IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社コロナの特許一覧

<>
  • 特開-給湯装置 図1
  • 特開-給湯装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080969
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/38 20220101AFI20240610BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 15/225 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 15/296 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 15/281 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 15/215 20220101ALI20240610BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20240610BHJP
【FI】
F24H15/38
F24H1/18 G
F24H4/02 C
F24H15/10
F24H15/258
F24H15/225
F24H15/296
F24H15/281
F24H15/215
F24H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194345
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋太
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA54
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA02
3L122BA04
3L122BA13
3L122BA14
3L122BA32
3L122BB03
3L122BB26
3L122BB27
3L122BC12
3L122DA22
3L122EA62
3L122FA02
(57)【要約】
【課題】ヒートポンプの圧縮機の許容圧力が小さくなる可能性があるときに圧縮機の負荷を抑えることができる技術を提供する。
【解決手段】制御部は、貯湯タンクの水をヒートポンプにより目標沸上げ温度まで沸き上げる沸上げ運転において、目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度とする第1沸上げ運転と、目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度未満の第2目標沸上げ温度とする第2沸上げ運転と、を実行可能であり、沸上げ運転を実行する場合に、消費電力の制限がない場合は、第1沸上げ運転を実行し、消費電力の制限がある場合は、消費電力の制限がない場合よりも前記圧縮機の回転数を小さくする制限運転を実行し、制限運転を実行する場合に、貯湯タンクから凝縮器に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合は、第2沸上げ運転を実行してもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
外気から吸熱して前記貯湯タンクの水を沸き上げるヒートポンプと、
制御部と、を備える給湯装置であって、
前記ヒートポンプは、冷媒を加圧する圧縮機と、前記圧縮機で加圧された冷媒と前記貯湯タンクから送られる水との熱交換により前記貯湯タンクの水を加熱する凝縮器と、を備え、
前記制御部は、
前記貯湯タンクの水を前記ヒートポンプにより目標沸上げ温度まで沸き上げる沸上げ運転において、前記目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度とする第1沸上げ運転と、前記目標沸上げ温度を前記第1目標沸上げ温度未満の第2目標沸上げ温度とする第2沸上げ運転と、を実行可能であり、
前記沸上げ運転を実行する場合に、消費電力の制限がない場合は、前記第1沸上げ運転を実行し、消費電力の制限がある場合は、消費電力の制限がない場合よりも前記圧縮機の回転数を小さくする制限運転を実行し、
前記制限運転を実行する場合に、前記貯湯タンクから前記凝縮器に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合は、前記第2沸上げ運転を実行する、給湯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記制限運転を実行する場合に、外気温度が所定の基準外気温度未満である場合は、前記第1沸上げ運転を実行し、外気温度が前記基準外気温度以上であり、かつ、前記貯湯タンクから前記凝縮器に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合は、前記第2沸上げ運転を実行する、請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記制限運転を実行する場合であって、外気温度が前記基準外気温度以上であり、かつ、前記貯湯タンクから前記凝縮器に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合に、前記目標沸上げ温度を前記第2目標沸上げ温度とすることが制限されている場合は、前記第2沸上げ運転を実行せずに前記ヒートポンプを停止させる、請求項2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記貯湯タンクから給湯箇所に供給される水を加熱する補助熱源機を更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、ヒートポンプを備える給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている給湯装置は、貯湯タンクと、外気から吸熱して貯湯タンクの水を沸き上げるヒートポンプとを備えている。ヒートポンプは、冷媒を加圧する圧縮機と、圧縮機で加圧された冷媒と貯湯タンクから送られる水との熱交換により貯湯タンクの水を加熱する凝縮器とを備えている。特許文献1の給湯装置では、外気温度あるいは給水温度が高くなると沸き上げ設定温度を下げる方向に変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-147846号公報
【特許文献2】特開2016-33429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給湯装置では、消費電力の制限がある場合に、ヒートポンプの圧縮機の回転数を小さくすることがある。圧縮機の回転数が小さいときは圧縮機の許容圧力が小さくなる傾向があるので(特許文献2参照)、圧縮機の負荷を抑えることが望まれる。そこで本明細書は、ヒートポンプの圧縮機の許容圧力が小さくなる可能性があるときに圧縮機の負荷を抑えることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術の第1の態様では、給湯装置が、貯湯タンクと、外気から吸熱して前記貯湯タンクの水を沸き上げるヒートポンプと、制御部と、を備えていてもよい。前記ヒートポンプは、冷媒を加圧する圧縮機と、前記圧縮機で加圧された冷媒と前記貯湯タンクから送られる水との熱交換により前記貯湯タンクの水を加熱する凝縮器と、を備えていてもよい。前記制御部は、前記貯湯タンクの水を前記ヒートポンプにより目標沸上げ温度まで沸き上げる沸上げ運転において、前記目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度とする第1沸上げ運転と、前記目標沸上げ温度を前記第1目標沸上げ温度未満の第2目標沸上げ温度とする第2沸上げ運転と、を実行可能であってもよい。前記制御部は、前記沸上げ運転を実行する場合に、消費電力の制限がない場合は、前記第1沸上げ運転を実行し、消費電力の制限がある場合は、消費電力の制限がない場合よりも前記圧縮機の回転数を小さくする制限運転を実行してもよい。前記制御部は、前記制限運転を実行する場合に、前記貯湯タンクから前記凝縮器に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合は、前記第2沸上げ運転を実行してもよい。
【0006】
この構成によれば、給湯装置に係る消費電力の制限がある場合に、ヒートポンプの圧縮機の回転数を小さくすることにより、圧縮機の消費電力を抑制することができる。しかしながら、圧縮機の回転数が小さくなると、圧縮機の許容圧力が小さくなることがある。また、ヒートポンプでは、凝縮器に送られる水の温度が高いほど、凝縮器での熱交換において冷媒の温度が低くなり難い。その結果、圧縮機で加圧される冷媒の温度が比較的高くなることがあり、加圧時の冷媒の圧力が高くなることがある。しかしながら、上記の構成によれば、目標沸上げ温度が相対的に低い第2沸上げ運転を実行することにより、ヒートポンプの凝縮器での熱交換における水の温度を第1沸上げ運転のときよりも低くすることができる。これにより、ヒートポンプの圧縮機で加圧される冷媒の温度を低くすることができ、加圧時の冷媒の圧力を低くすることができる。これにより、圧縮機の負荷を抑えることができる。よって、ヒートポンプの圧縮機の許容圧力が小さくなる可能性があるときに圧縮機の負荷を抑えることができる。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記制御部は、前記制限運転を実行する場合に、外気温度が所定の基準外気温度未満である場合は、前記第1沸上げ運転を実行し、外気温度が前記基準外気温度以上であり、かつ、前記貯湯タンクから前記凝縮器に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合は、前記第2沸上げ運転を実行してもよい。
【0008】
ヒートポンプでは、外気温度が高いほど外気からの吸熱量が大きくなるので、それに伴い圧縮機の回転数を小さくすることがある。そうすると、圧縮機の許容圧力が更に小さくなることがある。しかしながら、上記の構成によれば、目標沸上げ温度が相対的に低い第2沸上げ運転を実行することにより、ヒートポンプの凝縮器での熱交換における水の温度を第1沸上げ運転のときよりも低くすることができる。これにより、ヒートポンプの圧縮機で加圧される冷媒の温度を低くすることができ、加圧時の冷媒の圧力を低くすることができる。これにより、圧縮機の負荷を抑えることができる。
【0009】
第3の態様では、上記第2の態様において、前記制御部は、前記制限運転を実行する場合であって、外気温度が前記基準外気温度以上であり、かつ、前記貯湯タンクから前記凝縮器に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合に、前記目標沸上げ温度を前記第2目標沸上げ温度とすることが制限されている場合は、前記第2沸上げ運転を実行せずに前記ヒートポンプを停止させていてもよい。
【0010】
この構成によれば、ヒートポンプの圧縮機の負荷は生じない。
【0011】
第4の態様では、上記第1から第3の態様のいずれかにおいて、給湯装置が、前記貯湯タンクから給湯箇所に供給される水を加熱する補助熱源機を更に備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、例えば、給湯箇所に多量の水を供給する場合に、貯湯タンクが湯切れしたとしても、補助熱源機で水を加熱することにより、給湯設定温度の水を給湯箇所に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の給湯装置を模式的に示す図。
図2】実施例の沸上げ運転処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例の給湯装置2について図面を参照して説明する。図1に示すように、給湯装置2は、HP(ヒートポンプ)ユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備えている。給湯装置2の電力は、例えば、商用電源や蓄電池から供給される。
【0015】
HPユニット4は、外気から吸熱して水を加熱する熱源である。HPユニット4は、圧縮機10と、凝縮器12と、膨張弁14と、蒸発器16からなるヒートポンプ17を備えている。ヒートポンプ17は、冷媒(例えばR32やR410AといったHFC冷媒や、R744といったCO2冷媒)を、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に循環させることで、外気から吸熱して水を加熱する。圧縮機10は、冷媒を加圧して高温高圧にする。凝縮器12は、循環経路19を流れる水と冷媒との熱交換により、水を加熱すると共に冷媒を冷却する。循環経路19は、タンクユニット6内の貯湯タンク30とHPユニット4内の凝縮器12の間で水を循環させる経路である。膨張弁14は、冷媒を減圧して低温低圧にする。蒸発器16は、ファン13により送風される外気と冷媒との熱交換により冷媒を加熱する。HPユニット4はさらに、循環経路19の水を貯湯タンク30と凝縮器12の間で循環させる循環ポンプ18と、貯湯タンク30から凝縮器12に流れ込む水の温度を検出する戻りサーミスタ20と、凝縮器12から貯湯タンク30へ流れ出る水の温度を検出する往きサーミスタ22と、外気温度を検出する外気温度サーミスタ23と、HPユニット4の各構成要素の動作を制御するHPコントローラ24を備えている。ヒートポンプ17では、外気温度が高いほど外気からの吸熱量が大きくなる。そのため、HPコントローラ24は、外気温度サーミスタ23により検出される外気温度が高いほど、圧縮機10の回転数を小さくする(より具体的には、圧縮機10のモータの三相交流の周波数を低くする)ことがある。圧縮機10は、回転数が小さくなると、許容圧力が小さくなることがある。
【0016】
タンクユニット6は、貯湯タンク30と、混合弁32と、バイパス制御弁34を備えている。貯湯タンク30は、外側が断熱材で覆われており、内部に水を蓄える密閉型の容器である。本実施例の貯湯タンク30の容量は、例えば100リットルである。HPユニット4の循環ポンプ18が駆動すると、貯湯タンク30の底部から循環経路19に水が吸い出されて凝縮器12へ送られる。凝縮器12で加熱されて高温となった水は、循環経路19を流れて、貯湯タンク30の頂部から貯湯タンク30内に戻される。HPユニット4によって加熱された水が貯湯タンク30に流れ込むと、貯湯タンク30の内部には、低温の水の層の上に高温の水の層が積み重なった温度成層が形成される。貯湯タンク30には、上部の水の温度を検出する上部サーミスタ36と、中間部の水の温度を検出する中間部サーミスタ37と、下部の水の温度を検出する下部サーミスタ38と、底部の水の温度を検出する底部サーミスタ39が取り付けられている。本実施例では、上部サーミスタ36は貯湯タンク30の頂部から6リットルの位置に配置されており、中間部サーミスタ37は貯湯タンク30の頂部から12リットルの位置に配置されており、下部サーミスタ38は貯湯タンク30の頂部から30リットルの位置に配置されており、底部サーミスタ39は貯湯タンク30の頂部から70リットルの位置に配置されている。
【0017】
タンクユニット6には、給水経路40を介して給水源から水道水が供給される。給水経路40には、給水圧力を減圧する減圧弁42と、給水温度を検出する入水サーミスタ44が取り付けられている。給水経路40は、貯湯タンク30の底部に連通するタンク給水経路46と、混合弁32に連通するタンクバイパス経路48に分岐している。タンク給水経路46とタンクバイパス経路48には、それぞれ逆止弁50、52が取り付けられている。また、タンクバイパス経路48には、混合弁32に流入する水道水の流量を検出する水側水量センサ54が取り付けられている。貯湯タンク30の頂部と混合弁32は、タンク出湯経路56を介して連通している。タンク出湯経路56には、逆止弁58と、混合弁32に流入する貯湯タンク30からの水の流量を検出する湯側水量センサ60が取り付けられている。
【0018】
混合弁32は、タンクバイパス経路48から流れ込む水道水と、タンク出湯経路56から流れ込む貯湯タンク30の水を混合して、第1給湯経路62に送り出す。混合弁32は、ステッピングモータによって弁を駆動し、タンクバイパス経路48側の開度(水側の開度)と、タンク出湯経路56側の開度(湯側の開度)を調整する。第1給湯経路62には、混合弁32から送り出される水の温度を検出する混合サーミスタ64が取り付けられている。
【0019】
タンクユニット6からは、第2給湯経路66を介して、台所やシャワー、カラン等の給湯箇所への給湯が行われる。第2給湯経路66には、給湯箇所へ供給される水の温度を検出する給湯サーミスタ68と、逆止弁70が取り付けられている。第1給湯経路62と第2給湯経路66の間は、給湯バイパス経路72によって連通している。給湯バイパス経路72には、バイパス制御弁34が取り付けられている。
【0020】
タンクユニット6は、タンクコントローラ74と、タンクコントローラ74と通信可能なリモコン76を備えている。タンクコントローラ74は、タンクユニット6の各構成要素の動作を制御する。タンクコントローラ74は、不揮発性のメモリ75を備えている。リモコン76は、スイッチやボタン等を介して、ユーザからの各種の操作入力を受け入れる。また、リモコン76は、表示や音声によってユーザに給湯装置2の設定や動作に関する各種の情報を通知する。
【0021】
バーナユニット8は、バーナ80と、熱交換器82と、バイパスサーボ84と、水量サーボ86と、湯はり弁88を備えている。バーナ80は、ガスの燃焼によって熱交換器82を流れる水を加熱する補助熱源機である。熱交換器82には、バーナ往路90を介して、タンクユニット6の第1給湯経路62からの水が流れ込む。熱交換器82を通過した水は、バーナ復路92を介して、タンクユニット6の第2給湯経路66へ流れ出る。バーナ往路90には、バーナ往路90を流れる水の流量を調整する水量サーボ86と、バーナ往路90を流れる水の流量を検出する水量センサ91が取り付けられている。バーナ往路90とバーナ復路92の間は、バーナバイパス経路94を介して連通している。バーナ往路90とバーナバイパス経路94の接続部に、バイパスサーボ84が取り付けられている。バイパスサーボ84は、バーナ往路90からバーナバイパス経路94へ流れる水の流量を調整する。バーナ復路92には、熱交換器82から流れ出る水の温度をバーナ出口温度として検出するバーナ出口サーミスタ96が取り付けられている。バーナユニット8では、バーナ出口温度と目標加熱温度の差が小さくなるように、バーナ80の加熱能力が調整される。バーナ復路92からは、湯はり経路98が分岐している。湯はり経路98には、湯はり弁88が取り付けられている。バーナユニット8からは、湯はり経路98を介して、給湯箇所である浴槽への湯はりが行われる。バーナユニット8はさらに、バーナユニット8の各構成要素の動作を制御するバーナコントローラ100を備えている。
【0022】
HPコントローラ24とタンクコントローラ74は、互いに通信可能である。タンクコントローラ74とバーナコントローラ100は、互いに通信可能である。従って、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100が協調して制御を行うことで、給湯装置2は沸上げ運転や給湯運転等の各種の動作を行うことができる。以下では、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100を総称して、単にコントローラと呼ぶことがある。
【0023】
(沸上げ運転)
沸上げ運転では、給湯装置2は、HPユニット4を駆動して、貯湯タンク30内の水を沸かし上げる。沸上げ運転を開始するタイミングは、様々な観点から設定することが可能である。例えば、割安な深夜電力を利用可能な時間帯が終了する直前に、貯湯タンク30内の水の沸かし上げが終了するように、タンクコントローラ74が沸上げ運転の開始タイミングを決定して、HPコントローラ24に沸上げ運転の開始を指示してもよい。あるいは、前日までの給湯実績に基づいて、大きな給湯需要の発生が予想される時刻の直前に、貯湯タンク30の水の沸かし上げが終了するように、タンクコントローラ74が沸上げ運転の開始タイミングを決定して、HPコントローラ24に沸上げ運転の開始を指示してもよい。あるいは、ユーザがリモコン76を介して貯湯タンク30の水の沸かし上げを指示することで、タンクコントローラ74がHPコントローラ24に沸上げ運転の開始を指示してもよい。
【0024】
給湯装置2は、沸上げ運転により、貯湯タンク30内の水を所定の目標沸上げ温度まで沸かし上げることができる。給湯装置2は、沸上げ運転において、第1沸上げ運転と第2沸上げ運転を実行可能である。第1沸上げ運転は、目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度(例えば、50℃)とする沸上げ運転である。第2沸上げ運転は、目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度未満の第2目標沸上げ温度(例えば、45℃)とする沸上げ運転である。目標沸上げ温度を第2目標沸上げ温度とすることにより、ヒートポンプ17の圧縮機10で加圧される冷媒の温度を低くすることができ、加圧時の冷媒の圧力を低くすることができる。これにより、圧縮機10の負荷を抑えることができる。
【0025】
沸上げ運転の開始が指示されると、HPコントローラ24は、ヒートポンプ17の圧縮機10を駆動して、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、貯湯タンク30と凝縮器12の間で水を循環させる。これによって、貯湯タンク30の底部から吸い出された水は、凝縮器12において目標沸上げ温度まで加熱されて、貯湯タンク30の頂部に戻される。タンクコントローラ74は、上部サーミスタ36、中間部サーミスタ37、下部サーミスタ38および底部サーミスタ39の検出温度や、戻りサーミスタ20の検出温度から、貯湯タンク30内の水が全て高温の水で置き換えられたことを検知すると、HPコントローラ24に沸上げ運転の終了を指示する。タンクコントローラ74から沸上げ運転の終了が指示されると、HPコントローラ24は沸上げ運転を終了する。
【0026】
(給湯運転)
給湯運転では、給湯装置2は、給湯設定温度に調温された水を給湯箇所へ給湯する。給湯装置2は、タンクユニット6の上部サーミスタ36で検出される貯湯タンク30の上部の温度が給湯設定温度以上である場合、非燃焼給湯運転を行う。非燃焼給湯運転では、タンクコントローラ74は、バーナコントローラ100にバーナ80の燃焼運転を禁止する。また、タンクコントローラ74は、バイパス制御弁34を開くとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が給湯設定温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、貯湯タンク30の上部から供給される高温の水と、給水経路40から供給される低温の水が、混合弁32において混合されることで給湯設定温度に調温されて、給湯箇所へ供給される。
【0027】
上部サーミスタ36で検出される貯湯タンク30の上部の温度が給湯設定温度に満たない場合、給湯装置2は、燃焼給湯運転を行う。燃焼給湯運転では、タンクコントローラ74は、バーナコントローラ100にバーナ80の燃焼運転を許可して、バーナユニット8における目標加熱温度として給湯設定温度を指示する。また、タンクコントローラ74は、バイパス制御弁34を閉じるとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が、給湯設定温度よりもバーナ80の最小加熱能力の分だけ低い温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、貯湯タンク30の上部から供給される高温の水と、給水経路40から供給される低温の水が、混合弁32において混合された後、バーナ80によって目標加熱温度、すなわち給湯設定温度まで加熱されて、給湯箇所へ供給される。
【0028】
(消費電力の制限)
給湯装置2では、消費電力が制限されることがある。例えば、電力会社における電力の需給状況に応じて給湯装置2の消費電力が制限されることがある。また、例えば、給湯装置2が蓄電池に接続されている場合に、その蓄電池の蓄電状況に応じて給湯装置2の消費電力が制限されることがある。また、例えば、給湯装置2以外の他の装置が蓄電池に接続されている場合に、他の装置に電力を供給するために、給湯装置2の消費電力が制限されることがある。また、電力会社における電力の需給状況にかかわらず、ユーザによる指示や給湯装置2の運転状況に応じて給湯装置2の消費電力が制限されることもある。コントローラは、給湯装置2の消費電力が制限される場合は、所定の制限フラグを生成してタンクコントローラ74のメモリ75に記憶する。より詳細には、消費電力が制限される場合は、そのことを示す所定の制限情報が、例えば、電力会社または蓄電池から給湯装置2のコントローラに送信される。コントローラは、消費電力が制限されることを示す制限情報を受け付けた場合は、制限フラグを生成してメモリ75に記憶する。コントローラは、ユーザによる指示や給湯装置2の運転状況に応じて給湯装置2の消費電力が制限される場合にも、制限フラグを生成してメモリ75に記憶してもよい。
【0029】
(沸上げ運転処理;図2
次に、実施例の沸上げ運転処理について説明する。図2は、沸上げ運転処理のフローチャートである。図2に示す沸上げ運転処理は、例えば、所定の沸上げ開始時刻が到来すると開始される。また、沸上げ運転処理は、ユーザによる沸上げ開始指示に基づいて開始されてもよい。沸上げ運転処理のS2では、コントローラが、沸上げ運転を開始する。沸上げ運転が開始されると、貯湯タンク30内の水がHPユニット4のヒートポンプ17により沸き上げられる。沸上げ運転が開始される時点では、目標沸上げ温度が第1目標沸上げ温度(例えば、50℃)に設定されている。よって、沸上げ運転が開始される時点では、コントローラが、第1沸上げ運転を実行する。
【0030】
続くS4では、コントローラが、所定の沸上げ停止条件が成立するか否かを判断する。沸上げ停止条件は、例えば、貯湯タンク30の底部に取り付けられている底部サーミスタ39により検出される水の温度が、所定の停止基準温度(例えば、目標沸上げ温度-5℃(ただし、最大で45℃))以上である場合に成立する。変形例では、沸上げ停止条件は、循環経路19に取り付けられている戻りサーミスタ20により検出される水の温度が、所定の停止基準温度以上である場合に成立してもよい。沸上げ停止条件が成立する場合(S4でYES)、処理はS20に進む。S20では、コントローラが、ヒートポンプ17の圧縮機10を停止して沸上げ運転を終了する。沸上げ停止条件が成立しない場合(S4でNO)、処理はS6に進む。
【0031】
S6では、コントローラが、消費電力の制限があるか否かを判断する。具体的には、コントローラが、消費電力の制限を示す制限フラグがタンクコントローラ74のメモリ75に記憶されているか否かを判断する。消費電力の制限がある場合(即ち、制限フラグがメモリ75に記憶されている場合、S6でYES)、処理はS8に進む。消費電力の制限がない場合(即ち、制限フラグがメモリ75に記憶されていない場合、S6でNO)、処理はS4に戻る。
【0032】
S8では、コントローラが、ヒートポンプ17の圧縮機10の回転数を小さくする制限運転を実行する。コントローラは、消費電力の制限がある場合(S6でYES)に、消費電力の制限がない場合よりも、圧縮機10の回転数を小さくする。制限運転により圧縮機10の回転数の回転数が小さくなると、圧縮機10の許容圧力が小さくなる傾向がある。
【0033】
続くS10では、コントローラが、外気温度サーミスタ23により検出される外気温度が所定の基準外気温度(例えば、16℃)以上であるか否かを判断する。外気温度が基準外気温度以上である場合(S10でYES)、処理はS12に進む。外気温度が基準外気温度未満である場合(S10でNO)、処理はS4に戻る。
【0034】
S12では、コントローラが、貯湯タンク30の底部に取り付けられている底部サーミスタ39により検出される水の温度が、所定の基準温度(例えば、19℃)以上であるか否かを判断する。底部サーミスタ39の検出温度が基準温度以上である場合(S12でYES)、処理はS14に進む。底部サーミスタ39の検出温度が基準温度未満である場合(S12でNO)、処理はS4に戻る。
【0035】
S14では、コントローラが、目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度未満の温度に変更可能であるか否かを判断する。給湯装置2では、例えば、給湯個所に供給される水の給湯設定温度が低温(例えば、40℃未満)に設定されている場合は、目標沸上げ温度を変更することができる。目標沸上げ温度が変更可能である場合(S14でYES)、処理はS16に進む。一方、例えば、給湯設定温度が高温(例えば、45℃以上)に設定されている場合は、貯湯タンク30内の水では給湯設定温度の出湯を行うことができないため、目標沸上げ温度を変更することができない。目標沸上げ温度が変更不能である場合(S14でNO)、処理はS20に進む。
【0036】
S16では、コントローラが、現在の目標沸上げ温度が第2目標沸上げ温度(例えば、45℃)よりも高いか否かを判断する。第2目標沸上げ温度(例えば、45℃)は、第1目標沸上げ温度(例えば、50℃)未満の温度である。現在の目標沸上げ温度が第2目標沸上げ温度よりも高い場合(S16でYES)、処理はS18に進む。現在の目標沸上げ温度が第2目標沸上げ温度以下である場合(S16でNO)、処理はS4に戻る。S18では、コントローラが、目標沸上げ温度を第2目標沸上げ温度に変更する。これにより、コントローラは、第2沸上げ運転を実行する。S18の後、処理はS4に戻り、沸上げ運転が続行される。
【0037】
(効果)
以上、実施例の給湯装置2について説明した。以上の説明から明らかなように、給湯装置2では、貯湯タンク30の水をヒートポンプ17により目標沸上げ温度まで沸き上げる沸上げ運転において、目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度とする第1沸上げ運転と、目標沸上げ温度を第1目標沸上げ温度未満の第2目標沸上げ温度とする第2沸上げ運転とを実行可能である。コントローラは、沸上げ運転を実行する場合に、消費電力の制限がない場合は、第1沸上げ運転を実行する。コントローラは、消費電力の制限がある場合は、消費電力の制限がない場合よりも圧縮機10の回転数を小さくする制限運転を実行する。コントローラは、制限運転を実行する場合に、外気温度が所定の基準外気温度以上であり、かつ、貯湯タンク30から凝縮器12に送られる水の温度が所定の基準温度以上である場合は、第2沸上げ運転を実行する(S6、S8、S10、S12、S14、S16、S18)。コントローラは、外気温度が所定の基準外気温度未満である場合、または、貯湯タンク30から凝縮器12に送られる水の温度が所定の基準温度未満である場合は、第1沸上げ運転を実行する。
【0038】
この構成によれば、消費電力の制限がある場合に、圧縮機10の回転数を小さくすることにより、圧縮機10の消費電力を抑制することができる。しかしながら、圧縮機10の回転数が小さくなると、圧縮機10の許容圧力が小さくなることがある。また、ヒートポンプ17では、外気温度が高いほど外気からの吸熱量が大きくなるので、それに伴い圧縮機10の回転数を小さくすることがある。そうすると、圧縮機10の許容圧力が更に小さくなることがある。一方、ヒートポンプでは、凝縮器12に送られる水の温度が高いほど、凝縮器12での熱交換において冷媒の温度が低くなり難い。その結果、圧縮機10で加圧される冷媒の温度が比較的高くなることがあり、加圧時の冷媒の圧力が高くなることがある。しかしながら、上記の構成によれば、目標沸上げ温度が相対的に低い第2沸上げ運転を実行することにより、ヒートポンプ17の凝縮器12での熱交換における水の温度を第1沸上げ運転のときよりも低くすることができる。これにより、ヒートポンプ17の圧縮機10で加圧される冷媒の温度を低くすることができ、加圧時の冷媒の圧力を低くすることができる。これにより、圧縮機10の負荷を抑えることができる。よって、ヒートポンプ17の圧縮機10の許容圧力が小さくなる可能性があるときに圧縮機10の負荷を抑えることができる。また、ヒートポンプ17の沸上げ運転を継続することができ、貯湯タンク30の蓄熱量を増やすことができる。
【0039】
また、コントローラは、消費電力の制限がある場合であって、目標沸上げ温度を第2目標沸上げ温度とすることが制限されている場合は、第2沸上げ運転を実行せずにヒートポンプ17を停止させる(S6、S8、S10、S12、S14、S20)。この構成によれば、ヒートポンプ17の圧縮機10の負荷が生じない。
【0040】
上記の給湯装置2は、貯湯タンク30から給湯箇所に供給される水をガスの燃料により加熱するバーナ80を備えている。この構成によれば、例えば、給湯箇所に多量の水を供給する場合に、貯湯タンク30が湯切れしたとしても、バーナ80で水を加熱することにより、給湯設定温度の水を給湯箇所に供給することができる。
【0041】
(対応関係)
底部サーミスタ39により検出される水の温度が、「貯湯タンクから凝縮器に送られる水の温度」の一例である。
【0042】
(変形例)
(1)上記の実施例では、貯湯タンク30の底部に取り付けられている底部サーミスタ39により検出される水の温度が、「貯湯タンクから凝縮器に送られる水の温度」の一例であったが、この構成に限定されない。変形例では、循環経路19に取り付けられている戻りサーミスタ20により検出される水の温度が、「貯湯タンクから凝縮器に送られる水の温度」の一例であってもよい。
【0043】
(2)コントローラは、第2沸上げ運転において、貯湯タンク30から凝縮器12に送られる水の流量を第1沸上げ運転よりも多くしてもよい。コントローラは、循環ポンプ18の動作を制御することにより、循環経路19を流れる水の流量を多くする。凝縮器12に多くの水が送られることにより、凝縮器12での熱交換における温度を低くすることができる。それに伴い、圧縮機10で加圧される冷媒の温度を低くすることができ、加圧時の冷媒の圧力を低くすることができる。これにより、圧縮機10の負荷を抑えることができる。
【0044】
以上、各実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
2:給湯装置、4:HPユニット、6:タンクユニット、8:バーナユニット、10:圧縮機、12:凝縮器、13:ファン、14:膨張弁、16:蒸発器、17:ヒートポンプ、18:循環ポンプ、19:循環経路、20:戻りサーミスタ、22:往きサーミスタ、23:外気温度サーミスタ、24:HPコントローラ、30:貯湯タンク、32:混合弁、34:バイパス制御弁、36:上部サーミスタ、37:中間部サーミスタ、38:下部サーミスタ、39:底部サーミスタ、40:給水経路、42:減圧弁、44:入水サーミスタ、46:タンク給水経路、48:タンクバイパス経路、54:水側水量センサ、56:タンク出湯経路、60:湯側水量センサ、62:第1給湯経路、64:混合サーミスタ、66:第2給湯経路、68:給湯サーミスタ、72:給湯バイパス経路、74:タンクコントローラ、75:メモリ、76:リモコン、80:バーナ、82:熱交換器、84:バイパスサーボ、86:水量サーボ、90:バーナ往路、91:水量センサ、92:バーナ復路、94:バーナバイパス経路、96:バーナ出口サーミスタ、100:バーナコントローラ
図1
図2