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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081001
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】粘着シートおよび粘着ラベル
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/40 20180101AFI20240610BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240610BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240610BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240610BHJP
【FI】
C09J7/40
C09J201/00
C09J4/02
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194398
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】新田 紗也花
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004DB02
4J040FA131
4J040JB09
4J040MA10
4J040NA06
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】使用後に好適にリサイクルすることができる粘着ラベルを提供すること、また、粘着ラベルの製造に好適に用いることができるとともに、前記粘着ラベルとしての使用後に好適にリサイクルすることができる粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の粘着シートは、基材と、前記基材の一方の面側に設けられた脱離コート層と、前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを有し、前記脱離コート層は、アルカリ性の温水に浸漬することで溶解する材料で構成されており、前記粘着剤層は、70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率が0%以上10%以下の条件を満たすものであることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面側に設けられた脱離コート層と、
前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを有し、
前記脱離コート層は、アルカリ性の温水に浸漬することで溶解する材料で構成されており、
前記粘着剤層は、70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率が0%以上10%以下の条件を満たすものである、ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記脱離コート層は、酸価が10KOHmg/g以上であり、ガラス転移温度Tgが0℃以上70℃以下である水性ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記水性ポリエステル系樹脂の数平均分子量が1,000以上15,000以下である、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記水性ポリエステル系樹脂がカルボキシル基を有するものである、請求項2または3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層は、23℃の酢酸エチルに72時間浸漬した場合のゲル分率が50%以上の条件を満たすものである、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層を構成する粘着剤は、エーテル結合を有するアクリレートである特定親水性モノマーを構成モノマーとして含むものであり、
前記粘着剤全体に占める前記特定親水性モノマーの割合が、60質量%以上90質量%以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤が、構成モノマーとして、さらに、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記基材は、前記粘着シートが貼着される被着体と同種の材料で構成されている、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記基材および前記被着体は、ポリエチレンテレフタレートで構成されたものである、請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
請求項1または2に記載の粘着シートに印刷部が形成されている、ことを特徴とする粘着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよび粘着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染、石油資源の枯渇等の問題から、ポリエステル系容器のリサイクル化が強く望まれている。ポリエステル系容器の中でも、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのリサイクル化が望まれている。
【0003】
ポリエステル系容器のマテリアルリサイクル化においては、通常、容器をフレーク状に破砕した後、加熱溶融して全体を均質化し、得られた再生樹脂は、ポリエステル系容器等の素材として用いられる。
【0004】
PETボトルのようなポリエステル系容器には、様々な情報が記載された粘着ラベルが貼着されることがある。
【0005】
このような粘着ラベルが貼着されている場合、粘着ラベルが除去されないままリサイクルすると、再生樹脂中に多くの不純物が混入し、再生樹脂の品質が劣ったものとなってしまう。
【0006】
このような問題を解決する目的で、アルカリ水溶液に浸漬した場合にPETボトルから剥離する粘着剤層を備えた粘着ラベルが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
ところで、粘着ラベルは、一般に、基材と粘着剤層とを有しているが、粘着ラベルの基材には、プラスチック材料が用いられることも多く、このような粘着ラベルの基材のリサイクル化も求められている。すなわち、被着体であるPETボトルだけでなく、粘着ラベルの基材もリサイクル化することが求められている。
【0008】
しかしながら、一般に、粘着ラベルには、各種の情報を表示するために、印刷が施されているため、特許文献1に記載の技術では、被着体であるPETボトルを好適にリサイクルすることができるが、印刷が施された粘着ラベル(特に、粘着ラベルの基材)はリサイクル化が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-091318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、使用後に好適にリサイクルすることができる粘着ラベルを提供すること、特に、比較的低温のアルカリ液を用いた比較的短時間の処理で効率よく印刷部および粘着剤層を除去してリサイクルすることができる粘着ラベルを提供すること、また、粘着ラベルの製造に好適に用いることができるとともに、前記粘着ラベルとしての使用後に好適にリサイクルすることができる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 基材と、
前記基材の一方の面側に設けられた脱離コート層と、
前記基材の他方の面側に設けられた粘着剤層とを有し、
前記脱離コート層は、アルカリ性の温水に浸漬することで溶解する材料で構成されており、
前記粘着剤層は、70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率が0%以上10%以下の条件を満たすものである、ことを特徴とする粘着シート。
【0012】
(2) 前記脱離コート層は、酸価が10KOHmg/g以上であり、ガラス転移温度Tgが0℃以上70℃以下である水性ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されている、上記(1)に記載の粘着シート。
【0013】
(3) 前記水性ポリエステル系樹脂の数平均分子量が1,000以上15,000以下である、上記(2)に記載の粘着シート。
【0014】
(4) 前記水性ポリエステル系樹脂がカルボキシル基を有するものである、上記(2)または(3)に記載の粘着シート。
【0015】
(5) 前記粘着剤層は、23℃の酢酸エチルに72時間浸漬した場合のゲル分率が50%以上の条件を満たすものである、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の粘着シート。
【0016】
(6) 前記粘着剤層を構成する粘着剤は、エーテル結合を有するアクリレートである特定親水性モノマーを構成モノマーとして含むものであり、
前記粘着剤全体に占める前記特定親水性モノマーの割合が、60質量%以上90質量%以下である、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の粘着シート。
【0017】
(7) 前記粘着剤が、構成モノマーとして、さらに、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記(6)に記載の粘着シート。
【0018】
(8) 前記基材は、前記粘着シートが貼着される被着体と同種の材料で構成されている、上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の粘着シート。
【0019】
(9) 前記基材および前記被着体は、ポリエチレンテレフタレートで構成されたものである、上記(8)に記載の粘着シート。
【0020】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の粘着シートに印刷部が形成されている、ことを特徴とする粘着ラベル。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、使用後に好適にリサイクルすることができる粘着ラベルを提供すること、特に、比較的低温のアルカリ液を用いた比較的短時間の処理で効率よく印刷部および粘着剤層を除去してリサイクルすることができる粘着ラベルを提供すること、また、粘着ラベルの製造に好適に用いることができるとともに、前記粘着ラベルとしての使用後に好適にリサイクルすることができる粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の粘着ラベルの好適な実施形態を示す断面図である。
図3】本発明の粘着ラベルを被着体に貼着した状態の一例を示す断面図である。
図4】被着体に貼着した本発明の粘着ラベルにアルカリ液を用いた処理を施した後の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]粘着シート
まず、本発明の粘着シートについて説明する。
図1は、本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す断面図である。
【0024】
なお、本明細書で参照する図面においては、各部材間の関係をわかりやすくするために、一部を縮小あるいは拡大して示している場合があり、図面に示す各部材間での大きさの比率は、実際の各部材間での大きさの比率を表しているものではない。
【0025】
図1に示すように、粘着シート10は、基材1と、基材1の一方の面側に設けられた脱離コート層2と、基材1の他方の面側に設けられた粘着剤層3とを有している。そして、脱離コート層2は、アルカリ性の温水に浸漬することで溶解する材料で構成されており、粘着剤層3は、70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率が0%以上10%以下の条件を満たすものである。
【0026】
上記のような構成により、粘着ラベル100の製造に好適に用いることができるとともに、粘着ラベル100としての使用後に好適にリサイクルすることができる粘着シート10を提供することができる。特に、上記のような条件で求められる水酸化ナトリウム水溶液への浸漬後のゲル分率が十分に低い、すなわち、粘着剤層3のアルカリ液への溶解性が良好なものを使用することで、粘着ラベル100としての使用後に、比較的低温のアルカリ液を用いた比較的短時間の処理で効率よく脱離コート層2および粘着剤層3を除去してリサイクルすることができる。
【0027】
より具体的には、脱離コート層2が、アルカリ性の温水に浸漬することで溶解する材料で構成されていることにより、粘着シート10に印刷を施して得られた粘着ラベル100の使用後(ラベルとしての機能を終えた後)、リサイクルする際に、印刷部4が設けられた脱離コート層2を基材1から好適に分離することができる。
【0028】
また、粘着剤層3を70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率が0%以上10%以下という条件を満たすことにより、粘着シート10に印刷を施して得られた粘着ラベル100の使用後(ラベルとしての機能を終えた後)、リサイクルする際に、粘着剤層3を基材1から好適に分離することができる。
【0029】
また、被着体50に粘着ラベル100を貼着した状態でリサイクルに供する場合には、被着体50から粘着ラベル100を好適に剥離することができる。また、被着体50から粘着ラベル100を剥離した後にリサイクルに供する場合には、被着体50のリサイクルにおいて、被着体50に粘着剤層3の一部が残存している場合であっても、この残存している粘着剤層3を好適に除去することができる。
【0030】
これに対し、上記のような条件を満たさない場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、脱離コート層がアルカリ性の温水に浸漬した場合に溶解しない材料で構成されている場合、粘着シートに印刷を施して得られた粘着ラベルにアルカリ液を付与しても、脱離コート層を十分に除去することができず、リサイクルを好適に行うことができない。特に、リサイクルされたプラスチックに着色剤等の不純物が多く含まれることとなる。
【0031】
また、粘着剤層を70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率が、前記上限値を超える場合には、アルカリ液への粘着剤層の溶解性が不足していることから、粘着シートに印刷を施して得られた粘着ラベルにアルカリ液を付与しても、粘着剤層を十分に除去することができず、リサイクルを好適に行うことができない。特に、リサイクルされたプラスチックに粘着成分等の不純物が多く含まれることとなる。
【0032】
上記のゲル分率の測定においては、粘着剤層:100質量部に対して、20000質量部以上の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。また、上記のゲル分率の測定においては、100mg以上の粘着剤層を用いるのが好ましい。したがって、例えば、上記のゲル分率の測定においては、100mgの粘着剤層を用いる場合には、20gの1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0033】
上記のように、粘着剤層3は、70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率が0%以上10%以下の条件を満たすものであるが、前記ゲル分率は、9.0%以下であるのが好ましく、8.0%以下であるのがより好ましい。また、粘着剤層3を70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した場合のゲル分率は、2.0%以上であってもよいし、2.5%以上であってもよい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0034】
[1-1]基材
粘着シート10(粘着ラベル100)において、基材1は、脱離コート層2および粘着剤層3を支持する機能を有している。
そして、基材1は粘着シート10のうち、リサイクルされる部位である。
【0035】
基材1は、特に限定されず、従来の粘着シート、粘着ラベルにおいて使用されている基材の中から、粘着シート10、粘着ラベル100の用途に応じて適宜選択されるが、樹脂フィルムであるのが好ましい。
【0036】
これにより、粘着シート10(粘着ラベル100)の機械的強度や、粘着シート10(粘着ラベル100)を被着体50に貼着する際の取り扱い性や、リサイクル時に粘着シート10(粘着ラベル100)から分離された基材1の取り扱い性がより良好となる。また、樹脂材料は、地球温暖化、資源枯渇等の問題から、各種材料の中でも、特に、リサイクルが強く求められている材料である。
【0037】
基材1として用いることのできる樹脂フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
中でも、基材1は、ポリエステルを含む材料で構成されているのが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成されているのがより好ましい。
【0039】
ポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)は、各種プラスチック材料の中でも、機械的強度、耐衝撃性等の各種特性に優れ、かつ、リサイクル品においても高品質を保持しやすい性質を有している。このため、リサイクルされることを想定している粘着シート10においては、特に有利である。
【0040】
また、基材1は、粘着シート10(粘着ラベル100)が貼着される被着体50と同種の材料で構成されているのが好ましい。
【0041】
これにより、例えば、粘着シート10(粘着ラベル100)が被着体50に貼着された状態等、粘着シート10(粘着ラベル100)と被着体50とが共存する状態でアルカリ液を用いたリサイクル処理に供される場合でも、基材1と被着体50とを分離する必要がなく、両者をともに好適にリサイクルすることができる。
【0042】
なお、本明細書において、「同種」とは、共通する繰り返し化学構造(単位構造)を有するものであればよく、例えば、基材1および被着体50がいずれもポリエチレンテレフタレートで構成されているものである場合、両者の重量平均分子量、ガラス転移温度、軟化点等の条件が異なるものであっても、これらは同種の材料で構成されているものとする。また、基材1の構成材料と被着体50の構成材料とで、可塑剤等の含有の有無やその含有率等が異なっていても、両者で、主成分である樹脂成分が共通する繰り返し化学構造(単位構造)を有していれば、これらは同種の材料で構成されているものとする。
【0043】
基材1の厚さは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、15μm以上300μm以下であるのがより好ましく、20μm以上250μm以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
これにより、粘着シート10(粘着ラベル100)の機械的強度や、粘着シート10(粘着ラベル100)を被着体50に貼着する際の取り扱い性や、リサイクル時に粘着シート10(粘着ラベル100)から分離された基材1の取り扱い性がより良好となる。
【0045】
[1―2]脱離コート層
脱離コート層2は、印刷部4が形成され、かつ、アルカリ液による処理で脱離する部位である。
【0046】
脱離コート層2は、アルカリ性の温水に浸漬することで溶解する材料で構成されていればよいが、酸価が10KOHmg/g以上であり、ガラス転移温度Tgが0℃以上70℃以下である水性ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0047】
これにより、粘着シート10の印刷適性を優れたものにすることができ、かつ、粘着ラベル100としての使用後に、比較的低温のアルカリ液を用いた比較的短時間の処理でより効率よく脱離コート層2および粘着剤層3を除去してリサイクルすることができる。
【0048】
上記のように、脱離コート層2が上記のような水性ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されている場合、前記水性ポリエステル系樹脂の酸価は、10KOHmg/g以上であればよいが、15KOHmg/g以上であるのが好ましく、20KOHmg/g以上であるのがより好ましく、30KOHmg/g以上であるのがさらに好ましい。前記水性ポリエステル系樹脂の酸価の上限は特に設けないが、例えば、90KOHmg/g以下であってもよいし、70KOHmg/g以下であってもよい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0049】
上記のように、脱離コート層2が上記のような水性ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されている場合、前記水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、0℃以上70℃以下であればよいが、10℃以上65℃以下であるのが好ましく、15℃以上60℃以下であるのがより好ましく、20℃以上55℃以下であるのがさらに好ましい。
【0050】
これにより、前述した効果がより顕著に発揮されるとともに、粘着シート10の耐ブロッキング性をより優れたものとすることができる。
【0051】
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)の値は、具体的には、以下に記載の方法に基づいて測定することができる。
【0052】
すなわち、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121:2012に準拠し、示差走査熱量計(例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、製品名「DSC Q2000」等)を用いて、昇温速度20℃/分にて測定することができる。
【0053】
以下、本明細書中で示す水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgの値は、上記のような方法で測定された値である。
【0054】
また、前記水性ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、1,000以上15,000以下であるのが好ましく、1,500以上10,000以下であるのがより好ましく、2,000以上5,000以下であるのがさらに好ましい。
【0055】
これにより、粘着シート10、粘着ラベル100の耐水性を十分に優れたものとしつつ、前記水性ポリエステル系樹脂のアルカリ液への溶解性がより優れたものとなり、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0056】
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には、以下に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0057】
すなわち、数平均分子量(Mn)としては、ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー社製、製品名「HLC-8320GPC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いる。
【0058】
・カラム:「TSK guard column super H-H」「TSK gel super HM-H(×2)」「TSK gel super HM-H」(いずれも東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0059】
前記水性ポリエステル系樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる共重合体、および当該共重合体の変性物等が挙げられる。
【0060】
当該共重合体の変性物としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる共重合体の末端に有するヒドロキシル基とポリイソシアネート化合物とが反応して得られるポリウレタン変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。本発明においては、このような水性ポリエステル系樹脂の変性物も「水性ポリエステル系樹脂」に含まれる。
【0061】
アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを使用することができる。
【0062】
具体的なアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル等のグリコール類;これらのグリコール類にε-カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類;1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン等の二価環式アルコール;ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の三価以上の多価アルコールが挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
カルボン酸成分としては、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸を使用することができる。
【0064】
具体的なカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸およびこれらの無水物;トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、テトラクロロヘキセントリカルボン酸等のトリカルボン酸およびこれらの無水物;1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸およびその無水物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
前記水性ポリエステル系樹脂は、酸価を上記範囲に調整する観点から、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸に由来する構成単位を有することが好ましく、トリカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物に由来する構成単位を有することがより好ましい。
【0066】
前記水性ポリエステル系樹脂は、通常、親水性の官能基を有するものであるが、特に、上記と同様の観点から、カルボキシル基を有するものであるのが好ましい。
【0067】
脱離コート層2が前記水性ポリエステル系樹脂を含む材料で構成されている場合であっても、前記水性ポリエステル系樹脂に加えて、さらに、前記水性ポリエステル系樹脂以外の成分(以下、この項目内において、「その他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0068】
ただし、脱離コート層2中における前記水性ポリエステル系樹脂の含有量は、70質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0069】
その他の成分としては、例えば、脱離コート層2の滑り性を向上させる等の機能を有する粒子、着色剤、充填剤、軟化剤、熱光安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0070】
前記粒子としては、無機粒子、有機粒子のいずれであってもよく、無機粒子としては、例えば、ジルコニア、シリカ、二酸化チタン、カオリン、アルミナ、チタニア、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、ガラス、マイカ、タルク等が挙げられ、有機粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系粒子、スチレン-アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート系粒子等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
前記粒子の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記水性ポリエステル系樹脂:100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下とすることができる。
【0072】
前記粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上1μm以下であるのが好ましく、0.3μm以上0.6μm以下であるのがより好ましい。
これにより、耐ブロッキング性をより優れたものとすることができる。
【0073】
なお、本明細書において、平均粒子径は、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径を言い、例えば、粒子の分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(ベックマン・コールター社製、TA-II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
【0074】
脱離コート層2の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上3.0μm以下であるのが好ましく、0.03μm以上1.0μm以下であるのがより好ましく、0.05μm以上0.5μm以下であるのがさらに好ましい。
【0075】
これにより、印刷部4の形成に用いるインクをより好適に受容することができるとともに、粘着ラベル100のリサイクル時には、比較的低温のアルカリ液を用いた比較的短時間の処理でより効率よく脱離コート層2を除去してリサイクルすることができる。
【0076】
[1―3]粘着剤層
粘着剤層3は、粘着シート10(粘着ラベル100)を被着体50に貼着する機能を有している。
【0077】
粘着剤層3は、前述したようなゲル分率についての条件を満たすものである。
粘着剤層3の好ましい構成としては、例えば、後述する、「特定親水性モノマーを構成モノマーとして所定の割合で含むアクリル系重合体を粘着剤として含むもの」等が挙げられる。
【0078】
以下の説明では、粘着剤層3の形成に用いる組成物のことを「粘着剤層形成用組成物」ともいう。
【0079】
[1-3-1]特定親水性モノマーを構成モノマーとして所定の割合で含むアクリル系重合体
粘着剤層3中に含まれる粘着剤は、エーテル結合を有するアクリレートである特定親水性モノマーを構成モノマーとして含むものであり、前記粘着剤全体に占める前記特定親水性モノマーの割合が、60質量%以上90質量%以下であるアクリル系重合体であってもよい。
【0080】
このような構成により、粘着剤の親水性がより好適なものとなり、粘着剤層3は、より好適なアルカリ可溶性を有するものとなるとともに、粘着剤層3の被着体50に対する粘着力がより好適なものとなる。
【0081】
以下の説明では、前記特定親水性モノマーを構成モノマーとして含み、かつ、前記特定親水性モノマーの割合が、60質量%以上90質量%以下である粘着剤であるアクリル系重合体を「特定親水性モノマー含有粘着剤」ともいう。
【0082】
[1-3-1-1]特定親水性モノマー
特定親水性モノマー含有粘着剤は、エーテル結合を有するアクリレートである特定親水性モノマーを構成モノマーとして含む。
【0083】
特定親水性モノマー含有粘着剤を構成する特定親水性モノマーとしては、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレートおよび2-エトキシエチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、2-メトキシエチルアクリレートであるのがより好ましい。
これにより、粘着剤層3は、さらに好適なアルカリ可溶性を有するものとなる。
【0084】
特定親水性モノマー含有粘着剤全体に占める特定親水性モノマーの割合は、60質量%以上90質量%以下であるが、65質量%以上88質量%以下であるのが好ましく、70質量%以上85質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0085】
特に、特定親水性モノマー含有粘着剤が特定親水性モノマーとして、2-メトキシエチルアクリレートを含むものである場合、特定親水性モノマー含有粘着剤を構成する全特定親水性モノマーに対する2-メトキシエチルアクリレートの含有量の割合は、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましく、75質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0086】
[1-3-1-2]特定親水性モノマー以外の構成モノマー
特定親水性モノマー含有粘着剤は、前述した特定親水性モノマーに加えて、特定親水性モノマー以外の構成モノマーをさらに含んでいる。以下、この項目内において、特定親水性モノマー以外の構成モノマーを「その他のモノマー」ともいう。
【0087】
特定親水性モノマー含有粘着剤を構成するその他のモノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタアクリレート)、n-ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アルキルアクリレート、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびアクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0088】
これにより、粘着剤層3の被着体50に対する粘着力をより好適なものとすることができ、粘着シート10(粘着ラベル100)の被着体50からの意図しない剥離をより確実に防止することができる。
【0089】
特に、特定親水性モノマー含有粘着剤が、その他のモノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレートやn-ブチルアクリレートを含有することで、粘着剤層3の粘着力がより好適なものとなる。
【0090】
特定親水性モノマー含有粘着剤が、特定親水性モノマーに加えて、2-エチルヘキシルアクリレートを含有する場合、特定親水性モノマー含有粘着剤全体における2-エチルヘキシルアクリレートの含有量は、1質量%以上35質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上30質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以上20質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0091】
特定親水性モノマー含有粘着剤が、特定親水性モノマーに加えて、n-ブチルアクリレートを含有する場合、特定親水性モノマー含有粘着剤全体におけるn-ブチルアクリレートの含有量は、2質量%以上25質量%以下であるのが好ましく、3質量%以上20質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0092】
これにより、被着体50に対する十分な粘着力と、アルカリ液を用いた処理を行った際の粘着剤層3の基材1や被着体50からの優れた分離性とを、より好適なバランスで両立することができる。
【0093】
また、特定親水性モノマー含有粘着剤が、その他のモノマーとして、アクリル酸を含有することで、アルカリ液を用いた処理を行った際の粘着剤層3の基材1や被着体50からの優れた分離性をより良好なものとすることができる。さらに、後述する架橋剤と架橋を形成し粘着剤層3の凝集力を向上させることができる。
【0094】
特定親水性モノマー含有粘着剤が、特定親水性モノマーに加えて、アクリル酸を含有する場合、特定親水性モノマー含有粘着剤全体におけるアクリル酸の含有量は、1質量%以上15質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上10質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以上7質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0095】
これにより、被着体50に対する十分な粘着力と、アルカリ液を用いた処理を行った際の粘着剤層3の基材1や被着体50からの優れた分離性とを、より好適なバランスで両立することができる。
【0096】
特定親水性モノマー含有粘着剤は、架橋剤で架橋されていてもよい。
これにより、粘着剤層3の被着体50に対する粘着力ならびに粘着剤層3の凝集力をより高いものとするうえで有利となる。
【0097】
架橋剤としては、特に限定されず、公知の架橋剤を適宜選択して使用できる。具体的には、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、エポキシ系架橋剤が好ましい。
【0098】
架橋剤の添加量は、特定親水性モノマー含有粘着剤:100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、0.25質量部以上5質量部以下であるのがより好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0099】
粘着剤層3が特定親水性モノマー含有粘着剤を含むものである場合、粘着剤層3中における特定親水性モノマー含有粘着剤の含有量は、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0100】
[1-3-2]その他の成分
粘着剤層3は、上記以外の成分(以下、この項目内において、「その他の成分」ともいう)を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、着色剤、充填剤、軟化剤、熱光安定剤、酸化防止剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
着色剤としては、例えば、各種染料、各種顔料を用いることができる。
充填剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0102】
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等が挙げられる。
熱光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系安定剤、ベンゾトリアゾール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。
【0103】
酸化防止剤としては、例えば、アニリド系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエステル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0104】
ただし、粘着剤層3中におけるその他の成分の含有量は、15質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0105】
[1-3-3]その他の条件
粘着剤層3は、23℃の酢酸エチルに72時間浸漬した場合のゲル分率は、50%以上の条件を満たすものであるのが好ましく、50%以上95%以下の条件を満たすものであるのがより好ましく、50%以上85%以下の条件を満たすものであるのがさらに好ましい。
【0106】
これにより、粘着剤は適度な凝集力と粘着力を両立でき、粘着シート10の加工を好適に行うことができる。また、ラベル使用時の不本意な剥がれをより効果的に抑制することができる。
【0107】
なお、23℃の酢酸エチルに72時間浸漬した場合のゲル分率の値は、例えば、粘着剤層3の構成成分中における架橋剤の量や各モノマーの比率(特に、アクリル酸の比率等)等により調整することができる。
【0108】
上記のゲル分率の測定においては、粘着剤層:100質量部に対して、20000質量部以上の酢酸エチルを用いることができる。また、上記のゲル分率の測定においては、100mg以上の粘着剤層を用いるのが好ましい。したがって、例えば、上記のゲル分率の測定においては、100mgの粘着剤層を用いる場合には、20gの酢酸エチルを用いることができる。
【0109】
粘着剤層3の厚さは、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましく、15μm以上50μm以下であるのがさらに好ましい。
【0110】
これにより、被着体50に対してより好適な粘着力を発揮することができるとともに、粘着シート10(粘着ラベル100)を被着体50に貼着する際の取り扱い性をより好適なものとすることができる。また、被着体50に貼着された粘着シート10(粘着ラベル100)をアルカリ剥離する際の剥離性をより良好なものとすることができる。
【0111】
[2]粘着ラベル
次に、本発明の粘着ラベルについて説明する。
図2は、本発明の粘着ラベルの好適な実施形態を示す断面図である。
図2に示すように、粘着ラベル100は、前述した粘着シート10に印刷部4が形成されているものである。
【0112】
これにより、比較的低温のアルカリ液を用いた比較的短時間の処理で効率よく印刷部4および粘着剤層3を除去してリサイクルすることができる粘着ラベル100を提供することができる。
【0113】
印刷部4は、いかなるパターンのものであってもよく、例えば、文字、記号、図形、模様、バーコード、QRコード(登録商標)等の二次元コード等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、印刷部4は、ベタ印刷であってもよい。
【0114】
印刷部4の形成方法としては、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式、電子写真(静電)方式等による印刷等が挙げられる。
【0115】
[3]粘着ラベル(粘着シート)の使用方法
次に、粘着ラベル(粘着シート)の使用方法について説明する。
図3は、本発明の粘着ラベルを被着体に貼着した状態の一例を示す断面図である。
【0116】
図3に示すように、粘着ラベル100は、被着体50に、粘着剤層3を介して貼着される。
【0117】
被着体50の構成材料は、特に限定されないが、被着体50の表面、言い換えると、粘着剤層3と接触する部位は、例えば、紙、プラスチック、金属またはガラス等で構成されたものであり、プラスチックで構成されたものであるのが好ましく、ポリエチレンテレフタレートで構成されたものであるのがより好ましい。
【0118】
これにより、粘着ラベル100の被着体50に対する十分な粘着力を確保することができるとともに、粘着ラベル100をアルカリ剥離する際の剥離性を良好なものとすることができる。
【0119】
また、ポリエチレンテレフタレートは、各種プラスチック材料の中でも、機械的強度、耐衝撃性等の各種特性に優れ、かつ、リサイクル品においても高品質を保持しやすい性質を有している。このため、リサイクルされることを想定している被着体50においては、特に有利である。
【0120】
特に、粘着ラベル100を構成する基材1とともに被着体50がポリエチレンテレフタレートで構成されていることにより、ポリエチレンテレフタレートによる効果が得られるとともに、粘着シート10(粘着ラベル100)が被着体50に貼着された状態等、粘着シート10(粘着ラベル100)と被着体50とが共存する状態でアルカリ液を用いたリサイクル処理に供される場合でも、基材1と被着体50とを分離する必要がなく、両者をともに好適にリサイクルすることができる。
【0121】
被着体50の構成材料としての紙としては、例えば、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、レーヨン紙、コート紙、ボール紙等が挙げられる。
【0122】
被着体50の構成材料としてのプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙げられる。
【0123】
被着体50の構成材料としての金属としては、例えば、アルミニウム、スチール、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0124】
被着体50としては、例えば、各種の商品やその梱包材等が挙げられる。
特に、好適な被着体50としては、飲料、液体調味料等の容器として用いられるプラスチックボトル(PETボトル)が挙げられる。
【0125】
通常、被着体50には、印刷部4が設けられた粘着ラベル100が貼着されるが、被着体50には、粘着シート10を貼着した後に、印刷部4を形成して粘着ラベル100としてもよい。
【0126】
[4]粘着ラベルのアルカリ処理方法
次に、粘着ラベルに対するアルカリ処理方法について説明する。
図4は、被着体に貼着した本発明の粘着ラベルにアルカリ液を用いた処理を施した後の状態を模式的に示す断面図である。
【0127】
粘着ラベル100は、使用後(ラベルとしての機能を終えた後)に、アルカリ液を用いたリサイクルに供することができる。
【0128】
リサイクルに供される使用後の粘着ラベル100は、被着体50に貼着された状態の物であってもよいし、被着体50から剥離されたものであってもよいが、以下の説明では、被着体50に貼着された粘着ラベル100に対して、アルカリ液を用いた処理を行う場合について代表的に説明する。
【0129】
被着体50に貼着された粘着ラベル100に対して、アルカリ液を付与することにより、図4に示すように、粘着ラベル100は、被着体50から剥離されるとともに、脱離コート層2および粘着剤層3が溶解して、粘着ラベル100の基材1から分離される。その結果、被着体50を好適にリサイクルすることができるとともに、基材1も好適にリサイクルすることができる。より具体的には、印刷部4が設けられた脱離コート層2や粘着剤層3を基材1から分離することにより、基材1、被着体50からリサイクルされた素材の性能が印刷部4の形成に用いられた着色剤や粘着剤成分等により低下することが効果的に防止される。このとき、基材1と被着体50が同素材であれば、脱離コート層2や粘着剤層3が分離した基材1と被着体50を分離することなくリサイクル工程に投入することができる。なお、アルカリ液付与前に粘着ラベルを貼着したまま被着体を粉砕しておいてもよい。
【0130】
粘着ラベル100(被着体50に貼着された粘着ラベル100)をアルカリ処理する方法としては、例えば、70℃のアルカリ性の水溶液に粘着ラベル100を浸漬し、撹拌する方法が挙げられる。
【0131】
アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。水酸化ナトリウムの濃度は、例えば、1.5質量%とすることができる。
【0132】
被着体50に貼着された粘着ラベル100に付与するアルカリ液の温度は、60℃以上95℃以下であるのが好ましく、90℃以下であるのがより好ましく、85℃以下であるのがさらに好ましい。
【0133】
粘着ラベル100が貼着された被着体50のアルカリ液への浸漬時間は、特に限定されないが、例えば、15分間である。
【0134】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0135】
例えば、本発明の粘着シート、粘着ラベルは、上述した層以外の層、例えば、下塗り層、中間層や表面保護層等を有していてもよい。
【0136】
より具体的には、例えば、脱離コート層よりも外表面側(脱離コート層の基材に対向する面とは反対の面側)に、脱離コート層よりも印刷適性に優れた他のコート層を有していてもよい。
【0137】
また、本発明の粘着シート、粘着ラベルは、被着体に貼着される前においては、粘着剤層が剥離ライナーで被覆された状態であってもよい。これにより、粘着剤層を好適に保護することができる。
【実施例0138】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0139】
なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(23℃)、相対湿度50%において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(23℃)、相対湿度50%における数値である。
【0140】
[5]粘着ラベルの製造
[5-1]粘着剤層形成用組成物の調製
以下のようにして、後述する各実施例および各比較例で用いる粘着剤層形成用組成物を調製した。
【0141】
(調製例A1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、2-メトキシエチルアクリレートを80質量部、2-エチルヘキシルアクリレートを5質量部、n-ブチルアクリレートを10質量部、アクリル酸を5質量部、溶剤として酢酸エチルを200質量部仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、8時間反応させた後、室温まで冷却し、アクリル酸エステル共重合体を生成した。
【0142】
上記工程で得られたアクリル酸エステル共重合体:100質量部に対して、架橋剤として1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを0.5質量部混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤層形成用組成物の塗布液を得た。
【0143】
(調製例A2~A6)
アクリル酸エステル共重合体の生成に用いる各モノマー成分の配合比率を表1に示すように変更した以外は、前記調製例A1と同様にして粘着剤層形成用組成物の塗布液を調製した。
【0144】
(調製例A7)
架橋剤を用いなかった以外は、前記調製例A3と同様にして粘着剤層形成用組成物の塗布液を調製した。
【0145】
[5-2]脱離コート層形成用組成物の調製
以下のようにして、後述する各実施例および各比較例で用いる脱離コート層形成用組成物を調製した。
【0146】
(調製例B1)
カルボキシル基を含有し、酸価が50KOHmg/g、数平均分子量が3,000、Tgが46℃である水性ポリエステル系樹脂と、水とを用いて、脱離コート層形成用組成物としての自己乳化型水性ポリエステル系樹脂溶液(固形分25質量%、粘度10mPa・s(20℃))を調製した。
【0147】
(調製例B2~B5)
水性ポリエステル系樹脂として、カルボキシル基を含有し、表1に示される酸価、数平均分子量、Tgのものを用いた以外は、前記調製例B1と同様にして脱離コート層形成用組成物としての自己乳化型水性ポリエステル系樹脂溶液を調製した。
【0148】
[5-3]粘着シートの製造
(実施例1)
以下のようにして、複数枚の粘着シートを製造した。
まず、基材であるポリエチレンテレフタレート製のフィルム(厚さ:50μm)を用意し、この一方の面に、前記調製例B1で調製した脱離コート層形成用組成物の塗布液を、バーコーターにより乾燥膜厚0.1μmとなるように塗布し、その後乾燥することにより、脱離コート層を形成し、基材と脱離コート層との積層体を得た。
【0149】
一方、剥離ライナーとして、シリコーンが塗布されたポリエチレンラミネートグラシン紙を用意した。
【0150】
この剥離ライナー上に、前記調製例A1で調製した粘着剤層形成用組成物の塗布液を、ナイフコーターを用いて乾燥膜厚25μmとなるように塗布し、その後乾燥することにより、粘着剤層を形成した。
【0151】
次に、粘着剤層と基材が接触するように、粘着剤層上に、基材と脱離コート層との積層体を貼合して、23℃で1週間静置して粘着シートを得た。
【0152】
(実施例2~6)
脱離コート層形成用組成物および粘着剤層形成用組成物として、表1に示すものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0153】
(比較例1)
脱離コート層の形成を省略し、粘着剤層形成用組成物として、表1に示すものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0154】
(比較例2)
脱離コート層の形成を省略した以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0155】
(比較例3)
脱離コート層の形成を省略し、粘着剤層形成用組成物として、表1に示すものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0156】
(比較例4~6)
脱離コート層形成用組成物および粘着剤層形成用組成物として、表1に示すものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
前記各実施例および各比較例の粘着シートの条件を表1にまとめて示す。
【0157】
【表1】
【0158】
なお、表1中の略称は、以下の化合物を示すものである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
2MTA:2-メトキシエチルアクリレート
MTG:メトキシトリエチレングリコールアクリレート
2ETA:2-エトキシエチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
PEs:ポリエステル
【0159】
[6]測定・評価
前記各実施例および各比較例について、以下のような測定・評価を行った。
【0160】
[6-1]粘着剤層を所定条件で水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した場合のゲル分率
前記各実施例および各比較例と同様にして剥離ライナー層上に粘着剤層を形成した後、フィルムを貼合せず、ゲル分率測定用の粘着シートを得た。前記粘着シートを50mm×100mmのサイズにカットし、粘着剤層のみをポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、前記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0161】
次に、前記ポリエステル製メッシュに、包まれた粘着剤を、70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液:25mLに30分間浸漬させた。その後、粘着剤を取り出し、120℃のオーブン中にて3時間乾燥させ、さらに23℃、50%RH環境下で24時間静置した。静置後、その質量を精密天秤にて秤量し、前記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率(%)を算出した。
【0162】
[6-2]粘着剤層を所定条件で酢酸エチルに浸漬した場合のゲル分率
前記各実施例および各比較例と同様にして剥離ライナー層上に粘着剤層を形成した後、フィルムを貼合せず、ゲル分率測定用の粘着シートを得た。前記粘着シートを50mm×100mmのサイズにカットし、粘着剤層のみをポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、前記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0163】
次に、前記ポリエステル製メッシュに、包まれた粘着剤を、23℃の酢酸エチル:25mLに72時間浸漬させた。その後、粘着剤を取り出し、120℃のオーブン中にて3時間乾燥させ、さらに23℃、50%RH環境下で24時間静置した。静置後、その質量を精密天秤にて秤量し、前記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率(%)を算出した。
【0164】
[6-3]印刷適性
前記各実施例および比較例4~6については、印刷機としてRIテスター、インクとしてUV161 J 墨 S(T&K TOKA社製)を用いて、脱離コート層にベタ印刷し、高圧水銀ランプで紫外線照射してインクを硬化させて印刷部を形成した後、印刷部の密着性をセロハンテープ剥離で評価した。具体的には、1mm間隔で10マス×10マスの100マスのクロスカットを形成し、セロハンテープ剥離後の残存する印刷部を以下の基準に従い評価した。なお、比較例1~3については、基材の表面(粘着剤層に接触する面とは反対側の表面)に直接印刷部を形成した以外は、前記と同様に評価した。
【0165】
A:66%以上の割合で残存。
B:41%以上65%以下の割合で残存。
C:残存しない、または、40%以下の割合で残存。
【0166】
[6-4]印刷部および粘着剤層の脱離性
前記各実施例および各比較例で得られた粘着シートに、印刷機としてRIテスター、インクとしてUV161 J 墨 S(T&K TOKA社製)を用いてベタ印刷し、高圧水銀ランプで紫外線照射してインクを硬化させた。その後、被着体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm)に2kgローラで1往復荷重をかけて貼着し、10mm×10mmにカットして試料を得た。
【0167】
70℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH13.6):1Lに試料を5枚投入し撹拌した。15分後に、5枚全てにおいて、粘着シートの基材から粘着剤層や印刷が剥がれているかを確認した。なお、本試験において、前記各実施例および各比較例のすべての粘着シートは被着体から剥離することが確認された。
【0168】
A:基材から粘着剤層、印刷部共に剥がれた。
B:基材から粘着剤層は剥がれたが、印刷部が剥がれていない。
C:基材から粘着剤層、印刷部共に剥がれていない。
【0169】
[6-5]粘着力
前記各実施例および各比較例の粘着シートを、それぞれ、200mm×25mmにカットして試料として用い、ポリエチレンテレフタレート板に2kgローラで1往復荷重をかけて粘着シートを貼着した。貼着後23℃、50%RH環境下で24時間静置した後、粘着力を測定した。測定は、JIS Z 0237:2022の10.4.1に準じて行った。合わせて、粘着力を測定した際の剥離形態を確認した。
【0170】
A:粘着剤と被着体の界面で剥がれた。
B:粘着剤の凝集破壊により剥がれており、使用時の不本意な剥がれが懸念される。
これらの結果を表2にまとめて示す。
【0171】
【表2】
【0172】
表2から明らかなように、前記各実施例では優れた結果が得られたのに対し、各比較例では満足のいく結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0173】
100…粘着ラベル
10…粘着シート
50…被着体
1…基材
2…脱離コート層
3…粘着剤層
4…印刷部
図1
図2
図3
図4