(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081031
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】折目付装置
(51)【国際特許分類】
B31F 1/26 20060101AFI20240610BHJP
B65H 45/30 20060101ALI20240610BHJP
B30B 3/00 20060101ALI20240610BHJP
B21D 13/04 20060101ALI20240610BHJP
B29C 53/28 20060101ALI20240610BHJP
B21D 47/00 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
B31F1/26
B65H45/30
B30B3/00 B
B21D13/04 B
B29C53/28
B21D47/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194451
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋志
【テーマコード(参考)】
3E078
3F108
4E090
4F209
【Fターム(参考)】
3E078AA15
3E078BB12
3E078BB13
3E078BC02
3E078CC09X
3E078DD11
3F108AB01
3F108BA07
4E090AA04
4E090AB04
4E090HA02
4F209AG03
4F209AG04
4F209AG18
4F209NA02
4F209NA08
4F209NB02
4F209NG02
4F209NK07
(57)【要約】
【課題】格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体を形成可能な折目付装置を提供する。
【解決手段】本発明の折目付装置は、互いに噛み合う2つの歯車でシート材を挟み、上記シート材に折り目を形成する。
そして、上記2つの歯車の少なくとも一方は、回転軸に直交する断面視において、歯の歯先頂面及び歯面の少なくとも一方に、歯車の厚み方向に沿って形成された凸部を有することとしたため、上記凸部によって局所的に大きな応力がシート材にかかって折り目がしっかりと付き、シート材のスプリングバックを抑制して異方性の小さな空間充填構造体を形成可能な折目付装置を提供することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合う2つの歯車でシート材を挟み、上記シート材に折り目を形成する折目付装置であって、
上記2つの歯車の少なくとも一方は、回転軸に直交する断面視において、歯の歯先頂面及び歯面の少なくとも一方に、歯車の厚み方向に沿って形成された凸部を有することを特徴とする折目付装置。
【請求項2】
上記2つの歯車は、噛み合う相手歯車の上記凸部が当接する部位に弾性材を有することを特徴とする請求項1に記載の折目付装置。
【請求項3】
上記2つの歯車は、噛み合う相手歯車の凸部が当接する部位に、歯車の厚み方向に沿って形成された凹形状が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の折目付装置。
【請求項4】
上記凸部は、その頂が曲面で形成された形状であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項に記載の折目付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折目付装置に係り、更に詳細には、シート材からハニカム構造などの格子構造を有する空間充填構造体を作製する際に、シート材に折り目を形成する折目付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムコアなどの立体図形を隙間なく並べた空間充填構造体は、軽量かつ高強度であるので構造材料として幅広く利用されている。
【0003】
特許文献1には、走行する2枚のシート材に接着剤を条線状に塗布し乾燥させ、展張してハニカム構造体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものにあっては、シート材に折り目が充分形成されず、シート材のスプリングバックによって展張後の格子形状が、展張方向の長さと該展張方向と直交する方向の長さとが異なった、異方性が大きな六角形になってしまう。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体を形成できる折目付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、シート材を挟んで折り目を付ける2つの歯車の歯に、凸部を形成することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の折目付装置は、シート材を2つの歯車で挟み、上記シート材に折り目を形成する。
そして、上記2つの歯車は、各歯の歯先頂面及び/又は歯面に、少なくとも1つの歯幅方向に延びる凸部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート材を挟んで折り目を付ける2つの歯車の歯に、凸部を形成することとしたため、上記凸部によって局所的に大きな応力がシート材にかかって折り目がしっかりと付き、シート材のスプリングバックを抑制して異方性の小さな空間充填構造体を形成可能な折目付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コルゲート法により空間充填構造体を作製する過程を説明する図である。
【
図2】折り紙法により空間充填構造体を作製する過程を説明する図である。
【
図3】シート材を2つの歯車で挟んで折り目を付ける状態を説明する図である。
【
図4】六角形の格子形状を形成する歯車の一例を示す要部拡大図である。
【
図5】14角形の格子形状を形成する歯車の一例を示す要部拡大図である。
【
図6】14角形の格子形状を有する空間充填構造体の一例を示す図である。
【
図7】六角形の格子形状を形成する歯車の他の一例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、ハニカムコアなどの空間充填構造体の作製方法について説明する。
シート材からハニカムコアを作製する方法としては、
図1に示すコルゲート法や、
図2に示す折り紙工法などを挙げることができる。
【0012】
図1に示すコルゲート法は、シート材に平行な折り目を複数有し、周期的な山谷形状が複数形成された複数のシート材を、上記山谷形状が互い違いになるように並べ、隣り合うシート材の山部同士を接着し、シート材を接着面と直交する方向に展張させて形成する方法である。このコルゲート法ではシート材の幅が空間充填構造体の高さとなる。
【0013】
また、
図2に示す折り紙工法は、上記コルゲート法のシート材と同様に、シート材に周期的な山谷形状を複数形成した後、さらに上記折り目と直交する方向に一部を残して切れ込みを入れ、残した接続箇所を180°折り返し、対向する面同士を接着して形成する方法である。
【0014】
本発明の折目付装置は、シート材に平行な折り目を形成しつつ、シート材に上記のような周期的な山谷形状を付与するものであり、
図3に示すように、シート材を回転する2つの歯車で挟み、歯車の形状をシート材に転写して、所望の折り目を形成するものである。
【0015】
このように、回転する2つの歯車間にシート材を送ることで長尺のシート材に対し、連続して折り目を付けて周期的な山谷形状を形成することができる。
【0016】
しかし、所望の角度の折り目、例えば、120°の折り目を形成するために、歯面と歯先とのなす角度が、120°である歯車で挟んだのではシート材のスプリングバックによっての120°の折り目を形成することはできず、また、歯面と歯先とのなす角度を小さくすると、歯車が噛み合わず歯車を回転させることができない。
【0017】
本発明においては、
図4に示すように、各歯の歯先頂面及び/又は歯面に、少なくとも1つの歯幅方向に、すなわち歯車の厚み方向に延びる凸部を有する2つの歯車でシート材を挟むこととしたため、上記凸部がシート材に当接して、シート材を局所的に強く押圧する。
【0018】
したがって、2つの歯車間で、シート材を歯車の歯面と歯先とのなす角度よりも小さな角度まで折り曲げることができ、シート材のスプリングバックによって折り目の角度が拡がったとしても、シート材に所望の角度の折り目を形成することが可能である。
【0019】
上記凸部を形成する箇所や、各歯に形成する凸部の数は、作製する空間充填構造体の形状に応じて変更することができる。
【0020】
例えば、六角形の立体で充填された空間充填構造体を形成する場合は、
図4に示すように、歯幅方向に延びる凸部を、各歯の歯先頂面の周方向の縁の2辺に設け、シート材に山、山、谷、谷を繰り返す折り目を形成する。
【0021】
また、上記六角形の立体を形成する6つの面のうち、接着されていない4つの面のそれぞれに2つずつ、上記六角形の内角を広げる方向に折り目を付けた14角形の空間充填構造体を形成することもできる。
【0022】
図5に示す歯車は、歯幅方向に延びる凸部を、上記六角形の立体を形成する歯車に形成された上記歯先頂面の凸部に加えて歯面にも凸部を有する。これにより、シート材に山、山、山、山、谷、谷、谷、谷を繰り返す折り目を形成し、
図6に示すような14角形の空間充填構造体を形成することができる。
【0023】
上記六角形の空間充填構造体が異方性のない正六角形になるには、1つの折り目の角度が120°になる必要があるが、上記14角形の空間充填構造体は、2つの折り目で120°になればよいので、スプリングバックが強いシート材であっても、より異方性を抑制した空間充填構造体を作製することが可能である。
【0024】
上記2つの歯車は、噛み合う相手歯車の上記凸部が当接する部位、すなわち、歯車の歯底や歯面が平滑である場合は、歯車の軸を偏心させて2つの歯車の間隔を変化させて歯車を回転させることができるが、当該部位に上記凸部を受ける歯幅方向に延びる凹部を形成することや、また、
図7に示すように、当該部位をゴムなどの弾性材で形成することが好ましい。
【0025】
歯車の凸部が当接する部位に凹部を有することで上記凸部が凹部に入りこみ、ここに挟まれたシート材を鋭角に折ることができる。また、当該部位を弾性材で形成することで、凸部が上記弾性材に食い込んで、上記凹部と同様に、シート材を鋭角に折ることができる。
【0026】
さらに、歯車同士が干渉することなく滑らかに回転して折目の位置ズレを防止できると共に、歯車の摩耗が低減されて耐久性が向上する。
なお、
図4~6は、歯車の噛み合い状態を表すためシート材を省略している。
【0027】
上記歯車の凸部形状は、その頂が、曲率が一定の曲面で形成されていることが好ましい。これにより、歯先頂面の2つの凸部でシート材が押圧されて固定された2点間のシート材が、歯車の回転によって引っ張られたとしても、シート材と凸部との間で滑りが生じて、シート材が破れることを防止できる。
【0028】
上記凸部の頂の曲率は、シート材のヤング率などにもよるが、凸部の頂の曲率半径をr、2つの凸部間の距離をlとしたとき、2つの凸部間で引っ張られるシート材の長さl1は、
【0029】
【数1】
で表される。
この引っ張られたシート材に生じる歪εは、
【0030】
【数2】
で表される。
この歪によって発生する引張応力σは、ヤング率をEとすると、σ=Eεで表されるので、シート材の引張強度をσ
tとすると、σ< σ
tであれば、材料は破損しない。
したがって、頂の曲率が、
【0031】
【数3】
を満たすように設定することで、シート材と凸部との間で滑りが全く生じない場合であっても、シート材を破損させることなく、折り目を形成することができる。
【0032】
本発明の折目付装置は、クラフト紙などの紙材、プラスチックフィルムなどの樹脂材、及びアルミニウム箔などの金属材で成るシート材に折り目を形成することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 シート材
2 歯車
21 歯
22 歯先
23 歯面
24 歯底
3 凸部
4 凹部
5 弾性材