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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080975
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ウォーキングビーム炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/24 20060101AFI20240610BHJP
   F27D 3/00 20060101ALI20240610BHJP
   F27D 19/00 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
F27B9/24 W
F27D3/00 Z
F27D19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194353
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 道郎
(72)【発明者】
【氏名】小牧 毅史
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
4K056
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050BA07
4K050CF02
4K050CF12
4K050CG13
4K055AA06
4K055BA03
4K055BA05
4K056AA09
4K056BC04
4K056CA10
4K056FA10
(57)【要約】
【課題】熱処理炉本体内のガスや熱が熱処理炉本体の炉床壁から漏出することを抑制することができる技術を開示する。
【解決手段】ウォーキングビーム炉は、被熱処理物を熱処理する。ウォーキングビーム炉は、入口と出口とを備えており、被熱処理物が入口から出口に向かって移動する間に熱処理される熱処理空間を内部に有する熱処理炉本体と、熱処理空間を移動する被熱処理物を加熱するヒータと、被熱処理物が載置可能であり、被熱処理物が載置された状態で前後方向に移動可能な第1搬送部と、被熱処理物が載置可能であるとともに、熱処理炉本体の炉床壁を貫通している第2搬送部であって、前後方向に直交する上下方向に移動することにより被熱処理物が第2搬送部に載置されて第1搬送部に載置されていない状態とすることが可能な第2搬送部と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱処理物を熱処理するウォーキングビーム炉であって、
入口と出口とを備えており、前記被熱処理物が前記入口から前記出口に向かって移動する間に熱処理される熱処理空間を内部に有する熱処理炉本体と、
前記熱処理空間を移動する前記被熱処理物を加熱するヒータと、
前記被熱処理物が載置可能であり、前記被熱処理物が載置された状態で前後方向に移動可能な第1搬送部と、
前記被熱処理物が載置可能であるとともに、前記熱処理炉本体の炉床壁を貫通している第2搬送部であって、前記前後方向に直交する上下方向に移動することにより前記被熱処理物が前記第2搬送部に載置されて前記第1搬送部に載置されていない状態とすることが可能な前記第2搬送部と、を備えている、ウォーキングビーム炉。
【請求項2】
前記第1搬送部を前方向に引っ張る第1引張器と、
前記第1搬送部を後方向に引っ張る第2引張器と、をさらに備えている、請求項1に記載のウォーキングビーム炉。
【請求項3】
前記第1搬送部は、
前記前後方向に間隔を空けて並んで配置されている複数の搬送基部と、
前記前後方向に隣接する前記搬送基部を接続する接続部と、を備えている、請求項2に記載のウォーキングビーム炉。
【請求項4】
前記前後方向に延びている擦し板をさらに備えており、
前記第1搬送部は、前記前後方向に移動するときに前記擦し板上を摺動する、請求項1に記載のウォーキングビーム炉。
【請求項5】
前記擦し板を囲む囲壁をさらに備えている、請求項4に記載のウォーキングビーム炉。
【請求項6】
前記第1搬送部は、前記前後方向に並んでいるとともに、前記前後方向と前記上下方向に直交する左右方向に少なくとも2列に並んでいる複数の第1ピンを備えており、
前記第1ピンは、前記上下方向に延びており、上端で前記被熱処理物を載置可能である、請求項1に記載のウォーキングビーム炉。
【請求項7】
前記第2搬送部は、
前記前後方向に並んでいるとともに、前記左右方向に少なくとも2列に並んでいる複数の第2ピンと、
前記熱処理炉本体の前記炉床壁を貫通して前記上下方向に延びており、前記複数の第2ピンを前記上下方向に移動させる昇降器と、を備えており、
前記第2ピンは、前記昇降器の動作により、下端位置と上端位置との間を移動可能であり、
前記第2ピンが前記下端位置から前記上端位置に移動したとき、前記複数の第1ピンの前記上端に載置されていた前記被熱処理物が、前記複数の第1ピンの前記上端から離れて前記複数の第2ピンの上端に載置される、請求項6に記載のウォーキングビーム炉。
【請求項8】
前記熱処理炉本体の前記入口側に配置されており、熱処理前の前記被熱処理物が巻回されている入口側ロールと、
前記熱処理炉本体の前記出口側に配置され、熱処理後の前記被熱処理物が巻回される出口側ロールと、をさらに備えており、
前記ウォーキングビーム炉は、前記入口側ロールから送り出された前記被熱処理物が前記熱処理空間を移動して前記出口側ロールに巻き取られるロールトゥロール方式の炉である、請求項1から7のいずれか一項に記載のウォーキングビーム炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被熱処理物を熱処理するウォーキングビーム炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウォーキングビーム炉が開示されている。ウォーキングビーム炉は、炉床壁を備える炉室と、炉室内に配置される固定ビームと、炉床壁を上下方向に貫通する開口部に挿入された移動ビームと、を備えている。移動ビームは、上下方向と前後方向に移動可能である。移動ビームが上方向、前方向、下方向、後方向の順番に移動することにより、固定ビームと移動ビームに支持された鋼片が炉室内を前方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-190511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のウォーキングビーム炉では、移動ビームが前後方向に移動するため、開口部の前後方向の長さは、移動ビームの前後方向の移動長さよりも長くされる。このため、移動ビームが挿入される炉床壁には、前後方向に長い開口部が形成されている。これにより、炉室内のガスや熱が、開口部において炉床壁と移動ビームとの間に形成される隙間を介して炉室の外部に漏出する。
【0005】
本明細書は、熱処理炉本体内のガスや熱が熱処理炉本体の炉床壁から漏出することを抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、ウォーキングビーム炉は、被熱処理物を熱処理する。ウォーキングビーム炉は、入口と出口とを備えており、被熱処理物が入口から出口に向かって移動する間に熱処理される熱処理空間を内部に有する熱処理炉本体と、熱処理空間を移動する被熱処理物を加熱するヒータと、被熱処理物が載置可能であり、被熱処理物が載置された状態で前後方向に移動可能な第1搬送部と、被熱処理物が載置可能であるとともに、熱処理炉本体の炉床壁を貫通している第2搬送部であって、前後方向に直交する上下方向に移動することにより被熱処理物が第2搬送部に載置されて第1搬送部に載置されていない状態とすることが可能な第2搬送部と、を備えている。
【0007】
上記の構成によれば、第1搬送部が前後方向に移動する一方で、炉床壁を貫通する第2搬送部が上下方向に移動するため、炉床壁の貫通孔の前後方向の長さを、貫通孔内における第2搬送部の前後方向の長さと略同一にすることができる。このため、第2搬送部と炉床壁との間に大きな隙間が形成されることを抑制することができる。これにより、熱処理炉本体内のガスや熱が炉床壁から漏出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例のウォーキングビーム炉の断面図である。
図2】実施例の第1搬送部と第2搬送部近傍のウォーキングビーム炉の断面図である。
図3】実施例の第1搬送部と第1引張器と第2引張器の上面図である。
図4】実施例の第1ピンと第2ピンが被熱処理物を支持する様子を示す図である。
図5】実施例のウォーキングビーム炉において、第1ピンが後端位置にあり、かつ第2ピンが下端位置にあるときの断面図である。
図6】実施例のウォーキングビーム炉において、第1ピンが前端位置にあり、かつ第2ピンが下端位置にあるときの断面図である。
図7】実施例のウォーキングビーム炉において、第1ピンが前端位置にあり、かつ第2ピンが上端位置にあるときの断面図である。
図8】実施例のウォーキングビーム炉において、第1ピンが後端位置にあり、かつ第2ピンが上端位置にあるときの断面図である。
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、ウォーキングビーム炉は、第1搬送部を前方向に引っ張る第1引張器と、第1搬送部を後方向に引っ張る第2引張器と、をさらに備えていてもよい。上記の構成によれば、簡素な構成により、第1搬送部を前後方向に移動させることができる。
【0011】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第2の態様において、第1搬送部は、前後方向に間隔を空けて並んで配置されている複数の搬送基部と、前後方向に隣接する搬送基部を接続する接続部と、を備えていてもよい。上記の構成によれば、第1引張器が第1搬送部を前方向に引っ張っているときと、第2引張器が第1搬送部を後方向に引っ張っているときに、隣接する搬送基部の間隔が変化することを抑制することができる。
【0012】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第1から第3の態様のいずれか1つにおいて、ウォーキングビーム炉は、前後方向に延びている擦し板をさらに備えていてもよい。第1搬送部は、前後方向に移動するときに擦し板上を摺動してもよい。上記の構成によれば、第1搬送部は、前後方向にスムーズに移動することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第4の態様において、ウォーキングビーム炉は、擦し板を囲む囲壁をさらに備えていてもよい。上記の構成によれば、熱処理炉本体内の熱が擦し板に伝わることを抑制することができる。また、第1搬送部が擦し板上を繰り返し移動したとき、第1搬送部および/または擦し板から粉が発生することがある。上記の構成によれば、粉が囲壁の外側に飛散することを抑制することができる。
【0014】
本明細書に開示する技術の第6の態様では、上記の第1から第5の態様のいずれか1つにおいて、第1搬送部は、前後方向に並んでいるとともに、前後方向と上下方向に直交する左右方向に少なくとも2列に並んでいる複数の第1ピンを備えていてもよい。第1ピンは、上下方向に延びており、上端で被熱処理物を載置可能であってもよい。上記の構成によれば、被熱処理物を第1搬送部上に安定して載置することができる。
【0015】
本明細書に開示する技術の第7の態様では、上記の第6の態様において、第2搬送部は、前後方向に並んでいるとともに、左右方向に少なくとも2列に並んでいる複数の第2ピンと、熱処理炉本体の炉床壁を貫通して上下方向に延びており、複数の第2ピンを上下方向に移動させる昇降器と、を備えていてもよい。第2ピンは、昇降器の動作により、下端位置と上端位置との間を移動可能であってもよい。第2ピンが下端位置から上端位置に移動したとき、複数の第1ピンの上端に載置されていた被熱処理物が、複数の第1ピンの上端から離れて複数の第2ピンの上端に載置されてもよい。上記の構成によれば、被熱処理物を第2搬送部上に安定して載置することができる。また、複数の第2ピンの上下方向の移動により、被熱処理物を第1搬送部と第2搬送部上に容易に載せ替えることができる。
【0016】
本明細書に開示する技術の第8の態様では、上記の第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、ウォーキングビーム炉は、熱処理炉本体の入口側に配置されており、熱処理前の被熱処理物が巻回されている入口側ロールと、熱処理炉本体の出口側に配置され、熱処理後の被熱処理物が巻回される出口側ロールと、をさらに備えていてもよい。ウォーキングビーム炉は、入口側ロールから送り出された被熱処理物が熱処理空間を移動して出口側ロールに巻き取られるロールトゥロール方式の炉であってもよい。上記の構成によれば、被熱処理物を連続して熱処理することができる。
【0017】
(実施例)
図1に示すように、実施例のウォーキングビーム炉10は、ロールトゥロール方式の炉である。ウォーキングビーム炉10は、被熱処理物2を連続して熱処理して、セラミックス製の被熱処理物2を製造する。被熱処理物2は、例えば、シート形状を有する。セラミックス製の被熱処理物2は、例えば、リチウムイオン電池の電極に使用される。以下では、ウォーキングビーム炉10の長手方向を前後方向と呼び、前後方向に直交する方向を左右方向と呼び、前後方向と左右方向に直交する方向を上下方向と呼ぶ。
【0018】
ウォーキングビーム炉10は、熱処理炉12と、入口側ロール14と、出口側ロール16と、搬送ユニット18と、制御ユニット20と、を備えている。
【0019】
熱処理炉12は、熱処理炉本体22と、複数のヒータ23と、複数(本実施例では3個)の擦し板24と、複数(本実施例では3個)の囲壁26と、を備えている。熱処理炉本体22は、前後方向に長手方向を有する略直方体形状の断熱構造体である。熱処理炉本体22は、内部に熱処理空間30を画定している。熱処理炉本体22は、天井壁32と、炉床壁34と、側壁36と、を備えている。炉床壁34は、天井壁32の下側に配置されている。側壁36は、天井壁32と炉床壁34とを接続している。側壁36は、前壁部40と、前壁部40と対向している後壁部42と、前壁部40から後壁部42まで延びる左側壁部および右側壁部(図示省略)と、を備えている。
【0020】
側壁36は、入口44と、出口46と、を有している。入口44は、前壁部40を貫通している。出口46は、後壁部42を貫通している。出口46は、入口44と対向している。熱処理空間30は、入口44と出口46のそれぞれを介して、熱処理炉本体22の外部の空間と連通している。
【0021】
複数のヒータ23は、熱処理空間30内で前後方向に並んで配置されている。複数のヒータ23は、天井壁32の近傍に配置されている。ヒータ23は、制御ユニット20により制御されて、熱処理空間30内を加熱する。ヒータ23が加熱すると、熱処理空間30の温度は、例えば、200度以上、好ましくは400度以上、より好ましくは600度以上となる。また、熱処理空間30の温度は、1500度以下、好ましくは1400度以下となる。本実施例では、熱処理空間30の温度は1300度である。
【0022】
擦し板24は、熱処理空間30内を前後方向に延びている。擦し板24は、炉床壁34上に載置されている。擦し板24は、平板形状を有する。擦し板24は、例えば、セラミックスからなる。図2に示すように、3個の擦し板24は、左右方向に並んでいる。中央の擦し板24は、右端の擦し板24と左端の擦し板24との間の中心に配置されている。
【0023】
図1に示すように、囲壁26は、熱処理空間30内を前後方向に延びている。囲壁26は、例えば、セラミックスからなる。図2に示すように、3個の囲壁26は、左右方向に並んでいる。囲壁26の数は、擦し板24の数と同一である。囲壁26は、炉床壁34上に配置されている。囲壁26は、炉床壁34との間に、収容空間48を画定している。擦し板24は、収容空間48に配置されている。即ち、囲壁26と炉床壁34は、擦し板24を囲んでいる。また、囲壁26は、熱処理空間30と収容空間48とを分けている。
【0024】
図1に示すように、入口側ロール14は、熱処理炉本体22の外部の空間において、熱処理炉本体22の入口44側に配置されている。入口側ロール14には、熱処理前の被熱処理物2が巻回されている。出口側ロール16は、熱処理炉本体22の外部の空間において、熱処理炉本体22の出口46側に配置されている。入口側ロール14と出口側ロール16が回転し、かつ搬送ユニット18が動作すると、被熱処理物2は、入口側ロール14から引き出され、その後に、入口44から熱処理空間30に入る。被熱処理物2は、熱処理空間30を前方向に移動している間に、ヒータ23により熱処理される。被熱処理物2は、熱処理されることによりセラミックスに変化する。熱処理された被熱処理物2は、出口46から熱処理炉本体22の外部の空間に出て、出口側ロール16に巻き取られる。
【0025】
搬送ユニット18は、第1搬送部50と、第1引張器52と、第2引張器54と、第2搬送部56と、を備えている。第1搬送部50は、熱処理空間30内を前後方向に延びている。
【0026】
図2に示すように、第1搬送部50は、第1左搬送部62と、第1中央搬送部64と、第1右搬送部66と、を備えている。第1左搬送部62と、第1中央搬送部64と、第1右搬送部66は、左右方向に並んでいる。第1左搬送部62と、第1中央搬送部64と、第1右搬送部66は、例えば、セラミックスからなる。第1左搬送部62は、左端の擦し板24上に配置されている。第1中央搬送部64は、中央の擦し板24上に配置されている。第1右搬送部66は、右端の擦し板24上に配置されている。
【0027】
第1左搬送部62は、複数の左搬送基部70と、複数の左接続部72(図3参照)と、複数の第1左ピン74と、を備えている。左搬送基部70は、左端の囲壁26に囲まれることにより、収容空間48に配置されている。左搬送基部70は、擦し板24上に配置されている。図3に示すように、複数の左搬送基部70は、前後方向に間隔を空けて並んで配置されている。左接続部72は、前後方向に隣接する左搬送基部70の間に配置されている。左接続部72は、前後方向に隣接する左搬送基部70を接続する。複数の第1左ピン74は、複数の左搬送基部70のそれぞれに設けられ、前後方向に並んで配置されている。図2に示すように、第1左ピン74は、略円柱形状を有する。第1左ピン74は、左搬送基部70から上方向に延びている。囲壁26の上壁には、前後方向に延びるスリット状の連通孔26aが形成されており、第1左ピン74は、連通孔26aを通って熱処理空間30まで延びている。第1左ピン74の上端74aには、被熱処理物2が載置可能である。
【0028】
第1中央搬送部64は、第1左搬送部62と第1右搬送部66との間の中心に配置されている。第1中央搬送部64は、第1左搬送部62の構成と同様の構成を有する。即ち、第1中央搬送部64は、複数の中央搬送基部76と、複数の中央接続部78(図3参照)と、複数の第1中央ピン80と、を備えている。
【0029】
第1右搬送部66は、第1左搬送部62の構成と同様の構成を有する。即ち、第1右搬送部66は、複数の右搬送基部82と、複数の右接続部84(図3参照)と、複数の第1右ピン86と、を備えている。
【0030】
図4に示すように、複数の第1左ピン74の群と、複数の第1中央ピン80の群と、複数の第1右ピン86の群は、左右方向に並んで配置されている。以下では、第1左ピン74と第1中央ピン80と第1右ピン86とを区別する必要がないときは、単に第1ピン(74、80、86)という。即ち、本実施例の第1搬送部50は、左右方向に3列に並んでいる複数の第1ピン74、80、86を備えている。複数の第1左ピン74は、被熱処理物2の左端近傍を下側から支持する。複数の第1中央ピン80は、被熱処理物2の左右方向の中心SLを下側から支持する。被熱処理物2の中心SLは、熱処理後の被熱処理物2を左右方向に分割するときのスリット箇所に対応する。複数の第1右ピン86は、被熱処理物2の右端近傍を下側から支持する。
【0031】
図1に示すように、第1引張器52は、熱処理炉本体22の外部の空間において、熱処理炉本体22の出口46側に配置されている。第2引張器54は、熱処理炉本体22の外部の空間において、熱処理炉本体22の入口44側に配置されている。図3に示すように、第1引張器52は、前端の左搬送基部70と、前端の中央搬送基部76と、前端の右搬送基部82のそれぞれに接続されている。また、第2引張器54は、後端の左搬送基部70と、後端の中央搬送基部76と、後端の右搬送基部82のそれぞれに接続されている。第1引張器52は、制御ユニット20に制御されて、前端の左搬送基部70と、前端の中央搬送基部76と、前端の右搬送基部82を同時に前方向に引っ張る。これにより、第1搬送部50が前方向に移動する。このとき、第2引張器54は、制御ユニット20に制御されて、後端の左搬送基部70と、後端の中央搬送基部76と、後端の右搬送基部82を前方向と反対の後方向に引っ張っている。第2引張器54による引張力は、第1引張器52による引張力よりも小さい。これにより、第1搬送部50を前方向に真っ直ぐに移動させることができる。また、第2引張器54は、後端の左搬送基部70と、後端の中央搬送基部76と、後端の右搬送基部82を同時に後方向に引っ張る。これにより、第1搬送部50が後方向に移動する。このとき、第1引張器52は、前端の左搬送基部70と、前端の中央搬送基部76と、前端の右搬送基部82を前方向に引っ張っている。第1引張器52による引張力は、第2引張器54による引張力よりも小さい。これにより、第1搬送部50を後方向に真っ直ぐに移動させることができる。よって、第1引張器52と第2引張器54の動作により、複数の第1ピン88のそれぞれは、前端位置と後端位置との間を移動する。
【0032】
図2に示すように、第2搬送部56は、昇降器90と、第2左搬送部92と、第2中央搬送部94と、第2右搬送部96と、を備えている。昇降器90は、昇降手段98と、板部材100と、複数の左柱部材102と、複数の中央柱部材104と、複数の右柱部材106と、を備えている。昇降手段98と板部材100は、熱処理炉本体22の外部の空間に配置されている。昇降手段98は、カム部材であり、制御ユニット20(図1参照)に制御されて回動軸RX周りを回動することにより、板部材100と、左柱部材102と、中央柱部材104と、右柱部材106を上下方向に移動させる。板部材100は、昇降手段98の上側に配置され、昇降手段98のカム面に当接している。
【0033】
図1に示すように、複数の左柱部材102は、前後方向に並んで配置されており、複数の中央柱部材104は、前後方向に並んで配置されており、複数の右柱部材106は、前後方向に並んで配置されている。図2に示すように、複数の左柱部材102の群と、複数の中央柱部材104の群と、複数の右柱部材106の群は、左右方向に並んで配置されている。
【0034】
左柱部材102は、板部材100から上方向に延びている。熱処理炉本体22の炉床壁34には、上下方向に貫通する複数の貫通孔34aが形成されており、左柱部材102が貫通孔34aに挿入されている。なお、図2では、貫通孔34aが、一点鎖線で図示されている。図4に示すように、複数の貫通孔34aは、左右方向に3列に並んで配置されており、各列の複数の貫通孔34aは、前後方向に並んで配置されている。なお、図4では、貫通孔34aが破線により図示されている。図2に示すように、左柱部材102は、略円柱形状を有する。左柱部材102の直径は、貫通孔34aの直径と略同一である。このため、左柱部材102の前後方向の長さは、貫通孔34aの前後方向の長さと略同一である。また、左柱部材102の左右方向の長さは、貫通孔34aの左右方向の長さと略同一である。左柱部材102は、貫通孔34aを通って熱処理空間30まで延びている。
【0035】
中央柱部材104は、左柱部材102の構成と同様の構成を有する。即ち、中央柱部材104の前後方向の長さは、貫通孔34aの前後方向の長さと略同一であり、中央柱部材104の左右方向の長さは、貫通孔34aの左右方向の長さと略同一である。また、中央柱部材104は、貫通孔34aを通って熱処理空間30まで延びている。
【0036】
右柱部材106は、左柱部材102の構成と同様の構成を有する。即ち、右柱部材106の左右方向の長さは、貫通孔34aの左右方向の長さと略同一であり、右柱部材106の左右方向の長さは、貫通孔34aの左右方向の長さと略同一である。右柱部材106は、貫通孔34aを通って熱処理空間30まで延びている。
【0037】
第2左搬送部92と、第2中央搬送部94と、第2右搬送部96は、熱処理空間30内に左右方向に並んで配置されている。第2左搬送部92と、第2中央搬送部94と、第2右搬送部96は、昇降手段98の回動により、板部材100と共に上下方向に移動する。
【0038】
図1に示すように、第2左搬送部92は、複数の左抜け止め部材110と、複数の第2左ピン112と、を備えている。複数の左抜け止め部材110は、前後方向に並んで配置されている。また、複数の第2左ピン112は、前後方向に並んで配置されている。図2に示すように、左抜け止め部材110は、左柱部材102の上端に固定されている。左抜け止め部材110は、炉床壁34の貫通孔34aよりも大きい。このため、左抜け止め部材110は、貫通孔34aを通過することができない。第2左ピン112は、左抜け止め部材110から上方向に延びている。第2左ピン112は、略円柱形状を有する。第2左ピン112は、第1左ピン74よりも左側にオフセットしている。第2左ピン112は、左端の囲壁26近傍に配置されている。第2左ピン112の上端112aは、囲壁26の連通孔26aよりも上側に配置されている。第2左ピン112は、昇降器90の動作により、上端位置と下端位置との間を移動する。
【0039】
第2中央搬送部94は、第2左搬送部92の構成と同様の構成を有する。即ち、図1に示すように、第2中央搬送部94は、複数の中央抜け止め部材116と、複数の第2中央ピン118と、を備えている。また、図2に示すように、第2中央ピン118は、第1中央ピン80よりも右側にオフセットしている。
【0040】
第2右搬送部96は、第2左搬送部92の構成と同様の構成を有する。即ち、図1に示すように、第2右搬送部96は、複数の右抜け止め部材122と、複数の第2右ピン124と、を備えている。また、図2に示すように、第2右ピン124は、第1右ピン86よりも右側にオフセットしている。
【0041】
図4に示すように、複数の第2左ピン112の群と、複数の第2中央ピン118の群と、複数の第2右ピン124の群は、左右方向に並んで配置されている。以下では、第2左ピン112と第2中央ピン118と第2右ピン124とを区別する必要がないときは、単に第2ピン(112、118、124)という。即ち、本実施例の第2搬送部56は、左右方向に3列に並んでいる複数の第2ピン112、118、124を備えている。複数の第2左ピン112は、第1左ピン74よりも左側で、被熱処理物2の左端近傍を下側から支持する。複数の第2中央ピン118は、第1中央ピン80よりも右側で、被熱処理物2の中心SL近傍を下側から支持する。複数の第2右ピン124は、第1右ピン86よりも右側で、被熱処理物2の右端近傍を下側から支持する。
【0042】
次に、図5から図8を参照して、搬送ユニット18が被熱処理物2を搬送する動作を説明する。図5から図8では、被熱処理物2が搬送される様子を理解し易くするために、被熱処理物2が領域A、B、Cに区分けされている。また、図5から図8では、被熱処理物2の厚みが誇張して図示されている。さらに、図5から図8では、炉床壁34の貫通孔34aが破線により図示されている。
【0043】
(前移動工程)
図5では、第1ピン74、80、86は、後端位置に位置しており、第2ピン112、118、124は、下端位置に位置している。第2ピン112、118、124が下端位置に位置しているとき、第2ピン112、118、124の上端112a、118a、124aは、第1ピン74、80、86の上端74a、80a、86aよりも下側に配置されている。このため、被熱処理物2は、複数の第1ピン74、80、86の上端74a、80a、86a上に載置されており、複数の第2ピン112、118、124の上端112a、118a、124a上に載置されていない。図6に示すように、第1引張器52(図3参照)が第1搬送部50を前方向に引っ張ると、複数の第1ピン74、80、86は、後端位置から前端位置に移動する。複数の第1ピン74、80、86の移動に伴い、被熱処理物2は、前方向に移動する。
【0044】
(上移動工程)
次に、図7に示すように、昇降手段98(図2参照)が第1方向D1(図1参照)に回動すると、板部材100と、複数の左柱部材102と、複数の中央柱部材104と、複数の右柱部材106と、第2左搬送部92と、第2中央搬送部94と、第2右搬送部96が上方向に移動する。これにより、複数の第2ピン112、118、124は、下端位置から上端位置に移動する。第2ピン112、118、124が上端位置に位置しているとき、第2ピン112、118、124の上端112a、118a、124aは、第1ピン74、80、86の上端74a、80a、86aよりも上側に配置されている。このため、複数の第2ピン112、118、124の移動に伴い、複数の第1ピン74、80、86の上端74a、80a、86aに載置されていた被熱処理物2は、複数の第1ピン74、80、86の上端74a、80a、86aから離れて、複数の第2ピン112、118、124の上端112a、118a、124a上に載置される。
【0045】
(後移動工程)
次に、図8に示すように、第2引張器54(図3参照)が第1搬送部50を後方向に引っ張ると、複数の第1ピン74、80、86は、前端位置から後端位置に移動する。被熱処理物2が複数の第1ピン74、80、86の上端74a、80a、86a上に載置されていないため、被熱処理物2は、後方向に移動しない。
【0046】
(下移動工程)
次に、図5に示すように、昇降手段98(図2参照)が第1方向D1と反対の第2方向D2(図1参照)に回動すると、板部材100と、複数の左柱部材102と、複数の中央柱部材104と、複数の右柱部材106と、第2左搬送部92と、第2中央搬送部94と、第2右搬送部96が下方向に移動する。これにより、複数の第2ピン112、118、124は、上端位置から下端位置に移動する。複数の第2ピン112、118、124の移動に伴い、複数の第2ピン112、118、124の上端112a、118a、124aに載置されていた被熱処理物2は、複数の第2ピン112、118、124の上端112a、118a、124aから離れて、複数の第1ピン74、80、86の上端74a、80a、86a上に載置される。
【0047】
上記の前移動工程と、上移動工程と、後移動工程と、下移動工程が繰り返し実行されることにより、被熱処理物2が熱処理空間30内を前方向に移動する。
【0048】
(効果)
本実施例のウォーキングビーム炉10では、被熱処理物2を前方向に搬送する第1搬送部50が熱処理炉本体22内に配置され、被熱処理物2を上下方向に移動させる第2搬送部56(詳細には、柱部材102、104、106)が炉床壁34の貫通孔34aを貫通する。したがって、炉床壁34の貫通孔34aの前後方向の長さを、貫通孔34a内における柱部材102、104、106の前後方向の長さと略同一にすることができる。このため、柱部材102、104、106と炉床壁34との間に大きな隙間が形成されることを抑制することができる。これにより、熱処理炉本体22内のガスや熱が炉床壁34から漏出することを抑制することができる。
【0049】
(変形例)
一実施形態では、第1搬送部50の複数の第1ピン74、80、86は、左右方向に2列に、または4列以上に並んでいてもよい。
【0050】
一実施形態では、第2搬送部56の複数の第2ピン112、118、124は、左右方向に2列に、または4列以上に並んでいてもよい。
【0051】
一実施形態では、ウォーキングビーム炉10は、入口側ロール14と、出口側ロール16と、を備えていなくてもよい。この場合、ウォーキングビーム炉10は、熱処理炉本体22の外部の空間において熱処理炉本体22の入口44側に配置されている複数の入口側ローラと、熱処理炉本体22の外部の空間において熱処理炉本体22の出口46側に配置されている複数の出口側ローラと、を備えていてもよい。被熱処理物2は、複数の入口側ローラが回転することにより、複数の入口側ローラ上を移動し、熱処理炉本体22の入口44から熱処理空間30に入ってもよい。また、被熱処理物2は、複数の出口側ローラが回転することにより、熱処理炉本体22の出口46から熱処理空間30の外部に出て、複数の出口側ローラ上を移動してもよい。
【0052】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
2 :被熱処理物
10 :ウォーキングビーム炉
12 :熱処理炉
14 :入口側ロール
16 :出口側ロール
18 :搬送ユニット
20 :制御ユニット
22 :熱処理炉本体
23 :ヒータ
24 :擦し板
26 :囲壁
30 :熱処理空間
34 :炉床壁
34a :貫通孔
44 :入口
46 :出口
50 :第1搬送部
52 :第1引張器
54 :第2引張器
56 :第2搬送部
62 :第1左搬送部
64 :第1中央搬送部
66 :第1右搬送部
70 :左搬送基部
72 :左接続部
74 :第1左ピン
74a :上端
76 :中央搬送基部
78 :中央接続部
80 :第1中央ピン
80a :上端
82 :右搬送基部
84 :右接続部
86 :第1右ピン
86a :上端
90 :昇降器
92 :第2左搬送部
94 :第2中央搬送部
96 :第2右搬送部
98 :昇降手段
102 :左柱部材
104 :中央柱部材
106 :右柱部材
112 :第2左ピン
112a :上端
118 :第2中央ピン
118a :上端
124 :第2右ピン
124a :上端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8