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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080943
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/14 20060101AFI20240610BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240610BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240610BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240610BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C08L83/14
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/04
C08K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194313
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩也
(72)【発明者】
【氏名】金子 芳郎
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP03W
4J002CP04X
4J002CP13Y
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002DB016
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DK006
4J002FD016
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】作業性が良好であり、熱伝導率が高く、オイルブリードが低減された樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体、(D)熱伝導性充填剤、
(E)ヒドロシリル化触媒を含有し、前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)多面体構造ポリシロキサン変性体、
(D)熱伝導性充填剤、
(E)ヒドロシリル化触媒、を含有し、
前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にSiH基を2個以上含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、下記一般式(1)で表される多面構造ポリシロキサン変性体である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)において、XはR又はRであり、複数のXのうち少なくとも1つはRであり、複数のXのうち少なくとも1つはRであり、Rは一般式(2)で表される加水分解性基であり、Rはオルガノポリシロキサンであり、Rはアルケニル基を有する脂肪族炭化水素である。)
【化2】
(一般式(2)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基であり、Rが複数の場合は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、炭素原子数2~4のアルケニル基又はアシル基であり、Rが複数の場合は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよく、aは0~2の整数である。*はケイ素原子と結合する結合手である。)
【請求項4】
前記一般式(1)において、Rが下記一般式(3)で示されるオルガノポリシロキサンである、請求項3に記載の樹脂組成物。
【化3】
(一般式(3)において、Rは炭素原子数1~8のアルキル基であり、Rは炭素原子数1~8のアルキレン基であり、nは2~150の整数である。*はケイ素原子と結合する結合手である。)
【請求項5】
前記一般式(1)において、加水分解性基1モルに対して、オルガノポリシロキサンが2モル以上4モル以下、アルケニル基が2モル以上4モル以下である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体の有するアルケニル基1モルに対して、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基が0.3モル以上0.6モル以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D)熱伝導性充填剤が、金属酸化物、窒化物、炭化物、炭素系材料、及び金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)熱伝導性充填剤が、アルミナ、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)熱伝導性充填剤は、平均粒子径の異なる2種以上の粒子を含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、多面体構造ポリシロキサン変性体、
(D)熱伝導性充填剤、
(E)ヒドロシリル化触媒、を混合する樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)多面体構造ポリシロキサン変性体、を含有し、
前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、樹脂組成物。
【請求項12】
加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項13】
請求項12に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体により表面処理されてなる熱伝導性充填剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多面体構造ポリシロキサン変性体を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は、回路の高集積化に伴う発熱量の増加から、熱対策が重要となり、そのための放熱材料の需要が高まっている。放熱材料の形態としてはシートやグリースがあげられる。特に近年では高放熱化のために、シリコーン(オルガノポリシロキサン)中に熱伝導性充填剤を高充填する傾向にある。
高い熱伝導性を有する放熱材料を得るために、熱伝導性充填剤をバインダーとなるシリコーン中に高充填しようとすると、シリコーン量の低下に伴い流動性が低下して、作業性が悪化する。それを解決するために、各種表面処理剤(アルコキシシラン類など)を用いて、熱伝導性充填剤を表面処理する方法が知られている。この場合、表面処理剤の濃度を増加させると流動性は向上するが、バインダーであるシリコーンの濃度が低下してしまい、オイルブリードを抑制する機能などのバインダーが備える本来の機能が不十分となる。
一方で、シリコーンの濃度を一定以上に調整した場合は、熱伝導性充填剤の濃度が低下して、十分な熱伝導率を維持できなくなる。
【0003】
シリコーンゴムの物性向上の観点から、特許文献1には、多面体構造ポリシロキサン変性体として、かご型構造を有するシルセスキオキサンを含む付加硬化性液状シリコーンゴム組成物に関する発明が開示され、硬度上昇を抑えつつ、引裂強度の高いシリコーンゴムを提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-85532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のかご型構造を有するシルセスキオキサンを用いて、熱伝導性充填剤を配合した場合であっても、良好な作業性、高熱伝導率、オイルブリードの低減といった課題を同時に解決することが難しい。
そこで、本発明では、作業性が良好であり、熱伝導率が高く、オイルブリードが低減された樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体、(D)熱伝導性充填剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を含有し、前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体が特定の構造を備える樹脂組成物により、上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]~[13]に関する。
【0007】
[1](A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体、(D)熱伝導性充填剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を含有し、前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、樹脂組成物。
[2]前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にSiH基を2個以上含有する、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、下記一般式(1)で表される多面構造ポリシロキサン変性体である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)において、XはR又はRであり、複数のXのうち少なくとも1つはRであり、複数のXのうち少なくとも1つはRであり、Rは一般式(2)で表される加水分解性基であり、Rはオルガノポリシロキサンであり、Rはアルケニル基を有する脂肪族炭化水素である。)
【化2】

(一般式(2)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基であり、Rが複数の場合は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、炭素原子数2~4のアルケニル基又はアシル基であり、Rが複数の場合は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよく、aは0~2の整数である。*はケイ素原子と結合する結合手である。)
[4]前記一般式(1)において、Rが下記一般式(3)で示されるオルガノポリシロキサンである、上記[3]に記載の樹脂組成物。
【化3】
(一般式(3)において、Rは炭素原子数1~8のアルキル基であり、Rは炭素原子数1~8のアルキレン基であり、nは2~80の整数である。*はケイ素原子と結合する結合手である。)
[5]前記一般式(1)において、加水分解性基1モルに対して、オルガノポリシロキサンが2モル以上4モル以下、アルケニル基が2モル以上4モル以下である、上記[3]又は[4]に記載の樹脂組成物。
[6]前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体の有するアルケニル基1モルに対して、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基が0.3モル以上0.6モル以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記(D)熱伝導性充填剤が、金属酸化物、窒化物、炭化物、炭素系材料、及び金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記(D)熱伝導性充填剤が、アルミナ、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]前記(D)熱伝導性充填剤は、平均粒子径の異なる2種以上の粒子を含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10](A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、多面体構造ポリシロキサン変性体、(D)熱伝導性充填剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を混合する樹脂組成物の製造方法。
[11](A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体、を含有し、前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、樹脂組成物。
[12]加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、多面体構造ポリシロキサン変性体。
[13]上記[12]に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体により表面処理されてなる熱伝導性充填剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業性が良好であり、熱伝導率が高く、オイルブリードが低減された樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体、(D)熱伝導性充填剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を含有する。そして、前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する。
【0010】
<(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン>
本発明の樹脂組成物は、(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン(以下、(A)成分ともいう)を含有する。(A)成分は、反応基を有しない。ここで反応基とは、他の成分と反応しうる基をいい、例えば、アルコキシ基、ヒドロシリル基(SiH)などが挙げられる。
(A)成分としては、例えば、シリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが例示され、中でもストレートシリコーンオイルが好ましい。
ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、などのポリオルガノシロキサンが挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、及びフェニル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
これらの中でも、ストレートシリコーンオイルが好ましく、中でもジメチルシリコーンオイルがより好ましい。
【0011】
(A)成分の23℃における動粘度は、特に限定されないが、樹脂組成物を取り扱う際の作業性の観点などから、例えば50~10000cst、好ましくは60~1000cst、より好ましくは70~500cstである。
【0012】
(A)成分の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。このような範囲であると、良好な作業性を確保しやすくなる。
【0013】
<(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン>
本発明の樹脂組成物は、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン(以下、(B)成分ともいう)。(B)成分は、主鎖にポリシロキサン骨格を有し、さらにケイ素原子に直接結合した水素原子(SiH基)及び有機基を有する。(B)成分は、好ましくは一分子中にSiH基を2個以上有する。
(B)成分は、後述する(C)多面体構造ポリシロキサン変性体のアルケニル基とヒドロシリル化付加反応によって架橋することができ、これによりオイルブリードを低減することができる。
(B)成分における一分子中のSiH基の数は、例えば2個以上であってもよいし、3個以上であってもよいし、そして15個以下であってもよい。中でも、(B)成分は、少なくとも両末端にSiH基を有することが好ましく、両末端にのみSiH基を有することがより好ましい。このような(B)成分を用いると、オイルブリードが効果的に低減されやすい。
(B)成分として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状でも分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
(B)成分において、有機基としては、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。置換基を有してもよい炭化水素基としては、炭素原子数が1~20程度のものが挙げられ、具体的には、炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基などが挙げられる。
アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、環状構造を有してもよい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、2-メチルウンデシル基、1-ヘキシルヘプチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)プロピル基等が挙げられる。
有機基としては、アルキル基が好ましく、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する有機基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。
【0014】
(B)成分の含有量は、樹脂組成物全量基準に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0015】
<(C)多面体構造ポリシロキサン変性体>
本発明の樹脂組成物は、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体(以下、(C)成分ともいう)を含有する。該(C)成分は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する。
(C)成分は加水分解性基を有することにより、後述する(D)熱伝導性充填剤の表面の水酸基等と反応することができ、その結果分散性が向上するなどして、組成物の粘度が低下しやすくなり、また熱伝導率も高まりやすくなる。(C)成分はオルガノポリシロキサンを有することにより、(A)成分や(B)成分との相溶性が向上する。さらに、(C)成分はアルケニル基を有する脂肪族炭化水素を有することにより、(B)成分と架橋構造を形成することができ、オイルブリードを低減させやすくなる。このように、(C)成分は、他の成分と反応又は作用することを可能とする部位を複数有しているため、(C)成分を含む樹脂組成物は、作業性及び熱伝導性が向上し、さらにオイルブリードが低減されやすくなる。
【0016】
上記のとおり、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、多面体構造ポリシロキサン変性体は、特定の組成物に配合することで、作業性及び熱伝導性を向上させることができ、オイルブリードも低減されやすくなる。本発明においては、このような多面体構造ポリシロキサン変性体を提供することができる。
【0017】
加水分解性基としては、アルコキシシランを有する基が挙げられ、後述する一般式(2)で表される基が好ましい。
オルガノポリシロキサンとは、多面体構造以外の直鎖又は分岐のオルガノポリシロキサンであり、後述する一般式(3)で表される基が好ましい。
アルケニル基を有する脂肪族炭化水素としては、後述するアルケニル基を有する炭素数2~9の脂肪族炭化水素が好ましい。
【0018】
(C)成分は、多面体構造を有するポリシロキサン変性体であり、前記多面体構造は、かご型構造と呼ばれる場合もある。
(C)成分は、下記一般式(1)で表される多面構造ポリシロキサン変性体であることが好ましい。
【化4】
(一般式(1)において、XはR又はRであり、複数のXのうち少なくとも1つはRであり、複数のXのうち少なくとも1つはRであり、Rは一般式(2)で表される加水分解性基であり、Rはオルガノポリシロキサンであり、Rはアルケニル基を有する脂肪族炭化水素である。)
【化5】
(一般式(2)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基であり、Rが複数の場合は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、炭素原子数2~4のアルケニル基又はアシル基であり、Rが複数の場合は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよく、aは0~2の整数である。*はケイ素原子と結合する結合手である。)
【0019】
(Rについて)
上記一般式(1)におけるRは、一般式(2)で表される加水分解性基である。
一般式(2)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基であり、Rが複数の場合(すなわち、aが2の場合)は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。中でもRは、(D)熱伝導性充填剤との反応性向上の観点などから、炭素原子数1~2のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。また、aは0~2の整数であり、aは0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
一般式(2)において、Rは炭素原子数が1~20のアルキレン基であり、また、該アルキレン基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。Rは炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~10のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数2~4のアルキレン基がさらに好ましい。
一般式(2)において、Rは炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、炭素原子数2~4のアルケニル基又はアシル基であり、Rが複数の場合(すなわち、aが0又は1の場合)は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよい。また、Rにおけるアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、及びアシル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。これらの中でもRは、(D)熱伝導性充填剤との反応性向上の観点などから、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、中でもメチル基であることがより好ましい。
【0020】
(Rについて)
上記一般式(1)におけるRはオルガノポリシロキサンであり、好ましくは下記一般式(3)で表される。
【化6】
(一般式(3)において、Rは炭素原子数1~8のアルキル基であり、Rは炭素原子数1~8のアルキレン基であり、nは2~150の整数である。*はケイ素原子と結合する結合手である。)
【0021】
一般式(3)において、Rは炭素原子数1~8のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~2のアルキル基である。
一般式(3)において、Rは炭素原子数1~8のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1~4のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~2のアルキレン基である。
【0022】
(Rについて)
上記一般式(1)におけるRはアルケニル基を有する脂肪族炭化水素である。Rは、アルケニル基を有する炭素数2~9の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルケニル基を有する炭素数2~4の脂肪族炭化水素基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
なお、ビニル基は、以下の式(4)で表される。
【化7】

(上記式(4)において、*はケイ素原子と結合する結合手である。)
【0023】
(C)成分が有するアルケニル基1モルに対して、(B)成分が有するSiH基は、例えば0.1モル以上1.5モル以下であり、好ましくは0.3モル以上0.6モル以下である。このような範囲であると、オイルブリード及びポンプアウトを抑制しやすくなる。
【0024】
上記一般式(1)において、加水分解性基1モルに対して、オルガノポリシロキサンが1モル以上5モル以下、アルケニル基が1モル以上5モル以下であることが好ましい。さらに、上記一般式(1)において、加水分解性基1モルに対して、オルガノポリシロキサンが2モル以上4モル以下、アルケニル基が2モル以上4モル以下であることがより好ましい。このような範囲の(C)成分を用いると、本発明の効果に特に優れる樹脂組成物を得やすくなる。
【0025】
(C)成分の含有量は、樹脂組成物全量基準に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。このような含有量とすることにより、作業性が良好であり、熱伝導率が高く、オイルブリードが低減された樹脂組成物を提供し易くなる。
【0026】
<(C)成分の製造方法>
(C)成分の製造方法は、特に限定されないが、以下の式(5)で表される化合物に対して、ヒドロシリル化反応により、オルガノポリシロキサン及び加水分解性基を導入するとよい。
上記した一般式(1)で表される多面構造ポリシロキサン変性体は、例えば、以下の一般式(5)で表される化合物、好ましくは式(6)で表される化合物に対して、以下の一般式(7)及び一般式(8)で表される化合物をヒドロシリル化反応させることで得られる。なお、一般式(1)における加水分解性基、オルガノポリシロキサン、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素の量は、原料として用いる各成分の量を調整することで、所望の値に調節できる。
ヒドロシリル化反応は、溶媒の存在下で行ってもよいし、溶媒の非存在下で行ってもよい。溶媒存在下で反応させる際の溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、アセトンなどを用いることができる。反応温度は好ましくは20~30℃であり、反応時間は好ましくは20~30時間である。
【0027】
【化8】

(式(5)において、Rは式(1)で説明したものと同義である)
【0028】
【化9】
【0029】
【化10】

(式(7)において、R、R及びaは、上記した一般式(2)で説明したものと同義である)
【0030】
【化11】

(式(8)において、R及びnは、上記した一般式(3)のものと同義である)
【0031】
<(D)熱伝導性充填剤>
本発明の樹脂組成物は、(D)熱伝導性充填剤(以下、(D)成分ともいう)を含有する。該(D)熱伝導性充填剤は、上記した(C)成分により、表面処理された熱伝導性充填剤となり、これにより樹脂組成物中の分散性が向上し、熱伝導率を高くすることができる。
(D)熱伝導性充填剤としては、特に限定されないが、金属酸化物、窒化物、炭化物、炭素系材料、及び金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウム、窒化ホウ素などが挙げられる。
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
炭素系材料としては、例えば、ダイヤモンド粒子、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどが挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
これら、熱伝導性充填剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0032】
(D)熱伝導性充填剤としては、上記した中でも、上記した(C)成分により表面処理され、樹脂組成物中の分散性が高まり、熱伝導率を向上させ易い観点から、アルミナ、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、アルミナがより好ましい。
【0033】
(D)熱伝導性充填剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1μm以上250μm以下であることが好ましく、0.2μm以上100μm以下であることがより好ましい。
なお、平均粒子径は、例えば、堀場製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置」を用いて測定することができ、累積体積が50%であるときの粒子径(d50)を平均粒子径とすればよい。
【0034】
(D)熱伝導性充填剤は、平均粒子径の異なる2種以上の粒子を含むことが好ましい。平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を使用すると、平均粒子径が小さいほうの粒子が、平均粒子径が大きいほうの粒子の間に入り込み、樹脂組成物中に熱伝導性充填剤を適切に分散させつつ、熱伝導性充填剤の充填率を高めやすくなる。
なお、樹脂組成物は、熱伝導性充填剤の粒度分布において、ピークが2つ以上現れることで平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を有すると判断できる。
【0035】
(D)熱伝導性充填剤が、平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を含む場合、その具体的な粒子径は、熱伝導性充填剤の種類に応じて選択することができる。例えば、平均粒子径が10μm以上250μm以下の粒子(大粒径熱伝導性充填剤)と、平均粒子径が0.1μm以上10μm未満の熱伝導性充填剤(小粒径熱伝導性充填剤)の混合物とすることが好ましい。さらに、大粒径熱伝導性充填剤は、平均粒子径が異なる2種以上の粒子を含むことも好ましい。なお、本明細書における熱伝導性充填剤の平均粒子径は、一次粒子の平均粒子径を意味することとする。
【0036】
(D)熱伝導性充填剤の種類としては、上記したものを用いることができる。また、上記した通り、熱伝導性充填剤としては、好ましくは、アルミナ、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、アルミナがより好ましい。
【0037】
<アルミナ>
(D)熱伝導性充填剤として、アルミナを用いる場合は、互いに平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を含むことが好ましい。平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を使用すると、平均粒子径が小さいほうの粒子が、平均粒子径が大きいほうの粒子の間に入り込み、シリコーン樹脂にアルミナを適切に分散させつつ、アルミナの充填率を高めやすくなる。
【0038】
アルミナが、平均粒子径が異なる2種以上の粒子を含む場合、アルミナは、平均粒子径が10μm以上250μm以下の粒子(以下、「大粒径アルミナ」ともいう)と、平均粒子径が0.1μm以上10μm未満の粒子(以下、「小粒径アルミナ」ともいう)の混合物であることが好ましい。
【0039】
アルミナが小粒径アルミナ及び大粒径アルミナの両方を含有する場合、小粒径アルミナに対する大粒径アルミナの質量比(大粒径/小粒径)は、例えば、0.1以上50以下、好ましくは0.5以上20以下、より好ましくは1以上10以下である。このような質量比であると、樹脂組成物に充填されやすくなり、熱伝導性が良好になりやすい。
【0040】
大粒径アルミナは、その平均粒子径が10μm以上100μm以下であることより好ましく、10μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。
小粒径アルミナは、その粒子径が0.2μm以上5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0041】
(D)熱伝導性充填剤を樹脂組成物に含有させる場合における、(D)熱伝導性充填剤の量は、樹脂組成物全量基準に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。熱伝導性充填剤の量がこれら下限値以上であると、樹脂組成物の熱伝導率を向上させやすくなる。
【0042】
また、本発明の(D)熱伝導性充填剤は、上記したように(C)多面体構造ポリシロキサン変性体を用いて、表面処理された熱伝導性充填剤とすることができる。
本発明においては、このように、多面体構造ポリシロキサン変性体により表面処理されてなる熱伝導性充填剤を提供することもできる。
【0043】
表面処理された熱伝導性充填剤は、上記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体と(D)熱伝導性充填剤を混合することで得ることができる。また、混合する際に、表面処理を促進させやすくする観点から、湿式処理法、乾式処理法などを用いることが好ましい。
湿式処理法では、例えば、上記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体を分散又は溶解した溶液中に、(D)熱伝導性充填剤を加えて混合し、その後、加熱処理することで、熱伝導性充填剤の表面に(C)多面体構造ポリシロキサン変性体を結合ないし付着させるとよい。
乾式処理法は、溶液を使用せずに表面処理する方法であり、具体的には、(D)熱伝導性充填剤と上記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体とを混合しミキサー等で攪拌し、その後、加熱処理することで、熱伝導性充填剤の表面に(C)多面体構造ポリシロキサン変性体を結合ないし付着させる方法である。なお、(D)熱伝導性充填剤と(C)多面体構造ポリシロキサン変性体とを混合して行う表面処理は、(A)成分の存在下において行うこともできる。
使用する(C)多面体構造ポリシロキサン変性体の配合量は、(D)熱伝導性充填剤100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~15質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0044】
<(E)ヒドロシリル化触媒>
本発明の樹脂組成物は、(E)ヒドロシリル化触媒(以下、(E)成分ともいう)を含有する。ヒドロシリル化触媒を含有することで、(B)成分と(C)成分とのヒドロシリル化反応を促進することができる。
(E)ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられ、これらの中では白金系触媒が好ましい。(E)ヒドロシリル化触媒の配合量は、樹脂組成物全量基準で、通常0.1~100ppm、好ましくは0.5~50ppmである。
【0045】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上記した通り、(A) 反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、多面体構造ポリシロキサン変性体、(D)熱伝導性充填剤、及び(E)ヒドロシリル化触媒を含有する。これら各成分の配合の順番は特に限定されるものではないが、これら(A)~(E)のすべての成分を混合して樹脂組成物を製造することができる。
樹脂組成物を調製する際には、最初に上記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体と(D)熱伝導性充填剤を混合して、上記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体を(D)熱伝導性充填剤の表面に付着又は表面と反応させて、その後、その他の成分を混合して、樹脂組成物を調製することが好ましい。また、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体と(D)熱伝導性充填剤を混合する際に、(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサンも同時に混合し、その後、その他の成分を混合して樹脂組成物を混合することも好ましい。
【0046】
本発明においては、上記した(A)~(E)成分の全てを含む樹脂組成物の他、(A) 成分と、(B)成分と、(C)成分とを含有する樹脂組成物も提供することができる。
すなわち、本発明の別の発明は、(A)反応基を有しないオルガノポリシロキサン、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体を含有し、前記(C)多面体構造ポリシロキサン変性体は、加水分解性基と、オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する脂肪族炭化水素とを有する、樹脂組成物である。
(A)~(C)成分を含有する上記樹脂組成物は、(D)熱伝導性充填剤の充填用組成物として使用することができ、(D)熱伝導性充填剤及び(E)ヒドロシリル化触媒を適宜配合して使用することができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物を原料として用いて、樹脂組成物により形成された放熱部材を作製することができる。例えば、樹脂組成物を所定の形状にて放熱部材とすることができる。
該放熱部材は、電子機器内部に使用することができ、例えば、電子部品と、該電子部品上に配置される放熱部材とを備える電子機器とすることができる。具体的には、前記放熱部材を、半導体素子などの電子部品とヒートシンクとの間に配置して、電子部品から発生する熱を効果的に放熱することができる。
【実施例0049】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0050】
各実施例、比較例で作製した樹脂組成物の評価方法は以下のとおりである。
【0051】
[熱伝導率]
熱伝導率は、23℃において、ASTM D5470に従って測定した。測定装置としてMentor, a Siemens Business社の「T3Ster DynTIM Tester」を用いて測定した。なお、樹脂組成物の調製ができなかったものは「コンパウンド不可」として「NG」の評価とした。
【0052】
[オイルブリード]
すりガラス上に0.3gのペースト状の樹脂組成物を乗せ、1mmのスペーサーを挟み、その上からアルミ板をのせて押しつぶした状態を初期状態として、24時間、室温(23℃)で静置した後にじみ出ているオイルの幅を測定した。以下の基準で評価した。なお、樹脂組成物の調製ができなかったものは「コンパウンド不可」として「NG」の評価とした。
(評価)
A:5mm未満
B:5mm以上10mm未満
C:10mm以上
NG:コンパウンド不可
【0053】
[ポンプアウト]
ガラス上に0.3gのペースト状の樹脂組成物を乗せ、1mmのスペーサーを挟み、その上からガラス板をのせて押しつぶした状態を初期状態とした。そして、前記のとおり作製した試験片を垂直に保管し、-40~150℃のヒートサイクル試験を100サイクル行ったのちの試験片の状態を観察した。なお、樹脂組成物の調製ができなかったものは「コンパウンド不可」として「NG」の評価とした。
(評価)
A:変化なし
B:ボイド又は亀裂が発生した
C:垂直方向にたれが発生した
NG:コンパウンド不可
【0054】
[突き刺し荷重(作業性の評価)]
突き刺し荷重の測定は、突き刺し荷重測定機、IMADA社製デジタルフォースゲージ 「ZTS-5N」により行い、押込みは針径1mmφ、押込み速度10mm/分、測定温度23℃の条件で測定した。突き刺し荷重が小さいほど、作業性が良好と判断できる。なお、樹脂組成物の調製ができなかったものは「コンパウンド不可」として「NG」の評価とした。
(評価)
A:50mN未満
B:50mN以上100mN未満
C:100mN以上
NG:コンパウンド不可
【0055】
各実施例、比較例で用いた各成分は以下のとおりである。
<(A)成分:反応基を有しないオルガノポリシロキサン>
・A-1成分
シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン) The Dow Chemical company社製「Dowsil SH200CV」 動粘度110cst(23℃)
【0056】
<(B)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサン>
・B-1成分
以下に示す分子鎖両末端にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH基の数は2個)、動粘度100ct
【化12】

15はメチル基であり、tは80である。
【0057】
<(C)成分:多面体構造ポリシロキサン変性体>
・C-1成分
一般式(1)においてRが1個、Rが4個、Rが3個の化合物。分子量4000~6000。
の構造を示す一般式(2)において、Rはエチレン基(-CH-CH-)、Rはメチル基、aは0である。
の構造を示す一般式(3)において、Rはメチル基、Rはメチレン基(-CH-)、nは平均14-15である。
の構造は式(4)で示すビニル基である。
(C-1成分の製造)
上記した式(6)の化合物0.6330g、式(7)の化合物0.1286g、及び式(8)の化合物5.0638gを溶媒(テトラヒドロフラン:7mL)に溶解させて、室温(約25℃)で、24時間反応させた。
式(7)のR及びaは上記した一般式(2)と同じであり、式(8)のR及びnは上記した一般式(3)と同じである。
なお、式(6)の化合物としては、東京化成工業株式会社製「ビニルトリメトキシシラン」を原料に用いて「H. Bai, C. Huang, L. Jun, and H. Li, J. Appl. Polym. Sci., 2016, 133, 43906」を参考に合成、式(7)の化合物としては、東京化成工業株式会社製「トリメトキシシラン」、式(8)の化合物としてはgelest社製「MCR-H11」を使用した。
【0058】
・C-2成分
一般式(1)においてRが1個、Rが1個、Rが6個の化合物。分子量1000~2000.
の構造を示す一般式(2)において、Rはエチレン基(-CH-CH-)、Rはメチル基、aは0である。
の構造を示す一般式(3)において、Rはメチル基、Rはメチレン基(-CH-)、nは平均14-15である。
の構造は式(4)で示すビニル基である。
(C-2成分の製造)
上記した式(6)の化合物1.8989g、式(7)の化合物0.3859g、及び式(8)の化合物3.7979gを溶媒(テトラヒドロフラン:12mL)に溶解させて、室温(約25℃)で、24時間反応させた。
式(7)のR及びaは上記した一般式(2)と同じであり、式(8)のR及びnは上記した一般式(3)と同じである。
【0059】
・C-3成分
一般式(1)においてRが1個、Rが4個、Rが3個の化合物。分子量10000~20000.
の構造を示す一般式(2)において、Rはエチレン基(-CH-CH-)、Rはメチル基、aは0である。
の構造を示す一般式(3)において、Rはメチル基、Rはメチレン基(-CH-)、nは平均115-116である。
の構造は式(4)で示すビニル基である。
(C-3成分の製造)
上記した式(6)の化合物0.0949g、式(7)の化合物0.0193g、及び式(8)の化合物5.3433gを溶媒(テトラヒドロフラン:7.7mL)に溶解させて、室温(約25℃)で、24時間反応させた。
式(7)のR及びaは上記した一般式(2)と同じであり、式(8)のR及びnは上記した一般式(3)と同じである。
【0060】
・C-4成分
一般式(1)においてRが1個、Rが4個、Rが3個の化合物。分子量2000~4000。
の構造を示す一般式(2)において、Rはエチレン基(-CH-CH-)、Rはメチル基、aは0である。
の構造を示す一般式(3)において、Rはメチル基、Rはメチレン基(-CH-)、nは平均10-11である。
の構造は式(4)で示すビニル基である。
(C-4成分の製造)
上記した式(6)の化合物0.9494g、式(7)の化合物0.1929g、及び式(8)の化合物5.8156gを溶媒(テトラヒドロフラン:10.5mL)に溶解させて、室温(約25℃)で、24時間反応させた。
式(7)のR及びaは上記した一般式(2)と同じであり、式(8)のR及びnは上記した一般式(3)と同じである。
【0061】
<(C)成分の比較対象化合物(比較例で使用)>
・C-5成分
The Dow Chemical company社製「Z6210」(n-デシルトリメトキシシラン)
多面体構造を有さず、さらに加水分解性基及びアルケニル基を有する脂肪族炭化水素のいずれも有さないオルガノポリシロキサン。分子量300。
【0062】
・C-6成分
信越化学社製「KBM-1003」(ビニルトリメトキシシラン)
【0063】
・C-7成分
一般式(1)においてR、R 及びRのいずれも有さない化合物。R、R 及びRの代わりに下記構造を有する化合物。分子量1000~2000。
*-(CH2)2S(CH2)7CH3
*はケイ素原子と結合する結合手である。
【0064】
・C-8成分
一般式(1)においてRを有さない化合物。Rが0個、Rが5個、Rが3個の化合物。分子量1000~2000。
の構造を示す一般式(3)において、Rはメチル基、Rはメチレン基(-CH-)、nは8-9である。
の構造は式(4)で示すビニル基である。
【0065】
・C-9成分
一般式(1)においてRを有し、R及びRを有さない化合物。Rが1個、Rが0個、Rが0個で、R、Rの代わりにアルキル基(メチル基)を有する化合物。分子量1000~2000。
の構造を示す一般式(2)において、Rはエチレン基(-CH-CH-)、Rはメチル基、aは0である。
【0066】
・C-10成分
一般式(1)においてR及びRを有し、Rを有さない化合物。Rが1個、Rが7個、Rが0個の化合物。
の構造を示す一般式(2)において、Rはエチレン基(-CH-CH-)、Rはメチル基、aは0である。
の構造を示す一般式(3)において、Rはメチル基、Rはメチレン基(-CH-)、nは8-9である。
【0067】
<(D)成分:熱伝導性充填剤>
・D-1:昭和電工株式会社製[AS-40]、平均粒子径12μm
・D-2:昭和電工株式会社製「AL-47-1」、平均粒子径0.9μm
【0068】
<(E)成分:ヒドロシリル化触媒>
・E-1:白金系触媒
【0069】
[実施例1]
(A)成分0.5質量部、(B)成分0.25質量部、(C)成分0.1質量部、(D)成分10質量部(D-1を7質量部、D-2を3質量部)、(E)成分を樹脂組成物全量に対して20ppmを混合して、樹脂組成物を調製した。なお、混合の順番は、次の通りとした。最初に(A)成分と(C)成分を混合した後、(D)成分を加えて混合し、さらに(E)成分を加えて混合し、最後に(B)成分を加えて混合した。
結果を表1に示した。
なお、表中の「H/Vi」は、(C)多面体構造ポリシロキサン変性体の有するアルケニル基1モルに対する、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基のモル数を意味する。
【0070】
[実施例2~8、比較例1~12]
表1及び表2に示した各配合に変更した以外は、実施例1に準じて樹脂組成物を調製した。結果を表1~2に示した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
本発明で規定する(A)~(E)成分のすべてを含む実施例の樹脂組成物は、熱伝導率が高く、突き刺し荷重の結果より作業性が良好であり、さらにオイルブリードも抑制されることが分かった。
これに対して、(A)~(E)成分のいずれかを含まない各比較例の樹脂組成物は、樹脂組成物を調製できなかったり(コンパウンド不可)、あるいは、オイルブリードを生じたり、作業性が悪くなるなどが確認され、実施例のように良好な物性バランスを備えた樹脂組成物ではなかった。