(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000081
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H02M1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098624
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】安池 祐子
(72)【発明者】
【氏名】中村 利浩
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740GG04
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
(57)【要約】
【課題】スイッチング周波数およびスイッチングタイミングをデジタル制御とアナログ制御との間で関連付けることができる多出力型の電源システムを提供する。
【解決手段】デジタル信号の制御でPWM信号を生成するデジタル制御回路2
1~2
nと、アナログ信号の制御でPWM信号を生成するアナログ制御回路3
1~3
mと、デジタル制御回路2
1~2
n及びアナログ制御回路3
1~3
mに対応してそれぞれ設けられ、PWM信号よってオンオフ制御されるスイッチング素子42を備えた出力回路4
1~4
n+mと、デジタル制御回路2
1~2
nからのタイミング信号に基づいてクロックパルスを生成するクロックジェネレータ5と、クロックパルスと同期して、アナログ制御回路3
1~3
mでPWM信号の生成に用いるキャリア信号を生成する全体発振回路6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング電源装置が組み合わされて構成された多出力型の電源システムであって、
デジタル信号の制御でPWM信号を生成するデジタル制御回路と、
アナログ信号の制御で前記PWM信号を生成するアナログ制御回路と、
前記デジタル制御回路及び前記アナログ制御回路に対応してそれぞれ設けられ、前記PWM信号よってオンオフ制御されるスイッチング素子を備えた出力回路と、
前記デジタル制御回路からのタイミング信号に基づいてクロックパルスを生成するクロックジェネレータと、
前記クロックパルスと同期して、前記アナログ制御回路で前記PWM信号の生成に用いるキャリア信号を生成する全体発振回路と、を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記全体発振回路で生成された前記キャリア信号の位相を所定量シフトさせた位相信号を生成する位相制御回路を備え、
前記アナログ制御回路は、前記位相信号に基づく前記キャリア信号を生成する発振回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記タイミング信号は、前記デジタル制御回路のシステムクロックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記タイミング信号は、前記デジタル制御回路のイベント信号であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源システム。
【請求項5】
前記クロックジェネレータは、前記デジタル制御回路のシステムクロックやイベント信号を元に分周や遅延を加えた前記クロックパルスを生成することを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスイッチング電源装置が組み合わされて構成された多出力型の電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
性質の異なる複数の負荷にそれぞれ対応して複数のスイッチング電源装置が組み合わされて構成された多出力型の電源システムが用いられている。スイッチング電源装置は、PWM(Pulse Width Modulation)信号によりオン及びオフを繰り返すスイッチング素子を備える。従って、多出力型の電源システムでは、各々のスイッチング電源装置のスイッチング周波数の違いでスイッチングビートが発生することがある。
【0003】
個々のスイッチング電源装置同士のスイッチング周波数およびスイッチングタイミングを同期させ、スイッチングビートが発生を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、ノイズを低減させるための同期した各スイッチング周波数に位相角を持たせる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5173762号公報
【特許文献2】特許第5488213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年は、パケージにデジタル制御のスイッチング電源装置とアナログ制御のスイッチング電源装置とを搭載している多出力型の電源システムが用いられている。この場合、従来技術では、スイッチング周波数およびスイッチングタイミングをデジタル制御とアナログ制御との間で同期させたり、任意の位相角を持たせたりする手法がない。
【0006】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スイッチング周波数およびスイッチングタイミングをデジタル制御とアナログ制御との間で関連付けることができる多出力型の電源システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電源システムは、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
本発明に係る電源システムは、複数のスイッチング電源装置が組み合わされて構成された多出力型の電源システムであって、デジタル信号の制御でPWM信号を生成するデジタル制御回路と、アナログ信号の制御で前記PWM信号を生成するアナログ制御回路と、前記デジタル制御回路及び前記アナログ制御回路に対応してそれぞれ設けられ、前記PWM信号よってオンオフ制御されるスイッチング素子を備えた出力回路と、前記デジタル制御回路からのタイミング信号に基づいてクロックパルスを生成するクロックジェネレータと、前記クロックパルスと同期して、前記アナログ制御回路で前記PWM信号の生成に用いるキャリア信号を生成する全体発振回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電源システムは、デジタル制御回路からのタイミング信号に基づいてアナログ制御回路でPWM信号が生成されるため、スイッチング周波数およびスイッチングタイミングをデジタル制御とアナログ制御との間で関連付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る電源システムの実施の形態の構成を示す図である。
【
図2】アナログ制御ブロックへの信号伝達例を示す図である。
【
図3】アナログ制御ブロックへのその他の信号伝達例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
本実施の形態の電源システム1は、複数のスイッチング電源装置が組み合わされて構成された多出力型である。電源システム1は、
図1を参照すると、n台のデジタル制御回路2
1~2
nと、m台のアナログ制御回路3
1~3
mと、n+m台の出力回路4
1~4
n+mとを備える。n、mは、1以上の整数である。
【0012】
デジタル制御回路21~2nは、ADC(デジタルアナログ変換器)21と、記憶部22と、DSP(デジタル信号処理装置)23と、PWM信号生成部24と、をそれぞれ備える。
【0013】
ADC21は、フィードバック電圧FBをデジタル値に変換してDSP23に入力する。記憶部22は、プログラムや基準電圧Vref等の各種パラメータが記憶される。DSP23は、記憶部18のプログラムを実行することで動作する。DSP23は、デジタル値に変換化されたフィードバック電圧FBと基準電圧Vrefのパラメータとを比較することで、PWM信号のオンデューティの指令値を生成してPWM信号生成部24に入力する。PWM信号生成部24は、指令値に応じたPWM信号を生成して出力する。
【0014】
アナログ制御回路31~3mは、基準電圧生成回路31と、アンプ32と、コンパレータ33と、発振回路(OSC)34と、をそれぞれ備える。
【0015】
基準電圧生成回路31は、基準電圧Vrefを生成してアンプ32の非反転入力端子に入力する。アンプ32は、反転入力端子に入力されるフィードバック電圧FBと基準電圧Vrefとの誤差増幅信号を生成してコンパレータ33の非反転入力端子に入力する。発振回路34は、ノコギリ波、三角波等のキャリア信号を生成してコンパレータ33の反転入力端子に入力する。コンパレータ33は、誤差増幅信号とキャリア信号とを比較し、この比較結果がPWM信号として出力する。
【0016】
出力回路41~4n+mは、デジタル制御回路21~2n及びアナログ制御回路31~3mに対応してそれぞれ設けられている。出力回路41~4n+mは、ドライバ41と、スイッチング素子42と、平滑回路43と、を備える。
【0017】
スイッチング素子42は、入力電圧をスイッチングするMOSFET等のパワートランジスタである。スイッチング素子42のオンオフは、ドライバ41を介して入力されるPWM信号よって制御される。スイッチング素子42によってスイッチングされた入力電圧は、平滑回路43によって平滑され、所望の出力電圧が得られる。この出力電圧の分圧がフィードバック電圧FBとしてフィードバックされる。
【0018】
電源システム1は、クロックジェネレータ5と、全体発振回路(全体OSC)6と、位相制御回路7と、を備える。
【0019】
デジタル制御回路21~2n及びクロックジェネレータ5は、デジタル信号で制御するデジタル制御ブロックである。アナログ制御回路31~3m、全体発振回路6及び位相制回路7は、アナログ信号で制御するアナログ制御ブロックである。
【0020】
クロックジェネレータ5は、デジタル制御回路2
1~2
nのシステムクロックや、PWM信号生成部24やGPIO(General-purpose input/output)など周辺モジュールからのイベント信号をタイミング信号として受け取る。クロックジェネレータ5は、入力されたタイミング信号を任意の比率で分周したり遅延させたりしたクロックパルスを生成し、
図2に矢印Aで示すように、アナログ制御ブロック側に供給する。クロックパルスは、システムクロックやイベント信号を元に分周や遅延を加えた信号である。
【0021】
全体発振回路6は、クロックジェネレータ5からのクロックパルスの立ち上がりエッジと同期してPWM信号の生成に用いるキャリア信号(ノコギリ波、三角波等)を生成し、
図2に矢印Bで示すように、位相制御回路7に入力する。
【0022】
位相制御回路7は、入力されるキャリア信号と同位相の位相信号や、入力されるキャリア信号の位相を所定量シフトさせた位相信号を生成し、
図2に矢印Cで示すように、アナログ制御回路3
1~3
mのそれぞれの発振回路34に入力する。
図2で示す例では、アナログ制御回路3
1~3
3に同位相の位相信号が、アナログ制御回路3
4~3
mに位相を所定量ずつシフト(例えば、m=9でアナログ制御回路3
4~3
mが6個である場合、60°ずつシフト)させた位相信号がそれぞれ入力されている。
【0023】
アナログ制御回路31~33のそれぞれのコンパレータ33は、同位相の位相信号によって同位相のキャリア信号を出力する。同位相のキャリア信号に基づいて生成されたPWM信号によって、出力回路4n+1~4n+3のスイッチング素子42は、スイッチング周波数およびスイッチングタイミングが同期し、スイッチングビートを抑制できる。
【0024】
アナログ制御回路34~3mのそれぞれのコンパレータ33は、位相を所定量ずつシフトさせた位相信号によって位相が所定量ずつシフトさせたキャリア信号を出力する。位相が所定量ずつシフトさせたキャリア信号に基づいて生成されたPWM信号によって、出力回路4n+4~4n+mのスイッチング素子42は、スイッチングタイミングが分散され、ノイズを低減できる。
【0025】
なお、全体発振回路6のキャリア信号は、
図3に示すように、アナログ制御回路3
1~3
3のそれぞれの反転入力端子に直接入力しても良い。この場合、発振回路34は、省略しても良く、機能を停止させても良い。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態は、複数のスイッチング電源装置が組み合わされて構成された多出力型の電源システム1であって、デジタル信号の制御でPWM信号を生成するデジタル制御回路21~2nと、アナログ信号の制御でPWM信号を生成するアナログ制御回路31~3mと、デジタル制御回路21~2n及びアナログ制御回路31~3mに対応してそれぞれ設けられ、PWM信号よってオンオフ制御されるスイッチング素子42を備えた出力回路41~4n+mと、デジタル制御回路21~2nからのタイミング信号に基づいてクロックパルスを生成するクロックジェネレータ5と、クロックパルスと同期して、アナログ制御回路31~3mでPWM信号の生成に用いるキャリア信号を生成する全体発振回路6とを備える。
この構成により、デジタル制御回路21~2nからのタイミング信号に基づいてアナログ制御回路31~3mでPWM信号が生成されるため、スイッチング周波数およびスイッチングタイミングをデジタル制御とアナログ制御との間で関連付けることができる。また、スイッチングビートは、スイッチング周波数およびスイッチングタイミングが同期することで抑制される。さらに、クロックジェネレータ5は、タイミング信号を任意の比率で分周してクロックパルスを生成でき、アナログ制御回路31~3mのキャリア周波数を任意に変更できる。
【0027】
さらに、本実施形態において、全体発振回路6で生成されたキャリア信号の位相を所定量シフトさせた位相信号を生成する位相制御回路7を備え、アナログ制御回路31~3mは、位相信号に基づくキャリア信号を生成する発振回路34を備える。
この構成により、位相が所定量ずつシフトさせたキャリア信号に基づいて生成されたPWM信号によって、出力回路4n+4~4n+mのスイッチング素子42は、スイッチングタイミングが分散され、ノイズを低減できる。
【0028】
さらに、本実施形態において、タイミング信号は、デジタル制御回路21~2nのシステムクロックやイベント信号である。
この構成により、デジタル制御回路21~2nのシステムクロックやイベント信号をアナログ制御回路31~3mにスイッチング周波数およびスイッチングタイミングを通知するタイミング信号として用いることができる。
【0029】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、同一構成要素には、各図において、同一符号を付している。
【符号の説明】
【0030】
1 電源システム
21~2n デジタル制御回路
31~3m アナログ制御回路
41~4n+m 出力回路
5 クロックジェネレータ
6 全体発振回路(全体OSC)
7 位相制御回路
21 ADC(デジタルアナログ変換器)
22 記憶部
23 DSP(デジタル信号処理装置)
24 PWM信号生成部
31 基準電圧生成回路
32 アンプ
33 コンパレータ
34 発振回路(OSC)
41 ドライバ
42 スイッチング素子
43 平滑回路