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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081078
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】バッテリ用交流電流供給回路
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240610BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240610BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240610BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240610BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/44 P
H01M10/48 301
H02J7/00 302A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194536
(22)【出願日】2022-12-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】392029742
【氏名又は名称】田中 正一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
5G503BA02
5G503BB02
5G503BB03
5G503CB11
5G503EA08
5H030AA09
5H030AS08
5H030BB06
5H030BB21
5H030FF22
5H031CC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バッテリの容量変化を抑止しつつ、バッテリの内部状態を改善するバッテリ用交流電流供給回路を提供する。
【解決手段】バッテリ1としての2つのサブバッテリ11、12は、降圧トランス3の二次コイル32を通じて接続される。他例において、バッテリは、降圧トランスの二次コイルを通じてキャパシタに接続される。キャパシタは、パワースイッチング回路の一対の直流入力端に接続される平滑キャパシタ5からなる。これにより、バッテリに交流電流を供給することにより、複雑な回路無しにバッテリを充放電することができる。二次コイルに誘導された二次交流電圧は、バッテリを充放電する。これにより、バッテリの容量変化を抑止しつつ、バッテリの内部状態を改善することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気負荷に直流電力を供給するためのバッテリに接続される二次コイルを有する降圧トランスと、
一次交流電圧を前記降圧トランスの一次コイルに印加することにより前記一次コイルに一次交流電流を供給するオシレータと、
前記オシレータを制御するコントローラと、
前記二次コイルを通じて前記バッテリと接続される蓄電素子と、
を備えるバッテリ用交流電流供給回路において、
前記バッテリは、前記蓄電素子として働くための少なくとも2つのバッテリユニットを含み、
前記2つのバッテリユニットは、前記二次コイルを通じて互いに接続されることを特徴とするバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項2】
前記電気負荷は、前記二次コイルの中間端子に接続される請求項1記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項3】
前記2つのバッテリユニットはそれぞれ、前記二次コイルを通じて互いに接続される中間端子をもつ請求項1記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項4】
前記コントローラは、前記バッテリの温度が所定値未満である場合に、前記一次交流電圧を前記一次コイルに印加することにより、前記バッテリを加温するバッテリ加温モードをもつ請求項1記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項5】
前記コントローラは、前記バッテリを放電する正パルス電圧と前記バッテリを充電する負パルス電圧とを交互に繰り返す前記一次交流電圧を前記一次コイルに印加することにより、前記バッテリ内のデンドライトの成長を抑制するデンドライト抑制モードをもつ請求項1記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項6】
前記正パルス電圧は、前記負パルス電圧よりも高い振幅値と、より短い持続時間とをもつ請求項5記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項7】
前記降圧トランスは、直列接続された複数の一次コイルをもち、
前記オシレータは、前記各一次コイルの端部に別々に接続される3個以上のハーフブリッジをもち、
前記コントローラは、前記ハーフブリッジの選択により前記降圧トランスの降圧比を変更する請求項1記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項8】
電気負荷に直流電力を供給するためのバッテリに接続される二次コイルを有する降圧トランスと、
一次交流電圧を前記降圧トランスの一次コイルに印加することにより前記一次コイルに一次交流電流を供給するオシレータと、
前記オシレータを制御するコントローラと、
前記二次コイルを通じて前記バッテリと交流電力を授受する蓄電素子と、
を備えるバッテリ用交流電流供給回路において、
前記蓄電素子は、前記電気負荷としてのパワースイッチング回路の一対の直流入力端を接続する平滑キャパシタからなることを特徴とするバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項9】
前記バッテリ及び前記平滑キャパシタはそれぞれ、前記二次コイルを通じて互いに接続される中間端子をもつ請求項8記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項10】
前記コントローラは、前記バッテリの温度が所定値未満である場合に、前記一次交流電圧を前記一次コイルに印加することにより、前記バッテリを加温するバッテリ加温モードをもつ請求項8記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項11】
前記コントローラは、前記バッテリを放電する正パルス電圧と前記バッテリを充電する負パルス電圧とを交互に繰り返す前記一次交流電圧を前記一次コイルに印加することにより、前記バッテリ内のデンドライトの成長を抑制するデンドライト抑制モードをもつ請求項8記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項12】
前記正パルス電圧は、前記負パルス電圧よりも高い振幅値と、より短い持続時間とをもつ請求項11記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【請求項13】
前記降圧トランスは、直列接続された複数の一次コイルをもち、
前記オシレータは、前記各一次コイルの端部に別々に接続される3個以上のハーフブリッジをもち、
前記コントローラは、前記ハーフブリッジの選択により前記降圧トランスの降圧比を変更する請求項8記載のバッテリ用交流電流供給回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの内部状態改善のために交流電流をバッテリに供給するバッテリ用交流電流供給回路に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電流をバッテリに供給することにより、バッテリの内部状態を改善する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1は、充電動作と放電動作とを交互に繰り返すことにより、バッテリのデンドライトを抑制することを提案する。
【0004】
特許文献2は、キャパシタを介してバッテリに交流電流を供給することにより、バッテリを加熱する交流加熱法を提案する。この交流加熱法が図1を参照して説明される。オシレータ201が発生する交流電圧はキャパシタ202-203を通じてバッテリ100に印加される。これにより、バッテリ100の内部抵抗101が加熱される。
【0005】
特許文献3は、バッテリに交流電流を供給することにより、バッテリ電極の固相状態を改善することを提案している。
【0006】
温度状態、デンドライト析出状態、及び電極の固相状態のようなバッテリ内部状態を改善するためにバッテリに交流電流を供給する上記提案技術はバッテリ用交流電流供給技術と呼ばれる。
【0007】
リチウムのようなアルカリ金属イオンをキャリヤとする二次電池において、デンドライトは、バッテリの充電期間に負極から正極に向けて成長する。正極及び負極は、デンドライトの先端部が正極に達した瞬間に短絡され、大きな短絡電流が流れる。一般に、デンドライトの細い先端部は抵抗熱により溶けて消えるため、バッテリの内部抵抗はこの短絡直後に回復する。リークタッチ現象と呼ばれるこの現象は、固体電解質をもつ固体二次電池においても発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-216428
【特許文献2】特開2013-37859
【特許文献3】U.S.P.Application No.11,145,861
【0009】
次に、従来のバッテリ用交流電流供給技術の課題が説明される。交流電流がバッテリに供給される時、バッテリは充電及び放電を繰り返す。その結果、バッテリに交流電流を供給するために、バッテリはキャパシタと充放電電力を交換する必要がある。しかし、大きな交流電流を高電圧バッテリに供給する時、このキャパシタは高価となってしまう。
【0010】
冬期において交流電流によりEV用バッテリを急速に加温するケースが説明される。冷たいバッテリの加温を短時間で完了するために、大きな交流電流がバッテリに供給されねばならない。たとえば、0.1オームの内部抵抗値をもつバッテリに100Aの交流電流が供給される時、バッテリは1kWの抵抗損失を発生することができる。
【0011】
しかし、バッテリ電圧が400Vである時、バッテリの充放電電力は40KWとなる。言い換えると、1kWの内部抵抗損失をバッテリ内に発生するために、バッテリは40kWの電力の放出動作及び吸収動作を繰り返す必要がある。このような大きな充放電電力エネルギーを蓄積する大型かつ高価なキャパシタの採用は、電気自動車において困難である。
【0012】
たとえば、図1に示される特許文献2において、キャパシタ202-203は、バッテリ100と逆の充放電動作を行って、バッテリ100の充放電電力を吸収する。
【0013】
しかし、キャパシタ202-203の静電容量が小さい時、オシレータが出力する交流電圧のほとんどはキャパシタ202-203の電圧変化により消費されてしまうため、低い抵抗値をもつ内部抵抗101は、十分な抵抗損失を発生することができない。大きな静電容量と大きな耐圧とをもつキャパシタ202-203は、経済的に採用が困難である。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、バッテリの内部状態改善のための簡素なバッテリ用交流電流供給回路を提供することをその目的としている。
【0015】
本発明の第1及び第2の様相によれば、降圧トランスの二次コイルがバッテリと蓄電素子とを接続する。二次コイルに誘導される二次交流電圧は、バッテリを充放電する。蓄電素子はバッテリと逆の動作を行う。これにより、バッテリの内部状態を改善することができる。
【0016】
さらに、本発明の第1の様相によれば、バッテリは、共通の電気負荷に接続される2つのバッテリユニットを含む。各バッテリユニットはそれぞれ、直列接続された多数の二次電池セルを含む。2つのバッテリユニットは降圧トランスの二次コイルを通じて互いに接続される。二次交流電圧が降圧トランスの二次コイルに誘導される時、2つのバッテリユニットは互いに逆位相で充放電を繰り返す。その結果、バッテリの充放電電力を一時的に保持するための蓄電素子を省略することができる。言い換えれば、2つのバッテリユニットの一方は他方のための蓄電素子として機能する。
【0017】
好適な態様において、降圧トランスの二次コイルは中間端子をもち、電気負荷はこの中間端子に接続される。言い換えれば、2つのバッテリユニットは、直列接続された2つの二次コイルを個別に通じて接続される。これにより、二次コイルが電気負荷に与える影響を低減することができる。
【0018】
好適な態様において、2つのバッテリユニットはそれぞれ、中間端子をもつ。降圧トランスの二次コイルは、2つのバッテリユニットの中間端子を接続する。これにより、バッテリから電気負荷へ供給される直流電流は二次コイルを経由せずに流れることができる。
【0019】
本発明の第2の様相によれば、平滑キャパシタが、蓄電素子として採用される。インバータや昇圧チョッハ゛のようなパワースイッチング回路の一対の直流電源端子に接続される平滑キャパシタは、パワースイッチング回路のスイッチングノイズを吸収する。これにより、蓄電素子の新たな追加が不要となり、回路コストが低減される。
【0020】
好適な態様において、降圧トランスの二次コイルは、バッテリの中間端子と平滑キャパシタの中間端子とを接続する。これにより、バッテリから電気負荷へ供給される直流電流は二次コイルを経由せずに流れることができる。
【0021】
本発明の好適な態様において、降圧トランスは、バッテリが低温である時、バッテリに交流電流を供給する。これにより、バッテリは加温される。けれども、バッテリ温度が低い時、バッテリの充放電能力が低下することが知られている。したがって、交流電流の振幅値はバッテリ温度に基づいて調節されることが好ましい。たとえば、バッテリ温度が低い時、バッテリに印加される二次交流電圧は低減される。これにより、低温のバッテリの充放電電力による悪影響を回避することができる。
【0022】
本発明の好適な態様において、デンドライトの先端部とバッテリの正極との間に存在する比較的高抵抗の境界領域を流れる電流成分が、バッテリに印加される交流電圧により増加される。この電流成分は、疑似短絡電流と呼ばれる。その結果、デンドライトの細い先端部がこの疑似短絡電流成分により焼失するため、バッテリのデンドライトによる短絡事故を回避することができる。
【0023】
好適には、降圧トランスの二次交流電圧は短パルス波形である。これにより、疑似短絡電流の望ましくない持続を防止することができる。交流電圧の重畳によるこの意図的なデンドライト先端部の除去は、バッテリの充電期間の初期に実施されることが好適である。好適には、降圧トランスがバッテリに二次交流電圧を印加する時、降圧トランスの一次コイルを流れる一次交流電流が計測される。これにより、一次交流電圧及び一次交流電流に基づいて検出されたバッテリ内部抵抗の低下により、デンドライトの成長の程度を推測することができる。
【0024】
好適には、この内部抵抗の検出された低下が所定値を超える時、降圧トランスは、バッテリに高い二次交流電圧を印加する。これにより、デンドライトによる短絡発生の直前にデンドライト先端部の意図的な除去を実現することができる。好適には、一次交流電圧を一次コイルに印加することにより判定したバッテリ抵抗の低下状態により、デンドライトの成長レベルが判定される。この一次交流電圧はデンドライト判定用の電圧値をもつ。さらに、デンドライトの成長レベルが深刻であると推定した時、もう一つの一次交流電圧が一次コイルに印加される。このもう一つの一次交流電圧は、デンドライト判定用の電圧値よりも高い短絡防止用の電圧値をもつ。これにより、デンドライトの成長による短絡事故を防止することができる。
【0025】
好適な態様において、降圧トランスがバッテリに印加する交流電圧は、交互に繰り返される正パルス電圧及び負パルス電圧からなる。正パルス電圧はバッテリを放電し、負パルス電圧はバッテリを充電する。さらに、正パルス電圧は、負パルス電圧よりも高い振幅値と、より短い持続時間とをもつ。これにより、バッテリ内のデンドライトの成長を抑制することができる。
【0026】
好適な態様において、降圧トランスは複数の一次コイルをもち、オシレータは、多数のハーフブリッジからなる。各ハーフブリッジは、一次コイルの各端部に別々に接続される。これにより、降圧トランスは、多数の降圧比をもつことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、従来のバッテリ用交流電流供給回路を示す回路図である。
図2図2は、第1実施例のバッテリ用交流電流供給回路を示す回路図である。
図3図3は、第2実施例のバッテリ用交流電流供給回路を示す回路図である。
図4図4は、第3実施例のバッテリ用交流電流供給回路を示す回路図である。
図5図5は、オシレータの一例を示す回路図である。
図6図6は、第3実施例のバッテリ用交流電流供給回路の動作を示すブロック回路図である。
図7図7は、第4実施例のバッテリ用交流電流供給回路を示す回路図である。
図8図8は、電圧振幅を変更可能なバッテリ用交流電流供給回路を示す回路図である。
図9図9は、二次電池セル内で成長したデンドライトを示す模式図である。
図10図10は、図9に示される二次電池セルの等価回路図である。
図11図11は、交流電圧の重畳によるデンドライトの除去動作を示すフローチャートである。
図12図12は、デンドライトを抑制可能な交流電圧波形を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1実施例
第1実施例が図1を参照して説明される。内部抵抗1rをもつバッテリ1の正極端子は、降圧トランス3の二次コイル32を通じて3相インバータ4の高電位側の直流電源端子41に接続されている。バッテリ1の負極端子は、3相インバータ4の低電位側の直流電源端子42に接続されている。平滑キャパシタ5が、3相インバータ4の一対の直流電源端子41及び42に接続されている。降圧トランス3の二次コイル32は、一次コイル31と磁気結合している。たとえば、一次コイル31は二次コイル32の25倍の巻数値をもつ。一次コイル31に交流電圧を印加するオシレータ6はコントローラ7により制御される。バッテリ1はオシレータ6に直流電力を供給している。
【0029】
コントローラ7がオシレータ6に発振動作を指令する時、オシレータ6は一次コイル31に一次交流電圧を印加する。これにより、二次コイル32、平滑キャパシタ5、及びバッテリ1からなる電流循環回路に交流電流Iacが流れ、バッテリ1の内部抵抗1rは抵抗損失を発生する。この実施例によれば、オシレータ6が降圧トランス3の一次コイル31に交流電圧を印加する時、交流電流Iacがバッテリ1に流れる。その結果、バッテリ1が充放電される。バッテリ1及び平滑キャパシタ5の間を繰り返し往復するこの充放電電力は、バッテリ電圧Vbと交流電流Iacとの積に等しい。したがって、バッテリ1の電圧Vb及び交流電流Iacがそれぞれ高い時、この充放電電力は非常に増大する。
【0030】
一般に、平滑キャパシタ5は、高い耐圧と大きな静電容量をもつ。このため、平滑キャパシタ5は、上記充放電電力のエネルギーを良好に蓄積することができる。さらに、降圧トランス3の二次コイル32は、3相インバータ4からバッテリ1へのスイッチングノイズの侵入を阻止する。
【0031】
第2実施例
第2実施例が図3を参照して説明される。この実施例によれば、バッテリ1は、直列接続されたサブバッテリ11及び12からなる。同様に、平滑キャパシタ5は、直列接続されたサブキャパシタ51及び52からなる。それぞれほぼ等しい電圧をもつサブバッテリ11及び12の接続点13は、バッテリ1の中間端子と呼ばれる。同様に、それぞれほぼ等しい静電容量をもつサブキャパシタ51及び52の接続点53は、平滑キャパシタ5の中間端子と呼ばれる。2つの中間端子13及び53は、降圧トランス3の二次コイル32により接続されている。バッテリ1は、並列接続された3相インバータ4及び平滑キャパシタ5にバッテリ電圧を印加している。
【0032】
この実施例の回路動作が説明される。この動作は実施例1と本質的に同じである。しかし、この実施例によれば、降圧トランス3の二次コイル32は、バッテリ1の中間端子13と平滑キャパシタ5の中間端子53との間に二次交流電圧を印加する。その結果、交流電流は2つの閉回路(電流ループ)を通じて循環する。第1の電流ループは、サブバッテリ11、サブキャパシタ51、及び二次コイル32からなる。第2の電流ループは、サブバッテリ12、サブキャパシタ52、及び二次コイル32からなる。
【0033】
中間端子13が中間端子53よりも高い電位をもつ期間において、サブバッテリ11及びサブキャパシタ52は放電され、サブバッテリ12及びサブキャパシタ51は充電される。中間端子13が中間端子53よりも低い電位をもつ期間において、サブバッテリ11及びサブキャパシタ52は充電され、サブバッテリ12及びサブキャパシタ51は放電される。
【0034】
これにより、この実施例の回路は蓄電デバイスの追加を必要としない。さらに、この実施例によれば、バッテリ1は、降圧トランス3の二次コイル32を介すること無しに3相インバータ4に直流電流を供給することができる。このため、二次コイル32による抵抗損失を低減することができる。さらに、3相インバータ4のスイッチングノイズは降圧トランス3に印加されない。
【0035】
第3実施例
第3実施例が図4を参照して説明される。この実施例によれば、降圧トランス3は、それぞれ一次コイル31と磁気結合する2つの二次コイル33及び34をもつ。二次コイル33及び34は互いに同じ向きに巻かれている。これは、降圧トランス3の二次コイルが中間端子35をもつことと同じである。
【0036】
バッテリ1は、二次コイル33を通じて3相インバータ4及び平滑キャパシタ5に接続されている。この実施例はさらに、第2のバッテリ8を採用する。バッテリ1及び8はそれぞれ、バッテリユニットと呼ばれることができる。バッテリ8は、二次コイル34を通じて3相インバータ4及び平滑キャパシタ5に接続されている。この実施例のバッテリは、本質的に並列接続された2つのバッテリ1及び8からなる。2つの二次コイル33及び34の中間端子35は、図4に示されるように3相インバータ4の高電位直流端子に接続されている。
【0037】
図5に示されるオシレータ6は、2つのレグをもつHブリッジからなる。レグは良く知られているハーフブリッジである。レグ61は、相補的に動作する上アームスイッチ63及び下アームスイッチ64からなる。レグ62は、相補的に動作する上アームスイッチ65及び下アームスイッチ66からなる。オシレータ6は、降圧トランス3の一次コイル31に要求された波形をもつ一次交流電流を供給し、2つの二次コイル33及び34は、それぞれ二次交流電圧Vacを同じ向きに発生する。
【0038】
この実施例の回路動作が図6を参照して説明される。二次コイル33及び34はそれぞれ、互いに等しい電圧値をもつ二次交流電圧Vacを発生する。バッテリ1及びバッテリ8はそれぞれ等しいバッテリ電圧Vbをもつ。バッテリ1の内部抵抗1r及びバッテリ8の内部抵抗8rはそれぞれ同じ抵抗値をもつ。バッテリ1は二次コイル33を通じて3相インバータ4に直流電流I1を供給し、バッテリ8は二次コイル34を通じて3相インバータ4に直流電流I2を供給する。
【0039】
2つの二次コイル33及び34は、2つのバッテリ1及び8を通じて循環する交流電流成分Iacを発生する。二次コイル33が3相インバータ4に供給する交流電流成分は、二次コイル34が3相インバータ4に供給する交流電流成分と相殺される。内部抵抗1r及び8rの電圧降下はそれぞれ、二次コイル33及び34の交流電圧値Vacに等しくなる。
【0040】
結局、3相インバータ4のような電気負荷は、二次コイル33及び34に誘導される二次交流電圧Vacにより影響を受けない。換言すれば、オシレータ6から降圧トランス3に供給された交流電力は、3相インバータ4のような電気負荷により消費されない。
【0041】
さらに、二次コイル33及び34が3相インバータ4のスイッチングノイズ電圧がバッテリ1に侵入するのを抑制するため、バッテリ1及び8の無駄な抵抗損失を低減することができる。
【0042】
第4実施例
第4実施例が図7を参照して説明される。この実施例によれば、互いに並列接続された2つのバッテリ1及び8が、3相インバータのような電気負荷(図示せず)に接続される。バッテリ1及び8はそれぞれ、バッテリユニットと呼ばれることができる。バッテリ1は、直列接続されたサブバッテリ11及び12からなる。同様に、バッテリ8は、直列接続されたサブバッテリ81及び82からなる。それぞれほぼ等しい電圧をもつサブバッテリ11及び12の接続点13は、バッテリ1の中間端子と呼ばれる。同様に、それぞれほぼ等しい電圧をもつサブバッテリ81及び82の接続点83は、バッテリ8の中間端子と呼ばれる。2つの中間端子13及び83は、降圧トランス3の二次コイル32により接続されている。
【0043】
この実施例の回路動作が説明される。この動作は実施例2と本質的に同じである。しかし、この実施例によれば、降圧トランス3の二次コイル32は、バッテリ1の中間端子13とバッテリ85の中間端子83との間に二次交流電圧を印加する。その結果、交流電流は2つの閉回路(電流ループ)を通じて循環する。第1の電流ループは、サブバッテリ11、サブバッテリ81、及び二次コイル32からなる。第2の電流ループは、サブバッテリ12、サブバッテリ82、及び二次コイル32からなる。
【0044】
中間端子13が中間端子83よりも高い電位をもつ期間において、サブバッテリ11及び82は放電され、サブバッテリ12及び81は充電される。中間端子13が中間端子83よりも低い電位をもつ期間において、サブバッテリ11及び82は充電され、サブバッテリ12及び81は放電される。
【0045】
これにより、この実施例は、蓄電デバイスの追加を必要としない。さらに、この実施例によれば、バッテリ1及び8は、降圧トランス3の二次コイル32を介すること無しに電気負荷に直流電流を供給することができる。このため、二次コイル32による抵抗損失を低減することができる。さらに、3相インバータのような電気負荷のスイッチングノイズは降圧トランス3に印加されない。
【0046】
第5実施例
既述された各実施例において、バッテリに印加される交流電圧の振幅値を変更することが好ましい。さらに、バッテリに印加される交流電圧の正半波成分及び負半波成分が互いに異なる電圧値をもつことも好適である。たとえば、バッテリの放電側のパルス電圧が、充電側のパルス電圧よりも高い電圧値と短い持続期間とをもつケースは、デンドライト抑制に有利である。この実施例によれば、バッテリに印加される交流電圧の振幅を変更可能なシンプルなバッテリ用交流電流供給回路が開示される。
【0047】
図8は、この実施例を示す回路図である。この回路は、降圧トランス3及びオシレータ6からなる。オシレータ6は、それぞれハーフブリッジからなる3つのレグ61、62、及び67からなる。降圧トランス3は、直列に接続され、互いに同じ方向に巻かれた2つの一次コイル31A及び31Bをもつ。一次コイル31Aは巻数N1をもち、一次コイル31Bは巻数N2をもつ。降圧トランス3の二次コイルは、他の実施例と同じである。レグ61は、直列接続された上アームスイッチ63及び下アームスイッチ64からなる。レグ62は、直列接続された上アームスイッチ65及び下アームスイッチ66からなる。レグ67は、直列接続された上アームスイッチ68及び下アームスイッチ69からなる。
【0048】
レグ61の出力端子は一次コイル31Aの一端に接続されている。レグ62の出力端子は一次コイル31Bの一端に接続されている。レグ67の出力端子は2つの一次コイル31A及び31Bからなるの各他端に接続されている。
【0049】
この出力電圧可変タイプの交流電流供給回路の動作が説明される。この実施例によれば、降圧トランス3の降圧比を選択することにより、降圧トランス3がバッテリに印加する二次交流電圧の振幅値を変更する。第1モードにおいて、レグ61及び62からなるHブリッジが運転され、レグ67が休止される。これにより、降圧トランス3の一次コイル31は、巻数値N1と巻数値N2との和に等しい巻数値をもつ。その結果、降圧トランス3は、最も高い降圧比をもつ。
【0050】
第2モードにおいて、レグ61及び67からなるHブリッジが運転され、レグ62が休止される。これにより、降圧トランス3の一次コイル31は巻数値N1をもち、第1モードよりも低い降圧比をもつ。同様に、第3モードにおいて、レグ67及び62からなるHブリッジが運転され、レグ61が休止される。これにより、降圧トランス3の一次コイル31は巻数値N2をもち、第1モードよりも低い降圧比をもつ。
【0051】
第4モードにおいて、レグ61及び62が同じタイミングでスイッチングされ、レグ67がレグ61及び62と相補的にスイッチングされる。その結果、一次コイル31Aを流れる一次交流電流は、一次コイル31Bを流れる一次交流電流と逆向きに流れる。その結果、降圧トランス3は、巻数値N1と巻数値N2との差値に等しい巻数値をもつ。結局、降圧トランス3の一次コイル31は、第1モードよりも低い降圧比をもつ。降圧トランス3は、巻数値N1及びN2を適宜選択することにより、4種類の降圧比を簡素な回路構成により実現することができる。
【0052】
一例において、巻数N1は60ターンであり、巻数N2は40ターンである。これにより、降圧トランス3の一次コイルは等価的に100ターン、60ターン、40ターン、及び20ターンのうちからその一つを選択することができる。その結果、降圧トランス3の降圧比を大幅に変更することができる。
【0053】
第6実施例
既述された各実施例を用いるデンドライト抑制技術が図9-図11を参照して説明される。図9は、バッテリ1の一つの二次電池セルにおいて、デンドライトが正極近傍まで到達した状態を示す模式断面図である。この二次電池セルは、負極集電体91、負極92、セパレータ94、正極96、正極集電体97をもち、電解液が負極92と正極96との間に充填されている。その結果、負極92とセパレータ94との間の隙間93に電解液が充填されている。同様に、正極96とセパレータ94との間の隙間95に電解液が充填されている。図9において、負極92から成長したデンドライト9の先端部98は、隙間95内にて狭い隙間99を挟んで正極96と対面している。
【0054】
図10は、バッテリ1の充電中においてバッテリ1に交流電圧Vacを印加するケースを示す模式等価回路図である。説明を簡単とするために、バッテリ1は一つの二次電池セルからなることが仮定される。
【0055】
したがって、直流充電電圧Vcと交流電圧Vacとの合計がバッテリ1に印加される。デンドライト9が存在しない時、バッテリ1の内部抵抗1rは、正極抵抗Rpと、電解液抵抗Reと、負極抵抗Rnとの合計となる。正極抵抗Rpは、正極96の電気抵抗と正極集電体97の電気抵抗との合計となる。負極抵抗Rnは、負極92の電気抵抗と負極集電体91の電気抵抗との合計となる。
【0056】
デンドライト9が存在する時、デンドライト9の電気抵抗と隙間99の電気抵抗との合計に等しいデンドライト抵抗Rdが電解液抵抗Reと並列に接続される。デンドライト9は導体であるため、デンドライト抵抗Rdはほぼ隙間99の電気抵抗に等しくなる。図9に示されるようにデンドライト9の先端部98が正極96の近傍まで成長した状態において、デンドライト抵抗Rdは無視できない低値となる。その結果、バッテリ1の内部抵抗1rの抵抗値は、デンドライト9無しの各抵抗値(Rp、Re、及びRn)の和よりも低くなる。
【0057】
したがって、内部抵抗1rの予め記憶している初期抵抗値と現在の抵抗値との比較により、デンドライト抵抗Rdを推定することができる。図10において、インダクタンス成分及び静電容量成分は説明を簡単とするために無視されている。降圧トランス3は、内部抵抗1rの抵抗値を検出するのに有効である。
【0058】
次に、バッテリ1の内部抵抗値が所定しきい値未満となる時、デンドライト9が正極96にもうすぐに達すると推定することができる。この実施例では、この推定に基づいて、降圧トランス3は比較的高い交流電圧Vacをバッテリ1に印加する。
【0059】
デンドライト9の電圧降下が無視できるため、非常に狭い隙間99に充電電圧Vcと交流電圧Vacとの合計が印加される。これにより、大きなデンドライト電流が正極96からデンドライト9の先端部98に流れる。このデンドライト電流は、疑似短絡電流と呼ばれる。その結果、細い先端部98は抵抗損失により溶解して消える。デンドライト抵抗Rdは、リークタッチ現象と呼ばれるこの現象が生じた直後に再び高くなる。短絡事故は、このリークタッチ現象の直後の一定期間は防止される。
【0060】
抵抗成分の変化の代わりに、バッテリ1のインダクタンス成分の変化に基づいて、デンドライトの成長を判定してもよい。デンドライトは一種の導線であるため、そのインダクタンス成分の増加はデンドライトの成長を意味する。
【0061】
図11は、コントローラ7により意図的に実施されるリークタッチ現象の制御を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS100にて、バッテリ1に交流電圧Vacが印加され、交流電流Iacが検出される。次のステップS102にて、内部抵抗1Rの抵抗値が算出される。次に、この抵抗値の低下量がしきい値を超えたか否かが判定される(ステップS104)。この抵抗値の低下量がしきい値を超える時、好適な高値が、バッテリ1に印加される交流電圧Vacとして選択される(ステップS106)。
【0062】
次に、選択した交流電圧Vacをバッテリ1に印加し、上記リークタッチ現象を発生させる(S108)。これにより、バッテリ1の充電中にデンドライト9を通じて大きな短絡電流が流れる事故を回避することができる。
【0063】
このリークタッチ現象は、バッテリ1の充電期間中以外の期間に意図的な発生されることができる。バッテリ1に印加される交流電圧Vac は交互に繰り返される正負の矩形波形状のパルス電圧からなることが好適である。図8に示される回路を用いることにより、正のパルス電圧は、負のパルス電圧と異なる振幅値をもつことができる。
【0064】
第7実施例
既述された各実施例を用いるもう一つのデンドライト抑制技術が図12を参照して説明される。図12は、バッテリ1に印加される交流電圧Vac及びバッテリ1に供給される交流電流Iacを示す。交流電圧Vacは、交互に繰り返される正パルス電圧Vp及び負パルス電圧Vnからなる。
【0065】
この実施例によれば、正パルス電流Ipはバッテリ1の放電電流成分からなり、負パルス電流Inはバッテリ1の充電電流成分からなる。正パルス電流Ipの積分値は負パルス電流Inの積分値に等しい。正パルス電圧Vpは、負パルス電圧Vnよりも高い振幅値と、負パルス電圧Vnよりも短い持続時間をもつ。たとえば、正パルス電圧Vpは、負パルス電圧Vnの約4倍の振幅値と、負パルス電圧Vnの約25%の持続時間をもつ。
【0066】
これにより、バッテリ1のデンドライト成長を抑制することができることがわかった。充電電流の積分値が等しい時、高い振幅値及び短い持続時間をもつ充電電流は、低い振幅値及び長い持続時間をもつ充電電流と比べて、デンドライトがより成長することがわかった。さらに、放電電流の積分値が等しい時、高い振幅値及び短い持続時間をもつ放電電流は、低い振幅値及び長い持続時間をもつ放電電流と比べて、デンドライトがより溶解することがわかった。
【0067】
したがって、低い振幅値及び長い持続時間をもつ充電電流波形と、高い振幅値及び短い持続時間をもつ放電電流波形からなる交流電流を供給することにより、バッテリ内のデンドライト成長を抑制できる。
【0068】
このデンドライト抑制法において、放電電流の積分値と充電電流の積分値がほぼ等しいため、バッテリのSOC値はほぼ一定となる。具体的な2つの制御例がさらに説明される。
【0069】
第1の制御例によれば、オシレータ6として、図5に示されるフルブリッジが採用される。Hブリッジとも呼ばれるこのフルブリッジは、2つのレグ61及び62からなる。
【0070】
正パルス電圧Vpが一次コイル31に印加される時、上アームスイッチ63がオンされ、上アームスイッチ65及び下アームスイッチ64はオフされる。下アームスイッチ66は所定のキャリヤ周波数でPWMスイッチングされる。これにより、下アームスイッチ66のPWMテ゛ューティ比に比例する平均電圧に等しい振幅値をもつ正パルス電圧Vpが一次コイル31に印加される。
【0071】
同様に、負パルス電圧Vnが一次コイル31に印加される時、上アームスイッチ65がオンされ、上アームスイッチ63及び下アームスイッチ66はオフされる。下アームスイッチ64は所定のキャリヤ周波数でPWMスイッチングされる。これにより、下アームスイッチ64のPWMテ゛ューティ比に比例する平均電圧に等しい振幅値をもつ負パルス電圧Vnが一次コイル31に印加される。
【0072】
第2の制御例によれば、オシレータ6として、図8に示されるオシレータ6が採用される。負パルス電圧Vnが一次コイル31に印加される時、レグ61及び62からなるHブリッジが運転される。これにより、一次コイル31の巻数値は、N1+N2となる。たとえば、巻数値N1が60、巻数値N2が40である時、一次コイル31の巻数値は100となるため、降圧トランス3は高い降圧比をもつ。その結果、充電パルス電圧Vnは低くなる。
【0073】
正パルス電圧Vpが一次コイル31に印加される時、レグ61及び67からなる第1のHブリッジと、レグ62及び67からなる第2のHブリッジが使用される。レグ61および62は同じ動作を実施し、レグ67はレグ61および62と反対の動作を実施する。これにより、一次コイル31の等価的な巻数値は、N1-N2となる。たとえば、巻数値N1が60、巻数値N2が40である時、一次コイル31の巻数値は等価的に20となるため、降圧トランス3は低い降圧比をもつ。その結果、放電パルス電圧Vpは高くなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12