(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081074
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240610BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01L21/306 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194527
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】早見 泰明
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
(72)【発明者】
【氏名】矢野 新也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健志
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
【テーマコード(参考)】
5F038
5F043
【Fターム(参考)】
5F038AC04
5F038AC05
5F038AC07
5F038AC10
5F038CA11
5F038CA12
5F038EZ15
5F038EZ20
5F043AA02
5F043BB02
5F043FF01
5F043FF04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体基板を貫通する深い溝を有する半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1主面1aと第1主面に対向する第2主面1cを有し、第1主面から第2主面まで貫通する溝2が形成された半導体基板1を備える。溝の長手方向を第1方向、溝の短手方向を第1方向と直交する第2方向、第1方向及び第2方向と直交し、且つ、第1主面及び第2主面に垂直な方向を第3方向として、第1方向と第3方向を含む平面及び第2方向と第3方向を含む平面である溝の側面がそれぞれ(111)面である。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と前記第1主面に対向する第2主面を有し、前記第1主面から前記第2主面まで貫通する溝が形成された半導体基板を備え、
前記溝の長手方向を第1方向、前記溝の短手方向を前記第1方向と直交する第2方向、前記第1方向及び前記第2方向と直交し、且つ前記第1主面及び前記第2主面に垂直な方向を第3方向として、
前記第1方向と前記第3方向を含む平面、及び前記第2方向と前記第3方向を含む平面である前記溝の側面が(111)面である、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1主面の面法線方向から見て矩形状のチップに形成された半導体装置であって、
前記チップが、前記第1主面及び前記第2主面と直交して隣接し且つ(111)面に平行なチップ側面を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1主面の前記溝の前記第1方向の長さと、前記第2主面の前記溝の前記第1方向の長さとの合計が、前記半導体基板の厚さの2√2倍以上である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1主面の前記溝の前記第1方向の長さと前記第2主面の前記溝の前記第1方向の長さは等しく、前記第1主面と前記第2主面の前記溝の前記第1方向の長さは、前記半導体基板の厚さの√2倍以上である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板はシリコン基板である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1主面は(110)面である、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記溝の内部に配置され、前記半導体基板に接する誘電膜と
前記溝の内部に配置され、前記誘電膜に積層された導電膜と、
前記半導体基板及び前記導電膜と電気的に接続する電極と
を更に備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
第1主面と前記第1主面に対向する第2主面を有する半導体基板を準備するステップと、
前記半導体基板の前記第1主面及び前記第2主面の両面にマスク材を形成するステップと、
前記マスク材をエッチング用のマスクに用いて、前記第1主面及び前記第2主面の両面から前記半導体基板をウェットエッチングによりエッチングして、前記第1主面から前記第2主面まで貫通する溝を形成するステップと
を備え、
前記溝の長手方向を第1方向、前記溝の短手方向を前記第1方向と直交する第2方向、前記第1方向及び前記第2方向と直交し、且つ前記第1主面及び前記第2主面に垂直な方向を第3方向として、前記第1方向と前記第3方向を含む平面、及び前記第2方向と前記第3方向を含む平面である前記溝の側面が(111)面となるように、前記マスク材の開口部のマスクパターンを形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体基板を(111)面のチップ側面をそれぞれ含む複数のチップに分割するステップを更に備え、
前記溝を含む半導体装置がそれぞれ形成された複数の前記チップに前記半導体基板を分割する、
請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
オリエンテーション・フラットが(111)面である前記半導体基板を準備するステップと、
前記第1主面における切断線を前記オリエンテーション・フラットと平行に決定するステップと、
前記切断線に沿って前記半導体基板を切断し、前記半導体基板を(111)面のチップ側面をそれぞれ含む複数のチップに分割するステップと
を更に備え、
前記溝を含む半導体装置がそれぞれ形成された複数の前記チップに前記半導体基板を分割する、
請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記溝の内部に誘電膜を形成するステップと、
前記溝の内部において、前記誘電膜に導電膜を積層するステップと、
前記半導体基板及び前記導電膜と電気的に接続する電極を形成するステップと
を更に備える、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さと、前記第2主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さとの合計が、前記半導体基板の厚さの2√2倍以上である、
請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さと前記第2主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さは等しく、
前記第1主面と前記第2主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さは、前記半導体基板の厚さの√2倍以上である、
請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さは、前記第2主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さより長い、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1主面の前記マスクパターンの前記第2方向の幅は、前記第2主面の前記マスクパターンの前記第2方向の幅より大きい、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さは、前記第2主面の前記マスクパターンの前記第1方向の長さより長く、
前記第1主面の前記マスクパターンの前記第2方向の幅は、前記第2主面の前記マスクパターンの前記第2方向の幅より大きい、
請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記半導体基板はシリコン基板である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第1主面は(110)面である、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記ウェットエッチングに用いるエッチング液はアルカリ性水溶液である、請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記マスク材は窒化膜を含む、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の溝の内部にコンデンサを形成した半導体コンデンサが知られている。半導体コンデンサは、半導体基板の表面に形成した溝の内部に誘電膜と導電膜を積層して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体コンデンサの容量を大きくするために、半導体基板に深い溝を形成する必要がある。
【0005】
本発明の実施形態は、深い溝が形成された半導体基板を有する半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置は、第1主面と第1主面に対向する第2主面を有し、第1主面から第2主面まで貫通する溝が形成された半導体基板を備える。溝の長手方向を第1方向、溝の短手方向を第1方向と直交する第2方向、第1方向及び第2方向と直交し、且つ第1主面及び第2主面に垂直な方向を第3方向として、第1方向と第3方向を含む平面、及び第2方向と第3方向を含む平面である溝の側面がそれぞれ(111)面である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、半導体基板を貫通する深い溝を有する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置の半導体基板の主面における溝の配置を示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1実施形態に係る半導体装置の要部の拡大図である。
【
図3A】
図3Aは、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その1)。
【
図3B】
図3Bは、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その2)。
【
図3C】
図3Cは、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その3)。
【
図3D】
図3Dは、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その4)。
【
図4】
図4は、溝のマスクパターンの長さとエッチングの深さの関係を説明するための断面図である。
【
図5A】
図5Aは、オリフラ面が(100)面である半導体基板をチップに分割する例を示す模式的な平面図である。
【
図6A】
図6Aは、オリフラ面が(111)面である半導体基板をチップに分割する例を示す模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、オリフラ面が(100)面である半導体基板をチップに分割する他の例を示す模式的な平面図である。
【
図8A】
図8Aは、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の要部の拡大図である。
【
図8C】
図8Cは、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の第1主面と第2主面のマスクパターンを説明するための模式図である。
【
図9A】
図9Aは、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その1)。
【
図9B】
図9Bは、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その2)。
【
図9C】
図9Cは、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その3)。
【
図10C】
図10Cは、第2実施形態に係る半導体装置の第1主面と第2主面のマスクパターンを説明するための模式図である。
【
図11A】
図11Aは、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その1)。
【
図11B】
図11Bは、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その2)。
【
図11C】
図11Cは、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である(その3)。
【
図12C】
図12Cは、第3実施形態に係る半導体装置の第1主面と第2主面のマスクパターンを説明するための模式図である。
【
図13C】
図13Cは、第4実施形態に係る半導体装置の第1主面と第2主面のマスクパターンを説明するための模式図である。
【
図14A】
図14Aは、ウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その1)。
【
図14B】
図14Bは、ウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その2)。
【
図14C】
図14Cは、ウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その3)。
【
図14D】
図14Dは、ウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その4)。
【
図14E】
図14Eは、ウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その5)。
【
図15A】
図15Aは、別のウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その1)。
【
図15B】
図15Bは、別のウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その2)。
【
図15C】
図15Cは、別のウェットエッチングによる溝の形成方法を説明するための断面図である(その3)。
【
図16】
図16は、複数の溝が形成された半導体装置の要部の拡大図である。
【
図17A】
図17Aは、実施形態に係る半導体装置が含む半導体キャパシタの例を示す断面図である。
【
図17B】
図17Bは、実施形態に係る半導体装置が含む半導体キャパシタの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置10の半導体基板1を示す平面図である。半導体基板1は、第1主面1aと第1主面1aに対向する第2主面1cを有する。以下において、第1主面1aと第2主面1cのそれぞれを限定しない場合は、主面と表記する。
図2Aは、
図1に示した半導体装置10の要部Pの拡大図である。
図2Bは、
図2AのA1―A1線に沿う断面図である。以下、
図1、
図2A及び
図2Bを参照して、第1実施形態に係る半導体装置10の構成を説明する。以下の説明では、直交座標系の一例であるXYZ座標系を用いる。すなわち、半導体基板1の主面と平行な平面をXY平面とし、XY平面と直交する方向をZ軸とする。また、X軸とY軸は、XY平面内における直交する方向とする。以下においては、説明の便宜上、Z軸の正の方向側(第1主面1a側)を図面の上側、Z軸の負の方向側(第2主面1c側)を図面の下側とする上下関係を用いて説明するが、これは普遍的な上下関係を表すものではない。
【0011】
半導体装置10は、
図2Bに示すように、第1主面1aから第2主面1cまで貫通する溝であるトレンチ2が形成された半導体基板1を備える。
【0012】
半導体基板1は、
図1に示すように、オリエンテーション・フラット(以下、オリフラ面と称する。)であるオリフラ面1bを有する。第1主面1a及び第2主面1cは、(110)面である。また、オリフラ面1bは、第1主面1a及び第2主面1cの(110)面と垂直となる(100)面である。
【0013】
半導体基板1は、結晶構造がダイヤモンド構造を有する。半導体基板1は、例えば、シリコン基板であってもよい。半導体基板1の厚さtは、例えば、625~665μm程度である。入手しやすいシリコン基板を半導体基板1に使用することにより、低コストで半導体装置10を製造できる。更に、半導体装置10が半導体キャパシタを含む場合に、シリコン基板の不純物濃度を高くすることにより、半導体キャパシタの電極となる半導体基板1の低抵抗化を実現できる。これにより、キャパシタの電気特性に対する寄生抵抗の影響を低減することができる。
【0014】
半導体基板1には、主面の面法線方向から見て(以下、「平面視」とも称する。)ストライプパターンのトレンチ2が形成されている。トレンチ2は、
図2Bに示すように、第1主面1aから第2主面1cまで貫通している。トレンチ2は、第1主面1aにおいて、長手方向に沿った長さがLaの一端(以下、「La」と表記)と、長手方向と直交する短手方向に沿った長さがWaの他端(以下、「Wa」と表記)を有する。トレンチ2は、第2主面1cにおいて、長手方向に沿った長さがLbの一端(以下、「Lb」と表記)と、長手方向と直交する短手方向に沿った長さがWbの他端(以下、「Wb」と表記)を有する。以下の説明において、トレンチ2の長手方向の一端の長さをトレンチ2の長さ、トレンチ2の短手方向の他端の長さをトレンチ2の幅とも称する。また、トレンチ2の第1主面1a側の開口部をトレンチ2の上部2a、トレンチ2の第2主面1c側の開口部をトレンチ2の下部2cとも称する。なお、トレンチ2の長手方向を第1方向、トレンチ2の短手方向を第2方向、トレンチ2の長手方向及び短手方向と直交する方向(トレンチ2の深さ方向)を第3方向とする。第3方向は、第1方向及び第2方向と直交し、且つ第1主面1a及び第2主面1cに垂直な方向である。
【0015】
トレンチ2は、平面視において半導体基板1の(111)面とトレンチ2の長手方向の一端(以下において、「長手側端部」とも称する。)が平行になるように形成されている。また、トレンチ2は、平面視において、半導体基板1の(111)面とトレンチ2の短手方向の他端(以下において、「短手側端部」とも称する。)が垂直になるように形成されている。第1主面1a及び第2主面1cが(110)面であり、オリフラ面1bが(100)面である場合、オリフラ面1bに対して、35.3°の角度θ1を有する面が半導体基板1の(111)面である。すなわち、
図2Aに示すXY平面に垂直でX軸方向に延伸する(100)面に対して、角度θ1をなして交差する面が(111)面である。
【0016】
トレンチ2は、
図2Bに示すように、半導体基板1の主面に対して側面が垂直に貫通している。第1方向と第3方向を含む平面である長手側の側面2b1は、(111)面である。また、第2方向と第3方向を含む平面である短手側の側面2b2は、(111)面である。なお、トレンチ2の長さLa、Lbと、半導体基板1の厚さtとの関係について後述する。
【0017】
以下に、図面を参照して、第1実施形態に係る半導体装置10の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体装置10の製造方法は、ウェットエッチングによる半導体基板1でのトレンチ2の形成の一例であり、これ以外のウェットエッチングによる種々の製造方法により実現可能である。なお、トレンチ2を形成する際のマスク工程は、
図14A~
図15Cの説明において詳述する。
【0018】
先ず、
図3Aに示すように、第1主面1a及び第2主面1cが(110)面の半導体基板1を準備する。
【0019】
次に、
図2Aに示すようにトレンチ2の長手方向を半導体基板1の(111)面に合わせた後、
図3Bに示すように、半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1cのトレンチ2の領域に対して、第1主面1aと第2主面1cの両面からウェットエッチングによる異方性エッチング処理をする。半導体基板1のウェットエッチングに用いるエッチング液は、例えばアルカリ性水溶液である。アルカリ性水溶液の一例として、水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などが挙げられる。KOHやTMAHなどの比較的入手しやすく安価なエッチング液によりシリコン基板をエッチングすることにより、低コストでの半導体装置10の製造を実現することができる。
【0020】
アルカリ性水溶液でのエッチング処理により、異方性のウェットエッチングを実現できる。すなわち、厚さ方向において、半導体基板1は、長さLa、Lbのトレンチ2の長手側端部では主面と垂直にエッチングされる。一方、幅Wa、Wbのトレンチ2の短手側端部では、
図3Bに示すように、異方性エッチングにより半導体基板1の(111)面が露出し、第1斜面2d1と第2斜面2d2が形成される。このとき、第1主面1a及び第2主面1cの両面からエッチングが進むことにより、半導体基板1をトレンチ2が貫通する途中で、第1主面1a及び第2主面1cから半導体基板1の厚さ方向に後退した中央部2e1、2e2を両面とする中間領域が形成される。中央部2e1、2e2は(110)面であり、第1斜面2d1と第2斜面2d2にそれぞれ連結する。
【0021】
次に、第1主面1a及び第2主面1cから更にウェットエッチングを進めて、
図3Cに示すように中央部2e1、2e2を有する中間領域をエッチング除去し、トレンチ2の中央が第1主面1aから第2主面1cまで貫通する。このように、半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1cに対して側面が垂直なトレンチ2を形成するには、第1主面1aと第2主面1cからウェットエッチングによりそれぞれ形成された溝同士が連通して、中間領域が貫通する必要がある。以下の説明において、トレンチ2の中央部2e1、2e2を両面とする中間領域を貫通する領域を、「きっかけの貫通部」とも称する。このきっかけの貫通部の形成については、
図4を参照して後述する。
【0022】
きっかけの貫通部が形成された後は、
図3Dに示すように、貫通した部分の両側の斜面部において、基板平面方向にエッチングが進む。すなわち、トレンチ2の第1斜面2d1と第2斜面2d2が異方性エッチングされる。具体的には、きっかけの貫通部を形成した後、半導体基板1の第1斜面2d1と第2斜面2d2の先端部からトレンチ2の幅Wa、幅Wbの短手側端部まで、第1斜面2d1と第2斜面2d2のエッチングが進む。最終的には、第1斜面2d1と第2斜面2d2がすべてエッチング除去され、(111)面であるトレンチ2の幅Wa、Wbの短手側の側面2b2が半導体基板1の主面に対して垂直なトレンチ2が形成される。
【0023】
以上に説明したように、半導体装置10の製造方法では、半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1cのトレンチ2の領域について、トレンチ2の長手方向と半導体基板1の(111)面とを平行又は垂直に設定する。そしてし、ウェットエッチングを用いた異方性エッチングにより、側面が半導体基板1の主面と垂直なトレンチ2を形成することができる。第1主面1a又は第2主面1cのいずれか一方のみから半導体基板1をウェットエッチングによりエッチングした場合には、(111)面の斜面が形成され、主面に対して側面が垂直なストライプタイプのトレンチ2を形成することが困難である。しかし、上記の製造方法によれば、第1主面1aと第2主面1cの両面からウェットエッチングにより半導体基板1をエッチングすることにより、主面に対して側面が垂直なストライプタイプのトレンチ2を形成することができる。
【0024】
次に、第1主面1aと第2主面1cの両面に対するウェットエッチングを用いた異方性エッチング処理を用いた場合の、きっかけの貫通部を形成するための条件について、
図4を参照して説明する。きっかけの貫通部を形成することにより、きっかけの貫通部からウェットエッチングにより基板平面方向にエッチングが進み、最終的に、側面が主面と垂直な(111)面である、ストライプパターンのトレンチ2が形成される。
【0025】
トレンチ2の形成において第1主面1aと第2主面1cからのウェットエッチングによってそれぞれ形成される溝の一例を
図4に示す。第1主面1aから形成される溝の長さがLa、溝の深さがDaであり、第2主面1cから形成される溝の長さがLb、溝の深さがDbである。
図4に示すように、第1斜面2d1の平面視の長さをLae、第2斜面2d2の平面視の長さをLbeとし、きっかけの貫通部の長さをLtとする。また、溝の深さDa、Dbの合計が半導体基板1の厚さtとする。これらの関係は、以下の式(1)、式(2)、及び式(3)で表される。
【0026】
La=2Lae+Lt (1)
Lb=2Lbe+Lt (2)
Da+Db=t (3)
半導体基板1の結晶構造がダイヤモンド構造である場合、ウェットエッチングにより形成される(111)面の斜面の長さLae、Lbeと、エッチングの深さDa、Dbの関係は、式(4)、(5)で表される。
【0027】
Lae=√2Da (4)
Lbe=√2Db (5)
第1主面1aのトレンチ2の長さLaと第2主面1cのトレンチ2の長さLbの合計は、上記の式(1)~式(5)により、式(6)で表される。
【0028】
La+Lb=2√2t+2Lt (6)
したがって、きっかけの貫通部の長さLtは、式(7)である。
【0029】
Lt=(La+Lb)/2-√2t (7)
式(7)より、きっかけの貫通部が形成されるには、きっかけの貫通部の長さLt>0である必要がある。そのため、式(7)から、以下の式(8)の関係が得られる。
【0030】
Lt=(La+Lb)/2-√2t>0 (8)
式(8)から、トレンチ2の長さLa、Lbの合計は、以下の式(9)で表される。
【0031】
La+Lb>2√2t (9)
つまり、第1主面1aの第1方向のトレンチ2の長さLaと、第2主面1cの第1方向のトレンチ2の長さLbとの合計が、半導体基板1の厚さtの2√2倍以上であれば、きっかけの貫通部が形成される。
【0032】
なお、
図2Bのように、第1主面1aのトレンチ2の長さLaと第2主面1cのトレンチ2の長さLbが等しい場合(La=Lb=L)、式(9)から以下の式(10)の関係が得られる。このため、長さLaと長さLbが等しい場合のトレンチ2の長さLの条件は、以下の式(11)で表される。
【0033】
La+Lb=2L>2√2t (10)
L>√2t (11)
式(10)、式(11)により、トレンチ2の長さLが半導体基板1の厚さtの√2倍以上であれば、きっかけの貫通部が形成され、主面に対して側面が垂直なトレンチ2が形成される。例えば、第1主面1aと第2主面1cのトレンチ2又はトレンチ2のマスクパターンの長さが等しい場合のトレンチ2の条件は、トレンチ2又はトレンチ2のマスクパターンの長さが、半導体基板1の厚さtの√2倍以上である。「マスクパターン」は、ウェットエッチングに使用するエッチング用のマスク(以下、単に「マスク」とも称する。)の開口部の形状である。マスクパターンに露出した部分が、ウェットエッチングによってエッチングされる。
【0034】
上記のように、第1主面1aに形成されるマスクパターンの長さと第2主面1cに形成されるマスクパターンの長さとを同一にすることにより、同一のマスクパターンで第1主面1aと第2主面1cのエッチングが可能である。これにより、マスクパターンの設計及びマスク材の調達を容易にできると共に、第1主面1aと第2主面1cの両面から同じ深さまで半導体基板1をエッチングすることになり、エッチング時間を短くすることができる。
【0035】
以上に説明したように、第1実施形態に係る半導体装置10のトレンチ2の形成は、ウェットエッチングにより実現できる。一方、半導体基板1に深いトレンチ2を形成するために、反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによって材料をエッチングするドライエッチングも使用可能である。しかし、ドライエッチングは、ウェハを1枚ずつ処理する枚葉式のエッチング処理であるため、スループットが低く、高コストである。これに対し、ウェットエッチングにおいては、複数のウェハをウェハケースに格納し、ウェハケースごとエッチング液に浸すことでエッチング処理が行われる。このため、ウェットエッチングによれば、複数のウェハを同時に処理することが可能で、ドライエッチングと比較して製造コストを低減できる。
【0036】
ウェットエッチングによれば、結晶面によってエッチングレートが異なることを利用して、トレンチを形成することができる。具体的には、相対的にエッチングされやすい結晶面と相対的にエッチングされにくい結晶面があることを利用して、低コストで深いトレンチを形成することができる。例えば、第1主面1a及び第2主面1cが(110)面、オリフラ面1bが(100)面の半導体基板1において、主面からのウェットエッチングにより、オリフラ面1bとなす角度θ1が35.3度のストライプパターンの深いトレンチ2を形成することができる。この場合、トレンチ2の側面は(111)面である。
【0037】
なお、ウェットエッチングによって(110)面の主面から半導体基板1をエッチングすると、ストライプパターンのトレンチ2の端部の底部において(111)面の斜面が形成される。しかし、第1実施形態に係る半導体装置10の製造方法では、第1主面1aと第2主面1cの両面からウェットエッチングにより溝を形成して、きっかけの貫通部を形成する。そして、きっかけの貫通部から基板平面方向にエッチングが進むことにより、ドライエッチングで形成されるトレンチと同様に、ストライプパターンの全体にわたって深さ方向に側面が主面に対して垂直なトレンチ2を形成することができる。その結果、例えばトレンチ2を半導体キャパシタとして用いる場合、トレンチ2の側面の面積を広くしてキャパシタ容量を増大させることができる。
【0038】
以下において、半導体基板1を複数のチップに分割して半導体装置10を製造する方法を検討する。以下では、オリフラ面1bを基準にして半導体基板1を矩形状に分割する方法を例示的に説明する。オリフラ面1bを基準にする場合、オリフラ面1bに平行及び垂直に半導体基板1を切断する切断線を設定する。切断線に沿って半導体基板1を分割したチップのそれぞれに、トレンチ2を含む半導体装置10が形成されている。
【0039】
まず、半導体基板1が、
図5Aに示すように第1主面1a及び第2主面1cが(110)面でありオリフラ面1bが(100)面である、ダイヤモンド構造のウェハである場合を検討する。この場合、オリフラ面1bに平行及び垂直に設定した切断線に沿って半導体基板1を分割して得られる矩形状のチップ101は、
図5Bに示すように、オリフラ面1bに平行な、(100)面のチップ側面101Sを有する。チップ101の含むトレンチ2の長手方向は、チップ側面101Sに対して35.3°の角度θ1で交差する。
【0040】
既に説明したように、トレンチ2の第1主面1aの第1方向の長さLaと第2主面1cの第1方向の長さLbとの合計が、半導体基板1の厚さtの2√2倍以上であれば、きっかけの貫通部が形成される。しかし、
図5Bに示すチップ101の角領域101Cでは、長さLa及び長さLbが短い。このため、第1主面1aと第2主面1cの両面からウェットエッチングにより半導体基板1の異方性エッチングを行っても、
図5BのVC-VC方向に沿った断面図である
図5Cに示すように、きっかけの貫通部が形成されない。すなわち、第1主面1aに形成される第1溝201の内部に第1斜面2d1が露出し、第2主面1cに形成される第2溝202の内部に第2斜面2d2が露出した後、中央部2e1、2e2が形成されない。その結果、第1溝201の底部と第2溝202の底部は連通せず、きっかけの貫通部が形成されない。このため、角領域101Cでは、ウェットエッチングを用いて主面に対して側面が垂直なトレンチ2を形成することができない。一方、角領域101Cを除いた領域であって、長さLaと長さLbの合計が厚さtの2√2倍以上である領域では、きっかけの貫通部が形成される。その結果、
図5BのVD-VD方向に沿った断面図である
図5Dに示すように、第1主面1a及び第2主面1cに垂直な側面を有するトレンチ2が形成される。しかしながら、
図5Aに示す半導体基板1の分割方法では、チップ101にきっかけの貫通部が形成されない領域があるため、半導体装置10の製造効率が低下する。
【0041】
次に、半導体基板1が、
図6Aに示すように第1主面1a及び第2主面1cが(110)面でありオリフラ面1bが(111)面である、ダイヤモンド構造のウェハである場合を検討する。半導体基板1を複数の矩形状のチップ101に分割するために、オリフラ面1bを基準にして、オリフラ面1bに平行及び垂直に第1主面1aにおける切断線を決定する。オリフラ面1bが(111)面であるため、半導体基板1のオリフラ面1bに平行な切断面は(111)面である。そして、この切断線に沿って半導体基板1を切断し、半導体基板1を複数のチップ101に分割する。
【0042】
上記のようにオリフラ面1bが(111)面である半導体基板1を分割して得られる、平面視で矩形状のチップ101は、
図6Bに示すように、(111)面のチップ側面101Sを含む。このため、
図6Bに示すように、トレンチ2の長手方向をチップ101のチップ側面101Sと平行にすることができる。言い換えると、第1主面1a及び第2主面1cと直交して隣接し、且つ第1方向に平行なチップ側面101Sを有するチップ101に形成された、半導体装置10が得られる。
【0043】
図6Aに示す半導体基板1を分割したチップ101では、チップ101の主面の全面に渡って、トレンチ2の第1主面1aの第1方向の長さLaと第2主面1cの第1方向の長さLbとの合計を、半導体基板1の厚さtの2√2倍以上にできる。このため、チップ101の全面で、トレンチ2にきっかけの貫通部が形成される。その結果、
図6Cに示すように第1主面1a及び第2主面1cに垂直な側面を有するトレンチ2を、チップ101の全面に形成することができる。
【0044】
上記のように、オリフラ面1bが(111)面である半導体基板1を、オリフラ面1bを基準にして複数のチップ101に分割することにより、チップ101の面積を有効に活用することができる。例えば、オリフラ面1bが(111)面の半導体基板1を用いて半導体装置10を製造することにより、大きな容量密度のキャパシタを有する半導体装置10の製造効率を向上させることができる。なお、上記ではトレンチ2の長手方向がオリフラ面1bと平行である場合を説明したが、トレンチ2の長手方向がオリフラ面1bと垂直であってもよい。
【0045】
図6A~
図6Cを用いた説明では、オリフラ面1bが(111)面である半導体基板1を準備し、切断線をオリフラ面1bと平行及び垂直に決定する場合を例示的に説明した。この切断線に沿って半導体基板1を切断することにより、半導体基板1は、(111)面のチップ側面101Sをそれぞれ含む複数のチップ101に分割される。しかし、オリフラ面1bの結晶面に関わらず、半導体基板1の切断面が(111)面となるように第1主面1aにおける切断線を決定してもよい。つまり、切断線を(111)面と平行に決定し、切断線に沿って半導体基板1を切断することにより、半導体基板1は、(111)面のチップ側面101Sをそれぞれ含む複数のチップ101に分割される。例えば、
図7に示すように、オリフラ面1bが100面である半導体基板1について、オリフラ面1bと角度θ1で交差するように切断線の方向CCを設定してもよい。
【0046】
(第1実施形態の変形例)
図8A~
図9Cを参照して第1実施形態の変形例に係る半導体装置10の構成を説明する。
図8Aに示す半導体装置10は、トレンチ2Aの第1主面1aにおける長さLa2、幅Wa2が、第1実施形態のトレンチ2の第1主面1aにおける長さLa、幅Waと異なる。図示しないが、トレンチ2Aの第2主面1cにおける長さLb2、幅Wb2が、第1実施形態のトレンチ2の第2主面1cにおける長さLb、幅Wbと異なる。第1実施形態の変形例に係る半導体装置10の第1実施形態と重複する構成については、符号を引用してその説明は省略する。以下、第1実施形態の変形例と第1実施形態の相違点を中心に説明する。
【0047】
図8B及び
図8Cに示すように、第1主面1aにおける第1方向のトレンチ2Aのマスクパターンの長さLaM2は、第2主面1cにおける第1方向のトレンチ2Aのマスクパターンの長さLbM2よりも短い。同様に、
図8Cに示すように、第1主面1aにおける第2方向のトレンチ2のマスクパターンの幅WaM2は、第2主面1cにおける第2方向のトレンチ2のマスクパターンの幅WbM2よりも小さい。第1主面1aにおける第1方向のトレンチ2Aのマスクパターンの長さLaM2と、第2主面1cにおける第1方向に沿ったトレンチ2Aのマスクパターンの長さLbM2との合計が、半導体基板1の厚さtの2√2倍以上であれば、きっかけの貫通部が形成される。その結果、第1主面1a及び第2主面1cに対して側面が垂直なトレンチ2Aが形成される。なお、トレンチ2Aの長さは、マスクパターンの長さLaM2とマスクパターンの長さLbM2のうち、長い方になる。すなわち、形成後のトレンチ2Aの長さLa2及び長さLb2は、マスクパターンの長さLbM2と略等しくなる。
【0048】
以下に、図面を参照して、第1実施形態の変形例に係る半導体装置10の製造方法を説明する。
【0049】
先ず、
図8Cに示すように、トレンチ2Aの長手方向と半導体基板1の(111)面とを平行に合わせた状態にする。又は、トレンチ2Aの長手方向と半導体基板1の(111)面とを垂直に合わせてもよい。そして、半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1cのトレンチ2Aの領域に対して、両面から異方性エッチング処理をする。第1主面1a及び第2主面1cから半導体基板1の厚さ方向に向かって、半導体基板1は、長さLa2、Lb2のトレンチ2Aの長手側端部では主面と垂直にエッチングされる。一方、幅Wa、Wbのトレンチ2Aの短手側端部では、
図9Aに示すように、異方性エッチングにより半導体基板1の(111)面が露出し、第1斜面2d1と第2斜面2d2が形成される。そして、半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1cから異方性エッチングが進むことにより、第1主面1a及び第2主面1cから半導体基板1の厚さ方向に後退した中央部2e1、2e2を両面とする中間領域が形成される。
【0050】
次に、
図9Bに示すように、トレンチ2Aの中央部2e1、2e2を貫通するきっかけの貫通部を形成するように、異方性エッチング処理をする。具体的には、半導体基板1の厚さ方向に更にウェットエッチングをして、中央部2e1、2e2を完全にエッチング除去し、きっかけの貫通部を形成する。
【0051】
次に、
図9Cに示すように、第1斜面2d1と第2斜面2d2の先端部から幅Wa2の短手側端部まで、ウェットエッチングされる。つまり、きっかけの貫通部の形成後、第1斜面2d1と第2斜面2d2において、半導体基板1の基板平面方向にエッチングが進む。最終的には、幅Wa2のトレンチ2Aの短手側の側面2b2が、第1主面1a及び第2主面1cに対して垂直に形成される。すなわち、第1主面1aにおけるトレンチ2Aのマスクパターンの長さLaM2が第2主面1cにおけるトレンチ2Aのマスクパターンの長さLbM2と異なっていても、形成されるトレンチ2Aの長さLa2及び長さLb2は、マスクパターンの長さLbM2と略等しくなる。更に、第1主面1aにおけるトレンチ2Aのマスクパターンの幅WaM2が第2主面1cにおけるトレンチ2Aのマスクパターンの幅WbM2と異なっていても、形成されるトレンチ2Aの幅Wa2及び幅Wb2は、マスクパターンの幅WbM2と略等しくなる。
【0052】
以上に説明したように、第1実施形態の変形例における半導体装置10では、トレンチ2Aの長手方向と半導体基板1の(111)面とを平行又は垂直に合わせた状態においてウェットエッチングを用いた異方性エッチングによりトレンチ2Aを形成する。トレンチ2Aの側面は、主面に対して垂直である。
【0053】
第1実施形態の変形例における半導体装置10によれば、第1主面1aにおけるトレンチ2Aのマスクパターンの位置と、第2主面1cにおけるトレンチ2Aのマスクパターンの位置とが、平面視でズレが生じていても、主面に対して垂直な側面を有するトレンチ2Aを形成することができる。すなわち、きっかけの貫通部を形成した後に、ウェットエッチングによる異方性エッチングを進めることにより、(111)面の側面を有するトレンチ2Aを形成できる。マスクパターンの位置に平面視でズレが生じている場合、トレンチ2Aの形成される範囲は、第1主面1aのマスクパターンと第2主面1cのマスクパターンを平面視で重ねた領域を含む形状である。つまり、トレンチ2Aの平面視のサイズは、マスクパターンの平面視のサイズより大きい。
【0054】
(第2実施形態)
図10A~
図11Cを参照して第2実施形態に係る半導体装置10の構成を説明する。第2実施形態に係る半導体装置10は、トレンチ2Bの第1主面1aにおける長さLa3、幅Wa3が、第1実施形態のトレンチ2の第1主面1aにおける長さLa、幅Waと略等しい。また、トレンチ2Bの第2主面1cにおける長さLb3、幅Wb3が、第1実施形態のトレンチ2の第2主面1cにおける長さLb、幅Wbと略等しい。第2実施形態に係る半導体装置10の第1実施形態との違いは、トレンチ形成時のマスクパターンである。第2実施形態の第1実施形態と重複する構成については、符号を引用してその説明は省略する。以下、第1実施形態と第2実施形態の相違点を中心に説明する。
【0055】
図10B及び
図10Cに示すように、第1主面1aにおける第1方向のトレンチ2Bのマスクパターンの長さLaM3は、第2主面1cにおける第1方向のトレンチ2Bのマスクパターンの長さLbM3よりも長い。一方、
図10Cに示すように、第1主面1aにおける第2方向のトレンチ2Bのマスクパターンの幅WaM3は、第2主面1cにおける第2方向のトレンチ2Bのマスクパターンの幅WbM3と略等しい。トレンチ2Bの第1主面1aにおけるマスクパターンの長さLaM3と第2主面1cにおけるマスクパターンの長さLbM3との合計が、半導体基板1の厚さtの2√2倍以上であれば、きっかけの貫通部が形成される。その結果、主面に対して側面が垂直なトレンチ2Bが、ウェットエッチングによって形成される。また、トレンチ2Bの長さは、マスクパターンの長さLaM3とマスクパターンの長さLbM3のうち、長い方になる。すなわち、形成後のトレンチ2Bの長さLa3及び長さLb3は、マスクパターンの長さLaM3と略等しくなる。
【0056】
以下に、図面を参照して、第2実施形態に係る半導体装置10の製造方法を説明する。
【0057】
先ず、
図10Cに示すように、トレンチ2Bの長手方向と半導体基板1の(111)面とを平行に合わせた状態にする。又は、トレンチ2Bの長手方向と半導体基板1の(111)面とを垂直に合わせた状態にしてもよい。そして、半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1cのトレンチ2Bの領域に対して、両面からウェットエッチングによる異方性エッチング処理をする。このウェットエッチングにより、第1主面1a及び第2主面1cから半導体基板1の厚さ方向に向かって、半導体基板1は、長さLa2、Lb2のトレンチ2Bの長手側端部では主面と垂直にエッチングされる。一方、幅Wa、Wbのトレンチ2Bの短手側端部では、
図11Aに示すように、異方性エッチングにより半導体基板1の(111)面が露出し、第1斜面2d1と第2斜面2d2が形成される。そして、半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1cから異方性エッチングが進むことにより、第1主面1a及び第2主面1cから半導体基板1の厚さ方向に後退した中央部2e1、2e2を両面とする中間領域が形成される。
【0058】
次に、
図11Bに示すように、トレンチ2Bの中央部2e1、2e2に対して、異方性エッチング処理をする。具体的には、半導体基板1の厚さ方向に更にウェットエッチングをして、中央部2e1、2e2をエッチング除去し、きっかけの貫通部が形成される。
【0059】
次に、
図11Cに示すように、第1斜面2d1と第2斜面2d2の先端部から幅Wa2のトレンチ2Bの短手側端部まで、半導体基板1の基板平面方向に更にウェットエッチングする。つまり、きっかけの貫通部の形成後、第1斜面2d1と第2斜面2d2において、半導体基板1の基板平面方向にエッチングが進む。最終的には、幅Wa2の短手側の側面2b2が半導体基板1の主面に対して垂直なトレンチ2Bが形成される。すなわち、第2主面1cにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの長さLbM3が第1主面1aにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの長さLaM2と異なっていても、形成されるトレンチ2Bの長さLa3、Lb3は、マスクパターンの長さLaM3と略等しくなる。
【0060】
第2実施形態における半導体装置10では、トレンチ2Bの長手方向と半導体基板1の(111)面とを平行又は垂直に合わせた状態において、ウェットエッチングを用いた異方性エッチングにより、トレンチ2Bを形成する。すなわち、きっかけの貫通部を形成し、きっかけの貫通部の形成後に異方性エッチングを進めてトレンチ2Bが形成される。
【0061】
第2実施形態における半導体装置10によれば、第1主面1aにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの長さと、第2主面1cにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの長さが異なっていても、主面に対して垂直な側面を有するトレンチ2Bを形成することができる。
【0062】
更に、第2実施形態における半導体装置10によれば、第1主面1aにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの長さを基準としてトレンチ2Bを形成することができる。すなわち、第2主面1cにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの長さを第1主面1aにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの長さより短くすることで、基準の長さのトレンチ2Bを形成できる。
【0063】
(第3実施形態)
図12A~
図12Cを参照して第3実施形態に係る半導体装置10の構成を説明する。第3実施形態に係る半導体装置10は、トレンチ2Cの第1主面1aにおける長さLa4、幅Wa4が、第1実施形態のトレンチ2の第1主面1aにおける長さLa、幅Waと略等しい。また、第2主面1cにおけるトレンチ2Cの長さLb4、幅Wb4が、第1実施形態のトレンチ2の第2主面1cにおける長さLb、幅Wbと略等しい。第3実施形態に係る半導体装置10の第1実施形態との違いは、トレンチ形成時のマスクパターンである。第3実施形態の第1実施形態と重複する構成については、符号を引用してその説明は省略する。以下、第1実施形態と第3実施形態の相違点を中心に説明する。
【0064】
図12B及び
図12Cに示すように、第1主面1aにおける第1方向のトレンチ2Cのマスクパターンの長さLaM4は、第2主面1cにおける第1方向のトレンチ2Cのマスクパターンの長さLbM4と略等しい。一方、第1主面1aにおける第2方向のトレンチ2Cのマスクパターンの幅WaM4は、第2主面1cにおける第2方向のトレンチ2Cのマスクパターンの幅WbM4より長い。トレンチ2Cのマスクパターンの長さLaM4と長さLbM4の合計が、半導体基板1の厚さtの√2倍以上であれば、きっかけの貫通部が形成される。その結果、主面に対して側面が垂直なトレンチ2Cが形成される。トレンチ2Cの幅は、マスクパターンの幅WaM4とマスクパターンの幅WbM4のうち、長い方である。すなわち、トレンチ2Cの幅Wa4及び幅Wb4は、マスクパターンの幅WaM4と略等しくなる。なお、製造方法については、断面図の説明が第1実施形態と同じため省略する。
【0065】
第3実施形態における半導体装置10では、トレンチ2Cの長手方向と半導体基板1の(111)面とを平行又は垂直に合わせた状態において、ウェットエッチングを用いた異方性エッチングによりトレンチ2Cを形成する。第3実施形態における半導体装置10によれば、第1主面1aにおけるトレンチ2Cのマスクパターンの幅と、第2主面1cにおけるトレンチ2Cのマスクパターンの幅が異なっていても、主面に対して垂直な側面を有するトレンチ2Cを形成できる。すなわち、きっかけの貫通部を形成した後にウェットエッチングによる異方性エッチングを進めることにより、トレンチ2Cが形成される。
【0066】
更に、第3実施形態における半導体装置10によれば、第1主面1aにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの幅を基準としてトレンチ2Bを形成することができる。すなわち、第2主面1cにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの幅を第1主面1aにおけるトレンチ2Bのマスクパターンの幅より小さくすることで、基準の長さのトレンチ2Bを形成できる。
【0067】
(第4実施形態)
図13A~
図13Cを参照して第4実施形態に係る半導体装置10の構成を説明する。第4実施形態に係る半導体装置10は、トレンチの一例であるトレンチ2Dの第1主面1aにおける長さLa5、幅Wa5が、第1実施形態のトレンチ2の第1主面1aにおける長さLa、幅Waと略等しい。また、トレンチ2Dの第2主面1cにおける長さLb5、幅Wb5が、第1実施形態のトレンチ2の第2主面1cにおける長さLb、幅Wbと略等しい。第4実施形態に係る半導体装置10の第1実施形態との違いは、トレンチ形成時のマスクパターンである。第4実施形態の第1実施形態と重複する構成については、符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0068】
図13B及び
図13Cに示すように、第1主面1aにおける第1方向のトレンチ2Dのマスクパターンの長さLaM5は、第2主面1cにおける第1方向のトレンチ2Dのマスクパターンの長さLbM5よりも長い。更に、
図13Cに示すように、第1主面1aにおける第2方向のトレンチ2Dのマスクパターンの幅WaM5は、第2主面1cにおける第2方向のトレンチ2Dのマスクパターンの幅WbM5よりも大きい。第1主面1aにおけるトレンチ2Dのマスクパターンの長さLaM5と、第2主面1cにおけるトレンチ2Dのマスクパターンの長さLbM5との合計が、半導体基板1の厚さtの2√2倍以上であれば、きっかけの貫通部が形成される。その結果、第1主面1a及び第2主面1cに対して側面が垂直なトレンチ2Dが形成される。トレンチ2Dの長さは、マスクパターンの長さLaM5とマスクパターンの長さLbM5のうち、長い方になる。すなわち、形成後のトレンチ2Dの長さLa5及び長さLb5は、マスクパターンの長さLaM5と略等しくなる。更に、トレンチ2Dの幅は、マスクパターンの幅WaM5とマスクパターンの幅WbM5のうち、長い方になる。すなわち、形成後のトレンチ2Dの幅Wa5及び幅Wb5は、マスクパターンの幅WaM5と略等しくなる。なお、第4実施形態に係る半導体装置10の製造方法については、断面図の説明が第2実施形態と同じため省略する。
【0069】
第4実施形態における半導体装置10では、トレンチ2Dの長手方向と半導体基板1の(111)面とを平行又は垂直に合わせた状態において、ウェットエッチングを用いた異方性エッチングによりトレンチ2Dを形成する。
【0070】
第4実施形態における半導体装置10によれば、第1主面1aにおけるトレンチ2Dのマスクパターンの長さ及び幅と、第2主面1cにおけるトレンチ2Dのマスクパターンの長さ及び幅が異なっていても、主面に対して垂直な側面を有するトレンチ2Dを形成することができる。すなわち、きっかけの貫通部を形成した後にウェットエッチングによる異方性エッチングを進めることにより、(111)面の側面を有するトレンチ2Dが形成される。
【0071】
更に、第4実施形態における半導体装置10によれば、第1主面1aにおけるトレンチ2Dのマスクパターンの長さ及び幅を基準として、トレンチ2Dを形成できる。すなわち、第2主面1cにおけるトレンチ2Dのマスクパターンの長さ及び幅を第1主面1aにおけるトレンチ2Dのマスクパターンの長さ及び幅より小さくすることで、基準の長さ及び幅のトレンチ2Dを形成できる。
【0072】
(第1のマスク形成方法)
以下に、図面を参照して、第1~第4実施形態に係る半導体装置10の製造に使用するエッチング用のマスクを形成するための第1のマスク形成方法を説明する。以下では、ウェットエッチングを用いたトレンチ2を形成するプロセスフローのステップの一例を説明する。
【0073】
先ず、
図14Aに示すように、第1主面1a及び第2主面1cにマスク材の一例である窒化膜3を形成する。例えば、半導体基板1は、ダイヤモンド構造のシリコン基板であり、第1主面1a及び第2主面1cは(110)面である。半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1c上に、例えば、化学的気相堆積法(以下、CVD法と称する。)を用いて窒化膜3を成膜する。なお、窒化膜3を形成するステップでは、窒化膜3が成膜できる方法であればよく、CVD法に限定しない。
【0074】
次に、
図14Bに示すように、第1主面1a及び第2主面1cにおいて、窒化膜3上にレジスト4を形成する。具体的には、第1主面1a及び第2主面1cにおいて、窒化膜3上の全面にレジスト4を塗布する。レジスト4を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を用いた露光及び現像によりレジスト4をパターニングする。
【0075】
次に、
図14Cに示すように、第1主面1a及び第2主面1cにおいて、レジスト4をマスクにして窒化膜3をエッチングする。例えば、ドライエッチングを用いて窒化膜3をエッチングしてもよい。
【0076】
次に、
図14Dに示すように、第1主面1a及び第2主面1cにおいて、レジスト4を除去する。例えば、プラズマアッシング法を用いて、レジスト4を酸素アッシングにより除去してもよい。
【0077】
次に、
図14Eに示すように、窒化膜3をマスクとして第1主面1a及び第2主面1cの両面から半導体基板1をエッチングする。具体的には、窒化膜3をマスクに用いたウェットエッチングによって、半導体基板1を異方性エッチングする。ウェットエッチングに用いるエッチング液は、アルカリ性水溶液であってもよい。アルカリ性水溶液は、例えば、KOH又はTMAHを使用可能である。半導体基板1を異方性エッチングしてトレンチ2を形成する以下の工程は、一般的な既知の工程フローのため省略する。
【0078】
第1のマスク形成方法では、KOH液に対して溶けない耐性を持つ窒化膜3をエッチング用のマスクに用いて半導体基板1をエッチングすることにより、マスクパターンに則ったトレンチ2の形成が可能である。第1のマスク形成方法によれば、低コストのウェットエッチングを使用してトレンチ2を形成することで、半導体装置10の製造工程を簡素化でき、工期の短縮及びコスト低減することができる。
【0079】
(第2のマスク形成方法)
以下に、図面を参照して、第1~第4実施形態に係る半導体装置10の製造に使用するエッチング用のマスクを形成するための第2のマスク形成方法を説明する。以下では、ウェットエッチングを用いたトレンチ2を形成するプロセスフローのステップの一例を説明する。
【0080】
第2のマスク形成方法と第1のマスク形成方法の違いは、マスク材である。第2のマスク形成方法では、マスク材として窒化膜3を使用せず、エッチング液に溶けない耐性を有するレジスト4をマスク材として使用する。
【0081】
先ず、
図15Aに示すように、第1主面1a及び第2主面1cにレジスト4を形成する。例えば、半導体基板1は、ダイヤモンド構造のシリコン基板であり、第1主面1a及び第2主面1cは(110)面である。第1主面1a及び第2主面1cにおいて、半導体基板1上の全面にレジスト4を塗布する。
【0082】
次に、
図15Bに示すように、第1主面1a及び第2主面1cに形成したレジスト4をパターニングする。具体的には、フォトリソグラフィ技術を用いた露光及び現像によりレジスト4をパターニングする。
【0083】
次に、
図15Cに示すように、レジスト4をエッチング用のマスクとして第1主面1a及び第2主面1cの両面から半導体基板1をエッチングする。具体的には、レジスト4をマスクに用いたウェットエッチングによって、半導体基板1を異方性エッチングする。ウェットエッチングに用いるエッチング液は、アルカリ性水溶液であってもよい。アルカリ性水溶液は、例えば、KOH又はTMAHを使用可能である。半導体基板1を異方性エッチングしてトレンチ2を形成する以下の工程は、一般的な既知の工程フローのため省略する。
【0084】
第2のマスク形成方法では、マスク材に窒化膜3を使用しないため、マスク材に使用する窒化膜などのパターニングに必要なフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を、レジストのフォトリソグラフィ工程のみにすることができる。このため、第2のマスク形成方法によれば、第1のマスク形成方法に比べ、半導体装置10の製造プロセスを削減して、工程数を低減することができる。また、第2のマスク形成方法は、第1のマスク形成方法に比べ、製造コストを抑制できる。
【0085】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0086】
例えば、上記では、1つのトレンチ2を表示して説明したが、
図16に示すように、ストライプパターンの複数のトレンチ2を形成してもよい。トレンチ2は、半導体基板1に選択的に形成してもよい。
【0087】
また、第1~第4実施形態に係る半導体装置10が、トレンチ2を半導体キャパシタに用いた構成であってもよい。半導体キャパシタは、トレンチ2の内部に誘電膜と導電膜が配置されている。具体的な半導体キャパシタの例を
図17A及び
図17Bを参照して説明する。
【0088】
図17Aに示す半導体キャパシタは、トレンチ2の内部及び半導体基板1の主面に接する誘電膜6を備える。また、半導体キャパシタは、誘電膜6に積層された導電膜5を備える。
図17Aに示した半導体キャパシタは、誘電膜6と導電膜5を1層ずつ積層した構造である。半導体キャパシタは、半導体基板1と電気的に接続する第1電極11Aと、導電膜5と電気的に接続する第2電極11Bを備える。
【0089】
図17Bに示す半導体キャパシタは、誘電膜6と導電膜5を交互に3層ずつ積層した構造である。半導体キャパシタは、半導体基板1と2層目の導電膜5と電気的に接続する第1電極11Aと、1層目と3層目の導電膜5と電気的に接続する第2電極11Bを備える。
【0090】
図17A及び
図17Bに示す半導体キャパシタは、誘電膜6を挟んだ導電膜5の間、又は半導体基板1と導電膜5の間で電荷を蓄積する容量素子特性を実現する。
【0091】
誘電膜6に、例えば、酸化膜が使用可能である。導電膜5に、例えば、ポリシリコン膜が使用可能である。第1電極11A及び第2電極11Bに、例えば、アルミニウム膜などが使用可能である。
【0092】
トレンチ2の内部に形成された半導体キャパシタは、(111)面の斜面を側面に有するトレンチに比べ、側面が主面に垂直である深いトレンチ2を形成することができる。このため、トレンチ2の側面の面積が大きくなり、キャパシタの容量が大きくなる。また、
図17Bに示すように誘電膜6と導電膜5を多層の積層構造にすることで、
図17Aに示す誘電膜6と導電膜5の積層が1層の半導体キャパシタよりもキャパシタの容量を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 半導体基板
2、2A~2D トレンチ
3 窒化膜
4 レジスト
5 導電膜
6 誘電膜
10 半導体装置
11A 第1電極
11B 第2電極
1a 第1主面
1b オリフラ面
1c 第2主面
2b1、2b2 側面
2d1 第1斜面
2d2 第2斜面
2e1、2e2 中央部
101 チップ
101S チップ側面