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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080991
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】移動機器用給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20240610BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240610BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194384
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 克己
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA01
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】車輪等で移動可能に構成された装置が搭載する二次電池への給電に際し、給電のための位置精度を、取り回しの巧拙によらず実現容易な移動機器用給電装置を提供する。
【解決手段】レールは、移動機器の車輪が通るための通路を挟んで立てられた一対の側壁を有する。端子収納部は、一対の側壁の間を進む車輪の進行方向前側または後ろ側に配置されて移動機器に取り付けられる。受電端子は、移動機器に搭載された二次電池への給電を受け付けるものであって、端子収納部に収納される位置と端子収納部から脱する位置との間を、移動機器の幅方向に沿って移動可能に設けられている。端子受け部は、溝状であって、レールの側壁の一方に設けられ、移動機器の幅方向に沿って移動した受電端子が差し込まれる。送電端子は、端子受け部の内側の、受電端子が移動時に摺動する面に配置され、レールの長手方向に渡り存在し、受電端子に接触して送電する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機器の車輪が通るための通路と当該通路を挟んで立てられた一対の側壁とを有するレールと、
一対の前記側壁の間を進む前記車輪の進行方向前側または後ろ側に配置されて前記移動機器に取り付けられた、容器状の端子収納部と、
前記移動機器に搭載された二次電池への給電を受け付けるものであって、前記端子収納部に収納される位置と前記端子収納部から脱する位置との間を、前記移動機器の幅方向に沿って移動可能に設けられた受電端子と、
前記側壁の一方に設けられ、前記移動機器の幅方向に沿って移動した前記受電端子が差し込まれる、溝状の端子受け部と、
前記端子受け部の内側の、前記受電端子が移動時に摺動する面に配置され、前記レールの長手方向に渡り存在し、前記受電端子に接触して前記受電端子に送電する、1以上の送電端子と、
を備える移動機器用給電装置。
【請求項2】
前記レールは、前記通路の出入口に、前記車輪の半径未満の高さで上向きに突出した突起部を備えている
請求項1に記載の移動機器用給電装置。
【請求項3】
前記側壁は、
前記端子収納部の前記幅方向の移動を規制する上段部と、
前記上段部の下に位置し、端部が、前記上段部の端部よりも前記レールの長手方向に沿って突出し、前記車輪の前記幅方向の移動を規制する下段部と、
を有する請求項1に記載の移動機器用給電装置。
【請求項4】
前記端子収納部に収納される位置と前記端子収納部から脱する位置との間を、前記移動機器の幅方向に沿って移動可能であって、前記受電端子が取り付けられたアーム部と、
前記アーム部を、前記端子収納部の内側へ戻す向きに付勢する付勢部材と、
をさらに備え、
前記端子収納部は、前記側壁の上辺に対してスライド自在に係合する係合部を備える
請求項1に記載の移動機器用給電装置。
【請求項5】
前記受電端子は、前記端子収納部を出入りするアーム部の上下の面の一方に正極端子が配置され、他方に負極端子が配置されて構成され、
前記送電端子は、前記端子受け部の上側の面に負極端子および正極端子の一方が配置され、他方は前記端子受け部の下側の面に配置されている
請求項1に記載の移動機器用給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動機器用給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カートPOS等と呼ばれる装置が使用されている。カートPOSは、従来のショッピングカートにタブレット型やスマートフォン型の携帯端末を備えたもので、携帯端末が、顧客による商品の登録操作等を受け付ける。このようなカートPOS等の装置は、携帯端末が稼働するための電力を要するため、二次電池を搭載している。二次電池への充電は、装置が所定の待機場所にスタックされているときに、行われる。
【0003】
例えば特許文献1には、所定の待機場所での二次電池への充電を、非接触充電で行う技術が、開示されている。しかしながら、非接触充電であると、非接触で送電する側の設備と、受電する側との対面位置が適切でなければ十分な充電が実現されにくく、対面位置を適切にするための各種工夫が必要である。
【0004】
また、ショッピングカートは、所定の待機場所にスタックされており、不特定多数の顧客が自由に使用可能に提供されている。また、後入れ先出し方式でスタックされている場合もある。このため、必ずしも、充電が比較的十分なカートPOSから順に、顧客に持ち出されるとは限らない。
【0005】
なお、上記では、カートPOSを一例に説明したが、車輪等で移動可能に構成された移動体であって、搭載した二次電池からの電力供給で稼働する装置(移動機器)であれば、同様の課題がある。そのような装置としては、カートPOSの他、例えば、自走式のロボット装置や、移動するための力を補助する機能(アシスト機能)を備えた手押し台車型の装置などが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、車輪等で移動可能に構成された装置が搭載する二次電池への給電に際し、給電のための位置精度を、取り回しの巧拙によらず実現容易な、移動機器用給電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の移動機器用給電装置は、レールと、端子収納部と、受電端子と、端子受け部と、送電端子と、を備える。レールは、移動機器の車輪が通るための通路と当該通路を挟んで立てられた一対の側壁とを有する。端子収納部は、容器状であって、一対の前記側壁の間を進む前記車輪の進行方向前側または後ろ側に配置されて前記移動機器に取り付けられる。受電端子は、前記移動機器に搭載された二次電池への給電を受け付けるものであって、前記端子収納部に収納される位置と前記端子収納部から脱する位置との間を、前記移動機器の幅方向に沿って移動可能に設けられている。端子受け部は、溝状であって、前記側壁の一方に設けられ、前記移動機器の幅方向に沿って移動した前記受電端子が差し込まれる。送電端子は、前記端子受け部の内側の、前記受電端子が移動時に摺動する面に、1以上配置され、前記レールの長手方向に渡り存在し、前記受電端子に接触して前記受電端子に送電する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の移動機器の外観および構造の一例を示す斜視図である。
図2図2は、移動機器用給電装置の外観および構造の一例を示す斜視図である。
図3図3は、送電側の構造の一例を示す斜視図である。
図4図4は、受電側の構造の一例を示す斜視図である。
図5図5は、受電端子と端子収納部、端子受け部および送電端子との相互位置の推移を説明する斜視図である。
図6図6は、受電端子と端子収納部、端子受け部および送電端子との相互位置の推移を説明する断面図である。
図7図7は、受電端子と端子収納部、端子受け部および送電端子との相互位置の推移を説明する斜視図である。
図8図8は、受電端子と端子収納部、端子受け部および送電端子との相互位置の推移を説明する断面図である。
図9図9は、受電端子と端子収納部、端子受け部および送電端子との相互位置の推移を説明する斜視図である。
図10図10は、受電端子と端子収納部、端子受け部および送電端子との相互位置の推移を説明する断面図である。
図11図11は、車輪とレール内に設けられた突起部との関わりを説明する断面図である。
図12図12は、車輪とレール内に設けられた突起部との関わりを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
移動機器用給電装置の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、実施形態の移動機器の外観および構造の一例を示す斜視図である。カートPOS100は、移動機器の一例であって、カート1と、セルフ端末2と、ハンディスキャナ3と、二次電池4と、受電部5と、で構成されている。
【0010】
なお、各図には、構造の理解を助けるための三次元座標系を添えている。カート1の幅方向をX軸方向、カート1の前後方向をY軸方向、カート1の高さ方向をZ軸方向とする。Y軸の正方向はカート1の前進方向、Y軸の負方向はカート1の後退方向である。X軸の正方向は、カート1を操作する顧客の左から右へ向かう方向である。Z軸の正方向は、下から上へ向かう方向である。
【0011】
カート1は、操作者の手押しにより移動されるもので、スーパーマーケットやショッピングモール等の小売店に備え付けられ、店舗内の顧客が商品の運搬などに使用するショッピングカートである。カート1は、ベース部11、保持部12、縦フレーム13、ホルダ14、ハンドル部15、支柱17を備えている。ハンドル部15がある側が、カート1の後側である。
【0012】
ベース部11は、車輪(一対の前輪111、112および一対の後輪113、114)を備えている。また、前輪111と前輪112との間隔は、後輪113、114の間隔よりも狭くなっている。各車輪のシャフトは、旋回部を有するフォークで支持されている。これにより、各車輪は、シャフトと捩れの位置にある軸周りに旋回することで、首振り可能である。
【0013】
ベース部11は、外枠部91と、内枠部92と、当接部93と、ストッパー94とを備えている。
【0014】
外枠部91は、略U字型の形状を有し、屈曲部が前側で、後ろ側が開放されている。上述の車輪(一対の前輪111、112および一対の後輪113、114)は、外枠部91の四隅に設けられている。
【0015】
内枠部92は、外枠部91に囲まれる位置に設けられ、外枠部91同様、略U字型の形状を有し、屈曲部が前側で、後ろ側が開放されている。なお、内枠部92の屈曲部は、上向きに突出するように折り曲げられて、当接部93とされている。内枠部92は、前後方向の寸法は外枠部91と同程度であるが、幅は外枠部91よりも狭い。また、内枠部92は、商品を収納する商品籠の底が載せられる寸法で形成されている。
【0016】
外枠部91および内枠部92は、それぞれ、前側から後側に向けて幅が広くなるとともに床面からの高さが高くなるよう設けられている。これにより、内枠部92の内側に、後続のカート1の内枠部92が挿し込み可能であって、カート1が前後にスタック可能である。
【0017】
当接部93は、内枠部92に載せられた商品籠の前端部を押さえると共に、複数のカート1をスタックした際に前方のカート1のベース部11のストッパー94に突き当て状態で干渉することで、カート1同士の間隔を規制する機能を有している。
【0018】
ストッパー94は、当接部93が突き当てられる対象である。ストッパー94の位置は、前後のカート間の距離を適切にするように設定されている。
【0019】
保持部12は、ベース部11の上方に設けられた、上面が開口した籠状の容器であって、荷物(客が購入予定の商品)を保持する。保持部12は、後側に、籠状の保持部12の内側へ回動可能に上辺を保持された背面板121を備えている。背面板121は、後ろから前へ押されることで回動して、跳ね上げ可能である。これにより、後続のカート1は、保持部12の前端部で、前方のカート1の背面板121を押すことにより、保持部12を前方の保持部12内に挿し込み可能である。また、保持部12は、後側から前側に向かって徐々に、幅が狭くなるとともに底が高くなっている。これにより、図1に示すように、カート1が前後に重ねて集積(スタック)された場合に、前後の保持部12が入れ子状態になる。
【0020】
縦フレーム13は、ベース部11と保持部12とを接続するもので、保持部12を支持してベース部11の上方に位置させる。
【0021】
なお、カート1は、自らが籠状の容器(保持部12)を備える形態でなくてもよく、例えば、商品を収納する商品籠を受ける籠受部を有し、この籠受部と商品籠とが保持部12として機能するのであってもよい。
【0022】
ホルダ14は、保持部12の下方に位置し、二次電池4を収納する。二次電池4は、受電部5が受電した電力を蓄える電池である。二次電池4に蓄えられた電力は、セルフ端末2を稼働させるために消費される。
【0023】
ハンドル部15は、カート1を移動させる顧客が把持する部分であって縦フレーム13の上部に設けられている。ここで、本実施の形態では、ハンドル部15側が後方で、ハンドル部15から突出する保持部12の突出方向が前方である。
【0024】
また、支柱17は、縦フレーム13に取り付けられ、販売対象の商品を登録するセルフ端末2を支持して、ハンドル部15の上方に位置させる。
【0025】
セルフ端末2は、カート1に取り付けられて、顧客に向けた情報を表示し表示内容に応じた操作を受け付けるタブレット型の情報処理装置である。また、セルフ端末2は、販売登録装置として機能するものであって、ハンディスキャナ3を介して読み取られた商品コードにより識別される商品の情報の表示および登録を行う。
【0026】
ハンディスキャナ3は、商品コードを読み取り、セルフ端末2へ出力する。商品コードは、商品を識別(或いは特定)可能な情報(識別情報)である。商品コードは、バーコード等の形式で、商品の表面に示される。なお、本実施形態でハンディスキャナ3でのバーコード読み取りによる商品識別に限らず、物体の表面の特徴から物体を識別する技術(オブジェクト認識)により商品を識別するのであっても構わない。
【0027】
セルフ端末2は、ホルダ14に収納された二次電池4に充電された電力で稼働する。受電部5は、送電部6(図2参照、後述)から送られる電力を受けて、当該電力を二次電池4に送る。
【0028】
図2は、移動機器用給電装置7の外観および構造の一例を示す斜視図である。移動機器用給電装置7は、レール8と、受電部5と、送電部6と、で構成される。レール8は、カートPOS100がスタックされるための場所に設置され、カートPOS100を保持する。また、本実施形態において、レール8に保持されるカートPOS100の進行方向は一方通行であって、先入れ先出し方式でのスタックである。レール8は、カートPOS100の一方の後輪113が通るための通路81と、当該通路81を挟んで立てられた一対の側壁82,83とを、有する。
【0029】
レール8の側壁82,83は、後輪113を軸方向に挟んで対向する。側壁82,83により、後輪113の進行方向が定められ、これにより全車輪111~114の進行方向が一方向に定まり、カート1は蛇行せずにレール8が案内する方向(長手方向)に沿って進む。
【0030】
図3は、レール8および送電部6の構造の一例を示す斜視図である。レール8の側壁82は、上段部821と下段部822とを有している。同様に側壁83も、上段部831と下段部832とを有している。下段部822,832は、上段部821,831の下に位置している。つまりレール8は、上段部821,831と下段部822,832との二段に分かれている。上段部821,831の端部は、下段部822、832の上に位置して、下段部822、832との間に、階段状の段差を形成している。
【0031】
下段部822,832は、後輪113の、幅方向(X軸方向)の移動を規制する。上段部821,831は、受電部5を構成する端子収納部51(図4参照、後述)の、幅方向の移動を規制する。下段部822,832の端部は、上段部821,831の端部よりも、レール8の長手方向に沿って突出している。
【0032】
上段部821,831の端部は、大きく面取りされて斜面84とされている。同様に、下段部822,832の端部も、大きく面取りされて斜面85とされている。斜面84,85は、端側が広く奥側が狭くなるように傾斜している。斜面84は、端子収納部51を案内する。斜面85は、車輪113を案内する。
【0033】
そして、レール8は、通路81の出入口に、上向きに突出した突起部86を備えている。突起部86の高さは、車輪113の半径未満である。
【0034】
図4は、受電部5の構造の一例を示す斜視図である。受電部5は、端子収納部51と、受電端子52と、アーム部53と、付勢部材54と、を備える。端子収納部51は、容器状の部材であって、受電端子52やアーム部53、付勢部材54を収納する。端子収納部51は、後輪113の前側に配置されて、カートPOS100に取り付けられている。ここで、上記「前側」は、カート1の前後方向における前側であり、また、後輪113が一対の側壁82,83の間を進むときの進行方向における前側である。
【0035】
なお、本実施形態では後輪113の前側に端子収納部51が配置されているが、実施にあたっては、端子収納部51の配置が、後輪113の横(左右に隣り合う位置)でなく後ろ側であれば、受電部5は同様に機能することができる。しかしながら後輪113の後ろ側よりは前側の方が、受電部5が保護されて破損等の不都合が発生しにくいと考えられる。
【0036】
受電端子52は、送電部6からの給電を受け付けるものである。受電端子52が受け付けた電力は、カートPOS100に搭載された二次電池4に蓄電される。受電端子52は、アーム部53の一端部に取り付けられている。なお、本実施形態の受電端子52は、端子収納部51を出入りするアーム部53の上面に正極端子が、下面に負極端子が配置されており、上下で一対の構成である。
【0037】
受電端子52が取り付けられたアーム部53は、端子収納部51に収納される位置と、受電端子52が端子収納部51から脱する位置との間を、カートPOS100の幅方向(X軸方向)に沿って移動可能に、設けられている。付勢部材54は、例えば弦巻バネであって、端子収納部51から脱した位置にある受電端子52を、端子収納部51内に戻す(引き込む)向きに、アーム部53を付勢している。アーム部53の付勢部材54で引かれる側の端部(つまり受電端子52が設けられた端部の反対側の端部)には、ローラー531が設けられている。
【0038】
また、端子収納部51には、溝状の凹部511が設けられている。凹部511は、端子収納部51に備えられ、側壁83の上辺に対してスライド自在に係合する係合部の一例である。この凹部511には、カート1の後輪113がレール8の通路81を通るときに、側壁83の上段部831がスライド自在に嵌る。これにより、端子収納部51は、レール8の長手方向にはスライド自在であるとともに、レール8の幅方向には不動となる。
【0039】
さらに、端子収納部51には、アーム部53の受電端子52が付された方の端部が出入りする開口部512が、設けられている。
【0040】
次に、図3に戻り、送電部6は、端子受け部61と、送電端子62,63を備えている。端子受け部61は、一方の側壁83に設けられた溝状の部分であって、カートPOS100の幅方向に沿って移動した受電端子52が差し込まれる部分である。
【0041】
送電端子62,63は、受電端子52に接触して受電端子52に送電するものであって、端子受け部61の内側の、受電端子52が移動時に摺動する面に配置されて、レール8の長手方向のほぼ全域に渡って、存在している。
【0042】
また、送電端子62,63は、上下に対向していて、端子受け部61の下側の面に配置された送電端子62は正極端子、上側の面に配置された送電端子63は負極端子である。なお、送電端子62,63の極の正負は逆であっても構わない。その場合、受電端子52の極の正負も逆となる。
【0043】
送電端子62,63は、レール8の長手方向に連続したものでもよいが、本実施形態のものはそうではなく、所定の長さのものが長手方向に複数並び、また、並列して構成されるものである。さらに、隣り合う送電端子62,63は、互い違いの千鳥配置とされていて、これにより、受電端子52は、送電端子62が無い部分(切れ目)の影響なく、1以上の送電端子62,63に必ず交差する(触れる)ようになっている。なお、送電端子62が千鳥配置であると、長手方向に連続したものに比べて、レール8の長さのカスタマイズに対応しやすい。
【0044】
図5図10は、受電端子52と、端子収納部51、端子受け部61および送電端子62,63と、の相互位置の推移を説明する図である。なお、図5は推移の第一段階の斜視図、図6は推移の第一段階の断面図である。図7は推移の第二段階の斜視図、図8は推移の第二段階の断面図である。図9は推移の第三段階の斜視図、図10は推移の第三段階の断面図である。
【0045】
端子収納部51は、車輪113が通路81上を前進する(Y軸の正方向に進む)につれて側壁83の上段部831へ近づき、図5図6に示す第一段階において、ローラー531が斜面84に接する。この時点で、上段部831の先端部は、凹部511に差し込まれている。
【0046】
次に、図7図8に示す第二段階において、車輪113のさらなる前進により端子収納部51が移動すると、それに伴い、ローラー531は斜面84上を転がり、それにつれて、アーム部53が、付勢部材54の付勢力に抗してX軸の負方向へ移動する。ローラー531が斜面84上を転がり進むに伴い、受電端子52が端子受け部61に徐々に深く差し込まれてゆく。
【0047】
次に、図9図10に示す第三段階において、車輪113がさらに前進して端子収納部51が移動すると、ローラー531は、斜面84を過ぎ、上段部831の内側面(上段部821に対向する面)を転がり前進する。この段階では、アーム部53の反対側の端部に設けられた受電端子52は、端子収納部51から完全に脱し、端子受け部61に差し込まれきっている。端子受け部61に差し込まれた一対の受電端子52は、端子受け部61の下面および上面の送電端子62および63に、接している。
【0048】
このように、本実施形態によれば、レール8に車輪113を差込むことにより、送電端子62,63と受電端子52とを接触させることができ、これにより、送電部6から受電部5へ給電することができる。
【0049】
このような移動機器用給電装置7であることで、車輪111~114で移動可能なカートPOS100が搭載する二次電池4への給電に際し、給電のための位置精度を、取り回しの巧拙によらず実現容易とすることができる。つまり、カート1の操作者が受電端子52と送電端子62との相互位置を意識しなくとも、カート1の車輪113をレール8に差し込むことで、受電端子52と送電端子62,63とを確実に接触させることができる。よって、カートPOS100をレール8に保持させている間、端子の対向が不十分などの失敗なしに、二次電池4を確実に充電することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、受電端子52と送電端子62,63との接触方向(上下方向)と、受電端子52の移動方向(幅方向)とを、交差させている。このような構造であると、接触方向と移動方向とが一致している(例えばともに幅方向である)場合に比べ、端子を接触させるために要求される位置精度を、緩めることができる。またさらには、例えば受電端子52を上下方向に弾性的に撓む性質を有するものにすることで、送電端子62,63との接触状態をより確実にすることができる。よって、本実施形態の構造によれば、例えば端子を突合せ状態で接触させる構造に比べて、端子の接触不良のおそれを減らし、充電実施の確実性を高めることができる。
【0051】
また、上段部821,831の端よりも下段部822,832の端が突出しているので、車輪113の進行方向がぶれない状態で、受電端子52を出し入れすることができる。これにより、受電部5がレール8に当たって破損する等の不都合を防止することができる。
【0052】
ここで、レール8は、通路81の出入口に突起部86を有することで、カートPOS100が先入れ先出しされる構成となっている。図11および図12は、車輪113とレール8内に設けられた突起部86との関わりを説明する断面図である。
【0053】
まず、上述の車輪111~114の説明でも軽くふれたが、車輪113のシャフト95は、旋回部96を有するフォーク97で、支持されている。旋回部96の軸とシャフト95とは、捩れの位置にある。これにより車輪113は首振り可能である。
【0054】
突起部86は、通路81の出入口に、上向きに突出している。突起部86の高さは、前述の通り、車輪113の半径未満である。また、突起部86は、レール8の端から奥へ向かって徐々に高くなる斜面861と、頂部862から通路81へ略鉛直に降りる段差863とを有している。このような突起部86は、軽度の輪留めとして機能し、車輪113の前進を許容するとともに、後退を難しくさせる。
【0055】
車輪113が前進でレール8に入るときには、車輪113が斜面861を上り、頂部862を超えると通路81に降りる。その過程において、車輪113は、進行方向前方に旋回部96、後方にシャフト95がある状態であるため、首を振りにくく、スムーズに前進できる。
【0056】
逆に、図11に示す状態から、車輪113が後退(図中左側へ向かう)する場合、旋回部96が車輪113よりも進行方向後方に位置することになるため、車輪113が旋回しやすい。車輪113が旋回、つまり首を振ってしまうと、側壁82または83に車輪113が突き当って、レール8からスムーズに脱することができない。突起部86は、車輪113の旋回を起こりやすくし、レール8から後退で脱することを難しくするために設けられている。
【0057】
次に、図12に示す状態から、車輪113が前進(図中右側へ向かう)する場合、旋回部96が車輪113よりも進行方向前方に位置することになるため、車輪113は旋回しにくい。車輪113が首を振りにくければ、車輪113は段差863および頂部862を超えて、斜面861を下り、容易にレール8から脱することができる。
【0058】
このような構造により、カートPOS100は、レール8から後退によっては脱しにくく、前進によっては容易に脱することができる。
【0059】
なお、カートPOS100が通路81上を前進してレール8から脱するにあたり、端子収納部51の凹部511から上段部831が抜け、次に車輪113が下段部832を脱する。その過程での受電端子52およびアーム部53の動きは、上で第一~第三段階として説明した動きの逆である。つまり、付勢部材54により引かれるアーム部53は、ローラー531が上段部831の出口側の斜面84上を転がるにつれて、X軸の正方向へ移動して、端子収納部51内に戻る。
【0060】
以上のように、本実施形態の構造によれば、車輪113は、レール8に対し、前進のみにて容易に出入りでき、後退はしにくい。このため、レール8に対してカートPOS100を、先入れ先出しにすることができる。よって、先にレール8に保持されたカートPOS100が、後にレール8に保持されたカートPOS100よりも、先に使用される。よって、より長時間充電されたカートPOS100を、顧客の使用に供することができる。
【0061】
また、上段部821,831の端よりも下段部822,832の端が突出しているので、車輪113が突起部86を越える際の上下動時には、受電端子52は端子収納部51に収納されており、また、端子収納部51は上段部821,831に干渉していない。したがって、車輪113が突起部86を越える際のカートPOS100の上下動により受電部5がレール8に当たって破損する等の不都合を防止することができる。
【0062】
(変形例)
上記実施形態は、上述した各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。例えば、上記実施形態では、カートPOS100を移動機器の一例として説明したが、実施にあたっては、移動機器はカートPOS100でなくとも、車輪等で移動可能に構成された移動体であって、搭載した二次電池4からの電力供給で稼働する装置であればよい。移動機器の具体例としては、自走式のロボット装置や、移動するための力を補助する機能(アシスト機能)を備えた手押し台車型の装置など、床面上に接した車輪の回転により床面上を移動するものが考えられる。
【0063】
また、上記実施形態では、アーム部53がローラー531を備えているが、実施にあたっては、アーム部53がローラー531を備えず、ローラー531の部分が、斜面84と滑らかに摺動可能な曲面などで構成されていても構わない。
【0064】
また、上記実施形態では、1本のレール8で一方の後輪113を保持しているが、実施にあたっては、他方の後輪114を保持するレールがあっても構わない。また、その場合、一方のレール8のみに送電部6を設けてもよいし、或いは両方のレールが送電部6を備えてもよい。さらに、両方のレールが送電部6を備えるのであれば、正極と負極とを異なるレールに設けてもよい。さらにその場合、端子受け部61における送電端子を設ける位置が、端子受け部61の上側の面と下側の面とのどちらであってもよい。
【0065】
なお、上記実施形態では、顧客等のカートPOS100の操作者は、レール8に車輪113が保持されるようにカートPOS100を運転する必要がある。その際のカートPOS100の取り回しを助けるためには、例えば、床面に、カート1の平面視での輪郭を描き、カート1の移動方向を矢印や文言で示す等、何らかの案内を示すことが好適であると考えられる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
100…カートPOS、
1 …カート、
11 …ベース部、91 …外枠部、92…内枠部、93…当接部、94…ストッパー、
111~114…車輪(111,112…前輪、113,114…後輪)、
12…保持部、121…背面板、
13…縦フレーム、14…ホルダ、15…ハンドル部、17…支柱、
2 …セルフ端末、3…ハンディスキャナ、
4 …二次電池、
5 …受電部、
51 …端子収納部、511…凹部、512…開口部、
52 …受電端子、
53 …アーム部、531…ローラー、
54 …付勢部材、
6 …送電部、61…端子受け部、62,63…送電端子、
7 …移動機器用給電装置、
8 …レール、81…通路、
82,83…側壁、821,831…上段部、822,832…下段部、
84,85…斜面、86…突起部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2022-024705号公報
【特許文献1】特表2008-545204号公報
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