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特開2024-80983接着フィルム、ダイシングダイボンドフィルム、及び、光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080983
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】接着フィルム、ダイシングダイボンドフィルム、及び、光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20240610BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240610BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240610BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240610BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J201/00
C09J11/04
H01L21/52 E
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194364
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】入江 瞳
(72)【発明者】
【氏名】中浦 宏
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F047
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA12
4J004AB05
4J004BA02
4J004FA04
4J004FA08
4J040DF001
4J040EB052
4J040HA136
4J040HA306
4J040JA02
4J040JB02
4J040KA03
4J040KA42
4J040LA06
4J040LA10
4J040NA17
4J040NA20
4J040PA30
5F047AA17
5F047BA35
5F047BA37
5F047BA54
5F047BB19
5F047CA08
5F063AA18
5F063CB05
5F063DD85
5F063EE16
(57)【要約】
【課題】本発明は、光半導体装置での誤検出を防止することができる接着フィルムなどを提供する。
【解決手段】本発明に係る接着フィルムは、光半導体素子に接着させて用いられる接着フィルムであって、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含み、前記第1無機充填材は、白色ないし淡色を呈し、前記第2無機充填材は、濃色ないし黒色を呈しており、前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、0<C≦20の関係を満たしている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子に接着させて用いられる接着フィルムであって、
熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含み、
前記第1無機充填材は、白色ないし淡色を呈し、
前記第2無機充填材は、濃色ないし黒色を呈しており、
前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、0<C≦20の関係を満たしている
接着フィルム。
【請求項2】
波長850nmの光の透過率が5%以下である
請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
波長360nm以上740nm以下の域内における光の反射率が10%以下である
請求項1または2に記載の接着フィルム。
【請求項4】
硬化前において、50℃での貯蔵弾性率が3.0MPa以上8.0MPa以下である
請求項1または2に記載の接着フィルム。
【請求項5】
硬化前において、シリコンベアウェハに対する剥離力が1.0N以上である
請求項1または2に記載の接着フィルム。
【請求項6】
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
該ダイシングテープの前記粘着剤層上に積層された接着剤層と、を備え、
前記接着剤層が請求項1または2に記載の接着フィルムで構成されている
ダイシングダイボンドフィルム。
【請求項7】
光半導体素子の搭載領域を有する基板と、
該基板における前記光半導体素子の搭載領域に搭載された光半導体素子と、を備え、
前記光半導体素子が、接着剤層を介して前記基板における前記光半導体素子の搭載領域に接着されていて、
前記接着剤層が請求項1または2に記載の接着フィルムで構成されている
光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルム、ダイシングダイボンドフィルム、及び、光半導体装置に関する。
より詳しくは、本発明は、光半導体素子に接着させて用いられる接着フィルム、該接着フィルムを備えるダイシングダイボンドフィルム、及び、前記接着フィルムを介して基板に接着された前記光半導体素子を備える光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光半導体素子(例えば、光センサチップなど)の搭載領域を有する基板と、該基板における前記光半導体素子の搭載領域に搭載された光半導体素子と、を備える光半導体装置が知られている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
下記特許文献1には、基板たるTFT層上に光半導体素子たる光学センサを複数備える光半導体装置が開示されている。
そして、下記特許文献1には、スマートフォンとして用いられる光半導体装置が記載されており、該光半導体装置は、上記のような基板及び複数の光学センサに加えて、ディスプレイパネルと、光照射面を有する発光部であって、該光照射面が前記ディスプレイパネルの一表面(内表面)と向き合うように配される発光部と、を備えている。
下記特許文献1に記載の光半導体装置では、前記基板及び複数の光学センサは、前記発光部と同じ側(前記ディスプレイパネルの一表面側)に備えられている。
そして、複数の前記光学センサのそれぞれは、前記光照射面から照射されて前記ディスプレイパネルで反射された光(反射光)を受光している。
【0004】
また、下記特許文献1には、前記光半導体装置においては、前記ディスプレイパネルの他表面(外表面)に人の指がタッチされたときに、前記光半導体装置が備える複数の前記光学センサのそれぞれが受光する光の強度によって人の指の指紋を検出することが記載されている。
【0005】
前記光半導体装置による人の指の指紋の検出について、以下により詳しく説明する。
人の指の指紋は、指先の皮膚表面の凹凸によって形成されている。
そして、人の指を前記ディスプレイパネルの他表面(外表面)に接触させると、前記ディスプレイパネルの他表面(外表面)には、前記皮膚表面の凸部に対応する部分(接触部分)と前記皮膚表面の凹部に対応する部分(非接触部分)とが存在するようになる。
そして、前記接触部分では前記皮膚表面からの水分(汗)の影響が及ぼされ易くなっているので、前記光照射面からの光が前記接触部分に達すると該接触部分では乱反射が生じ易くなる。
そのため、前記接触部分については前記光学センサが検出する光の強度は小さくなる。
一方で、前記非接触部分では前記皮膚表面からの水分(汗)の影響が及ぼされ難くなっているので、前記光照射面からの光が前記非接触部分に達すると該非接触部分では乱反射が生じ難くなる。
これにより、前記非接触部分については前記光学センサが検出する光の強度は大きくなる。
このように、前記光学センサが受光する光の強弱によって人の指の指紋は検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2022-511133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載されたような光半導体装置において、前記光半導体装置が、接着フィルムなどを介して、前記基板における前記光半導体素子の搭載領域に搭載されることがある。
【0008】
そして、前記光半導体装置が上記のように搭載された光半導体素子を備えるものである場合、前記光半導体装置では、前記ディスプレイパネルの他表面(外表面)にタッチした人の指の指紋を精度良く検出できないことがある。
例えば、前記光学センサが、前記ディスプレイパネルの他表面(外表面)と接触している人の指の凸部分を前記ディスプレイパネルの他表面(外表面)と接触していない人の指の凹部分であると誤認識するなどして、すなわち、人の指の凸部分を光の強度が大きい部分であると認識するなどして、人の指の指紋が誤ったパターンで検出されてしまうことがある。
【0009】
しかしながら、前記光半導体装置での誤検出を防止することについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0010】
そこで、本発明は、前記光半導体装置での誤検出を防止することができる接着フィルムを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記のごとき接着フィルムを備えるダイシングダイボンドフィルム、及び、上記のごとき接着フィルムを介して基板に接着された前記光半導体素子を備える光半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討したところ、光半導体素子に接着させて用いられる接着フィルムを、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含むものとし、前記第1無機充填材として白色ないし淡色を呈するものを用い、前記第2無機充填材として濃色ないし黒色を呈するものを用いた上で、さらに、前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)を0<C≦20の関係を満たすものとすることにより、前記接着フィルムが光半導体装置での誤検出を防止できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明に係る接着フィルムは、
光半導体素子に接着させて用いられる接着フィルムであって、
熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含み、
前記第1無機充填材は、白色ないし淡色を呈し、
前記第2無機充填材は、濃色ないし黒色を呈しており、
前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、0<C≦20の関係を満たしている。
【0013】
斯かる構成によれば、前記接着フィルムは、光半導体装置に用いられたときに、該光半導体装置での誤検出を防止することができる。
【0014】
本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
該ダイシングテープの前記粘着剤層上に積層された接着剤層と、を備え、
前記接着剤層が、上記のように構成された接着フィルムである。
【0015】
本発明に係る光半導体装置は、
光半導体素子の搭載領域を有する基板と、
該基板における前記光半導体素子の搭載領域に搭載された光半導体素子と、を備え、
前記光半導体素子が、接着剤層を介して前記基板における前記光半導体素子の搭載領域に搭載されていて、
前記接着剤層が、上記のように構成された接着フィルムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光半導体装置での誤検出を防止することができる接着フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、上記のごとき接着フィルムを備えるダイシングダイボンドフィルム、及び、上記のごとき接着フィルムを介して基板に接着された前記光半導体素子を備える光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る接着フィルムの構成を示す斜視図。
図2】本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムの構成を示す断面図。
図3】光半導体の集積回路の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に示す断面図。
図4】光半導体の集積回路の製造方法におけるダイシング工程の様子を模式的に示す断面図。
図5】光半導体の集積回路の製造方法におけるピックアップ工程の様子を模式的に示す断面図。
図6】接着剤層を介して被着体に光半導体素子を接着させる様子を模式的に示す断面図。
図7】本発明の一実施形態に係る光半導体装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
[接着フィルム]
図1に示したように、本実施形態に係る接着フィルム10は、長尺帯状のシート体として構成されている。
本実施形態に係る接着フィルム10は、光半導体素子に接着させて用いられる接着フィルムである。
本実施形態に係る接着フィルム10は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含む。
本実施形態に係る接着フィルム10では、前記第1無機充填材は、白色ないし淡色を呈しており、前記第2無機充填材は、濃色ないし黒色を呈している。
本実施形態に係る接着フィルム10では、前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、0<C≦20の関係を満たしている。
【0020】
前記光半導体素子は、受光センサである。
前記受光センサは、発光部から発せられた光を受光して電気信号に変換する。
前記受光センサは、受光する光の強度に応じて電気信号を生成する。
例えば、前記受光センサは、受光する光の強度が高ければ大きな電気信号を生成し、受光する光の強度が低ければ小さな電気信号を生成する。
前記受光センサは、前記発光部から発せられてガラス板などの反射材で反射された光を受光するセンサであることが好ましい。
すなわち、前記発光部と前記光半導体素子(受光センサ)とが組み合わされて、反射型の光電センサが構成されていることが好ましい。
【0021】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド6やポリアミド6,6等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル系ポリマー、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、前記アクリル樹脂を用いることが好ましい。
前記アクリル樹脂は、イオン性不純物が少なく、かつ、耐熱性が高いという特性を有することから、前記熱硬化性樹脂として前記アクリル樹脂を用いた場合には、前記光半導体素子や該光半導体素子を得るための光半導体ウェハなどの被着体に対する接着フィルム10の接続信頼性を確保し易くなる。
【0022】
前記アクリル樹脂は、分子構造内に、有機官能基を有していることが好ましい。
前記有機官能基としては、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、アミド基などが挙げられる。
上記のような有機官能基を有していることにより、前記アクリル樹脂中において硬化反応を進行させることができる。
有機官能基を有するアクリル樹脂の市販品としては、根上工業社製の商品名「ND-27」、根上工業社製の商品名「ND-94」、ナガセケミテックス社製の商品名「テイサンレジンSG-N30」などが挙げられる。
なお、「テイサンレジンSG-N30」は、前記アクリル樹脂が所定の固形分濃度となるように有機溶媒中に懸濁・溶解された状態で市販されている。
【0023】
接着フィルム10は、前記熱可塑性樹脂を20質量%以上含んでいることが好ましく、30質量%以上含んでいることがより好ましく、40質量%以上含んでいることがより好ましい。
また、接着フィルム10は、前記熱可塑性樹脂を70質量%以下含んでいることが好ましく、60質量%以下含んでいることがより好ましく、50質量%以下含んでいることがより好ましい。
【0024】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でもフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、及び、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。
また、前記熱可塑性樹脂として有機官能基を有するアクリル樹脂を用いた場合、前記フェノール樹脂は、前記有機官能基を有するアクリル樹脂の硬化剤として作用してもよい。
前記フェノール樹脂の市販品としては、明和化成社製の商品名「MEHC-7851SS」などが挙げられる。
なお、「MEHC-7851SS」はアラルキル型フェノール樹脂である。
【0026】
接着フィルム10は、前記熱硬化性樹脂を3質量%以上含んでいることが好ましく、4質量%以上含んでいることがより好ましく、5質量%以上含んでいることがより好ましい。
また、接着フィルム10は、前記熱硬化性樹脂を20質量%以下含んでいることが好ましく、10質量%以下含んでいることがより好ましく、8質量%以下含んでいることがより好ましい。
【0027】
接着フィルム10は、前記有機官能基を有するアクリル樹脂や前記各種熱硬化性樹脂の硬化反応を十分に進行させたり、前記有機官能基を有するアクリル樹脂や前記各種熱硬化性樹脂の硬化反応速度を高めたりする観点から、熱硬化触媒(硬化促進剤)を含有していてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。
【0028】
前記イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
【0029】
前記リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリ(p-トリル)ホスフィン(TPTP)、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPP-K)、テトラブチルホスホニウムラウレート(TBPLA)、および、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロナフタレート(TBS-3S)が挙げられる。
【0030】
接着フィルム10は、前記熱硬化触媒を0.1質量%以上含んでいてもよいし、0.5質量%以上含んでいてもよい。
また、接着フィルム10は、前記熱硬化触媒を3質量%以下含んでいてもよいし、1質量%以下含んでいてもよい。
【0031】
上記したように、前記第1無機充填材としては、白色ないし淡色を呈するものが用いられる。
淡色とは、L表色系で規定されるL値が、60を上回り80以下となる色を意味し、白色とは、L表色系で規定されるL値が80を上回り100以下となる色を意味する。
表色系で規定されるL値は、分光測色計(商品名「CM-26dG」、コニカミノルタ社製)を用いて測定することができる。
なお、L表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L)表色系と称される色空間のことを意味している。
また、L表色系は、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。
【0032】
前記第1無機充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶質シリカや非晶質シリカといったシリカなどを含むフィラー(シリカフィラー)が挙げられる。
これらの中でも、前記第1無機充填材としては、前記シリカフィラーを用いることが好ましい。
前記シリカフィラーの市販品としては、アドマテックス社製の商品名「SE-2050MCV」、アドマテックス社製の商品名「S38」などが挙げられる。
【0033】
前記第1無機充填材の平均粒径は、0.005μm(5nm)以上10μm(10000nm)以下であることが好ましく、0.005μm(5nm)以上1μm(1000nm)以下であることがより好ましい。
前記第1無機充填材の平均粒径が0.005μm以上であることにより、前記光半導体素子や該光半導体素子を得るための光半導体ウェハなどの被着体に対する濡れ性や接着性をより一層向上させることができる。
また、前記第1無機充填材の平均粒径が10μm以下であることにより、接着フィルム10中において含有させたフィラーによる特性をより十分に発揮させることができることに加えて、接着フィルム10に耐熱性をより一層発揮させることができる。
前記第1無機充填材の平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(例えば、製品名「LA-910」、堀場製作所社製)を用いて求めることができる。
【0034】
接着フィルム10は、前記第1無機充填材を10質量%以上含んでいてもよいし、20質量%以上含んでいてもよいし、30質量%以上含んでいてもよい。
また、接着フィルム10は、前記第1無機充填材を60質量%以下含んでいてもよいし、50質量%以下含んでいてもよいし、45質量%以下含んでいてもよい。
接着フィルム10における前記第1無機充填材の含有量を変えることにより、接着フィルム10の弾性及び粘性をより容易に調整することができる。
また、接着フィルム10の導電性、熱伝導性、弾性率(硬さ)などの物性を調整することができる。
【0035】
上記したように、前記第2無機充填材としては、濃色ないし黒色を呈するものが用いられる。
濃色とは、L表色系で規定されるL値が、35を上回り60以下となる色を意味し、黒色とは、L表色系で規定されるL値が、0以上35以下となる色を意味する。
濃色としては、例えば、紺色、深緑色などが挙げられる。
なお、L表色系で規定されるL値は、上で説明したのと同様に、分光測色計(商品名「CM-26dG」、コニカミノルタ社製)を用いて測定することができる。
【0036】
前記第2無機充填材としては、黒色の着色剤、及び、青系や赤系などの各種濃色の着色剤を用いることができる。
前記黒色の着色剤、及び、前記濃色の着色剤としては、染料や顔料などが挙げられる。
なお、染料とは、有機溶剤に溶けるものを意味し、顔料とは、有機溶剤に溶けないものを意味する。
前記第2無機充填材は、1種のみで用いられてもよいし、複数種が組み合わされて用いられてもよい。
前記染料としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料などを用いることができる。
前記顔料としては、各種公知の顔料を用いることができる。
本実施形態に係る接着フィルム10では、前記第2無機充填材として、黒色の着色剤を用いることができる。
前記第2無機充填材として黒色の着色剤を用いることにより、接着フィルム10の光吸収性をより一層高めることができる。すなわち、接着フィルム10での光の反射をより一層抑制することができる。
【0037】
前記黒色の着色剤としては、窒化ジルコニウムフィラー、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アゾ系顔料(アゾメチンアゾブラックなど)、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキン系有機黒色色素などが挙げられる。
【0038】
また、前記黒色の着色剤としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同70、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24などのブラック系染料;C.I.ピグメントブラック1、同7などのブラック系顔料なども用いることができる。
【0039】
上記の各種の黒色の着色剤の中でも、前記窒化ジルコニウムフィラー及び前記カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0040】
前記濃色の着色剤としては、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、イエロー系着色剤などが挙げられる。
【0041】
前記シアン系着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95;C.I.アシッドブルー6、同45などのシアン系染料;C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1.同15:2、同15:3、同15:5、同15:6、同16、同17、同17:1、同18、同22、同25、同56、同60、同63、同65、同66;C.I.バッドブルー4;同60、C.I.ピグメントグリーンなどのシアン系顔料などが挙げられる。
【0042】
前記マゼンダ系着色剤において、マゼンダ系染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23~25、同27、同30、同49、同52、同58、同63、同81~同84、同100、同109、同111、同121、同122;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同27;C.I.ディスパースバイオレット1;C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12~15、同17、同18、同22~24、同27、同29、同32、同34~40;C.I.ベーシックバイオレッド1、同3、同7、同10、同14、同15、同21、同25、同26~28などが挙げられる。
【0043】
前記マゼンダ系着色剤において、マゼンダ系顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、同2~23、同30~32、同37~42、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50~58、同60、同60:1、同63、同63:1、同63:2、同64、同64:1、同67、同68、同81、同83、同87~90、同92、同101、同104~106、同108、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同147、同149~151、同163、同166、同168、同170~172、同175~179、同184、同185、同187、同190、同193、同202、同206、同207、同209、同219、同222、同224、同238、同245;C.I.ピグメントバイオレット3、同9、同19、同23、同32、同33、同36、同38、同43、同50;C.I.バットレッド1、同2、同10、同13、同15、同23、同29、同35などが挙げられる。
【0044】
前記イエロー系着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などのイエロー系染料;C.I.ピグメントオレンジ31、同43;C.I.ピグメントイエロー1~7、同10~17、同23、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73~75、同81、同83、同93~95、同97、同98、同100、同101、同104、同108~110、同113、同114、同116、同117、同120、同128、同129、同133、同138、同139、同147、同150、同151、同153~156、同167、同172、同173、同180、同185、同195;C.I.バットイエロー1、同3、同20などのイエロー系顔料などが挙げられる。
【0045】
上で説明したように、前記窒化ジルコニウムフィラー及び前記カーボンブラックは、黒色の着色剤として特に好ましいものであるものの、粉体の状態では極めて凝集し易い性質を有する。
ここで、本実施形態に係る接着フィルム10は、前記熱可塑性樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記第1無機充填材、及び、前記第2無機充填材などをメチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤に溶解・懸濁させて得た接着剤組成物を、はく離フィルム(例えば、シリコーン離型処理面を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)上に塗布して乾燥することにより作製される。
そして、前記窒化ジルコニウムフィラー及び前記カーボンブラックを粉体の状態で前記接着剤組成物に含有させた場合には、該接着剤組成物中において、前記窒化ジルコニウムフィラー及び前記カーボンブラックを十分に分散させ難い。
このような接着剤組成物を用いて作製された接着フィルム10では、前記窒化ジルコニウムフィラー及び前記カーボンブラックは偏在した状態で存在するようになるので好ましくない。
そのため、前記窒化ジルコニウムフィラー及び前記カーボンブラックは、各種分散剤中に分散された状態で、すなわち、前記窒化ジルコニウムフィラーを分散させた分散液及び前記カーボンブラックを分散させた分散液として前記接着剤組成物に含有させることが好ましい。
【0046】
前記各種分散剤としては、例えば、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマーなどのポリマーが挙げられる。
また、前記ビニル系ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール-ポリビニルピロリドングラフト重合体などが挙げられる。
【0047】
前記窒化ジルコニウムフィラーを分散させた分散液の市販品としては、トクシキ社製の商品名「9260 BLCK」が挙げられる。
また、前記カーボンブラックを分散させた分散液の市販品としては、トクシキ社製の商品名「9511 BLACK」が挙げられる。
【0048】
前記第2無機充填材の平均粒径は、0.01μm(10nm)以上1μm(1000nm)以下であることが好ましく、0.01μm(10nm)以上0.5μm(500nm)以下であることがより好ましい。
前記第2無機充填材の平均粒径が0.01μm(10nm)以上であることにより、接着フィルム10を得るための接着剤組成物中において、前記第2無機充填材を分散させ易くなるので、前記接着剤組成物を適度な粘度を有するものとすることができる。これにより、該接着剤組成物を用いて接着フィルム10を作製し易くなる。
また、前記第2無機充填材の平均粒径が1μm(100nm)以下であることにより、前記接着剤組成物を用いて得られる接着フィルム10を薄型化することができる。特に、前記第2無機充填材の平均粒径が0.5μm(500nm)以下の場合には、より一層、接着フィルム10の薄型化に資するようになる。
前記第2無機充填材の平均粒径は、前記第1無機充填材を同様にして測定することができる。
【0049】
接着フィルム10は、前記第2無機充填材を2.5質量%以上含んでいてもよいし、3.5質量%以上含んでいてもよいし、4.5質量%以上含んでいることがより好ましい。
また、接着フィルム10は、前記第2無機充填材を15質量%以下含んでいてもよいし、12質量%以下含んでいてもよいし、10質量%以下含んでいてもよい。
【0050】
前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、1以上であってもよいし、2以上であってもよいし、3以上であってもよい。
また、前記Cは、19以下であってもよいし、17以下であってもよいし、15以下であってもよい。
【0051】
接着フィルム10は、各種の添加剤を含んでいてもよい。
各種の添加剤としては、例えば、難燃剤、カップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
【0052】
接着フィルム10は、前記各種の添加剤の中でも、カップリング剤を含んでいることが好ましい。
接着フィルム10が前記第1無機充填材としてシリカフィラーを含んでいる場合、前記カップリング剤はシランカップリング剤であることが好ましい。
前記シランカップリング剤の市販品としては、信越化学社製の商品名「KBM-303」などが挙げられる。
【0053】
接着フィルム10は、前記カップリング剤を1質量%以上含んでいてもよいし、2質量%以上含んでいてもよい。
また、接着フィルム10は、前記カップリング剤を8質量%以下含んでいてもよいし、6質量%以下含んでいてもよいし、4質量%以下含んでいてもよい。
【0054】
接着フィルム10は、波長850nmの光の透過率が5%以下であることが好ましい。
前記透過率は、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがより好ましい。
前記透過率の下限値は、通常、0%である。
上記のような構成を備えることにより、接着フィルム10は、特に、近赤外領域(波長800nm以上2500nm以下の領域)における光をより十分に吸収することができる。すなわち、接着フィルム10は、近赤外領域における光の反射をより十分に抑制することができる。
【0055】
前記透過率は、紫外可視近赤外分光光度計の積分球ユニットを使用して、厚さ20μmの接着フィルム10について、300nm~1500nmの波長域における全光線透過率スペクトルを測定することにより求めることができる。
【0056】
接着フィルム10は、波長360nm以上740nm以下の域内における光の反射率が10%以下であることが好ましい。
前記反射率は、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがより好ましい。
前記反射率の下限値は、通常、0.1%である。
上記のような構成を備えることにより、接着フィルム10は、特に、可視光領域(波長380nm以上800nm未満の領域)における光の反射を十分に抑制することができる。
【0057】
前記反射率は、分光測色計(商品名「CM-26dG」、コニカミノルタ社製)を用いて、厚さ20μmの接着フィルム10について、360nm~740nmの波長域における反射率を測定することにより測定することができる。
また、前記反射率は、紫外可視近赤外分光光度計(商品名「V-670」、日本分光社製)を用いても測定することができる。
なお、前記紫外可視近赤外分光光度計を用いた前記反射率の測定は、前記分光測色計を用いた場合と同様に、厚さ20μmの接着フィルム10について、360nm~740nmの波長域における反射率を測定することにより実施できる。
【0058】
接着フィルム10は、硬化前において、50℃での貯蔵弾性率が3.0MPa以上8.0MPa以下であることが好ましい。
上記のような構成を備えることにより、接着フィルム10を適度な硬さを有するものとすることができる。
これにより、後述するようなボンディングワイヤによって光半導体素子が基板に電気的に接続された光半導体装置に接着フィルム10を用いた場合には、前記光半導体装置にモールド樹脂(例えば、エポキシ樹脂など)を用いてモールド処理を施すときに、前記モールド樹脂中にボイドが残存することを抑制できる。
【0059】
前記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて測定することができる。
具体的には、以下の手順にしたがって測定することができる。

(1)複数枚の接着フィルム10を厚さ方向に重ね合せて、厚さ200μmの接着フィルム10の積層体(以下、単にフィルム積層体という)を作製する。
(2)フィルム積層体から、幅10mm×長さ50mmの寸法で試験片を切り出した後、該試験片を150℃で1時間加熱して熱硬化させる。
(3)以下の測定条件を採用して、熱硬化させた試験片について50℃での貯蔵弾性率を測定する。

測定条件
・初期チャック間距離:22.5mm
・測定モード:引張モード
・測定温度範囲:-10℃~150℃
・周波数:1Hz
・動的ひずみ:0.05%
・昇温速度:10℃/min
【0060】
接着フィルム10は、硬化前において、シリコンベアウェハに対する剥離力が1.0N(1.0N/10mm)以上であることが好ましい。
また、前記剥離力は、2.0N(2.0N/10mm)以上であってもよいし、3.0N(3.0N/10mm)以上であってもよいし、4.0N(4.0N/10mm)以上であってもよいし、5.0N(5.0N/10mm)以上であってもよいし、6.0N(6.0N/10mm)以上であってよい。
前記剥離力の上限値は、通常、10.0N(10.0N/10mm)である。
上記のような構成を備えることにより、シリコンによって構成された光半導体ウェハに対して十分な接着性を確保することができる。
そのため、接着フィルム10を貼付させた前記光半導体ウェハを割断して、個片化された複数の接着フィルム10付の光半導体素子を得たときに、前記個片化された複数の接着フィルム10付の光半導体素子において、光半導体素子から接着フィルム10が剥離されることを抑制することができる。
【0061】
前記剥離力は、以下の手順にしたがって測定することができる。

(1)接着フィルム10の一方面に裏打ちテープを貼り合わせて、裏打ちテープ付の接着フィルム10を得る。
(2)裏打ちテープ付の接着フィルム10から幅10mm×長さ150mmの寸法で試験片を切り出す。
(3)ホットプレート上にシリコンベアウェハを載置し、該シリコンベアウェハを露出面の表面温度が50℃となるように加熱する。
(4)加熱後の前記シリコンベアウェハの露出面に前記試験片における接着フィルム10部分を重ね合せた状態で2kgのハンドローラを1往復させて、前記シリコンベアウェハの露出面に接着フィルム10を貼り合わせる。これにより、前記シリコンベアウェハと接着フィルム10との積層体を得る(以下、単に、積層体という)
(5)前記積層体を加温した状態の前記ホットプレート上に2分間静置した後、前記ホットプレートから前記積層体を取り出して、常温(23±2℃)の環境下に20分間静置する。
(6)引張試験機を用いて、剥離角度180°及び剥離速度30mm/minの条件で、前記積層体について前記シリコンベアウェハから前記試験片を剥離させる。そして、剥離時にかかる力の値を求める。
【0062】
[ダイシングダイボンドフィルム]
図2に示したように、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム200は、基材層1上に粘着剤層2が積層されたダイシングテープ100と、ダイシングテープ100の粘着剤層2上に積層された接着剤層3と、を備える。
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム200では、接着剤層3が上で説明した接着フィルム10で構成されている。
すなわち、接着フィルム10は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含んでいる。
また、接着フィルム10では、前記第1無機充填材は、白色ないし淡色を呈しており、前記第2無機充填材は、濃色ないし黒色を呈している。
さらに、接着フィルム10では、前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、0<C≦20の関係を満たしている。
【0063】
なお、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム200では、接着剤層3は、例えば、はく離フィルム上に積層させた状態の接着フィルム10(以下、はく離フィルム付の接着フィルム10という)を粘着剤層2上に積層させた後、はく離フィルム付の接着フィルム10からはく離ライナーを剥離することにより粘着剤層2上に備えさせることができる。
【0064】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム200では、接着剤層3上に光半導体素子を形成するための光半導体ウェハが貼付される。
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム200は、後述するように、接着剤層3上に貼付された光半導体ウェハを割断して個片化された複数の光半導体素子を得るために用いられる。
ダイシングダイボンドフィルム200を用いた光半導体ウェハの割断においては、前記光半導体ウェハと共に接着剤層3も割断される。
これにより、複数の接着剤層3付の光半導体素子を得ることができる。
接着剤層3は、個片化された複数の光半導体素子のサイズに相当する大きさに割断される。
【0065】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム200において、粘着剤層2は、粘着性を有しており、接着剤層3を粘着することにより保持する。
【0066】
粘着剤層2は、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、ダイシングダイボンドフィルム200の使用過程において外部からの作用により粘着力を低減可能なもの(以下、粘着低減型粘着剤という)が挙げられる。
【0067】
粘着剤として粘着低減型粘着剤を用いる場合、ダイシングダイボンドフィルム200の使用過程において、粘着剤層2が比較的高い粘着力を示す状態(以下、高粘着状態という)と、比較的低い粘着力を示す状態(以下、低粘着状態という)とを使い分けることができる。例えば、ダイシングダイボンドフィルム200の粘着剤層2上に積層された接着剤層3が、該接着剤層3に貼付された光半導体ウェハとともに割断されて個片化される場合においては、個片化された接着剤層3が粘着剤層2から浮き上がったり剥離したりすることを抑制するために、高粘着状態を利用する。
これに対し、光半導体ウェハとともに接着剤層3を割断して個片化することにより、上で説明したように、複数の接着剤層3付の光半導体素子を得た後においては、複数の接着剤層3付の光半導体素子をピックアップし易くするために、低粘着状態を利用する。
【0068】
前記粘着低減型粘着剤としては、例えば、ダイシングダイボンドフィルム200の使用過程において活性エネルギー線の照射によって硬化させることが可能な粘着剤(以下、活性エネルギー線硬化粘着剤という)が挙げられる。
【0069】
前記活性エネルギー線硬化粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射によって硬化するタイプの粘着剤が挙げられる。これらの中でも、紫外線照射により硬化する粘着剤(紫外線硬化粘着剤)を用いることが好ましい。
【0070】
前記活性エネルギー線硬化粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂などのベースポリマーと、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する活性エネルギー線重合性モノマー成分や活性エネルギー線重合性オリゴマー成分とを含む、添加型の活性エネルギー線硬化粘着剤が挙げられる。
【0071】
前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含むものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
【0072】
粘着剤層2は、外部架橋剤を含んでいてもよい。外部架橋剤としては、ベースポリマーであるアクリル樹脂と反応して架橋構造を形成できるものであれば、どのようなものでも用いることができる。このような外部架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、アジリジン化合物、及び、メラミン系架橋剤等が挙げられる。
【0073】
前記活性エネルギー線重合性モノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記活性エネルギー線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系などの種々のオリゴマーが挙げられる。前記活性エネルギー線硬化粘着剤中の活性エネルギー線重合性モノマー成分や活性エネルギー線重合性オリゴマー成分の含有割合は、粘着剤層2の粘着性を適切に低下させる範囲で選ばれる。
【0074】
前記活性エネルギー線硬化粘着剤は、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及び、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0075】
粘着剤層2は、上記した以外の他の成分を含んでいてもよい。
前記他の成分としては、架橋促進剤、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、軽剥離化剤や、顔料または染料などの着色剤などが挙げられる。
【0076】
粘着剤層2の厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上25μm以下であることがさらに好ましい。
粘着剤層2の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0077】
粘着剤層2は、上記のごとき各成分を含む粘着剤組成物を、アプリケータなどを用いて樹脂フィルムなどの構成された基材層1の表面に塗布した後、塗布後の前記粘着剤組成物を乾燥させることより、得ることができる。
【0078】
基材層1は、粘着剤層2を支持する。
基材層1は、金属箔、繊維シート、ゴムシート、または、樹脂フィルムなどを用いて作製される。
基材層1は、樹脂フィルムを用いて作製されていることが好ましい。
基材層1は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0079】
前記繊維シートとしては、紙、織布、または、不織布などによって構成されたものが挙げられる。
【0080】
樹脂フィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステルランダム共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル交互共重合体などのエチレンの共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアクリレート;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)などのポリアミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体);セルロースまたはセルロース誘導体;含シリコーン高分子;含フッ素高分子などが挙げられる。
これらは、1種のみで用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0081】
基材層1が樹脂フィルムによって作製されたものである場合には、基材層1は、無延伸成形により得られてもよいし、延伸成形により得られてもよいが、延伸成形により得られることが好ましい。
【0082】
基材層1における粘着剤層2が積層される側の面(以下、単に表面ともいう)には、粘着剤層2との密着性を高める観点から、表面処理が施されていてもよい。
表面処理としては、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的方法または物理的方法による酸化処理などが採用されてもよい。
また、表面処理として、アンカーコーティング剤、プライマー、接着剤などのコーティング剤によるコーティング処理が施されてもよい。
【0083】
基材層1における粘着剤層2が積層されない側の面(以下、単に裏面ともいう)には、剥離性を高めるために、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの離型剤(剥離剤)などによってコーティング処理が施されてもよい。
【0084】
基材層1の厚さは、55μm以上195μm以下であることが好ましく、55μm以上190μm以下であることがより好ましく、55μm以上170μm以下であることがさらに好ましく、60μm以上160μm以下であることが最適である。基材層1の厚さを前記の範囲とすることにより、ダイシングテープ100を効率良く製造することができる。
また、ダイシングダイボンドフィルム200において、接着剤層3(本実施形態では、接着フィルム10)を効率良く割断することができる。
基材層1の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0085】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム200は、例えば、光半導体の集積回路を製造するための補助用具として使用される。以下、ダイシングダイボンドフィルム200の使用の具体例について説明する。
以下では、基材層1が単層構造であるダイシングダイボンドフィルム200を用いた例について説明する。
【0086】
光半導体の集積回路を製造する方法は、光半導体ウェハをダイシングダイボンドフィルム200の接着剤層3に貼付して、ダイシングダイボンドフィルム200に光半導体ウェハを固定するマウント工程と、ダイシングダイボンドフィルム200に固定した光半導体ウェハをダイシングして複数の光半導体素子(ダイ)を得るダイシング工程と、接着剤層3と粘着剤層2との間を剥離して接着剤層3が貼付された状態で光半導体素子(ダイ)を取り出すピックアップ工程と、接着剤層3が貼付された状態の光半導体素子(ダイ)を被着体に接着させるダイボンド工程と、を有する。
これらの各工程を実施するときに、本実施形態にダイシングダイボンドフィルム200が製造補助用具として使用される。
【0087】
マウント工程では、図3に示したように、ダイシング装置のテーブルT上に載置したダイシングダイボンドフィルム200に光半導体ウェハWを固定する。
より具体的には、基材層1を当接させるようにテーブルT上にダイシングダイボンドフィルム200を載置した後、ダイシングダイボンドフィルム200の接着剤層3に光半導体ウェハWを貼付する。
【0088】
ダイシング工程では、図4に示したように、ダイシング装置のダイシングブレードDBを用いて、光半導体ウェハWを所定の寸法を有する複数の光半導体素子Cへとダイシングする。
より具体的には、平面視において略同一寸法を有する光半導体素子Cが複数得られるように、ダイシングブレードDBを用いて、光半導体ウェハWをマトリックス状にダイシングする。
なお、ダイシング工程を実施した後であって、ピックアップ工程を実施する前に、水などの洗浄液を使用して光半導体素子C側を洗浄するクリーニング工程を実施してもよい。
【0089】
ピックアップ工程では、図5に示すように、接着剤層3が貼付された状態の光半導体素子をダイシングダイボンドフィルム200の粘着剤層2から剥離する。詳しくは、ピン部材Pを上昇させて、ピックアップ対象の光半導体素子Cを、ダイシングダイボンドフィルム200を介して突き上げる。突き上げられた光半導体素子Cを吸着治具Jによって保持する。
なお、粘着剤層2が活性エネルギー線硬化粘着剤を含むものである場合には、放射線などの活性エネルギー線を照射することが好ましい。照射する活性エネルギー線の強度は、活性エネルギー線硬化粘着剤の種類などに応じて適宜選ばれる。
これにより、粘着剤層2と接着剤層3との親和性を比較的低くすることができるので、接着剤層3が貼付された状態で光半導体素子Cを回収し易くなる。
ピックアップ工程は、例えば、ダイボンダを用いて実施される。
なお、図5において、符号Uで示される部材は、ダイボンダの突き上げ部材であり、符号Rで示される部材は、ダイシングリングであり、符号Hで示される部材は、ダイボンダの保持具である。
【0090】
ダイボンド工程では、図6に示したように、吸着治具Jを用いて接着剤層3が貼付された状態の光半導体素子Cを被着体Aに接着させる。
具体的には、前記ダイボンド工程は、被着体Aに接着剤層3を当接させた状態とした後に、上方から吸着治具Jで光半導体素子Cを押圧することにより実施される。
なお、光半導体素子Cが接着剤層3を介して前記被着体に取り付けられた状態においては、上面視したときに、接着剤層3の平面寸法は、光半導体素子Cの平面寸法と略同一となっている(図6参照)。
ダイボンド工程も、例えば、ダイボンダを用いて実施される。
【0091】
[光半導体装置]
図7に示したように、本実施形態に係る光半導体装置300は、光半導体素子の搭載領域Rを有する基板301と、基板301における光半導体素子の搭載領域Rに搭載された光半導体素子Cと、を備える。
本実施形態に係る光半導体装置300では、光半導体素子Cは、接着剤層3を介して基板301における光半導体素子の搭載領域Rに接着されている。
本実施形態に係る光半導体装置300では、接着剤層3が上で説明した接着フィルム10で構成されている。
すなわち、接着剤層3は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含み、前記第1無機充填材は、白色ないし淡色を呈しており、前記第2無機充填材は、濃色ないし黒色を呈しており、前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、0<C≦20の関係を満たしている。
なお、基板301は、例えば、基板の表面に回路が形成された回路基板である。
【0092】
本実施形態に係る光半導体装置300は、図7に示したように、基板301及び光半導体素子Cに加えて、ディスプレイパネル302及び発光部303を備えている。
本実施形態に係る光半導体装置300は、基板301とディスプレイパネル302とは、両端縁側においてシール材304を介して接着されている。
本実施形態に係る光半導体装置300では、図7に示したように、ディスプレイパネル302は、一表面302Sが基板301における光半導体素子の搭載領域Rと向き合うように配されている。
本実施形態に係る光半導体装置300では、図7に示したように、発光部303は、光照射面303Sを有しており、光照射面303Sがディスプレイパネル302の一表面302Sと向き合うように配されている。
本実施形態に係る光半導体装置300では、図7に示したように、ボンディングワイヤBWによって、光半導体素子Cと基板301とが電気的に接続されている。
【0093】
このような光半導体装置300としては、例えば、スマートフォンなどが挙げられる。
【0094】
なお、図7では、基板301が複数の光半導体素子の搭載領域Rを備えており、光半導体素子の搭載領域Rのそれぞれに光半導体素子Cが搭載されている例を示している。
すなわち、図7では、光半導体装置300が、複数の光半導体素子Cを備える例を示している。
本実施形態に係る光半導体装置300では、基板301とディスプレイパネル302とで画定される空間Sに、エポキシ樹脂などのモールド樹脂が充填されていてもよい。
【0095】
本実施形態に係る光半導体装置300では、光半導体素子Cは、主として、発光部303の光照射面303Sから照射されてディスプレイパネル302で反射された光(反射光)を入射光IL1として受光している(図7参照)。
発光部303の光照射面303Sから照射される光は、可視光(波長380nm以上800nm未満の領域に属する光)であってもよいし、近赤外光(波長800nm以上2500nm以下の領域に属する光)であってもよい。
【0096】
ここで、一の光半導体素子C(図7の最も右側の光半導体素子C)に到達した入射光IL1は、その一部が該一の光半導体素子Cの表面で反射されることにより反射光(以下、一次反射光RL1という)が得られるようになり、その一次反射光RL1は、ディスプレイパネル302へと向かうようになる。
【0097】
次に、ディスプレイパネル302へと到達した一次反射光RL1は、その一部がディスプレイパネル302の表面で反射されることによりさらなる反射光(以下、二次反射光RL2という)が得られるようになり、その二次反射光RL2は、シール材304へと向かうようになる。
【0098】
次に、シール材304へと到達した二次反射光RL2は、その一部がシール材304の表面で反射されることによりさらなる反射光(以下、三次反射光RL3という)が得られるようになり、その三次反射光RL3は、接着剤層3へと向かうようになる。
【0099】
次に、接着剤層3へと到達した三次反射光RL3は、その一部が接着剤層3の側面側の表面で反射されることによりさらなる反射光(以下、四次反射光RL4という)が得られるようになり、その四次反射光RL4は、基板301へと向かうようになる。
【0100】
次に、基板301へと到達した四次反射光RL4は、その一部が基板301の表面で反射されることによりさらなる反射光(以下、五次反射光RL5という)が得られるようになり、その五次反射光RL5は、再び、シール材304へと向かうようになる。
【0101】
次に、シール材304へと到達した五次反射光RL5は、その一部がシール材304の表面で反射されることによりさらなる反射光(以下、六次反射光RL6という)が得られるようになり、その六次反射光RL6は、再び、ディスプレイパネル302へと向かうようになる。
【0102】
次に、ディスプレイパネル302へと到達した六次反射光RL6は、その一部がディスプレイパネル302で反射されることによりさらなる反射光(以下、七次反射光RL7という)が得られるようになる。
【0103】
そして、この七次反射光RL7は、入射光IL1とは別の入射光として、前記一の光半導体素子Cと隣り合う他の光半導体素子C(図7の右から2番目の光半導体素子C)に到達するようになる。
【0104】
このようにして、前記一の光半導体素子Cの表面で反射された入射光IL1の一部は、複数回の反射を繰り返しながら、前記他の光半導体素子Cに入射されるようになる。
そして、入射光IL1とは別の入射光(図7では、七次反射光RL7)の強度が高いと、前記他の光半導体素子Cによって受光される光が過度に強められてしまうようになる。
【0105】
しかしながら、本実施形態に係る接着フィルム10は、白色ないし淡色を呈する第1無機充填材と、濃色ないし黒色を呈する第2無機充填材とを、それぞれの含有量が所定の関係を満たすように含んでいるので、光を十分に吸収することができる。
そのため、光半導体装置300において、接着剤層3として本実施形態に係る接着フィルム10を用いた場合には、接着剤層3に到達された光(図7では、三次反射光RL3)を十分に吸収することができる。
これにより、前記他の光半導体素子Cで受光される光が過度に強められてしまうことを抑制できる。
その結果、光半導体装置300での誤検出を防止することができる。
【0106】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0107】
(1)
光半導体素子に接着させて用いられる接着フィルムであって、
熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、第1無機充填材と、第2無機充填材とを含む、
前記第1無機充填材は、白色ないし淡色を呈し、
前記第2無機充填材は、濃色ないし黒色を呈しており、
前記第2無機充填材の含有量Cに対する前記第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)は、0<C≦20の関係を満たしている
接着フィルム。
【0108】
(2)
波長850nmの光の透過率が5%以下である
上記(1)に記載の接着フィルム。
【0109】
(3)
波長360nm以上740nm以下の域内における光の反射率が10%以下である
上記(1)または(2)に記載の接着フィルム。
【0110】
(4)
硬化前において、50℃での貯蔵弾性率が3.0MPa以上8.0MPa以下である
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の接着フィルム。
【0111】
(5)
硬化前において、シリコンベアウェハに対する剥離力が1.0N以上である
上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の接着フィルム。
【0112】
(6)
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
該ダイシングテープの前記粘着剤層上に積層された接着剤層と、を備え、
前記接着剤層が上記(1)ないし(5)のいずれかの接着フィルムで構成されている
ダイシングダイボンドフィルム。
【0113】
(7)
光半導体素子の搭載領域を有する基板と、
該基板における前記光半導体素子の搭載領域に搭載された光半導体素子と、を備え、
前記光半導体素子が、接着剤層を介して前記基板における前記光半導体素子の搭載領域に接着されていて、
前記接着剤層が上記(1)ないし(5)のいずれかの接着フィルムで構成されている
光半導体装置。
【0114】
なお、本発明に係る接着フィルム、ダイシングダイボンドフィルム、及び、光半導体装置は、前記実施形態に限定されるものではない。
また、本発明に係る接着フィルム、ダイシングダイボンドフィルム、及び、光半導体装置は、前記した作用効果によって限定されるものでもない。
さらに、本発明に係る接着フィルム、ダイシングダイボンドフィルム、及び、光半導体装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0115】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0116】
[実施例1]
<接着フィルムの作製>
熱可塑性樹脂たるアクリル樹脂A(根上工業社製、商品名「ND-27」。質量平均分子量:130万、ガラス転移温度:4℃)と、熱硬化性樹脂たるフェノール樹脂A(明和化成社製、商品名「MEHC-7851SS」)と、第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、カップリング剤たるシランカップリング剤A(信越化学社製、商品名「KBM-303」)と、第2無機充填材たる窒化ジルコニウムフィラーAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9260 BLACK」)とを、下記表1に示した配合割合でメチルエチルケトン(MEK)に加えて混合して、実施例1に係る接着剤組成物を得た。
実施例1に係る接着剤組成物では、固形分濃度は20質量%であった。
なお、以下の表1では、「窒化ジルコニウムフィラーAを含む分散液」を、単に、「窒化ジルコニウムフィラーA」と記載している。
また、シリカフィラーAは白色を呈する無機充填材であり、窒化ジルコニウムフィラーAは黒色を呈する無機充填材である。
次に、シリコーン離型処理面を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学社製、商品名「ダイアホイル MRF」)の前記シリコーン離型処理面上に、アプリケータを用いて脱溶媒後の厚さが20μmとなるように実施例1に係る接着剤組成物を塗布した。
そして、実施例1に係る接着剤組成物が塗布された前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを130℃で2分間乾燥することにより、実施例1に係る接着剤組成物から脱溶媒して、前記ポリエチレンテレフタレート上に厚さ20μmの接着フィルム(実施例1に係る接着フィルム)を作製した。
【0117】
[実施例2]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たる窒化ジルコニウムフィラーAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9260 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0118】
[実施例3]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たる窒化ジルコニウムフィラーAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9260 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0119】
[実施例4]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たる窒化ジルコニウムフィラーAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9260 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0120】
[実施例5]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たる窒化ジルコニウムフィラーAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9260 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0121】
[実施例6]
<接着フィルムの作製>
第2無機充填材としてカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
なお、以下の表1では、「カーボンブラックAを含む分散液」を、単に、「カーボンブラックA」と記載している。
また、カーボンブラックAは黒色を呈する無機充填材である。
【0122】
[実施例7]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例7に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0123】
[実施例8]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例8に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0124】
<接着フィルムの作製>
[実施例9]
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例9に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0125】
<接着フィルムの作製>
[実施例10]
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例10に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0126】
<接着フィルムの作製>
[実施例11]
熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂B(根上工業社製、商品名「ND-94」。質量平均分子量:80万~120万、ガラス転移温度:16℃)を用い、第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例11に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0127】
<接着フィルムの作製>
[実施例12]
熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂C(ナガセケムテックス社製、商品名「SG-N30」。質量平均分子量80万、ガラス転移温度:15℃)を用い、第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例12に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0128】
<接着フィルムの作製>
[実施例13]
第1無機充填材としてシリカフィラーB(アドマテックス社製、商品名「S38」)を用い、第1無機充填材たるシリカフィラーBと、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例13に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
なお、シリカフィラーBは白色を呈する無機充填材である。
【0129】
[比較例1]
<接着フィルムの作製>
第2無機充填材を用いず、第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)の配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、比較例1に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0130】
[比較例2]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たる窒化ジルコニウムAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9260 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0131】
[比較例3]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たる窒化ジルコニウムAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9260 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0132】
[比較例4]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、比較例4に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0133】
[比較例5]
<接着フィルムの作製>
第1無機充填材たるシリカフィラーA(アドマテックス社製、商品名「SE-2050MCV」)と、第2無機充填材たるカーボンブラックAを含む分散液(トクシキ社製、商品名「9511 BLACK」)との配合割合を下記表1に示したように変更した以外は、実施例6と同様にして、比較例5に係る接着フィルム(厚さ20μm)を作製した。
【0134】
【表1】
【0135】
なお、上記表1には、各例に係る接着フィルムについて、第2無機充填材の配合量に対する第1無機充填材の配合量の比、すなわち、第2無機充填材の含有量Cに対する第1無機充填材の含有量Cの比C(C/C)について示している。
また、上記表1には、全配合量に占める第2無機充填材の配合量の質量百分率(表1中の「第2無機充填材含有量(%)」)についても示している。
【0136】
(透過率)
上の実施形態の項で説明した手順にしたがって、各例に係る接着フィルムについて、波長850nmの光の透過率を測定した。
その結果を以下の表2に示した。
【0137】
(反射率)
上の実施形態の項で説明した手順にしたがって、各例に係る接着フィルムについて、波長360nm以上740nm以下の域内における光の反射率を測定した。
その結果を以下の表2に示した。
【0138】
(貯蔵弾性率)
上の実施形態に項で説明した手順にしたがって、各例に係る接着フィルムについて、50℃での貯蔵弾性率を測定した。
その結果を以下の表2に示した。
【0139】
(剥離力)
上の実施形態の項で説明した手順にしたがって、各例に係る接着フィルムについて、シリコンベアウェハに対する剥離力を測定した。
その結果を以下の表2に示した。
【0140】
(光学特性の評価)
各例に係る接着フィルムについて、以下の基準にしたがって光学特性の評価を実施した。

優:波長850nmの光の透過率が5%以下、かつ、波長360nm以上740nm以下の領域における光の反射率が10%以下である。
不可:波長850nmの光の透過率が5%よりも高いか、または、波長360nm以上740nm以下の域内における光の反射率が10%よりも高い。

その結果を以下の表2に示した。
【0141】
(ワイヤーボンド性の評価)
各例に係る接着フィルムについて、以下の基準にしたがってワイヤーボンド性の評価を実施した。

優:50℃での貯蔵弾性率が3.0MPa以上8.0MPa以下である。
不可:50℃での貯蔵弾性率が3.0MPa未満であるか、または、8.0MPaよりも高い。

その結果を以下の表2に示した。
【0142】
(接着性の評価)
各例に係る接着フィルムについて、以下の基準にしたがって接着性の評価を実施した。

優:シリコンベアウェハに対する剥離力が1.0N以上である。
不可:シリコンベアウェハに対する剥離力が1.0N未満である。

その結果を以下の表2に示した。
【0143】
【表2】
【0144】
表2より、各実施例に係る接着フィルムは、光学特性の評価が「優」となっているのに対し、各比較例に係る接着フィルムは、光学特性の評価が「不可」となっていることが把握される。
ここで、各実施例に係る接着フィルムは、第1無機充填材として白色を呈するシリカフィラーを含み、第2無機充填材として黒色を呈する窒化ジルコニウムフィラーまたはカーボンブラックを含むものであるものの、白色を呈する第1無機充填材と濃色を呈する第2無機充填材とを含む接着フィルム、淡色を呈する第1無機充填材と黒色を呈する第2無機充填材とを含む接着フィルム、及び、淡色を呈する第1無機充填材と濃色を呈する第2無機充填材とを含む接着フィルムでも、これと同様の結果が得られると予想される。
すなわち、白色ないし淡色の第1無機充填材と濃色ないし黒色の第2無機充填材とを含む接着フィルムにおいても、光学特性の評価が「優」になる予想される。
【符号の説明】
【0145】
1 基材層
2 粘着剤層
3 接着剤層
10 接着フィルム
100 ダイシングテープ
200 ダイシングダイボンドフィルム
300 光半導体装置
C 光半導体素子
H 保持具
J 吸着治具
T テーブル
U 突き上げ部材
W 光半導体ウェハ
DB ダイシングブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7