と、車両内の監視カメラの配置情報514と、優先席を監視する監視カメラの識別情報515と、車いす・ベビーカーエリアを監視するカメラの識別情報516とが登録されている。優先席の配置情報512や車いす・ベビーカーエリアの配置情報513には、それぞれの配置が単独か、対面位置に複数あるか、対面位置でなく且つ同車両内に複数あるか等を示す情報も含まれている。
【0058】
駅構内情報データベース520には、駅構内のレイアウト情報が予め登録されている。本例では、駅構内のレイアウト情報として、駅ホーム毎の乗車口の配置情報521と、エレベーターを含む構内設備の配置情報522と、駅構内の監視カメラの配置情報523とが登録されている。
【0059】
混雑度判定部530は、車両内混雑度判定部531と、優先席混雑度判定部532と、車いす・ベビーカーエリア混雑度判定部533と、駅ホーム乗車口混雑度判定部534とを有する。車両内混雑度判定部531は、列車から伝送される車両内の画像と列車内のレイアウト情報に基づいて、各車両の総合的な混雑度を判定する処理を行う。優先席混雑度判定部532は、列車から伝送される車両内の画像と列車内のレイアウト情報に基づいて、各車両の優先席の混雑度を判定する処理を行う。車いす・ベビーカーエリア混雑度判定部533は、列車から伝送される車両内の画像と列車内のレイアウト情報に基づいて、各車両の車いす・ベビーカーエリアの混雑度を判定する処理を行う。駅ホーム乗車口混雑度判定部534は、駅ホームから伝送される乗車口付近の画像と駅構内のレイアウト情報に基づいて、駅ホームの各乗車口の混雑度を判定する処理を行う。
【0060】
推奨車両・乗車口選定部540は、列車情報データベース510や駅構内情報データベース520内の情報と、混雑度判定部530により得られた各条件の混雑度とに基づいて、列車の利用を予定している者に推奨する車両を選定する。具体的には、列車内のレイアウト情報と駅構内のレイアウト情報の対応に従って、各車両の混雑度の判定結果と各乗車口の混雑度の判定結果を紐付けし、それぞれの判定結果を総合的に判断した上で、推奨する車両を選定する。つまり、各車両の混雑度の判定結果と各乗車口の混雑度の判定結果に加え、列車内のレイアウト又は駅構内のレイアウトとを踏まえた推奨車両選定を行うことができる。例えば、列車内のレイアウトと駅構内のレイアウトを考慮して、車いす・ベビーカー利用者はエレベーターにより近い車両に乗車可能なように推奨車両を選定することも可能である。また、この選定処理は、一般の利用者、優先席の利用者、車いす・ベビーカーエリアの利用者など、利用者のタイプ別に実施される。
【0061】
一般の利用者に対する推奨車両としては、例えば、車両内の総合的な混雑度とその車両に対するホーム側の混雑度の両方が低い車両が選定される。また、該当する車両が存在しない場合は、これら混雑度のうちの一方が低い車両が推奨車両に選定される。ここで、ホーム側の混雑度は、対象車両に対する各乗車口の混雑度を統合したもの(例えば、平均値)である。優先席の利用者に対する推奨車両についても、車両内の優先席の混雑度とその車両に対するホーム側の混雑度とに基づいて、同様の手法で選定することができる。また、車いす・ベビーカーエリアの利用者に対する推奨車両についても、車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度とその車両に対するホーム側の混雑度とに基づいて、同様の手法で選定することができる。
【0062】
なお、上記の説明では、推奨車両・乗車口選定部540は、利用者のタイプ別に推奨する車両を選定しているが、利用者のタイプ別に推奨する乗車口を選定してもよい。この場合には、乗車口の混雑度とその乗車口に対する車両の総合的な混雑度の両方が低い乗車口が推奨乗車口に選定される。また、該当する乗車口が存在しない場合には、これら混雑度のうちの一方が低い乗車口が推奨乗車口に選定される。優先席の利用者に対する推奨乗車口についても、優先席に対する乗車口の混雑度と対応する車両内の優先席の混雑度とに基づいて、同様の手法で選定することができる。また、車いす・ベビーカーエリアの利用者に対する推奨乗車口についても、車いす・ベビーカーエリアに対する乗車口の混雑度と対応する車両内の車いす・ベビーカーエリアの混雑度とに基づいて、同様の手法で選定することができる。
【0063】
図16Aには、一般の利用者に推奨する乗車口の選定例を示してあり、列車の各車両の総合的な混雑度と駅構内の各乗車口の混雑度とに基づいて、乗車口毎の推奨度を評価している。図16Bには、優先席の利用者に推奨する乗車口の選定例を示してあり、列車の各車両の優先席の混雑度と駅構内の各乗車口の混雑度とに基づいて、乗車口毎の推奨度を評価している。図16Cには、車いす・ベビーカーエリアの利用者に推奨する乗車口の選定例を示してあり、列車の各車両の車いす・ベビーカーエリアの混雑度と駅構内の各乗車口の混雑度と各乗車口からエレベーターまでの距離とに基づいて、乗車口毎の推奨度を評価している。ここで、図16A図16Cの「混雑度」において、〇は混雑度:低、△は混雑度:中、×は混雑度:高を示しており、「推奨度」において、〇は推奨度:高、△は推奨度:中、×は推奨度:低を示している。また、図16Cの「エレベーター距離」において、〇は距離:近、△は距離:中、×は距離:遠を示している。なお、図16A図16Cに示した選定方式は一例に過ぎず、例えば、優先席の利用者に推奨する乗車口や車両の選定において、各乗車口からエレベーターまでの距離を考慮してもよい。
【0064】
モニタ表示処理部550は、列車情報データベース510や駅構内情報データベース520内の情報、混雑度判定部530により得られた各条件の混雑度、推奨乗車口選定部540により選定された利用者のタイプ別の推奨車両や推奨乗車口などに基づいて、前述したような混雑度表示(図14)をモニタ出力させる処理を行う。
【0065】
音声アナウンス処理部560は、列車情報データベース510や駅構内情報データベース520内の情報、混雑度判定部530により得られた各条件の混雑度、推奨乗車口選定部540により選定された利用者のタイプ別の推奨乗車口などに基づいて、前述したような音声アナウンスをスピーカ出力させる処理を行う。
【0066】
[まとめ]
以上のように、本例の監視システムは、列車の各車両に設けられ、その車両内を撮影する車内カメラ121~125(図1のカメラ21~25)と、駅構内に設けられ、各乗車口に対応する乗車待機エリアを撮影する構内カメラ231~234(図2のカメラ62~65)と、車内カメラにより撮影された画像と列車内のレイアウト情報に基づく車両毎の混雑度の判定、および、構内カメラにより撮影された画像と駅構内のレイアウト情報に基づく乗車口毎の混雑度の判定を行う混雑度判定部530と、混雑度判定部により判定された車両毎の混雑度および乗車口毎の混雑度に基づいて、列車の利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定する推奨車両・乗車口選定部540と、駅構内に設けられ、推奨車両・乗車口選定部により選定された車両または乗車口を通知するモニタやスピーカ(図2の表示装置53,55やスピーカ54,67)とを備えている。
【0067】
このように、本例の監視システムによれば、車両側の混雑度や乗車口側の混雑度を考慮して、列車の利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定し、モニタやスピーカにより通知することができる。したがって、混雑度の高い車両や乗車口に利用者が更に集中することを回避できる。また、駅ホームのエレベーターや階段が近い車両や乗車口などの特定の車両や乗車口を利用者が選ぶ傾向を抑制できる。その結果、列車の各車両や駅構内の各乗車口の混雑度の均等化が進み、列車全体や駅ホーム全体の混雑の緩和につながる。また、駅ホームの混雑が緩和されることで、駅ホームの人の密集による転落など事故の防止にも役立つ。また、混雑度の高い列車の利用を避けるように利用者に促す効果もあるため、混雑時間帯の緩和を図ることも可能である。
【0068】
また、本例の監視システムでは、優先席や車いす・ベビーカーエリアに着目した混雑度を判定し、優先席または車いす・ベビーカーエリアの利用を予定している者に推奨する車両または乗車口を選定することもできる。このため、優先席や車いす・ベビーカーエリアを必要とする者の利便性が向上する。また、本例の監視システムでは、モニタとスピーカの両方を用いて、推奨する車両や乗車口を通知することできるので、各人の身体機能に関わらず、推奨車両や乗車口の情報を得ることが可能となる。また、駅改札外の人物にも推奨車両や乗車口の通知を伝達できるようにモニタやスピーカを配置することで、各人は改札内に入らずに情報を得ることが可能となる。その結果、列車への乗車を遅らせて駅近辺の商業施設を利用させるよう促すこともできる。
【0069】
ここで、上記の実施形態では、1台の装置で管理サーバ(図15)を構成することを想定しているが、管理サーバの各機能部510~560をネットワーク接続された複数台の装置に分散配置してもよい。また、上記の実施形態では、駅毎に管理サーバを設置することを想定しているが、複数の駅に対する処理を集約した管理サーバを設置してもよい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0071】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、車両内や駅構内をカメラの映像により監視する監視システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
11~14:車両、 21~25:監視カメラ、31:ネットワークスイッチ、 32:記録装置、 33:表示装置、 34:管理装置、 35:伝送装置、 36:伝送アンテナ、 41:駅構内、 42:駅ホーム、 43:管理室、 51:ネットワークスイッチ、 52:監視カメラ、 53:表示装置、 54:スピーカ、 61:ネットワークスイッチ、 62~65:監視カメラ、 66:表示装置、 67:スピーカ、 71:ネットワークスイッチ、 72:記録装置、 73:表示装置、 74:管理装置、 75:伝送装置、 76:伝送アンテナ、 100:車両、 110:ドア、 121~125:監視カメラ、 130:撮影範囲、 141~147:座席、 151~152:優先席、 161~166:通路、 171:車いす・ベビーカーエリア、 181~187:人物、 200:列車、 211~214:ドア、 220:駅ホーム、 231~234:監視カメラ、 241~244:乗車待機エリア、 251~253:人物、 300:管理サーバ、 311~315:画像、 321~325:車両混雑度判定領域、 331~332:優先席混雑度判定領域、 341:車いす・ベビーカーエリア混雑度判定領域、 351~354:画像、 361~364:乗車口混雑度判定領域、 400:モニタ、 510:列車情報データベース、 511:列車・車両数情報、 512:優先席配置情報、 513:車いす・ベビーカーエリア配置情報、 514:監視カメラ配置情報、 515:優先席監視カメラ識別情報、 516:車いす・ベビーカーエリア監視カメラ識別情報、 520:駅構内情報データベース、 521:乗車口配置情報、 522:駅構内設備配置情報、 523:監視カメラ配置情報、 530:混雑度判定部、 531:車両内混雑度判定部、 532:優先席混雑度判定部、 533:車いす・ベビーカーエリア混雑度判定部、 534:駅ホーム乗車口混雑度判定部、 540:推奨車両・乗車口選定部、 550:モニタ表示処理部、 560:音声アナウンス処理部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C