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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081055
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】プローブおよび電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20240610BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20240610BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20240610BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240610BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
G01R31/28 K
G01R31/26 J
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194489
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】林▲崎▼ 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】今 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】豊田 美岬
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AG03
2G003AG04
2G003AH04
2G003AH05
2G011AA10
2G011AB01
2G011AB07
2G011AB08
2G011AC14
2G011AE03
2G011AF07
2G132AF02
4M106AA01
4M106DD03
4M106DD09
4M106DD10
(57)【要約】
【課題】側面を覆う保護材の形成に起因するプローブの反りを抑制できるプローブおよび電気的接続装置を提供する。
【解決手段】プローブは、プローブヘッドに含まれるガイド板のガイド穴に挿入されてプローブヘッドによって保持される。プローブは、柱形状の母材と、母材のガイド穴を通過する領域の側面の少なくとも一部を覆う、母材よりも硬度の高い保護材を備える。母材の同一のガイド穴を通過する領域を覆う保護材は、母材の軸方向に沿って複数の部分に分割されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブヘッドに含まれるガイド板のガイド穴に挿入されて前記プローブヘッドに保持され、検査対象物の電気的特性の検査に使用されるプローブであって、
柱形状の母材と、
前記母材の前記ガイド穴を通過する領域の側面の少なくとも一部を覆う、前記母材よりも硬度の高い保護材と
を備え、
前記母材の同一の前記ガイド穴を通過する領域を覆う前記保護材が、前記母材の軸方向に沿って複数の部分に分割されているプローブ。
【請求項2】
前記ガイド板の開口部を通過する前記母材の領域が前記保護材によって被覆されるように、前記保護材が分割されている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記母材の前記軸方向に垂直な断面が矩形状であり、
前記母材の少なくとも3つの側面は前記保護材によって被覆される、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記母材の側面に、前記軸方向に延伸する凸部が形成され、
前記保護材が、前記軸方向に向いた端面を含む前記凸部の表面を覆って前記母材に配置されている、
請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
前記ガイド穴がそれぞれ形成された第1ガイド板と第2ガイド板を離隔して配置した構成を有する前記プローブヘッドと
前記ガイド穴に挿入されて前記プローブヘッドに保持される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプローブと
を備え、
同一の前記プローブが貫通する前記ガイド穴について、前記第1ガイド板の前記ガイド穴に対して前記第2ガイド板の前記ガイド穴の位置が前記第1ガイド板の主面と平行なオフセット方向にずらしてオフセット配置されて、
前記プローブは、前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間で湾曲した状態で保持される、
電気的接続装置。
【請求項6】
前記プローブの前記母材の前記軸方向に垂直な断面が矩形状であり、
前記オフセット方向と平行な方向を向いた前記母材の側面の一方が前記保護材によって被覆され、他方が前記保護材によって被覆されていない、
請求項5に記載の電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の電気的特性の検査に使用するプローブおよび電気的接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの検査対象物の電気的特性をウェハ状態で検査するために、プローブを含む電気的接続装置が使用されている。プローブを用いた検査では、プローブの一方の端部を検査対象物の電極パッドに接触させ、プローブの他方の端部を、プリント基板などに配置された端子(以下において「ランド」という。)に接触させる。ランドは、テスタなどの検査装置と電気的に接続される。
【0003】
検査対象物の検査において、プローブを電極パッドに接触させた後に、更に電気的接続装置と検査対象物を近づける(オーバードライブ)ことにより、プローブを弾性変形により湾曲させる処理が行われている。プローブを湾曲させることにより、プローブの弾性力によって電極パッドおよびランドにプローブを安定して接触させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-91870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プローブは、複数のガイド板を有するプローブヘッドによって、ガイド板に形成されたガイド穴を貫通した状態で支持される。ガイド穴の内壁面又は開口部とプローブの側面が接触することによりプローブが破損することを防止するために、プローブのガイド穴を貫通する領域の側面の周囲をプローブの母材よりも硬い材料の保護材で覆うことが行われている。しかし、保護材を形成することによりプローブに掛かる応力によって、プローブに反りが生じる場合がある。
【0006】
本発明は、側面を覆う保護材の形成に起因するプローブの反りを抑制できるプローブおよび電気的接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るプローブは、プローブヘッドに含まれるガイド板のガイド穴に挿入されてプローブヘッドによって保持される。プローブは、柱形状の母材と、母材のガイド穴を通過する領域の側面の少なくとも一部を覆う、母材よりも硬度の高い保護材を備える。母材の同一のガイド穴を通過する領域を覆う保護材は、母材の軸方向に沿って複数の部分に分割されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、側面を被覆する保護材の形成に起因するプローブの反りを抑制できるプローブおよび電気的接続装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るプローブの構成を示す模式図である。
図3図2のIII-III方向に沿った模式的な断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るプローブの製造過程の状態の例を示す模式図である。
図5A】本発明の実施形態の第1の変形例に係るプローブの構成を示す模式図である。
図5B図5AのV-V方向に沿った模式的な断面図である。
図6】本発明の実施形態の第2の変形例に係る電気的接続装置の構成を示す模式図である。
図7図6のVII-VII方向に沿った模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置および製造方法などを下記のものに特定するものでない。
【0011】
図1に示す本発明の実施形態に係る電気的接続装置100は、検査対象物2の電気的特性の検査に使用される。電気的接続装置100では、プローブ1がプローブヘッド20によって保持されている。具体的には、プローブヘッド20に含まれる第1ガイド板21、第2ガイド板22および第3ガイド板23のガイド穴に挿入されて、複数のプローブ1がプローブヘッド20に保持されている。プローブヘッド20は、第1ガイド板21、第2ガイド板22、第3ガイド板23を、ガイド板の主面の面法線方向に相互に離隔して配置した構成を有する。以下では、第1ガイド板21、第2ガイド板22および第3ガイド板23のそれぞれを限定しない場合には、ガイド板と表記する。
【0012】
プローブ1は、一方の端部である第1の接触部111、および他方の端部である第2の接触部112を有する。検査対象物2の検査時に、プローブ1の第1の接触部111は、検査対象物2の電極パッド(図示略)と接触する。プローブ1の第2の接触部112は、基板30のランド31に接触する。ランド31は、図示を省略するICテスタなどの検査装置と電気的に接続されている。第1の接触部111は、第2ガイド板22および第3ガイド板23を貫通するガイド穴を通過する。第2の接触部112は、第1ガイド板21を貫通するガイド穴を通過する。
【0013】
プローブ1は、柱形状の母材と、母材のガイド穴を通過する領域の側面の少なくとも一部を覆う、母材よりも硬度が高い保護材50を備える。図1に示すプローブ1は、第1ガイド板21を通過する領域の外周を覆う第1の保護材501、第2ガイド板22を通過する領域の外周を覆う第2の保護材502、および、第3ガイド板23を通過する領域の外周を覆う第3の保護材503を含む。以下において、第1の保護材501、第2の保護材502および第3の保護材503のそれぞれを限定しない場合には、保護材50と表記する。
【0014】
保護材50により、ガイド穴の側面とプローブ1が接触することによるプローブの破損が防止される。ガイド穴の「側面」は、ガイド穴の内壁面および開口部を含む。実施形態に係るプローブ1では、ガイド板を貫通する複数の領域の少なくともいずれかにおいて、母材10の同一のガイド穴を通過する領域を覆う保護材50が、母材10の軸方向に沿って複数の部分に分割されている。図1に示したプローブ1では、第3の保護材503が、第1保護部分50Aと第2保護部分50Bに分割されている。
【0015】
図1に示すように、プローブヘッド20において、同一のプローブ1が貫通するガイド穴について、第1ガイド板21のガイド穴に対して第2ガイド板22のガイド穴の位置が、第1ガイド板21の主面と平行な方向Fにずらして配置されている。以下において、ガイド穴の位置をずらした配置を「オフセット配置」と称する。また、ガイド穴の位置をずらした方向Fを「オフセット方向」とも称する。オフセット配置により、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間でプローブ1が湾曲している。即ち、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間の中空領域200で、プローブ1は弾性変形により湾曲した状態である。第2ガイド板22のガイド穴の位置と第3ガイド板23のガイド穴の位置は、ガイド板の面法線方向から見て一致している。
【0016】
第1ガイド板21のガイド穴と第2ガイド板22のガイド穴とがオフセット配置されていることにより、プローブ1の第1の接触部111が検査対象物2と接触すると、中空領域200においてプローブ1が座屈する。即ち、プローブ1が検査対象物2に接触した状態(以下、「接触状態」)において、プローブ1が検査対象物2に接触していない状態(以下、「非接触状態」)における湾曲形状からプローブ1がたわみ変形により更に湾曲する。プローブ1が更に湾曲することにより、所定の押力でプローブ1が検査対象物2に接触する。したがって、オフセット配置により、プローブ1を用いて検査対象物2の電気的特性を安定して測定することができる。プローブ1は、非接触状態になると、検査対象物2に接触する前の形状に復帰する弾性を有する。
【0017】
以下に、図2を参照してプローブ1の詳細について説明する。
【0018】
図2に示す実施形態に係るプローブ1は、第1の接触部111、第1の連結部121、湾曲部13、第2の連結部122および第2の接触部112が軸方向に沿って順に接続された構造を含む柱形状である。以下、第1の接触部111と第2の接触部112のそれぞれを限定しない場合には、接触部11と表記する。また、第1の連結部121と第2の連結部122のそれぞれを限定しない場合には、連結部12と表記する。言い換えると、プローブ1は、接触部11、湾曲部13、および接触部11と湾曲部13を連結する連結部12を含む。
【0019】
第1の連結部121は、第1の接触部111と湾曲部13を連結する。第2の連結部122は、第2の接触部112と湾曲部13を連結する。第1の接触部111の先端は、検査において検査対象物と接触する。第2の接触部112の先端は、検査対象物の検査においてランドと接触する。検査対象物の検査時に、プローブ1は弾性変形により湾曲する。
【0020】
本発明の実施形態の説明では、図2に示すようにX方向、Y方向、Z方向を定義する。図2において、X方向は紙面の左右方向、Y方向は紙面の奥行方向、Z方向は紙面の上下方向にそれぞれ平行である。プローブ1の軸方向は、Z方向に沿っている。以下では、プローブ1が、軸方向に垂直な断面が矩形状である場合を説明する。そして、X方向をプローブ1の幅の方向とし、Y方向をプローブ1の厚さの方向とする。
【0021】
図3に、図2のIII-III方向に沿ったプローブ1の軸方向に垂直な断面(以下において、単に「断面」という。)の構造を示す。図3に示したプローブ1では、母材10の4つの側面のうち、1つの長辺と2つの短辺が保護材50に覆われている場合を例示的に示した。図3に示したように、断面が矩形状の母材10の3つの側面が保護材50によって被覆され、残りの1つの側面が保護材50によって被覆されていなくてもよい。或いは、保護材50が母材10の側面を周回していてもよい。
【0022】
実施形態に係るプローブ1によれば、母材10の側面に保護材50を配置することにより、ガイド穴の側面との接触によるプローブ1の損傷を抑制できる。例えば、母材10に、ニッケル(Ni)またはニッケル合金などが使用される。保護材50には、例えばロジウム(Rh)などが好適に使用される。或いは、保護材50にDLC(Diamond Like Carbon)などを使用してもよい。なお、母材10は単一の材料であってもよいし、異なる材料の積層構造であってもよい。
【0023】
プローブ1において、図2に示すように、湾曲部13の連結部12に接続する領域の断面の面積を、湾曲部13のその他の領域の断面の面積よりも小さくしてもよい。以下において、湾曲部13の連結部12と接続する領域を、「接続領域」とも称する。また、接続領域を除いた湾曲部13の残余の領域を、「中間領域」とも称する。図2に示す湾曲部13は、中間領域133と、中間領域133の一方の端部に連結する第1の接続領域131と、中間領域133の他方の端部に連結する第2の接続領域132を含む。第1の接続領域131は第1の連結部121に接続し、第2の接続領域132は第2の連結部122に接続している。以下、第1の接続領域131と第2の接続領域132のそれぞれを限定しない場合には、接続領域130と表記する。
【0024】
湾曲部13において中間領域133よりも接続領域130の断面の面積を小さくすることにより、プローブ1が湾曲するときに、中間領域133と連結部12の間で接続領域130が特に大きく湾曲する。このため、湾曲部13とは反対側で連結部12に接続する接触部11の直進性を確保できる。例えば、図2に示すように、X方向において接続領域130の幅を中間領域133の幅よりも狭くすることによって、接続領域130の断面の面積を中間領域133の断面の面積より小さくしてもよい。このとき、X方向からみて湾曲部13の厚みは一定である。
【0025】
プローブ1が検査対象物2に接触している接触状態においてプローブ1が湾曲するとき、湾曲部13が中間領域133と接続領域130を含む場合には、特に接続領域130でプローブ1は大きく湾曲する。このため、接触部11のガイド穴に沿った直線的な移動を確保できる。その結果、ガイド穴の側面と接触部11の接触を抑制できる。ただし、湾曲部13が接続領域130を含まなくてもガイド穴の側面と接触部11の接触を抑制できる場合には、湾曲部13の径は一定であってもよい。
【0026】
保護材50が、接触部11と連結部12の接続部分を超えて連結部12の一部を覆っていてもよい。即ち、連結部12の接触部11に近い領域を保護材50で覆い、連結部12の湾曲部13に近い領域を保護材50で覆わないようにしてもよい。連結部12の接触部11に近い領域を保護材50で覆うことにより、連結部12の一部がガイド穴の内部を通過する場合にも、ガイド穴の側面との接触によりプローブ1が損傷することを抑制できる。
【0027】
保護材50は、プローブ1のガイド穴を通過する領域の範囲に応じて、ガイド穴の開口部を通過する領域の母材10を覆うように分割される。言い換えると、保護材50が配置される母材10の領域は、検査対象物の検査時および非検査時のいずれかにおいてガイド穴を通過する領域である。例えば、オフセット配置によりプローブヘッド20の内部で母材10が湾曲した状態において、母材10のガイド穴を通過する領域が保護材50に覆われる。更に、検査対象物の検査時にプローブ1を検査対象物に押し付けるようにオーバードライブをかけることによりガイド穴を通過することになる母材10の領域が、保護材50に覆われる。
【0028】
例えば、プローブ1の軸方向に沿ったガイド穴の長さ(例えば250μm)およびプローブ1の湾曲に起因するストロークの長さ(例えば120μm)などを考慮して、保護材50は分割される。「ストローク」とは、接触状態と非接触状態との間でガイド穴を通過する範囲の変化量である。
【0029】
オフセット方向は、例えば、母材10の断面の長辺が向いた方向である。その場合、図3に示すように3つの側面が保護材50によって被覆される母材10では、オフセット方向と平行な方向を向いた側面の少なくともいずれかに保護材50が配置されている。一方、オフセット方向と平行な方向を向いた側面のうち、保護材50が配置された側面の反対方向を向いた側面は保護材50によって被覆されていなくてもよい。言い換えると、オフセット方向を向いた側面若しくはオフセット方向と反対の方向を向いた側面のいずれか一方の側面を除いた母材10の残余の側面に、保護材50を形成してもよい。
【0030】
近年、プローブカードにはプローブの間隔を狭くする狭ピッチ化が求められており、隣接プローブとのショートを防ぐためプローブが細くなっている。ガイド板と接触する可能性のある母材10の側面に保護材50を被覆することによって、プローブ1が太くなることを抑制しつつ、母材10がガイド穴と接触し破損することを抑制させることができる。例えば、本実施例であるプローブ1は、オフセット方向を向いた側面若しくはオフセット方向と反対の方向を向いた側面のいずれか一方の側面を除いた母材10の残余の側面に、保護材50が被覆される。一方、オフセット方向と反対の方向を向いた側面は母材10が露出される。従って、3面に保護材50を被覆し、1面に母材10を露出させることによって、保護材50が母材10の表面に被覆されることでプローブ1が太くなることを抑制しつつ、母材10がガイド穴と接触し破損することを抑制することができる。
【0031】
なお、母材10の3面のみに保護材50が被覆されることに制限されない。また、母材10に保護材50を埋め込むことによってプローブ1が太くなることを抑制しつつ、母材10がガイド穴と接触し破損することを抑制することも考えられる。保護材50を母材10の表面に被覆される構造と、母材10に保護材50を埋め込む構造の一方がプローブ1に設けられることに限定されない。
【0032】
プローブ1は、例えば、平板状の基台の上に形成した母材10の材料をエッチング処理により所定の形状にパターニングして形成される。プローブ1の製造過程において、母材10の表面に保護材50がメッキ加工などにより形成される。このとき、例えば図4に上面図を示すように、母材10は支持台300に一端を支持されて基台(図示略)の上方に浮いた状態で形成されている。このため、支持台300と一体化している第2の接触部112から第1の接触部111に向かうにしたがって、母材10は応力の影響を受け易い。即ち、第1の接触部111の保護材50がメッキされた領域は、メッキ加工による応力の影響で反りが生じ易い。特に、保護材50を形成する工程の後でプローブ1に反りが生じ易い。更に、製造工程の後でも、プローブ1の保護材50で被覆された領域は反りが生じ易い。これに対し、実施形態に係るプローブ1は、保護材50を分割することにより応力が母材10に係る影響を低減して、反りの発生を抑制することができる。プローブ1は、特に反りが生じ易い第1の接触部111の周囲に形成された第3の保護材503を分割した場合を例示的に示している。
【0033】
以上に説明したように、電気的接続装置100では、プローブ1の接触部11のガイド穴を通過する領域の周囲に、接触部11より硬度の高い保護材50が配置されている。これにより、電気的接続装置100によれば、ガイド穴の側面と接触してプローブ1が損傷することを抑制できる。一方、母材10の軸方向に沿って保護材50を連続的に形成した領域が長いほど、プローブ1に反りが発生し易い。これに対し、実施形態に係る電気的接続装置100では、プローブ1において同一のガイド穴を通過する領域を覆う保護材50が、母材10の軸方向に沿って複数の部分に分割されている。このため、保護材50の形成に起因するプローブ1の反りを抑制することができる。
【0034】
<第1の変形例>
図5Aおよび図5Bに示す第1の変形例に係るプローブ1は、母材10の1つの側面に、軸方向に沿って延伸する凸部15を設けた構成である。凸部15を母材10の側面に形成することにより、母材10の剛性を高めてプローブ1の反りの発生を抑制できる。凸部15が母材10の側面に配置されることによって、より母材10の剛性が向上し、ガイド穴に挿入されるプローブ1の部位が湾曲しにくくなる。例えば、母材10のオフセット方向を向いた側面(以下、「オフセット面」と称する。)に凸部15を形成してもよい。オフセット面に凸部15を形成するのは、母材10の断面が矩形状である場合に、一般的にオフセット面となる長辺である側面に反りが生じ易いためである。保護材50は、軸方向に向いた端面を含む凸部15の表面を覆って母材10に配置されている。
【0035】
凸部15は、母材10の先端までは延伸していないことが好ましい。母材10の先端に凸部15が形成されていないことにより、プローブ1をプローブヘッド20のガイド穴に挿入する工程の際に、凸部15の端面がガイド穴の開口部に当接してプローブ1のガイド穴への挿入が阻害されることを抑制できる。保護材50により被覆される領域のみに、凸部15を形成してもよい。
【0036】
<第2の変形例>
図6に示す第2の変形例に係る電気的接続装置100は、プローブ1の表面に、プローブ1の軸方向に沿って互いに離隔して複数の絶縁性の被覆材60が配置されている。被覆材60は、保護材50が配置された領域の残余の領域に配置されている。
【0037】
検査対象物の検査時にプローブ1がプローブヘッド20の内部で座屈したときに、プローブ間の短絡が発生するおそれがある。図6に示した電気的接続装置100では、プローブ1の表面に配置された絶縁性の被覆材60が隣接するプローブ1と接触することにより、プローブ間の短絡が防止される。
【0038】
被覆材60は、プローブ1のオフセット面、若しくはオフセット面の反対方向を向いた側面に配置することが好ましい。例えば、図7に示すように、矩形状の断面を有する母材10のオフセット面、および、オフセット面に隣接する2つの側面に、被覆材60を連続的に配置してもよい。或いは、プローブ1の全周に渡って被覆材60を配置してもよい。
【0039】
被覆材60は、プローブ1の中空領域200を通過する部分において、少なくとも湾曲する部分を含めて間欠的に配置することが好ましい。これに対し、第1の接触部111から第2の接触部112まで母材10の表面を軸方向に沿って連続的に被覆材60で覆うと、プローブ1に反りが生じ易い。しかし、図6に示すプローブ1では、軸方向に沿って被覆材60を間欠的に配置することにより、プローブ1の反りが抑制される。
【0040】
ところで、プローブ1をプローブヘッド20にセットするために、ガイド板のガイド穴にプローブ1を貫通させる。例えば、すべてのガイド板のガイド穴の中心軸を一致させた状態で、ガイド板のガイド穴にプローブ1を連続的に貫通させる。このため、プローブ1の外径と被覆材60の厚みの合計は、ガイド穴の内径よりも小さく設定される。つまり、被覆材60の厚みは、プローブ1の外径と被覆材60の厚みの合計とガイド穴の内径とのクリアランスを確保できる範囲で、且つプローブ間の短絡を防止できる厚みに設定される。
【0041】
被覆材60の材料は、例えば樹脂類、ガラス繊維、永久レジスト、セラミック蒸着物などであってもよい。被覆材60をプローブ1の表面の所定の位置に形成するには、例えば、プローブ1の表面の全面に被覆材60を形成した後、フォトリソグラフィ技術などを用いて被覆材60をパターニングしてもよい。
【0042】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0043】
例えば、上記では、同一のガイド穴を通過する保護材50を2つの部分に分割する場合を例示的に説明したが、保護材50を3つ以上の部分に分割してもよい。ただし、ガイド板のガイド穴の開口部を通過する母材10の領域が保護材50によって被覆されるように、保護材50が分割される。また、第3の保護材503を分割する場合を説明したが、第1の保護材501と第2の保護材502についても複数の部分に分割してもよい。
【0044】
また、上記では、母材10の断面の形状が矩形状である場合について説明したが、母材10の断面が他の形状であってもよい。例えば、母材10の断面が矩形以外の多角形状であってもよい。母材10の断面がどのような形状であっても、母材10のガイド穴を通過する領域の側面を保護材50で覆うことにより、ガイド穴の側面と接触することによるプローブ1の損傷を抑制できる。そして、同一のガイド穴を通過する保護材50を複数の部分に分割することにより、プローブ1の反りの発生を抑制できる。
【0045】
なお、プローブヘッド20が3枚のガイド板を含む場合について説明したが、プローブヘッド20のガイド板の枚数は3枚に限られない。例えば、プローブヘッド20のガイド板の枚数が2枚であっても4枚以上であってもよい。プローブヘッド20のガイド板の枚数に関わらず、それぞれのガイド板のガイド穴を通過する領域の母材10の側面に保護材50を形成し、且つ、同一のガイド穴を通過する保護材50を複数の部分に分割することが好ましい。
【0046】
このように、本発明は上記では記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
1…プローブ
10…母材
15…凸部
20…プローブヘッド
21…第1ガイド板
22…第2ガイド板
23…第3ガイド板
30…基板
31…ランド
50…保護材
60…被覆材
501…第1の保護材
502…第2の保護材
503…第3の保護材
50A…第1保護部分
50B…第2保護部分
100…電気的接続装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7