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特開2024-81066路面状態判定方法及び路面状態判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081066
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】路面状態判定方法及び路面状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240610BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240610BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240610BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240610BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194517
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋光
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181MC16
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】路面の段差を高精度に検出可能な路面状態判定方法及び路面状態判定装置が提供される。
【解決手段】路面状態判定方法は、路面の段差を判定する路面状態判定装置が実行する路面状態判定方法であって、車両の位置、速度及び高さ方向の加速度を含む車両の走行状態を時系列で示す走行実績データと、道路地図情報と、を取得する取得ステップ(S1)と、加速度と速度との関係に基づいて、加速度の異常値を検出する検出ステップ(S2)と、異常値が検出された場合に、異常値に対応する車両の位置と道路地図情報とを対応付けて、路面の段差の位置を特定する特定ステップ(S3)と、少なくとも位置を含む、特定された路面の段差についての情報である段差情報を作成する作成ステップ(S4)と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の段差を判定する路面状態判定装置が実行する路面状態判定方法であって、
車両の位置、速度及び高さ方向の加速度を含む前記車両の走行状態を時系列で示す走行実績データと、道路地図情報と、を取得する取得ステップと、
前記加速度と前記速度との関係に基づいて、前記加速度の異常値を検出する検出ステップと、
前記異常値が検出された場合に、前記異常値に対応する前記車両の位置と前記道路地図情報とを対応付けて、前記路面の段差の位置を特定する特定ステップと、
少なくとも位置を含む、特定された前記路面の段差についての情報である段差情報を作成する作成ステップと、を含む、路面状態判定方法。
【請求項2】
前記検出ステップは、前記加速度に基づいて算出される振動の最大振幅と前記速度との関係において、通常走行時における前記速度に応じた前記最大振幅として定められる上限を超える異常振幅が存在する場合に、前記異常振幅に対応する前記加速度を前記異常値とする、請求項1に記載の路面状態判定方法。
【請求項3】
前記特定ステップは、前記異常値が検出された場合に、前記異常値が示す周期に基づいて前記路面の段差の種類を判定し、
前記段差情報は、前記路面の段差の種類を含む、請求項1又は2に記載の路面状態判定方法。
【請求項4】
前記加速度は、10Hz以上でサンプリングされる、請求項1又は2に記載の路面状態判定方法。
【請求項5】
前記段差情報を前記路面の保守を行う道路管理者に出力する出力ステップを含む、請求項1又は2に記載の路面状態判定方法。
【請求項6】
前記段差情報及び前記道路地図情報に基づいて生成される、前記路面の段差の位置を示す地図を出力する出力ステップを含む、請求項1又は2に記載の路面状態判定方法。
【請求項7】
前記取得ステップは、前記車両の現在の位置を取得し、
前記車両の現在の位置、前記段差情報及び前記道路地図情報に基づいて、前記車両が前記路面の段差の位置に近づいた場合に警告を出力する出力ステップを含む、請求項1又は2に記載の路面状態判定方法。
【請求項8】
路面の段差を判定する路面状態判定装置であって、
車両の位置、速度及び高さ方向の加速度を含む前記車両の走行状態を時系列で示す走行実績データと、道路地図情報と、を取得する取得部と、
前記加速度と前記速度との関係に基づいて、前記加速度の異常値を検出する検出部と、
前記異常値が検出された場合に、前記異常値に対応する前記車両の位置と前記道路地図情報とを対応付けて、前記路面の段差の位置を特定する特定部と、
少なくとも位置を含む、特定された前記路面の段差についての情報である段差情報を作成する作成部と、を備える、路面状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路面状態判定方法及び路面状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面の段差を車両が乗り越す際の車両の走行動作を制御する装置が知られている。例えば特許文献1は、前輪が段差を乗り越す直前の車速が目標車速となるように、後輪が段差を乗り越した後の車両の走行動作を制御する、自動運転車両を含む種々の車両に対して適用可能な車両制御装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-127142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術は、段差があることを車速の減少と加速度の大きさの増加だけで判定しており、通常の走行における減速中に段差のない場所で誤検出することがあり、精度が十分でない。また、路面の段差の情報を共有して道路の保守及び車両の走行制御などに活用することが求められているが、特許文献1の技術は自車での利用に限定しており、情報共有ができない。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、路面の段差を高精度に検出可能な路面状態判定方法及び路面状態判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係る路面状態判定方法は、
路面の段差を判定する路面状態判定装置が実行する路面状態判定方法であって、
車両の位置、速度及び高さ方向の加速度を含む前記車両の走行状態を時系列で示す走行実績データと、道路地図情報と、を取得する取得ステップと、
前記加速度と前記速度との関係に基づいて、前記加速度の異常値を検出する検出ステップと、
前記異常値が検出された場合に、前記異常値に対応する前記車両の位置と前記道路地図情報とを対応付けて、前記路面の段差の位置を特定する特定ステップと、
少なくとも位置を含む、特定された前記路面の段差についての情報である段差情報を作成する作成ステップと、を含む。
この構成により、路面の段差を高精度に検出することができる。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記検出ステップは、前記加速度に基づいて算出される振動の最大振幅と前記速度との関係において、通常走行時における前記速度に応じた前記最大振幅として定められる上限を超える異常振幅が存在する場合に、前記異常振幅に対応する前記加速度を前記異常値とする。
この構成により、速度による振動への影響を考慮して、誤検出の少ない路面の段差の検出が可能になる。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記特定ステップは、前記異常値が検出された場合に、前記異常値が示す周期に基づいて前記路面の段差の種類を判定し、
前記段差情報は、前記路面の段差の種類を含む。
この構成により、路面の段差の位置だけでなく、種類についても高精度に特定することができる。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記加速度は、10Hz以上でサンプリングされる。
この構成により、車両の速度が速い場合でも、正確に路面の段差を検出することができる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記段差情報を前記路面の保守を行う道路管理者に出力する出力ステップを含む。
この構成により、段差情報を路面の保守に役立てることができる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記段差情報及び前記道路地図情報に基づいて生成される、前記路面の段差の位置を示す地図を出力する出力ステップを含む。
この構成により、例えば車両の運転者が、走行前に路面の段差を把握することが可能になる。
【0012】
(7)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記取得ステップは、前記車両の現在の位置を取得し、
前記車両の現在の位置、前記段差情報及び前記道路地図情報に基づいて、前記車両が前記路面の段差の位置に近づいた場合に警告を出力する出力ステップを含む。
この構成により、車両をより安全に走行させることができる。
【0013】
(8)本開示の一実施形態に係る路面状態判定装置は、
路面の段差を判定する路面状態判定装置であって、
車両の位置、速度及び高さ方向の加速度を含む前記車両の走行状態を時系列で示す走行実績データと、道路地図情報と、を取得する取得部と、
前記加速度と前記速度との関係に基づいて、前記加速度の異常値を検出する検出部と、
前記異常値が検出された場合に、前記異常値に対応する前記車両の位置と前記道路地図情報とを対応付けて、前記路面の段差の位置を特定する特定部と、
少なくとも位置を含む、特定された前記路面の段差についての情報である段差情報を作成する作成部と、を備える。
この構成により、路面の段差を高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、路面の段差を高精度に検出可能な路面状態判定方法及び路面状態判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る路面状態判定装置を含む路面状態判定システムの構成例を示す図である。
図2図2は、図1の路面状態判定システムの構成例を示す別の図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る路面状態判定方法の処理を例示するフローチャートである。
図4図4は、加速度の異常値について説明するための図である。
図5A図5Aは、異常値が示す周期を例示する図である。
図5B図5Bは、異常値が示す周期を例示する図である。
図5C図5Cは、異常値が示す周期を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る路面状態判定方法及び路面状態判定装置が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0017】
図1及び図2は、路面状態判定システム1の構成例を示す図である。路面状態判定システム1は、路面状態判定装置10を含む。図1は路面状態判定装置10の内部構成例を含むブロック図である。図2は路面状態判定システム1の全体構成を示す。
【0018】
本実施形態に係る路面状態判定装置10は路面の段差を判定する。路面状態判定装置10は、タイヤ30を装着する車両20から走行状態を示すデータを取得して、路面の段差を検出して、段差の位置などを特定する。路面状態判定装置10は、特定した路面の段差についての情報である段差情報を、例えば路面の保守を行う道路管理者、車両20の運転者又は管理者などに提示することができる。本実施形態において、車両20は一般的な乗用車であるが、特定の車種に限定されない。車両20は、タクシー、バス、トラック等であり得る。
【0019】
路面状態判定装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、取得部131と、検出部132と、特定部133と、作成部134と、出力部135と、を備える。路面状態判定装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。路面状態判定装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0020】
路面状態判定装置10は、ネットワーク40で接続される車両20に搭載される装置(データ収集部70及び車載通信部80)の少なくとも1つとともに、路面状態判定システム1を構成してよい。ネットワーク40は例えばインターネットである。また、ネットワーク40は、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。ここで、路面状態判定システム1は、さらに路面の保守を行う道路管理者又は車両20を管理する管理者のコンピュータを含んで構成されてよい。道路管理者又は車両20の管理者のコンピュータは、サーバ又は移動端末などであってよく、例えば路面状態判定装置10からの段差情報を、ネットワーク40を介して取得してディスプレイに表示してよい。また、路面状態判定システム1は、さらにネットワーク40で接続される情報提供装置を備えて構成されてよい。情報提供装置は、例えば道路地図情報などを提供するコンピュータであってよい。
【0021】
本実施形態において、車両20は、データ収集部70及び車載通信部80を備える。データ収集部70は、車両20の走行状態を示す情報である走行データを収集して車載通信部80に出力する。本実施形態において、データ収集部70はセンサを備える検出装置である。データ収集部70は、例えば加速度センサを含み、車両20の加速度の情報を収集する。データ収集部70は、例えば速度センサを含み、車両20の速度の情報を収集する。データ収集部70は、例えばGPS(Global Positioning System)機能を備えており、車両20の位置及び移動距離の情報を収集する。本実施形態において、車両20の走行データは、少なくとも車両20の位置、速度及び高さ方向の加速度を含む。データ収集部70は例えばカーナビゲーションシステムであってよいが、車両20の位置、速度及び高さ方向の加速度の情報を得られる機器であれば、特定の機器に限定されない。また、カーナビゲーションシステムは、車両20に設置される車載機器であってよいし、アプリケーションによってカーナビゲーションシステムとして機能するスマートフォンなどであってよい。
【0022】
本実施形態において、データ収集部70は、車両20の位置、速度及び高さ方向の加速度を周期的に収集する。ここで、走行データは路面の段差の検出に用いられるため、車両20が高速(一例として90km/h)で走行する場合であっても段差を正しく検出できるように収集されることが好ましい。本実施形態において、車両20の加速度を含む走行データは10Hz以上でサンプリングされる。車両20の速度が速い場合でも、このような走行データを用いて、正確に路面の段差を検出することができる。
【0023】
車載通信部80は、データ収集部70によって収集された車両20の走行データを路面状態判定装置10に出力する。車載通信部80は例えば無線通信モジュールで構成されてよいが、特定の装置に限定されない。本実施形態において、車載通信部80は、ネットワーク40を介して、路面状態判定装置10と通信可能であるように構成される。路面状態判定装置10に出力された車両20の走行データは記憶部12に蓄積される。蓄積された車両20の走行データは、過去の走行データを含むことを明確にするために、以下において走行実績データと称されることがある。ここで、路面状態判定装置10は、複数の車両20から走行データを受け取る。本実施形態において、路面状態判定装置10の記憶部12は、複数の車両20の走行データを、車両20のそれぞれを表す識別子と関連付けて、時系列データとして蓄積する。つまり、走行実績データは、複数の車両20のそれぞれの走行状態を時系列で示すデータである。
【0024】
以下、路面状態判定装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。また、通信部11は、例えば有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0025】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えば路面状態判定装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介して路面状態判定装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0026】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0027】
本実施形態において、記憶部12は、通信部11を介して取得された複数の車両20の走行データを走行実績データとして蓄積する。また、記憶部12はネットワーク40、通信部11を介して取得された道路地図情報を記憶してよい。また、本実施形態において、記憶部12は段差情報を記憶する。
【0028】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、路面状態判定装置10の全体の動作を制御する。
【0029】
ここで、路面状態判定装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。路面状態判定装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、制御部13を取得部131、検出部132、特定部133、作成部134及び出力部135として機能させる。
【0030】
取得部131は、記憶部12から走行実績データを取得する。また、取得部131は道路地図情報を取得する。
【0031】
検出部132は、走行実績データにおける車両20の高さ方向の加速度と速度との関係に基づいて、高さ方向の加速度の異常値を検出する。路面の段差がある場合に、車両20が段差を乗り越えると、高さ方向の加速度の大きさが増加する。ただし、同じ段差であっても、車両20の速度によって高さ方向の加速度の大きさは異なる。加速度の大きさが閾値を超えた場合に車両20が段差を乗り越えたと判定する従来技術が提案されているが、車両20の速度を考慮しないため判定が不正確である。本実施形態において、検出部132は、車両20の高さ方向の加速度と速度との関係に基づいて、路面の段差に対応する加速度の異常値を正確に検出することが可能である。検出手法の詳細については後述する。
【0032】
特定部133は、高さ方向の加速度の異常値が検出された場合に、走行実績データに基づいて異常値に対応する車両20の位置を把握する。特定部133は、把握した車両20の位置と道路地図情報とを対応付けることによって、路面の段差の位置を特定する。また、特定部133は、異常値が検出された場合に、異常値が示す周期に基づいて路面の段差の種類を判定してよい。この場合に、路面の段差の位置だけでなく、種類についても高精度に特定することができる。路面の段差の種類を判定する具体例については後述する。
【0033】
作成部134は、少なくとも位置を含む、特定された路面の段差についての情報である段差情報を作成する。上記のように、特定部133によって路面の段差の種類が特定される場合に、段差情報は路面の段差の種類も含んでよい。作成部134は、作成した段差情報を記憶部12に記憶させる。
【0034】
出力部135は、段差情報に基づく情報を、路面状態判定装置10の外部に出力する。例えば出力部135は、段差情報を路面の保守を行う道路管理者に出力してよい。この場合に、段差情報を路面の保守に役立てることができる。例えば道路管理者は、段差情報に基づいて、路面のメンテナンスの実施要否及び実施時期を判断できる。また、出力部135は、段差情報及び道路地図情報に基づいて生成される、路面の段差の位置を示す地図を出力してよい。段差の位置を示す地図は、作成部134によって作成されて、記憶部12に記憶されてよい。この場合に、例えば車両20の運転者が、走行前に路面の段差を把握することが可能になる。また、例えば道路管理者が、メンテナンスを実施する段差の位置を地図で確認することができる。また、出力部135は、取得部131によって取得された車両20の現在の位置、段差情報及び道路地図情報に基づいて、車両20が路面の段差の位置に近づいた場合に警告を出力してよい。この場合に、車両20をより安全に走行させることができる。
【0035】
図3は、本実施形態に係る路面状態判定装置10が実行する路面状態判定方法における処理を例示するフローチャートである。
【0036】
図3に示すように、取得部131は、車両20の走行実績データ及び道路地図情報を取得する(ステップS1、取得ステップ)。上記のように、走行実績データは車両20の位置、速度及び高さ方向の加速度を含む時系列データである。また、出力部135が段差に接近する車両20に警告を発する場合に、取得部131は、さらに車両20の現在の位置を取得してよい。
【0037】
検出部132は、加速度と速度との関係に基づいて、加速度の異常値を検出する(ステップS2、検出ステップ)。図4は、加速度の異常値について説明するための図である。検出部132は、例えば加速度に基づいて算出される振動の最大振幅と速度との関係において、上限を超える異常振幅が存在する場合に、異常振幅に対応する加速度を異常値とする。ここで、振動の最大振幅は、所定区間(具体例として1秒区間)における二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)で判定することができる。図4の横軸は車両20の速度である。また、図4の縦軸は高さ方向の加速度の振幅RMSである。加速度の振幅(加速度に基づいて算出される振動の振幅)は、時間軸で連続する加速度の変化を振動と扱った場合の振幅である。検出部132は、検出の対象とする車両20の走行実績データから速度を抽出して、上記の振幅RMSを算出して、これらを図4のようにプロットする。車両20の速度が大きくなるにつれて、段差のない道路を走行する通常走行時の揺れである高さ方向の加速度も大きくなる。通常走行時の揺れである高さ方向の加速度の上限を超えるものが異常値であると判定される。通常走行時の高さ方向の加速度の振幅RMSの上限は速度に比例する。そのため、図4に示すように上限に対応する直線が定められる。つまり、上限は、通常走行時における速度に応じた最大振幅として定められ、最大振幅として振幅RMSを用いる場合に速度に比例する直線として与えられる。ここで、車両20の速度が0のときに、振幅RMSの上限も0になる。上限に対応する直線は、例えば実験で得られた、段差のない平坦な道路を走行する車両20の走行実績データから定められてよい。また、上限に対応する直線は、複数の車両20の走行実績データを用いた統計的手法(一例として乖離率による判定)で定められてよい。また、上限に対応する直線は、車両20の種類毎又は振動抑制構造の種類毎に定められてよい。図4の例において、上限に対応する直線より上に位置する振幅RMSの値は、異常振幅と判定される。そして、異常振幅に対応する加速度が異常値と判定される。この処理によって、速度による振動への影響を考慮して、誤検出の少ない路面の段差の検出が可能になる。
【0038】
特定部133は、高さ方向の加速度の異常値が検出された場合に、走行実績データに基づいて異常値に対応する車両20の位置を把握する。そして、特定部133は、把握した車両20の位置と道路地図情報とを対応付けることによって、路面の段差の位置を特定する(ステップS3、特定ステップ)。
【0039】
作成部134は段差情報を作成する(ステップS4、作成ステップ)。上記のように、段差情報は少なくとも段差の位置を含むが、段差の種類も含んでよい。図5A図5B及び図5Cは、異常値が示す周期を例示する図である。図5A図5B及び図5Cでは、横軸が時間を示し、縦軸が加速度を示す。つまり、異常値を含む加速度の時間変化が示されている。図5Aの「異常値(Case1)」のように、異常値が1つだけの場合には、作成部134は単独の段差であると判定してよい。また、図5Bの「異常値(Case2)」のように、異常値が周期を示す場合には、作成部134は段差が連続した路面荒れであると判定してよい。また、図5Cの「異常値(Case3)」のように、異常値が間隔の大きな周期を示す場合には、作成部134は段差が路面に設けられた継ぎ目に起因すると判定してよい。
【0040】
出力部135は、段差情報に基づく情報を、路面状態判定装置10の外部に出力する(ステップS5、出力ステップ)。出力ステップにおいて、道路管理者に段差情報が出力されてよい。また、出力ステップにおいて、車両20の運転者又は道路管理者に、段差の位置を示す地図が出力されてよい。また、出力ステップにおいて、車両20が路面の段差の位置に近づいた場合に警告が出力されてよい。ここで、これらの出力は組み合わされてよい。例えば出力ステップにおいて、道路管理者に段差情報が出力されるとともに、段差に近づいた車両20の運転者に警告が出力されてよい。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る路面状態判定方法及び路面状態判定装置10は、上記の構成によって、路面の段差を高精度に検出可能である。また、本実施形態に係る路面状態判定方法及び路面状態判定装置10は、ネットワーク40を介して段差情報などを外部に提供して、例えば道路の保守及び車両20の走行制御などに活用させることができる。
【0042】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム及びプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0043】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0044】
1 路面状態判定システム
10 路面状態判定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
20 車両
30 タイヤ
40 ネットワーク
70 データ収集部
80 車載通信部
131 取得部
132 検出部
133 特定部
134 作成部
135 出力部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C