(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081051
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】液体処理部品
(51)【国際特許分類】
B01F 25/452 20220101AFI20240610BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20240610BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20240610BHJP
【FI】
B01F25/452
B01F23/23
B01F23/2375
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194484
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】516236090
【氏名又は名称】株式会社フジファインズ
(71)【出願人】
【識別番号】512004648
【氏名又は名称】株式会社リスニ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】武居 廣雄
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB04
4G035AC26
4G035AE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より多くの貫通流路を設けつつも、ねじ部材の総数を減ずることができ、また、各貫通流路に配置するためのねじ部材のレイアウトが単純化されることにより、キャビテーション効率に優れた液体処理部品を提供する。
【解決手段】部品本体に貫通流路9A,9Bが複数形成され、その少なくとも一部のものは衝突ロッドが配置され衝突ロッド付き流路として構成される。そして、それら衝突ロッド付き流路の互いに隣接する2以上のものにおいて衝突ロッドを、部品本体の一部をなす壁部を貫通する形で、それら隣接する貫通流路9A,9Bにまたがって配置される一体衝突ロッドとして形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面が液体の流入端とされ第二主面が液体の流出端とされた部品本体に対し、前記流入端に開口する流入口と前記流出端に開口する流出口とをつなぐ貫通形態に形成された貫通流路が複数形成され、
複数の前記貫通流路の2以上のものは、外周面にキャビテーション凹凸部を有する衝突ロッドが配置された衝突ロッド付き流路とされ、かつそれら衝突ロッド付き流路の互いに隣接する2以上のものにおいて前記衝突ロッドは、互いに隣接する貫通流路を区画する前記部品本体の一部をなす壁部を貫通する形で、それら隣接する貫通流路にまたがって配置される一体衝突ロッドを形成していることを特徴とする液体処理部品。
【請求項2】
前記キャビテーション凹凸部は前記衝突ロッドの外周面に形成された雄ねじ部とされ、前記一体衝突ロッドは前記部品本体の周側面から前記貫通流路の軸線方向と交差する向きに前記部品本体に対してねじ込まれるねじ部材として構成されている請求項1記載の液体処理部品。
【請求項3】
前記部品本体には前記ねじ部材を挿入するためのねじ挿通孔が、前記周側面に開口するとともに互いに隣接する複数の前記貫通流路を順次貫く形で形成されるとともに、
前記ねじ挿通孔の内周面は、前記ねじ部材の挿入方向における一部区間のみが、前記ねじ部材に形成された前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部とされ、残余の区間が前記雄ねじ部よりも径大の円筒面とされている請求項2記載の液体処理部品。
【請求項4】
前記周側面からみて最遠の前記貫通流路の内周面には、前記ねじ挿通孔に挿通された前記ねじ部材の脚部先端部を収容する脚部先端収容凹部が前記ねじ挿通孔の一部として形成され、前記ねじ挿通孔の内周面において、前記脚部先端収容凹部の内周面のみが前記雌ねじ部とされている請求項3記載の液体処理部品。
【請求項5】
前記部品本体は樹脂製であり、前記衝突ロッドは前記樹脂本体に対しインサート成型により一体化されている請求項1記載の液体処理部品。
【請求項6】
前記部品本体は円柱状に形成され、複数の前記貫通流路は前記部品本体の中心軸線方向に各々貫通形成されるとともに、前記中心軸線から半径方向にて第一の距離に断面中心が存する第一貫通流路と、前記第一の距離より大きい第二の距離に断面中心が存する第二貫通流路とが、それぞれ前記中心軸線周りに複数個形成されており、前記一体衝突ロッドは、前記中心軸線周りにて同一の角度位置に存する前記第一貫通流路と前記第二貫通流路との対にまたがる形で配置されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液体処理部品。
【請求項7】
前記第一貫通流路と前記第二貫通流路は前記中心軸線周りに互いに等しい角度間隔かつ同じ角度位置にて各々複数個設けられ、前記一体衝突ロッドは前記中心軸線周りにて互いに対応する角度位置に存する前記第一貫通流路と前記第二貫通流路との対にそれぞれまたがる形で配置されている請求項6記載の液体処理部品。
【請求項8】
前記中心軸線周りにおいて前記第二貫通流路が前記第一貫通流路より数的に多く配置されるとともに、前記第二貫通流路は一部のものが前記第一貫通流路に対し互いに対応する角度位置に形成されするとともに、前記一体衝突ロッドは、それら互いに対応する角度位置に存する前記第一貫通流路と前記第二貫通流路との対にまたがる形で配置されている請求項6記載の液体処理部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気体を溶存させた液体をキャビテーション処理するための液体処理部品に関する。
【背景技術】
【0002】
水の流路にベンチュリやオリフィスにより絞り部を設け、水が高流速化して通過する際の減圧効果により溶存空気を微細気泡として析出させる水処理部材が種々提案されている。特に、特許文献1~4に開示された方式は、流路の途中にねじ部材を配置し、そのねじ谷、あるいは対向するねじ部材間に形成されたギャップにて水流のさらなる高速化を図るものであり、キャビテーション効率を向上させてより高密度にナノバブルを発生できる旨が謳われている。また、特許文献3,4においては、水処理部材に貫通流路を複数設け、そのそれぞれにねじ部材を個別に設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2016/178436号公報
【特許文献2】WO2016/195116号公報
【特許文献3】WO2013/011570号公報
【特許文献4】特許6182715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3,4の構成では複数の貫通流路のそれぞれに、独立したねじ部材が個別に設けられている。しかし、当該の構成では、貫通流路の個数が多い場合に、独立したねじ部材の個数が増加したり、各貫通流路に配置するためのねじ部材のレイアウトが複雑化したりする、といった問題を生じ、貫通流路の個数を増加させる上で限界があった。
【0005】
本発明の課題は、より多くの貫通流路を設けつつも、ねじ部材の総数を減ずることができ、また、各貫通流路に配置するためのねじ部材のレイアウトの単純化を図ることにより、キャビテーション効率に優れた液体処理部品をより単純な構成にて実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体処理部品は、第一主面が液体の流入端とされ第二主面が液体の流出端とされた部品本体に対し、流入端に開口する流入口と流出端に開口する流出口とをつなぐ貫通形態に形成された貫通流路が複数形成され、複数の貫通流路の2以上のものは、外周面にキャビテーション凹凸部を有する衝突ロッドが配置された衝突ロッド付き流路とされ、かつそれら衝突ロッド付き流路の互いに隣接する2以上のものにおいて衝突ロッドは、互いに隣接する貫通流路を区画する部品本体の一部をなす壁部を貫通する形で、それら隣接する貫通流路にまたがって配置される一体衝突ロッドを形成していることを特徴とする。
【0007】
上記本発明の液体処理部品の構成によると、部品本体に貫通流路が複数形成され、その少なくとも一部のものは衝突ロッドが配置され衝突ロッド付き流路として構成される。そして、それら衝突ロッド付き流路の互いに隣接する2以上のものにおいて衝突ロッドを、部品本体の一部をなす壁部を貫通する形で、それら隣接する貫通流路にまたがって配置される一体衝突ロッドとして形成する。これにより、1本の衝突ロッドが2以上の貫通流路を受け持つことができるようになり、ねじ部材の総数を減ずることができる。また、各貫通流路に配置するためのねじ部材のレイアウトの単純化を図ることが可能となる。
【0008】
キャビテーション凹凸部は衝突ロッドの外周面に形成された雄ねじ部とすることができ、一体衝突ロッドは部品本体の周側面から貫通流路の軸線方向と交差する向きに部品本体に対してねじ込まれるねじ部材として構成することができる。衝突ロッドをねじ部材として構成することにより、ねじ谷部での流速増加効果が顕著となり、キャビテーション効果を高めることができる。
【0009】
部品本体には、ねじ部材を挿入するためのねじ挿通孔を、周側面に開口するとともに互いに隣接する複数の貫通流路を順次貫く形で形成することができる。ねじ挿通孔の内周面と脚部先端収容凹部の内周面は、ねじ部材の挿入方向における一部区間のみを、ねじ部材に形成された雄ねじ部と螺合する雌ねじ部とすることができ、残余の区間を雄ねじ部よりも径大の円筒面とすることができる。この構成によると、一体衝突ロッドを挿入するためのねじ挿通孔の一部区間にのみ雌ねじ部が形成されるから、ねじ挿通孔への雌ねじ加工を簡略化することができる。また、雌ねじ部が形成されない部分(残余の区間)は雄ねじ部よりも径大の円筒面とされるので、ねじ挿通孔にねじ部材をねじ込む際の雄ねじ部と雌ねじ部の螺合区間長が縮小され、ねじを組み付ける際の抵抗力を軽減できる。
【0010】
この場合、前記の周側面からみて最遠の貫通流路の内周面には、ねじ挿通孔に挿通されたねじ部材の脚部先端部を収容する脚部先端収容凹部をねじ挿通孔の一部として形成できる。そしてねじ挿通孔の内周面は、脚部先端収容凹部の内周面のみを雌ねじ部とすることができる。このように構成することで、ねじを組み付ける際の抵抗力を軽減する効果に加え、ねじ部材は脚部先端部が雌ねじ部と螺合することにより軸線と直交する向きへの位置決め精度が高められる、という効果も新たに達成することができる。
【0011】
部品本体の材質は特に限定されないが、部品本体は例えば樹脂製とすることができる。この場合、上記のようにねじ挿通孔を形成し、衝突ロッドを樹脂本体に対しインサート成型により一体化することもできる。一体衝突ロッドを採用することにより、2以上の貫通流路について衝突ロッドを別々に配置する構成と比較し、各貫通流路への衝突ロッドの位置決め精度を高めることができる。
【0012】
部品本体は円柱状に形成でき、複数の貫通流路は部品本体の中心軸線方向に各々貫通形成できる。この場合、中心軸線から半径方向にて第一の距離に断面中心が存する第一貫通流路と、第一の距離より大きい第二の距離に断面中心が存する第二貫通流路とを、それぞれ中心軸線周りに複数個形成でき、一体衝突ロッドは、中心軸線周りにて同一の角度位置に存する第一貫通流路と第二貫通流路との対にまたがる形で配置することができる。円柱状の部品本体に対し半径方向における内側に第一貫通流路を、外側に第二貫通流路をそれぞれ軸線周りに配列形成することで、部品本体が配置される管路内にて内側領域に集中しやすい流れを、管壁摩擦の影響により流速が低下しやすい管路外側領域に強制分配することができる。その結果、半径方向にて異なる位置に形成される第一貫通流路と第二貫通流路との間の流速差を減ずることができ、管路内の内側(第一貫通流路)と外側第二貫通流路とのいずれにおいても良好なキャビテーション効果を達成することができる。
【0013】
この場合、第一貫通流路と第二貫通流路は中心軸線周りに互いに等しい角度間隔かつ同じ角度位置にて各々複数個設けることができる。この場合、一体衝突ロッドは中心軸線周りにて互いに対応する角度位置に存する第一貫通流路と第二貫通流路との対にそれぞれまたがる形で配置することができる。この構成では、第一貫通流路と第二貫通流路の全てについて、衝突ロッドを一体衝突ロッドとして形成すればよく、液体処理部品の構成簡略化にさらに貢献する。
【0014】
一方、中心軸線周りにおいて第二貫通流路を第一貫通流路より数的に多く配置することも可能である。このようにすると、管路外側領域への流れの強制分配効果を高めることができる。この場合、第二貫通流路は一部のものが第一貫通流路に対し互いに対応する角度位置に形成され、一体衝突ロッドを、それら互いに対応する角度位置に存する第一貫通流路と第二貫通流路との対にまたがる形で配置すればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の作用及び効果の詳細については、「課題を解決するための手段」の欄にすでに記載したので、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の液体処理部品の一実施形態を、管路をなすノズルケーシングに組付けた状態にて示す断面図。
【
図2】
図1から液体処理部品を取り出して示す斜視図。
【
図3】
図2の液体処理部品の部品本体の詳細を示す図。
【
図4】
図3の部品本体に一体衝突ロッドをなすねじ部材を組みつけ、液体処理部品となした状態にて示す図。
【
図5】一体衝突ロッドをなすねじ部材のねじ挿通孔の内周面のうち、脚部先端収容凹部にのみ雌ねじ部を形成した構成例を示す断面図。
【
図6】一体衝突ロッドをなすねじ部材のねじ挿通孔の内周面の中間区間にも雌ねじ部を形成した構成例を示す断面図。
【
図7】液体処理部品を管路をなす筐体に2つ以上重ねた状態で組付けた実施形態を示す断面図。
【
図8】
図7の構造において、重ね合わせた液体処理部品を取り出して示す断面図。
【
図9】
図4の液体処理部品から中心流通孔を省略した変形例を示す図。
【
図10】
図4の液体処理部品の中心流通孔を複数個に分割形成した変形例を示す図。
【
図11】
図4の液体処理部品の構成について第一貫通流路の個数を間引いた変形例を示す図。
【
図12】
図4の液体処理部品の構成について第一貫通流路と第二貫通流路の軸線周りの個数を4つに減じた変形例を示す図。
【
図13】部品本体に一体衝突ロッドをインサート成型により一体化した液体処理部品の構成を示す図。
【
図14】部品本体を矩形形状とした液体処理部品の構成例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態をなす液体処理部品を組み込んで得られる液体処理ノズルの一例を示すものである。液体処理ノズル1000は、一端に流入側開口部54が、他端に流出側開口部55が形成された貫通形態のケーシング流路部56を有するノズルケーシング50を備える。ノズルケーシング50の流入側開口部54の形成側端部及び流出側開口部55の形成側端部には、水道配管(図示せず)等への接続継手部51,52が形成されている。ノズルケーシング50は金属配管部材であり、流入側の接続継手部52は外周面に工具係合部53が形成された雌ねじ継手部とされ、流出側の接続継手部51は雄ねじ継ぎ手とされている。
【0018】
本実施形態においてノズルケーシング50は、円筒状に形成された流出側の本体部50bと、外周面に工具係合部53が形成された流入側の押さえ部材50aとの2部分からなる。本体部50bの流入側開口内周面には雌ねじ部50cが形成されている。一方、押さえ部材50aの流出側端部外周面には雄ねじ部50dが形成されており、その基端位置にはオーリング50eがはめ込まれている。オーリング50eがはめ込まれる雄ねじ部50dの基端部外周面と、本体部50bの雌ねじ部50cの開口端側内周面には、それぞれねじ山が形成されておらず、オーリング50eが該位置でラジアル方向に圧縮されるように隙間量が調整されている。また、押さえ部材50aを本体部50bに締めこむことにより、工具係合部53の端縁が本体部50bの端縁と重なるように、雌ねじ部50cのねじ長及び雄ねじ部50dのねじ長が設定されている。
【0019】
本体部50bの雌ねじ部50cよりも軸線方向奥側には、段付き面56bにより内径を拡大することにより拡径部56aが形成され、ここに円筒状の液体処理部品1が隙間嵌め形態にて同軸形態に装着されている。本体部50bの雌ねじ部50cに押さえ部材50aの雄ねじ部50dを螺合させることで液体処理部品1に軸線方向の抜け止めが図られている。なお、本体部50bの流出側端部の内側には整流部材63が嵌着されている。
【0020】
図2は液体処理部品1の外観を示す斜視図である。液体処理部品1は、第一主面MP1が液体の流入端とされ第二主面MP2が液体の流出端とされた部品本体1Mを有する。該部品本体1Mに対し、流入端に開口する流入口と流出端に開口する流出口とをつなぐ貫通形態の貫通流路9A,9Bが複数形成されている。
【0021】
図3は部品本体1Mの平面図及び横断面図であり、
図4は該部品本体1Mに衝突ロッド10f(ねじ部材10)を組み付けて液体処理部品1となした状態を示している。部品本体1Mの材質は、たとえばABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ジュラコン(商標名)などの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属、あるいはアルミナ等のセラミックスとしてもよい。また、ねじ部材は、ステンレス鋼やチタン(ないしチタン合金)などの金属や、アルミナ、ジルコニア、石英、ガラスなどの無機材料で構成できる。
【0022】
液体処理部材1において、中央の流速調整通路12を除く複数の貫通流路9A,9Bは、外周面にキャビテーション凹凸部10tを有する衝突ロッド10fが配置された衝突ロッド付き流路とされている。衝突ロッド10fは、互いに隣接する貫通流路9A,9Bを区画する部品本体1Mの一部をなす壁部を貫通する形で、それら隣接する貫通流路9A,9Bにまたがって配置される一体衝突ロッドを形成している。
【0023】
キャビテーション凹凸部10tは、この実施形態では、衝突ロッド10fの外周面に形成された雄ねじ部10tであり、一体衝突ロッド10fは部品本体1Mの周側面から貫通流路9A,9Bの軸線方向と交差する向きに部品本体1Mに対してねじ込まれるねじ部材10として構成され、その脚部が一体衝突ロッド10fを形成している(以下、脚部10fともいう)。なお、キャビテーション凹凸部は螺旋状のねじ山に限られるものではなく、散点状に形成された凹凸部などであってもよい。
【0024】
図5に示すように、部品本体1Mには、ねじ部材10を挿入するためのねじ挿通孔19が、周側面PP1に開口する形で形成されている。ねじ挿通孔19は、互いに隣接する複数の貫通流路9A,9Bを順次貫く形で形成されている。ねじ挿通孔19の内周面には、ねじ部材10の挿入方向における一部区間のみが、ねじ部材10に形成された雄ねじ部10tと螺合する雌ねじ部19tとされ、残余の区間は雄ねじ部10tよりも径大の円筒面19f1,19f2とされている。
【0025】
図5において部品本体1Mには、周側面PP1からみて最遠の貫通流路9Bの内周面に、ねじ挿通孔19に挿通されたねじ部材10の脚部先端部を収容する脚部先端収容凹部19f3がねじ挿通孔19の一部として形成されている。そして、ねじ挿通孔19は、脚部先端収容凹部19f3の内周面のみが雌ねじ部19tとされている。また、ねじ挿通孔19の周側面PP1への開口側には、該開口側からねじ込まれるねじ部材10のねじ頭部10hを収容するための座繰り19hが形成されている。
【0026】
図4に示すように、部品本体1Mは円柱状に形成され、複数の貫通流路9A,9Bは部品本体1Mの中心軸線O方向に各々貫通形成されている。具体的には、中心軸線Oから半径方向にて第一の距離に断面中心が存する第一貫通流路9Bと、第一の距離より大きい第二の距離に断面中心が存する第二貫通流路9Aとが、それぞれ中心軸線O周りに複数個形成されている。一体衝突ロッド10fは、中心軸線O周りにて同一の角度位置に存する第一貫通流路9Bと第二貫通流路9Aとの対にまたがる形で配置されている。第一貫通流路9Bと第二貫通流路9Aは、中心軸線Oの周りに互いに等しい角度間隔(ここでは45°)かつ同じ角度位置にて各々複数個(ここでは8個)設けられている。
【0027】
図1の液体処理ノズル1000を水道配管に取り付け、接続継手部52の側から水を流通すると、液体処理部材1の各貫通流路9A,9B及び流速調整通路12を水が流通するとともに、貫通流路9A,9B内に設けられた各ねじ部材10(衝突ロッド10f)の雄ねじ部10t(キャビテーション凹凸部)と接触する。水流はねじ谷部で増速されてキャビテーションを起こし、その減圧効果により溶存空気を微細気泡(ナノバブル)として析出させる。
【0028】
ねじ部材10(衝突ロッド10f)は、互いに隣接する貫通流路9A,9Bを区画する部品本体1Mの一部をなす壁部を貫通する形で、それら隣接する貫通流路9A,9Bにまたがって配置される一体衝突ロッド10fとして形成されている。1本の衝突ロッド10fが2以上の貫通流路9A,9Bを受け持つので、ねじ部材10の総数が減じられている。また、各貫通流路9A,9Bに配置するためのねじ部材10のレイアウトの単純化も実現している。
【0029】
また、
図5に示すように、一体衝突ロッド10fを挿入するためのねじ挿通孔19の一部区間にのみ雌ねじ部19tが形成されているので、ねじ挿通孔19への雌ねじ加工を簡略化することができている。また、雌ねじ部19tが形成されない部分(残余の区間)は雄ねじ部10tよりも径大の円筒面19f1,19f2とされるので、ねじ挿通孔19にねじ部材10をねじ込む際の雄ねじ部10tと雌ねじ部19tの螺合区間長が縮小され、ねじを組み付ける際の抵抗力軽減に貢献している。
【0030】
さらに、ねじ部材10の脚部先端部を収容する脚部先端収容凹部19f3がねじ挿通孔19の一部として形成され、その脚部先端収容凹部19f3の内周面のみが雌ねじ部19tとなっていることで、ねじ部材10の脚部先端部が雌ねじ部19tと螺合することにより、軸線Oと直交する向きへの位置決め精度が高められている。
【0031】
以下、本発明の液体処理部品の種々の変形実施形態について説明する。
図6は、部品本体1Mに形成されたねじ挿通孔19の中間の区間19f2’にも雌ねじ部19tを形成した例を示す。
【0032】
図7及び
図8は、全ての貫通流路9A,9B及び流速調整通路12が互いに重なる位置関係にて、2つ(3つ以上であってもよい)の液体処理部品1P,1Sを重ねて配置しつつノズルケーシング50に組み付けた例を示す。
図8に示すように、貫通流路9A,9B及び流速調整通路12の位置合わせを行うための係合凸部1C及び係合凹部1Vが、液体処理部品1P及び液体処理部品1Sの重なり側の主表面に各々形成されている。
【0033】
図9の液体処理部品100は、
図4の液体処理部品1から流速調整通路12を省略した構成を示すものである。また、
図10の液体処理部品200は、
図4の液体処理部品1に形成されている流速調整通路12を、4つの径小の流速調整通路12’に置き換えた構成に相当する。
【0034】
一方、
図11の液体処理部品300のように、中心軸線O周りにおいて第二貫通流路9Aを第一貫通流路9Bより数的に多く配置することも可能である。例えば、
図4での8つある第二貫通流路9Bを1つおきに間引くことができる。ねじ部材10(一体衝突ロッド)は、それら互いに対応する角度位置に存する第一貫通流路9Bと第二貫通流路9Aとの対にまたがる形で配置されている。第二貫通流路9Aのうち第一貫通流路9Bと対をなさない残余の4つについては、一体衝突ロッドをなすねじ部材10よりも短尺のねじ部材10’がねじ込まれている。また、
図12の液体処理部品400は、
図4の構成から、第二貫通流路9Aと第一貫通流路9Bとを各々4つずつに減じた構成を示している。
【0035】
図13の液体処理部品500は、一体衝突ロッド10f’を樹脂本体に対しインサート成型により一体化した例である。一体衝突ロッド10f’は外周面に雄ねじ部が形成されているが、ねじ頭部は有さない形状が採用されている。
【0036】
また、
図14の液体処理部品600は部材本体600Mが角型に形成され、各々2個づつの第一貫通流路9B及び第二貫通流路9Aが方形のレイアウトにて貫通形成されている。そして、第一貫通流路9B及び第二貫通流路9Aの各対に対し一体衝突ロッドをなすねじ部材10が挿通されている。
【符号の説明】
【0037】
1,100~600 液体処理部品
1M,600M 部品本体
9A,9B 貫通流路
9B 第一貫通流路
9A 第二貫通流路
10 ねじ部材
10t 雄ねじ部(キャビテーション凹凸部)
19 ねじ挿通孔
19t 雌ねじ部
19f1,19f2 円筒面
MP1 第一主面
MP2 第二主面