(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081081
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】環境価値活用システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240610BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194539
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】中口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】園田 峯三
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】環境価値を有効に活用できる環境価値活用システムを提供する。
【解決手段】再生可能エネルギーにより発電する太陽光発電設備11を有する賃貸住宅10hに設けられ、太陽光発電設備11の発電電力に関する情報を取得する電力情報取得部12と、賃貸住宅10hを管理する賃貸管理事業者30に設けられ、電力情報取得部12の取得結果に基づいて第1の環境価値を取得する賃貸管理事業者サーバ31と、賃貸管理事業者30とは異なる対価付与事業者40に設けられ、第1の環境価値を譲り受ける対価付与事業者サーバ41と、対価付与事業者サーバ41が譲り受けた前記第1の環境価値に対応する対価、又は、前記対価に関する情報を賃貸住宅10hに付与する対価付与事業者サーバ41・委託事業者サーバ51と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーにより発電する発電設備を有する被管理物件に設けられ、前記発電設備の発電電力に関する情報を取得する情報取得部と、
前記被管理物件を管理する第1の事業者に設けられ、前記情報取得部の取得結果に基づいて第1の環境価値を取得する環境価値取得部と、
第2の事業者に設けられ、前記第1の環境価値を譲り受ける譲受部と、
前記譲受部が譲り受けた前記第1の環境価値に対応する対価、又は、前記対価に関する情報を前記被管理物件に付与する付与部と、
を具備する、
環境価値活用システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、
前記発電設備の発電電力のうち第3の事業者へ売却された売却電力に関する情報を取得可能であり、
前記環境価値取得部は、
前記情報取得部の取得結果に基づいて前記第3の事業者の第2の環境価値の取得に関する情報を取得可能であり、
前記譲受部は、
前記第1の事業者からの指示に基づく前記第3の事業者から前記第2の事業者への電力の供給に応じて前記第2の環境価値を譲り受け、
前記付与部は、
前記譲受部が譲り受けた前記第2の環境価値に対応する対価、又は、前記対価に関する情報を前記被管理物件に付与する、
請求項1に記載の環境価値活用システム。
【請求項3】
前記対価は、前記環境価値と同等又はそれ以上の金銭的価値を有する、
請求項1又は請求項2に記載の環境価値活用システム。
【請求項4】
前記第1の環境価値は、Jクレジットを含む、
請求項1に記載の環境価値活用システム。
【請求項5】
前記第2の環境価値は、非化石証書を含む、
請求項2に記載の環境価値活用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境価値を活用するための環境価値活用システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量の削減に向けた取り組みが行われている。例えば日本国では、再生可能エネルギーを用いた発電設備の発電電力が環境価値を有するものとし、これをクレジットとして国が認証する制度がある。認証されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセット等、様々な用途に活用できる。このように、再生可能エネルギーに対する環境価値を有効に活用することが望まれる。
【0003】
例えば特許文献1に記載のシステムにおいては、再生可能エネルギーを含む電力を取引する第1電力取引を実行する実行部と、第1電力取引で売れ残った供給者の再生可能エネルギーの発電量に応じた環境価値を決定する決定部と、供給者と環境価値とを関連づけて格納部に登録する登録部と、を備える。これによれば、再生可能エネルギーを含む電力の取引で再生可能エネルギーが売れ残った場合に、売れ残った再生可能エネルギーに対する環境価値を有効に活用することができる。
【0004】
ここで、環境価値は、例えば再生可能エネルギーを用いた発電設備が設けられた住宅がある場合、当該住宅においても発生する。しかしながら、発生した環境価値をクレジットとするには、手続が煩雑である一方で、得られる対価が少ないため、住宅のような各家庭では、発生した環境価値がそのまま捨てられることが多い。そこで、このような住宅で発生した環境価値を有効に活用することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、環境価値を有効に活用できる環境価値活用システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、再生可能エネルギーにより発電する発電設備を有する被管理物件に設けられ、前記発電設備の発電電力に関する情報を取得する情報取得部と、前記被管理物件を管理する第1の事業者に設けられ、前記情報取得部の取得結果に基づいて第1の環境価値を取得する環境価値取得部と、第2の事業者に設けられ、前記第1の環境価値を譲り受ける譲受部と、前記譲受部が譲り受けた前記第1の環境価値に対応する対価、又は、前記対価に関する情報を前記被管理物件に付与する付与部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記情報取得部は、前記発電設備の発電電力のうち第3の事業者へ売却された売却電力に関する情報を取得可能であり、前記環境価値取得部は、前記情報取得部の取得結果に基づいて前記第3の事業者の第2の環境価値の取得に関する情報を取得可能であり、前記譲受部は、前記第1の事業者からの指示に基づく前記第3の事業者から前記第2の事業者への電力の供給に応じて前記第2の環境価値を譲り受け、前記付与部は、前記譲受部が譲り受けた前記第2の環境価値に対応する対価、又は、前記対価に関する情報を前記被管理物件に付与するものである。
【0010】
請求項3においては、前記対価は、前記環境価値と同等又はそれ以上の金銭的価値を有するものである。
【0011】
請求項4においては、前記第1の環境価値は、Jクレジットを含むものである。
【0012】
請求項5においては、前記第2の環境価値は、非化石証書を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本願発明においては、環境価値を有効に活用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、
図1を用いて本発明の一実施形態に係る環境価値活用システム1について説明する。
【0017】
環境価値活用システム1は、環境価値を活用するためのシステムである。ここで、化石燃料や原子力等の従来のエネルギーを用いた発電電力に対して、再生可能エネルギーを用いた発電電力は、いわゆるグリーン電力と称され、電力そのものの価値の他に、二酸化炭素を排出しないという環境価値を有する。環境価値は、例えばJクレジットや非化石証書として、購入や取引を行うことができる。
【0018】
環境価値活用システム1においては、集約サーバ71、及び、賃貸住宅群10等(具体的には、賃貸住宅群10、Jクレジット制度管理者20、賃貸管理事業者30、対価付与事業者40、委託事業者50及び小売電力事業者60)に設けられる各種機器を、発明の構成要素としている。以下では、環境価値活用システム1として、上述の如く発明の構成要素である各種機器と合わせて、賃貸住宅群10等の説明も行う。
【0019】
賃貸住宅群10は、Jクレジット制度におけるプログラム型プロジェクトの一形態を構成するものであり、本実施形態においては賃貸借契約に基づいて貸し出される賃貸住宅10hの集合体である。賃貸住宅群10は、Jクレジット制度において、複数の賃貸住宅10h全てに共通する属性を、家庭部門における太陽光発電設備の導入(再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減活動)としている。なお賃貸住宅群10は、
図1に示す構成とは異なり、複数設けられてもよい。
【0020】
賃貸住宅10hには、賃貸マンション及び賃貸アパートや、賃貸一戸建て等が含まれる。賃貸住宅10hには、賃料を支払う居住者(世帯)が居住する。各居住者が入居する賃貸住宅10hは、各居住者の需要に応じた大きさ(延床面積)を有する。賃貸住宅10hには、各種機器(発明の構成要素)として、太陽光発電設備11、電力情報取得部12及び報知装置13が設けられる。
【0021】
太陽光発電設備11は、太陽光(再生可能エネルギー)を利用して発電する。本実施形態において、太陽光発電設備11には、各賃貸住宅10h専用のものだけでなく、複数の賃貸住宅10h共用のものが含まれる。太陽光発電設備11は、複数の賃貸住宅10hに共用される場合、例えば各賃貸住宅10hの大きさに応じて発電電力の持分が設定される。
【0022】
太陽光発電設備11の発電電力は、当該太陽光発電設備11が設けられた賃貸住宅10h内で自家消費される。また太陽光発電設備11の発電電力のうち、自家消費されなかった発電電力(前記賃貸住宅10h内で余剰した発電電力)は、系統電源へ逆潮流される。逆潮流された電力は、後述する小売電力事業者60に売却される。なお以下では、上述したように、自家消費された発電電力を「自家消費電力」と称し、余剰して逆潮流された発電電力を「余剰電力」と称する場合がある。
【0023】
電力情報取得部12は、当該電力情報取得部12が設けられた賃貸住宅10hにおいて、太陽光発電設備11の発電電力に関する情報を取得する。電力情報取得部12が取得する情報には、当該賃貸住宅10hにおける自家消費電力や余剰電力が含まれる。電力情報取得部12は、例えばEMS(エネルギーマネジメントシステム)やスマートメータ等により構成される。
【0024】
報知装置13は、所定の情報を報知するための装置である。報知装置13としては、音声や文字、画像等の任意の方法を用いて報知を行うものを採用可能である。具体的には、報知装置13としては、賃貸住宅10h内に設置されたテレビやラジオ等を採用可能である。また報知装置13としては、賃貸住宅10h内に設置されたものに限定されず、例えば
図1に示すように、携帯端末等の居住者が身につけるもの(屋外に持ち出されるもの)であってもよい。
【0025】
Jクレジット制度管理者20は、申請者(本実施形態では、後述する賃貸管理事業者30)からJクレジットの認証申請を受け付ける。Jクレジット制度管理者20が受け付けた認証申請は、審査委員会にて検証され、さらに認証委員会に諮られる。そして、認証申請が承認された場合、Jクレジット制度管理者20は、申請内容に応じたクレジット(Jクレジット)を申請者に付与する。Jクレジットは、本実施形態に係る環境価値の一例である。Jクレジット制度管理者20には、各種機器(発明の構成要素)として、サーバ(Jクレジット制度管理者サーバ21)が設けられる。
【0026】
Jクレジット制度管理者サーバ21は、Jクレジット制度管理者20(さらには、前記審査委員会及び認証委員会)に関する各種の処理を実行するものである。Jクレジット制度管理者サーバ21は、所定のプロトコルに従って、他のサーバとの通信を制御できる。またJクレジット制度管理者サーバ21は、CPUにより、メモリに格納された所定のプログラムを実行できる。
【0027】
賃貸管理事業者30は、賃貸住宅群10を管理する事業者である。賃貸管理事業者30は、例えば賃貸住宅10hの大家から委託され、当該賃貸住宅10hの管理を行っている。なお賃貸管理事業者30は、当該賃貸管理事業者30自体が、賃貸住宅10hの大家の場合もある。賃貸管理事業者30は、仲介事業者とは別でもよく、仲介事業者を兼ねていてもよい。賃貸管理事業者30には、各種機器(発明の構成要素)として、サーバ(賃貸管理事業者サーバ31)が設けられる。
【0028】
賃貸管理事業者サーバ31は、賃貸管理事業者30に関する各種の処理を実行するものである。賃貸管理事業者サーバ31は、所定のプロトコルに従って、他のサーバとの通信を制御できる。また賃貸管理事業者サーバ31は、CPUにより、メモリに格納された所定のプログラムを実行できる。
【0029】
対価付与事業者40は、賃貸住宅10hに設けられた太陽光発電設備11の発電電力により発生した環境価値に対する対価(以下では「ギフト」と称する)を、当該賃貸住宅10hの居住者に付与する。対価付与事業者40は、賃貸管理事業者30の関連会社である。対価付与事業者40は、居住者が立ち寄り可能な店舗を有し、店舗にてギフトを付与できる。対価付与事業者40の店舗は、賃貸住宅群10に距離的に近い場所(例えば、同じ市町村内)に立地する。対価付与事業者40には、各種機器(発明の構成要素)として、サーバ(対価付与事業者サーバ41)が設けられる。
【0030】
対価付与事業者サーバ41は、対価付与事業者40に関する各種の処理を実行するものである。対価付与事業者サーバ41は、所定のプロトコルに従って、他のサーバとの通信を制御できる。また対価付与事業者サーバ41は、CPUにより、メモリに格納された所定のプログラムを実行できる。
【0031】
委託事業者50は、対価付与事業者40から委託され、ギフトを当該賃貸住宅10hの居住者に付与する。委託事業者50は、賃貸管理事業者30又は対価付与事業者40と、業務委託契約を結んでいる。委託事業者50は、居住者が立ち寄り可能な店舗を有し、店舗にてギフトを付与できる。委託事業者50の店舗は、賃貸住宅群10に距離的に近い場所に立地する。対価付与事業者40には、各種機器(発明の構成要素)として、サーバ(委託事業者サーバ51)が設けられる。なお、委託事業者50の店舗は、賃貸住宅群10に距離的に近い場所に立地していなくてもよい。例えば委託事業者50の店舗は、居住者の賃貸住宅10hから電車で1時間程度離れた大学や職場等の最寄店舗としてもよい。
【0032】
委託事業者サーバ51は、委託事業者50に関する各種の処理を実行するものである。委託事業者サーバ51は、所定のプロトコルに従って、他のサーバとの通信を制御できる。また委託事業者サーバ51は、CPUにより、メモリに格納された所定のプログラムを実行できる。
【0033】
小売電力事業者60は、賃貸住宅10hの太陽光発電設備11の余剰電力を購入する。こうして余剰電力が購入されると、所定の非化石認証機関により、当該購入電力(余剰電力)が化石燃料に由来しない電力であることを認証する非化石証書が発行される。非化石証書は、本実施形態に係る環境価値の一例である。非化石証書は、譲渡可能に構成される。
【0034】
本実施形態では、小売電力事業者60は、化石燃料に由来しない電力の供給に関する契約を賃貸管理事業者30や対価付与事業者40と結んでいる。こうして、小売電力事業者60から対価付与事業者40に電力が供給されると、当該電力と共に非化石証書も譲渡される。すなわち、対価付与事業者40で使用した電力は、再生可能エネルギーに由来するとして取り扱われる。小売電力事業者60には、各種機器(発明の構成要素)として、サーバ(小売電力事業者サーバ61)が設けられる。
【0035】
小売電力事業者サーバ61は、小売電力事業者60に関する各種の処理を実行するものである。小売電力事業者サーバ61は、所定のプロトコルに従って、他のサーバとの通信を制御できる。また小売電力事業者サーバ61は、CPUにより、メモリに格納された所定のプログラムを実行できる。
【0036】
集約サーバ71は、所定のプロトコルに従って、他のサーバとの通信を制御できる。また集約サーバ71は、CPUにより、メモリに格納された所定のプログラムを実行できる。集約サーバ71は、電力情報取得部12から取得した情報(データ)を集約し、賃貸管理事業者30の賃貸管理事業者サーバ31に送信できる。
【0037】
上述の如く構成された環境価値活用システム1においては、住宅で発生した環境価値を活用するため、当該環境価値(本実施形態では、Jクレジット及び非化石証書)を移転させていく。本実施形態においては、Jクレジット及び非化石証書は、最終的に対価付与事業者40へと移転される。以下では、環境価値の移転の様子について説明する。
【0038】
まず賃貸住宅10hにおいて太陽光発電設備11で発電が行われると、上述の如く、太陽光発電設備11の発電電力は、当該太陽光発電設備11が設けられた賃貸住宅10h内で自家消費されるか、又は、系統電源へ逆潮流される。賃貸住宅10hの電力情報取得部12は、これらの自家消費電力及び余剰電力に関する情報を取得し、集約サーバ71に送信する。こうして、集約サーバ71においては、賃貸住宅群10(複数の賃貸住宅10h)における、自家消費電力及び余剰電力に関する情報が集約される。
【0039】
こうして得られた情報は、定期的に自動で、又は、賃貸管理事業者30からの要求に応じて、賃貸管理事業者30の賃貸管理事業者サーバ31へ送信される。賃貸管理事業者サーバ31は、受信した自家消費電力に関する情報に基づいて、Jクレジット制度に規定された所定の体裁を満たすように、Jクレジットの認証申請書を作成する。賃貸管理事業者サーバ31は、作成したJクレジットの認証申請書を用いて、Jクレジット制度管理者サーバ21を介してJクレジット制度管理者20に認証申請を行う。
【0040】
Jクレジット制度管理者20が受け付けた認証申請は、上述の如く、審査委員会にて検証され、さらに認証委員会に諮られる。そして、認証申請が承認された場合、Jクレジット制度管理者サーバ21から、賃貸管理事業者サーバ31のJクレジット登録簿の口座へとクレジット(Jクレジット)が送信される。こうして、賃貸管理事業者30は、賃貸住宅群10において発生した環境価値を、Jクレジットとして取得できる。
【0041】
そして、賃貸管理事業者30が取得したJクレジットは、対価付与事業者40に無償で譲渡される。具体的には、賃貸管理事業者サーバ31のJクレジット登録簿の口座から、対価付与事業者サーバ41のJクレジット登録簿の口座へと、Jクレジットの移転が行われる。こうして、対価付与事業者40は、Jクレジットを取得できる。
【0042】
また上述の如く、集約サーバ71において集約された、賃貸住宅群10(複数の賃貸住宅10h)における余剰電力に関する情報は、賃貸管理事業者30の賃貸管理事業者サーバ31へ送信される。賃貸管理事業者サーバ31は、受信した余剰電力に関する情報に基づいて、小売電力事業者60が取得した非化石証書に関する情報を取得できる。こうして、賃貸管理事業者30は、小売電力事業者60が非化石証書を取得したことを把握すると、賃貸管理事業者サーバ31及び小売電力事業者サーバ61を介して、当該小売電力事業者60に対して対価付与事業者40への電力の供給の指示を行う。
【0043】
こうして、小売電力事業者60から対価付与事業者40に電力が供給されると、当該電力と共に、小売電力事業者サーバ61及び対価付与事業者サーバ41を介して非化石証書も移転される。これにより、対価付与事業者40は、非化石証書を取得できる。
【0044】
このように、対価付与事業者40は、Jクレジット及び非化石証書を取得することによって、再生可能エネルギーや環境への取り組みについて、対外的に積極的にアピールすることができる。ここで、対価付与事業者40が取得したJクレジット及び非化石証書は、上述の如く賃貸住宅10hで発生した環境価値に基づくものである。また対価付与事業者40は、Jクレジット及び非化石証書を無償で取得する。そこで、対価付与事業者40は、無償でJクレジット及び非化石証書を取得したお礼として、賃貸住宅10hの居住者に対してギフトを付与する。
【0045】
以下では、対価付与事業者40から賃貸住宅10hの居住者に対して付与されるギフトについて説明する。
【0046】
本実施形態において、ギフトとしては、例えば店舗で使用可能なクーポン券が採用される。対価付与事業者40から賃貸住宅10hの居住者へクーポン券を付与する場合、対価付与事業者40は、対価付与事業者サーバ41から居住者の報知装置13を用いて、ギフトを付与する旨の報知を行う(すなわち、ギフトに関する情報を付与する)。報知装置13からの報知が行われると、居住者は、対価付与事業者40の店舗を訪問してクーポン券を受け取ることができる。
【0047】
クーポン券は、当該居住者の賃貸住宅10hで発生した環境価値よりも、比較的高価な金銭的価値を有するように設定される。ここで一般的には、例えば工場やオフィス等の規模の大きな発電設備ではなく、賃貸住宅10hの太陽光発電設備11のように、規模の小さい発電設備の発電により発生する環境価値は、金銭的価値が非常に小さい。そこで上述の如くクーポン券(ギフト)が、比較的高価な金銭的価値を有するように設定することにより、ギフトが付与された居住者の満足度を高めることができる。またクーポン券の金銭的価値は、例えば当該居住者の賃貸住宅10hで発生した環境価値の大小に応じて変更することができる。
【0048】
また対価付与事業者40は、対価付与事業者サーバ41から居住者の報知装置13を用いて、ギフトを付与する旨の報知を行うのではなく、ギフト自体を送付する(すなわち、ギフトを付与する)こともできる。こうして、居住者は、店頭で報知装置13のディスプレイにクーポン券を表示させることにより、当該電子クーポン券を使用できる。
【0049】
また、対価付与事業者40は、委託した委託事業者50により、賃貸住宅10hの居住者へクーポン券を付与することもできる。この場合、委託事業者50の委託事業者サーバ51又は対価付与事業者サーバ41から居住者の報知装置13を用いて、ギフトを付与する旨の報知を行う。
【0050】
なおギフトとしては、クーポン券に限定せず、種々のものを採用可能である。例えばギフトとしては、対価付与事業者40の販促としての商品やサービスを採用可能である。またギフトとしては、発生した環境価値よりも比較的高価なものに限定されず、発生した環境価値と等価なものでもよい。またギフトとしては、金銭的価値がそれほど無くても、特定の(金銭以外の)価値を有するものであってもよい。
【0051】
また本実施形態においては、自家消費電力に関する情報に基づいて、賃貸住宅群10(賃貸住宅10h)において発生した環境価値を、Jクレジットとして取得したが、これに限定するものではない。例えば、太陽光発電設備11を管理する賃貸管理事業者30を発電事業者として、太陽光発電設備11の発電量全体を小売電力事業者60に売却できる。発電量全体の売却に関する情報は、例えば電力情報取得部12により取得される。こうして賃貸管理事業者30が発電事業者となる場合には、当該賃貸管理事業者30は、自家消費電力に関する情報ではなく、発電量全体の売却に関する情報に基づいて発生した環境価値を、Jクレジットとして取得できる。
【0052】
具体的には、太陽光発電設備11の発電量全体を小売電力事業者60に売却する場合、当該太陽光発電設備11が設けられた賃貸住宅10hで発生した環境価値は、本実施形態に係る自家消費電力の場合と同様に、集約サーバ71等のサーバを介して賃貸管理事業者30が取得できる。そして、賃貸管理事業者30は、取得した環境価値に基づいて賃貸管理事業者サーバ31からJクレジットの認証申請を行うことにより、当該環境価値をJクレジットとして取得できる。
【0053】
このように、賃貸管理事業者30が発電事業者として、太陽光発電設備11の発電量全体を小売電力事業者60に売却する場合には、発電電力と環境価値との行き先が互いに異なる場合がある。すなわち、上述の如き場合には、発電電力の売却に基づいて発生した環境価値が、当該発電電力のやり取りとは関係がなく、移転される場合がある。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る環境価値活用システム1においては、
再生可能エネルギーにより発電する太陽光発電設備11を有する賃貸住宅10h(被管理物件)に設けられ、前記太陽光発電設備11の発電電力に関する情報(発電電力の自家消費に関する情報や、発電量全体の売却に関する情報)を取得する電力情報取得部12(情報取得部)と、
前記賃貸住宅10h(被管理物件)を管理する賃貸管理事業者30(第1の事業者)に設けられ、前記電力情報取得部12(情報取得部)の取得結果に基づいてJクレジット(第1の環境価値)を取得する賃貸管理事業者サーバ31(環境価値取得部)と、
対価付与事業者40(第2の事業者)に設けられ、前記第1の環境価値を譲り受ける対価付与事業者サーバ41(譲受部)と、
前記対価付与事業者サーバ41(譲受部)が譲り受けた前記第1の環境価値に対応する対価、又は、前記対価に関する情報を前記賃貸住宅10h(被管理物件)に付与する対価付与事業者サーバ41・委託事業者サーバ51(付与部)と、
を具備するものである。
【0055】
このような構成により、環境価値を有効に活用できる。
【0056】
すなわち、発生した環境価値をJクレジットや非化石証書とするには、手続が煩雑である一方で、得られる対価が少ないため、一般的に住宅のような各家庭では、発生した環境価値がそのまま(居住者に享受されることなく)捨てられることが多い。
【0057】
これに対して、本実施形態に係る環境価値活用システム1においては、賃貸住宅10hで発生した環境価値に対して、居住者は何ら煩雑な手続を行うことなく、ギフトを得ることができる。こうして、居住者は、温室効果ガスの排出量の削減に向けた取り組みに参加していることを実感できると共に、ギフトによりお得感も得ることできる。すなわち、賃貸住宅10hは、住居として居住者が選択するメリットを有することとなる。
【0058】
また上述の如く賃貸住宅10hは、居住者が選択するメリットを有するため、当該居住者が他の賃貸住宅ではなく、当該賃貸住宅10hを選択する動機付けを有する。これによれば、賃貸管理事業者30からすると、賃貸住宅10hに付加価値を設けることができるため、当該賃貸住宅10hの稼働率の向上を図ることができる。また対価付与事業者40からすると、例えば対価付与事業者40の販促としての商品やサービスをギフトとして付与することにより、対価付与事業者40の宣伝を行うこともできる。
【0059】
このように、本実施形態に係る環境価値活用システム1においては、賃貸住宅10hで発生した環境価値を用いて、賃貸住宅10hの居住者、賃貸管理事業者30及び対価付与事業者40という三者にそれぞれメリットを与えることができるため、環境価値を有効に活用できる。
【0060】
また環境価値活用システム1においては、
前記電力情報取得部12(情報取得部)は、
前記太陽光発電設備11の発電電力のうち小売電力事業者60(第3の事業者)へ売却された売却電力に関する情報を取得可能であり、
前記賃貸管理事業者サーバ31(環境価値取得部)は、
前記電力情報取得部12(情報取得部)の取得結果に基づいて前記小売電力事業者60(第3の事業者)の非化石証書(第2の環境価値)の取得に関する情報を取得可能であり、
前記対価付与事業者サーバ41(譲受部)は、
前記賃貸管理事業者30(第1の事業者)からの指示に基づく前記小売電力事業者60(第3の事業者)から前記対価付与事業者40(第2の事業者)への電力の供給に応じて前記第2の環境価値を譲り受け、
前記対価付与事業者サーバ41・委託事業者サーバ51(付与部)は、
前記対価付与事業者サーバ41(譲受部)が譲り受けた前記第2の環境価値に対応する対価、又は、前記対価に関する情報を前記賃貸住宅10h(被管理物件)に付与するものである。
【0061】
このような構成により、太陽光発電設備11の発電電力の自家消費に由来するものだけではなく、売却電力に由来する環境価値(すなわち、複数の環境価値)を有効に活用できる。
【0062】
また環境価値活用システム1においては、
前記対価は、前記環境価値と同等又はそれ以上の金銭的価値を有するものである。
【0063】
このような構成により、居住者のお得感を一層高めることができる。
【0064】
また環境価値活用システム1においては、
前記第1の環境価値は、Jクレジットを含むものである。
【0065】
このような構成により、Jクレジットを有効に活用できる。
【0066】
また環境価値活用システム1においては、
前記第2の環境価値は、非化石証書を含むものである。
【0067】
このような構成により、非化石証書を有効に活用できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0069】
本実施形態においては、被管理物件として、賃貸住宅10hを例示したが、これに限定されない。すなわち、被管理物件としては、住居を目的とするのではなく、店舗やオフィス等、種々の用途を目的とする賃貸物件が含まれる。
【0070】
また本実施形態において、発電設備は、再生活用エネルギーとして太陽光を利用するものとしたが、これに限定されない。すなわち、発電設備は、風力や、水力、地熱、バイオマス等の種々の再生可能エネルギーを利用することができる。
【0071】
また本実施形態において、対価付与事業者40は、賃貸管理事業者30の関連会社としたが、関連会社でなくてもよい。また、賃貸管理事業者30は、取得したJクレジットを対価付与事業者40に無償ではなく、有償で譲渡してもよい。
【0072】
また本実施形態においては、賃貸管理事業者サーバ31、対価付与事業者サーバ41、委託事業者サーバ51、小売電力事業者サーバ61及び集約サーバ71は、それぞれ別々ではなく、実質的に1つのサーバであってもよい。また各サーバ間のやり取りは、それぞれのサーバの判断で(具体的には、所定の期間経過、所定の情報取得、所定量の環境価値の蓄積等の所定の条件を満たすことにより)自動的に行うことができる。
【0073】
また本実施形態においては、環境価値として、Jクレジット及び非化石証書を例示して説明を行ったが、これに限定されない。すなわち、環境価値としては、グリーン電力証書等、任意のものを採用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 環境価値活用システム
10h 賃貸住宅
11 太陽光発電設備
12 電力情報取得部
30 賃貸管理事業者
31 賃貸管理事業者サーバ
40 対価付与事業者
41 対価付与事業者サーバ
51 委託事業者サーバ