IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図1
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図2
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図3
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図4
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図5
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081005
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194402
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 雅
(72)【発明者】
【氏名】三宅 壯一朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CC14
3D333CC30
3D333CD06
3D333CE12
3D333CE31
(57)【要約】
【課題】トルクセンサに保持されるコネクタや当該コネクタを保持するトルクセンサのケースに作用する負荷を小さくする。
【解決手段】電動パワーステアリング装置100は、操舵トルクが入力される入力シャフト13と、トーションバー14を介して入力シャフト13と連結される出力シャフト15と、操舵トルクを検出するトルクセンサ40と、トルクセンサ40のケース41に保持されトルクセンサ40と電気的に接続されるコネクタ49と、ハウジング5の外壁を貫通するように形成された貫通孔61aと、貫通孔61aに挿通され、外部の機器とコネクタ49とを電気的に接続するケーブル36と、を備え、ケーブル36は、貫通孔61aからハウジング5の内面に沿うように直線的に延びる緩和部36aを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パワーステアリング装置であって、
操舵トルクが入力される入力シャフトと、
トーションバーを介して前記入力シャフトと連結される出力シャフトと、
前記入力シャフトと前記出力シャフトに亘って取付けられ、前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記入力シャフト、前記出力シャフト、及び前記トルクセンサを収容するハウジングと、
前記トルクセンサの検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータと、
前記トルクセンサのケースに保持され、前記トルクセンサと電気的に接続されるコネクタと、
前記ハウジングの外壁を貫通するように形成された貫通孔と、
前記貫通孔に挿通され、外部の機器と前記コネクタとを電気的に接続するケーブルと、を備え、
前記ケーブルは、前記貫通孔から前記ハウジングの内面に沿うように直線的に延びる緩和部を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記コネクタは、前記入力シャフトを挟んで前記貫通孔と反対側の領域に設けられ、
前記コネクタと前記ケーブルとの接続方向と、前記貫通孔の軸線と、がなす角度は、略90°であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記コネクタと前記貫通孔は、前記入力シャフトの回転軸と直交する同一平面上に位置していることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ケーブルを前記ハウジングに固定する固定部材をさらに備え、
前記ケーブルは、前記コネクタと前記緩和部とを接続する屈曲部をさらに有し、
前記固定部材は、前記屈曲部を前記ハウジングに固定することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力シャフトと、出力シャフトと、トルクセンサと、ハウジングと、トルクセンサと電動モータの駆動を制御するコントローラとを電気的に接続するケーブルと、トルクセンサのケースに保持されケーブルが接続されるコネクタと、を備えた電動パワーステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-61209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電動パワーステアリング装置では、コントローラに電気的に接続されるケーブルは、ハウジング内においてハウジングの内壁面に沿うように折り曲げられ、さらに、コネクタの近傍において折り返すように折り曲げられている。
【0005】
このようにケーブルが折り曲げられてコネクタに接続されると、ケーブルの復元力によりコネクタやコネクタを保持するトルクセンサのケースに負荷がかかってしまい、悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電動パワーステアリング装置において、コネクタや当該コネクタを保持するトルクセンサのケースに作用する負荷を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクが入力される入力シャフトと、トーションバーを介して前記入力シャフトと連結される出力シャフトと、入力シャフトと出力シャフトに亘って取付けられ、操舵トルクを検出するトルクセンサと、入力シャフト、出力シャフト、及びトルクセンサを収容するハウジングと、トルクセンサの検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータと、トルクセンサのケースに保持され、トルクセンサと電気的に接続されるコネクタと、ハウジングの外壁を貫通するように形成された貫通孔と、貫通孔に挿通され、外部の機器と前記コネクタとを電気的に接続するケーブルと、を備え、ケーブルは、貫通孔からハウジングの内面に沿うように直線的に延びる緩和部を有することを特徴とする。
【0008】
この発明では、ケーブルは、貫通孔からハウジングの内面に沿うように直線的に延びる緩和部を有している。これにより、入力シャフトを回避するためにケーブルを折り曲げる必要がない分、ケーブルの折り曲げ量を小さくできる。また、緩和部によってケーブルの復元力による負荷を緩和することができる。よって、コネクタやコネクタを保持するトルクセンサのケースに作用するケーブルの復元力による負荷を小さくすることができる。
【0009】
また、本発明では、コネクタは、入力シャフトを挟んで貫通孔と反対側の領域に設けられ、コネクタとケーブルとの接続方向と、貫通孔の軸線と、がなす角度は、略90°であることを特徴とする。
【0010】
この発明では、コネクタが、入力シャフトを挟んで貫通孔と反対側の領域に設けられているので、ハウジング内におけるケーブルの長さを長くできる。これにより、ケーブルが折り曲げられても、ケーブルが長い分、ケーブルに遊びができるため、ケーブルの復元力による負荷を緩和することができる。さらに、この発明では、コネクタとケーブルとの接続方向と、貫通孔の軸線と、がなす角度は略90°であるため、ケーブルの折り曲げ量を最小限にすることができるとともに、ケーブルの復元力による負荷を緩和する緩和部の長さを最大限長くすることができる。
【0011】
また、本発明では、コネクタと貫通孔は、入力シャフトの回転軸と直交する同一平面上に位置していることを特徴とする。
【0012】
この発明では、コネクタと貫通孔とを同一平面上に設けることで、入力シャフトの回転軸方向へのケーブルの折り曲げ部分をなくすことができる。
【0013】
また、本発明は、ケーブルをハウジングに固定する固定部材をさらに備え、ケーブルは、コネクタと緩和部とを接続する屈曲部をさらに有し、固定部材は、屈曲部をハウジングに固定することを特徴とする。
【0014】
この発明では、ケーブルの屈曲部をハウジングに固定しているので、コネクタやコネクタを保持するトルクセンサのケースに作用する負荷を小さくできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コネクタやコネクタを保持するトルクセンサのケースに作用するケーブルの復元力による負荷を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構近傍の外観図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構近傍の断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構近傍の平面図であり、第1ハウジングの図示を省略している。
図5図5は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構のトルクセンサ近傍を拡大した部分断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0018】
電動パワーステアリング装置100は、車両に搭載され、ドライバによるステアリングホイール1の操舵を補助する装置である。
【0019】
本実施形態では、図1に示すように、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとがラックシャフト12に入力されるシングルピニオン式の電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0020】
まず、図1を参照して、電動パワーステアリング装置100の全体構成について説明する。
【0021】
電動パワーステアリング装置100は、ドライバの操舵によるステアリングホイール1の回転に応じて車輪2を転舵させる転舵機構10と、ドライバの操舵を補助するアシスト機構20と、ドライバによってステアリングホイール1を通じて入力される操舵トルクを検出するトルクセンサ40と、トルクセンサ40の検出結果に基づいて電動モータ21の駆動を制御するコントローラ30と、を備える。
【0022】
転舵機構10は、ステアリングホイール1の回転に応じて回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転に応じて車輪2を転舵させるラックシャフト12と、を有する。
【0023】
ステアリングシャフト11は、ドライバによるステアリングホイール1の操舵に伴って回転する入力シャフト13と、車輪2を転舵するラックシャフト12に連係する出力シャフト15と、入力シャフト13と出力シャフト15を連結するトーションバー14と、を有する。
【0024】
出力シャフト15の下部には、ラックシャフト12に形成されたラック12aと噛み合うピニオン16が形成される。ステアリングホイール1が操舵されると、ステアリングシャフト11が回転し、その回転がピニオン16及びラック12aによってラックシャフト12の直線運動に変換され、ナックルアーム4を介して車輪2が転舵される。なお、出力シャフト15の下部にピニオン16が形成される構成に代えて、ラックシャフト12に噛み合うピニオンシャフトと出力シャフト15とをインターミディエートシャフトを介して連結する構成であってもよい。
【0025】
アシスト機構20は、操舵補助トルクの動力源である電動モータ21と、電動モータ21の駆動力が伝達される出力軸22と、電動モータ21の回転を減速して出力シャフト15に伝達する減速機構3と、を有する。減速機構3は、電動モータ21の出力軸22に連結されるウォームシャフト3aと、ウォームシャフト3aと噛み合うとともに出力シャフト15に固定されるウォームホイール3bと、を有する。
【0026】
電動モータ21の出力は、減速機構3によって減速された後、出力シャフト15を通じラックシャフト12に操舵補助トルクとして伝達される。
【0027】
トルクセンサ40は、入力シャフト13と出力シャフト15との回転角度差に基づいてトーションバー14に付与される操舵トルクを検出する。
【0028】
トルクセンサ40の基板47(図5参照)とコントローラ30とは、信号線としてのケーブル36を介して電気的に接続される。ケーブル36を通じて、コントローラ30からトルクセンサ40への電源の供給が行われるととともに、トルクセンサ40にて検出された操舵トルク信号がコントローラ30へ出力される。
【0029】
次に、図2~5を参照して、電動パワーステアリング装置100におけるアシスト機構20の構造について詳しく説明する。
【0030】
図2及び図3に示すように、アシスト機構20は、電動モータ21と、ハウジング5と、入力シャフト13と、トーションバー14と、出力シャフト15と、トルクセンサ40と、を備える。入力シャフト13、出力シャフト15、及びトルクセンサ40は、ハウジング5に収容される。
【0031】
図2及び図3に示すように、ハウジング5は、第1ハウジング50と、第2ハウジング60と、を有する。
【0032】
図2及び図3に示すように、第1ハウジング50は、円筒部51と、円筒部51の外周から径方向外側に延び第2ハウジング60の開口を覆うフランジ部52と、第1ハウジング50と第2ハウジング60を締結するためのボルト18が挿入される取付部53と、を有する。
【0033】
図3に示すように、円筒部51の内部には、入力シャフト13の外周面に摺接するシール部材91と、入力シャフト13を回転自在に支持する軸受92と、が設けられる。シール部材91は、第1ハウジング50内への異物の侵入を防止する。
【0034】
図2及び図3などに示すように、取付部53は、フランジ部52の外周面から径方向外側に突出して形成される。本実施形態では、取付部53は、周方向に間隔を開けて3カ所設けられる。
【0035】
図2から図4に示すように、第2ハウジング60は、第1円筒部61と、第1円筒部61と比較して小さい内径を有する第2円筒部62と、第1ハウジング50と第2ハウジング60を締結するためのボルト18が挿入される取付部63と、ケーブル36を保持するケーブルホルダ31が取り付けられるホルダ取付部66(図4参照)と、第1円筒部61の内部に設けられたプレート69と、を有する。
【0036】
図2に示すように、第1円筒部61の外壁面には、電動モータ21が取り付けられる。図3に示すように、第1円筒部61の内部には、トルクセンサ40と、ウォームホイール3bと、が収容される。電動モータ21の出力軸22に連結されたウォームシャフト3aは、第1円筒部61を貫通するように配置され、第1円筒部61内に収容されたウォームホイール3bと噛合する。図3に示すように、第1円筒部61の内部は、円板状のプレート69によって、トルクセンサ40が設けられる空間とウォームホイール3bが設けられる空間とに区画される。
【0037】
図4に示すように、第1円筒部61は、第1円筒部61を貫通するように形成された貫通孔61aを有する。貫通孔61aには、ケーブル36が挿通される。
【0038】
図3に示すように、第2円筒部62の内部には、出力シャフト15を回転自在に支持する軸受93と、出力シャフト15の外周面に摺接するシール部材94と、が設けられる。シール部材94は、第2ハウジング60内への異物の侵入を防止する。
【0039】
図2及び図3に示すように、第1ハウジング50と第2ハウジング60は、ボルト18によって締結される。第1ハウジング50と第2ハウジング60の間には、これらの間をシールする環状のOリング96が設けられる。
【0040】
図3に示すように、入力シャフト13の軸心には、下端面に開口する中空部が形成され、その中空部内にトーションバー14が収容される。トーションバー14の上部側は、ピン17によって入力シャフト13に連結される。トーションバー14の下端部は、入力シャフト13の中空部の下端開口部より突出し、セレーション14aを介して出力シャフト15に連結される。トーションバー14は、ステアリングホイール1を介して入力シャフト13に入力される操舵トルクを出力シャフト15に伝達し、その操舵トルクに応じて軸中心にねじれ変形する。このように、入力シャフト13と出力シャフト15はトーションバー14の捩れ量に応じて相対回転し、トルクセンサ40は、その相対回転による入力シャフト13と出力シャフト15の回転角度差に基づいて操舵トルクを検出する。
【0041】
次に、図3から図5を参照して、トルクセンサ40の具体的な構造について説明する。なお、図5は、図3における円で囲まれた領域Rの拡大図である。
【0042】
図3及び図5に示すように、トルクセンサ40は、ケース41と、入力シャフト13と一体に回転するロータ部としての第1センサロータ45と、出力シャフト15と一体に回転する第2センサロータ46と、操舵トルクを検出してその信号をコントローラ30へ出力する基板47と、ケーブル36(図3及び図4参照)が接続されるコネクタ49と、を有する。
【0043】
図4などに示すように、ケース41は、入力シャフト13が挿通する略環状形状であり、入力シャフト13に対して相対回転自在に設けられる。
【0044】
ケース41は、樹脂材料によって形成される。図4及び図5に示すように、ケース41は、円筒状の第1円筒部41aと、第1円筒部41aより大径で円筒状の第2円筒部41bと、第1円筒部41aの内周面から径方向内側に突出する環状の突部41cと、第1円筒部41aの外周面から径方向外側に膨出するように形成された膨出部41dと、膨出部41dの外面から径方向にさらに突出するように形成された係合部48と、を有する。本実施形態では、突部41cは、径方向内側に向かって先細りになるように形成される。
【0045】
図4に示すように、係合部48は、プレート69に形成された係止部68に係合する。係止部68は、プレート69の端面から軸方向に延びるように、入力シャフト13の回転方向に間隔をあけて一対設けられる。回転方向における係合部48の一方の端面と係止部68との間には、板ばね80が設けられる。係合部48が板ばね80に弾性力よって一方の係止部68に押し付けられることで、ハウジング5に対するトルクセンサ40(ケース41)の相対回転が規制される。
【0046】
図5に示すように、第1センサロータ45は、入力シャフト13の外周面に圧入された第1ロータ部材45aと、第1ロータ部材45aの下端面に基板47と対向するように取り付けられ、径方向に放射状に延びて形成される複数のプレート部45bと、を有する。第1ロータ部材45aは、樹脂材料によって形成される。また、複数のプレート部45bは、回転方向に所定間隔を空けて配置される。第1ロータ部材45aと複数のプレート部45bは、インサート成形により一体化され、第1センサロータ45を形成する。
【0047】
図5に示すように、第1ロータ部材45aの外周面には、ケース41の突部41cが係合する環状の係合溝45cが設けられる。係合溝45cは、その側面が、突部41cの側面と面接触する形状、具体的には、係合溝45cの側面は、底面に向かうにつれて幅が狭くなるように形成される。
【0048】
本実施形態のトルクセンサ40では、係合溝45cに突部41cが係合することによって、ケース41が、第1ロータ部材45aを介して、入力シャフト13に相対回転可能に、いわゆるフローティング状態で支持される。これにより、入力シャフト13の回転に伴って、第1センサロータ45のプレート部45bは、基板47に対して相対回転する。また、上述のような形状に形成された突部41cと係合溝45cとが係合することによって、ケース41の入力シャフト13の軸方向及び径方向への移動が規制される。
【0049】
図5に示すように、第2センサロータ46は、出力シャフト15の外周面に圧入された圧入部46aと、圧入部46aの外周面から径方向に放射状に延びて形成され、回転方向に所定間隔を空けて基板47と対向するように配置された複数のプレート部46bと、を有する。
【0050】
基板47は、ケース41内に固定され、第1センサロータ45のプレート部45bと第2センサロータ46のプレート部46bとの間に配置される。基板47には、検出コイルパターンがパターニングによって形成される。検出コイルパターンは、入力シャフト13と出力シャフト15の回転角度差、つまり第1センサロータ45と第2センサロータ46の回転角度差に伴う磁界の変化を検出することによって、操舵トルクを検出する。このように、トルクセンサ40は、検出コイルパターンで検出したインダクタンス変化に基づいて操舵トルクを検出するインダクタンス式センサである。
【0051】
図3及び図4などに示すように、コネクタ49は、ケース41の上面に配置され、ケース41に保持される。コネクタ49は、取付口49aを有するメス形状のコネクタである。取付口49aには、ケーブル36の先端に設けられたオス形状のコネクタ37(図4参照)が挿入される。
【0052】
ケーブル36は、一端がコネクタ37(トルクセンサ40)に接続される。ケーブル36は、第1円筒部61に形成された貫通孔61a、ホルダ取付部66及びケーブルホルダ31を通ってハウジング5外に引き出される。ケーブル36の他端は、コントローラ30に接続される。なお、トルクセンサ40とコントローラ30との間を必ずしも1本のケーブル36で接続する必要はない。例えば、ケーブルホルダ31あるいは貫通孔61aに中継コネクタを設け、ハウジング5内のケーブル36とハウジング5外のケーブル36とを中継コネクタによって接続してもよい。
【0053】
ところで、ケーブル36をハウジング5の外部から内部に導く際に、ハウジング5にハウジング5の中心(入力シャフト13の回転軸)に向かって径方向に延びる貫通孔を設け、この貫通孔にケーブル36を挿通することが考えられる(図4のPで示す領域)。しかしながら、このような構成では、ケーブル36が貫通孔に挿通されると、ケーブル36は、入力シャフト13やケース41に対向するようにハウジング5内に導かれてしまうため、ハウジング5内において、入力シャフト13やケース41を迂回するために折り曲げられる(図4の点線参照)。このようにケーブル36が折り曲げられてコネクタ49に接続されると、ケーブル36の復元力によりコネクタ49やコネクタ49を保持するトルクセンサ40のケース41に負荷がかかってしまい、悪影響を及ぼすおそれがある。具体的には、コネクタ49に負荷がかかると、コネクタ49を保持するケース41が第1ロータ部材45aに押し付けられながら回転するおそれがある。そして、ケース41が第1ロータ部材45aに押し付けられた状態で第1ロータ部材45aが回転すると、第1ロータ部材45aの係合溝45cとケース41の突部41cとの接触部分が摩耗してしまう。この結果、ケース41に保持される基板47にガタつきが生じ、トルクセンサ40の検出精度が悪くなるおそれがある。
【0054】
そこで、図4に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング装置100では、貫通孔61aは、軸心がハウジング5の中心(入力シャフト13の回転軸)に向かう位置Pから平行にオフセットした位置に設けられる。別の言い方をすると、貫通孔61aは、入力シャフト13の回転軸と直交する平面上において、ハウジング5の中心(入力シャフト13の回転軸)に向かう方向に対して軸心が傾くように、つまり、貫通孔61aの開口がトルクセンサ40のケース41や入力シャフト13に対向しないように設けられる。
【0055】
このように貫通孔61aを設けることにより、トルクセンサ40のケース41や入力シャフト13を迂回するために、貫通孔61aに挿通されたケーブル36を折り曲げる必要がない。言い換えると、貫通孔61aに挿通されたケーブル36をハウジング5の内面に沿うように直線的に導くことができる(以下では、ケーブル36におけるハウジング5の内面に沿うように直線的に延びる部分を「緩和部36a」という)。
【0056】
ケーブル36は、コネクタ49と緩和部36aとを接続する部分が屈曲しており(以下では、ケーブル36におけるコネクタ49と緩和部36aとを接続する部分で、屈曲した形状となっている部分を「屈曲部36b」という)。屈曲部36bでは、ケーブル36が直線状態に戻ろうとする復元力が作用する。一方、緩和部36aでは、復元力は生じず、逆に、緩和部36aは、ケーブル36の他の個所(屈曲部36bなど)で生じたケーブル36の復元力による負荷を吸収できる。したがって、ケーブル36に緩和部36aを設けることで、コネクタ49やコネクタ49を保持するトルクセンサ40のケース41に作用するケーブル36の復元力による負荷を小さくすることができる。
【0057】
また、本実施形態の電動パワーステアリング装置100では、図4に示すように、コネクタ49は、入力シャフト13を挟んで貫通孔61aと反対側の領域、具体的には、入力シャフト13の回転軸を含め面のうち緩和部36a(貫通孔61aの軸線D2)と直交する面Fを挟んで貫通孔61aと反対側の領域に設けられている。このように、コネクタ49を入力シャフト13を挟んで貫通孔61aと反対側の領域に設けることにより、ハウジング5内におけるケーブル36の長さを長くできる。これにより、ケーブル36が折り曲げられても、ケーブル36が長い分、ケーブル36に遊びができるため、ケーブル36の復元力による負荷を緩和することができる。
【0058】
なお、コネクタ49とケーブル36との接続方向D1と、貫通孔61aの軸線D2と、がなす角度θは、略90°であることが望ましい。例えば、コネクタ49とケーブル36との接続方向D1と、貫通孔61aの軸線D2と、がなす角度θを90度以下にした場合(図6参照。図6では、角度θは略0°)には、経年劣化などによりケーブル36の弾性が失われると、ケーブル36がコネクタ49と貫通孔61aとの間の部分が最短距離でこれらを接続しようと直線的に変形するおそれがある(図6の太い点線参照)。このように、ケーブル36が直線的に変形してしまうと、トルクセンサ40のケース41や入力シャフト13に接触し、悪影響を与えるおそれがある。反対に、角度θを90°以上にすると、ケーブル36の長さが短くなるため、その分遊びが小さくなる。そこで、当該角度θを略90°とすることにより、ケーブル36が直線的に変形しても、ケーブル36がトルクセンサ40のケース41や入力シャフト13に接触することを抑制できるとともに、ケーブル36の遊びを最大限確保できる。
【0059】
また、コネクタ49と貫通孔61aは、入力シャフト13の回転軸と直交する同一平面上に位置していることが望ましい。このように、コネクタ49と貫通孔61aとを同一平面上に設けることで、入力シャフト13の回転軸方向へのケーブル36の折り曲げ部分をなくすことができる。
【0060】
なお、コネクタ49と貫通孔61aとの間の中間部分において、ケーブル36を固定部材(図示せず)によってハウジング5(プレート69)に固定してもよい。このようにケーブル36をハウジング5(プレート69)に固定することにより、コネクタ49やコネクタ49を保持するトルクセンサ40のケース41に作用する負荷を小さくできる。特に、固定部材によって屈曲部36bをハウジング5に固定することが好ましい。屈曲部36bを固定することで、屈曲部36bが直線状態に戻ろうとする復元力を固定部材で抑えることができるので、コネクタ49やコネクタ49を保持するトルクセンサ40のケース41に作用する負荷をより小さくできる。
【0061】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0062】
電動パワーステアリング装置100は、操舵トルクが入力される入力シャフト13と、トーションバー14を介して入力シャフト13と連結される出力シャフト15と、入力シャフト13と出力シャフト15に亘って取付けられ、操舵トルクを検出するトルクセンサ40と、入力シャフト13、出力シャフト15、及びトルクセンサ40を収容するハウジング5と、トルクセンサ40の検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータ21と、トルクセンサ40のケース41に保持され、トルクセンサ40と電気的に接続されるコネクタ49と、ハウジング5の外壁を貫通するように形成された貫通孔61aと、貫通孔61aに挿通され、外部の機器とコネクタ49とを電気的に接続するケーブル36と、を備え、ケーブル36は、貫通孔61aからハウジング5の内面に沿うように直線的に延びる緩和部36aを有する。
【0063】
この構成では、ケーブル36が、貫通孔61aからハウジング5の内面に沿うように直線的に延びる緩和部36aを有している。これにより、入力シャフト13を回避するためにケーブル36を折り曲げる必要がない分、ケーブル36の折り曲げ量を小さくできる。よって、コネクタ49やコネクタ49を保持するトルクセンサ40のケース41に作用するケーブル36の復元力による負荷を小さくすることができる。
【0064】
また、電動パワーステアリング装置100では、コネクタ49は、入力シャフト13を挟んで貫通孔61aと反対側の領域に設けられ、コネクタ49とケーブル36との接続方向D1と、貫通孔61aの軸線D2と、がなす角度θは、略90°である。
【0065】
この構成では、コネクタ49が、入力シャフト13を挟んで貫通孔61aと反対側の領域に設けられているので、ハウジング5内におけるケーブル36の長さを長くできる。これにより、ケーブル36が折り曲げられても、ケーブル36が長い分、ケーブル36に遊びができるため、ケーブル36の復元力による負荷を緩和することができる。さらに、コネクタ49とケーブル36との接続方向D1と、貫通孔61aの軸線D2と、がなす角度θは略90°であるため、ケーブル36の折り曲げ量を最小限にすることができるとともに、緩和部36aの長さを最大限長くすることができる。例えば、コネクタ49とケーブル36との接続方向D1と、貫通孔61aの軸線D2と、がなす角度θを90度以上にした場合(図6参照)には、経年劣化などによりケーブル36の弾性が失われると、ケーブル36がコネクタ49と貫通孔61aとの間の部分が最短距離でこれらを接続しようと直線的に変形するおそれがある(図6の太い点線参照)。このように、ケーブル36が直線的に変形してしまうと、トルクセンサ40のケース41や入力シャフト13に接触し、悪影響を与えるおそれがある。そこで、当該角度θを略90°とすることにより、ケーブル36が直線的に変形しても、ケーブル36がトルクセンサ40のケース41や入力シャフト13に接触することを抑制できる。また、緩和部36aの長さを最大限長くすることにより、ケーブル36の復元力による負荷を緩和する領域を大きくすることができる。
【0066】
電動パワーステアリング装置100では、コネクタ49と貫通孔61aは、入力シャフト13の回転軸と直交する同一平面上に位置している。
【0067】
この構成では、コネクタ49と貫通孔61aとを同一平面上に設けることで、入力シャフト13の回転軸方向へのケーブル36の折り曲げ部分をなくすことができる。
【0068】
電動パワーステアリング装置100は、ケーブル36をハウジング5に固定する固定部材をさらに備え、ケーブル36は、コネクタ49と緩和部36aとを接続する屈曲部36bをさらに有し、固定部材は、屈曲部36bをハウジング5に固定する。
【0069】
この構成では、ケーブル36の屈曲部36bをハウジング5に固定しているので、コネクタ49やコネクタ49を保持するトルクセンサ40のケース41に作用する負荷を小さくできる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0071】
トルクセンサ40は、ステアリングシャフト11の絶対回転角度を検出するアングルセンサの機能も有する構成であってもよい。
【0072】
上記実施形態では、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとが共通のステアリングシャフト11を介してラックシャフト12に入力されるシングルピニオン式の電動パワーステアリング装置100を例に説明した。しかしながら、電動パワーステアリング装置100は、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとがそれぞれ独立してラックシャフト12に入力されるデュアルピニオン式の電動パワーステアリング装置であってもよい。また、電動パワーステアリング装置100は、ラックアンドピニオン方式に限らず、コラムアシスト式であってもよい。
【0073】
上記実施形態では、トルクセンサ40がインダクタンス式センサである場合について説明した。しかし、トルクセンサ40は磁気式センサであってもよく、トルク検出方法は限定されない。
【符号の説明】
【0074】
1・・・ステアリングホイール、3・・・減速機構、3a・・・ウォームシャフト、3b・・・ウォームホイール、5・・・ハウジング、10・・・転舵機構、13・・・入力シャフト、14・・・トーションバー、15・・・出力シャフト、16・・・ピニオン、20・・・アシスト機構、21・・・電動モータ、22・・・出力軸、30・・・コントローラ、36・・・ケーブル、36a・・・緩和部、37・・・コネクタ、40・・・トルクセンサ、41・・・ケース、45・・・第1センサロータ、46・・・第2センサロータ、47・・・基板、48・・・係合部、49・・・コネクタ、50・・・第1ハウジング、60・・・第2ハウジング、61a・・・貫通孔、69・・・プレート(ハウジング)、100・・・電動パワーステアリング装置、D1・・・接続方向、D2・・・軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6