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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081058
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】車両用電気機器の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B60R16/02 610J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194492
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】古川 祐介
(57)【要約】
【課題】車両の電気機器への過大な荷重の入力を抑制する。
【解決手段】車両用電気機器の取付構造は、車両の第1電気機器10と、第1電気機器10を下方から支持する共に、当該第1電気機器10と少なくとも1つの第1固定点51で固定される支持部材20と、を備える。第1電気機器10に側方からの荷重が入力されたとき、少なくとも1つの第1固定点51における固定が解除され、第1電気機器10は支持部材20の上を移動可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の第1電気機器と、
前記第1電気機器を下方から支持する共に、当該第1電気機器と少なくとも1つの第1固定点で固定される支持部材と、
を備え、
前記第1電気機器に側方からの荷重が入力されたとき、前記少なくとも1つの第1固定点における固定が解除され、前記第1電気機器は前記支持部材の上を移動可能となる、車両用電気機器の取付構造。
【請求項2】
前記支持部材に固定され、かつ、前記第1電気機器と電気的に接続された第2電気機器を備え、
前記第2電気機器は前記支持部材を介して前記第1電気機器を支持する、請求項1に記載の車両用電気機器の取付構造。
【請求項3】
前記支持部材と前記第2電気機器とは少なくとも1つの第2固定点で固定され、
前記少なくとも1つの第1固定点の前記側方からの荷重に対する固定力は、前記少なくとも1つの第2固定点の前記側方からの荷重に対する固定力よりも小さい、請求項2に記載の車両用電気機器の取付構造。
【請求項4】
前記第1電気機器と前記第2電気機器とを電気的に接続する電線を備え、
前記電線は、前記側方からの荷重が入力されたことに応じた前記第1電気機器の移動の前後において、弛みを維持することができる長さを有する、請求項2に記載の車両用電気機器の取付構造。
【請求項5】
前記第1電気機器を覆うカバー部材を備え、
前記側方からの荷重は、前記カバー部材のうち前記第1電気機器の一側の側部を覆う第1側壁部を介して入力される、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用電気機器の取付構造。
【請求項6】
前記カバー部材は前記第1電気機器の他側の側部を覆う第2側壁部を備え、
前記第2側壁部は、前記側方からの荷重が入力されたことに応じて前記車両の車室内に配設された第1部材と干渉すると共に、前記第1電気機器の移動を規制する、請求項5に記載の車両用電気機器の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電気機器の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1が開示する電気自動車のバッテリー装置では、電気自動車駆動用バッテリーが集中配置されている。集中配置されたバッテリー群上部に一体のプレートを配置し、当該プレートにはバッテリー群の端子部に相当する部位に当該端子部と遊合する遊合孔が設けられている。プレート表面には各端子部間の結線表示をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3356833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両用電気機器の取付構造では、例えば車両の側突が発生した際に、過大な衝突荷重が車両用シート等を介して電気機器に入力されるおそれが有った。そのため、電気機器に入力される衝突荷重を低減可能な位置に当該電気機器を配設する場合が有った。そのような場合には、電気機器の配設可能な位置が制限され、配置の自由度が低下するおそれが有った。また、電気機器を衝突荷重から保護するためにカバー部材の強度を向上させた場合には、カバー部材の重量又は製造コストが増大するおそれが有った。
【0005】
本発明の目的は、車両の電気機器への過大な荷重の入力を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両用電気機器の取付構造は、第1電気機器と、前記第1電気機器を支持する共に、当該第1電気機器と第1固定点で固定される支持部材と、を備え、前記第1電気機器に側方からの荷重が入力されたとき、前記第1固定点における固定が解除され、前記第1電気機器は前記支持部材の上を移動可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の電気機器への過大な荷重の入力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の、車室内における電気機器と、カバー部材との配設関係を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の、電気機器と、カバー部材との配設関係を示す斜視図であって、図1の要部を拡大して表示した図である。
図3】実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の、第1電気機器と、支持部材と、第2電気機器と、カバー部材との配設関係を示す、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の、第1電気機器と、支持部材と、第2電気機器との配設関係を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の、第1電気機器と、支持部材と、第2電気機器との固定について説明するための分解斜視図である。
図6】車両に側方からの荷重が入力された場合における、実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の挙動を説明するための説明図であって、図2のVI-VI線に沿った断面図である。
図7】車両に側方からの荷重が入力された場合における、実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の挙動を説明するための説明図であって、図6に示された状態よりも時系列的に後の状態を示す、図6に相当する断面図である。
図8】車両に側方からの荷重が入力された場合における、実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の挙動を説明するための説明図であって、図7に示された状態より時系列的に後の状態を示す、図6に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る車両用電気機器の取付構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方のそれぞれを示す。LH,RHは、車幅方向左方、右方のそれぞれを示す。UP,DNは、車両上下方向上方、下方のそれぞれを示す。以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車幅方向左方、右方、車両上下方向上方、下方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「車両左方」「車両右方」「上方」「下方」と称する。なお、以下の説明では同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態に係る車両用電気機器の取付構造は、例えば電動モータ(不図示)により駆動する車両に適用することができる。図1に示される例では、車室1の床を構成するフロアパネル2の下方に、車両の駆動用電力を供給する電源であるバッテリー(不図示)が配設されている。フロアパネル2は鉄、鋼等の金属や、樹脂から構成されたパネル材であり、平面視で略矩形の形状を備えてもよい。フロアパネル2の上面には、クロスメンバ3a,3bが接合されてもよい。なお、フロアパネル2の車両前方側はダッシュパネル(不図示)に接合されていてもよい。
【0011】
クロスメンバ3a,3bは車幅方向に延在する、例えば金属から構成された長尺部材であり、フロアパネル2を補強する。車室内の床面において、クロスメンバ3aは車両前方側に取付けられており、クロスメンバ3bは車両後方側に取付けられている。また、クロスメンバ3a,3bには、シート4aと、シート4bとが取付けられてもよい。
【0012】
図1に例示されたシート4a,4bは車室1内における車両前方側の領域に配設されたフロントシートである。車室1内において、シート4aは車両左方側の領域に配設され、シート4bは車両右方側の領域に配設されている。シート4a,4bの下方側を構成する部分は、その車両前方側端部においてクロスメンバ3aに固定され、その車両後方側端部においてクロスメンバ3bに固定されている。シート4a,4bとクロスメンバ3a,3bとは、ボルト等の締結具を用いることにより締結されてもよい。
【0013】
図示された例では、シート4aとシート4bとの間に後述する電気機器5が配設されている。電気機器5はフロアパネル2の車幅方向略中央部において、フロアパネル2の上面よりも車室1に向けて突出するように配設されてもよい。なお、電気機器5が配設される位置は図示された例に限定されない。例えばフロアパネルの形状、又はバッテリーの取付位置等に応じて、電気機器5の位置を適宜設定してもよい。また、電気機器5及び後述するカバー部材40は、例えば、車室1内に配設されたセンターコンソールの少なくとも一部を形成するカバー(不図示)によって覆われてもよい。
【0014】
図に例示された電気機器5は第1電気機器としての端子台10と、支持部材20と、を備える。電気機器5は第2電気機器としての制御ユニット30を含んでもよい。また、車両用電気機器の取付構造ではカバー部材40が配設されてもよい。以下、図2図5を参照しながら電気機器5の構成について説明する。なお、第1電気機器は端子台10に限定されず、第2電気機器は制御ユニット30に限定されない。第1電気機器及び第2電気機器は他の機能を有する機器であってもよい。
【0015】
端子台10は、その内部に複数の端子を有する部材である。図2に例示された電気機器5において、端子台10は最も上方に位置している。端子台10は中空箱形の形状を有する樹脂製の部材であってもよい。また、端子台10は上部ケース10aと下部ケース10bとを上下方向に組み合わせて固定することにより、形成されてもよい(図5参照)。
【0016】
図5に例示された上部ケース10aは、平面視で略矩形の形状を備え、例えば樹脂製であってもよい。上部ケース10aで下部ケース10bの上方の開口を閉塞することにより、端子台10の内部が略密閉される。下部ケース10bは上方が開口した有底箱形の部材であり、平面視で略矩形の形状を備える。下部ケース10bは例えば樹脂製であってもよい。なお、上部ケース10a及び下部ケース10bの形状は図示された例に限定されず、例えば、端子台10の形状に応じて、適宜形状が設定されてもよい。また、端子台10の側部にはフランジ11が形成されてもよい。図示された例では、フランジ11は下部ケース10bの側部から略水平方向に延出するように形成されている。
【0017】
端子台10には、車両が備える他の電気機器が電気的に接続されてもよい。当該電気機器は、例えば車両に搭載された発電機(不図示)であってもよい。端子台10の車両前方側端部には、端子台10の内部に設けられた端子と、当該発電機とを接続する電線を挿通させるための開口が形成されてもよい。
【0018】
端子台10は電線6を介して制御ユニット30と電気的に接続されてもよい。なお、図3図5に示された例では、電線6と制御ユニット30とはバスバ7を介して電気的に接続されている。バスバ7は制御ユニット30介してバッテリーの電池セルと電気的に接続されてもよい。即ち、端子台10は発電機と電池セルとを電気的に接続する機器であってもよい。電線6は端子台10と制御ユニット30とを電気的に接続する部材であり、所定の余長を有してもよい。余長とは、配索された状態で電線6に弛みが生じるように与えられる長さである。これにより、端子台10と制御ユニット30との間において、電線6を弛ませた状態で配索することができる。
【0019】
図3に例示されるように、支持部材20は端子台10を下方から支持する部材である。図に例示された支持部材20は、端子台10が制御ユニット30の上方に位置するように端子台10を支持している。支持部材20は平面視で略矩形の形状を備え、上下方向に所定の厚さを有してもよい。支持部材20は樹脂製であってもよい。
【0020】
図示された例では、端子台10と支持部材20との間には空間Sが形成されている。空間Sは支持部材20の上部に端子台10を載置した際に形成される、支持部材20の底部21と端子台10との間の隙間である。底部21は支持部材20の下方側を構成する壁部である。空間Sには電線6が配索されている。電線6の一方側の端部は、端子台10の内部から下方に延出した端子と電気的に接続されてもよい。また、電線6の他方側の端部は、底部21の車両前方側の部分において、バスバ7と電気的に接続されてもよい。
【0021】
底部21には端子台10が載置される支持部22が形成されている(図5参照)。支持部22は、図に例示されるように、底部21の上面に複数形成されてもよい。支持部22の上方側の部分には、直接的に又は間接的に端子台10が載置されてもよい。なお、底部21において支持部22が形成される領域は、図示された例に限定されない。例えば、支持部22は底部21の車両左方側の端部から、車両右方側の端部にかけて延設されてもよい。また、支持部22の数、又は位置等は、例えば後述する固定点51の数、又は位置等に応じて適宜設定されてもよい。
【0022】
端子台10と支持部材20とは、少なくとも1つの第1固定点としての固定点51で固定されている。なお、図に例示された固定点51は、端子台10における車両左方側の部分に3つ形成され、車両右方側の部分に2つ形成されている(図5参照)。固定点51の位置、又は数等は図示された例に限定されず、例えば端子台10又は支持部材20の、形状又は寸法等に応じて適宜設定してもよい。
【0023】
制御ユニット30は、車両のバッテリーを制御するためのECU(Electronic Control Unit)を含み、例えばバッテリーの電圧、電流、温度等の監視、又はバッテリーの充放電の制御を行うことができる。図3に例示された支持部材20は制御ユニット30に固定されている。また、制御ユニット30は支持部材20の下方に配置されてもよい。
【0024】
図4に例示されるように、制御ユニット30と支持部材20とは少なくとも1つの第2固定点である固定点52で固定されてもよい。図に例示された固定点52は、支持部材20の車両前方側における角部、及び車両後方側における角部の各々を、制御ユニット30の所定位置に形成された固定具に固定している。そのため、制御ユニット30は支持部材20を支持すると共に、支持部材20を介して端子台10を支持している。なお、端子台10、支持部材20、及び制御ユニット30は互いに平面視でラップするように配置されてもよい。
【0025】
図3に例示されるように、支持部材20及び制御ユニット30の少なくとも一部は、保護部材60により覆われてもよい。図に例示された保護部材60は、上方、車両左方、車両右方、車両前方、及び車両後方から支持部材20及び制御ユニット30を覆う部材である。保護部材60は、例えば鉄等の金属から構成されてもよい。保護部材60を設けることにより、例えば車両に荷重が入力された際に、車両が備える他の部材が制御ユニット30に接触することを抑制し、制御ユニット30をより確実に保護することができる。なお、図4及び図5では保護部材60の表示が省略されている。
【0026】
保護部材60の上方側の部分には開口61が形成されている。開口61は保護部材60の上方側を構成する壁部の所定領域を、上下方向に貫通させることにより形成されている。なお、保護部材60の上部のうち開口61を画成する内周縁部62には、端子台10のフランジ11が載置されてもよい。また、内周縁部62とフランジ11との間にはシール部材(不図示)が配設されてもよい。
【0027】
車両用電気機器の取付構造では、カバー部材40によって端子台10が覆われていてもよい(図1及び図2参照)。図に例示されたカバー部材40は全体として車両前後方向に延在し、例えば金属から構成される。カバー部材40はフロアパネル2に直接的に又は間接的に固定されてもよい。図に例示されたカバー部材40は、側壁部41と、側壁部42と、上壁部43と、を備える。なお、カバー部材40の形状は図示された例に限定されず、例えば電気機器5の位置、形状、又はカバー部材40とフロアパネル2との固定点等に応じて適宜設定されてもよい。
【0028】
上壁部43は端子台10を上方から覆う壁部であり、略水平方向に延在してもよい。図に例示された上壁部43は、側壁部41の上端部と、側壁部42の上端部との間に形成されている。また、上壁部43の車両前方側の部分は車両前下方に向けて延伸し、フロアパネル2の膨出部2aに、ボルト等の締結具を用いることにより固定されてもよい。膨出部2aはフロアパネル2の車両前方側の部分のうち、車幅方向略中央部を上方に膨出させることにより形成されている。なお膨出部2aと上壁部43とは、例えば膨出部2aの上面に取付けられた補強部材を介して膨出部2aに固定されてもよい。
【0029】
側壁部41は端子台10の側部12aを車両左方から覆う壁部であり、カバー部材40の車両左方側の部分を構成する。側部12aは端子台10の車両左方側の部分を構成する部分である。側壁部41は上壁部43の車両左方側の端部から下方に延出するように形成されてもよい。また、側壁部41の車両後方側の端部は下方に向けて延伸し、クロスメンバ3bにボルト等の締結具を用いて固定されてもよい。
【0030】
側壁部42は端子台10の側部12bを車両右方から覆う壁部であり、カバー部材40の車両右方側の部分を構成する。側部12bは端子台10の車両右方側の部分を構成する部分である。側壁部42は上壁部43の車両右方側の端部から下方に延出するように形成されてもよい。また、側壁部42の車両後方側の端部は下方に向けて延伸し、クロスメンバ3bにボルト等の締結具を用いて固定されてもよい。
【0031】
次に、図5を参照しながら端子台10と支持部材20の固定構造について更に説明する。実施形態に係る車両用電気機器の取付構造では、端子台10と支持部材20とが固定された状態において、端子台10に側方からの荷重が入力されると、固定点51における固定が解除され、端子台10が支持部材20の上を移動可能となるように構成されている。
【0032】
図示された例では、固定点51は第1締結具であるボルト51aと、第2締結具であるナット51bとを含む。ボルト51a及びナット51bで、端子台10及び支持部材20を共締めすることにより、両者を締結固定することができる。
【0033】
図に例示された支持部22には、内部にナット51bを配設可能なスリット23が形成されている。支持部22のうちスリット23を画成する部分の上方側端部には規制部24が延出している。規制部24は、スリット23内に配設されたナット51bの上方への移動を規制する。そのため、ナット51bがスリット23内に配設された状態で、下部ケース10bと規制部24とを共締めするようにボルト51aとナット51bとを螺合させることにより、端子台10を支持部材20に固定することができる。ここで、ボルト51aとナット51bとを締結する際の締め付けトルクを調整することにより、端子台10及び支持部材20に作用する締結力を調整することができる。これにより、側方からの荷重に対する固定点51の固定力を調整することができる。
【0034】
各図に示された例では、固定点51の側方からの荷重に対する固定力は、端子台10に車両左方、又は車両右方から所定の荷重が入力されると、端子台10が支持部材20の上を車幅方向に移動可能となるように設定されている。即ち、当該固定力は、端子台10に側方からの荷重が入力されたことに応じて、固定点51における端子台10と支持部材20との固定が解除されるように調整されている。なお、図に例示された支持部22ではスリット23が車幅方向に延在しているが、これに限定されない。スリット23の形状、延在方向等は、例えば端子台10を側方からの荷重により移動させたい方向に応じて、適宜設定されてもよい。
【0035】
次に、図6図8を参照しながら、車両用電気機器の取付構造における、側方からの荷重が入力された際の、端子台10等の挙動の一例について説明する。
【0036】
例えば車両左方側において側突が発生した場合には、図6の矢印Aに示すようにシート4aに車両右方向きの衝突荷重が入力される。これにより、図7に示される例では、車両右方に傾くようにシート4aが変位している。このような場合には、電気機器5とシート4aとが直接的に又は間接的に接触し、側方からの荷重である当該衝突荷重が電気機器5に伝達されるおそれが有る。なお、電気機器5に入力される側方からの荷重は、側突に起因する衝突荷重に限定されない。例えば、側方からの荷重は、車室1内に配置された物体又は乗員等が、直接的又は間接的に入力した荷重であってもよい。
【0037】
また、図7に示された例では、端子台10はカバー部材40により覆われている。そのため、衝突荷重は端子台10よりも先にカバー部材40に入力される。このとき、図8に例示されるように、側壁部41は、側方からの荷重が入力されたことに応じて端子台10側に変位し、端子台10と接触しながら、当該荷重の入力方向に端子台10を押し移動させてもよい。即ち、カバー部材40は、側方からの荷重が入力されたことに応じて、端子台10と接触しながら端子台10を移動させてもよい。その際、例えば側方からの荷重に対するカバー部材40の剛性を比較的低く設定してもよい。なお、当該側方からの荷重の値は特に限定されず、例えば電気機器5の位置、形状、又は機能等に応じて任意に設定してもよい。
【0038】
変位した側壁部41が端子台10に接触すると、衝突荷重は側壁部41から端子台10に伝達される。即ち、側方からの荷重は、側壁部41を介して入力されてもよい。これにより、端子台10に衝突荷重が入力される際の接触面積をより大きく構成し、端子台10への局所的な荷重の入力を抑制することができる。
【0039】
固定点51における端子台10と支持部材20との固定は、側方からの荷重が入力された際に解除される。これにより、端子台10は支持部材20の上を移動可能となる。固定点51の固定が解除される当該荷重の値は特に限定されず、例えば電気機器5の位置、形状、又は機能等に応じて任意に設定してもよい。
【0040】
図示された例では、固定点51及び固定点52の側方からの荷重に対する固定力は、端子台10に側方からの荷重が入力された際に、固定点51における固定と固定点52における固定のうち、固定点51における固定のみが解除されるように構成されている。例えば、固定点51の側方からの荷重に対する固定力が、固定点52の側方からの荷重に対する固定力よりも小さくなるように、固定点51及び固定点52における側方からの荷重に対する固定力を設定してもよい。
【0041】
なお、固定点51における固定力、及び固定点52における固定力を調整する方法は特に限定されない。例えば、固定点51におけるボルト51aとナット51bの締め付けトルクの値を、固定点52が有するボルトとナットとの締め付けトルクの値よりも低くしてもよい。また、側方からの荷重が入力された際にせん断されるように、ボルト51aの形状を構成してもよい。例えば、ボルト51aの長さ方向における所定の位置に、周方向に延在する溝を形成することにより、所定のせん断応力が入力された際にせん断されるように、ボルト51aを構成してもよい。また、固定点52が有するボルトの材質よりも強度の低い材質で、ボルト51aを構成してもよい。
【0042】
図8に示される例では、端子台10は側壁部41を介して入力された衝突荷重に応じて、支持部材20の上を車両右方に移動し、側壁部42に接触している。更に、側壁部42は端子台10を介して入力される衝突荷重に従い、端子台10と接触した状態のまま車両右方に変位してもよい。図示された例では、側方からの荷重が入力されたことに応じて変位した側壁部42が、車室1内に配設された第1部材としてのシート4bと干渉している。そのため、側壁部42の変位はシート4bにより規制され停止する。また、側壁部42の停止と共に、端子台10の移動も停止する。即ち、シート4bは直接的に又は間接的に端子台10の移動を規制してもよい。また、側壁部42は、側方からの荷重に応じてシート4bと干渉すると共に、端子台10の移動を規制してもよい。なお、端子台10又は側壁部42の変位を規制する第1部材は、シート4bに限定されない。当該第1部材は想定される荷重の入力方向、又は端子台10の移動方向に応じて、適宜選択されてもよい。
【0043】
なお、図8に例示された状態では、衝突荷重に応じて傾くように変位したシート4aは、支持部材20及び制御ユニット30を覆う保護部材60に接触している。そのため、支持部材20及び制御ユニット30へのシート4aの直接的接触を抑制することができる。これにより、支持部材20及び制御ユニット30への衝突荷重の直接的入力を抑制することができる。即ち、側方からの荷重に支持部材20及び制御ユニット30をより確実に保護することができる。
【0044】
また、図示された例では、端子台10は側方からの荷重に応じて移動し、位置P1よりも車両右方の位置P2で停止している。位置P1は、支持部材20に固定されている際の端子台10の位置である。位置P2は側方からの荷重に応じて移動した端子台10の停止位置である。図示された状態において、電線6は弛みを維持しながら端子台10と制御ユニット30とを電気的に接続している。即ち、電線6は、側方からの荷重が入力されたことに応じた端子台10の移動の前後において、弛みを維持することができる長さを有してもよい。換言すれば、電線6の余長は、位置P2で停止している端子台10と、制御ユニット30との間において、電線6が弛みを維持したまま、端子台10と制御ユニット30とを電気的に接続できるように設定されてもよい。当該余長の値は特に限定されない。例えば、端子台10又は制御ユニット30と、電線6とが接続される接続部の位置、形状、又は電線6の配策経路等に応じて、任意の余長を設定してもよい。
【0045】
以下、実施形態に係る車両用電気機器の取付構造の作用効果について説明する。
【0046】
(1)実施形態に係る車両用電気機器の取付構造は、車両の第1電気機器10と、第1電気機器10を下方から支持する共に、当該第1電気機器10と少なくとも1つの第1固定点51で固定される支持部材20と、を備える。第1電気機器10に側方からの荷重が入力されたとき、少なくとも1つの第1固定点51における固定が解除され、第1電気機器10は支持部材20の上を移動可能となる。
【0047】
実施形態に係る車両用電気機器の取付構造によれば、支持部材20と端子台10との固定点51における固定は、例えば車両左方からの荷重が入力されたことに応じて解除される。これにより、端子台10は当該荷重に応じて支持部材20の上を移動可能となる。そのため、端子台10に過大な荷重が入力されることを抑制することができる。
【0048】
(2)上記車両用電気機器の取付構造は、支持部材20に固定され、かつ、第1電気機器10と電気的に接続された第2電気機器30を備えてもよい。第2電気機器30は支持部材20を介して第1電気機器10を支持してもよい。
【0049】
端子台10は支持部材20を介して制御ユニット30によって支持されるが、端子台10に側方から荷重が入力された際には、固定点51における端子台10と支持部材20との固定が解除される。そのため、当該荷重が支持部材20を介して制御ユニット30に伝達されることを抑制することができる。これにより、当該荷重から制御ユニット30をより確実に保護することができる。
【0050】
(3)支持部材20と第2電気機器30とは少なくとも1つの第2固定点52で固定されてもよい。少なくとも1つの第1固定点51の側方からの荷重に対する固定力は、少なくとも1つの第2固定点52の側方からの荷重に対する固定力よりも小さくてもよい。
【0051】
これにより、例えば端子台10に車両左方から入力された荷重が支持部材20を介して固定点52に伝達された場合であっても、固定点52の固定が解除されることを抑制しつつ、固定点51における固定をより確実に解除することができる。そのため、当該荷重から制御ユニット30をより確実に保護することができる。
【0052】
(4)上記車両用電気機器の取付構造は、第1電気機器10と第2電気機器30とを電気的に接続する電線6を備えてもよい。電線6は、側方からの荷重が入力されたことに応じた第1電気機器10の移動の前後において、弛みを維持することができる長さを有してもよい。
【0053】
これにより、例えば車両側突時の荷重に応じて端子台10が位置P1から位置P2(図8参照)に移動した場合であっても、電線6は弛みを有しながら、端子台10と制御ユニット30との電気的接続を維持することができる。そのため、端子台10が当該荷重に応じて移動した場合であっても、電線6に過剰な引張力が入力されることが抑制され、端子台10と制御ユニット30との電気的接続をより確実に維持することができる。
【0054】
(5)上記車両用電気機器の取付構造は、第1電気機器10を覆うカバー部材40を備えてもよい。側方からの荷重は、カバー部材40のうち第1電気機器10の一側の側部12aを覆う第1側壁部41を介して入力されてもよい。
【0055】
これにより、例えば車両側突時のシート4aの変位に起因して、側方からの荷重が端子台10に入力される際には、シート4aと端子台10との間に少なくとも側壁部41が介在する。そのため、端子台10に当該荷重が入力される際の接触面積をより大きく構成し、端子台10への局所的な荷重の入力を抑制することができる。従って、当該荷重が第1電気機器に入力される際の圧力を低減し、端子台10をより確実に保護することができる。
【0056】
(6)上記車両用電気機器の取付構造では、カバー部材40は第1電気機器10の他側の側部12bを覆う第2側壁部42を備えてもよい。第2側壁部42は、側方からの荷重が入力されたことに応じて車両の車室1内に配設された第1部材4bと干渉すると共に、第1電気機器10の移動を規制してもよい。
【0057】
例えば車両側突時の衝突荷重がシート4aから入力されたとき、カバー部材40の側壁部42はシート4bと干渉する。そして、端子台10の移動は側壁部42と当接することにより規制される。また、シート4bと端子台10との間には側壁部42が少なくとも介在する。これにより、側壁部42で端子台の移動量を抑制すると共に、端子台10が停止する際の局所的な荷重の入力を抑制し、端子台10をより確実に保護することができる。
【符号の説明】
【0058】
4b シート(第1部材)
6 電線
10 端子台(第1電気機器)
12a 側部
12b 側部
20 支持部材
30 制御ユニット(第2電気機器)
40 カバー部材
41 側壁部(第1側壁部)
42 側壁部(第2側壁部)
51 固定点(第1固定点)
52 固定点(第2固定点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8