(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008107
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】断熱パネル
(51)【国際特許分類】
E04B 1/84 20060101AFI20240112BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
E04B1/84 Z
E04B1/64 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109679
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】322006571
【氏名又は名称】株式会社匠屋
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 和彦
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA02
2E001DB02
2E001DD01
2E001FA03
2E001GA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通気層を形成する凸部と排水用の溝を有する断熱パネルにおいて、排水用の溝がアンダーカット部にならないように形成することで製造に用いる金型を単純化し、低コストでの製造が可能な断熱パネルを提供する。
【解決手段】合成樹脂発泡体により形成された板状体の正面10に所要間隔をあけた複数箇所に凸部14が立設されており、凸部14の突出方向における先端面16には少なくとも一本の凹溝17が形成されていることを特徴とする断熱パネル100である。また、凹溝17は、高さ方向に延設されていることが好ましく、高さ方向において互いに隣り合う凸部14における凹溝17は同一直線上に配設されていることがより好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡体により形成された板状体の一方の主面に所要間隔をあけた複数箇所に凸部が立設されており、
各前記凸部の突出方向における先端面には少なくとも一本の凹溝が形成されていることを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
前記凹溝は、高さ方向に延設されていることを特徴とする請求項1記載の断熱パネル。
【請求項3】
高さ方向において互いに隣り合う各前記凸部における各前記凹溝は同一直線上に配設されていることを特徴とする請求項1または2記載の断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外断熱工法や外張断熱工法と称される建物の断熱工法においては、断熱パネルの性能を維持するために通気層付きの断熱パネルが用いられる。このような断熱パネルとしては、例えば特許文献1(特許第4009249号公報)に開示されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4009249号公報(明細書段落0019-0021,
図6-
図8および
図11-14等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている断熱パネルは、通気層を形成するために立設された通気層用突起の起立面に排水用の溝を形成したものである。このような構成を採用したことにより、断熱パネル内の水分の排出が良好になるが、通気層用突起に形成された排水用の溝がアンダーカット部になってしまう。このため、製造に用いる金型の構造が複雑になり、製造コストが高騰するといった課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的とするところは次のとおりである。すなわち、通気層を形成する凸部と排水用の溝を有する断熱パネルにおいて、排水用の溝がアンダーカット部にならないように形成することで製造に用いる金型を単純化し、低コストでの製造が可能な断熱パネルを提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するため発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、合成樹脂発泡体により形成された板状体の一方の主面に所要間隔をあけた複数箇所に凸部が立設されており、各前記凸部の突出方向における先端面には少なくとも一本の凹溝が形成されていることを特徴とする断熱パネルである。
【0007】
これにより、通気層を形成する凸部と排水用の溝を有する断熱パネルにおいて、排水用の凹溝がアンダーカット部にならないため、断熱パネルの製造に用いる金型を単純化し、低コストでの製造が可能な断熱パネルを提供することができる。また、凹溝が排水性に加えて通気性も向上させるため、長期にわたって断熱パネルの性能を維持することができる。
【0008】
また、前記凹溝は、高さ方向に延設されていることが好ましく、高さ方向において互いに隣り合う各前記凸部における各前記凹溝は同一直線上に配設されていることがより好ましい。
【0009】
これらにより、凹溝を排水溝として使用する際に排水性能が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通気層を形成する凸部と排水用の溝を有する断熱パネルにおいて、排水用の凹溝がアンダーカット部にならないように形成することで製造に用いる金型を単純化し、低コストでの製造が可能な断熱パネルを提供することができる。また、凹溝が排水性に加えて通気性も向上させるため、長期にわたって断熱パネルの性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における断熱パネルの正面図である。
【
図2】本実施形態における断熱パネルの背面図である。
【
図3】本実施形態における断熱パネルの右側面図である。
【
図4】本実施形態における断熱パネルの左側面図である。
【
図5】本実施形態における断熱パネルの平面図である。
【
図6】本実施形態における断熱パネルの底面図である。
【
図7】本実施形態における断熱パネルの設置例を示す説明図である。
【
図8】他の実施形態における断熱パネルの設置例を示す説明平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態における断熱パネル100は、建物への取り付け面である壁面W(
図8参照)と対向する面を正面10として説明を行う。本実施形態における断熱パネル100は、
図1~
図6に表されているように正面視矩形の板状体に形成されている。断熱パネル100の材料としては、発泡ポリスチレンフォーム等に代表される合成樹脂発泡体が好適に用いられる。本実施形態における断熱パネル100は、一方の主面である正面10における外周縁100Cおよび100Dから外方にはみ出した差込舌片12が形成されている。また、正面10には、略菱形柱状をなす複数の凸部14が行列状に立設されている。このように正面10の複数箇所に立設された凸部14によって正面10にジグザグ状の隙間15が形成されている。なお、断熱パネル100は、幅910mm高さ1200mmの正面視形状に形成しておけば、日本国内の建築様式において施工性を向上させることができる。
【0013】
隙間15は断熱パネル100の外周縁100A、100B、100C、100Dにおいて開口するように形成されている。また、凸部14の突出方向の先端面16には複数の凹溝17が形成されている。凹溝17は、先端面16における菱形の図中縦方向の対角線を対称線として線対称をなすと共に断熱パネル100の高さ方向に平行に延設されている。凹溝17の幅寸法や深さ寸法は特に限定されるものではないが、建物への取り付け面(壁面W)と先端面16とを密着させた際における水の表面張力による水の流れが阻害されない大きさおよび形状に形成されていることが好ましい。凹溝17の長さ方向における両端部は、隙間15に開口するように形成されている。また、断熱パネル100の高さ方向に隣り合う凸部14に形成された凹溝17はいずれも、断熱パネル100の高さ方向に延びる同一直線上となる位置に配設されている。
【0014】
また、他方の主面である背面20には、断熱パネル100の高さ方向および幅方向(
図2における縦方向および横方向)に所要間隔に配設した複数本の溝体21により格子模様が形成されている。断熱パネル100の高さ方向および幅方向における溝体21の配設間隔は適宜調整することができる。このような格子模様をなす溝体21により、背面20に重ねられる下地材との接着性が向上し、後に形成される壁の強度を高めることができる。また、背面20には、差込舌片12と向かい合う外周縁100Aおよび100Bから内方に向けて窪む舌片進入部22が形成されている。差込舌片12および舌片進入部22は、断熱パネル100の板厚の半分の厚さに形成されている。差込舌片12の突出量と舌片進入部22の窪み量は等しく形成されている。
【0015】
以上のように形成された断熱パネル100は、
図7に示すようにして建物の壁面Wに取り付けられる。なお、
図7は、建物の屋外側から断熱パネル100(建物の壁面W)を臨んだ状態を示している。作業者は、建物の壁面Wに対して水平方向に断熱パネル100を配設する際、新たに配設する断熱パネル100の外周縁100Dの舌片進入部22を、先に配設されている断熱パネル100の外周縁100Bの差込舌片12に
図7中の矢印Aの向きに差し込んで配設する。また、作業者は、高さ方向に断熱パネル100を配設する際、
図7中の矢印Bに示すようにして、新たに配設する断熱パネル100の外周縁100Cの舌片進入部22を、先に配設されている断熱パネル100の外周縁100Aの差込舌片12に差し込んで配設すればよい。
【0016】
このようにして配設した断熱パネル100は、
図7に示すように、高さ方向および水平方向のいずれにおいても隣り合う断熱パネル100どうしを互いの凸部14、隙間15および凹溝17を連続させた状態で連結することができる。特に凹溝17においては、いずれも建物の壁面Wにおいて高さ方向の全範囲において同一直線上(同一鉛直線上)に配設されているため、最短距離で排水を行うことができ好都合である。
【0017】
また、建物の壁面Wと断熱パネル100の正面10との間には、直溝である凹溝17による小通路とジグザグ状の隙間15による大通路(通気部(排水部も兼ねる))が形成される。凹溝17による小通路の両端部は、隙間15による大通路に連通しているため、大通路である隙間15を流通した空気および水分の流れにより小通路である凹溝17内の空気や水分を引き出す(凹溝17内の空気や水分の流通を促進させる)ことができる。これにより、断熱パネル100の当初性能を長期にわたって維持することができる。
【0018】
また、凹溝17による小通路は、大通路に比較して流路断面積が20分の1程度と非常に小さいため、断熱パネル100の発泡樹脂の欠損を最小限に抑えることができ、寒冷地においても十分適用可能な断熱性能を維持することができる。さらに、建物の壁面Wに対向する面(正面10)に大きさの異なる複数本の隙間15や凹溝17が形成されていることにより、防音性能を向上させることも期待できる。防音性能の向上においては、凸部14の先端面16に幅寸法および深さ寸法の少なくとも一方が異なる複数本の凹溝17を配設することが好ましい。
【0019】
以上に、本発明にかかる断熱パネル100について実施形態に基づいて説明したが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態においては、建物の壁面Wを覆うように断熱パネル100を配設した形態が例示されているが、基礎の起立面に断熱パネル100を貼り付ける形態を採用することもできる。
【0020】
また、本実施形態においては、断熱パネル100を建物の壁面Wに直接取り付けた形態を例示しているが、本発明にかかる断熱パネル100の使用形態はこの形態に限定されるものではない。例えば
図8に示すように、建物の壁面Wに単純な板状に形成された厚さがt2の直方体断熱パネル200を取り付けた後、直方体断熱パネル200の室外側面に厚さがt1の断熱パネル100の正面10を対向させた状態で取り付ける形態を採用することもできる。このような形態によれば、長期優良住宅で要求されている断熱材厚さTを確保しつつも、断熱材厚さTの範囲内に隙間15による大通路および凹溝17による小通路を形成することができる。
【0021】
また、本実施形態においては、凸部14が菱形柱状に形成された形態を例示しているが、凸部14は円柱状体や円錐台体等の形態を採用することができる。要は、先端面16が建物の取り付け面と平行になる形態であれば凸部14の立体形状は特に限定されるものではない。
【0022】
また、本実施形態においては、凸部14の突出方向における先端面16に形成した凹溝17は断熱パネル100を配設した際において鉛直方向に延設された形態を例示しているがこの形態に限定されるものではない。凹溝17は、先端面16の面内において鉛直方向に対し所要角度傾斜した方向に延設することもできる。また、先端面16における凹溝17の配設本数は3本に限定されるものでもない。
【0023】
また、本実施形態においては、背面20に溝体21を配設することにより格子状模様が形成された形態を例示しているがこの形態に限定されるものではない。格子状模様は背面20に起立させた凸片により形成することもできる。さらには、背面20を平坦面にした形態を採用することもできる。
【0024】
また、本実施形態においては、水平方向に断熱パネル100を追加配設する際において、追加する断熱パネル100を
図7中の矢印A方向(水平方向)から配設しているが、高さ方向から断熱パネル100を追加配設することもできる。これと同様に、高さ方向に断熱パネル100を追加配設する際は、追加する断熱パネル100を
図7中の矢印B方向(高さ方向)から配設しているが、水平方向から断熱パネル100を追加配設することもできる。
【0025】
そして以上に説明した変形例の他、実施形態において説明した変形例等を適宜組み合わせた形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
10:正面
12:差込舌片
14:凸部
15:隙間
16:先端面
17:凹溝
20:背面
21:溝体
22:舌片進入部
30:上面
40:下面
100:断熱パネル
100A,100B,100C,100D:外周縁