(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081042
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】眼科装置、および、眼科プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A61B3/103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194470
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】新家 惇
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA13
4C316AB16
4C316FB12
(57)【要約】
【課題】 被検眼の屈折異常を容易に判断することができる眼科装置、および、眼科プログラムを提供する。
【解決手段】 被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置であって、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得手段と、第1球面屈折力と第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、屈折異常を判定する判定手段と、判定手段による判定結果を出力する制御手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置であって、
2被検眼の前記眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得手段と、
前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、前記被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、前記屈折異常を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、
前記制御手段は、前記被検眼の前記眼屈折力を前記判定結果とともに出力し、
前記被検眼の前記眼屈折力における前記円柱屈折力として、前記プラス符号の前記第1円柱屈折力と、前記マイナス符号の前記第2円柱屈折力と、のいずれを出力するかを設定する設定手段を備え、
前記制御手段は、
前記判定手段が前記絶対値が最大となる球面屈折力を前記所定の閾値未満と判定した場合、前記設定手段が設定した符号の前記円柱屈折力と、前記設定手段が設定した符号の前記円柱屈折力に対応する前記球面屈折力と、を前記眼屈折力として出力し、
前記判定手段が前記絶対値が最大となる球面屈折力を前記所定の閾値以上と判定した場合、前記設定手段が設定した符号にかかわらず、前記絶対値が最大となる前記球面屈折力と、前記絶対値が最大となる前記球面屈折力に対応する前記円柱屈折力と、を前記眼屈折力として出力することを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかの眼科装置において、
前記被検眼の前記眼屈折力をフォトレフラクション方式で他覚的に測定する測定手段を備え、
前記測定手段は、
光軸中心を基準として経線方向に配置された複数の測定光源を有し、前記複数の測定光源から出射された測定光を前記被検眼の眼底に照射する投光光学系と、
前記被検眼の眼底によって反射された前記測定光の反射光を検出器で検出する受光光学系と、
を有し、
前記取得手段は、前記測定手段による測定結果に基づいて、少なくとも前記球面屈折力と前記円柱屈折力を取得することを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置であって、
前記被検眼の前記眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得手段と、
前記被検眼の前記眼屈折力を出力する制御手段であって、前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を出力する制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
眼科プログラムであって、
被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得ステップであって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得ステップと、
前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、前記被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、前記屈折異常を判定する判定ステップと、
前記判定ステップによる判定結果を出力する制御ステップと、
をプロセッサに実行させることを特徴とする眼科プログラム。
【請求項6】
眼科プログラムであって、
被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得ステップであって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得ステップと、
前記被検眼の前記眼屈折力を出力する制御ステップであって、前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を出力する制御ステップと、
をプロセッサに実行させることを特徴とする眼科プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置、および、眼科プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置としては、例えば、眼屈折力測定装置が知られている。例えば、眼屈折力測定装置として、被検眼の眼底に測定光束を投光し、眼底からの反射光束を受光素子で受光することによって被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するものが知られている(特許文献1参照)。また、例えば、眼屈折力測定装置として、被検眼の眼底からの反射光の瞳孔における割合から被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するフォトレフラクション方式の他覚式検眼装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-147570号公報
【特許文献2】特開2021-153882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の眼屈折力測定装置において、被検眼の眼屈折力は、円柱屈折力をプラス符号で表すプラス読みと、円柱屈折力をマイナス符号で表すマイナス読みと、の2通りのパターンで取得することが可能であるが、測定結果としては、いずれか一方の読み方で出力される場合が多い。例えば、検者は、被検眼の測定結果に基づいて、被検眼に屈折異常(一例として、近視、遠視、等)があるかどうかを判断しているが、測定結果や読み方によっては、屈折異常を見逃してしまうことがあった。特に、3歳児等の幼児に対しては、屈折異常の早期発見を目的としたスクリーニング検査等が行われているが、このような屈折異常の見逃しは問題となる可能性があった。
【0005】
本開示は、上記の問題点を鑑み、被検眼の屈折異常を容易に判断することができる眼科装置、および、眼科プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 本開示の第1態様に係る眼科装置は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置であって、前記被検眼の前記眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得手段と、前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、前記被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、前記屈折異常を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 本開示の第2態様に係る眼科装置は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置であって、前記被検眼の前記眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得手段と、前記被検眼の前記眼屈折力を出力する制御手段であって、前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を出力する制御手段と、を備えることを特徴とする。
(3) 本開示の第3態様に係る眼科プログラムは、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得ステップであって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得ステップと、前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、前記被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、前記屈折異常を判定する判定ステップと、前記判定ステップによる判定結果を出力する制御ステップと、をプロセッサに実行させることを特徴とする。
(4) 本開示の第4態様に係る眼科プログラムは、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得ステップであって、プラス符号の第1円柱屈折力および前記第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および前記第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得ステップと、前記被検眼の前記眼屈折力を出力する制御ステップであって、前記第1球面屈折力と前記第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を出力する制御ステップと、をプロセッサに実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】測定光源を正面方向から見た場合の図を示している。
【
図3】フォトレフラクション方式について説明する図である。
【
図4】眼科装置における制御系の概略構成図である。
【
図7】被検眼に屈折異常がない場合の表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本実施形態に係る眼科装置の概要を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0009】
本実施形態の眼科装置は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼科装置である。例えば、被検眼の眼屈折力としては、少なくとも、球面屈折力(S)と円柱屈折力(C)が測定されてもよい。もちろん、被検眼の眼屈折力としては、球面屈折力と円柱屈折力に加えて、乱視軸角度(A)が測定されてもよい。さらには、例えば、球面屈折力と円柱屈折力とに基づく等価球面屈折力(SE)が測定されてもよい。
【0010】
本実施形態の眼科装置は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するための測定手段を備えてもよい。例えば、眼科装置は、被検眼の眼屈折力をフォトレフラクション方式とは異なる方式で測定する測定手段を備えてもよい。この場合、測定手段は、被検眼の眼底に測定光としてパターン指標を投影し、眼底により測定光が反射された反射光を検出器にて検出する構成を有してもよい。一例としては、反射光をリング像として検出してもよい。また、一例としては、反射光をシャックハルトマンセンサにて検出してもよい。また、例えば、眼科装置は、被検眼の眼屈折力をフォトレフラクション方式で測定する測定手段を備えてもよい。この場合、測定手段は、被検眼の眼底に測定光として非パターン指標を投影し、眼底により測定光が反射された反射光を検出器にて検出する構成を有してもよい。一例としては、被検眼の瞳孔での光束の状態(瞳孔における光束の割合、等)を検出してもよい。
【0011】
例えば、上記のフォトレフラクション方式の測定手段は、投光光学系(例えば、投光光学系10)と、受光光学系(例えば、受光光学系20)と、を有してもよい。例えば、投光光学系と受光光学系は、それぞれを別の光学部材で構成してもよいし、少なくとも一部の光学部材を兼用する構成としてもよい。
【0012】
例えば、投光光学系は、少なくとも測定光源を有する構成であればよい。例えば、投光光学系は、光軸中心を基準として経線方向(半径方向)に配置された複数の測定光源(例えば、測定光源13)を有し、複数の測定光源から出射した測定光束を被検眼の眼底に照射してもよい。例えば、複数の測定光源は、それぞれが独立に制御されてもよい。例えば、各測定光源の点灯と消灯、光量の調整、等が独立に制御されてもよい。また、複数の測定光源は、光軸中心を基準に、少なくとも3経線方向に関して互いに分離して、それぞれが配置されてもよい。例えば、測定光源を少なくとも3経線方向に配置することで、球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸角度、等を含む眼屈折力を測定できる。なお、測定光源を配置する経線方向は、任意の数の経線方向(例えば、1経線方向、2経線方向、3経線方向、4経線方向、等)とすることができる。また、測定光源は、経線方向に対して少なくとも1つが配置されればよい。
【0013】
例えば、受光光学系は、少なくとも検出器を有する構成であればよい。例えば、受光光学系は、被検眼の眼底によって反射された測定光の反射光を検出器(例えば、検出器21)で検出してもよい。
【0014】
<取得手段>
本実施形態の眼科装置は、取得手段(例えば、制御部80)を備えてもよい。例えば、取得手段は、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する。例えば、被検眼の眼屈折力において、円柱屈折力は、プラス符号で表す場合(言い換えると、プラス読みをする場合)と、マイナス符号で表す場合(言い換えると、マイナス読みをする場合)と、の2通りのパターンで取得することができる。例えば、円柱屈折力のプラス読みまたはマイナス読みによって、円柱屈折力に対応した球面屈折力は変化する。このため、例えば、プラス符号の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力と、は互いに異なる値で表される。
【0015】
なお、例えば、被検眼の円柱屈折力のプラス読みとマイナス読みは、被検眼の経線方向の屈折力によって決定される。より詳細には、例えば、被検眼が最も強い屈折力をもつ経線(強主経線)と、最も弱い屈折力をもつ経線(弱主経線)と、の2つの経線方向のうち、被検眼の円柱屈折力をいずれの経線方向の屈折力で表すかによって、円柱屈折力がプラス読みとマイナス読みの2通りのパターンで取得される。
【0016】
例えば、取得手段は、本実施形態とは異なる別の眼科装置であって、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定することが可能な眼科装置を利用して測定された測定結果を受信することで、少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得してもよい。つまり、本実施形態の眼科装置が、情報解析装置として機能してもよい。もちろん、本実施形態の眼科装置が、前述の測定手段を備えてもよい。この場合、例えば、取得手段は、測定手段による測定結果に基づいて、少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得してもよい。
【0017】
<判定手段>
本実施形態の眼科装置は、判定手段(例えば、制御部80)を備えてもよい。例えば、判定手段は、プラス符号の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力と、のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、屈折異常を判定する。このとき、例えば、プラス符号の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力と、に基づいて、絶対値が最大となる球面屈折力が屈折異常の判定に用いられてもよい。例えば、判定手段は、絶対値が最大となる球面屈折力が所定の閾値を超える場合に、屈折異常があると判定してもよい。また、例えば、判定手段は、絶対値が最大となる球面屈折力が所定の閾値を超えない場合に、屈折異常がないと判定してもよい。例えば、絶対値が最大となる球面屈折力を用いることによって、一方の円柱屈折力の読みに対応する球面屈折力は所定の閾値を超えないが、他方の円柱屈折力の読みに対応する球面屈折力は所定の閾値を超えるような場合であっても、屈折異常を容易に判断することができる。
【0018】
例えば、判定手段は、第1球面屈折力と第2球面屈折力において、絶対値が最大となる球面屈折力のみを、所定の閾値と比較処理することで、屈折異常を判定してもよい。
【0019】
例えば、判定手段が、絶対値が最大となる球面屈折力のみを閾値と比較する場合には、第1球面屈折力と第2球面屈折力を直接的に比較することによって、絶対値が最大となる球面屈折力が取得されてもよい。一例として、第1球面屈折力が-2.50D、第2球面屈折力が-1.50Dであった場合には、互いの比較によって、絶対値が最大となる第2球面屈折力-2.50Dが取得されてもよい。
【0020】
また、例えば、判定手段が、絶対値が最大となる球面屈折力のみを閾値と比較する場合には、第1球面屈折力と第1円柱屈折力による第1等価球面屈折力の符号に基づいて、絶対値が最大となる球面屈折力が取得されてもよい。あるいは、第2球面屈折力と第2円柱屈折力による第2等価球面屈折力の符号に基づいて、絶対値が最大となる球面屈折力が取得されてもよい。なお、例えば、第1等価球面屈折力と第2等価球面屈折力は同一の値となるため、どちらを用いてもよい。一例として、マイナス符号の等価球面屈折力であれば、プラス符号の円柱屈折力に対応する第1球面屈折力が、絶対値が最大となる球面屈折力として取得されてもよい。また、一例として、プラス符号の等価球面屈折力であれば、マイナス符号の円柱屈折力に対応する第2球面屈折力が、絶対値が最大となる球面屈折力として取得されてもよい。例えば、判定手段は、このように等価球面屈折力の符号とは逆の符号である円柱屈折力の読みに対応した球面屈折力を取得することによって、結果として、絶対値が最大となる球面屈折力を取得してもよい。
【0021】
例えば、判定手段は、第1球面屈折力と第2球面屈折力の双方を、所定の閾値と比較処理することで、屈折異常を判定してもよい。一例としては、第1球面屈折力と第2球面屈折力の双方を所定の閾値と比較して、少なくとも第1球面屈折力と第2球面屈折力の一方が所定の閾値を超える場合に、屈折異常を判定してもよい。なお、第1球面屈折力と第2球面屈折力のいずれかは絶対値が最大となる球面屈折力に相当し、これらの双方を閾値と比較することによって、屈折異常を容易に判断することができる。
【0022】
例えば、所定の閾値は、屈折異常として近視または遠視の少なくともいずれかを判定するために設けられた基準であってもよい。例えば、所定の閾値は、少なくとも1つ以上の特定の値、もしくは、特定の許容範囲、等であってもよい。
【0023】
例えば、所定の閾値は、予め設定された固定の値であってもよい。例えば、この場合、所定の閾値は、実験やシミュレーションに基づいて予め設定された値であってもよい。また、例えば、所定の閾値は、操作信号に基づいて設定される任意の値であってもよい。例えば、この場合、検者が操作手段(例えば、コントローラ81)を操作することによって、操作信号が出力されてもよい。また、例えば、この場合、外部の記憶手段(一例として、SDカード、USBメモリ、サーバ、クラウド、等)を利用し、外部の記憶手段に記憶されたデータを読み込むことで、操作信号が出力されてもよい。
【0024】
<設定手段>
本実施形態の眼科装置は、設定手段(例えば、制御部80)を備えてもよい。例えば、設定手段は、被検眼の眼屈折力における円柱屈折力として、プラス符号の第1円柱屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力と、のいずれを出力するかを設定する。例えば、被検眼の円柱屈折力はプラス読みとマイナス読みとの2通りのパターンで取得することができるため、いずれか一方の読み方を優先するように、出力方法が設定されていてもよい。
【0025】
例えば、設定手段は、検者による操作手段の操作で入力された第1円柱屈折力と第2円柱屈折力とのいずれかの選択信号に基づいて、第1円柱屈折力と第2円柱屈折力とのいずれを出力するかを設定してもよい。また、例えば、設定手段は、後述する判定手段の判定結果に基づいて、自動的に第1円柱屈折力と第2円柱屈折力のいずれを出力するかを設定してもよい。
【0026】
<制御手段>
本実施形態の眼科装置は、制御手段(例えば、制御部80)を備えてもよい。例えば、制御手段は、判定手段の判定結果を出力する。例えば、判定結果は、被検眼の屈折異常を知らせることができるものであればよい。例えば、判定結果は、屈折異常があることを直接的または間接的に示すものであってもよいし、屈折異常がないことを直接的または間接的に示すものであってもよい。もちろん、例えば、判定結果は、屈折異常があることを示すものと、屈折異常がないことを示すものと、の双方を含むものであってもよい。これによって、検者は屈折異常を容易に判断することができ、結果として、被検眼の屈折異常の見逃しを低減させることができる。
【0027】
例えば、制御手段は、判定手段の判定結果を直接的に出力してもよい。この場合、判定結果としては、被検眼の第1球面屈折力または第2球面屈折力(言い換えると、絶対値が最大となる球面屈折力)が、屈折異常の判定基準である所定の閾値を超えたこと、あるいは、超えていないことが出力されてもよい。
【0028】
また、例えば、制御手段は、判定手段の判定結果として、判定結果に基づいた種々の情報を出力してもよい。この場合、判定結果は、検者に屈折異常の有無を報知するための報知情報として出力されてもよい。一例として、報知情報は、屈折異常の有無を表す情報、屈折異常の程度を表す情報(例えば、数値や評価指標)、等の少なくともいずれかであってもよい。また、この場合、判定結果は、検者を誘導するための誘導情報として出力されてもよい。一例として、誘導情報は、被検眼の検査の終了を示す情報、検者の次の動作を示す情報、被検者への指示内容を示す情報、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0029】
例えば、制御手段は、表示手段を制御し、表示手段に判定結果を表示させてもよい。また、例えば、制御手段は、音声発生手段(一例として、スピーカ)を制御し、音声発生手段に判定結果を音声として発生させてもよい。また、例えば、制御手段は、報知手段(一例として、ランプ)を制御し、報知手段の点灯や点滅により判定結果を表してもよい。また、例えば、制御手段は、印刷手段(一例として、プリンタ)を制御し、印刷手段に判定結果を印刷させてもよい。また、例えば、制御手段は、外部の記憶手段(一例として、メモリ、サーバ)を制御し、外部の記憶手段に判定結果を送信してもよい。もちろん、例えば、制御手段は、これらを組み合わせた制御を実行してもよいし、これらとは異なる制御を実行してもよい。
【0030】
なお、例えば、制御手段が表示手段を制御する場合には、判定結果として表示手段にメッセージを示してもよい。また、例えば、表示手段における画面を強調することで判定結果を示してもよい。一例としては、画面の色の反転や変更、画面の点滅、表示サイズの変更、等の少なくともいずれかであってもよい。また、例えば、表示手段に標識(例えば、ウィンドウ、マーク、アイコン、文字、数字、記号、等の少なくともいずれか)を示すことで、判定結果を示してもよい。もちろん、例えば、このような標識をさらに強調することで、判定結果が示されてもよい。
【0031】
本実施形態において、制御手段は、被検眼の眼屈折力を出力してもよい。この場合、制御手段は、プラス符号の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力と、のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を出力してもよい。このとき、例えば、プラス符号の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力と、に基づいて、絶対値が最大となる球面屈折力が出力に用いられてもよい。すなわち、第1球面屈折力と第2球面屈折力のうち、絶対値が大きい側の球面屈折力が出力に用いられてもよい。この場合には、被検眼の球面屈折力として、絶対値が最大となる球面屈折力を確認することができるため、被検眼が屈折異常であるかを容易に判断し、屈折異常の見逃しを低減させることができる。もちろん、制御手段は、絶対値が最大となる球面屈折力に加えて、これに対応する円柱屈折力、等価球面屈折力、乱視軸角度、等を出力してもよい。
【0032】
本実施形態において、制御手段は、被検眼の眼屈折力を判定結果とともに出力してもよい。なお、この場合には、被検眼の眼屈折力を出力するための制御手段と、被検眼の判定結果を出力するための制御手段と、が兼用されてもよいし、別に設けられてもよい。
【0033】
例えば、制御手段は、判定手段が絶対値が最大となる球面屈折力を所定の閾値未満と判定した場合には、設定手段が設定した符号の円柱屈折力と、設定手段が設定した符号の円柱屈折力に対応する球面屈折力と、を眼屈折力として出力してもよい。言い換えると、設定手段による円柱屈折力のプラス読みとマイナス読みのいずれかの設定に従って、眼屈折力を出力してもよい。また、例えば、制御手段は、判定手段が絶対値が最大となる球面屈折力を所定の閾値以上と判定した場合には、設定手段が設定した符号にかかわらず、絶対値が最大となる球面屈折力と、絶対値が最大となる球面屈折力に対応する円柱屈折力と、を眼屈折力として出力してもよい。言い換えると、設定手段による円柱屈折力のプラス読みとマイナス読みのいずれかの設定にかかわらず、絶対値が最大となる球面屈折力と、この球面屈折力に対応する円柱屈折力の読み方で、眼屈折力を出力してもよい。これによって、検者は、被検眼の球面屈折力が基準を超えるか否かを把握しやすくなり、被検眼の屈折異常を容易に判断できる。
【0034】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0035】
例えば、このような端末制御ソフトウェアは、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得ステップであって、プラス符号の第1円柱屈折力および第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得ステップと、第1球面屈折力と第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、屈折異常を判定する判定ステップと、判定ステップによる判定結果を出力する制御ステップと、をプロセッサに実行させてもよい。一例としては、眼科装置に搭載されたプロセッサに実行させてもよい。
【0036】
また、例えば、このような端末制御ソフトウェアは、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得ステップであって、プラス符号の第1円柱屈折力および第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得ステップと、被検眼の眼屈折力を出力する制御ステップであって、第1球面屈折力と第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を出力する制御ステップと、をプロセッサに実行させてもよい。一例としては、眼科装置に搭載されたプロセッサに実行させてもよい。
【0037】
<実施例>
以下、本実施例における眼科装置の一実施例を説明する。例えば、
図1は、眼科装置の構成について説明する図である。なお、本実施例においては、被検眼の左右の測定において、投光光学系と受光光学系が兼用される構成を例に挙げて説明する。つまり、被検眼の左右の測定が1つの投光光学系と1つの受光光学系によって実施される場合を例に挙げて説明する。
【0038】
<装置外観>
例えば、眼科装置1は、フォトレフラクション方式にて被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する。例えば、フォトレフラクション方式にて被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する構成とは、被検眼の眼底からの反射光の瞳孔における割合から被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する構成を示す。例えば、本実施例において、眼科装置1は、筐体2を備える。例えば、筐体2は、その内部に、フォトレフラクション方式にて被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するための光学系(例えば、投光光学系10、受光光学系20)を収納している。
【0039】
<測定光学系>
例えば、眼科装置1は、投光光学系10、受光光学系20を備える。なお、本実施形態において、例えば、投光光学系10は、測定光源13を備える。もちろん、例えば、投光光学系10は、測定光源13のみで構成されていてもよい。例えば、受光光学系20は、検出器21(例えば、CCD等)、受光用対物光学系25を備える。
【0040】
例えば、呈示窓3は、投光光学系10における測定光源13から出射された測定光を透過する。このため、被検眼Eには、呈示窓3を介した測定光が照射される。例えば、呈示窓3は、埃などの侵入を防ぐために透明パネルで塞がれている。例えば、透明パネルとしては、アクリル樹脂やガラス板等の透明な部材を用いることができる。
【0041】
図2は、測定光源13を正面方向(光軸方向)から見た場合(被検者が測定光源13を見た場合)の図を示している。例えば、測定光源13としては、近赤外光を発光する赤色LED(発光ダイオード)が用いられる。もちろん、異なる種類の光源が用いられてもよい。
【0042】
例えば、本実施例においては、測定光源13が被検眼の前眼部を照明する前眼部照明用光源を兼ねる。もちろん、別途、前眼部像を照明する専用の前眼部照明用光源が設けられるようにしてもよい。また、例えば、本実施例において、検出器21は、前眼部照明用光源によって照明された前眼部像を撮像する検出器を兼ねる。もちろん、別途、前眼部像を撮像する専用の検出器が設けられるようにしてもよい。例えば、撮像された前眼部像は、ディスプレイ11に表示される。
【0043】
例えば、本実施例においては、被検眼を固視させるための固視灯を測定光源13が兼ねる。もちろん、別途、被検眼を固視させる専用の固視灯が設けられるようにしてもよい。例えば、例えば、固視灯を設ける場合には、光軸上に設けるようにしてもよいし、光軸の周辺に設けるようにしてもよい。
【0044】
例えば、測定光源13としては、複数の測定光源が設けられ、少なくとも3経線方向に関して互いに分離して、それぞれの測定光源が配置されるようにしてもよい。もちろん、測定光源が配置される経線方向は、任意の数の経線方向(例えば、1経線方向、2経線方向、4経線方向等)とすることができる。本実施例においては、4経線方向に測定光源が配置されている場合を例に挙げて説明する。また、本実施例において、測定光源13は、光軸中心を基準として経線方向に延びる仮想直線上に順に配置されている場合を例に挙げて説明する。
【0045】
なお、本実施例においては、1経線方向において、対物レンズ26の光軸中心O1を基準として2組の測定光源が対称に配置されている構成を例に挙げて説明する。もちろん、1経線方向において、対物レンズ26の光軸中心O1を基準として、対照に測定光源を配置しない構成であってもよい。すなわち、1経線方向において、対物レンズ26の光軸中心O1に対して片側のみに測定光源が配置される構成であってもよい。本実施例において、例えば、測定光源13としては、4経線方向に8組の測定光源(測定光源13a、測定光源13b、測定光源13c、測定光源13d、測定光源13e、測定光源13f、測定光源13g、測定光源13h)が配置される。
【0046】
例えば、測定光源13a~測定光源13hの8組の測定光源は、対物レンズ26の外周円の外側に同心円上に45°間隔で配置されている。もちろん、各測定光源の配置位置は、任意の位置に配置することができる。例えば、測定光源13は、ベース14に固定されている。また、例えば、対物レンズ26は、ベース14に固定されている。
【0047】
例えば、測定光源13a~測定光源13hの8組の測定光源は、それぞれ3つの測定光源を有する。例えば、3つの光源(一例として、測定光源13aにおける3つの光源13a1,13a2,13a3)は、対物レンズ26の光軸中心O1を基準として経線方向(半径方向)に所定の間隔をあけて順に配置されている。例えば、各測定光源は、それぞれ独立して制御することができる。例えば、各測定光源の点灯、光量の調整、等をそれぞれ独立して制御することができる。
【0048】
なお、本実施例において、例えば、測定光源13として、8組の測定光源を有する構成としたがこれに限定されない。例えば、測定光源13としては、任意の組(例えば、3組、4組、5組、6組等)の測定光源を有することができる。なお、本実施例においては、測定光源13a~測定光源13hの8組の測定光源は、それぞれ3つの測定光源を有する構成を例に挙げて説明するがこれに限定されない。各組の測定光源は、任意の数の測定光源(例えば、2つ、4つ、5つ等)を有することができる。
【0049】
例えば、測定光源13は、上述のように、対物レンズ26の外周円の外側に同心円上に配置されている。
【0050】
例えば、検出器21は、被検眼の瞳と共役な関係となっている。例えば、検出器21からの出力は、制御部80に入力される。本実施例において、例えば、受光光学系20の光軸L2と投光光学系10の光軸L1とが同軸とされている。
【0051】
上記構成において、測定光源13から出射された測定光は、被検眼Eの方向へ向かう。例えば、測定光は、呈示窓3を介して、被検眼Eの眼底に照射される。すなわち、測定光は、投光光学系10の光軸L1に沿って被検眼Eに照射される。本実施例においては、左右の被検眼(左右眼)に測定光が照射される。
【0052】
例えば、被検眼Eの眼底に照射された測定光は反射・散乱されて被検眼Eを射出し、対物レンズ26によって集光される。対物レンズ26によって集光された反射光は、検出器21によって検出される。なお、本実施例においては、左右眼によって反射されたそれぞれの反射光が検出器21にそれぞれ検出される。
【0053】
本実施例において、例えば、測定光源13は、各測定光源が順次に点灯される。例えば、制御部80は、測定光源13a1を点灯させる。このとき、他の測定光源は、消灯させておく。例えば、測定光源13a1から出射された測定光は、被検眼Eに照射され、被検眼Eによって反射された反射光が検出器21に検出される。例えば、制御部80は、測定光源13a1の点灯による検出結果が取得されると、次の測定光源13a2を点灯させるとともに測定光源13a1を消灯させ、測定光源13a2の点灯による検出結果を取得する。例えば、制御部80は、測定光源13a2の点灯による検出結果が取得されると、次の測定光源13a3を点灯させるとともに測定光源13a2を消灯させ、測定光源13a3の点灯による検出結果を取得する。
【0054】
例えば、制御部80は、測定光源13aの3つの光源による検出結果が取得されると、次の組の測定光源による測定を実施する。例えば、制御部80は、測定光源13bの3つの光源による検出結果を取得する。この場合、測定光源13b1を点灯させ、他の測定光源を消灯させておく。次いで、上記の測定光源13aの測定と同様に、順次、各測定光源による検出結果を取得していく。例えば、制御部80は、測定光源13aの3つの光源による検出結果が取得されると、次の組の測定光源による測定を実施する。例えば、制御部80は、各組の測定光源による測定を順次実施していく。
【0055】
なお、本実施例においては、上記のように測定光源を点灯させる構成を例に挙げたが、これに限定されない。各測定光源を点灯させる順序は任意の順序で実施することができる。
【0056】
<フォトレフラクション方式>
次いで、例えば、フォトレフラクション方式について説明する。
図3は、フォトレフラクション方式について説明する図である。本実施例において、例えば、制御部80は、瞳孔を通過する眼底からの反射光を検出器21によって検出し、瞳孔における明るいクレッセントの瞳孔半径方向の寸法の瞳孔径に対する割合を検出し、下記の数式1によって眼屈折力を取得する(例えば、特開2006-149501号公報参照)。
【0057】
【0058】
ここで、Rは瞳孔直径に対する瞳孔中の明るいクレッセントKの寸法割合(B/2r)を示す。例えば、Bは明るいクレッセントKの瞳孔半径方向の長さである。例えば、rは被検眼の瞳孔の半径である。例えば、Aは被検眼の眼屈折力である。例えば、eは対物レンズ26の端部26aから測定光源13(
図3では、測定光源13における測定光源13a1を例示)までの距離である。例えば、Lは被検眼Eと対物レンズ26との離間距離(測定距離)Sの逆数である(L=1/S)。
【0059】
上記のように、例えば、明るいクレッセントBの割合Rは、その他の条件が一定であるとすると、被検眼の眼屈折力Aによって異なる。すなわち、一定条件下で測定された明るいクレッセントの割合Rから、下記の数式2によって被検眼の眼屈折力Aが算出される。
【0060】
【0061】
以上のようにして、フォトレフラクション方式にて被検眼の眼屈折力が算出される。
【0062】
なお、例えば、本実施例において、
図1における、投光光学系10と、受光光学系20と、の配置は任意の配置とすることができる。一例として、例えば、投光光学系10と、受光光学系20とが、別途異なる位置に配置されてそれぞれ異なる光軸で測定が行われるようにしてもよい。
【0063】
<制御部>
例えば、
図4は、眼科装置1における制御系の概略構成図である。例えば、制御部80には、ディスプレイ(モニタ)11、測定光源13、検出器21、コントローラ81、不揮発性メモリ82、等が接続されている。
【0064】
例えば、制御部80は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、眼科装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、眼科装置1の動作を制御するための各種プログラム等が記憶されている。なお、制御部80は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0065】
例えば、コントローラ81は、ディスプレイ11の表示切換や、測定光源13の点灯による測定を開示する際に用いる。例えば、コントローラ81から入力された信号は、ケーブルを介して制御部80に入力される。なお、本実施例においては、コントローラ81からの信号が、赤外線等の無線通信を介すことによって制御部80へ入力される構成としてもよい。例えば、コントローラ81には、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いてもよい。
【0066】
例えば、本実施例において、コントローラ81は、筐体2に設けられている。より詳細には、コントローラ81は、ディスプレイ11の周辺に設けられている。もちろん、コントローラ81は、任意の位置に配置することできるし、筐体2とは異なる構成として設けられるようにしてもよい。
【0067】
例えば、ディスプレイ11は、眼科装置1の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、眼科装置1の本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、ディスプレイ11は、タッチパネルであってもよい。なお、ディスプレイ11がタッチパネルである場合に、ディスプレイ11がコントローラとして機能する。ディスプレイ11には、被検眼の画像等が表示される。
【0068】
例えば、不揮発性メモリ82は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、不揮発性メモリ(以下、メモリと記載)82としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ等を使用することができる。例えば、メモリ82には、測定処理のプログラムが記憶されている。
【0069】
<制御動作>
以上のような構成を備える眼科装置1における制御動作について説明する。本実施例では、眼科装置1を用いて、3歳児等の幼児に対するスクリーニング検査を行う場合を例に挙げて説明する。例えば、眼科装置1のようなフォトレフラクション方式の測定は、厳密な(シビアな)アライメントが必ずしも必要ではなく、簡易的に効率よく測定結果を得ることができる。このため、特に、検査視標の固視の維持が難しい幼児に対して、被検眼の屈折異常(一例として、近視や遠視)のスクリーニング等を目的に使用されることが多い。
【0070】
<被検眼の他覚眼屈折力の取得>
例えば、検者は、眼科装置1を用いて、被検眼の他覚眼屈折力を取得する。なお、本実施例においては、左右眼の測定が同時に行われる。もちろん、左右眼の測定は、異なるタイミングで実施されるようにしてもよい。例えば、一方の被検眼の測定が完了した後に、他方の被検眼の測定が開始されるようにしてもよい。
【0071】
例えば、検者は、被検者に対して眼科装置1の測定光源13を観察するように指示する。例えば、測定光源13は、被検者の瞳孔を含む前眼部を照明し、測定光源13によって照明された前眼部像が検出器21によって検出される。例えば、制御部80は、検出器21によって検出した前眼部像をディスプレイ11に表示する。例えば、検者は、検眼装置1のディスプレイ11に被検者の左右の被検眼が表示されるように眼科装置1の位置を調整する。例えば、制御部80は、ディスプレイ11に被検者の左右の被検眼が表示されるようになると、アライメントが完了した旨をディスプレイ11に表示するようにしてもよい。もちろん、検者が、眼科装置1のディスプレイ11に被検者の左右の被検眼が表示されていることを確認して、アライメントが完了していることを認識してもよい。
【0072】
例えば、アライメントが完了すると、検者によって、コントローラ81が操作され、測定を開始するためのスイッチが選択される。例えば、制御部80は、コントローラ81からの操作信号の出力に基づいて、測定を開始するための測定開始トリガ信号(以下、トリガ信号と記載)が発する。例えば、測定を開始するためのトリガ信号が発せられると、制御部80は、投光光学系10の測定光源13から測定光を出射する。例えば、測定光源13から出射された測定光は、被検眼Eの眼底に投影される。本実施例においては、測定光が左右眼の眼底に照射される。眼底から反射された測定光の反射光は、受光光学系20の検出器21によって検出される。
【0073】
例えば、制御部80は、測定光源13の各測定光源を順に点灯させて、各測定光源による被検眼からの反射光を検出器21によって検出していく。例えば、検出器21からの出力信号は、メモリ82に画像データ(測定画像)として記憶される。なお、本実施例において、左右眼の画像データがそれぞれ取得され、メモリ82に左右眼の画像データ(測定画像)が記憶される。その後、制御部80は、メモリ82に記憶された画像解析して左右眼の第1眼屈折力の値を求める。
【0074】
より詳細に説明する。例えば、制御部80は、測定光源13a(3つの測定光源13a1~13a3)の点灯によって検出された検出結果に基づいて、測定光源13aが配置されている方向における球面情報(球面屈折力)を算出する。例えば、制御部80は、測定光源13aが配置された方向における球面情報を算出する際に、3つの測定光源13a1~13a3の点灯によって取得された測定結果の内、少なくとも1つの測定結果に基づいて、測定光源13aの配置方向における球面情報を取得する。この場合、例えば、制御部80は、3つの測定光源13a1~13a3からそれぞれ取得された各球面情報の平均値を測定光源13aの配置方向における球面情報として取得してもよい。また、この場合、例えば、制御部80は、3つの測定光源13a1~13a3から1つの球面情報を選択し、測定光源13aの配置方向における球面情報として取得してもよい。
【0075】
例えば、上記のようにして、測定光源13aの配置方向における球面情報が取得されると、次いで、制御部80は、上記と同様にして、別の測定光源13b~13hの各配置方向における球面情報をそれぞれ取得していく。
【0076】
図5は、測定光源13の点灯について説明する図である。
図5では、測定光源(複数の測定光源)13の内、通常測定モードで用いられる測定光源について、ハッチング(塗りつぶし)して示している。上記のようにして、測定光源13における各測定光源が順次に点灯され、結果として、測定光源13の全光源が順に点灯されて測定が行われる(全測定光源がハッチング部となっている)。
【0077】
なお、本実施例においては、眼屈折力として、球面屈折力、円柱屈折力、及び乱視軸角度が取得される。例えば、制御部80は、各方向の球面情報が取得されると、各方向の球面情報に基づいて、球面屈折力を取得する。例えば、各方向で取得された球面屈折力の平均値を球面屈折力としてもよい。もちろん、球面屈折力は、各方向の球面屈折力の内、少なくとも1つ以上の球面屈折力に基づいて、取得される構成であってもよい。また、例えば、制御部80は、各方向における球面屈折力(球面屈折力分布)に基づいて、円柱屈折力及び乱視軸角度を取得する。すなわち、例えば、制御部80は、球面屈折力(S)、円柱屈折力(C)、乱視軸角度(A)の眼屈折力を取得する。
【0078】
ここで、例えば、被検眼の眼屈折力は、第1眼屈折力と、第2眼屈折力と、の2通りのパターンで取得される。例えば、第1眼屈折力は、第1球面屈折力と、第1円柱屈折力と、第1乱視軸角度と、をそれぞれ含んでもよい。また、例えば、第2眼屈折力は、第2球面屈折力と、第2円柱屈折力と、第2乱視軸角度と、をそれぞれ含んでもよい。例えば、第1眼屈折力において、第1円柱屈折力は、プラス符号で表される円柱屈折力(つまり、プラス読みの円柱屈折力)である。また、例えば、第1球面屈折力は、このようなプラス符号で表される円柱屈折力に対応する球面屈折力である。同様に、例えば、第2眼屈折力において、第2円柱屈折力は、マイナス符号で表される円柱屈折力(つまり、マイナス読みの円柱屈折力)である。また、例えば、第2球面屈折力は、このようなマイナス符号で表される円柱屈折力に対応する球面屈折力である。
【0079】
本実施例では、左眼の第1眼屈折力と第2眼屈折力、および、右眼の第1眼屈折力と第2眼屈折力が、それぞれに取得される。例えば、左眼に対しては、第1眼屈折力として、第1球面屈折力-1.50D、第1円柱屈折力+0.50D、第1乱視軸角度180°が取得される。また、第2眼屈折力として、第2球面屈折力-1.00D、第2円柱屈折力-0.50D、第2乱視軸角度90°が取得される。例えば、右眼に対しては、第1眼屈折力として、第1球面屈折力-2.50D、第1円柱屈折力+1.50D、第1乱視軸角度180°が取得される。また、第2眼屈折力として、第2球面屈折力-1.00D、第2円柱屈折力-1.50D、第2乱視軸角度90°が取得される。なお、左眼と右眼において、第1円柱屈折力はプラス読みであり、第2円柱屈折力はマイナス読みであるため、互いの符号が反転している。また、第1円柱屈折力と第2円柱屈折力の読み方によって、対応する第1球面屈折力と第2球面屈折力が互いに異なる値をとる。例えば、左眼と右眼の第1眼屈折力と第2眼屈折力は、メモリ82に記憶される。
【0080】
<スクリーニング値の選択>
例えば、制御部80は、被検眼の第1眼屈折力と第2眼屈折力を取得すると、プラス符号(プラス読み)の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力と、マイナス符号(マイナス読み)の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力と、のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を、被検眼に対する屈折異常を判定するためのスクリーニング値として選択する。より詳細には、例えば、制御部80は、第1球面屈折力と第2球面屈折力を比較処理することで、絶対値が最大となる球面屈折力をスクリーニング値として選択する。
【0081】
まず、左眼について説明する。例えば、左眼のプラス読みに対応する第1球面屈折力は-1.50Dであり、左眼のマイナス読みに対応する第2球面屈折力は-1.00Dである。このため、例えば、制御部80は、第1球面屈折力-1.50Dと第2球面屈折力-1.00Dとの絶対値を求め、さらに互いの絶対値を比較処理することで、絶対値が大きいほうの球面屈折力を、スクリーニング値として選択する。例えば、ここでは、マイナス読みに対応する第2球面屈折力がスクリーニング値として選択される。
【0082】
次に、右眼について説明する。例えば、右眼のプラス読みに対応する第1球面屈折力は-2.50Dであり、右眼のマイナス読みに対応する第2球面屈折力は-1.00Dである。このため、例えば、制御部80は、第1球面屈折力-2.50Dと第2球面屈折力-1.00Dとの絶対値を求め、さらに互いの絶対値を比較処理することで、絶対値が大きいほうの球面屈折力を、スクリーニング値として選択する。例えば、ここでは、プラス読みに対応する第1球面屈折力がスクリーニング値として選択される。
【0083】
<屈折異常の判定>
例えば、制御部80は、被検眼のプラス読みまたはマイナス読みに対応するいずれかの球面屈折力をスクリーニング値として選択すると、このスクリーニング値が、被検眼の屈折異常の判定基準である所定の閾値を超えるか否かを判定する。例えば、制御部80は、スクリーニング値が、近視の判定基準である第1閾値を超えるか否かと、遠視の判定基準である第2閾値を超えるか否かと、をそれぞれ判定する。
【0084】
例えば、本実施例では、幼児のスクリーニング検査に対する第1閾値と第2閾値が予め設定されている。例えば、近視の第1閾値は-2.00Dに設定されている。また、例えば、遠視の第2閾値は+2.00Dに設定されている。このため、例えば、制御部80は、被検眼のスクリーニング値が-2.00Dから+2.00Dまでの許容範囲におさまれば、被検眼に屈折異常がないと判定する。また、例えば、制御部80は、被検眼のスクリーニング値が-2.00Dから+2.00Dまでの許容範囲におさまらなければ、被検眼に屈折異常があると判定する。
【0085】
さらに、例えば、制御部80は、被検眼に屈折異常があると判定した場合、被検眼のスクリーニング値が第1閾値または第2閾値のどちらの値を超えているかを判定する。例えば、被検眼のスクリーニング値がマイナス符号である場合には、0.00Dを基準としてマイナス方向に設定された第1閾値(-2.00D)を超えていると判定する。例えば、これによって、制御部80は、被検眼を近視疑いと判定する。また、例えば、被検眼のスクリーニング値がプラス符号である場合には、0.00Dを基準としてプラス方向に設定された第2閾値(+2.00D)を超えていると判定する。例えば、これによって、制御部80は、被検眼を遠視疑いと判定する。なお、このような第1閾値と第2閾値は、検者が任意に設定を変更できてもよい。例えば、制御部80によるこのような屈折異常の判定結果は、メモリ82に記憶される。
【0086】
まず、左眼について説明する。例えば、左眼のスクリーニング値は、マイナス読みに対応する第1球面屈折力-1.50Dである。例えば、制御部80は、このスクリーニング値と、所定の閾値(±2.00Dの許容範囲)と、を比較処理する。一例として、スクリーニング値が許容範囲の上限以下であり、かつ、許容範囲の下限以上であるかを求めてもよい。例えば、ここでは、左眼のスクリーニング値が許容範囲におさまるため、左眼は屈折異常がないと判定される。
【0087】
次に、右眼について説明する。例えば、右眼のスクリーニング値は、プラス読みに対応する第1球面屈折力-2.50Dである。例えば、制御部80は、左眼と同様に、スクリーニング値と、所定の閾値(±2.00Dの許容範囲)と、を比較処理する。例えば、ここでは、右眼のスクリーニング値が許容範囲におさまらず、右眼に屈折異常があると判定される。さらに、右眼のスクリーニング値はマイナス符号であるため、第1閾値(-2.00D)を超えたと判定されるとともに、右眼は近視疑いと判定される。
【0088】
<被検眼の眼屈折力とスクリーニング結果の出力>
例えば、制御部80は、被検眼に対するフォトレフラクション方式の測定で取得した眼屈折力の測定結果と、被検眼の屈折異常の判定結果に基づいたスクリーニング結果と、を出力する。例えば、本実施例では、被検眼の眼屈折力の測定結果として、第1眼屈折力と第2眼屈折力のうち、第2眼屈折力を出力するように、予め設定されている。このため、例えば、被検眼の眼屈折力の測定結果としては、マイナス符号で表される第2円柱屈折力、第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力、および第2乱視軸角度が出力される。また、例えば、本実施例では、被検眼の眼屈折力の測定結果と、スクリーニング結果と、がディスプレイ11に表示される。例えば、被検眼のスクリーニング結果は、被検眼の精密検査の誘導を促すメッセージとして表示される。
【0089】
図6は、ディスプレイ11の表示画面100の一例である。
図6(a)は、被検眼が近視疑いの場合に表示される初期の画面である。
図6(b)は、後述のS.MAX表示ボタン103を操作して、眼屈折力の測定結果の表示形式を変更した場合の画面である。例えば、表示画面100には、被検眼のスクリーニング結果101、被検眼の眼屈折力の測定結果102、S.MAX表示ボタン103、アラートマーク104、等が表示される。
【0090】
例えば、スクリーニング結果101は、被検眼の屈折異常の判定結果に基づいて表示されるメッセージである。一例として、左右眼の少なくとも一方に屈折異常がある場合は、「COMPLETE EYE EXAM RECOMMENDED」が表示される。また、一例として、左右眼のどちらにも屈折異常がない場合は、「SCREENING COMPLETE」が表示される。なお、メッセージの内容はこれに限定されず、検者が被検眼に屈折異常があるかどうかを把握することができる内容であればよい。本実施例では、左眼は屈折異常がないと判定されており、右眼は近視疑いと判定されているため、スクリーニング結果101が「COMPLETE EYE EXAM RECOMMENDED」となる。
【0091】
例えば、測定結果102は、被検眼の眼屈折力の測定結果である。例えば、測定結果102としては、マイナス符号の第2円柱屈折力を含む、第2眼屈折力が表示される。本実施例では、左眼の第2眼屈折力である、第2球面屈折力-1.00Dと、第2円柱屈折力-0.50Dと、第2乱視軸角度90°と、が表示される。また、右眼の第2眼屈折力である、第2球面屈折力-1.00Dと、第2円柱屈折力-1.50Dと、第2乱視軸角度90°と、が表示される。
【0092】
例えば、S.MAX表示ボタン103は、被検眼の眼屈折力の測定結果において、第1眼屈折力と第2眼屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力(第1球面屈折力または第2球面屈折力)を含む眼屈折力を、測定結果102として表示させるためのボタンである。例えば、S.MAX表示ボタン103によって、眼科装置1が第2眼屈折力を測定結果として表示する設定にかかわらず(言い換えると、優先表示する円柱屈折力符号の設定にかかわらず)、絶対値が最大となる球面屈折力を含む眼屈折力が、測定結果102として表示される。
【0093】
アラートマーク104は、被検眼の屈折異常の判定に用いたスクリーニング値(つまり、絶対値が最大の第1球面屈折力または第2球面屈折力)が、所定の閾値におさまっていないことを示すマークである。例えば、本実施例では、被検眼のスクリーニング値が、近視の判定基準である第1閾値と、遠視の判定基準である第2閾値と、のいずれかを超える場合に、S.MAX表示ボタン103上に、アラートマーク104が表示される。例えば、アラートマーク104は、アスタリスクで表示されてもよい。もちろん、アラートマークの内容はこれに限定されず、検者が被検眼に屈折異常があるかどうかを把握することができる内容であればよい。
【0094】
例えば、本実施例では、被検眼の眼屈折力の測定と屈折異常の判定が完了すると、制御部80によって、
図6(a)に例示する画面がディスプレイ11に表示される。例えば、本実施例では、被検眼のマイナス読みに対応する第2眼屈折力が測定結果102として表示されているが、スクリーニング結果101のメッセージは、マイナス読みとプラス読みの双方の円柱屈折力に対応する球面屈折力(第1球面屈折力と第2球面屈折力)の絶対値に基づいて選択されており、被検眼の屈折異常を見逃す可能性は極めて低くなっている。従って、例えば、検者はスクリーニング結果101のメッセージを確認することによって、被検眼に屈折異常があるか否かを容易に判断することができる。
【0095】
なお、例えば、検者は、被検眼の屈折異常の程度、左右眼のいずれに屈折異常があるか、等を確認するために測定結果102を確認すると、左眼の第2球面屈折力-1.00Dと右眼の第2球面屈折力-1.00Dがいずれも±2.00Dの許容範囲を超えていないため、詳細の把握が難しい可能性がある。このため、本実施例では、検者がS.MAX表示ボタン103を押すことによって、測定結果102の表示を、絶対値が最大となる球面屈折力に基づいた測定結果の表示に切り替えることができる。
【0096】
例えば、制御部80は、S.MAX表示ボタン103からの操作信号に基づいて、ディスプレイ11に表示する画面を、
図6(a)に例示する画面から
図6(b)に表示する画面に変更してもよい。例えば、
図6(b)の測定結果102では、右眼において、スクリーニング値として選択した第1球面屈折力-2.50Dと、この第1球面屈折力に対応する第1円柱屈折力+1.50Dと、第1乱視軸角180°と、が表示される。より詳細には、例えば、
図6(b)の測定結果102が、マイナス読みに対応する第2眼屈折力の表示から、プラス読みに対応する第1眼屈折力の表示に切り替わる。また、第1球面屈折力には、アラートマーク104が表示される。これによって、検者は、左眼の第1球面屈折力-1.50Dが±2.00Dの許容範囲におさまっており、左眼に屈折異常がないことを容易に判断できる。また、検者は、右眼の第1球面屈折力-2.50Dが±2.00Dの許容範囲におさまっておらず、右眼が屈折異常であること(ここでは、右眼が近視疑いであること)を容易に判断できる。
【0097】
上記では、被検眼の左眼に屈折異常がなく右眼に近視疑いがある場合の表示画面100を例に挙げたが、被検眼の左眼と右眼のいずれにも屈折異常がない場合の表示画面100についても説明する。
図7は、被検眼に屈折異常がない場合における表示画面100の一例である。なお、
図7のスクリーニング結果101、測定結果102、S.MAX表示ボタン103、アラートマーク104、等は、
図6の表示画面100と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0098】
例えば、制御部80は、被検眼の眼屈折力の測定と屈折異常の判定が完了すると、メモリ82に記憶された測定結果と、屈折異常の判定結果に基づくスクリーニング結果と、をディスプレイ11に表示させる。例えば、被検眼のスクリーニング結果としては、左右眼のどちらにも屈折異常がないため、「SCREENING COMPLETE」のメッセージが表示される。例えば、検者は、スクリーニング結果101のメッセージから、左右眼ともに屈折異常ではないことを容易に判断することができる。
【0099】
以上、説明したように、例えば、本実施例の眼科装置は、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得手段と、第1球面屈折力と第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力と、被検眼に対する屈折異常の判定基準である所定の閾値と、に基づいて、屈折異常を判定する判定手段と、判定手段による判定結果を出力する制御手段と、を備える。例えば、被検眼の眼屈折力は、円柱屈折力をプラス符号で表すプラス読みと、円柱屈折力をマイナス符号で表すマイナス読みと、の2通りで表すことができる。円柱屈折力のプラス読みまたはマイナス読みによって、円柱屈折力に対応した球面屈折力は変化する。このため、例えば、一方の円柱屈折力の読み方では、球面屈折力が屈折異常を判断するための基準を超えないが、他方の円柱屈折力の読み方では、球面屈折力が屈折異常を判断するための基準を超えることが起こりうる。例えば、このような場合には、被検眼の屈折異常を見逃す可能性があり、検者は屈折異常を容易に判断することができない。しかし、例えば、本実施例では、円柱屈折力のそれぞれの読み方に応じた球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を屈折異常の判定に用いることで、屈折異常を容易に判断することができる。なお、この結果として、被検眼の屈折異常の見逃しを低減させることができる。
【0100】
また、例えば、本実施例の眼科装置において、制御手段は、被検眼の眼屈折力を判定結果とともに出力し、被検眼の眼屈折力における円柱屈折力として、プラス符号の第1円柱屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力と、のいずれかを出力するかを設定する設定手段を備え、制御手段は、判定手段が絶対値が最大となる球面屈折力を所定の閾値未満と判定した場合、設定手段が設定した符号の円柱屈折力と、設定手段が設定した符号の円柱屈折力に対応する球面屈折力と、を眼屈折力として出力し、判定手段が絶対値が最大となる球面屈折力を所定の閾値以上と判定した場合、設定手段が設定した符号にかかわらず、絶対値が最大となる球面屈折力と、絶対値が最大となる球面屈折力に対応する円柱屈折力と、を眼屈折力として出力する。例えば、眼科装置では、被検眼の眼屈折力を出力する際に、円柱屈折力をプラス読みまたはマイナス読みのいずれかで出力するように、設定されていることがある。例えば、この場合には、被検眼の円柱屈折力が設定に基づく読み方で出力されるため、この円柱屈折力に対応する球面屈折力が、屈折異常を判断するための基準を超えるか否かを把握しづらい可能性がある。従って、例えば、本実施例では、円柱屈折力のプラス読みとマイナス読みに応じた球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力が基準を超える場合には、被検眼の眼屈折力を、絶対値が最大となる球面屈折力が得られる円柱屈折力の読み方で出力する。これによって、検者は被検眼の屈折異常を容易に判断することができる。
【0101】
また、例えば、本実施例の眼科装置は、被検眼の眼屈折力をフォトレフラクション方式で他覚的に測定する測定手段を備え、測定手段は、光軸中心を基準として経線方向に配置された複数の測定光源を有し、複数の測定光源から出射された測定光を被検眼の眼底に照射する投光光学系と、被検眼の眼底によって反射された測定光の反射光を検出器で検出する受光光学系と、を有し、取得手段は、測定手段による測定結果に基づいて、少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する。例えば、フォトレフラクション方式による測定は、3歳児等の幼児に対する弱視のスクリーニング検査に用いられることがある。例えば、幼児の弱視は早期の治療開始で改善されやすく、スクリーニング検査による早期発見が必要とされている。このため、例えば、眼科装置がフォトレフラクション方式で測定する装置であっても、円柱屈折力のプラス読みとマイナス読みに応じた球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を屈折異常の判定に用いることで、被検眼の屈折異常(ここでは、特に弱視)を見逃す可能性を低減させることができる。
【0102】
<変容例>
本実施例の眼科装置では、被検眼のスクリーニング値が、第1閾値から第2閾値までの許容範囲におさまるかどうかを判定することによって、被検眼の屈折異常を判定することを例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼のスクリーニング値が、近視の第1閾値を超えるか否か、または、遠視の第2閾値を超えるか否か、のいずれかを判定することによって、被検眼の屈折異常を判定してもよい。例えば、この場合には、被検眼のスクリーニング値がマイナス符号かプラス符号かによって、いずれの閾値を超えるか否かの判定を実行するかが決定されてもよい。一例として、被検眼のスクリーニング値がマイナス符号である場合には、近視の第1閾値を超えるか否かの判定のみが実行されてもよい。また、一例として、被検眼のスクリーニング値がプラス符号である場合には、遠視の第2閾値を超えるか否かの判定のみが実行されてもよい。もちろん、被検眼のスクリーニング値がマイナス符号であっても、プラス符号であっても、第1閾値を超えるか否かの判定と、第2閾値を超えるか否かの判定と、の双方が実行されてもよい。
【0103】
本実施例の眼科装置では、被検眼の眼屈折力から、円柱屈折力をマイナス読みで表す場合の第1球面屈折力と、円柱屈折力をプラス読みで表す場合の第2球面屈折力と、を比較処理することによって、被検眼の屈折異常を判定するためのスクリーニング値(つまり、絶対値が最大となる第1球面屈折力または第2球面屈折力)を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼の等価球面屈折力の符号に基づいて、第1球面屈折力と第2球面屈折力のいずれかをスクリーニング値として取得してもよい。
【0104】
例えば、被検眼の等価球面屈折力がプラス符号である場合には、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力をスクリーニング値として取得してもよい。また、例えば、被検眼の等価球面屈折力がマイナス符号である場合には、プラス符号の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力をスクリーニング値として取得してもよい。
【0105】
一例としては、被検眼の第1眼屈折力として、第1球面屈折力+1.00Dと、第1円柱屈折力+1.50Dと、第1乱視軸角度90°とが取得され、被検眼の第2眼屈折力として、第2球面屈折力+2.50Dと、第1円柱屈折力-1.50Dと、第1乱視軸角度180°とが取得された場合、第1眼屈折力と第2眼屈折力のいずれにおいても、等価球面屈折力(SE)は+1.75Dと算出される。例えば、制御部80は、等価球面屈折力がプラス符号となるため、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力+2.50Dを、スクリーニング値として取得してもよい。例えば、このように等価球面屈折力の符号に応じて、第1球面屈折力と第2球面屈折力の選択を変更することによって、結果として、絶対値が最大となる球面屈折力を取得することができる。
【0106】
本実施例の眼科装置では、被検眼の屈折異常を判定するためのスクリーニング値として、絶対値が最大となる第1球面屈折力または第2球面屈折力のいずれかを取得し、これが所定の閾値を超えるか否かに基づいて、屈折異常を判定する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1球面屈折力と第2球面屈折力の双方を所定の閾値と比較することによって、屈折異常を判定する構成としてもよい。すなわち、第1球面屈折力と第2球面屈折力の双方を、屈折異常を判定するためのスクリーニング値として用いてもよい。例えば、この場合、制御部80は、第1球面屈折力と第2球面屈折力の双方を所定の閾値と比較して、少なくとも第1球面屈折力と第2球面屈折力の一方が所定の閾値を超える場合に、屈折異常があると判定してもよい。
【0107】
本実施例の眼科装置では、表示画面100(
図6参照)の測定結果102において、マイナス読みの第2円柱屈折力を含む第2眼屈折力を表示するように予め設定されている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、プラス読みの第1円柱屈折力を含む第1眼屈折力を表示するように予め設定されている構成であってもよい。また、例えば、第1眼屈折力または第2眼屈折力のどちらか一方を表示する設定を、検者が任意に変更できる構成であってもよい。
【0108】
本実施例の眼科装置では、表示画面100(
図6参照)のS.MAX表示ボタン103を押すことによって、絶対値が最大となる球面屈折力(第1球面屈折力または第2球面屈折力)を含む眼屈折力を、測定結果102として表示させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼の屈折異常の判定結果に基づいて、被検眼の第1眼屈折力と第2眼屈折力のいずれを測定結果102として表示させるかが変更される構成であってもよい。例えば、眼科装置1がマイナス読みに対応する第2眼屈折力を表示する設定である場合、被検眼の屈折異常が判定されなければ、測定結果102は第2眼屈折力で表示されてもよい。被検眼の屈折異常が判定された際には、測定結果102が屈折異常の判定に使用したスクリーニング値を含む眼屈折力で表示されてもよい。もちろん、測定結果102としては、第1眼屈折力と第2眼屈折力の両方の値を予め表示するようにしてもよい。
【0109】
本実施例の眼科装置では、被検眼に屈折異常がある場合に、スクリーニング結果102としてメッセージを表示するとともに、アラートマーク104を表示することで、検者に屈折異常の有無を報知する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、メッセージやアラートマークに代えて、測定結果102に表示される球面屈折力の色反転や点滅、アスタリスク以外の記号の表示、等のいずれかの制御を実行する構成であってもよい。また、例えば、メッセージやアラートマークの表示とともに、音声や振動の発生、ランプの点滅、等の制御を実行する構成であってもよい。
【0110】
本実施例の眼科装置1では、プラス符号の第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力と、マイナス符号の第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力と、のうち、絶対値が最大となるいずれかの球面屈折力(ここでは、スクリーニング値)と、所定の閾値と、の比較処理によって屈折異常を判定し、被検眼の眼屈折力とスクリーニング結果をディスプレイ11に表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、眼科装置1は、第1球面屈折力と第2球面屈折力とを取得し、これらのうち、絶対値が最大となるいずれかの球面屈折力をディスプレイ11に表示する構成としてもよい。つまり、被検眼の屈折異常を判定するためのスクリーニング値と所定の閾値との比較処理が、必ずしも実行されない構成であってもよい。もちろん、例えば、眼科装置1は、絶対値が最大となる球面屈折力とともに、これに対応する円柱屈折力、乱視軸角度、等価球面屈折力、等を出力してもよい。
【0111】
なお、例えば、絶対値が最大でない球面屈折力を表示する場合、絶対値が最大でない球面屈折力は屈折異常を判断するための基準を超えないが、絶対値が最大の球面屈折力では屈折異常を判断するための基準を超えることが起こりうるため、被検眼の屈折異常の見逃しが発生する可能性がある。しかし、例えば、絶対値が最大の球面屈折力を表示する場合は、予め0.00Dから最も離れた値としての球面屈折力が表示されるので、検者はディスプレイ11を確認することによって、屈折異常を判断するための基準を超えるか否かを、容易に判断することができる。従って、例えば、特に知見の少ない検者であっても、被検眼の屈折異常の見逃しが発生しにくくなる。
【0112】
このように、例えば、本実施例の眼科装置は、被検眼の眼屈折力として少なくとも球面屈折力と円柱屈折力を取得する取得手段であって、プラス符号の第1円柱屈折力および第1円柱屈折力に対応する第1球面屈折力を取得するとともに、マイナス符号の第2円柱屈折力および第2円柱屈折力に対応する第2球面屈折力を取得する取得手段と、被検眼の眼屈折力を出力する制御手段であって、第1球面屈折力と第2球面屈折力のうち、絶対値が最大となる球面屈折力を出力する制御手段と、を備える。例えば、検者は、このような絶対値が最大となる球面屈折力を確認することによって、被検眼が屈折異常であるかを容易に判断することができる。
【0113】
本実施例では、眼科装置1として、被検眼の眼屈折力をフォトレフラクション方式にて他覚的に測定する装置を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、眼科装置は、被検眼の眼屈折力をフォトレフラクション方式とは異なる方式で他覚的に測定する装置であってもよい。また、例えば、眼科装置は、被検眼の眼屈折力を自覚的に測定する自覚式検眼装置であってもよい。
【0114】
例えば、自覚式検眼装置は、視標光束を被検眼に向けて投影する投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性を変化する矯正光学系を有し、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式測定手段を備えていてもよい。一例として、矯正光学系は、被検眼の眼前に配置される光学素子を切り換えて配置する検眼ユニット(フォロプタ)であってもよい。また、一例として、矯正光学系は、被検眼に向けて視標光束を導光するための光学部材と、被検眼に視標を呈示するための視標呈示部と、間に光学素子を配置し、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変更する構成であってもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 眼科装置
2 筺体
3 呈示窓
10 投光光学系
11 ディスプレイ
13 測定光源
14 ベース
20 受光光学系
21 検出器
25 受光用対物光学系
26 対物レンズ
40 投光光学系
100 表示画面