(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081003
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置及びこれを用いた電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240610BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20240610BHJP
【FI】
H02M3/00 H
H02M3/00 C
H02M3/00 W
H02M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194400
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】川高 伸人
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB82
5H730FD01
5H730FG05
5H730XX01
5H730XX11
5H730XX23
5H730XX32
5H740BB07
5H740BC01
5H740BC02
5H740MM01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィードフォワード型のリモートセンシング機能により負荷端電圧を精度よく制御できるスイッチング電源装置及びこれを用いた電源システムを提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置10は、電力変換部20の出力端電圧Voを検出し、出力端検出電圧Vok=k・Voを出力する出力端電圧検出部24、負荷端36に発生する負荷端電圧Vfを検出し、負荷端検出電圧Vfk=k・Vfを出力する負荷端電圧検出部26、負荷端電圧Vfの指定値Vfsが指定され、指定電圧情報J(Vsi)[Vsi=k・Vfs]を作成する指定電圧情報作成部28、Vok、Vfk及びJ(Vsi)を基にデジタル演算処理を行い、目標電圧情報J(Vm)[Vm=Vsi+Vok-Vfk]を作成する目標電圧情報作成部30、J(Vm)を基に目標電圧Vmを生成する目標電圧生成部32及びVokとVmとが等しくなるように電力変換部20を制御する制御部34を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端に供給された直流又は交流の入力電圧を、主スイッチング素子のスイッチング動作によって直流電圧に変換し、所定長さの負荷線を通じて負荷に電力を供給する電力変換部と、
前記電力変換部の出力端に発生する出力端電圧Voを検出し、これに対応したアナログの出力端検出電圧Vok=k・Vo[kは正の定数]を出力する出力端電圧検出部と、
前記負荷線の負荷端に発生する負荷端電圧Vfを検出し、これに対応したアナログの負荷端検出電圧Vfk=k・Vfを出力する負荷端電圧検出部と、
前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsが指定され、これに対応した指定電圧Vsi=k・Vfsを示す指定電圧情報J(Vsi)を作成する指定電圧情報作成部と、
前記出力端検出電圧Vok、前記負荷端検出電圧Vfk及び前記指定電圧情報J(Vsi)を基にデジタル演算処理を行い、目標電圧Vm=Vsi+Vok-Vfkを示す目標電圧情報J(Vm)を作成する目標電圧情報作成部と、
前記目標電圧情報J(Vm)を基にアナログの目標電圧Vmを生成する目標電圧生成部と、
前記出力端検出電圧Vokと前記目標電圧Vmとが等しくなるように前記主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で前記主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力する制御部とを備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記目標電圧生成部は、前記目標電圧情報J(Vm)に基づいてデューティが設定される矩形波電圧を出力するパルス幅変調部と、前記矩形波電圧を平滑して前記目標電圧Vmを発生させるローパスフィルタとで構成される請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vm=Vsi+Vthとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vfk≧Vthの範囲では、Vm=Vsiとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記目標電圧情報作成部は、Vfk>Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vfk≦Vthの範囲では、Vok-Vfkの値に関係なく、Vm=Vsiとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記指定電圧情報作成部は、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsを外部から変更できるように構成されている請求項1乃至5のいずれか記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
入力端に供給された直流又は交流の入力電圧を、主スイッチング素子のスイッチング動作によって直流電圧に変換し、所定長さの負荷線を通じて負荷に電力を供給する電力変換部と、
前記電力変換部の出力端に発生する出力端電圧Voを検出し、これに対応したアナログの出力端検出電圧Vok=k・Vo[kは正の定数]を出力する出力端電圧検出部と、
前記負荷線負荷端に発生する負荷端電圧Vfを検出し、これに対応したアナログの負荷端検出電圧Vfk=k・Vfを出力する負荷端電圧検出部と、
前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsが指定され、これに対応した指定電圧Vsi=k・Vfsを示す指定電圧情報J(Vsi)を作成する指定電圧情報作成部と、
前記出力端検出電圧Vok、前記負荷端検出電圧Vfk及び前記指定電圧情報J(Vsi)を基にデジタル演算処理を行い、仮目標電圧Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)[hは正の定数]を示す仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する仮目標電圧情報作成部と、
前記仮目標電圧情報J(Vmx)を基にアナログの目標電圧Vm=Vmx/hを生成する目標電圧生成部と、
前記出力端検出電圧Vokと前記目標電圧Vmとが等しくなるように前記主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で前記主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力する制御部と、
前記目標電圧生成部の出力ラインであるVmラインを外部に接続可能にするVmライン外部接続端子とを備え、
前記目標電圧生成部は、前記仮目標電圧情報作成部が作成した前記仮目標電圧情報J(Vmx)に基づいてアナログの仮目標電圧Vmxを生成する仮目標電圧生成部と、前記Vmラインを正の電圧にプルアップするためのプルアップ回路と、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>Vmx/hの時に前記Vmラインから電流を引き込み、Vm≦Vmsx/hの時に前記Vmラインから電流を引き込むのを停止することによって、前記目標電圧Vmが前記仮目標電圧Vmxに対応した値Vmx/hになるように制御するVm制御部とを備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記仮目標電圧生成部は、前記仮目標電圧情報J(Vmx)に基づいてデューティが設定される矩形波電圧を出力するパルス幅変調部と、前記矩形波電圧を平滑して前記仮目標電圧Vmxを発生させるローパスフィルタとで構成される請求項7記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記指定電圧情報作成部は、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsを外部から変更できるように構成されている請求項7又は8記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記仮目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vmx=h・(Vsi+Vth)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う請求項7記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記仮目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vfk≧Vthの範囲では、Vmx=h・Vsiとする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う請求項6記載のスイッチング電源装置。
【請求項12】
前記仮目標電圧情報作成部は、Vfk>Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vfk≦Vthの範囲では、Vok-Vfkの値に関係なく、Vmx=h・Vsiとする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う請求項7記載のスイッチング電源装置。
【請求項13】
前記指定電圧情報作成部は、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsを外部から変更できるように構成されている請求項10乃至12のいずれか記載のスイッチング電源装置。
【請求項14】
請求項13記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置は、前記電力変換部の出力端同士が相互に並列接続され、前記Vmライン外部接続端子同士が相互に連結され、前記定数kが一律の値に設定され、前記定数hが一律の値に設定されており、
前記各スイッチング電源装置の中の、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsが最も低い値に設定されている1台をマスタ電源とし、その他をスレーブ電源とした時、
前記マスタ電源の前記負荷端電圧検出部は、入力端が前記負荷端に接続され、前記負荷端電圧Vfを検出して前記負荷端検出電圧Vfkを出力し、
前記スレーブ電源の前記負荷端電圧検出部は、入力端が開放され、前記負荷端電圧Vfの値に関係なくゼロボルトを出力し、これによって、前記スレーブ電源の前記仮目標電圧情報作成部は、前記第二の情報作成モードで前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成することとなり、
前記マスタ電源の前記Vmラインには、自己の前記目標電圧生成部が生成した前記目標電圧Vmである目標電圧Vm(M)が発生し、前記スレーブ電源の前記Vmラインには、自己の前記Vmライン外部接続端子を通じて入力された前記目標電圧Vm(M)が発生し、
前記マスタ電源及び前記スレーブ電源の前記制御部は、自己の前記Vmラインに発生している前記目標電圧Vm(M)と自己の前記出力端検出電圧Vokとの差が小さくなるように、前記駆動パルスを生成することを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモートセンシング機能を備えたスイッチング電源装置、及びこれを用いた電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置と負荷とを結ぶ負荷線が長くなると、負荷線に出力電流が流れた時に負荷線の電圧降下が大きくなり、負荷端電圧が狙いの電圧からずれてしまうという問題がある。そこで、従来から、リモートセンシングを行って負荷端電圧の情報を取得し、これを基にスイッチング電源装置の動作を制御することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、センシング線を介して負荷端電圧を直接的に検出し、その検出値を誤差増幅部に入力して負荷端電圧をフィードバック制御するスイッチング電源が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、出力端電圧V2と出力電流Iを検出し、あらかじめ登録された負荷線の抵抗値rとIの検出値とを乗算することによって負荷線の電圧降下I・rを間接的に認識し、V1m=V2m+I・r(V1mは負荷端電圧V1の目標値)の関係が成立するように、出力端電圧目標値V2mを調整する電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-241074号公報
【特許文献2】特開平9-34561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のスイッチング電源は、負荷端電圧を安定化するためのフィードバック制御系の中に、長いセンシング線が存在することになる。そのため、センシング線のインダクタンス成分の影響でフィードバック制御系が発振しやすくなり、センシング線の長さが長くなるほど、制御系の設計の難易度か高くなるという問題がある。
【0007】
特許文献2の電源装置は、負荷線の電圧降下を検出してフィードフォワード制御を行うものであり、フィードバック制御系にセンシング線が入らないので(センシング線自体が不要なので)、フィードバック制御系が発振しやすくなるという問題は回避できる。しかし、負荷線の形態(長さ、太さ)を変更する毎に抵抗値rを導出して登録を変更しなければならず、非常に手間がかかる。
【0008】
また、特許文献2の電源装置は、出力電流Iの値を基に負荷線の電圧降下を認識しようとする構成なので、実際の電圧降下を正確に把握することができない。例えば、出力電流Iの値が大きくなると、負荷線が自己発熱して抵抗値rが変動する(大きくなる)ことが想定される。また、負荷線には抵抗成分以外にインダクタンス成分が存在するので、出力電流Iが急変した時、インダクタンス成分の逆起電力によって電圧変動が発生することが想定される。
【0009】
特許文献2の電源装置では、
図15(a)のグラフに示すように、出力電流I=ゼロの時はV2m=V1mに制御され[動作点P0]、I=Iaが流れるとV2m=V1m+Ia・rに制御される[動作点P1]。したがって、
図15(b)のタイムチャートに示すように、I=ゼロからI=Iaに急変すると、I、V2m及びV2が同じように変化し、各波形はほぼ相似形になる。
【0010】
この時、負荷線の電圧降下V2-V1の波形に示すように、出力電流Iが急変した直後、負荷線に、インダクタンス成分に起因する電圧変動ΔVxが発生する。しかし、この電圧変動ΔVxは制御に反映されないので、電圧振動ΔVxが収束するまでの期間、負荷端電圧V1の波形が乱れてしまうことになる。
【0011】
また、負荷線に電流Iaが流れ始めると、負荷線が自己発熱して抵抗値が徐々に大きくなることによる電圧変動ΔVyが発生する。しかし、この電圧変動ΔVyも制御に反映されないので、負荷線の温度が安定するまでの期間、負荷端電圧V1が徐々に低下することになる。そのため、例えば、Iが小さい時にV1=V1mとなるように抵抗値rを登録するとIが大きい時はV1≠V1mとなり、Iが大きい時にV1=V1mとなるように抵抗値rを登録するとIが小さい時にV1≠V1mとなってしまう。したがって、特許文献2の電源装置を使用しても、負荷端電圧を精度よく制御することが難しい。
【0012】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、フィードフォワード型のリモートセンシング機能によって負荷端電圧を精度よく制御できるスイッチング電源装置及びこれを用いた電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、
入力端に供給された直流又は交流の入力電圧を、主スイッチング素子のスイッチング動作によって直流電圧に変換し、所定長さの負荷線を通じて負荷に電力を供給する電力変換部と、
前記電力変換部の出力端に発生する出力端電圧Voを検出し、これに対応したアナログの出力端検出電圧Vok=k・Vo[kは正の定数]を出力する出力端電圧検出部と、
前記負荷線の負荷端に発生する負荷端電圧Vfを検出し、これに対応したアナログの負荷端検出電圧Vfk=k・Vfを出力する負荷端電圧検出部と、
前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsが指定され、これに対応した指定電圧Vsi=k・Vfsを示す指定電圧情報J(Vsi)を作成する指定電圧情報作成部と、
前記出力端検出電圧Vok、前記負荷端検出電圧Vfk及び前記指定電圧情報J(Vsi)を基にデジタル演算処理を行い、目標電圧Vm=Vsi+Vok-Vfkを示す目標電圧情報J(Vm)を作成する目標電圧情報作成部と、
前記目標電圧情報J(Vm)を基にアナログの目標電圧Vmを生成する目標電圧生成部と、
前記出力端検出電圧Vokと前記目標電圧Vmとが等しくなるように前記主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で前記主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力する制御部とを備えているスイッチング電源装置である。
【0014】
前記目標電圧生成部は、前記目標電圧情報J(Vm)に基づいてデューティが設定される矩形波電圧を出力するパルス幅変調部と、前記矩形波電圧を平滑して前記目標電圧Vmを発生させるローパスフィルタとで構成されることが好ましい[請求項2記載の発明]。
【0015】
前記目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vm=Vsi+Vthとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う構成にすることができる[請求項3記載の発明]。
【0016】
あるいは、前記目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vfk≧Vthの範囲では、Vm=Vsiとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う構成にすることができる[請求項4記載の発明]。
【0017】
あるいは、前記目標電圧情報作成部は、Vfk>Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vfk≦Vthの範囲では、Vok-Vfkの値に関係なく、Vm=Vsiとする旨の前記目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う構成にすることができる[請求項5記載の発明]。
【0018】
また、前記指定電圧情報作成部は、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsを外部から変更できるように構成されていることが好ましい[請求項6記載の発明]。 請求項7記載の発明は、
入力端に供給された直流又は交流の入力電圧を、主スイッチング素子のスイッチング動作によって直流電圧に変換し、所定長さの負荷線を通じて負荷に電力を供給する電力変換部と、
前記電力変換部の出力端に発生する出力端電圧Voを検出し、これに対応したアナログの出力端検出電圧Vok=k・Vo[kは正の定数]を出力する出力端電圧検出部と、
前記負荷線負荷端に発生する負荷端電圧Vfを検出し、これに対応したアナログの負荷端検出電圧Vfk=k・Vfを出力する負荷端電圧検出部と、
前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsが指定され、これに対応した指定電圧Vsi=k・Vfsを示す指定電圧情報J(Vsi)を作成する指定電圧情報作成部と、
前記出力端検出電圧Vok、前記負荷端検出電圧Vfk及び前記指定電圧情報J(Vsi)を基にデジタル演算処理を行い、仮目標電圧Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)[hは正の定数]を示す仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する仮目標電圧情報作成部と、
前記仮目標電圧情報J(Vmx)を基にアナログの目標電圧Vm=Vmx/hを生成する目標電圧生成部と、
前記出力端検出電圧Vokと前記目標電圧Vmとが等しくなるように前記主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で前記主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスを生成し、前記主スイッチング素子に向けて出力する制御部と、
前記目標電圧生成部の出力ラインであるVmラインを外部に接続可能にするVmライン外部接続端子とを備え、
前記目標電圧生成部は、前記仮目標電圧情報作成部が作成した前記仮目標電圧情報J(Vmx)に基づいてアナログの仮目標電圧Vmxを生成する仮目標電圧生成部と、前記Vmラインを正の電圧にプルアップするためのプルアップ回路と、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>Vmx/hの時に前記Vmラインから電流を引き込み、Vm≦Vmsx/hの時に前記Vmラインから電流を引き込むのを停止することによって、前記目標電圧Vmが前記仮目標電圧Vmxに対応した値Vmx/hになるように制御するVm制御部とを備えているスイッチング電源装置である。
【0019】
前記仮目標電圧生成部は、前記仮目標電圧情報J(Vmx)に基づいてデューティが設定される矩形波電圧を出力するパルス幅変調部と、前記矩形波電圧を平滑して前記仮目標電圧Vmxを発生させるローパスフィルタとで構成されることが好ましい[請求項8記載の発明]。
【0020】
また、前記指定電圧情報作成部は、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsを外部から変更できるように構成されていることが好ましい[請求項9記載の発明]。
【0021】
前記仮目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vmx=h・(Vsi+Vth)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う構成にすることができる[請求項10記載の発明]。
【0022】
あるいは、前記仮目標電圧情報作成部は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vfk≧Vthの範囲では、Vmx=h・Vsiとする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う構成にすることができる[請求項11記載の発明]。
【0023】
あるいは、前記仮目標電圧情報作成部は、Vfk>Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vfk≦Vthの範囲では、Vok-Vfkの値に関係なく、Vmx=h・Vsiとする旨の前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う構成にすることができる[請求項12記載の発明]。
【0024】
また、前記指定電圧情報作成部は、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsを外部から変更できるように構成されていることが好ましい[請求項13記載の発明]。
【0025】
さらに、請求項14記載の発明は、請求項13記載のスイッチング電源装置を複数台使用した電源システムであって、
前記各スイッチング電源装置は、前記電力変換部の出力端同士が相互に並列接続され、前記Vmライン外部接続端子同士が相互に連結され、前記定数kが一律の値に設定され、前記定数hが一律の値に設定されており、
前記各スイッチング電源装置の中の、前記負荷端電圧Vfの指定値Vfsが最も低い値に設定されている1台をマスタ電源とし、その他をスレーブ電源とした時、
前記マスタ電源の前記負荷端電圧検出部は、入力端が前記負荷端に接続され、前記負荷端電圧Vfを検出して前記負荷端検出電圧Vfkを出力し、
前記スレーブ電源の前記負荷端電圧検出部は、入力端が開放され、前記負荷端電圧Vfの値に関係なくゼロボルトを出力し、これによって、前記スレーブ電源の前記仮目標電圧情報作成部は、前記第二の情報作成モードで前記仮目標電圧情報J(Vmx)を作成することとなり、
前記マスタ電源の前記Vmラインには、自己の前記目標電圧生成部が生成した前記目標電圧Vmである目標電圧Vm(M)が発生し、前記スレーブ電源の前記Vmラインには、自己の前記Vmライン外部接続端子を通じて入力された前記目標電圧Vm(M)が発生し、
前記マスタ電源及び前記スレーブ電源の前記制御部は、自己の前記Vmラインに発生している前記目標電圧Vm(M)と自己の前記出力端検出電圧Vokとの差が小さくなるように、前記駆動パルスを生成する電源システムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスイッチング電源装置は、独特なフィードフォワード型のリモートセンシング機能により、負荷端電圧Vfを精度よく指定値Vfsに一致させることができる。また、目標電圧情報作成部又は仮目標電圧情報作成部を、通常は第一の情報作成モードで動作させ、特別な時に第二の情報作成モードで動作させることによって、例えば、センシング線が不意に未接続状態になる事態(例えば、断線事故)が発生した時でも、負荷や電力変換部の安全を確保しつつ、負荷への電力供給を継続させることができる。
【0027】
本発明の電源システムは、上記のスイッチング電源装置を並列運転させたものであり、複数台のスイッチング電源装置の中の1台の目標電圧Vmを制御することによって、フィードフォワード型のリモートセンシングを行いつつ、各スイッチング電源装置の一斉起動や、負荷電力の負担の均等化や、負荷端電圧Vfの設定変更の容易化等の要求に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の指定電圧情報作成部に外部指令GS(負荷端電圧指定値Vfs)を入力する方法の例を示す回路図(a)と(b)、
図1の目標電圧生成部の構成の具体例を示す回路図(c)と(d)である。
【
図3】
図1の目標電圧情報作成部の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P0→P1]を示すタイムチャート(b)である。
【
図4】
図1の目標電圧作成部の第一の変形例の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P1→P2]を示すタイムチャート(b)である。
【
図5】
図1の目標電圧作成部の第二の変形例の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P1→P3]を示すタイムチャート(b)である。
【
図6】
図1の目標電圧作成部の第三の変形例の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P1→P4]を示すタイムチャート(b)である。
【
図7】本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図7の目標電圧生成部の構成の具体例を示す回路図(a)、仮目標電圧生成部の変形例を示す回路図(b)である。
【
図9】
図7の仮目標電圧情報作成部の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P0→P1]を示すタイムチャート(b)である。
【
図10】
図7の仮目標電圧情報作成部の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P1→P2]を示すタイムチャート(b)である。
【
図11】
図7の仮目標電圧情報作成部の第一の変形例の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P1→P3]を示すタイムチャート(b)である。
【
図12】
図7の仮目標電圧情報作成部の第二の変形例の処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P1→P4]を示すタイムチャート(b)である。
【
図13】本発明の電源システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図13の電源システムにおけるマスタ電源及びスレーブ電源の各目標電圧生成部の動作を示す回路図である。
【
図15】従来のスイッチング電源装置(特許文献2の電源装置)で実行される処理内容を示すグラフ(a)、この処理を実行した時のスイッチング電源装置の各部の動作波形[動作点P0→P1]を示すタイムチャート(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<<本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態>>
以下、本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態について、
図1~
図6に基づいて説明する。
<第一の実施形態のスイッチング電源装置10>
この実施形態のスイッチング電源装置10は、入力端12に入力電源14が接続され、入力端12に供給された直流又は交流の入力電圧Viを、主スイッチング素子(図示せず)のスイッチング動作によって直流電圧に変換し、所定長さ(例えば1m~20m)の負荷線16を通じて負荷18に電力を供給する電力変換部20を備えている。その他、
図1に示すように、出力端電圧検出部24、負荷端電圧検出部26、指定電圧情報作成部28、目標電圧情報作成部30、目標電圧生成部32及び制御部34を備えている。
【0030】
出力端電圧検出部24は、電力変換部20の出力端22に接続され、出力端22に発生する出力端電圧Voを検出し、これに対応したアナログの出力端検出電圧Vok=k・Vo[kは正の定数]を出力するブロックである。出力端電圧検出部24は、公知な電圧増幅回路又は差動増幅回路で構成することができる。
【0031】
負荷端電圧検出部26は、センシング線38を介して負荷線16の一端(負荷端36)に接続され、負荷端36に発生する負荷端電圧Vfを検出し、これに対応したアナログの負荷端検出電圧Vfk=k・Vf[定数kは出力端電圧検出部24の定数kと同じ値]を出力するブロックである。負荷端電圧検出部26は、負荷端検出電圧Vfkのグランド電位を出力端検出電圧Vokに合わせるため、差動増幅回路で構成することが好ましい。
【0032】
指定電圧情報作成部28は、デジタルプロセッサ内に設けられ、負荷端電圧Vfの指定値Vfsがデフォルト設定され、これに対応した指定電圧Vsi=k・Vfs[定数kは出力端電圧検出部24の定数kと同じ値]を示す指定電圧情報J(Vsi)を作成するブロックである。
【0033】
指定電圧情報作成部28は、指定値Vfsの設定を、使用者からの外部指令GSによって変更できるように構成されている。例えば、指定値Vfsが48Vにデフォルト設定されている場合に、使用者が指定値Vfsを48.5Vに変更したい時は、外部指令GSを入力して設定を変更する。外部指令GSを入力する方法として様々な方法があり、例えば、
図2(a)に示すように、使用者が、スイッチング電源装置10に外部接続した外部制御機器40を通じてデジタル信号として入力する方法がある。また、
図2(b)に示すように、使用者が、スイッチング電源装置10の内部に設けた電圧可変回路42の可変抵抗器42aを手動で調節し、アナログ電圧として入力する方法を使用してもよい。
【0034】
目標電圧情報作成部30は、デジタルプロセッサ内に設けられ、出力端検出電圧Vok、負荷端検出電圧Vf及び指定電圧情報J(Vsi)を基にデジタル演算処理を行い、目標電圧Vm=Vsi+Vok-Vfkを示す目標電圧情報J(Vm)を作成するブロックである。目標電圧情報作成部30が行う処理内容は、
図3(a)のグラフのように表すことができる。
【0035】
目標電圧生成部32は、目標電圧情報J(Vm)を基にアナログの目標電圧Vmを生成するブロックである。目標電圧生成部32は、例えば
図2(c)に示すように、1つのD/Aコンバータでシンプルに構成することができる。あるいは、
図2(d)に示すように、目標電圧情報J(Vm)に基づいてデューティDが設定される矩形波電圧Vp(波高値V1)を出力するパルス幅変調部32aと、矩形波電圧Vpを平滑して目標電圧Vm≒V1・Dを発生させるローパスフィルタ32bとで構成することも可能である。なお、D/Aコンバータで構成する場合、目標電圧Vmの分解能を高くするためには比較的高価な高速デジタルプロセッサが必要になる点に注意が必要である。この点、パルス幅変調部32a及びローパスフィルタ32bで構成すれば、安価な汎用デジタルプロセッサを使用しても高い分解能で目標電圧Vmを生成できるという利点がある。
【0036】
制御部34は、出力端検出電圧Vokと目標電圧Vmとが等しくなるように主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を決定し、このオン時間及びオフ時間で前記主スイッチング素子がオンオフするように駆動パルスVgを生成し、主スイッチング素子に向けて出力するブロックである。
【0037】
次に、スイッチング電源装置10の動作を、
図3(b)のタイムチャートに基づいて説明する。
図3(b)は、出力電流Io=ゼロ[動作点P0]で動作している時、負荷18が急変して出力電流Io=Ia[動作点P1]になったと想定したときの動作波形を示している。
【0038】
まず、動作点P0の動作を説明すると、出力電流Io=ゼロなので、負荷線16の電圧降下Vo-Vf=ゼロとなる。そうすると、Vok-Vfk=ゼロになるので、目標電圧情報作成部30及び目標電圧生成部32が動作して目標電圧Vm=Vsiが発生する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=Vsi/k=Vfsとなり、負荷端電圧Vfは、Vf=Vo=Vfsとなる。つまり、負荷端電圧Vfは、指定値Vfsと同じ値に制御される。
【0039】
時刻ta~tbの間に出力電流IoがゼロからIaに急増すると、動作点がP0からP1に変化する。動作点P1では、出力電流Io=Iaなので、負荷線16の電圧降下Vo-Vf=有限値となる。そうすると、Vok-Vfk=有限値になるので、目標電圧情報作成部30及び目標電圧生成部32が動作し、目標電圧Vm=Vsi+Vok―Vfkが発生する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=(Vsi+Vok-Vfk)/k=Vfs+(Vok-Vfk)/kとなり、負荷端電圧Vfは、Vf=Vfsとなる。つまり、負荷端電圧Vfは、指定値Vfsと同じ値に制御される。
【0040】
図3(b)において、動作点P1に移行した直後、電圧降下Vo-Vfの波形に、負荷線16のインダクタンス成分に起因する電圧変動ΔVxが発生している。しかし、この電圧変動ΔVxに応答して目標電圧Vmが変化し、出力端電圧Voを適切に変化させる。また、動作点P1に移行した後、負荷線16が自己発熱して抵抗値が大きくなることによる電圧変動ΔVyが発生しているが、目標電圧Vmがこの電圧変動ΔVyに応答して変化し、出力端電圧Voを適切に変化させる。したがって、負荷端電圧Vfは、電圧変動ΔVx,ΔVyが発生しても、ほぼ指定値Vfsに制御されることになる。
【0041】
このように、スイッチング電源装置10によれば、負荷線16の電圧降下に応じて出力端電圧Voが適切に変化し、負荷端電圧Vfを精度よく指定値Vfsに一致させることができる。
【0042】
<目標電圧情報作成部30の変形例30(1)~30(3)>
上記の目標電圧情報作成部30を使用した場合、センシング線38が不意に未接続状態になる事態(例えば、断線事故)が発生した時、実際の負荷線16の電圧降下Vo-Vfが小さいにもかかわらず、Vok-Vfkが大きくなるので、目標電圧Vmが想定以上に高くなってしまう。その結果、制御部34が動作して出力端電圧Vo及び負荷端電圧Vfが過大な値になり、負荷18や電力変換部20の安全を確保できないケースが想定される。
【0043】
例えば、安全のため、過電圧保護回路を付加して電力変換部20を停止させる方法が考えられるが、負荷18の種類によっては、電力供給を安易に停止させてはいけない場合がある。したがって、センシング線38が不意に未接続状態になる不具合が発生した時は、負荷18等の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることが求められる。
【0044】
以下に説明する変形例の目標電圧情報作成部30(1)~30(3)を使用すれば、センシング線38が不意に未接続状態になる事態が発生した時、負荷端電圧Vfが指定値Vfsから大きくずれていない値に保持され、上記の課題を解決することができる。
【0045】
まず、第一の変形例の目標電圧情報作成部30(1)について説明する。目標電圧情報作成部30(1)には、あらかじめ電圧閾値Vthが設定されている。そして、
図4(a)に示すように、Vok-Vfk<Vthの範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行う。第一の情報作成モードは、上述した目標電圧情報作成部30の処理内容[
図3(a)]と同じである。そして、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vm=Vsi+Vthとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う。
【0046】
目標電圧情報作成部30(1)を使用した時のスイッチング電源装置10の動作を説明すると、
図4(b)のタイムチャートは、Vok-Vfk<Vthの範囲[動作点P1]で動作している時、何らかの原因でセンシング線38が断線してVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P2]で動作する状態なったと想定したときの動作波形を示している。ここでは、出力電流Ioは一定であると仮定する。
【0047】
動作点P1は、第一の情報作成モードの処理を行うので、各部の電圧は、
図3(b)の動作点P1と同様になる。そして、時刻tcにセンシング線38が断線すると、時刻tc~tdの間、負荷端検出電圧Vfkが低下してVok-Vfkが大きくなるので、目標電圧情報作成部30及び目標電圧生成部32が動作して目標電圧Vmが上昇する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Vo及び負荷端電圧Vfが上昇する。
【0048】
その後、時刻tdにVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P2]に入り、第一の情報作成モードから第二の情報作成モードに切り換わる。つまり、時刻td以降は、目標電圧Vmの上昇が制限され、Vm=Vsi+Vthに保持されることになる。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=(Vsi+Vth)/k=Vfs+Vth/kに制御され、負荷端電圧Vfは、出力端電圧Voよりも少し低い値に保持される。したがって、電圧閾値Vthを適切な値に設定することによって、負荷18等の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0049】
次に、第二の変形例の目標電圧情報作成部30(2)について説明する。目標電圧情報作成部30(2)には、あらかじめ電圧閾値Vthが設定されている。そして、
図5(a)に示すように、Vok-Vfk<Vthの範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行う。この第一の情報作成モードは、上述した目標電圧情報作成部30の処理内容[
図3(a)]と同じである。そして、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vm=Vsiとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う。
【0050】
目標電圧情報作成部30(2)を使用した時のスイッチング電源装置10の動作を説明すると、
図5(b)のタイムチャートは、Vok-Vfk<Vthの範囲[動作点P1]で動作している時に、何らかの原因でセンシング線38が断線してVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P3]で動作する状態になったと想定したときの動作波形を示している。ここでは、出力電流Ioは一定であると仮定する。
【0051】
動作点P1は、第一の情報作成モードの処理を行うので、各部の電圧は、
図3(b)の動作点P1と同様になる。そして、時刻teにセンシング線38が断線すると、時刻te~tfの間、負荷端検出電圧Vfkが低下してVok-Vfkが大きくなるので、目標電圧情報作成部30及び目標電圧生成部32が動作して目標電圧Vmが上昇する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Vo及び負荷端電圧Vfが上昇する。
【0052】
その後、時刻tfにVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P3]に入り、第一の情報作成モードから第二の情報作成モードに切り換わる。つまり、時刻tf以降は、目標電圧Vmの上昇が制限され、Vm=Vsiに保持されることになる。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vmの変化から少し遅れてVo=Vm/k=Vok/k=Vsi/k=Vfsに制御され、負荷端電圧Vfは、出力端電圧Vo(=Vfs)よりも少し低い値に保持される。したがって、負荷18等の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0053】
次に、第三の変形例の目標電圧情報作成部30(3)について説明する。目標電圧情報作成部30(3)には、あらかじめ電圧閾値Vthが設定されている。そして、
図6(a)に示すように、Vfk>Vthの範囲で、Vm=Vsi+Vok-Vfkとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第一の情報作成モードの処理を行う。この第一の情報作成モードは、上述した目標電圧情報作成部30の処理内容[
図3(a)]と同じである。そして、Vfk≦Vthの範囲では、Vok-Vfkの値に関係なく、Vm=Vsiとする旨の目標電圧情報J(Vm)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う。
【0054】
目標電圧情報作成部30(3)を使用した時のスイッチング電源装置10の動作を説明すると、
図6(b)のタイムチャートは、Vfk>Vthの範囲[動作点P1]で動作している時に、何らかの原因でセンシング線38が断線してVfk≦Vthの範囲[動作点P4]で動作する状態になったと想定した時の動作波形を示している。ここでは、出力電流Ioは一定であると仮定する。
【0055】
動作点P1は、第一の情報作成モードの処理を行うので、各部の電圧は、
図3(b)の動作点P1と同様になる。そして、時刻tgにセンシング線38が断線すると、時刻tg~thの間、負荷端検出電圧Vfkが低下してVok-Vfkが大きくなるので、目標電圧情報作成部30及び目標電圧生成部32が動作して目標電圧Vmが上昇する。その結果、制御部34が動作して出力端電圧Vo及び負荷端電圧Vfが上昇する。
【0056】
その後、時刻thにVfk≦Vthの範囲[動作点P4]に入り、第一の情報作成モードから第二の情報作成モードに切り換わる。つまり、時刻th以降は、目標電圧Vmの上昇が制限され、Vm=Vsiに保持されることになる。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vmの変化から少し遅れてVo=Vm/k=Vok/k=Vsi/k=Vfsに制御され、負荷端電圧Vfは、出力端電圧Vo(=Vfs)よりも少し低い値に保持される。したがって、負荷18等の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0057】
<スイッチング電源装置10及び変形例の効果のまとめ>
以上説明したように、スイッチング電源装置10は、独特なフィードフォワード型のリモートセンシング機能により、負荷端電圧Vfを精度よく指定値Vfsに一致させることができる。また、変形例の目標電圧情報作成部30(1)~30(3)を使用し、通常は第一の情報作成モードで動作させ、特別な時に第二の情報作成モードで動作させることによって、センシング線が不意に未接続状態になる事態(例えば、断線事故)が発生した時でも、負荷18や電力変換部20の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0058】
<<本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態>>
次に、本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態について、
図7~
図12に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
<第二の実施形態のスイッチング電源装置44>
この実施形態のスイッチング電源装置44は、リモートセンシング機能と並列運転に適した機能とを備え、単体でも使用できる電源装置である。
図7に示すように、スイッチング電源装置44の構成はスイッチング電源装置10と共通点が多く、異なるのは、目標電圧情報作成部30に代えて仮目標電圧情報作成部46が設けられ、目標電圧生成部32に代えて目標電圧生成部48が設けられ、さらに、新たにVmライン外部接続端子50が設けられている点である。以下、構成が異なる点を中心に説明する。
【0059】
仮目標電圧情報作成部46は、デジタルプロセッサ内に設けられ、出力端検出電圧Vok、負荷端検出電圧Vf、指定電圧情報J(Vsi)、及びあらかじめ設定された電圧閾値Vthを基にデジタル演算処理を行い、仮目標電圧Vmxを示す目仮標電圧情報J(Vmx)を作成するブロックである。具体的には、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vmx=h・(Vsi+Vth)とする旨の仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う。仮目標電圧情報作成部46が行う処理内容は、
図9(a)、
図10(a)のグラフのように表すことができる。
【0060】
なお、第一の情報作成モードは、スイッチング電源装置44が正常動作している時に実行されるモードで、第二の情報作成モードは、センシング線38が不意に未接続状態になる事態(例えば、断線事故)が発生した時に実行されるモードである。これは、スイッチング電源装置10の説明の中で述べた第一及び第二の情報作成モードと意味は同じである。
【0061】
目標電圧生成部48は、仮目標電圧情報J(Vmx)を基にアナログの目標電圧Vm=Vmx/hを生成するブロックである。目標電圧生成部48は、
図8(a)に示すように、仮目標電圧生成部52、プルアップ回路54及びVm制御部56で構成される。
【0062】
仮目標電圧生成部52は、仮目標電圧情報J(Vmx)を基にアナログの仮目標電圧Vmxを生成するブロックである。仮目標電圧生成部52は、
図2(c)、(d)に示す目標電圧生成部32と類似した構成にすることができる。つまり、
図8(a)に示すように、1つのD/Aコンバータでシンプルに構成することができ、
図8(b)に示すように、仮目標電圧情報J(Vmx)に基づいてデューティDが設定される矩形波電圧Vp(波高値V1)を出力するパルス幅変調部52aと、矩形波電圧Vpを平滑して仮目標電圧Vmx≒V1・Dを発生させるローパスフィルタ58bとで構成することも可能である。なお、D/Aコンバータで構成する場合、仮目標電圧Vmxの分解能を高くするためには比較的高価な高速デジタルプロセッサが必要になる点に注意が必要である。この点、パルス幅変調部52a及びローパスフィルタ52bで構成すれば、安価な汎用デジタルプロセッサを使用しても高い分解能で仮目標電圧Vmxを生成できるという利点がある。
【0063】
プルアップ回路54は、後述するVm制御部56の出力ライン(目標電圧生成部48の出力ラインであるVmライン50a)を正の電圧にプルアップする回路である。プルアップ回路54は、
図8(a)に示すように定電流回路としている。プルアップ回路は、単純に固定抵抗としてもよいが、定電流回路にした方が低損失化できるという利点がある。
【0064】
Vm制御部56は、電流引き込み型の出力段を有し、Vm>Vmx/h[定数hは仮目標電圧情報作成部46の定数hと同じ値]の時にVmライン50aから電流を引き込み、Vm≦Vmx/hの時にVmライン50aから電流を引き込むのを停止することによって、Vmライン50aの目標電圧Vmが仮目標電圧Vmxに対応した値Vmx/hになるように制御するブロックである。例えば、
図8(a)の構成の場合はVm=(1+R1/R2)・Vmxに制御され、R2を開放除去すればVm=Vmxに制御されることになる。
【0065】
Vmライン外部接続端子50は、Vmライン50aを外部に接続可能にする端子である。この端子は、複数台のスイッチング電源装置44を並列運転させる時に相互に接続される端子であり、スイッチング電源装置44を単体で使用する時は、何も接続せずに開放状態にする。
【0066】
次に、スイッチング電源装置44を単体で使用した時の動作を、
図9(b)、
図10(b)に基づいて説明する。
図9(b)のタイムチャートは、出力電流Io=ゼロ[動作点P0]で動作している時、負荷18が急変して出力電流Io=Ia[動作点P1]になったと想定したしたときの動作波形を示している。
【0067】
まず、動作点P0の動作を説明すると、出力電流Io=ゼロなので、負荷線16の電圧降下Vo-Vf=ゼロとなる。そうすると、Vok-Vfk=ゼロになるので、仮目標電圧情報作成部46及び目標電圧生成部48が動作して、目標電圧Vm=Vmx/h=(h・Vsi)/h=Vsiが発生する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=Vsi/k=Vfsとなり、負荷端電圧Vfは、Vf=Vo=Vfsとなる。つまり、負荷端電圧Vfは、指定値Vfsと同じ値に制御される。
【0068】
時刻ta~tbの間に出力電流IoがゼロからIaに急増すると、動作点がP0からP1に変化する。動作点P1では、出力電流Io=Iaなので、負荷線16の電圧降下Vo-Vf=有限値となる。そうすると、Vok-Vfk=有限値になるので、仮目標電圧情報作成部46及び目標電圧生成部48が動作し、目標電圧Vm=Vmx/h=[h・(Vsi+Vok―Vfk)]/h=Vsi+Vok―Vfkが発生する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=(Vsi+Vok-Vfk)/k=Vfs+(Vok-Vfk)/kとなり、負荷端電圧Vfは、Vf=Vfsとなる。つまり、負荷端電圧Vfは、指定値Vfsと同じ値に制御される。
【0069】
このように、スイッチング電源装置44が通常動作している時[Vok-Vfk<Vth範囲の動作点P0,P1]は、仮目標電圧情報作成部46が第一の情報作成モードの処理を行うことによって、負荷線16の電圧降下に応じて出力端電圧Voが適切に変化し、負荷端電圧Vfを精度よく指定値Vfsに一致させることができる。
【0070】
図10(b)のタイムチャートは、Vok-Vfk<Vthの範囲[動作点P1]で動作している時、何らかの原因でセンシング線38が断線してVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P2]で動作する状態になったと想定したときの動作波形を示している。ここでは、出力電流Ioは一定であると仮定する。
【0071】
図10(b)における動作点1の動作は、
図9(b)における動作点P1と同じであり、動作点P1の状態で、時刻tcにセンシング線38が断線すると、時刻tc~tdの間、負荷端検出電圧Vfkが低下してVok-Vfkが大きくなるので、仮目標電圧情報作成部46及び目標電圧生成部48が動作して仮目標電圧Vmx及び目標電圧Vm=Vmx/hが上昇する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Vo及び負荷端電圧Vfが上昇する。
【0072】
その後、時刻tdにVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P2]に入り、第一の情報作成モードから第二の情報作成モードに切り換わる。つまり、時刻td以降は、仮目標電圧Vmx及び目標電圧Vmの上昇が制限され、Vmx=h・(Vsi+Vth)、Vm=Vsi+Vthに各々保持されることになる。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=(Vsi+Vth)/k=Vfs+Vth/kに制御され、負荷端電圧Vfは、出力端電圧Voよりも少し低い値に保持される。したがって、電圧閾値Vthを適切な値に設定することによって、負荷18等の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0073】
なお、スイッチング電源装置44の
図9(b)に示す動作は、スイッチング電源装置10の
図3(b)に示す動作と基本的に同じであり、スイッチング電源装置44の
図10(b)に示す動作は、スイッチング電源装置10の
図4(b)に示す動作と基本的に同じである。異なるのは、スイッチング電源装置44の場合、仮目標電圧情報作成部46及び目標電圧生成部48の処理や動作の中に定数hが入っているという点に特徴があり、これによって、並列運転を行う時に独特な作用効果が得られる。詳しくは、後の電源システム58を説明する中で述べる。
【0074】
<仮目標電圧情報作成部46の変形例46(1),46(2)>
次に、仮目標電圧情報作成部46の、第二の情報作成モードの処理内容を変更した2つの変形例46(1),46(2)について順に説明する。
【0075】
まず、第一の変形例の仮目標電圧情報作成部46(1)について説明する。仮目標電圧情報作成部46(1)は、Vok-Vfk<Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vok-Vf≧Vthの範囲では、Vmx=h・Vsiとする旨の仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う。仮目標電圧情報作成部46(1)が行う処理内容は、
図11(a)のグラフのように表すことができる。
【0076】
図11(b)のタイムチャートは、Vok-Vfk<Vthの範囲[動作点P1]で動作している時、何らかの原因でセンシング線38が断線してVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P3]で動作する状態になったと想定したときの動作波形を示している。ここでは、出力電流Ioは一定であると仮定する。
【0077】
図11(b)における動作点1の動作は、
図9(b)における動作点P1の動作と同じであり、時刻teにセンシング線38が断線すると、時刻te~tfの間、負荷端検出電圧Vfkが低下してVok-Vfkが大きくなるので、仮目標電圧情報作成部46(1)及び目標電圧生成部48が動作して仮目標電圧Vmx及び目標電圧Vm=Vmx/hが上昇する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Vo及び負荷端電圧Vfが上昇する。
【0078】
その後、時刻tfにVok-Vfk≧Vthの範囲[動作点P3]に入り、第一の情報作成モードから第二の情報作成モードに切り換わる。つまり、時刻tf以降は、仮目標電圧Vmx及び目標電圧Vmの上昇が制限され、Vmx=h・Vsi、Vm=Vsiに各々保持されることになる。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=Vsi/k=Vfsに制御され、負荷端電圧Vfは、出力端電圧Voよりも少し低い値に保持される。したがって、負荷18等の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0079】
スイッチング電源装置44の
図11(b)に示す動作は、スイッチング電源装置10の
図5(b)に示す動作と基本的に同じである。
【0080】
次に、第二の変形例の仮目標電圧情報作成部46(2)について説明する。仮目標電圧情報作成部46(2)は、Vfk>Vth[Vthは電圧閾値]の範囲で、Vmx=h・(Vsi+Vok-Vfk)とする旨の目標電圧情報J(Vmx)を作成する第一の情報作成モードの処理を行い、Vf≦Vthの範囲では、Vok-Vfkの値に関係なく、Vmx=h・Vsiとする旨の仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する第二の情報作成モードの処理を行う。仮目標電圧情報作成部46(2)が行う処理内容は、
図12(a)のグラフのように表すことができる。
【0081】
図12(b)のタイムチャートは、Vfk>Vthの範囲[動作点P1]で動作している時、何らかの原因でセンシング線38が断線してVfk≦Vthの範囲[動作点P4]で動作する状態になったと想定したときの動作波形を示している。ここでは、出力電流Ioは一定であると仮定する。
【0082】
図12(b)における動作点1の動作は、
図9(b)における動作点P1の動作と同じであり、時刻tgにセンシング線38が断線すると、時刻tg~thの間、負荷端検出電圧Vfkが低下してVok-Vfkが大きくなるので、仮目標電圧情報作成部46(1)及び目標電圧生成部48が動作して仮目標電圧Vmx及び目標電圧Vm=Vmx/hが上昇する。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Vo及び負荷端電圧Vfが上昇する。
【0083】
その後、時刻thにVfk≦Vthの範囲[動作点P4]に入り、第一の情報作成モードから第二の情報作成モードに切り換わる。つまり、時刻th以降は、仮目標電圧Vmx及び目標電圧Vmの上昇が制限され、Vmx=h・Vsi、Vm=Vsiに各々保持されることになる。その結果、制御部34の動作により、出力端電圧Voは、Vo=Vm/k=Vok/k=Vsi/k=Vfsに制御され、負荷端電圧Vfは、出力端電圧Voよりも少し低い値に保持される。したがって、負荷18等の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0084】
スイッチング電源装置44の
図12(b)に示す動作は、スイッチング電源装置10の
図6(b)に示す動作と基本的に同じである。
【0085】
<スイッチング電源装置44及び変形例の効果のまとめ>
以上説明したように、スイッチング電源装置44によれば、上記のスイッチング電源装置10と同様の作用効果が得られる。さらに、スイッチング電源装置44は、並列運転に適した機能が追加されており、複数台のスイッチング電源装置44を組み合わせることによって、優れた性能の電源システムを得ることができる。詳しくは、後の電源システム58を説明する中で述べる。
【0086】
<<本発明の電源システム一実施形態>>
次に、本発明の電源システムの一実施形態について、
図13、
図14に基づいて説明する。この実施形態の電源システム58は、
図13に示すように、2台のスイッチング電源装置44で構成される。スイッチング電源装置44は、先に説明した本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態である。
【0087】
2台のスイッチング電源装置44は、定数kが一律の値に設定され、定数hが一律の値に設定されており、電力変換部20の出力端22同士を、均等に太くて短い導線60a,60bで並列接続し(並列運転させ)、その接続点に接続された所定長さの負荷線16を通じて1つの負荷18に電力を供給する。負荷電力は、2台のスイッチング電源装置44の出力電力を合算した値となる。さらに、Vmライン外部接続端子50同士が相互に連結されている。
【0088】
2台のスイッチング電源装置44は、負荷端電圧Vfの指定値Vfsを意図的にずらし、単体で動作させた時に負荷端電圧Vfが異なる値になるようにしている。そこで、2台のスイッチング電源装置44の中の、指定値Vfsが最も低い値に設定され、単体で動作させた時に仮目標電圧Vmxが最も低くなる方をマスタ電源44(M)とし、もう一方(指定値Vfsが十分高い値に設定され、単体で動作させた時に仮目標電圧Vmxが十分高くなる方)をスレーブ電源44(S)と称して区別する。
【0089】
マスタ電源44(M)は、負荷端電圧検出部26の入力端がセンシング線38を介して負荷端36に接続されており、負荷端電圧検出部26が負荷端検出電圧Vfk=k・Vfを出力する構成になっている。一方、スレーブ電源44(S)は、負荷端電圧検出部26の入力端が開放されており、負荷端電圧検出部26が負荷端電圧Vfの値に関係なくゼロボルトを出力する構成になっている。したがって、スレーブ電源44(S)の仮目標電圧情報作成部46は、常に第二の情報作成モードで仮目標電圧情報J(Vmx)を作成する。
【0090】
スレーブ電源44(S)の指定値Vfsは、上記のようにマスタ電源44(M)の指定値Vfsよりも十分高い値に設定されている。したがって、マスタ電源44(M)が正常動作を行っている時[センシング線38が正しく接続されて第一の情報作成モードの処理を行う時]、マスタ電源44(M)の仮目標電圧Vmxは、常にスレーブ電源44(S)の仮目標電圧Vmxよりも低い値になる。
【0091】
次に、マスタ電源44(M)及びスレーブ電源44(S)の各目標電圧生成部48の動作を、具体的な数値例を基に説明する。
図14は、マスタ電源44(M)は、定数h=1のVm制御部56に仮目標電圧Vmx=5Vが入力され、スレーブ電源44(S)は、定数h=1のVm制御部56に仮目標電圧Vmx=7Vが入力されている状況を示している。
【0092】
マスタ電源44(M)は、自己のVm制御部56の制御により、目標電圧Vm=Vmx/h=5Vに制御される。一方、スレーブ電源44(S)は、単体で動作したとすれば、自己のVm制御部56の動作により、目標電圧Vm=Vmx/h=7Vに制御されることになるところ、Vmライン50aがVmライン外部接続端子50を介してマスタ電源44(M)のVmライン50aに連結されているので、目標電圧Vmが5Vに保持されることになる。そのため、スレーブ電源44(S)のVm制御部56は、Vmライン50aから電流を引き込む動作を停止したままの制御不能な状態に保持される。
【0093】
図14において、マスタ電源44(M)の目標電圧VmをVm(M)とすると、スレーブ電源44(S)の目標電圧VmもVm(M)となる。したがって、マスタ電源44(M)とスレーブ電源44(S)は、出力端電圧Voが同じ値になり、負荷端電圧Vfも同じ値になり、負荷電力をほぼ均等に負担することになる。
【0094】
以上説明したように、電源システム58によれば、2台のスイッチング電源装置44の中の1台(マスタ電源44(M))の目標電圧Vmを制御することによって、フィードフォワード型のリモートセンシングを行いつつ、2台のスイッチング電源装置44の一斉起動や、負荷電力の負担の均等化や、負荷端電圧Vfの設定変更の容易化等の要求に応えることができる。また、マスタ電源44(M)のセンシング線38が不意に未接続状態になる事態(例えば、断線事故)が発生した時でも、負荷18や各電力変換部20の安全を確保しつつ、負荷18への電力供給を継続させることができる。
【0095】
なお、上記の電源システム58は、2台のスイッチング電源装置44を並列運転する構成になっているが、3台以上のスイッチング電源装置44を並列運転する構成にしてもよい。3台以上を並列運転した時も、1台だけがマスタ電源44(M)となり、その他がすべてスレーブ電源44(S)となり、2台の時と同様の作用効果が得られる。
【0096】
<<その他の実施形態など>>
なお、本発明のスイッチング電源装置及び電源システムは、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、電源システム58を構成する場合、スイッチング電源装置44の仮目標電圧情報作成部46は、変形例の仮目標電圧情報作成部46(1),46(2)に置き換えてもよく、同様の作用効果が得られる。
【0097】
また、上記の電源システム58の説明の中では、「電力変換部20の出力端22同士を、均等に太くて短い導線60a,60bで並列接続し(並列運転させ)、その接続点に接続された所定長さの負荷線16を通じて1つの負荷18に電力を供給する。」とした。しかし、導線60a,60bを十分に均等に太く短くできない事情がある場合に、2台のスイッチング電源装置44の出力電流Ioのバランス(負荷電力の負担のバランス)が少し崩れる可能性がある。そこで、より高い精度でバランスをとりたい時は、例えば、実開昭63-135406号公報の第1図に記載された電流バランス調整回路の技術を適用するとよい。
【0098】
この電流バランス調整回路の技術は、各電源装置に出力電流Ioを検出する電流検出回路を設け、その出力同士を相互に接続し、電流検出回路間に流れる不平衡電流の方向及び大きさに応じた極性の電圧(補正用電圧)を発生させ、比較器の入力電圧にバイアスするというものである。本発明に適用する場合、例えば、各スイッチング電源装置44の内部に同様の電流検出回路を設け、Vmライン50aと制御部34との間に、Vmライン50aに発生している目標電圧Vmに上記の補正用電圧を加算して制御部34に入力する回路を追加する方法が考えられる。また、条件が合えば、出力端電圧検出部24と制御部34との間に、出力端検出電圧Vokに上記の補正用電圧を加算して制御部34に入力する回路を追加する方法を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0099】
10,44 スイッチング電源装置
12 入力端
16 負荷線
18 負荷
20 電力変換部
22 出力端
24 出力端電圧検出部
26 負荷端電圧検出部
28 指定電圧情報作成部
30,30(1),30(2),30(3) 目標電圧情報作成部
32,48 目標電圧生成部
32a パルス幅変調部
32b ローパスフィルタ
34 制御部
36 負荷端
38 センシング線
44(M) マスタ電源
44(S) スレーブ電源
46,46(1),46(2) 仮目標電圧情報作成部
50 Vmライン外部接続端子
50a Vmライン
52 仮目標電圧生成部
52a パルス幅変調部
52b ローパスフィルタ
54 プルアップ回路
56 Vm制御部
58 電源システム
GS 外部指令
h 正の定数
Io 出力電流
J(Vsi) 指定電圧情報
J(Vm) 目標電圧情報
J(Vmx) 仮目標電圧情報
k 正の定数
Vi 入力電圧
Vf 負荷端電圧
Vfk 負荷端検出電圧
Vfs 負荷端電圧の指定値
Vg 駆動パルス
Vm 目標電圧
Vmx 仮目標電圧
Vo 出力端電圧
Vok 出力端検出電圧
Vsi 指定電圧