(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081024
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】リニアガイド装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
F16C29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194437
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 吉章
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA02
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA62
3J104BA63
3J104CA13
3J104DA04
3J104DA14
3J104EA01
(57)【要約】
【課題】レールの軸方向に沿って複数のレールを連接したリニアガイド装置であって、シールリップを備える場合であってもシールリップの破損のおそれが少なく、レールカバーの浮き上がりに対して十分な固定力を有するリニアガイド装置を提供する。
【解決手段】リニアガイド装置1は、両側面に軌道面を形成した凹部を有する複数のレール10A,10Bが軸方向Lに沿って連接されているレール部10と、レール部10の上面に配置されるレールカバー30と、レール部10を直線的に移動するスライダ20と、を備える。レールカバー30は、複数のレール10A,10Bの上面と側面の一部とをレール間の継ぎ部11を含んで覆う1枚のカバーである。レールカバー30は、幅方向の両端において、複数のレール10A,10Bの側面に締め代を有した状態で係合する係合部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側面に軌道面を形成した凹部を有する複数のレールが軸方向に沿って連接されているレール部と、
前記レール部の上面に配置されるレールカバーと、
前記レール部を直線的に移動するスライダと、
を備えたリニアガイド装置であって、
前記レールカバーは、前記複数のレールの上面と側面の一部とをレール間の継ぎ部を含んで覆う1枚のカバーであり、
前記レールカバーは、幅方向の両端において、前記複数のレールの側面に締め代を有した状態で係合する係合部を有する、
リニアガイド装置。
【請求項2】
前記スライダの移動方向両端に配置され、シールリップを有するサイドシールを備え、
前記シールリップの先端部は、弾性部材によって構成され、前記レールカバーの上面及び側面、並びに前記レール部の側面と締め代を有した状態で当接する、
請求項1に記載のリニアガイド装置。
【請求項3】
隣り合う2つのレールの片方又は両方の端面が、前記隣り合う2つのレールの幅又は高さの相互差のうち大きい方に基づいて決定される面取り量で面取りされている、
請求項1又は請求項2に記載のリニアガイド装置。
【請求項4】
レールの幅又は高さに相互差がある隣り合う2つのレール間に隙間を設け、
前記隙間の長さは、前記幅又は高さの相互差のうち大きい方の2倍以上である、
請求項1又は請求項2に記載のリニアガイド装置。
【請求項5】
前記レールカバーは、最小曲げ半径が500~750mmである、
請求項1又は請求項2に記載のリニアガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアガイド装置として、レールの上面を覆うレールカバーを備えたものが知られている。例えば、特許文献1には、レールの上面の複数の通し孔への異物の侵入防止や、レール上面に設けられた磁気スケールの保護のために、1つのレールの軸方向の一端部から逆側端部までをレールカバーで覆うことが記載されている。
【0003】
特許文献2には、レールカバーに係合部を有する側縁部を設けるとともに、レールの上部側面の下部に、上部側面から下方に向かってレールの幅方向に縮小する斜面である係合面を設け、係合面にレールカバーの係合部を係合させることにより、レールにレールカバーを装着させることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、2本のレールを軸方向に沿って連結させ、2本のレールの上面を、各端部に設けられた連結部で互いに連結させた複数枚のレールカバーで覆うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-052362号公報
【特許文献2】特開2005-114031号公報
【特許文献3】特開2007-205490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなリニアガイド装置において、長尺のレールが必要とされる場合、複数本のレールをレールの軸方向に沿って連接することにより、レールの長さを延長することができる。しかしながら、特許文献1及び2のように、1つのレールに1つのレールカバーを装着させる構成の場合、それらを連接したときに、各レール間の継ぎ部においてシールリップの損傷が発生することがあった。具体的には、スライダの移動方向両端に配置されたサイドシールのシールリップが上記継ぎ部を通過する際、各レールカバーや各レール間の幅誤差、横ずれ、高さずれ等によって、シールリップに対してレールカバーのエッジが強く当たってしまい、リップシールが損傷する場合があった。
【0007】
特許文献3のリニアガイド装置では、レールカバーが連結されているが、レールカバーはレールの上面しか覆っていない。よって、レールの上面ではレールカバー間の隙間等は生じ難いが、レールの側面では、幅誤差等によって、シールリップに対してレール側面のエッジが強く当たってしまい、シールリップが損傷するおそれがあった。また、特許文献3では、隣接するレールカバーを連結部を介して連結させ、片方の連結部に生じる浮き上がり力をもう一方の連結部によって抑制することが記載されているが、浮き上がりの抑制という点で検討の余地があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、レールの軸方向に沿って複数のレールを連接したリニアガイド装置であって、シールリップを備える場合であってもシールリップの破損の恐れが少なく、レールカバーの浮き上がりに対して十分な固定力を有する、リニアガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るリニアガイド装置は、
両側面に軌道面を形成した凹部を有する複数のレールが軸方向に沿って連接されているレール部と、
前記レール部の上面に配置されるレールカバーと、
前記レール部を直線的に移動するスライダと、を備えたリニアガイド装置であって、
前記レールカバーは、前記複数のレールの上面と側面の一部とをレール間の継ぎ部を含んで覆う1枚のカバーであり、
前記レールカバーは、幅方向の両端において、前記複数のレールの側面に締め代を有した状態で係合する係合部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レールの軸方向に沿って複数のレールを連接したリニアガイド装置であって、シールリップを備える場合であってもシールリップの破損のおそれが少なく、レールカバーの浮き上がりに対して十分な固定力を有する、リニアガイド装置を提供することができる。具体的には、複数のレールの上面と側面の一部とをレール間の継ぎ部を含んで1枚のレールカバーで覆うことにより、レールの上面と側面の一部では継ぎ部に連続面が形成され、エッジが生じなくなる。そのため、リップシールを備える場合であっても、リップシールとエッジの衝突によるリップシールの破損を生じ難くすることができる。また、レールカバーが幅方向の両端において複数のレールの側面に締め代を有した状態で係合する係合部を有していることにより、レールカバーのどの位置においても浮き上がりに対する十分な固定力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るリニアガイド装置の上面図である。
図1(b)は、
図1(a)に示すリニアガイド装置の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)に示すリニアガイド装置の正面図である。
【
図3】
図3(a)は、レールカバーに覆われたレール上面におけるレール間の継ぎ部をシールリップが通過する様子を示す模式図である。
図3(b)は、レールカバーに覆われたレール側面におけるレール間の継ぎ部をシールリップが通過する様子を示す模式図である。
図3(c)は、レールカバーに覆われていないレール側面におけるレール間の継ぎ部をシールリップが通過する様子を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)は、第1レールと第2レールの相互差の一例を示す模式図である。
図4(b)は、レールの面取り範囲の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第1レールと第2レールの組み立て方の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1レールと第2レールの組み立て方の別例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第1レールと第2レールの組み立て方の別例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第1レールと第2レールの組み立て方の別例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るリニアガイド装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、その説明を適宜省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上のものであって、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係るリニアガイド装置の全体の構造について説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、リニアガイド装置1は、レール部10と、スライダ20と、レールカバー30と、を備える。
【0014】
レール部10は、複数のレールが軸方向Lに沿って連接されて構成される。レール部10を構成するレールの本数は2本以上であればよく、要求されるストロークの長さに応じて適宜決定すればよい。本例において、レール部10は、少なくとも第1レール10Aと第2レール10Bとを含んで構成される。各レール10A,10Bには、レール10A,10Bを上下方向に貫通する複数の貫通孔14が設けられている。貫通孔14に挿通した取付けボルトを締結することにより、各レールが基台(図示せず)の上面に固定される。
【0015】
図2に示すように、レール部10を構成する各レール10A,10Bは、レール上面12と、レール側面13と、を有する。レール側面13には、上部側面13aと、上部側面13aから下方に向かってレールの幅方向Wに縮小する斜面である上部軌道面13bと、上部軌道面13bの下方の中部側面13cと、中部側面13cから下方に向かってレールの幅方向Wに拡大する斜面である下部軌道面13dと、が設けられている。上部軌道面13b、中部側面13c及び下部軌道面13dによって、軌道面を有する凹部13eが形成される。
【0016】
スライダ20は、横断面形状が略コの字状の鞍状の部材である。スライダ20は、レール部10を直線的に移動するよう、レール部10に組付けられている。言い換えると、スライダ20は、レール部10上に軸方向Lに沿って相対移動可能に跨架されている。なお、図示はしないが、スライダ20は、スライダ20の内部に備えられた循環路と、スライダ20とレール部10とによって構成される転動路と、循環路と転動路を連結する連結路内とを循環転動する複数の転動体(例えば、ボールやローラ(ころ))を含んでいる。グリースニップル25は、転動体にグリース等の潤滑剤を供給するための部材である。本例では、2つのスライダ20が備えられているが、スライダ20の個数は特に制限されず、例えば、1つであってもよい。また、スライダ20は、従来公知のものを適宜使用できる。
【0017】
レールカバー30は、レール部10の上面に配置される。レールカバー30は、レール部10を構成する複数のレールの上面と側面の一部とをレール間の継ぎ部11を含んで覆う1枚の部材である。レールカバー30の軸方向Lにおける長さは、レール部10全体の軸方向Lにおける長さとほぼ等しい。また、レールカバー30の幅方向Wにおける長さは、レール部10の幅方向Wにおける長さより僅かに長い。
【0018】
レールカバー30の板厚は、特に制限されないが、例えば、0.2mm以上0.3mm以下が好ましい。レールカバー30の材質は、特に制限されないが、例えば、SUS301CPS、SUS304CSP等のステンレス板を用いることが好ましい。また、レールカバー30は、リニアガイド装置1の組み立て前において、例えば、軸方向Lにおける最小曲げ半径が500mm以上750mm以下となることが好ましい。
【0019】
レールカバー30は、幅方向Wの両端において、複数のレールの側面に締め代を有した状態で係合する係合部31を有する。係合部31は、例えば、レールカバー30の幅方向Wにおける端部を下方向に折り曲げてカバー側面を形成し、さらにカバー側面の先端部を上部側面13aに沿うように折り曲げて成形されたものである。
【0020】
レールカバー30の軸方向Lにおける両端部は、固定治具であるカバー押え33によって、レール部10に固定される。カバー押さえ33は、レール部10の側面にネジ等によって固定されており、当該カバー押さえ33とレール部10との間にレールカバー30が挟持される。
【0021】
スライダ20の移動方向(軸方向L)の両端には、スライダ20内への異物の侵入を防ぐためのサイドシール21が備えられている。サイドシール21は、レール部10に摺接するシールリップ22と、シールリップ22を保持する保持板23とを含む。
【0022】
シールリップ22の先端部22a(
図3(a)等参照)は、弾性部材によって構成されることが好ましい。弾性部材としては、特に制限されないが、例えば、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリエステル系、ポリアセタール系、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー等の軟質樹脂を用いることができる。シールリップ22全体が弾性部材によって構成されていてもよい。
【0023】
次に、
図3(a)から(c)を用いて、継ぎ部11をシールリップ22が通過する様子について説明をする。
図3(a)は、レールカバー30に覆われたレール上面12におけるレール間の継ぎ部11をシールリップ22が通過する様子を示す模式図である。具体的には、
図3(a)は、継ぎ部11の近傍における
図2のA-A断面図である。
図3(a)において、シールリップ22の先端部22aは、レール上面12を覆うレールカバー30と締め代を有した状態で当接している。先端部22aは、異物のスクレーパ性を高めるために、
図3(a)図中に矢印で示すスライダ20の進行方向に対して、レール側に向かうよう傾きを有して構成される。凹部22bは、保持板23の凸部(図示せず)と係合する部位である。なお、簡略化のため、
図3(a)から(c)では、保持板23等は図示を省略している。
【0024】
図3(a)では、隣接するレール上面12間に形成される継ぎ部11が、レールカバー30によって覆われており、隣接するレール上面12間で連続面が形成されている。すなわち、隣接するレール上面12間のエッジはレールカバー30に覆われて露出しないため、レール上面12側において、シールリップ22がエッジに当たって破損することがなくなる。シールリップ22は、継ぎ部11の上方を通過する際も当接しているレールカバー30から力を受け続け、レールカバー30に対して締め代を有した状態を維持する。
【0025】
図3(b)は、レールカバー30に覆われたレール側面13の上部側面13aにおけるレール間の継ぎ部11をシールリップ22が通過する様子を示す模式図である。具体的には、
図3(b)は、継ぎ部11の近傍における
図2のB-B断面図である。
図3(b)においても、シールリップ22の先端部22aは、レール上面12を覆うレールカバー30と締め代を有した状態で当接している。
【0026】
また、
図3(b)でも、隣接するレール側面13の上部側面13a間に形成される継ぎ部11が、レールカバー30によって覆われており、隣接する上部側面13a間で連続面が形成されている。すなわち、隣接する上部側面13a間のエッジはレールカバー30に覆われて露出しないため、上部側面13a側において、シールリップ22がエッジに当たって破損することがなくなる。
図3(b)においても、シールリップ22は、継ぎ部11の側方(
図3(b)の紙面上は上方)を通過する際も当接しているレールカバー30から力を受け続け、レールカバー30に対して締め代を有した状態を維持する。
【0027】
図3(c)は、レールカバー30に覆われたレール側面13の上部軌道面13bにおけるレール間の継ぎ部11をシールリップ22が通過する様子を示す模式図である。具体的には、
図3(c)は、継ぎ部11の近傍における
図2のC-C断面図である。
図3(c)において、継ぎ部11を通過する前のシールリップ22は、上部軌道面13bと締め代を有した状態で当接している。この状態で図中の矢印方向に移動すると、継ぎ部11の側方(
図3(c)の紙面上は上方)を通過する際に当接が解除される。ここで、上部軌道面13bの側方を通過するシールリップ22には、上部軌道面13bの側方を通過する弾性変形を維持したままのシールリップ22から変形力が伝達される。そのため、継ぎ部11の側方を通過する際にシールリップ22と上部軌道面13bとの当接が解除されても、弾性変形が完全には解放されない。よって、隣接する上部軌道面13b間の間でエッジが生じたとしても、シールリップ22の先端部22aは弾性変形した状態をある程度維持するため、エッジに当たって破損するおそれは少ない。
【0028】
シールリップ22の破損のおそれを更に低減させるという観点から、隣接する上部軌道面13b間において、面取りをしてもよい。ただ、上述の理由により、面取り量は従来よりも極めて少なくてよい。また、同様の観点から、隣接する中部側面13cや隣接する下部軌道面13d間において、面取りをしてもよい。この場合、上部軌道面13b間よりは面取り量を多くすることが好ましいが、これらの側方を通過するシールリップ22においても上部軌道面13bの側方を通過する弾性変形を維持したままのシールリップ22から変形力が伝達されるため、従来よりも面取り量を少なくすることができる。
【0029】
なお、本実施形態に示すようなレールカバー30を有さない場合、継ぎ部11で弾性変形が完全に解放され、先端部22aがエッジに引っ掛かりやすくなってしまう。先端部22aがエッジに引っ掛かった状態でさらに矢印方向側に進むと、先端部22aがめくれてしまうことがあり、シールリップ22の破損につながる可能性がある。
【0030】
次に、
図4から
図8を用いて、隣接する2つのレール間の相互差による作用を低減させる方法について説明をする。隣接する2つのレール間の相互差が大きく、急激な段差が形成されるような場合、その上を覆うレールカバー30に永久変形が生じるおそれがある。以下の説明は、このような相互差による作用の低減に関する。なお、各レールの幅又は高さの相互差は製品種類によって異なるが、本実施形態において用いるものは、例えば、幅又は高さの相互差が最大で0.1mm以下のものが好ましい。
【0031】
相互差による作用を低減させる方法の一つとして、相互差のある2つのレールの間に逃げ部を設けることが挙げられる。逃げ部としては、例えば、レール間に設けた隙間であってもよいし、レール端面を面取り(例えば、C面取り)した逃げ形状であってもよい。逃げ部の長さ(長手方向)は、各レールの幅又は高さの相互差の2倍以上であることが好ましい。また、逃げ部の長さ(長手方向)は、転動体(ころ、ボール等)の直径の半分以下であることが好ましい。
【0032】
C面取りする場合の一例として、相互差のある2つのレールの片方又は両方の端面を、隣り合う2つのレールの幅又は高さの相互差のうち大きい方に基づいて決定される面取り量で面取りすることが挙げられる。好ましくは、上記片方又は両方の端面において、幅又は高さの相互差のうち大きい方と同量、より好ましくは該大きい方の2倍以上の面取りをすることが好ましい。また、上記片方のみを面取りする場合は、サイズが大きい方のレールの端面であることが好ましい。
【0033】
図4(a)は、第1レール10Aと第2レール10Bの相互差の一例を示す模式図である。この例では、第1レール10Aよりも第2レール10Bの方が大きい。また、高さよりも幅における相互差の方が大きく、幅方向の相互差D1は0.05mm(片側)であり、両側を合わせた相互差は0.1mmである。この場合、隣接する2つのレールの片側(例えば、第2レール10B側)又は両側の端面において、C0.1でC面取りすることが好ましい。また、面取りする箇所は、
図4(b)に示す範囲Eであることが好ましい。範囲Eは、レール10A及び10Bの端面の縁がレールカバー30によって覆われる部分である。具体的には、範囲Eは、レール10A及び10Bの端面と、レール上面12及び上部側面13aとの境界を含む範囲である。
【0034】
なお、
図4(b)では、第2レール10Bを紙面手前側に配置し、第1レール10Aを紙面奥側に配置している。また、第1レール10Aと係合する係合部31aの先端の方が、第2レール10Bと係合する係合部31bの先端よりも下方まで覆っている。
【0035】
図5は、第1レール10A及び第2レール10B間の継ぎ部11を含む側面図である。相互差による作用を低減させる他の方法として、
図5の例のように、レールの幅又は高さに相互差がある隣り合う2つのレール間の継ぎ部11に逃げ部として隙間を設けることが挙げられる。隙間の長さD2は、幅又は高さの相互差のうち大きい方の2倍以上であることが好ましい。このように隙間の長さD2を比較的大きく設定することで、レール間の継ぎ部11におけるレールカバー30の屈曲を防止できる。
【0036】
図6から
図8は、第1レールと第2レールの組み立て方の別例を示す模式図である。具体的には、
図6から
図8は、第1レール10A及び第2レール10B間の継ぎ部11に逃げ部としてC面取り形状を設けた例である。
【0037】
図6の例では、小さい方のレールである第1レール10Aの端面にC面取り形状10ACを設けている。C面取り形状10ACの長さD3は、幅又は高さの相互差のうち大きい方の2倍以上であることが好ましい。第2レール10Bには面取りをしていない。また、第1レール10Aと第2レール10Bとの間に隙間は設けていない。
【0038】
図7の例では、大きい方のレールである第2レール10Bの端面にC面取り形状10BCを設けている。C面取り形状10BCの長さD4は、幅又は高さの相互差のうち大きい方の2倍以上であることが好ましい。第1レール10Aには面取りをしていない。また、第1レール10Aと第2レール10Bとの間に隙間は設けていない。
【0039】
図8の例では、第1レール10Aの端面にC面取り形状10ACを設け、第2レール10Bの端面にC面取り形状10BCを設けている。C面取り形状10AC及び10BCを併せた長さD5は、幅又は高さの相互差のうち大きい方の2倍以上であることが好ましい。C面取り形状10AC及び10BCの長さは、それぞれ、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、第1レール10Aと第2レール10Bとの間に隙間は設けていない。
【0040】
以上、本発明に係る一実施形態について詳述したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。本発明には、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0041】
[付記]
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 両側面に軌道面を形成した凹部を有する複数のレールが軸方向に沿って連接されているレール部と、
前記レール部の上面に配置されるレールカバーと、
前記レール部を直線的に移動するスライダと、を備えたリニアガイド装置であって、
前記レールカバーは、前記複数のレールの上面と側面の一部とをレール間の継ぎ部を含んで覆う1枚のカバーであり、
前記レールカバーは、幅方向の両端において、前記複数のレールの側面に締め代を有した状態で係合する係合部を有する、
リニアガイド装置。
このリニアガイド装置によれば、レールの軸方向に沿って複数のレールを連接したリニアガイド装置であって、シールリップを備える場合であってもシールリップの破損のおそれが少なく、レールカバーの浮き上がりに対して十分な固定力を有する、リニアガイド装置を提供することができる。具体的には、複数のレールの上面と側面の一部とをレール間の継ぎ部を含んで1枚のレールカバーで覆うことにより、レールの上面と側面の一部では継ぎ部に連続面が形成され、エッジが生じなくなる。そのため、リップシールを備える場合であっても、リップシールとエッジの衝突によるリップシールの破損を生じ難くすることができる。また、レールカバーが幅方向の両端において複数のレールの側面に締め代を有した状態で係合する係合部を有していることにより、レールカバーのどの位置においても浮き上がりに対する十分な固定力を有する。
【0042】
(2) 前記スライダの移動方向両端に配置され、シールリップを有するサイドシールを備え、
前記シールリップの先端部は、弾性部材によって構成され、前記レールカバーの上面及び側面、並びに前記レール部の側面と締め代を有した状態で当接する、
上記(1)に記載のリニアガイド装置。
このリニアガイド装置によれば、シールリップのスクレーパ性を高めつつも、シールリップの破損を生じ難くさせることができる。
【0043】
(3) 隣り合う2つのレールの片方又は両方の端面が、前記隣り合う2つのレールの幅又は高さの相互差のうち大きい方に基づいて決定される面取り量で面取りされている、
上記(1)又は(2)に記載のリニアガイド装置。
このリニアガイド装置によれば、隣り合う2つのレール間の相互差が大きい場合であっても、レール間で急激な段差が形成されることを防止でき、結果として、その上を覆うレールカバーに永久変形が生じるおそれを低減できる。
【0044】
(4) レールの幅又は高さに相互差がある隣り合う2つのレール間に隙間を設け、
前記隙間の長さは、前記幅又は高さの相互差のうち大きい方の2倍以上である、
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
このリニアガイド装置によれば、レール間で急激な段差が形成されることを防止でき、結果として、その上を覆うレールカバーに永久変形が生じるおそれを低減できる。
【0045】
(5) 前記レールカバーは、最小曲げ半径が500~750mmである、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載のリニアガイド装置。
このリニアガイド装置によれば、レールカバーが長尺の場合であっても、レールカバーを運搬し易いサイズのロール状にし易く、組み立て前の運搬が容易になる。なお、レールカバーの長さが短い場合(例えば、3m程度)は、通常、ロール状に巻かずに、真っすぐな状態で運搬される。
【0046】
1:リニアガイド装置、 10:レール部、 11:継ぎ部、 12:レール上面、 13:レール側面、13e:凹部、 20:スライダ、21:サイドシール、22:シールリップ、 22a:先端部、23:保持板、 25:グリースニップル、 30:レールカバー、 31:係合部、33:カバー押え L:軸方向、 W:幅方向