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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081080
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】藻場形成構造
(51)【国際特許分類】
   A01G 33/00 20060101AFI20240610BHJP
   A01K 61/73 20170101ALI20240610BHJP
【FI】
A01G33/00
A01K61/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194538
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】河目 裕介
【テーマコード(参考)】
2B003
2B026
【Fターム(参考)】
2B003AA02
2B003BB02
2B003BB09
2B003EE04
2B026AA05
2B026AB06
2B026AC01
(57)【要約】
【課題】食害による海藻類の枯死を抑制しつつ、生態系の保全・再生を図ることができる藻場形構造を提供する。
【解決手段】格子状に形成され、海草・海藻を育成する藻場基盤10と、藻場基盤10を海底から浮かした状態で浮遊させる浮き20(浮遊部)と、藻場基盤10に立ち上がるように設けられ、海草・海藻の育成を補助すると共に、藻場基盤10の上方において食害生物(例えば魚)の動作を規制する上側規制部と、藻場基盤10の下方に離れた状態で設けられ、藻場基盤10の下方において食害生物の動作を規制する下側規制部と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に形成され、海草・海藻を育成する藻場基盤と、
前記藻場基盤を海底から浮かした状態で浮遊させる浮遊部と、
前記藻場基盤に立ち上がるように設けられ、海草・海藻の育成を補助すると共に、前記藻場基盤の上方において食害生物の動作を規制する上側規制部と、
前記藻場基盤の下方に離れた状態で設けられ、前記藻場基盤の下方において食害生物の動作を規制する下側規制部と、
を具備する、
藻場形成構造。
【請求項2】
前記下側規制部は、
格子状に形成されると共に、前記藻場基盤の下方を覆うように形成される下側第一規制部を有する、
請求項1に記載の藻場形成構造。
【請求項3】
前記下側規制部は、
格子状に形成されると共に、前記藻場基盤と前記下側第一規制部との間を外側から覆うように形成される下側第二規制部を有する、
請求項2に記載の藻場形成構造。
【請求項4】
前記上側規制部及び前記下側規制部は、互いに連結される、
請求項1に記載の藻場形成構造。
【請求項5】
前記上側規制部は、
前記下側規制部を介して前記藻場基盤に取り付けられる、
請求項4に記載の藻場形成構造。
【請求項6】
前記下側規制部は、
前記下側規制部のうち上側に位置する下側第一規制部と、
前記下側規制部のうち下側に位置すると共に、前記下側第一規制部と連結される下側第二規制部と、を有し、
互いに連結された前記下側第一規制部と前記下側第二規制部との間に、前記藻場基盤の少なくとも一部が通過するように形成される、
請求項5に記載の藻場形成構造。
【請求項7】
前記下側規制部は、
前記下側規制部のうち上側に位置すると共に、前記上側規制部と連結される下側第一規制部と、
前記下側規制部のうち下側に位置し、前記下側第一規制部と連結されると共に前記下側第一規制部よりも側方に拡がるように形成された下側第二規制部と、を有し、
前記下側第一規制部に、前記藻場基盤の少なくとも一部が取り付けられる、
請求項5に記載の藻場形成構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻場を形成するための藻場形成構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、藻場を形成するための藻場形成構造の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1においては、光量が十分に確保できる水深を選択し、海草・海藻の着生した着生床を、フロートを用いて海面下の任意の位置に係留させる。これによれば、海草・海藻が成熟することなく枯死するのを抑制できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、海中に生息する生物の食害について考慮されておらず、当該生物の食害が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-061509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、食害による海藻類の枯死を抑制しつつ、生態系の保全・再生を図ることができる藻場形成構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、格子状に形成され、海草・海藻を育成する藻場基盤と、前記藻場基盤を海底から浮かした状態で浮遊させる浮遊部と、前記藻場基盤に立ち上がるように設けられ、海草・海藻の育成を補助すると共に、前記藻場基盤の上方において食害生物の動作を規制する上側規制部と、前記藻場基盤の下方に離れた状態で設けられ、前記藻場基盤の下方において食害生物の動作を規制する下側規制部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記下側規制部は、格子状に形成されると共に、前記藻場基盤の下方を覆うように形成される下側第一規制部を有するものである。
【0010】
請求項3においては、前記下側規制部は、格子状に形成されると共に、前記藻場基盤と前記下側第一規制部との間を外側から覆うように形成される下側第二規制部を有するものである。
【0011】
請求項4においては、前記上側規制部及び前記下側規制部は、互いに連結されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記上側規制部は、前記下側規制部を介して前記藻場基盤に取り付けられるものである。
【0013】
請求項6においては、前記下側規制部は、前記下側規制部のうち上側に位置する下側第一規制部と、前記下側規制部のうち下側に位置すると共に、前記下側第一規制部と連結される下側第二規制部と、を有し、互いに連結された前記下側第一規制部と前記下側第二規制部との間に、前記藻場基盤の少なくとも一部が通過するように形成されるものである。
【0014】
請求項7においては、前記下側規制部は、前記下側規制部のうち上側に位置すると共に、前記上側規制部と連結される下側第一規制部と、前記下側規制部のうち下側に位置し、前記下側第一規制部と連結されると共に前記下側第一規制部よりも側方に拡がるように形成された下側第二規制部と、を有し、前記下側第一規制部に、前記藻場基盤の少なくとも一部が取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本願発明においては、食害による海藻類の枯死を抑制しつつ、生態系の保全・再生を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係る藻場を示した斜視図。
図2】同じく、側面図。
図3】同じく、海藻類及び放射状構造物の図示が省略された藻場を示した一部断面斜視図。
図4】(a)放射状構造物を示した斜視図。(b)同じく、側面図。(c)同じく、平面図。
図5】(a)放射状構造物の配置の別例を示した斜視図。(b)第一の別例に係る放射状構造物を示した側面図。
図6】(a)第二の別例に係る放射状構造物を示した側面図。(b)第三の別例に係る放射状構造物を示した側面図。
図7】本発明の第二実施形態に係る藻場を示した斜視図。
図8】同じく、側面図。
図9】(a)同じく、放射状構造物を示した斜視図。(b)同じく、側面図。
図10】同じく、放射状構造物を示した分解斜視図。
図11】(a)第一の別例に係る取付部を示した一部拡大側面図。(b)第二の別例に係る取付部を示した一部拡大側面図。(c)第三の別例に係る取付部を示した一部拡大側面図。(d)好ましくない取付例を示す側面図。
図12】(a)第三実施形態に係る放射状構造物を示した斜視図及び一部拡大側面図。(b)同じく、別例に係る放射状構造物を示した斜視図及び一部拡大側面図。
図13】第三実施形態に係る放射状構造物を示した分解斜視図。
図14】(a)同じく、第一の別例に係る下側取付部を示す斜視図。(b)同じく、第二の別例に係る下側取付部を示す斜視図。(c)同じく、第三の別例に係る下側取付部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図1から図6を用いて、本発明の第一実施形態に係る藻場1の構成について説明する。なお各図面においては、便宜上、各部材の大きさが適宜誇張して記載される。
【0019】
図1及び図2に示す藻場1は、海草や海藻(以下では単に「海藻類」と称する)を育成するため、海中に人工的に設置された場所である。藻場1は、育成した海藻類により二酸化炭素の海中への固定を図ると共に、育成を阻害しない範囲で魚等の生物のエサとし、また、生息や繁殖の場となることで、海洋の生物多様性の保全を図ることができる。藻場1は、主として藻場基盤10、浮き20、固定部30、放射状構造物40及び保護部50を具備する。
【0020】
図1から図3に示す藻場基盤10は、藻場1の主たる部分である。藻場基盤10は、例えばロープ等により格子状(網状)に形成される。こうして、藻場基盤10は、軽くて可変性を有するため、運搬作業や設置作業を行い易く構成される。また藻場基盤10は、全体として略矩形状に形成され、格子状の部分が概ね上下方向を向くように(横方向に延びるように)配置される。
【0021】
藻場基盤10(特に、格子状の部分)は、海藻等を育成するため、海藻等が植えられたり生殖胞子が付着される。また藻場基盤10は、海藻等の育成を補助するため、後述する放射状構造物40が取り付けられる。また藻場基盤10は、後述する浮き20を用いて海底から離れた状態で浮遊するように設けられる。こうして、藻場基盤10は、海底からのウニ等の食害を抑制できる。また海底よりも高い位置に設けるため、藻場基盤10の日当たりを向上させることができる。
【0022】
また藻場基盤10の編目の大きさは、一目が5~20mm程度に形成される。このような編目の大きさによれば、藻場基盤10に砂等の堆積物が溜まるのを抑制でき、また海藻等を付着し易くできる。
【0023】
図1から図3に示す浮き20は、浮力を有するものである。浮き20は、複数(本実施形態では、4つ)設けられ、それぞれ藻場基盤10の四隅と、ロープを用いて接続される。これにより、浮き20は、藻場基盤10を、海底から浮かした状態で浮遊させることができる。
【0024】
図1から図3に示す固定部30は、藻場基盤10を海底に固定するものである。本実施形態においては、固定部30として、アンカーが用いられる。なお固定部30としては、アンカーに限定されず、重り等の任意の部材を用いることができる。固定部30は、複数(本実施形態では、4つ)設けられ、それぞれ保護部50を介して藻場基盤10の四隅とロープを用いて接続される。こうして、藻場基盤10は、流されることなく、決められた場所で浮遊できる。
【0025】
図1図2及び図4に示す放射状構造物40は、海藻類の育成を補助するものである。放射状構造物40は、複数設けられ、それぞれ上方へ立ち上がるように藻場基盤10に取り付けられる。放射状構造物40は、主として取付部41、中心棒状部42及び四方突起部43を具備する。
【0026】
取付部41は、放射状構造物40を藻場基盤10に取り付けるためのものである。取付部41は、放射状構造物40の下端部に形成される。取付部41は、フック状に形成される。図4(b)に示すように、取付部41は、その内側に藻場基盤10(より詳細には、格子状の部分を構成する部材、例えばロープ)を引っ掛けることにより、放射状構造物40を藻場基盤10に取り付けることができる。
【0027】
中心棒状部42は、取付部41から上方へ延びるように形成された部分である。中心棒状部42は、浮力を有する材料により形成され、自立するように構成される。中心棒状部42は、藻場基盤10よりも上方において、食害を抑制したい魚等の生物(以下では単に「魚」と称する)の、海藻類の根部や生長点への上方からの動作を規制することができる。
【0028】
中心棒状部42の高さは、育成を補助する(育成対象の)海藻類の種類に応じて設定される。一般的に海藻類は、根部や生長点を保護できれば、それ以外の部分を食べられたとしても枯死する可能性が低い。そこで、中心棒状部42の高さは、育成対象の海藻類の種類に応じて根部や生長点を保護可能な高さに設定される。例えば、育成対象が、1年で成熟・流失してしまう1年生のアカモクであれば10cm程度、また2年目以降も成長を続ける大型のアラメであれば40cm程度の高さに設定される。
【0029】
四方突起部43は、中心棒状部42から側方へ突出するように形成された部分である。本実施形態においては、四方突起部43は、中心棒状部42において3つの高さ位置(突出位置)から、それぞれ4本の突起44が側方へ突出すると共に、周方向に均等間隔をあけて(すなわち、互いに隣り合う突起44の角度が90度となるように)設けられる。四方突起部43は、藻場基盤10よりも上方において、海藻類の根部や生長点への、魚の側方からの動作を規制することができる。
【0030】
突起44の長さは、食害を抑制した魚の種類に応じて設定される。例えば突起44の長さは、食害を抑制したい魚の体長以上となるように設定される。また3つの突出位置の間隔(中心棒状部42の長手方向に対する間隔)は、食害を抑制したい魚の体高以下となるように設定される。
【0031】
上述の如く構成された放射状構造物40は、図1及び図2に示すように、藻場基盤10から上方へ延びるように、かつ、藻場基盤10で育成される海藻類の近傍となる位置に複数取り付けられる。これによれば、側方から近付く魚に対して放射状構造物40の四方突起部43が邪魔することとなるため、海藻等に魚が接触できなくなる。これにより、側方からの魚の食害(海藻類の根部や生長点が食べられること)を抑制できる。
【0032】
なお、海藻類が放射状構造物40よりも高く(大きく)成長した場合、放射状構造物40は、高く成長した部分へと近付く魚に対して邪魔をするものではないため、当該部分を魚のエサとすることができる。また、海藻類が放射状構造物40よりも側方に大きく成長した場合、放射状構造物40は、大きく成長した部分へと近付く魚に対して邪魔をするものではないため、当該部分を魚のエサとすることができる。このように、放射状構造物40を用いることにより、魚が海藻等をある程度(適度に)食べることや、住処とすることを許容できる。すなわち、放射状構造物40を用いることにより、食害による海藻類の枯死を抑制しつつ、育成する海藻類により生態系の保全・再生を図ることができる。
【0033】
図1から図3に示す保護部50は、藻場基盤10の裏面からの食害を抑制するものである。具体的には、保護部50は、藻場基盤10よりも下方において、海藻類の根部や生長点への下方からの魚の動作を規制するものである。保護部50は、配置される場所を除いて藻場基盤10と同様に構成される。すなわち、保護部50は、例えばロープにより格子状(網状)に形成される。保護部50は、下方保護部51及び側方保護部52を具備する。
【0034】
下方保護部51は、藻場基盤10の下方を覆うように配置される。下方保護部51は、藻場基盤10と同様に、格子状の部分が概ね上下方向を向くように配置される。下方保護部51は、藻場基盤10から下方に、例えば最低5cm以上離れた状態で配置される。また下方保護部51は、海底からも上方に離れた状態で設けられる。
【0035】
側方保護部52は、藻場基盤10と下方保護部51との間を外側から覆うように配置される。側方保護部52は、格子状の部分が概ね横方向を向くように配置される。側方保護部52は、藻場基盤10と下方保護部51との間を、四方に亘って互いの隙間が無いように配置される。
【0036】
こうして、上述の如く構成された保護部50によれば、藻場基盤10の下方から近付く魚に対して邪魔をすることとなるため、海藻等に魚が接触できなくなる。これにより、下方からの魚の食害(海藻類の根部や生長点が食べられること)を抑制できる。
【0037】
具体的には、藻場基盤10の下方の空間は、前記藻場基盤10、下方保護部51及び側方保護部52により上下方向及び横方向が全て覆われた空間(袋状の構造)となるため(魚が入り込む隙間が無いため)、下方からの魚の食害を効果的に抑制できる。また本実施形態においては、保護部50は、格子状の部材であるため、日光を遮ることなく、海底まで届かせることができる。
【0038】
このように、第一実施形態に係る藻場1においては、育成する海藻類の根部や生長点への上方、側方及び下方からの魚の接触を抑制すると共に、放射状構造物40よりも高く又は大きく成長した部分への魚の接触を許容する。これによれば、育成した海藻類により二酸化炭素の海中への固定を図ると共に、育成を阻害しない範囲で魚のエサや生息等の場とすることができ、海洋の生物多様性の保全を図ることができる。
【0039】
なお第一実施形態に係る藻場1の構成は、上述の如き構成に限定されない。例えば放射状構造物40は、図1及び図2に示すように、1本ずつ単独で藻場基盤10に取り付けられるのではなく、複数を連結した状態で取り付けてもよい。具体的には、図5(a)に示す一例においては、6本の放射状構造物40が、略四角枠状に形成された連結部46により互いの上端部が連結される。これによれば、連結した6本の放射状構造物40の自立性を高めることができる。また例えば、連結部46を中空の部材等により浮力を有するように構成すれば、連結した6本の放射状構造物40の自立性をより高めることができる。
【0040】
また放射状構造物40の構成は、上述の如き構成に限定されない。例えば、図5(b)に示す第一の別例に係る放射状構造物40のように、中心棒状部42に浮力を有する別部材(例えば、浮き47)を取り付けてもよい。これによれば、放射状構造物40の自立性を高めることができる。
【0041】
また例えば、図6(a)に示す第二の別例に係る放射状構造物40のように、取付部41はフック状ではなく、円環状に形成されてもよい。このような場合、藻場基盤10の取り付けは、取付部41の内側に藻場基盤10を入れるのではなく、取付部41(円環状の部分)と藻場基盤10とを例えば結束バンドBにより緊結する。これによれば、放射状構造物40と藻場基盤10とを強固に取り付けることができる。
【0042】
また図6(b)に示す第三の別例に係る放射状構造物40のように、取付部41はフック状の部分が上下2段に形成されてもよい。上下2段のフック状の部分は、棒状の部材により互いに連結される。こうして、藻場基盤10の取り付けにおいては、上段のフック状の部分を藻場基盤10に引っ掛け、下段のフック状の部分を下方保護部51に引っ掛けることにより、放射状構造物40の姿勢を安定させることができる。また上下2段のフック状の部分は棒状の部材により連結されるため、互いに離間した距離を維持できる。すなわち、藻場基盤10と下方保護部51とが撓んで互いに近付くことを抑制し、ひいては藻場基盤10に対して魚が近付くことを抑制できる。
【0043】
また放射状構造物40の四方突起部43では、3つの突出位置において、互いに隣り合う突起44の角度が90度となるように4本の突起44が設けられたが、これに限定されない。すなわち、突出位置は、3つに限定されず、3つよりも少なくてもよく、また多くてもよい。また突出位置において、複数の突起44は、周方向に互いに不等間隔に配置してもよい。また、1つの突出位置に設けられる突起44の本数は、4本に限定されず任意の本数とすることができるが、最大で8本であることが望ましい。
【0044】
また突出位置において互いに隣り合う突起44の角度は、90度ではなく、例えば45度まで狭めることができる。また突出位置において突起44は、横方向(中心棒状部42の長手方向に対して直交する方向)に突出するのではなく、例えば前記長手方向に対して45度から135度までの間で角度をつけることができる。このように、突起44は、中心棒状部42に対して、側方向視にて斜め上方や、斜め下方へ向けて突出してもよい。
【0045】
また保護部50は、格子状に形成されなくてもよい。また、保護部50は、藻場基盤10とは異なる素材を用いることができる。また保護部50は、下方保護部51だけを設けて、側方保護部52を設けない構成とすることもできる。これによれば、簡易な構成により魚の食害を抑制することができる。
【0046】
以下では、図7から図11を用いて、第二実施形態に係る藻場1の構成について説明する。
【0047】
第二実施形態に係る藻場1の構成は、図7及び図8に示すように、第一実施形態に係る藻場1に対して保護部50を有しない点で大きく異なる。ここで、単に保護部50を有しないこととすると、下方からの魚の食害が発生するおそれがある。そこで第二実施形態に係る藻場1においては、放射状構造物40(より詳細には、取付部41)の構成を工夫することにより、下方からの魚の食害を抑制している。以下では、第二実施形態に係る藻場1の構成に関して、放射状構造物40(特に、取付部41)の構成について詳細に説明し、他の構成についての説明は適宜省略する。
【0048】
図9及び図10に示す、第二実施形態に係る放射状構造物40は、取付部41、中心棒状部42及び四方突起部43を具備する。また、取付部41は、上側取付部141及び下側取付部241を具備する。
【0049】
上側取付部141は、取付部41のうち上側に位置する部分である。上側取付部141は、中心棒状部42の下端部と一体的に形成(連結)される。具体的には、上側取付部141は、4本のL字状部材141aを有する。4本のL字状部材141aは、中心棒状部42の下端部から、側方(四方)に突出するように設けられる。L字状部材141aは、側方へ延びると共に、その先端部が下方へ屈曲するように形成される。
【0050】
下側取付部241は、取付部41のうち下側に位置する部材である。下側取付部241は、下端部に設けられる円環状部分241aと、前記円環状の部分から上方へ立ち上がる4本の筒状部分241bとを有する。
【0051】
こうして、取付部41においては、図10等に示すように、別体として形成された上側取付部141と下側取付部241とが互いに接続される。具体的には、上側取付部141の4本のL字状部材141aが、4本の筒状部分241bに差し込まれることにより、互いに接続され、取付部41が形成される。
【0052】
これによれば、図9(b)に示すように、藻場基盤10を上側取付部141と下側取付部241との間に通過させた状態で、上側取付部141と下側取付部241とを互いに接続し、放射状構造物40を藻場基盤10に取り付けることができる。このように、取付部41を2つの部材により構成することにより、放射状構造物40を藻場基盤10に容易に取り付けることができる。
【0053】
こうして放射状構造物40が藻場基盤10に取り付けられた場合、図8及び図9(b)に示すように、藻場基盤10を上側取付部141側(取付部41に内部における上側)に位置させることにより、下側取付部241が、藻場基盤10よりも下方に離間した状態となる。これによれば、藻場基盤10の下方から近付く魚に対して下側取付部241が邪魔をすることとなるため、海藻等に魚が接触できなくなる。すなわち、簡易な構成により下方からの魚の食害を抑制できる。
【0054】
なお第二実施形態に係る放射状構造物40の構成は、上述の如き構成に限定されない。ここで、放射状構造物40が藻場基盤10に取り付けられた場合において、図11(d)に示すように、下側取付部241が藻場基盤10と当接した状態で位置した場合、藻場基盤10の下方から近付く魚に対して下側取付部241が邪魔をすることができないため、好ましく無い。
【0055】
そこで、例えば図11(a)に示す第一の別例に係る取付部41のように、上側取付部141に重り141bを設けてもよい。これによれば、重り141bにより、放射状構造物40自体が姿勢を維持したまま沈み込むため、下側取付部241が、藻場基盤10と当接した状態となるのを抑制できる。すなわち、藻場基盤10を上側取付部141側に位置させ、下方からの魚の食害を抑制できる。また取付部41が藻場基盤10の上に乗る形になるため、放射状構造物40の取り付け状態を安定化できる。
【0056】
また図11(b)に示す第二の別例に係る取付部41においては、上側取付部141と藻場基盤10とを、例えば結束バンドBにより緊結する。これによれば、藻場基盤10を上側取付部141側に位置させ、下方からの魚の食害を抑制できる。
【0057】
また取付部41の形状は上述の如き構成に限定されず、任意の形状を採用することができる。例えば図11(c)に示す第三の別例に係る取付部41においては、下側取付部241の底面の大きさが、上側取付部141よりも大きく形成される。すなわち、取付部41は、側面視において台形状に形成される。これによれば、魚の邪魔を効果的に行うことができ、下方からの魚の食害を効果的に抑制できる。また下側取付部241の筒状部分241bが上側取付部141のL字状部材141aから抜け難くなるため、下側取付部241が上側取付部141から外れるのを抑制できる。
【0058】
以下では、図12から図14を用いて、第三実施形態に係る藻場1の構成について説明する。
【0059】
第三実施形態に係る藻場1の構成は、第二実施形態に係る藻場1に対して、放射状構造物40(特に、保護部50)の構成が大きく異なる。以下では、第三実施形態に係る藻場1の構成に関して、放射状構造物40(特に、取付部41)の構成について詳細に説明し、他の構成についての説明は適宜省略する。
【0060】
図12(a)及び図13に示す、第三実施形態に係る放射状構造物40は、取付部41、中心棒状部42及び四方突起部43を具備する。また、取付部41は、上側取付部141及び下側取付部241を具備する。
【0061】
上側取付部141は、取付部41の上側に位置する部分である。第二実施形態とは異なり、上側取付部141は、中心棒状部42とは別体として形成され、中心棒状部42の下端部に取り付けられる。具体的には、上側取付部141は、略円環状に形成された開口部141cから上方及び下方に筒状の部材が突出するような形状に形成される。
【0062】
下側取付部241は、取付部41の下側に位置する部材である。下側取付部241は、下端部に設けられ、内側にてクロスした棒状部材を有する円環状部分241aと、円環状部分241aの中央部から上方へ突出する中央突出部241cと、を有する。円環状部分241aの外径は、上側取付部141の外径よりも大きく(側方に拡がるように)形成される。
【0063】
こうして、取付部41においては、図13等に示すように、別体として形成された上側取付部141と下側取付部241とが互いに接続される。具体的には、上側取付部141の下側の筒状の部材に、下側取付部241の中央突出部241cが差し込まれる。これにより、上側取付部141と下側取付部241とが互い固定される。また上側取付部141の上側の筒状の部材に、中心棒状部42の下端部が差し込まれる。これにより、取付部41と中心棒状部42とが互いに固定される。このように中心棒状部42と上側取付部141と下側取付部241とが連結されることにより、放射状構造物40が構成される。
【0064】
こうして、第三実施形態に係る放射状構造物40においては、図12に示すように、上側取付部141の開口部141cと藻場基盤10とを、例えば結束バンドBにより緊結する。これによれば、藻場基盤10を上側取付部141側に位置させ、下方からの魚の食害を抑制できる。
【0065】
また取付部41の形状は上述の如き構成に限定されず、任意の形状を採用することができる。例えば図12(b)に示す別例に係る取付部41においては、上側取付部141の開口部141cは、中心棒状部42の軸心から側方にズラした位置に形成される。このような構成においても、上側取付部141の開口部141cと藻場基盤10とを、例えば結束バンドBにより緊結できるため、下方からの魚の食害を抑制できる。なお、図12(a)及び(b)に示す例の両方において、上側取付部141の開口部141cの一部を切り欠いて、当該開口部141cをフック状に形成することができる。これによれば、結束バンドを用いずとも、開口部141cの内側に藻場基盤10を引っ掛けることにより、放射状構造物40を藻場基盤10に取り付けることができる。
【0066】
また取付部41の下側取付部241の形状は、任意の形状を採用することができる。例えば下側取付部241は、図14(a)に示すように、四角形状の外形を有することができる。また例えば下側取付部241は、図14(b)に示すように、鉤十字形状の外形を有することができる。また例えば下側取付部241は、図14(c)に示すように、四方へ突出する突起の数量を増加させることもできる。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る藻場形成構造においては、
格子状に形成され、海草・海藻を育成する藻場基盤10と、
前記藻場基盤10を海底から浮かした状態で浮遊させる浮き20(浮遊部)と、
前記藻場基盤10に立ち上がるように設けられ、海草・海藻の育成を補助すると共に、前記藻場基盤10の上方において食害生物(例えば魚)の動作を規制する上側規制部(第一実施形態に係る放射状構造物40、第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の中心棒状部42及び四方突起部43)と、
前記藻場基盤10の下方に離れた状態で設けられ、前記藻場基盤10の下方において食害生物の動作を規制する下側規制部(第一実施形態に係る保護部50、第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の取付部41)と、
を具備するものである。
【0068】
このような構成により、上側規制部により海草・海藻の育成を補助すると共に藻場基盤10の上方において食害生物の動作を規制し、さらに下側規制部により藻場基盤10の下方において食害生物の動作を規制するため、食害による海藻類の枯死を抑制しつつ、生態系の保全・再生を図ることができる。
特に、本実施形態において、上側規制部(第一実施形態に係る放射状構造物40、第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の中心棒状部42及び四方突起部43)は、食害生物の動作を規制するものの、海藻等に近付くことを完全に禁止するものではない。具体的には、上側規制部は、育成する海藻類の根部や生長点への上方、側方及び下方からの魚の接触を抑制すると共に、当該上側規制部よりも高く又は大きく成長した部分への魚の接触を許容する。こうして、上側規制部は、海藻類の根部や生長点を保護しつつ、食害生物であっても、海藻等をある程度(適度に)食べることや、住処とすることを許容できる。これにより、本実施形態に係る藻場形成構造においては、食害による海藻類の枯死を抑制しつつ、生態系の保全・再生を効果的に図ることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る藻場形成構造において、
前記下側規制部(第一実施形態に係る保護部50)は、
格子状に形成されると共に、前記藻場基盤10の下方を覆うように形成される下側第一規制部(下方保護部51)を有するものである。
【0070】
このような構成により、藻場基盤10の下方からの食害を効果的に抑制できる。
【0071】
また、本実施形態に係る藻場形成構造において、
前記下側規制部は、
格子状に形成されると共に、前記藻場基盤と前記下側第一規制部との間を外側から覆うように形成される下側第二規制部(側方保護部52)を有するものである。
【0072】
このような構成により、藻場基盤10の下方からの食害を、より効果的に抑制できる。
【0073】
また、本実施形態に係る藻場形成構造において、
前記上側規制部(第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の中心棒状部42及び四方突起部43)及び前記下側規制部(第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の取付部41)は、互いに連結されるものである。
【0074】
このような構成により、部材点数を削減でき、構成の簡素化を図ることができる。
【0075】
また、本実施形態に係る藻場形成構造において、
前記上側規制部(第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の中心棒状部42及び四方突起部43)は、
前記下側規制部(第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の取付部41)を介して前記藻場基盤10に取り付けられるものである。
【0076】
このような構成により、上側規制部(第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の中心棒状部42及び四方突起部43)単独で取り付ける必要がないため、作業の簡素化を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態に係る藻場形成構造において、
前記下側規制部(第二実施形態に係る放射状構造物40の取付部41)は、
前記下側規制部のうち上側に位置する下側第一規制部(第二実施形態に係る取付部41の上側取付部141)と、
前記下側規制部のうち下側に位置すると共に、前記下側第一規制部と連結される下側第二規制部(第二実施形態に係る取付部41の下側取付部241)と、を有し、
互いに連結された前記下側第一規制部と前記下側第二規制部との間に、前記藻場基盤10の少なくとも一部が通過するように形成される(図9等参照)ものである。
【0078】
このような構成により、簡易な構成により、放射状構造物40を藻場基盤10に取り付けることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る藻場形成構造において、
前記下側規制部(第三実施形態に係る放射状構造物40の取付部41)は、
前記下側規制部のうち上側に位置すると共に、前記上側規制部と連結される下側第一規制部(第三実施形態に係る取付部41の上側取付部141)と、
前記下側規制部のうち下側に位置し、前記下側第一規制部と連結されると共に前記下側第一規制部よりも側方に拡がるように形成された下側第二規制部(第三実施形態に係る取付部41の下側取付部241)と、を有し、
前記下側第一規制部(第三実施形態に係る取付部41の上側取付部141)に、前記藻場基盤10の少なくとも一部が取り付けられる(図12等参照)ものである。
【0080】
このような構成により、簡易な構成により、放射状構造物40を藻場基盤10に取り付けることができ、また藻場基盤10の下方からの食害を効果的に抑制できる。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0082】
例えば上述の如き各実施形態に係る構成は、互いに組み合わせて使用することができる。
【0083】
また例えば第二及び第三実施形態に係る放射状構造物40の取付部41においては、上側取付部141と下側取付部241とが互いに接続されなくてもよい。すなわち、上側取付部141及び下側取付部241は、それぞれが藻場基盤10に取り付けられてもよい。
【0084】
また本実施形態において、フック状として取付部は、例えばカラビナのように、外れ止め金具(ラッチ)を有するものであってもよい。これによれば、放射状構造物40が藻場基盤10から脱落するのを効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0085】
10 藻場基盤
20 浮き
40 放射状構造物
50 保護部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14