(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081044
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】整形作業支援システム及び整形作業支援方法
(51)【国際特許分類】
F03B 3/12 20060101AFI20240610BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240610BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20240610BHJP
B23K 37/08 20060101ALN20240610BHJP
B23K 33/00 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
F03B3/12
G01B11/24 A
G06T19/00 600
B23K37/08 D
B23K33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194472
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】中薗 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 博昭
(72)【発明者】
【氏名】星 穣
【テーマコード(参考)】
2F065
3H072
5B050
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065BB05
2F065CC08
2F065QQ13
2F065QQ21
2F065QQ31
2F065RR08
3H072AA02
3H072BB02
3H072BB06
3H072BB40
3H072CC42
5B050AA10
5B050BA09
5B050BA13
5B050DA04
5B050EA09
5B050EA19
5B050EA27
(57)【要約】
【課題】機械構造物の整形作業を簡便且つ効果的に支援する。
【解決手段】実施の形態による整形作業支援システムは、機械構造物の作業対象部位の形状を三次元点群データとして取得する形状取得装置と、形状取得装置により取得された三次元点群データに基づいて所定の画像を生成する情報処理装置と、情報処理装置で生成された画像を表示する表示装置と、を備える。情報処理装置は、形状取得装置により作業対象部位の三次元点群データを取得する取得工程と、取得工程で取得された三次元点群データと予め取得された作業対象部位の三次元形状データとを特定部位を基準に合成する合成工程と、合成工程で合成された三次元点群データと三次元形状データとの間の距離の分布図を含む画像を生成する生成工程と、表示装置により生成工程で生成された画像を表示する表示工程と、を自動的に実施するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者による機械構造物の整形作業を支援する整形作業支援システムであって、
前記機械構造物の作業対象部位の形状を三次元点群データとして取得する形状取得装置と、
前記形状取得装置により取得された前記三次元点群データに基づいて所定の画像を生成する情報処理装置と、
前記情報処理装置で生成された前記画像を表示する表示装置と、を備え、
前記情報処理装置は、前記形状取得装置により前記作業対象部位の前記三次元点群データを取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記三次元点群データと予め取得された前記作業対象部位の三次元形状データとを特定部位を基準に合成する合成工程と、前記合成工程で合成された前記三次元点群データと前記三次元形状データとの間の距離の分布図を含む前記画像を生成する生成工程と、前記表示装置により前記生成工程で生成された前記画像を表示する表示工程と、を自動的に実施するように構成されている、整形作業支援システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記取得工程と、前記合成工程と、前記生成工程と、前記表示工程と、を自動的に繰り返し実施するように構成されている、請求項1に記載の整形作業支援システム。
【請求項3】
前記形状取得装置は、前記作業対象部位の前記三次元点群データを取得可能なように、前記作業者の頭部に装着される、請求項1に記載の整形作業支援システム。
【請求項4】
前記表示装置は、作業中の前記作業者が前記画像を視認可能なように、前記作業者の頭部に装着される、請求項1に記載の整形作業支援システム。
【請求項5】
前記表示装置は、実際の前記作業対象部位と前記画像とが重なり合うように、実際の前記作業対象部位に前記画像を投射して表示する、請求項1に記載の整形作業支援システム。
【請求項6】
前記機械構造物は、水力機械のランナである、請求項1~5のいずれか一項に記載の整形作業支援システム。
【請求項7】
作業者による機械構造物の整形作業を支援する整形作業支援方法であって、
形状取得装置により前記機械構造物の作業対象部位の形状を三次元点群データとして取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記三次元点群データと予め取得された前記作業対象部位の三次元形状データとを特定部位を基準に合成する合成工程と、
前記合成工程で合成された前記三次元点群データと前記三次元形状データとの間の距離の分布図を含む画像を生成する生成工程と、
表示装置により前記生成工程で生成された前記画像を表示する表示工程と、を備え、
情報処理装置により前記取得工程と前記合成工程と前記生成工程と前記表示工程とが自動的に実施される、整形作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、整形作業支援システム及び整形作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力機械のランナ等の機械構造物の組立時や改修時、作業者はハンドグラインダにより機械構造物の整形作業を実施する。ここで、機械構造物の隅肉溶接部をハンドグラインダにより整形する場合、作業者の技量次第では整形精度を安定的に確保できない場合がある。
【0003】
また、一般に、隅肉溶接部の整形作業時は、隅肉の断面形状に対応する凹部が形成されたテンプレートを作業対象部位に当てて、テンプレートと作業対象部位との隙間を目視して、その隙間の大きさで進捗度合いを評価する方法が行われている。しかしながら、隅肉の形状が断面の奥行方向に連続的に変化する場合等には、テンプレートによる形状の管理が困難な場合がある。
【0004】
また、機械要素の改修作業を支援するための改修支援システムを用いて、整形作業を実施する方法も知られている。しかしながら、このような支援システムでは、三次元スキャナを厳密に位置合わせして設置したり、整形作業時に各種装置を操作したりすることを要し、各種装置の設置や操作に手間や時間がかかる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、機械構造物の整形作業を簡便且つ効果的に支援することができる整形作業支援システム及び整形作業支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態による整形作業支援システムは、作業者による機械構造物の整形作業を支援するシステムである。整形作業支援システムは、機械構造物の作業対象部位の形状を三次元点群データとして取得する形状取得装置と、形状取得装置により取得された三次元点群データに基づいて所定の画像を生成する情報処理装置と、情報処理装置で生成された画像を表示する表示装置と、を備える。情報処理装置は、形状取得装置により作業対象部位の三次元点群データを取得する取得工程と、取得工程で取得された三次元点群データと予め取得された作業対象部位の三次元形状データとを特定部位を基準に合成する合成工程と、合成工程で合成された三次元点群データと三次元形状データとの間の距離の分布図を含む画像を生成する生成工程と、表示装置により生成工程で生成された画像を表示する表示工程と、を自動的に実施するように構成されている。
【0008】
また、実施の形態による整形作業支援方法は、作業者による機械構造物の整形作業を支援する方法である。整形作業支援方法は、形状取得装置により機械構造物の作業対象部位の形状を三次元点群データとして取得する取得工程と、取得工程で取得された三次元点群データと予め取得された作業対象部位の三次元形状データとを特定部位を基準に合成する合成工程と、合成工程で合成された三次元点群データと三次元形状データとの間の距離の分布図を含む画像を生成する生成工程と、表示装置により生成工程で生成された画像を表示する表示工程と、を備え、情報処理装置により取得工程と合成工程と生成工程と表示工程とが自動的に実施される。
【発明の効果】
【0009】
本実施の形態によれば、機械構造物の整形作業を簡便且つ効果的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態による整形作業支援システムを示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の整形作業支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、整形作業の作業対象となる機械構造物の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、三次元スキャナにより作業対象部位の三次元点群データを取得する工程を説明するための側面図である。
【
図5】
図5は、三次元点群データと三次元形状データとを合成する工程を説明するための側面図である。
【
図6】
図6は、三次元点群データと三次元形状データとの間の距離の分布図を含む画像の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施の形態による整形作業支援システム1について説明する。整形作業支援システム1は、作業者Wによる機械構造物Sの整形作業を支援するシステムである。
図1に示す例においては、機械構造物Sは、水力機械のランナ2(羽根車)である。
【0013】
ランナ2は、水車等の水力機械において、流入する水によって回転駆動される構造物である。ランナ2は、クラウン3と、バンド4と、複数のランナ羽根5と、を有している。ランナ羽根5は、クラウン3とバンド4との間に設けられる。ランナ羽根5は、周方向に所定の間隔をあけて配置される。各ランナ羽根5は、クラウン3とバンド4とにそれぞれ溶接によって接合される。水力機械において、ランナ2に流入した水は各ランナ羽根5の間に形成された流路を流れ、各ランナ羽根5がこの水から圧力を受けて、ランナ2が回転駆動される。これにより、ランナ2に流入する水のエネルギーが回転エネルギーへと変換される。ランナ2の回転エネルギーは、回転軸を介して発電機に伝達される。
【0014】
本実施の形態による整形作業支援システム1は、このようなランナ2の整形作業を支援するシステムとして用いられてもよい。より具体的には、整形作業支援システム1は、ランナ2の組立時において、ランナ羽根5をクラウン3とバンド4とに溶接する溶接作業の際に用いられてもよい。なお、整形作業支援システム1は、この例に限られず、他の用途に用いられてもよい。例えば、整形作業支援システム1は、ランナ羽根5の一部が壊食により損傷した場合、その損傷部分を改修する際に用いられてもよい。また、機械構造物Sは、水力機械のランナ2に限られない。すなわち、整形作業支援システム1は、水力機械のランナ2以外の機械構造物Sの整形作業の際に用いられてもよい。例えば、整形作業支援システム1は、蒸気タービンの羽根車の羽根や渦巻きポンプの羽根車の羽根等の羽根構造物の整形作業の際に用いられてもよい。また、整形作業支援システム1は、その他の任意の機械構造物の整形作業の際に用いられてもよい。
【0015】
図1及び
図2に示すように、整形作業支援システム1は、三次元スキャナ10(形状取得装置の一例)と、情報処理装置20と、表示装置30と、を備えている。
【0016】
三次元スキャナ10は、機械構造物Sの作業対象部位Saの形状を三次元点群データとして取得するように構成されている。三次元点群データは、作業対象部位Saの形状を点群の三次元座標値によって表すデータである。三次元スキャナ10は、作業対象部位Saの三次元形状を検出し、その三次元形状から点群を抽出し、その点群の三次元座標値を特定して三次元点群データを作成する。三次元スキャナ10は、作業対象部位Saの三次元形状を非接触で光学的に検出するように構成されていてもよい。
図1に示す例においては、作業対象部位Saは、ランナ羽根5である。
【0017】
三次元スキャナ10は、任意の位置に設置されてもよい。例えば、三次元スキャナ10は、作業対象部位Saの三次元点群データを取得可能なように、作業者Wの頭部に装着されてもよい。
図1に示す例においては、三次元スキャナ10は、作業者Wの頭部に作業帽を介して装着されている。このように三次元スキャナ10を作業者Wの頭部に装着することで、作業中に整形作業を妨げることなく、簡便に作業対象部位Saの三次元点群データを取得することができる。
【0018】
なお、三次元スキャナ10は、作業対象部位Saの三次元点群データを取得可能であれば、作業者Wのその他の任意の位置に装着されてもよい。例えば、三次元スキャナ10は、作業者Wの肩や腕に装着されてもよい。また例えば、三次元スキャナ10は、タブレット端末等の情報処理端末に組み込まれていてもよい。作業者Wは、作業中にタブレット端末等の情報処理端末を取り出して、情報処理端末に組み込まれた三次元スキャナ10によって作業対象部位Saを撮影することで、作業対象部位Saの三次元点群データを取得してもよい。
【0019】
情報処理装置20は、三次元スキャナ10及び表示装置30に電気的に接続されている。
図1に示すように、情報処理装置20は、配線を介して三次元スキャナ10及び表示装置30に接続されていてもよい。情報処理装置20は、三次元スキャナ10により取得された三次元点群データに基づいて所定の画像を生成するように構成されている。情報処理装置20は、コンピュータであってもよく、CPU、ROM、RAM、ディスプレイ、三次元スキャナ10及び表示装置30に接続されるインターフェース等を有していてもよい。情報処理装置20の機能構成の説明は後述する。
【0020】
情報処理装置20は、
図1に示すように、作業者Wの近くの床上に設置されてもよいし、作業者Wの任意の位置に装着されてもよい。また、情報処理装置20は、三次元スキャナ10や表示装置30と一体化していてもよい。例えば、情報処理装置20は、三次元スキャナ10に組み込まれていてもよいし、表示装置30に組み込まれていてもよい。また例えば、タブレット端末等の情報処理端末に三次元スキャナ10、情報処理装置20及び表示装置30がそれぞれ組み込まれ、情報処理端末として一体化されていてもよい。
【0021】
表示装置30は、情報処理装置20で生成された画像を表示するように構成されている。後述するように、表示装置30は、情報処理装置20で生成された三次元点群データと三次元形状データとの間の距離の分布図を含む画像を表示する。表示装置30は、作業中の作業者Wが画像を視認可能なように、作業者Wの頭部に装着されてもよい。
図1に示す例においては、表示装置30は、透過型のヘッドマウントディスプレイである。この場合、作業者Wは、作業中、ヘッドマウントディスプレイのディスプレイ部に表示される画像を視認することができるとともに、当該ディスプレイ部を透過して作業対象部位Saを視認することができる。このため、作業者Wは、表示装置30に表示される画像と実際の作業対象部位Saとを見比べながら、整形作業を実施することができる。
【0022】
なお、表示装置30は、ヘッドマウントディスプレイに限られず、作業中の作業者Wが画像を視認可能であれば、その他の任意の装置が用いられてもよい。例えば、表示装置30は、情報処理装置20で生成された画像を投射するプロジェクタであってもよい。この場合、表示装置30は、作業中の作業者Wが画像を視認可能なように、実際の作業対象部位Saの近くの壁面に画像を投射して表示してもよい。また、表示装置30は、実際の作業対象部位Saと情報処理装置20で生成された画像とが重なり合うように、実際の作業対象部位Saに画像を投射して表示してもよい。
【0023】
次に、情報処理装置20の機能構成について説明する。
図2に示すように、情報処理装置20は、データ取得部21と、データ合成部22と、データ生成部23と、データ表示部24と、を有している。これらの各機能部分の処理は、例えば、情報処理装置20のCPUがROMに格納されたコンピュータプログラムをRAMに展開して演算処置を実行することで実現される。
【0024】
データ取得部21は、三次元スキャナ10に電気的に接続されている。データ取得部21は、三次元スキャナ10により作業対象部位Saの三次元点群データを取得する取得工程を実施するように構成されている。この三次元点群データは、作業対象部位Saを含む機械構造物Sの三次元点群データであってもよい。この取得工程で取得された三次元点群データは、データ合成部22に出力される。また、データ取得部21は、外部からの各種情報も取得するように構成されている。データ取得部21は、作業対象部位Saの三次元形状データを予め取得しておいてもよい。例えば、データ取得部21は、作業対象部位Saを含む機械構造物Sの3DCADモデルを読み込んで、その3DCADモデルから機械構造物Sの三次元形状データを取得してもよい。この三次元形状データは、機械構造物Sの設計形状、すなわち、整形作業を実施した後の仕上がり形状を示す形状データであってもよい。この予め取得された三次元形状データも、データ合成部22に出力される。
【0025】
データ合成部22は、取得工程で取得された三次元点群データと予め取得された作業対象部位Saの三次元形状データとを特定部位を基準に合成する合成工程を実施するように構成されている。この特定部位は、機械構造物Sの作業対象部位Sa以外の部位であってもよい。例えば、特定部位は、機械構造物Sの作業対象部位Sa以外の面部分であってもよい。この場合、データ合成部22は、三次元点群データの点群から面部分を抽出するとともに、三次元形状データからも面部分を抽出してもよい。そして、データ合成部22は、三次元点群データの面部分と対応する三次元形状データの面部分とが一致するように、三次元点群データと三次元形状データとを合成してもよい。これにより、三次元点群データと三次元形状データとが重なり合うように位置合わせされる(
図5参照)。合成工程で合成された三次元点群データと三次元形状データは、データ生成部23に出力される。
【0026】
データ生成部23は、合成工程で合成された三次元点群データと三次元形状データとの間の距離の分布図を含む画像を生成する生成工程を実施するように構成されている。この分布図は、三次元点群データと三次元形状データとの間の距離の数値の分布を表す図である。この分布図は、作業中の作業対象部位Saの形状と作業対象部位Saの仕上がり形状との空間的差異を表しているということもできる。距離の数値は、色の違いや色の濃淡で表されてもよい(
図6参照)。例えば、距離の数値が比較的大きい場合はその領域を赤色で表示し、距離の数値が比較的小さい場合はその領域を青色で表示してもよい。また例えば、距離の数値が比較的大きい場合はその領域を濃い色で表示し、距離の数値が比較的小さい場合はその領域を薄い色で表示してもよい。画像は、分布図と三次元形状データとを含んでいてもよい。画像において、分布図は、作業対象部位Saの三次元形状データ上に重ねて配置されていてもよい(
図6参照)。生成工程で生成された画像は、データ表示部24に出力される。
【0027】
データ表示部24は、表示装置30に電気的に接続されている。データ表示部24は、表示装置30により生成工程で生成された画像を表示する表示工程を実施するように構成されている。表示装置30が透過型のヘッドマウントディスプレイである場合、データ表示部24は、ヘッドマウントディスプレイのディスプレイ部に画像を表示させる。作業者Wは、作業中、ヘッドマウントディスプレイのディスプレイ部に表示される画像を視認することができる。また、作業者Wは、その画像を視認しつつ、当該ディスプレイ部を透過して作業対象部位Saを視認することができる。このため、作業者Wは、表示装置30に表示される画像と実際の作業対象部位Saとを見比べながら、整形作業を実施することができる。
【0028】
情報処理装置20は、上述した取得工程と、上述した合成工程と、上述した生成工程と、上述した表示工程と、を自動的に実施するように構成されている。すなわち、情報処理装置20は、途中で人手による操作を伴わずに各工程を実施するように構成されている。また、情報処理装置20は、各工程を自動的に繰り返し実施するように構成されていてもよい。すなわち、情報処理装置20は、整形作業中に各工程を順次実施し、最新の状態の分布図を含む画像を表示装置30に表示するようにしてもよい。これにより、作業者Wは、作業中に、整形作業の進捗度合いを随時確認することができる。
【0029】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、
図3~
図6を参照して、上述した整形作業支援システム1を用いて、作業者Wによる機械構造物Sの整形作業を支援する整形作業支援方法について説明する。
【0030】
図3は、整形作業の作業対象となる機械構造物Sの一例を示す図である。
図3に示す機械構造物Sは、第1板部材41と第2板部材42とが隅肉溶接部43で接合されて形成されたL字状の構造物40である。
図3に示す例においては、評価対象部位Saは、隅肉溶接部43である。この隅肉溶接部43をハンドグラインダにより切削し、設計形状になるように整形作業を行う例を用いて説明する。
【0031】
整形作業を行う際、まず、データ取得部21により取得工程を実施する。取得工程においては、三次元スキャナ10により評価対象部位Saの三次元点群データを取得する。より具体的には、
図4に示すように、三次元スキャナ10により、評価対象部位Saである隅肉溶接部43の形状を検出して、隅肉溶接部43の三次元点群データを取得する。ここで、三次元スキャナ10により、構造物40全体の形状を検出してもよいし、隅肉溶接部43を含む構造物40の一部分の形状を検出してもよい。例えば、三次元スキャナ10により、隅肉溶接部43とその周囲の面部分の形状を検出してもよい。
【0032】
続いて、データ合成部22により合成工程を実施する。合成工程においては、取得工程で取得された三次元点群データと予め取得された作業対象部位Saの三次元形状データとを特定部位を基準に合成する。ここで、特定部位は、第1板部材41の三次元スキャナ10の側に位置する面部分と第2板部材42の三次元スキャナ10の側に位置する面部分であってもよい。
図5において、破線部は、三次元スキャナ10により取得された三次元点群データ50を示し、実線部は、予め取得された構造物40の三次元形状データ60を示す。
【0033】
図5に示す三次元点群データ50は、第1板部材41の三次元スキャナ10の側に位置する面部分の点群データ51と、第2板部材42の三次元スキャナ10の側に位置する面部分の点群データ52と、隅肉溶接部43の三次元スキャナ10の側に位置する面部分の点群データ53と、を含んでいる。
【0034】
図5に示す三次元形状データ60は、構造物40の3DCADモデルを読み込んで得た構造物40の設計形状であって、構造物40全体の仕上がり形状である。ここで、三次元形状データ60は、構造物40全体の形状でもよいし、隅肉溶接部43を含む構造物40の一部分の形状であってもよい。この構造物40の三次元形状データ60は、第1板部材41の形状データ61と、第2板部材42の形状データ62と、隅肉溶接部43の形状データ63と、を含んでいる。第1板部材41の形状データ61は、三次元スキャナ10の側に位置する面部分の形状データ61sを有している。第2板部材42の形状データ62は、三次元スキャナ10の側に位置する面部分の形状データ62sを有している。隅肉溶接部43の形状データ63は、三次元スキャナ10の側に位置する面部分の形状データ63sを有している。
【0035】
図5に示すように、合成工程において、三次元点群データ50の第1板部材41の面部分の点群データ51と三次元形状データ60の第1板部材41の面部分の形状データ61sとが一致し、且つ三次元点群データ50の第2板部材42の面部分の点群データ52と三次元形状データ60の第2板部材42の面部分の形状データ62sとが一致するように、三次元点群データ50と三次元形状データ60とを合成してもよい。この場合、
図5の実線矢印に示すように、三次元点群データ50の隅肉溶接部43の面部分の点群データ53と三次元形状データ60の隅肉溶接部43の面部分の形状データ63sとの間には、距離が設けられる。
【0036】
次に、データ生成部23により生成工程を実施する。生成工程においては、合成工程で合成された三次元点群データ50と三次元形状データ60との間の距離の分布
図Mを含む画像を生成する。より具体的には、各位置において三次元点群データ50と三次元形状データ60との間の距離を算出し、各距離の数値の分布を表す分布
図Mを含む画像を生成する。
図6に示すように、この画像は、分布
図Mと三次元形状データ60とを含んでいてもよい。
図6に示す例においては、画像において、分布
図Mは、構造物40の三次元形状データ60と重なるように配置されている。より具体的には、分布
図Mは、作業対象部位Saである隅肉溶接部43の形状データ63上に重ねて配置されている。
【0037】
その後、データ表示部24により表示工程を実施する。表示工程においては、表示装置30により、生成工程で生成された画像を表示する。より具体的には、表示装置30が透過型のヘッドマウントディスプレイである場合、
図6に示すような分布
図Mと三次元形状データ60とを含む画像が、ヘッドマウントディスプレイのディスプレイ部に表示される。作業者Wは、作業中、ヘッドマウントディスプレイのディスプレイ部に表示される画像を視認することができる。また、作業者Wは、その画像を視認しつつ、当該ディスプレイ部を透過して作業対象部位Saを視認することができる。このため、作業者Wは、表示装置30に表示される画像と実際の作業対象部位Saとを見比べながら、整形作業を実施することができる。
【0038】
上述した取得工程と、上述した合成工程と、上述した生成工程と、上述した表示工程と、は、情報処理装置20により自動的に実施される。このため、作業者Wは、途中で整形作業支援システム1の各種装置の操作を行うことなく、構造物40の整形作業を実施することができる。また、各工程は、情報処理装置20により自動的に繰り返し実施されてもよい。この場合、整形作業中に、画像の分布
図Mが最新の状態に随時更新される。このため、作業者Wは、作業中に、整形作業の進捗度合いを随時確認することができる。
【0039】
このように本実施の形態によれば、情報処理装置20は、上述した取得工程と、上述した合成工程と、上述した生成工程と、上述した表示工程と、を自動的に実施するように構成されている。このことにより、機械構造物Mの整形作業時に、上述した分布
図Mを含む画像が、表示装置30に自動的に表示される。このため、作業者Wは、表示装置30に表示される画像と実際の作業対象部位Saとを見比べながら、整形作業を実施することができる。また、作業者Wは、途中で整形作業支援システム1の各種装置の操作を行うことなく、機械構造物Mの整形作業を実施することができる。このため、整形作業支援システム1により、機械構造物Mの整形作業を簡便且つ効果的に支援することができる。
【0040】
とりわけ、本実施の形態によれば、情報処理装置20は、取得工程で取得された三次元点群データと予め取得された作業対象部位Saの三次元形状データとを特定部位を基準に合成する合成工程を実施するように構成されている。このことにより、三次元スキャナ10により取得された三次元点群データと作業対象部位Saの三次元形状データとの位置合わせが自動的に行われる。このため、機械構造物Mの整形作業時に、作業者Wが、三次元点群データと三次元形状データとを位置合わせすることを不要にすることができる。また、三次元点群データと三次元形状データとを重ね合わせるために、三次元スキャナ10を厳密に位置合わせして設置すること等も不要にすることができる。このため、整形作業支援システム1により、機械構造物Mの整形作業を簡便に支援することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、情報処理装置20は、上述した取得工程と、上述した合成工程と、上述した生成工程と、上述した表示工程と、を自動的に繰り返し実施するように構成されている。このことにより、機械構造物Mの整形作業中に各工程が順次実施され、最新の状態の分布
図Mを含む画像が表示装置30に表示される。このため、作業者Wは、作業中に、整形作業の進捗度合いを随時確認することができる。このため、整形作業支援システム1により、機械構造物Mの整形作業をより一層効果的に支援することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、三次元スキャナ10は、作業対象部位Saの三次元点群データを取得可能なように、作業者Wの頭部に装着される。このことにより、作業者Wは、作業中に整形作業を妨げることなく、簡便に作業対象部位Saの三次元点群データを取得することができる。また、三次元スキャナ10の設置を簡便に行うことができる。このため、整形作業支援システム1により、機械構造物Mの整形作業をより一層簡便に支援することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、表示装置30は、作業中の作業者Wが画像を視認可能なように、作業者Wの頭部に装着される。このことにより、作業者Wは、作業中に、簡便に情報処理装置20で生成された画像を視認することができる。また、表示装置30の設置を簡便に行うことができる。このため、整形作業支援システム1により、機械構造物Mの整形作業をより一層簡便に支援することができる。
【0044】
また、本実施の形態において、表示装置30は、実際の作業対象部位Saと情報処理装置20で生成された画像とが重なり合うように、実際の作業対象部位Sa上に画像を投射して表示してもよい。この場合、作業者Wは、作業中に、表示装置30に表示される画像と実際の作業対象部位Saとの見比べを容易に行うことができる。このため、整形作業支援システム1により、機械構造物Mの整形作業をより一層効果的に支援することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、機械構造物Sは、水力機械のランナ2である。すなわち、本実施の形態による整形作業支援システム1は、ランナ2の組立時や改修時における整形作業を支援するシステムとして用いることができる。本実施の形態による整形作業支援システム1は、このような水力機械のランナ2の整形作業の支援に好適に用いることができる。
【0046】
以上述べた実施の形態によれば、機械構造物の整形作業を簡便且つ効果的に支援することができる。
【0047】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1:整形作業支援システム、2:ランナ、5:ランナ羽根、10:三次元スキャナ、20:情報処理装置、30:表示装置、40:構造物、43:隅肉溶接部、50:三次元点群データ、60:三次元形状データ、M:分布図、S:機械構造物、Sa:作業対象部位、W:作業者