(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081063
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ロール体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240610BHJP
C09J 7/50 20180101ALI20240610BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20240610BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240610BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240610BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/50
C09J133/08
B32B27/00 M
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194502
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】肥田 知浩
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA37
4F100AA37B
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4J040MA04
4J040MB03
4J040MB05
4J040MB09
(57)【要約】
【課題】ロール体から高速に粘着テープを引き出しても、ゴミや埃がテープ表面に付着することを抑制しつつ、糊ムラが視認されることも防止する。
【解決手段】ロール体10は、粘着テープ11が巻芯12に巻回されたロール体である。粘着テープ11は、粘着層21、着色層22、基材層23、及び、離型層24をこの順に有し、かつ粘着層21が離型層24に積層されるように巻回される。巻芯12は、樹脂製である。粘着テープ11を15m/分の速度で引き出したときの展開力は2.5N/50mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープが巻芯に巻回されたロール体であって、
前記粘着テープが粘着層、着色層、基材層、及び、離型層をこの順に有し、かつ前記粘着層が前記離型層に積層されるように巻回され、
前記巻芯が樹脂製であり、
前記粘着テープを15m/分の速度で引き出したときの展開力が2.5N/50mm以下である、ロール体。
【請求項2】
前記粘着層を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤である請求項1に記載のロール体。
【請求項3】
前記粘着層が、粘着剤を架橋剤で架橋されてなるものである請求項1に記載のロール体。
【請求項4】
前記粘着層を構成する粘着剤が、重量平均分子量(Mw)が100万以上であるポリマーを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項5】
前記着色層がカーボンブラックを含む印刷層である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項6】
前記着色層が、全面印刷された印刷層である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項7】
前記基材層が、PET樹脂フィルムである請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項8】
前記基材層の厚みが38μm以上75μm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項9】
前記離型層の常態剥離強度が600mN/50mm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項10】
前記離型層を構成する離型剤がシリコーン系離型剤である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項11】
前記離型層が帯電防止剤を含有しない請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項12】
前記粘着テープの総厚みが120μm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項13】
前記巻芯を構成する樹脂がポリオレフィン樹脂である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項14】
前記巻芯の外径が20mm以上200mm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【請求項15】
前記粘着テープの粘着層側の表面のアルミニウム板に対する粘着力が5N/25mm以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープを巻回してなるロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
PETフィルムなどの樹脂フィルム基材の片面に粘着剤からなる粘着層を設けた片面粘着テープは、保護テープとして使用されている。保護テープは、例えば、金属部品やケースなどの被着体に貼り付けて、被着体を傷や錆から保護するために使用される。
【0003】
片面粘着テープは、テープの粘着面に剥離フィルムが貼られていると、剥がした剥離フィルムが廃棄物として大量に出るので、剥離フィルムレスとすることが検討されている。剥離フィルムレスでは、例えば、粘着面の反対面である粘着テープ背面に離型層を設けるとともに、片面粘着テープをロール体として、粘着面をテープ裏面に直接貼り合わせされることが検討されている(例えば、特許文献1~3参照)。また、粘着テープのロール体は、一般的に紙芯や樹脂製の巻芯を中心に巻回されることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-127360号公報
【特許文献2】国際公開第2021-161952号
【特許文献3】特開2009-179719号公報
【特許文献4】特開平10-17216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護テープを被着体に貼り付ける作業は、手作業で行われることも多いが、近年、生産性向上のため機械貼りで行われることが多くなってきている。機械貼りにおいて、高速にテープを展開すると、展開時に静電気が発生して、テープ表面にゴミや埃が付着しやすくなるという問題がある。
また、粘着テープをロール体とする場合、巻芯を中心に巻回することが一般的であるが、巻芯から発生するゴミがテープ表面に付着するという問題もある。
【0006】
さらに、粘着テープを上記のとおり離型フィルムレスの片面粘着テープにすると、粘着面に空気起因の糊ムラが発生し、見栄えが悪くなる。また、糊ムラがあると、貼り付け時に被着体との間に気泡ができ、また、シワができるなどの貼り付け不良が発生しても、糊ムラにより気泡やシワが見えずに、貼り付け不良が発生していることを見逃しやすくなるという問題も発生する。
このような問題を解決するためには、基材に着色層を設けて糊ムラを見えなくすることが考えられる。しかし、基材に着色層を設けると、粘着面に付着するゴミや埃も見えにくくなるため、付着したゴミや埃に気付かずに放置してそれが剥がれの原因になるおそれがある。粘着テープをロール体として機械貼りにすると、上記の通りゴミや埃がテープの粘着面に付着しやすくなるので、このような問題が顕在化する。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ロール体から高速に粘着テープを引き出しても、ゴミや埃がテープ表面に付着することを抑制しつつ、糊ムラが視認されることも防止できる、粘着テープのロール体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[15]を要旨とする。
[1]粘着テープが巻芯に巻回されたロール体であって、
前記粘着テープが粘着層、着色層、基材層、及び、離型層をこの順に有し、かつ前記粘着層が前記離型層に積層されるように巻回され、
前記巻芯が樹脂製であり、
前記粘着テープを15m/分の速度で引き出したときの展開力が2.5N/50mm以下である、ロール体。
[2]前記粘着層を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤である上記[1]に記載のロール体。
[3]前記粘着層が、粘着剤を架橋剤で架橋されてなるものである上記[1]又は[2]に記載のロール体。
[4]前記粘着層を構成する粘着剤が、重量平均分子量(Mw)が100万以上であるポリマーを含む上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のロール体。
[5]前記着色層がカーボンブラックを含む印刷層である上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のロール体。
[6]前記着色層が、全面印刷された印刷層である上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のロール体。
[7]前記基材層が、PET樹脂フィルムである上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のロール体。
[8]前記基材層の厚みが38μm以上75μm以下である上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のロール体。
[9]前記離型層の常態剥離強度が600mN/50mm以下である上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のロール体。
[10]前記離型層を構成する離型剤がシリコーン系離型剤である上記[1]~[9]のいずれか1項に記載のロール体。
[11]前記離型層が帯電防止剤を含有しない上記[1]~[10]のいずれか1項に記載のロール体。
[12]前記粘着テープの総厚みが120μm以下である上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のロール体。
[13]前記巻芯を構成する樹脂がポリオレフィン樹脂である上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のロール体。
[14]前記巻芯の外径が20mm以上200mm以下である上記[1]~[13]のいずれか1項に記載のロール体。
[15]前記粘着テープの粘着層側の表面のアルミニウム板に対する粘着力が5N/25mm以上である上記[1]~[14]のいずれか1項に記載のロール体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロール体から高速に粘着テープを引き出しても、ゴミや埃がテープ表面に付着することを抑制しつつ、糊ムラが視認されることも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロール体を示す模式図である。
【
図3】静電気ゴミ付き性能の評価方法を示す模式図である。
【
図4】自背面剥離試験を示す模式図であり、
図4(A)は、上面図、
図4(B)は、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、実施形態を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るロール体10を示す。ロール体10は、粘着テープ11が巻芯12に巻回されてなるものである。粘着テープ11は、いわゆる片面粘着テープであり、粘着層21、着色層22、基材層23、及び、離型層24をこの順に有するものであり、粘着層21が離型層24に積層されるように巻回されるものである。なお、粘着テープ11は、ロール体10において、粘着層21が内側、離型層24が外側となるように巻かれるものであり、粘着層21が粘着テープ11の背面に貼り付けられる。
ロール体10において、巻芯12は樹脂製であり、かつ粘着テープ11を15m/分の速度でロール体10から引き出したときの展開力は、2.5N/50mm以下となる。
ロール体10は、以上の構成を有することで、ロール体10から高速に粘着テープ11を引き出しても、ゴミや埃が粘着層21の表面に付着することを抑制しつつ、引き出された粘着テープ11において糊ムラが視認されることも防止できる。
【0012】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
上記の通り、粘着テープを15m/分の速度でロール体から引き出したときの展開力は、2.5N/50mm以下である。上記展開力が2.5N/50mmより大きくなると、粘着テープを高速にロール体から引き出すと、静電気が発生して、ゴミや埃などが粘着層の表面に付着しやすくなる。上記の通り粘着テープに着色層が設けられることで、ゴミや埃などが粘着層の表面に付着すると、その付着したゴミや埃が見えにくくなるため、付着したゴミや埃に気付かずにそのまま使用することで剥がれが発生するおそれがある。
【0013】
上記展開力は、引き出し時の静電気の発生を抑制してゴミや埃の付着をより一層抑制する観点から、2.1N/50mm以下であることが好ましく、1.5N/50mm以下であることがより好ましく、1.2N/50mm以下であることがさらに好ましい。
また、上記展開力は、粘着層の粘着力を高くしやすくする観点から、0.1N/50mm以上であることが好ましく、0.2N/50mm以上であることがより好ましく、0.3N/50mm以上であることがさらに好ましい。
なお、上記展開力は、粘着層の材料、離型層の材料、粘着層の厚みなどにより適宜調整可能である。
【0014】
粘着テープの粘着層側の表面のアルミニウム板に対する粘着力は、5N/25mm以上であることが好ましい。粘着力が上記下限値以上であることで、被着体に対して適切な粘着力で貼付できるようになる。そのため、粘着テープを例えば保護テープとして使用する場合には、保護性能が良好なる。上記粘着力は、6N/25mm以上がより好ましい。
また、粘着力が必要以上に高くなったり、引き出し時の展開力が高くなったりすることを防止する観点から、粘着力は、40N/25mm以下が好ましく、30N/25mm以下がより好ましく、25N/25mm以上がさらに好ましい。
なお、粘着力は、JIS Z 2370に準拠して測定されるものであり、ロール体から引き出した粘着テープを、アルミニウム板に貼り付けて、23℃、50%RH環境下で20分間放置し、その後、23℃、50%RH環境下で180°方向に300mm/分の速度で引きはがしたときの力の平均値を計測して求めることができる。
【0015】
[基材層]
基材層は、粘着テープの基材として使用できるものであればよく、具体的には、不織布、樹脂フィルムなどが挙げられ、中でも樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムを使用することで、巻芯に適切に巻回しやすくなり、また、ロール体から引き出したときにシワなども発生しにくくなり、貼り付け性が良好となる。
樹脂フィルム構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム系樹脂などの各種樹脂が使用できる。これら樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してよく、これら樹脂は2種以上を混合して使用してもよい。また、樹脂フィルムは、単層でもよいし、多層でもよいが、多層の場合には、異なる種類の樹脂からなる層を複数層積層してもよいし、同じ種類の樹脂からなる層を複数層積層してもよい。
上記した中では、樹脂としてポリエステル樹脂を使用したポリエステル樹脂フィルムが好ましく、中でもPET樹脂フィルムがより好ましい。PET樹脂フィルムなどのポリエステル樹脂フィルムを使用すると、機械貼りなどにより粘着テープを高速に引き出して貼り付ける際でもシワが入りにくくなるなど、貼り付け性が良好になる。
【0016】
基材層の厚みは、例えば20μm以上110μm以下であればよい。基材層の厚みは、上記範囲内であると、巻回してロール体に容易にすることができ、また、粘着層などを適切に支持することもできる。さらに、上記下限値以上とすることで、機械貼りなどの場合でも、被着体に貼り付けやすくなる。
基材層の厚みは、38μm以上であることが好ましい。基材層の厚みが38μm以上であると、機械貼りなどにより、粘着テープを高速で引き出して被着体に貼り付ける際に、シワが入りにくくなり、貼り付け性が良好となる。貼り付け性をより優れたものとする観点から、基材層の厚みは、40μm以上がより好ましく、45μm以上がより好ましい。
【0017】
また、粘着テープは、例えば保護テープとして使用される場合、一部が重なるように被着体上に貼り合わされ、粘着テープの背面(すなわち、離型層)に粘着テープがさらに接着されることがある。そのような場合、基材層の厚みが薄いと基材層の反発が生じにくく、それにより、重ねて貼り合わされた部分でも、粘着テープが剥がれにくくなり、いわゆる自背面剥離性が良好となる。基材層の厚みは、自背面剥離性の観点からは、75μm以下が好ましく、65μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。
【0018】
[着色層]
着色層は、粘着層と基材層の間に設けられる層であり、好ましくは基材層の一方の面に形成されるとよい。粘着テープは、粘着層表面に、空気起因の糊ムラが発生することがあるが、着色層を有することで、糊ムラが視認されにくくなる。そのため、被着体に貼り付けた際の粘着テープの見栄えが良好になる。また、粘着テープを被着体に貼り付けた際に、被着体との間に気泡ができ、また、シワができるなどの貼り付け不良が発生しても、糊ムラに阻害されてシワや気泡が見えにくくなる不具合が生じにくくなる。
【0019】
着色層は、染料、顔料などの着色剤を含有するとよい。着色剤は、黒、白、灰などの無彩色の着色剤であってもよいし、赤、青、緑、黄、紫等の有彩色の着色剤であってもよい。
着色層は、印刷層であることが好ましい。印刷層は、着色剤を含むインクにより形成されるとよく、基材層の一方の面に印刷により形成されることが好ましい。印刷層は、特に限定されず、ロールコート法、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷法により形成されるとよい。
また、着色層は、黒色着色層であることが好ましく、中でも顔料としてカーボンブラックを含む着色層がより好ましく、したがって、着色層は、カーボンブラックを含むインクを印刷して形成された印刷層であることが特に好ましい。着色層は、カーボンブラックなどを含む黒色着色層とすることで、糊ムラがより一層視認しにくくなる。そのため、見栄えが良好となり、また、貼り付け時に生じる気泡、シワなども見えやすくなる。
【0020】
印刷層は、いわゆるベタ印刷により形成されたベタ柄印刷層であることが好ましく、全面印刷された印刷層であることがより好ましい。なお、全面印刷は、基材層に対して行われるとよい。着色層がベタ柄印刷層、特に全面印刷された印刷層であることで、糊ムラを効果的に見えにくくすることができる。
着色層は、特に限定されないが、例えば0.1μm以上10μm以下の厚みを有するとよい。
【0021】
[粘着層]
本発明の粘着テープは、基材層の着色層が設けられる面に粘着層が積層されている。粘着層は粘着剤により形成される層である。粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが挙げられる。これらのなかでは、耐久性、粘着力、汎用性などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0022】
粘着剤は、重量平均分子量(Mw)が、例えば20万以上、好ましくは40万以上、より好ましくは70万以上、さらに好ましくは100万以上であるポリマーを含むことが好ましい。粘着剤は、重量平均分子量を高くすることで、粘着層の弾性率が高くなり、引き出し時の展開力を低くしやすくなる。上記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば200万以下であるとよく、好ましくは160万以下である。
なお、重量平均分子量は、得られたポリマーに対してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。なお、ポリマーは、後述する通り、粘着剤の主剤を構成するものである。
【0023】
粘着剤は、ガラス転移温度が-45℃以上30℃以下であることが好ましく、より好ましくは-35℃以上20℃以下、さらに好ましくは-30℃以上18℃以下、よりさらに好ましくは-28℃以上15℃以下である。粘着剤のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることで、粘着層の粘着力及び引き出し時の展開力をいずれも所望の範囲内に調整しやすくなる。
なお、ガラス転移温度は、ポリマーを構成するモノマーの種類、量により調整できる。また、ガラス転移温度は、示差走査熱量計により測定でき、粘着剤が架橋される場合には、架橋される前の粘着剤に対して測定した値である。
【0024】
粘着剤に含まれる上記ポリマーは、粘着剤において主剤として使用されるものであるとよい。粘着剤の主剤としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム成分、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。上記の通り、粘着剤としてはアクリル系粘着剤が好ましく、主剤としてもアクリル系樹脂を使用することが好ましい。
主剤として使用されるポリマーは、粘着剤において主成分となるとよく、例えば、粘着剤全量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
(アクリル系樹脂)
以下、アクリル系粘着剤に使用されるアクリル系樹脂について詳細に説明する。
アクリル系粘着剤は、アクリル系樹脂として、アクリル系重合体(A)を含有する。アクリル系重合体(A)は、少なくともアクリル系モノマーを含むモノマー成分(以下、モノマー成分(X)ともいう)を重合したものである。アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)を含むモノマー成分(X)を重合した重合体が好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び(メタ)アクリル酸一方又はこれら両方を意味する用語として使用し、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの一方又はこれら両方を意味する用語として使用し、他の類似する用語も同様である。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(A1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
モノマー(A1)の中でも、引き出し時の展開力を小さくしつつ、粘着力を適度に確保する観点からアルキル基の炭素数が1~12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が2~8のアルキルアクリレートを含むことがより好ましい。アルキル基の炭素数が2~8のアルキルアクリレートは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)全量基準で、例えば50~100質量%が好ましく、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
【0028】
アクリル系重合体(A)は、極性基を有する重合体であることが好ましい。極性基としては、活性水素を有し、好ましくは後述する架橋剤(B)と反応可能な官能基であり、具体的には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。これらの官能基のなかでは、カルボキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。アクリル系重合体(A)は、カルボキシ基及び水酸基の一方のみを有してもよいし、両方を有してもよい。カルボキシ基及び水酸基は、後述する架橋剤(B)との反応性が高く、容易に架橋構造を形成することが可能である。また、極性の高いカルボキシ基を有するアクリル系重合体(A)を使用することで、被着体表面と化学的に結合し、被着体に対する粘着力を高めやすくなる。
【0029】
極性基を有するアクリル系重合体(A)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)と、極性基含有モノマー(A2)との共重合体、又は、上記モノマー(A1)及び(A2)と、(A1)及び(A2)以外のその他のモノマー(A3)との共重合体が挙げられる。
【0030】
極性基含有モノマー(A2)のうちカルボキシ基を含有するモノマー(以下、「カルボキシ基含有モノマー」ともいう)としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸及びメタアクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
また、極性基含有モノマー(A2)のうち水酸基を含有するモノマー(以下、「水酸基含有モノマー」ともいう)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
極性基含有モノマー(A2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
極性基含有モノマー(A2)としては、カルボキシ基含有モノマー及び水酸基含有モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、これらのうち一方が使用されてもよいし、両方が使用されてもよい。また、カルボキシ基含有モノマー及び水酸基含有モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種としては、好ましくは、アクリル酸、メタアクリル酸、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0032】
上記(A1)及び(A2)以外のその他のモノマー(A3)としては、モノマー(A1)及び(A2)と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル基を有する化合物、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルモルフォリン、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。モノマー(A3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)の使用量は、モノマー成分(X)全量基準で、50質量%以上99.5質量%以下、より好ましくは60質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上98質量%以下である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)の使用量が上記範囲内であると、粘着力、引き出し時の展開力を所望の範囲内に調整しやすくなる。
アクリル系重合体(A)における極性基含有モノマー(A2)の使用量は、モノマー成分(X)全量基準で、0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。極性基含有モノマー(A2)の使用量が上記範囲内であると、極性基と架橋剤(B)との架橋反応が進行し易くなる。また、粘着層の被着体に対する粘着力を向上させやすくなる。
アクリル系重合体(A)におけるその他のモノマー(A3)の使用量は、モノマー成分(X)全量基準で、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。また、その他のモノマー(A3)は、使用しなくてもよく、その他のモノマー(A3)の上記使用量は、0質量%以上であればよいが、使用する場合には、例えば1質量%以上であればよい。
【0034】
アクリル系重合体(X)の製造方法に特に制限はないが、例えば、モノマー成分(X)を重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法が挙げられる。ラジカル重合の方式は特に限定されず、例えば、リビングラジカル重合、フリーラジカル重合等が挙げられる。
重合開始剤としては、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合、エマルジョン重合、懸濁重合、活性エネルギー線硬化重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。溶液重合は、沸点重合であってもよいし定温重合であってもよいが、沸点重合が好ましい。
【0035】
(架橋剤(B))
本発明の粘着剤は、上記したアクリル系重合体(A)などの主剤に加えて、架橋剤(B)を含有することが好ましい。架橋剤(B)は、アクリル系重合体(A)などの主剤が有する極性基との反応により、粘着層を架橋しうる成分である。
したがって、粘着層は、粘着剤が架橋剤により架橋されてなるものであることが好ましい。粘着層は、架橋剤により架橋されることで、機械強度を高めやすくなり、また、引き出し時の展開力や粘着力を所望の範囲内に調整しやすくなる。なお、粘着剤は、加熱されることで架橋されるとよく、例えば、基材層などに塗布された後に加熱などされることで、架橋されるとよい。
架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0036】
イソシアネート系架橋剤は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物が好ましい。
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、コロネートL-45E、コロネートL-55E(東ソー社製)等の各種ポリイソシアネート化合物、スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)等のビューレットポリイソシアネート化合物、デスモジュール(コペストロ社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン社製)等のイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、スミジュールL(住友バイエルウレタン社製)、コロネートL、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0037】
エポキシ系架橋剤は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、E-AX、E-5C(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0038】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、N,N′-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N′-ジフェニルメタン-4,4′-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
また、金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられ、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムキレートが好ましい。市販品としては、アルミキレートA、アルミキレートM(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
粘着剤における架橋剤(B)の含有量は、粘着剤の種類などに応じて適宜設定すればよいが、例えば、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。架橋剤の量を上記範囲内とすることで、粘着層の被着体に対する粘着力や、引き出し時の展開力などを所望の大きさに調整しやすくなる。
【0040】
(粘着付与樹脂(C))
粘着剤は、アクリル系重合体(A)などの主剤、又はアクリル系重合体(A)などの主剤及び架橋剤(B)に加えて、さらに粘着付与樹脂(C)を含有することが好ましい。粘着付与樹脂(C)としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、クマロン系樹脂、ケトン系樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、粘着付与樹脂(C)としてはロジン系樹脂及びテルペンフェノール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ロジン系樹脂単独、又はロジン系樹脂及びテルペンフェノール系樹脂を併用することがより好ましい。ロジン系樹脂としては、例えば、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、ロジンエステル系樹脂等が挙げられる。また、テルペンフェノール系樹脂はテルペン構造とフェノール構造とを有する樹脂である。
粘着付与樹脂(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
粘着付与樹脂(C)の軟化点は、例えば90℃以上であればよく、好ましくは95℃以上である。粘着付与樹脂(C)の軟化点を一定値以上とすることで、ある程度高温環境下でも適切な粘着力を発揮することができる。また、このような観点から、粘着付与樹脂(C)は、少なくとも一部の粘着付与樹脂(C)の軟化点が、120℃以上であることが好ましく130℃以上であることが好ましい。また、粘着付与樹脂(C)の軟化点は、粘着剤に適切な粘着性能を付与する観点から、165℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、155℃以下がさらに好ましい。なお、軟化点はJIS K2207に準拠して測定することができる。
【0042】
粘着剤中の粘着付与樹脂(C)の含有量は、アクリル系重合体(A)などの主剤100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。粘着付与樹脂(C)の含有量を上記範囲内とすることで、粘着テープに適切な粘着力を付与しやすくなる。粘着剤は、粘着付与樹脂を含有しなくてもよく、0質量以上であればよいが、粘着付与樹脂を含有する場合には、例えば5質量部以上であればよい。
【0043】
粘着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、充填剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、粘度調節剤等の粘着剤に配合される添加剤が適宜配合されてもよい。
また、粘着剤は、有機溶剤等により希釈されてもよい。希釈溶剤は、アクリル系重合体(A)などの主剤を合成するときに使用した溶媒でもよいし、アクリル系重合体(A)を合成した後に加えられたものでもよい。
【0044】
粘着層の厚みは、例えば10μm以上100μm以下、好ましくは15μm以上70μm以下、さらに好ましくは15μm以上50μm以下である。粘着層の厚みを上記範囲内とすることで、引き出し時の展開力、粘着力を所望の範囲内に調整しやすくなる。
【0045】
[離型層]
本発明の離型層は、離型剤により形成される層である。離型層は、基材層の着色層が設けられた面とは反対側の面に形成されるとよい。離型剤としては、シリコーン系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、フッ素系離型剤などの公知の離型剤が挙げられるが、これらの中では、展開力を低くできる観点からシリコーン系離型剤が好ましい。離型層の厚みは、特に限定されず、一般的な離型層の厚みであればよい。
【0046】
離型層の常態剥離強度は、600mN/50mm以下であることが好ましい。離型層の常態剥離強度が600mN/50mm以下であると、粘着テープを高速でロール体から引き出しても、展開力が高くなることが防止できる。離型層の常態剥離強度は、展開力を好適な範囲にする観点から450mN/50mm以下であることがより好ましく、350mN/50mm以下であることがさらに好ましい。
また、離型層の常態剥離強度は、特に限定されないが、5mN/50mm以上であることが好ましく、10mN/50mm以上であることがより好ましく、15mN/50mm以上であることがさらに好ましい。常態剥離強度を一定値以上とすることで、ロール体にしたときに巻回された粘着テープが、不意に剥がれることを防止できる。
離型層の常態剥離強度は、離型剤の組成や、離型層の厚みにより適宜調整することができる。また、本発明では、基材層の片面に離型層が積層された市販の離型フィルムを使用してよく、市販品から適宜選択して、離型層が所望の常態剥離強度を有するものにしてもよい。
【0047】
なお、常態剥離強度は、以下の測定方法により測定できる。
日東電工社製のポリエステル粘着テープ「No.31B」を測定テープとして23℃の条件で、離型層が形成された基材層の離型層側の面に貼り合わせる。そして、23℃、50RH%の条件下で24時間放置した後、23℃、50RH%の条件下で基材層側を固定して、180°方向に300mm/分の速度で、基材層側を引き剥がしたときの力の平均値を計測して常態剥離強度とする。
【0048】
離型層は、帯電防止剤を含有しないことが好ましい。上記の通り粘着テープは展開力を小さくすることで、高速で引き出しても、静電気の発生を防止できる。そのため、離型層が帯電防止剤を含有しなくても、ゴミや埃が粘着層の表面に付着することを防止できる。また、離型層が帯電防止剤を含有しないことで、製造コストや工程数の上昇を抑え、また、帯電防止剤のブリードアウトなども防止できる。
なお、帯電防止剤としては、例えば、離型層の表面抵抗率を低下させる成分が挙げられ、一般的に、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などの界面活性剤、PEDOT/PPSなどの導電性高分子、金属粉末、金属酸化物粉末、炭素系粉末などの各種導電性材料などが挙げられる。
【0049】
粘着テープは、その総厚みが、例えば150μm以下であるが、120μm以下であることが好ましく、110μm以下であることがより好ましく、90μm以下であることがさらに好ましい。粘着テープは、一定の厚み以下とすることで、大きな応力など発生することなく、巻芯上に巻回させることができる。また、120μm以下とすることで、厚みが必要以上に大きくならず、いわゆる自背面剥離性が良好となりやすくなる。
また、粘着テープの総厚みは、各層の厚みを一定以上として貼り付け性を良好にする観点から、例えば35μm以上、好ましくは50μm以上であるが、引き出したときにシワなどが発生しにくい観点から、より好ましくは65μm以上、さらに好ましく75μm以上である。
【0050】
なお、粘着テープは、上記した粘着層、着色層、基材層、及び離型層からなるものでもよいが、必要に応じてこれら以外の層が設けられてもよい。例えば、基材層の一方又は両方の面にプライマー剤などが塗布されて、プライマー層などが形成されてよく、プライマー層上に着色層や離型層が積層されてもよい。
【0051】
[巻芯]
本発明の粘着テープは、巻芯に巻回されてなるものである。本発明では、巻芯としては、樹脂製の巻芯が使用される。樹脂製の巻芯を使用することで、巻芯から紙粉などのゴミや埃が生じにくくなるので、引き出した粘着テープの粘着層の表面にゴミや埃が付着して剥がれの原因となることを防止できる。
【0052】
巻芯に使用される樹脂は、特に限定されず、熱可塑性樹脂でもよいし、熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂のいずれでもよい。巻芯を構成する具体的な樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)で代表されるポリエチレン樹脂、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどで代表されるポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などのポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、PET樹脂で代表されるポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、硬質ポリウレタン樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ乳酸、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
これらのなかは、汎用性、機械強度などの観点から、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂が好ましく、中でもポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0053】
また、巻芯は、その外径が20mm以上200mm以下であることが好ましい。巻芯の外径が上記下限値以上であると、粘着テープを巻芯上に適切に巻回させることができる。また、上記上限値以下であると、ロール体の外径が必要以上に大きくなることを防止できる。これら観点から、巻芯の外径は、25mm以上190mm以下であることがより好ましく、50mm以上180mm以下であることがさらに好ましい。
なお、巻芯に巻回された粘着テープの幅(すなわち、ロール幅)は、特に限定されないが、例えば10mm以上2000mm以下、好ましくは25mm以上1500mm以下である。
【0054】
(ロール体の製造方法)
ロール体は、粘着テープを製造して、粘着テープを巻芯を中心に公知の方法で巻き取ることで製造することができる。
粘着テープの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法により製造することができる。例えば、必要に応じて有機溶剤などで希釈された粘着剤を用意し、粘着剤を、基材層の着色層が設けられた面に直接塗布して必要に応じて加熱して乾燥などすることで、基材層の着色層が設けられた面に粘着層を形成することができる。
また、剥離シートなどの転写シート上に予め形成した粘着層を、基材層の着色層が設けられた面に転写することで、基材層の着色層が設けられた面に粘着剤層を形成してもよい。なお、転写シート上の粘着層は、粘着剤を、転写シートに塗布して必要に応じて加熱して乾燥などすることで形成するとよい。
また、基材層の着色層が設けられる面とは反対側の面には、剥離剤を塗布などすることで離型層を形成すればよい。離型層は、特に限定されないが、基材層の着色層が設けられた面上に粘着層を形成する前に形成すればよい。
【0055】
本発明のロール体は、特に限定されないが、具体的には1~100m/分程度の速度で引き出されて、その引き出された粘着テープが被着体に貼付されて使用されるとよい。本発明のロール体は、機械貼りにより被着体に貼付されるとよく、したがって、例えば、引き出し機により引き出された粘着テープが、公知の貼り付け機構により被着体に貼り合わされるとよい。粘着テープは、引き出された後、被着体に貼り合わされる前、または貼り合わされた後に適宜カットされるとよい。
本発明の粘着テープは、保護テープとして使用されることが好ましく、貼付した被着体を保護するとよい。また、被着体は、特に限定されず、樹脂製、金属製、これらの組み合わせでもよいし、これら以外の素材の被着体であってもよい。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0057】
[測定方法及び評価方法]
本発明においては、各物性の測定、及び評価は以下の要領で行った。
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は以下の測定条件でゲルパミエーションクロマトグラフを用いて測定した。
ゲルパミエーションクロマトグラフ:e2695 Separations Module(Waters社製)
検出器:示差屈折計(2414、Waters社製)
カラム:GPC KF-806L(昭和電工社製)
標準試料:STANDRAD SM-105、昭和電工社製
サンプル流量:1mL/min
カラム温度:40℃
【0058】
<ガラス転移温度(Tg)>
粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、塗布前の粘着剤をサンプルとして、示差走査熱量計「DSC220C」(SIIナノテクノロジー社製)により、昇温速度5℃/分にて測定した。
【0059】
<展開力>
ロール状に巻き取った粘着テープ(ロール体)を50mm幅にカットし、
図2に示すとおりに垂直方向に15m/分の速度で引き出したときに掛かる力の平均値を測定した。計測期間は巻き初めから10秒と巻き終わりの10秒は省き、1分間引き出したときの値を記した。なお、展開力は、23℃、50%RHの環境下で測定した。
なお、ロール幅が50mm以下である場合には、粘着テープのカットを行わずにそのまま引き出し、展開力を50mm換算で算出する。
【0060】
<アルミニウムに対する粘着力>
アルミニウムに対する粘着力は、JIS Z 2370に準拠して測定した。具体的には、純アルミ材(A1050)の板(2mm×50mm×150mm)の表面をアルコールを使用して脱脂した後に、ロール体から引き出し、かつ25mm幅、150mm長さにカットしたテープを2kgローラーを使用して1往復圧着して貼り付けた。貼付け後、23℃、50%RHの環境下で20分間放置し、放置後、23℃、50%RHの環境下で180°方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときの力の平均値を計測して粘着力とした。
なお、ロール幅が25mm以下である場合には、粘着テープの幅方向のカットを行わず、25mmあたりの粘着力に換算した。
【0061】
<静電気ゴミ付き性能>
図3に示すとおり、ガラス台30の上にパルプ材31(120mm×210mm、商品名「キムワイプ」、日本製紙クレシア社製)を置いた。また、引き出した粘着テープ11が200mm上に通過するように、ロール体10から粘着テープ11を15m/分の速度で引き出して、パルプ材31が静電気で持ち上げられるか否かを確認した。持ち上げられない場合を「OK」、持ち上げられた場合を「NG」とした。
【0062】
<紙粉混入>
巻芯の成分にパルプ材が含まれるものは紙粉の混入可能性ありとして判断し、パルプ材が含まれないものは混入可能性なしと判断した。
【0063】
<糊ムラ>
アルミ材(A1050)の板に対して、ロール体から引き出してカットした粘着テープ(50mm×50mm)を、ローラーを用いて空気が入らないように貼付けた。テープ面に蛍光灯を当てながら目視で観察した際にテープ面の糊ムラが見えるか否かで判断した。
【0064】
<自背面剥離試験>
図4に示す通りアルミ材(A1050)の板41(2mm×50mm×150mm)に対して、ロール体から引き出して50mm幅にカットした粘着テープ11を、引っ張りながら板41の幅方向に巻きつけるように1周にわたって貼付けた。この際、5mmだけ粘着テープ11の背面に重なるように貼り付けた。その状態で60℃で1日放置し、剥がれなかったものを「A」、エッジ部が浮いて僅かに剥がれかけているものを「B」、粘着テープが重なる部分で剥がれが確認されたものを「C」とした。
【0065】
<貼り付け時のシワ>
粘着テープの基材層として使用するフィルムを150mm×100mmのサイズにカットした。万能引張試験機を用いて、150mmの内100mmの間隔で100mm幅の中央でチャッキングした。15Nの力がかかるように引張り、その際に基材にしわがないものは「A」、ややヨレが発生しかけているものは「B」、シワになったものは「C」とした。
【0066】
(アクリル系粘着剤Aの調製)
温度計、攪拌機、冷却管、滴下漏斗及び窒素ガス導入官を備えた反応器にて、n-ブチルアクリレート66.4g、2-エチルヘキシルアクリレート25.6g、アクリル酸2.8g、及び、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.5gからなるモノマー混合物を酢酸エチル83gに溶解し、還流点において、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド4mmolを重合開始時~4時間に適宜加え、アクリルモノマーを重合させた。4時間後、更に重合開始剤2mmolを4~6時間に適宜を加え残留モノマーを低減した後、更なる残留モノマー低減、及び残留開始剤低減の為、10時間反応させたその後、酢酸ビニルモノマーを4.7g投入し、溶液を冷却した。
得られた溶液に、アクリル系重合体固形分100質量部に対して、有効成分量基準で、粘着付与樹脂(C)としてロジン系樹脂(商品名「ペンセル D-160」、荒川化学工業社製)10質量部と、架橋剤(B)としてデスモジュール(商品名、コペストロ社製、有効成分量55質量%)1.4質量部を加えて均一になるよう攪拌してアクリル系粘着剤Aを得た。得られたアクリル系粘着剤溶液の特性は表1に示す通りであった。
【0067】
(アクリル系粘着剤Bの調製)
温度計、攪拌機、冷却管、滴下漏斗及び窒素ガス導入官を備えた反応器にて、n-ブチルアクリレート82g、2-エチルヘキシルアクリレート5g、エチルアクリレート10g、アクリル酸3g、及び、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.2gからなるモノマー混合物を酢酸エチル83gに溶解し、還流点において、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加した。5時間還流させて、アクリル共重合体の溶液を得たのち溶液を冷却した。
得られた溶液に、アクリル系重合体固形分100質量部に対して、有効成分量基準で、粘着付与樹脂(C)としてロジン系樹脂(商品名「ペンセル D-135」、荒川化学工業社製)15質量部と、テルペンフェノール系樹脂(商品名「YSポリスター T-160」、ヤスハラケミカル社製)10質量部と、ロジン系樹脂(商品名「スーパーエステル A-75」、荒川化学工業社製)10質量部と、架橋剤(B)としてデスモジュール(商品名、コペストロ社製、有効成分量55質量%)1.9質量部を加えて均一になるよう攪拌してアクリル系粘着剤Bを得た。得られたアクリル系粘着剤溶液の特性は表1に示す通りであった。
【0068】
(アクリル系粘着剤Cの調製)
温度計、攪拌機、冷却管、滴下漏斗及び窒素ガス導入官を備えた反応器にて、n-ブチルアクリレート78.4g、2-エチルヘキシルアクリレート9.8g、イソノニルアクリレート9.8g、アクリル酸2gからなるモノマー混合物を酢酸エチル83gに溶解し、還流点において、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加した。5時間還流させて、アクリル共重合体の溶液を得たのち溶液を冷却した。
得られた溶液に、アクリル系重合体固形分100質量部に対して、有効成分量基準で、架橋剤(B)としてE-5C(商品名、綜研化学社製、有効成分5質量%)0.13質量部を加えて均一になるよう攪拌してアクリル系粘着剤Cを得た。得られたアクリル系粘着剤溶液の特性は表1に示す通りであった。
【0069】
[実施例1]
(ロール体の作製)
基材層としてのPETフィルム(50μm)の片面に離型層を形成した、環境対応NSセパレーター(商品名、中本パックス社製、離型層処方=「重剥離C」、常態剥離強度300mN/50mmであるSi離型剤A)の離型層形成面とは反対側の面に、カーボンブラックインクによりベタ印刷を行い、基材層の全面に厚み2μmの印刷層(着色層)を形成して、着色層/基材層/離型層からなるフィルムを得た。得られたフィルムの印刷層側の面に、乾燥後の厚みが30μmとなるようにアクリル系粘着剤Aを塗布して、110℃で3分間加熱することで乾燥して粘着層を形成して、粘着層/着色層/基材層/離型層の積層構造を有する粘着テープを得た。得られた粘着テープをHDPE製の外径85mmの巻芯に巻回してロール体(ロール幅50mm、巻き取られたテープの長さ100m)を得た。
【0070】
[実施例2]
中本パックス社製の環境対応NSセパレーターにおいて、離型剤を「重剥離D1」、常態剥離強度が500mN/50mmであるSi離型剤Bに変更し、かつ、巻芯をABS製の外径85mmの巻芯に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0071】
[実施例3~4]
使用する粘着剤を、表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0072】
[実施例5~7]
基材層であるPETフィルムの厚みを表2、3の通りに変更し、かつ巻芯をABS製の外径85mmの巻芯に変更した以外は、実施例3と同様に実施した。
【0073】
[実施例8]
基材層であるPETフィルムの厚みを100μmに変更した以外は、実施例3と同様に実施した。
【0074】
[比較例1]
巻芯を紙製の外径85mmの巻芯に変更した以外は、実施例3と同様に実施した。
【0075】
[比較例2]
中本パックス社製の環境対応NSセパレーターにおいて、離型剤を常態剥離強度が700mN/50mmで、非シリコーン離型剤である「非SiF05N」に変更し、かつ、巻芯をABS製の外径85mmの巻芯に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0076】
[比較例3]
カーボンブラックインクによるベタ印刷を省略した以外は、実施例3と同様に実施した。
得られた粘着テープは、粘着層/基材層/離型層の積層構造を有していた。
【0077】
【表1】
※Tg又は軟化点の欄は、モノマー成分(X)においては、各モノマーのホモポリマーのTgを示す。また、粘着付与樹脂(C)においては、軟化点を示す。
※Tgはアクリル系粘着剤溶液に対して測定して得た、架橋前の粘着剤に対する測定値である。Mw(重量平均分子量)は粘着付与樹脂及び架橋剤配合前のアクリル系重合体に対して測定した。
【0078】
【0079】
【表3】
※層構成におけるカッコ内の数値は、厚み(単位はμm)を意味する。
【0080】
以上の各実施例に示すとおり、粘着テープが粘着層、着色層、基材層、及び、離型層をこの順に有し、かつ巻芯が樹脂製であるとともに、粘着テープを15m/分の速度で引き出したときの展開力が2.5N/50mm以下であることで、高速でテープを引き出した時に粘着層の表面にゴミや埃が付着することを防止できた。また、糊ムラが視認されることも防止できた。
それに対して、比較例1、2では、巻芯が紙製であり、または、展開力が2.5N/50mmより高くなることで、高速でテープを引き出した時に粘着層の表面にゴミや埃が付着することを十分に防止できなかった。
また、比較例3では、着色層がなかったため、糊ムラが視認され、見栄えが悪くなった。さらに、貼り付け時に被着体との間に気泡ができ、また、シワができるなどの貼り付け不良が発生すると、糊ムラにより気泡やシワが見えずに、貼り付け不良が発生したことを確認できなった。