(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080981
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び画像データ処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194362
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 章江
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601EE11
4C601KK21
4C601KK25
4C601KK31
4C601KK35
4C601LL14
4C601LL33
(57)【要約】
【課題】超音波検査において、画像比較で用いる画像データ群が早々に取得されるようにする。
【解決手段】取得部42は、超音波検査の開始後且つ画像比較の開始前に、被検者の過去の検査で得られた画像データ群をサーバー18から取得するバックグラウンド取得処理を開始する。表示処理部46は、リアルタイム超音波画像としての現在画像と、画像データ群の中から選択された画像データに基づく過去画像(参照画像)と、を並列表示する。バックグラウンド取得処理では、静止画像データの取得が、動画像データ及びボリュームデータの取得よりも、優先される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に対する現在の超音波検査において、前記被検者に対する過去の検査で得られた画像データ群をサーバーから取得する取得部と、
前記現在の超音波検査において、前記画像データ群の中から特定の画像データが選択された場合に、リアルタイム超音波画像である現在画像と前記特定の画像データに基づいて生成された過去画像とを表示する表示処理を実行する表示処理部と、
を含み、
前記取得部は、前記表示処理の開始に先立って、前記現在の超音波検査の開始時に特定された被検者情報に基づいて前記サーバーから前記画像データ群を取得するバックグラウンド取得処理を開始する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記被検者情報は、前記現在の超音波検査の開始時に表示される初期画像に対して入力された情報である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記現在の超音波検査の開始前又は開始時に抽出条件が指定され、
前記取得部は、前記被検者に対する過去の検査で生成され且つ前記抽出条件を満たす画像データ群を前記画像データ群として前記サーバーから取得する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記抽出条件には、前記過去の検査の時期を限定するための条件、前記過去の検査を実施した医療装置を限定するための条件、及び、前記過去の検査において検査対象となった組織を限定するための条件、の内で少なくとも1つが含まれる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記取得部は、前記サーバーから取得しようとする画像データ群の中に静止画像データ及び動画像データが含まれる場合、前記バックグラウンド取得処理において前記静止画像データの取得の開始を前記動画像データの取得の開始よりも先行させる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記取得部は、前記サーバーから取得しようとする画像データ群の中に静止画像データ及びボリュームデータが含まれる場合、前記バックグラウンド取得処理において前記静止画像データの取得の開始を前記ボリュームデータの取得の開始よりも先行させる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6記載の超音波診断装置において、
前記取得部は、前記サーバーから取得しようとする画像データ群の中に前記ボリュームデータが含まれる場合、前記バックグラウンド取得処理において前記ボリュームデータ中の代表フレームデータの取得の開始を前記ボリュームデータの取得の開始よりも先行させ、
前記表示処理部は、前記代表フレームデータに基づいて前記ボリュームデータを表す画像を生成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記画像データ群には動画像データが含まれ、
前記表示処理部は、前記動画像データの取得中において、前記動画像データに対応するサムネイル画像表示領域にデータ取得中を示す情報を表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項8記載の超音波診断装置において、
前記データ取得中を示す情報には、前記動画像データを構成するフレームデータの個数を示す情報が含まれる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項7記載の超音波診断装置において、
前記表示処理部は、前記ボリュームデータの取得中において、前記代表フレームデータに基づくサムネイル画像の上に又は近傍に、データ取得中を示す情報を表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
請求項10記載の超音波診断装置において、
前記データ取得中を示す情報には、取得済みフレームデータの個数を示す情報が含まれる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項12】
被検者に対する現在の超音波検査において、前記被検者に対する過去の検査で得られた画像データ群をサーバーから取得する工程と、
前記現在の超音波検査において、前記画像データ群の中から特定の画像データが選択された場合に、リアルタイム超音波画像である現在画像と前記特定の画像データに基づいて生成された過去画像とを表示する表示処理を実行する工程と、
を含み、
前記表示処理の開始に先立って、前記現在の超音波検査の開始時に特定された被検者情報に基づいて前記サーバーから前記画像データ群を取得するバックグラウンド取得処理が開始される、
ことを特徴とする画像データ処理方法。
【請求項13】
超音波診断装置において実行されるプログラムであって、
被検者に対する現在の超音波検査において、前記被検者に対する過去の検査で得られた画像データ群をサーバーから取得する機能と、
前記現在の超音波検査において、前記画像データ群の中から特定の画像データが選択された場合に、リアルタイム超音波画像である現在画像と前記特定の画像データに基づいて生成された過去画像とを表示する表示処理を実行する機能と、
を含み、
前記表示処理の開始に先立って、前記現在の超音波検査の開始時に特定された被検者情報に基づいて前記サーバーから前記画像データ群を取得するバックグラウンド取得処理が開始される、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置及び画像データ処理方法に関し、特に、画像データの取得及び処理に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査では超音波診断装置が利用される。超音波診断装置は、被検者の体内への超音波の送信及び被検者の体内からの反射波の受信により、超音波画像を形成する装置である。超音波診断装置は、必要に応じて、ネットワークを介してサーバーに接続される。
【0003】
サーバーには、超音波診断装置において生成された画像データ、及び、他の医療装置(他の検査装置)において生成された画像データが格納される。他の医療装置として、CT(Computed Tomography)検査で使用されるCT装置、MR検査(Magnetic Resonance Imaging)で使用されるMRI装置等が挙げられる。なお、以下においては、MRI装置で生成された画像をMR画像と表現する。
【0004】
検査装置で生成される画像データとして、静止画像データ、動画像データ、ボリュームデータ等が挙げられる。動画像データは、時間的に並ぶ複数のフレームデータにより構成される。ボリュームデータは、空間的に並ぶ複数のフレームデータ(複数のスライスデータ)により構成される。
【0005】
一般に、超音波診断装置は、画像比較のための表示処理を行う機能(画像比較機能)を有する。画像比較機能の実行により、リアルタイム超音波画像としての現在画像と、現在画像に対応する画像であって過去に取得された過去画像(参照画像)と、が並んで表示される。過去画像は、例えば、超音波画像、CT画像、又は、MR画像である。通常、超音波検査は、複数の工程により構成される。それらの工程の中には、画像比較が実施される1又は複数の工程が含まれる。
【0006】
従来においては、画像比較の開始が指示された時点で、又は、画像比較用の過去画像が選択された時点で、被検者の1又は複数の過去の検査が特定され、その後、その1又は複数の過去の検査で得られた画像データ群が特定される。その画像データ群がサーバーに格納されている場合、サーバーから超音波診断装置へ画像データ群が転送される(ダウンロード)。画像データ群が多数の画像データにより構成されている場合や、画像データ群の中に動画像データ又はボリュームデータが含まれている場合、画像データ群の取得が完了するまでに、かなりの時間を要する。画像データ群に基づいて画像選択用のサムネイル画像群が生成される。画像データ群の取得が遅れると、サムネイル画像群の表示が遅れてしまう。
【0007】
特許文献1は、超音波診断装置及びワークステーションにより構成されるシステムが開示されている。ワークステーションにおいて、現在画像及び過去画像が表示されている。特許文献1には、ワークステーションから超音波診断装置への画像データ群の転送については記載されておらず、特に、画像比較の開始前における画像データ群の転送については記載されていない。
【0008】
特許文献2及び特許文献3には、画像比較機能を有する超音波診断装置が開示されている。特許文献2及び特許文献3には、画像比較の開始前における画像データ群の先行転送については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開2018/047910号公報
【特許文献2】特開2008-183245号公報
【特許文献3】特開2008-188163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
画像比較の開始時又は開始後にサーバーからの画像データ群の取得を開始する場合、画像データ群の取得が完了する時期が遅くなる。これにより、画像データ群に基づくサムネイル画像群の表示の遅れ、ひいては、過去画像の表示の遅れという問題が生じる。そのような遅れは、超音波検査効率を低下させるものである。
【0011】
本開示の目的は、画像比較で用いる画像データ群の取得が完了する時期を早めることにある。あるいは、本発明の目的は、画像比較の開始後においてサムネイル画像群の一部又は全部が速やかに表示されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る超音波診断装置は、被検者に対する現在の超音波検査において、前記被検者に対する過去の検査で得られた画像データ群をサーバーから取得する取得部と、前記現在の超音波検査において、前記画像データ群の中から特定の画像データが選択された場合に、リアルタイム超音波画像である現在画像と前記特定の画像データに基づいて生成された過去画像とを表示する表示処理を実行する表示処理部と、を含み、前記取得部は、前記表示処理の開始に先立って、前記現在の超音波検査の開始時に特定された被検者情報に基づいて前記サーバーから前記画像データ群を取得するバックグラウンド取得処理を開始する、ことを特徴とする。
【0013】
本開示に係る画像データ処理方法は、被検者に対する現在の超音波検査において、前記被検者に対する過去の検査で得られた画像データ群をサーバーから取得する工程と、前記現在の超音波検査において、前記画像データ群の中から特定の画像データが選択された場合に、リアルタイム超音波画像である現在画像と前記特定の画像データに基づいて生成された過去画像とを表示する表示処理を実行する工程と、を含み、前記表示処理の開始に先立って、前記現在の超音波検査の開始時に特定された被検者情報に基づいて前記サーバーから前記画像データ群を取得するバックグラウンド取得処理が開始される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、画像比較で用いる画像データ群の取得の完了が早まる。あるいは、本開示によれば、画像比較の開始後においてサムネイル画像群の一部又は全部を速やかに表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
【
図7】ダウンロード中に表示されるサムネイル画像の第1例を示す図である。
【
図8】ダウンロード中に表示されるサムネイル画像の第2例を示す図である。
【
図9】ダウンロード中に表示されるサムネイル画像の変形例を示す図である。
【
図10】超音波診断装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図11】超音波診断装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】第1管理テーブル(検査管理テーブル)の一例を示す図である。
【
図13】第2管理テーブル(工程管理テーブル)の一例を示す図である。
【
図14】第3管理テーブル(画像管理テーブル)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、取得部及び表示処理部を有する。取得部は、被検者に対する現在の超音波検査において、当該被検者に対する過去の検査で得られた画像データ群をサーバーから取得する。表示処理部は、現在の超音波検査において、画像データ群の中から特定の画像データが選択された場合に、リアルタイム超音波画像である現在画像と特定の画像データに基づいて生成された過去画像とを表示する表示処理を実行する。取得部は、表示処理の開始に先立って、現在の超音波検査の開始時に特定された被検者情報に基づいてサーバーから画像データ群を取得するバックグラウンド取得処理を開始する。
【0018】
上記構成によれば、画像比較のための表示処理の開始に先立って、バックグラウンド取得処理が開始されるので、画像データ群の取得の完了を早められる。よって、画像データ群に基づいて生成されるサムネイル画像群の表示の開始を早められる。表示処理の開始前に画像データ群の取得が完了していれば、サムネイル画像群の表示の遅れや過去画像の表示の遅れは生じない。
【0019】
実施形態において、画像データ群は少なくとも1つの画像データにより構成される。過去の検査には、超音波検査、CT検査、MRI検査、等が含まれる。実施形態においては、画像データ群の中に、小さなデータ量を有する第1の画像データと、大きなデータ量を有する第2の画像データとが含まれる場合、第1の画像データの取得が第2の画像データの取得よりも優先される。これにより、画像比較の開始時にバックグラウンド取得処理が完了していない場合でも、サムネイル画像群の一部が表示される時期を早められる。
【0020】
実施形態において、被検者情報は、現在の超音波検査の開始時に表示される初期画像に対して入力された情報である。この構成によれば、超音波検査の開始時に入力される情報を用いてバックグラウンド取得処理を自動的に実行させることができる。バックグラウンド取得処理を実行させるためのユーザーの負担は生じない。初期画像に対する情報入力は通常、マニュアルで実施されるが、それが自動的に実施されてもよい。
【0021】
実施形態において、現在の超音波検査の開始前又は開始時に抽出条件が指定される。取得部は、被検者に対する過去の検査で生成され且つ抽出条件を満たす画像データ群を、上記の画像データ群として、サーバーから取得する。この構成によれば、取得する画像データ群を絞り込める。これにより、不必要な画像データの取得を回避できる。実施形態において、画像データ群の絞り込みは超音波診断装置において実施される。例えば、サーバーへの段階的な問い合わせを通じて、抽出条件を満たす画像データ群が絞り込まれる。画像データ群の絞り込みがサーバーにおいて実施されてもよい。
【0022】
実施形態において、抽出条件には、過去の検査の時期を限定するための条件、過去の検査を実施した医療装置を限定するための条件、及び、過去の検査において検査対象となった組織を限定するための条件、の内で少なくとも1つが含まれる。抽出条件に他の条件が含まれてもよい。
【0023】
実施形態において、取得部は、サーバーから取得しようとする画像データ群の中に静止画像データ及び動画像データが含まれる場合、バックグラウンド取得処理において静止画像データの取得の開始を動画像データの取得の開始よりも先行させる。この構成によれば、静止画像データに対応するサムネイル画像が表示される時期を早められる。換言すれば、多数のフレームデータからなる動画像データの取得を後回しにすることができる。
【0024】
実施形態において、取得部は、サーバーから取得しようとする画像データ群の中に静止画像データ及びボリュームデータが含まれる場合、バックグラウンド取得処理において静止画像データの取得の開始をボリュームデータの取得の開始よりも先行させる。この構成によれば、静止画像データに対応するサムネイル画像が表示される時期を早められる。換言すれば、多数のフレームデータ(多数のスライスデータ)からなるボリュームデータの取得を後回しにすることができる。
【0025】
実施形態において、取得部は、サーバーから取得しようとする画像データ群の中にボリュームデータが含まれる場合、バックグラウンド取得処理においてボリュームデータ中の代表フレームデータの取得の開始をボリュームデータの取得の開始よりも先行させる。表示処理部は、代表フレームデータに基づいてボリュームデータを表すサムネイル画像を生成する。この構成によれば、ボリュームデータについては、それを表すサムネイル画像が表示される時期を早められる。
【0026】
実施形態において、画像データ群には動画像データが含まれる。表示処理部は、動画像データの取得中において、動画像データに対応するサムネイル画像表示領域にデータ取得中を示す情報を表示する。この構成によれば、ユーザーにおいて動画像データの取得が未だ完了していないことを通知できる。
【0027】
実施形態において、データ取得中を示す情報には、動画像データを構成するフレームデータの個数を示す情報が含まれる。この構成によれば、動画像データのダウンロードに要する時間についての目安をユーザー(医師、検査技師等)に提供できる。なお、静止画像データのダウンロード中にデータ取得中を示す情報が表示されてもよい。
【0028】
実施形態において、表示処理部は、ボリュームデータの取得中において、代表フレームデータに基づくサムネイル画像の上に又は近傍に、データ取得中を示す情報を表示する。この構成によれば、ボリュームデータの取得が未だ完了していないことをユーザーに通知できる。
【0029】
実施形態において、データ取得中を示す情報には、取得済みフレームデータの個数を示す情報が含まれる。この構成によれば、ボリュームデータのダウンロード進行度をユーザーに通知できる。
【0030】
実施形態に係るデータ処理方法は、取得工程及び表示処理工程を有する。取得工程では、被検者に対する現在の超音波検査において、当該被検者に対する過去の検査で得られた画像データ群がサーバーから取得される。表示処理工程では、現在の超音波検査において、画像データ群の中から特定の画像データが選択された場合に、リアルタイム超音波画像である現在画像と特定の画像データに基づいて生成された過去画像とを表示する表示処理が実行される。表示処理の開始に先立って、現在の超音波検査の開始時に特定された被検者情報に基づいてサーバーから画像データ群を取得するバックグラウンド取得処理が開始される。
【0031】
上記のデータ処理方法は、超音波診断装置において実施される。上記のデータ処理方法は、ハードウエアの機能として又はソフトウエアの機能として実現され得る。後者の場合、上記のデータ処理方法を実行するためのプログラムが、ネットワーク又は可搬型記憶媒体を介して、超音波診断装置へインストールされる。超音波診断装置は、情報処理装置であり、非一時的にプログラムを格納するための記憶媒体を含む。
【0032】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る検査システム10が示されている。検査システム10は、例えば、病院等の医療機関内に設置される。図示の例において、検査システム10は、超音波診断装置12、CT装置14、サーバー18、等を有する。それらの装置は、ネットワーク20を介して、相互に接続されている。ネットワーク20には、他の超音波診断装置22も接続されている。ネットワーク20にMRI装置等が接続されてもよい。実施形態においては、医療画像のための規格であるDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に従って、画像データがやり取りされる。サーバー18は、DICOMサーバーである。もちろん、他の規格の下で画像データがやり取りされてもよい。超音波診断装置12は画像比較機能を有する。超音波診断装置12が画像比較機能の実行に際して必要となる特定の画像データ(現在の超音波検査の対象者から取得された過去の画像データ)を有していないこともある。そのような場合に備えて、超音波診断装置12は、サーバー18に対して特定の画像データの存否を問い合わせてサーバー18上に特定の画像データが存在する場合にはそれを自動的に取得する機能を有する。これについては後に詳述する。
【0033】
超音波診断装置12,22で取得されたデータがサーバー18にアップロードされる。アップロードされるデータとして、静止画像データ及び動画像データが挙げられる。動画像データは、時間軸上に並ぶ複数のフレームデータからなる。
【0034】
CT装置14で取得されたCTボリュームデータがサーバー18にアップロードされる。超音波診断装置12,22からサーバーへ超音波ボリュームデータが送られてもよい。ボリュームデータは、被検体内の三次元空間から取得された三次元データであり、それは、通常、空間軸上に並ぶ複数のフレームデータ(複数のスライスデータ)からなる。サーバー18は、アップロードされた複数の画像データを格納する記憶部18Aを有している。記憶部18Aは、半導体メモリ、ハードディスク、等により構成される。
【0035】
超音波診断装置12は、超音波プローブ24を有する。超音波プローブ24は、超音波の送信及び受信を行う振動素子アレイを有する。振動素子アレイは、一次元配列された複数の振動素子により構成される。振動素子アレイによって超音波ビームが形成され、その超音波ビームが電子走査される。電子走査方式として、電子リニア走査方式、電子セクタ走査方式等が知られている。超音波プローブ24内には、必要に応じて、二次元振動素子アレイが設けられる。
【0036】
超音波プローブ24の位置及び姿勢を特定するための測位システムが設けられてもよい。測位システムは、例えば、磁気センサ、磁場発生器、及び、測位コントローラにより構成される。その構成を採用する場合、磁気センサが超音波プローブ24に設けられる。
【0037】
送受信部28は、送信部及び受信部により構成される。具体的には、送信部は、送信ビームフォーマーとしての電子回路により構成され、送信時において振動素子アレイに対して複数の送信信号を並列的に供給する。これにより送信ビームが形成される。受信部は、受信ビームフォーマーとしての電子回路により構成され、受信時において振動素子アレイから並列的に出力された複数の受信信号に対して整相加算を適用する。これにより受信ビームデータが生成される。
【0038】
超音波ビームの電子走査により被検者の体内にビーム走査面が形成される。ビーム走査面は二次元データ取込領域であり、それは観察断面と言い得る。超音波ビームの1回の電子走査当たり、電子走査方向に並ぶ複数の受信ビームデータが生成される。それらにより受信フレームデータが構成される。各受信ビームデータは、深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。超音波ビームの電子走査の繰り返しにより、複数の受信フレームデータが順次生成され、それらが情報処理部30へ順次送られる。
【0039】
情報処理部30は、1又は複数のプロセッサにより構成される。例えば、情報処理部30は、プログラムを実行するCPUにより構成される。
図1においては、情報処理部30により発揮される複数の機能が複数のブロックにより表現されている。
【0040】
情報処理部30は、超音波画像形成部38、参照画像生成部40、取得部42、サムネイル画像生成部44、等として機能する。情報処理部30は、表示処理部46としても機能する。表示処理部46は、画像比較のための表示処理を実行するモジュールであり、それは表示制御部とも言い得る。
図1に示す構成例では、表示処理部46が、超音波画像形成部38、参照画像生成部40、取得部42、及び、サムネイル画像生成部44を有している。情報処理部30は、超音波診断装置12内の各構成要素の動作を制御する。
【0041】
超音波画像形成部38は、入力される複数の受信フレームデータに基づいて、複数の超音波画像を形成するものである。実施形態においては、複数の超音波画像により、動画像としてのリアルタイム断層画像が構成される。他の超音波画像が形成されてもよい。超音波画像形成部38により形成された超音波画像が現在画像である。
【0042】
参照画像生成部40は、実施形態において、リアルタイム断層画像つまり現在画像と比較される参照画像として過去画像を生成するものである。過去画像は、例えば、静止画像としての超音波断層画像、動画像としての超音波断層画像、他のモダリティ(他の医療装置)で取得されたボリュームデータに基づく三次元画像、そのボリュームデータから取り出された面データに基づく断層画像、等である。
【0043】
それらの画像は、いずれも、同一被検者についての過去の検査で取得された画像データに基づいて生成される。画像比較においては、特定の被検者に対する現在の超音波検査で得られた現在画像と、その特定の被検者に対する過去の検査で得られた過去画像と、が同時に表示される。過去の検査には、超音波検査、CT検査、MRI検査等が含まれる。一般に、現在画像及び過去画像は、いずれも、同一組織を表す画像である。例えば、病変部の経過観察において画像比較が実施される。
【0044】
参照画像生成部40は、超音波診断装置12内で生成された画像データに基づいて参照画像を生成する機能も有している。
【0045】
なお、ボリュームデータにおいて、上記の面データを取り出す位置は、ユーザーにより選択され、あるいは、自動的に選択される。上記の測位システムで得られた位置情報に基づいて、ビーム走査面と同一の断面を示す過去画像が自動的に生成されてもよい。
【0046】
取得部42は、サーバーから画像データ群を取得するモジュールである。実施形態において、取得部42は、超音波検査の開始時に入力された被検者情報に基づいて、サーバーから取得する画像データ群を特定している。ユーザーが抽出条件を指定した場合、その抽出条件を満たす画像データ群が特定される。より詳しくは、取得部42は、超音波検査の開始後において、画像比較のための表示処理の開始前に、画像データ群のバックグラウンド取得処理を開始する。これにより画像データ群それ全体の取得が完了する時期が早められている。また、画像データ群を取得する際のユーザーの負担が軽減されている。バックグラウンド取得処理については後に詳述する。
【0047】
サムネイル画像生成部44は、取得された画像データ群に基づいてサムネイル画像群を生成する。個々のサムネイル画像は、過去画像選択用の縮小画像又は低解像度画像である。なお、サムネイル画像生成部44は、現在の超音波検査において取得及びストアされた超音波画像を表すサムネイル画像も生成する。
【0048】
静止画像データが取得された場合、静止画像データに基づいてサムネイル画像が生成される。動画像データが取得された場合、動画像データに含まれる代表フレームデータに基づいてサムネイル画像が生成される。動画像データから抽出される代表フレームデータは、例えば、先頭フレームデータである。DICOMの規格の下では、ファイル単位でデータが転送される。実施形態において、動画像データは、1つのファイルを構成している。
【0049】
ボリュームデータが取得対象となった場合、ボリュームデータの取得に先立って、ボリュームデータ中の代表フレームデータ(代表スライスデータ)が先行取得される。代表フレームデータは、例えば、中央スライスデータである。代表フレームデータに基づいて、ボリュームデータに対応するサムネイル画像が生成される。代表フレームデータの取得開始後に、それを含むボリュームデータの取得が開始される。DICOMの規格の下、ボリュームデータは、例えば、複数のフレームデータを有する複数のファイルにより構成される。但し、ボリュームデータが1つのファイルにより構成されることもある。
【0050】
情報処理部30には、ローカル記憶部としての記憶部48が接続されている。記憶部48は、半導体メモリ、ハードディスク等により構成される。記憶部48には、超音波診断装置12で生成された複数の画像データが格納され、また、サーバー18から取得した複数の画像データが格納される。
図1においては、記憶部48内に、サーバー18から取得した画像データ群が示されている。その画像データ群は、複数の超音波静止画像データ50、複数の超音波動画像データ52、CTボリュームデータ54、及び、MRボリュームデータ、等により構成される。
【0051】
記憶部48には、サムネイル画像生成部44が生成した複数のサムネイル画像データも記憶される。更に、記憶部48には、後述する複数の管理テーブルが記憶される。
【0052】
情報処理部30には、操作パネル56、表示器58、通信部60、等が接続されている。操作パネル56は、入力デバイスであり、それは複数のスイッチ、トラックボール、キーボード等を有する。表示器58は、液晶表示器、有機EL表示器、等により構成される。
【0053】
表示器58には、画像比較の実行中において、現在画像と過去画像とが並列表示される。現在画像は、例えば、リアルタイム超音波画像としての断層画像である。それは基本的に動画像であるが、フリーズ時(送受信停止時)に静止画像となる。過去画像は、例えば、過去の検査で得られた超音波画像としての断層画像である。それは静止画像又は動画像である。参照画像として、過去の検査で得られたボリュームデータから取り出された面データに基づく断層画像が表示されてもよいし、過去の検査で得られたボリュームデータに基づく三次元画像が表示されてもよい。2つ以上の過去画像が同時に表示されてもよい。
【0054】
情報処理部30は、通信部60を介して、ネットワーク20に接続されている。ネットワーク20は、例えばLANである。ネットワーク20にインターネットが含まれてもよい。
【0055】
以下に、画像データ群の取得及び画像比較のための画像処理について詳述する。
【0056】
実施形態においては、現在の超音波検査の開始時に、現在の超音波検査が適用される被検者の被検者IDが特定される。そして、被検者IDを利用して画像データ群が検索される。その検索の結果、特定される画像データ群は、同じ被検者に対して適用された1又は複数の過去の検査で得られた複数の画像データにより構成される。
【0057】
図2には、抽出条件を指定するための画像62が示されている。画像データ群をより絞り込みたい場合、画像62を通じて、絞り込みのための抽出条件がユーザーにより指定される。
【0058】
バックグラウンド取得処理においては、動画像データ及びボリュームデータの取得よりも、静止画像データの取得が優先されている。その前提の下で、過去の検査ごとに、静止画像データセットの取得完了をより早めたい場合、チェックボックス64に対する入力が行われる。すなわち、チェックボックス64の入力の有無により、画像データ群の取得方法を切り替えられる。具体的には、検査ごとの静止画像まとめ取得を選択する場合、チェックボックス64に対する入力が行われる。各検査を構成する工程ごとの静止画像まとめ取得を選択する場合、チェックボックス64に対する入力が見送られる。
【0059】
ボタン66,68は、検査時期に関わる条件を指定する場合に操作される。例えば、ボタン66がONにされた場合、現在の超音波検査が適用される被検者についてのすべての過去の検査で取得された複数の画像データが取得される。ボタン68がONにされた場合、現在の超音波検査が適用される被検者について指定期間内の過去の検査で取得された複数の画像データが取得される。符号72は指定期間を示している。指定期間の始期及び終期がユーザーにより指定される。指定期間を定めるのではなく、過去に遡って取得する画像データの個数に対して最大値を指定したい場合、ボタン70が操作される。符号74は、ユーザーにより指定された最大値を示している。ボタン70の操作により、最も直近の過去の検査で取得された画像データを含めて、過去に遡って最大値で指定された個数分の画像データが取得される。
【0060】
ボタン76,78は、過去の検査で使用されたモダリティ(医療装置)に関わる条件を指定する場合に操作される。ボタン76が操作された場合、すべてのモダリティで生成された画像データが検索対象となる。ボタン78が操作された場合、ユーザー指定されたモダリティで生成された画像データが検索対象となる。複数のボタン80は、モダリティを指定するためのものである。
【0061】
入力欄82は、組織(検査部位)に関わる条件を指定する場合に用いられる。入力欄82を用いて組織が指定される。超音波検査時に選択されるパラメータセット又は事前に選択されたパラメータセットに基づいて検査部位が自動的に特定されてもよい。
【0062】
上記の取得部は、バックグラウンド取得処理において、最初に、被検者条件及び抽出条件の両方を満たす画像データ群を検索し、その後、検索により特定された画像データ群をサーバーから実際に取得する。
【0063】
図3には、超音波検査の開始時に表示される初期画面84が示されている。初期画面84を通じて、被検者に関する諸情報が入力(登録)される。入力欄88は、被検者IDを入力する欄である。入力欄90は、検査部位を入力する欄である。入力欄92は、パラメータセットとしてのプリセットを指定するための欄である。パラメータセットは、超音波診断装置の動作条件を定める多数のパラメータにより構成される。
【0064】
入力された被検者IDが画像データ群の検索において利用される。入力欄90及び入力欄92の入力内容に基づいて抽出条件の全部又は一部が指定される。必要に応じて画像検索が実施される。その場合、検索欄86に検索結果が表示される。例えば、検索欄86には過去検査リストや被検者のリストが表示される。過去検査リスト中の特定の項目を選択したり、被検者リスト中の特定の項目を選択したりすることにより、被検者IDが自動的に特定され、被検者IDが入力欄88に自動的に入力される。
【0065】
初期画面84には、開始ボタン94が含まれる。必要な入力の完了後、開始ボタン94を操作すると、超音波の送受信が開始され、また、バックグラウンド取得処理が開始される。バックグラウンド取得処理では、画像比較の実行開始に先立って、画像比較の実行時に表示される可能性のある画像データ群、具体的には、被検者条件及び抽出条件を満たす画像データ群、が取得される。画像比較の開始時点において、画像データ群の全部が取得されている場合(取得完了の場合)と、画像データ群の一部だけが取得されている場合(取得中の場合)と、が生じ得る。いずれにしても、バックグラウンド取得処理によれば、画像データ群の取得が完了する時期を早められる。
【0066】
図4には、超音波検査中の表示器の画面100が示されている。画面100には超音波画像102が表示されている。超音波画像102は、例えば、動画像としての断層画像である。超音波画像102は、現在の超音波検査を適用している特定の被検者の体内を示すリアルタイム画像であり、つまり現在画像である。
【0067】
画面100には、サムネイル画像リストを表示するエリア104が含まれる。サムネイル画像リストは、例えば、現在の超音波検査で取得及びストアされた複数の画像を表す複数のサムネイル画像106により構成される。ボタン109A,109Bは、ページ切り替えのためのボタンである。
【0068】
画像比較に先立ってボタン108を操作すると、検査リスト110が表示される。検査リスト110は、過去において実施された複数の検査を示す複数の項目110Aからなる。ここでは、特定の項目112、つまり特定の過去の検査、が選択されている。
【0069】
上記選択により、
図5に示すように、エリア104内にサムネイル画像リスト114が表示される。サムネイル画像リスト114の表示開始時点において、画像データ群それ全部の取得が完了している場合、欠落を有しないサムネイル画像リスト114が表示される。一方、サムネイル画像リスト114の表示開始時点において、画像データ群の一部しか取得できておらず、残りの一部が取得できていない場合、残りの一部に対応する1又は複数のサムネイル画像は表示されず、あるいは、残りの一部に対応する1又は複数のサムネイル画像に代わる1又は複数の画像が表示される。これについては後に説明する。
【0070】
図5に示されるサムネイル画像リスト114は、選択された特定の過去の検査で取得された複数の画像を表す複数のサムネイル画像116A,116B,118,120A,120Bにより構成される。
【0071】
詳しくは、サムネイル画像116A,116Bは、それぞれ、超音波静止画像を表している。サムネイル画像118は、超音波動画像を表している。実際には、サムネイル画像118は、超音波動画像の先頭フレームデータを表している。サムネイル画像118内には、動画像であることを示すシンボルが示されている。サムネイル画像120A,120Bは、ぞれぞれ、ボリュームデータを表している。具体的には、サムネイル画像120Aは、CTボリュームデータを表している。サムネイル画像120Bは、MRボリュームデータを表している。なお、各サムネイル画像には、画像データの入手元を示すラベルが含まれる。例えば、ラベル124は、入手元がServerであることを示している。
【0072】
図6に示すように、サムネイル画像リスト114において、ユーザーが特定のサムネイル画像116Bを選択すると、表示形式が単一画像表示形式から複数画像表示形式に切り替わる。すなわち、画像比較のための画像処理の実行が開始される。画面100Aには、超音波画像(動画像)としての現在画像102Aと、選択された過去画像128と、が表示されている。符号128は、サムネイル画像116Bと過去画像128の関係を示している。
【0073】
ユーザーは、過去画像128を参照しながら、現在画像102Aの評価、診断を行う。なお、画面100Aには、複数の画像を表示するエリア130とサムネイル画像リストを表示するエリア104とが含まれる。
【0074】
図7には、ダウンロード中に表示されるサムネイル画像の第1例が示されている。サムネイル画像132は、CTボリュームデータを表すものであり、具体的には、そのCTボリュームデータの取得が完了していない場合に表示されるものである。
【0075】
サムネイル画像132は、CTボリュームデータにおける代表フレームデータに基づいて生成されたものであり、それには組織像132Aが含まれる。ラベル134は、CT画像であることを示すものである。ラベル136は、画像データの入手元を示すものである。サムネイル画像132の中央部に表示された情報137は、CT画像データ(ボリュームデータ)がダウンロード中であることを示す記述である。その情報137には、ボリュームデータを構成するフレームデータの個数を示す情報が含まれる。
【0076】
図8には、ダウンロード中に表示されるサムネイル画像の第2例が示されている。サムネイル画像138は、超音波動画像に対応するものであるが、その動画像データのダウンロードは完了していない。サムネイル画像138は、組織像を有しない低解像度画像であり、疑似サムネイル画像又は代替サムネイル画像である。サムネイル画像138の中央部には、画像データがダウンロード中であることを示す情報140が表示されている。その情報140には、動画像を構成するフレームデータの個数を示す情報が含まれる。サムネイル画像138は、動画像データのダウンロードの完了後に表示される正規のサムネイル画像が表示されるエリアに表示される。
【0077】
図9には、ダウンロード中に表示されるサムネイル画像の変形例が示されている。サムネイル画像142には、ダウンロードの進行度を示すグラフが含まれる。他の表示形態によってダウンロードの進行度が表現されてもよい。なお、実施形態においては、ボリュームデータのダウンロード中を示す情報及び動画像データのダウンロード中を示す情報の他、静止画像データのダウンロード中を示す情報も表示される。
【0078】
図10には、超音波診断装置の動作例がタイミングチャートとして示されている。横軸は時間軸である。符号146は超音波検査を示している。S1において、初期画面が表示され、S2において、初期画面を通じて被検者ID等の情報が入力される。S3では、開始ボタンが操作される。これにより送受信が開始され、且つ、バックグラウンド取得処理148が開始される。超音波検査146は、時系列順で連なる複数の工程からなる。
図10においては、第1工程146A及び第2工程146Bが示されている。第1工程146Aは、例えば、第1組織を検査する工程であり、第2工程146Bは第2組織を検査する工程である。
【0079】
バックグラウンド取得処理148では、最初に、準備期間149において、サーバーから、被検者についての過去の1又は複数の検査を特定するための情報が取得される。その情報に基づいて、抽出条件を満たす画像データ群が特定される。
【0080】
取得方法として、検査ごとの静止画像まとめ取得が指定されている場合、例えば、過去に遡って過去の検査が順次選択され、選択された検査ごとに、第1処理150及び第2処理152が実施される。第1処理では、1又は複数のシングルフレームデータが取得される。各シングルフレームデータは、静止画像データ又は代表フレームデータである。第2処理では、1又は複数のマルチフレームデータが取得される。各マルチフレームデータは、動画像データ又はボリュームデータである。
【0081】
一方、取得方法として、工程ごとの静止画像まとめ取得が指定されている場合、過去の各検査を構成する各工程が順次選択され、選択された工程ごとに、第1処理150及び第2処理152が実施される。
【0082】
S4においては、過去検査リストが表示され、その過去検査リストの中から特定の検査が選択される。これにより、特定の検査で取得された複数の画像を示すサムネイル画像リストが表示される。S5において、サムネイル画像リスト中から、特定のサムネイル画像が選択される。それは、過去画像の選択を意味する。これにより、画像比較154が実行される。すなわち、現在画像と過去画像が並列表示される。
【0083】
図10に示す例では、画像比較154の実行開始前に、画像データ群の取得が完了しており、つまり、バックグラウンド取得処理が完了している。その場合、過去の検査の選択後、サムネイル画像リストが速やかに表示される。それ故、過去画像の表示の遅れは生じない。仮に、画像比較の開始時点で、画像データ群それ全部の取得が未了であっても、実施形態においては、開始ボタン操作(S3)の直後からバックグラウンド取得処理が開始されているので、検査の選択(S4)後に画像データ群の取得が開始される場合に比べて、画像データ群の取得完了時期を大幅に早めることが可能である。また、データ量の少ない静止画像データが先行取得されるので、サムネイル画像リストの一部の表示開始を早められる。これによりユーザーにおいて生じるストレスを軽減できる。
【0084】
図11には、超音波診断装置の動作例がフローチャートとして示されている。S10では、超音波診断装置からサーバーへの一次問い合わせが実施される。これにより、現在の超音波検査を適用する被検者についての過去の1又は複数の検査を特定する情報が取得される。その情報に対してS12で一次フィルタリングが適用され、具体的には、S12において時期的条件を満たす検査が抽出される。S14では、一次フィルタリング後の情報に基づいて第1管理テーブルが作成される。
【0085】
図12には、第1管理テーブルの一例が示されている。第1管理テーブル156は検査管理テーブルである。第1管理テーブル156は、時期的条件を満たす複数の検査に対応する複数のレコード158により構成される。各レコードには、StudyUID 160、検査日162、及び、ステータス164が含まれる。StudyUID 160は、DICOMに従う検査識別子である。ステータス164は、検査に対応付けられた複数の画像データの取得状況を示す情報である。
【0086】
図11に戻って、S16において、第1管理テーブルの中から1つの検査が選択される。S18では、サーバーへの二次問い合わせにより、選択された検査を構成する1又は複数の工程を特定する情報がサーバーから取得される。S20では、その情報に対して二次フィルタリングが適用され、具体的には、S20では、モダリティ条件及び組織条件を満たす工程が抽出される。続いて、S22では、サーバーへの三次問い合わせにより、二次フィルタリング後に特定された各工程に対応付けられた1又は複数の画像データが特定される。S24では、以下に説明する第2管理テーブル及び第3管理テーブルが作成される。
【0087】
図13には、第2管理テーブルの一例が示されている。第2管理テーブル166は工程管理テーブルである。ここで、工程は、DICOMにおけるSeriesに相当する概念であり、検査を構成する1単位に相当する。第2管理テーブル166は、複数の工程に対応する複数のレコード168により構成される。各レコード168には、SeriesUID 170、モダリティ172、部位174、及び、ステータス176が含まれる。SeriesUID 170は、DICOMに従う工程識別子である。モダリティ172及び部位174に基づいて二次フィルタリングが実行される。ステータス176は、工程に対応付けられた複数の画像データの取得状況を示す情報である。
【0088】
図14には、第3管理テーブルの一例が示されている。第3管理テーブル178は画像管理テーブルである。第3管理テーブル178は、取得対象となった複数の画像データに対応する複数のレコード180により構成される。各レコード180には、取得対象182、SeriesUID 184、Series番号186、ImageUID 188、Image番号190、個数192、モダリティ194、部位196、及び、ステータス198が含まれる。
【0089】
取得対象182は、基本的に、1つのファイルを構成する1つの画像データである。但し、実施形態においては、ボリュームデータについてはそれ全体が単一の取得対象とみなされている。図示の例では、DICOMに従い、1つのボリュームデータが1つのSeriesに対応している。実際には、1つのボリュームデータは、例えば、複数のファイルにより構成される。ImageUID 188は、DICOMに従う画像識別子である。個数192は、取得対象を構成する画像数を表している。ボリュームデータ及び動画像の場合に、個数192は、2以上の数値となる。モダリティは、画像データを生成した医療装置を特定する情報である。ステータス198は、画像データの取得状況を示す情報である。
【0090】
図11に戻って、S26では、第2管理テーブルの中から、1つの工程つまり1つのSeriesが選択される。S28においては、選択された工程に帰属する画像データ群の種類が識別される。画像データ群の全部が静止画像データである場合(ケースAの場合)には、S30が実行される。画像データ群が静止画像データ及び動画像データの両方により構成される場合(ケースBの場合)には、S32が実行される。画像データ群がボリュームデータにより構成される場合(ケースCの場合)には、S36が実行される。
【0091】
S30では、静止画像データの全部がサーバーから取得される。S32では、動画像データごとに取得処理が予約され、S34では、静止画像データの全部がサーバーから取得される。S36では、ボリュームデータ中の代表フレームデータがサーバーから先行取得され、S38では、ボリュームデータの取得処理が予約される。
【0092】
画像データの取得が完了する都度、第3管理テーブルにおける当該画像データのステータスが変更され、具体的には、ステータスとして取得済みが登録される。代表フレームデータの取得が完了した場合、それに対応するステータスとして一部取得済みが登録される。動画像データの取得処理が予約された場合、当該動画像データに対応するステータスとして取得中が登録される。ボリュームデータの場合も同様である。
【0093】
工程に帰属する1又は複数の画像データの取得が完了した場合、第2管理テーブルにおける当該工程のステータスが変更され、具体的には、ステータスとして取得済みが登録される。検査に帰属するすべての画像データの取得が完了した場合、当該検査のステータスが取得済みに変更される。
【0094】
工程ごとの静止画像まとめ取得が指定されている場合、S40が実施され、一方、検査ごとの静止画像まとめ取得が指定されている場合、S44が実施される。S40では、予約された取得処理ごとに取得処理が起動される。すなわち、
図11に示されているメイン取得処理と並行して、1又は複数のサブ取得処理が実行されることになる。S42においては、第2管理テーブルにおいてすべての工程について取得済みが登録されているか否かが判断される。未処理のステータスを有する工程があれば、S26以降の工程が再び実行される。
【0095】
検査ごとの静止画像まとめ取得が指定されている場合、S44では、予約された取得処理ごとに取得処理が起動される。S44が実行される場合、ある検査に帰属するすべての静止画像データの取得が完了した後に、当該検査に属する動画像データ及びボリュームデータの取得が開始される。結果として、静止画像セットの取得がより優先されることになる。S46では、第1管理テーブルが参照され、すべての検査について取得済みが登録されているか否かが判断される。未処理のステータスを有する検査があれば、S16以降の工程が再び実行される。
【0096】
以上のように、実施形態に係る超音波診断装置によれば、画像比較で用いる画像データ群の取得の完了時期を早められる。また、画像比較の開始後においてサムネイル画像群の表示開始時期を早められる。
【符号の説明】
【0097】
10 検査システム、12 超音波診断装置、18 サーバー、24 超音波プローブ、28 送受信部、30 情報処理部、38 超音波画像形成部、40 参照画像生成部、42 取得部、44 サムネイル画像生成部、46 表示処理部、48 記憶部。