(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081084
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240610BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240610BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240610BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240610BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20240610BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/02
B60W60/00
G08G1/16 C
B60R99/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194542
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 政典
(72)【発明者】
【氏名】大橋 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 周佑
(72)【発明者】
【氏名】西村 伸哉
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC34Z
3D241DC41Z
5H181AA01
5H181CC02
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】全長が長い車両であっても、自動走行によって駐車領域に車両を正確に駐車させることができる駐車支援装置を提供する。
【解決手段】駐車支援装置は、駐車基準線CA2及び車両中心線CA1に基づいて、ステアリング角度を設定して車両1を前進又は後進させることにより車両1の向きを変えさせて、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度を規定角度以下にさせる。また、駐車支援装置は、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度が規定角度以下の車両1のステアリング角度を、斜行用のステアリング角度に設定して、車両1を前進又は後進させることにより、車両1の向きを変えずに前方又は後方に斜行させ、当該車両1を駐車基準線CA2上に移動させる。その後、駐車支援装置は、駐車基準線CA2上に移動させた車両1を、駐車基準線CA2に沿って前進又は後進させることにより駐車領域ER1に進入させ、駐車領域ER1内に車両1を停車させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に前方又は後方に移動すること、向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動すること、及び、向きを変えずに斜め前方又は斜め後方に斜行することが可能な車両を、駐車領域に自動で駐車させる駐車支援装置であって、
前記駐車領域の中心点を通り前記駐車領域の長手方向に延びた前記車両の進入方向を示す直線である駐車基準線を特定し、前記車両の中心点を通り前記車両の全長方向に沿った直線である車両中心線を特定する特定部と、
前記駐車基準線と前記車両中心線とに基づいて、前記車両を向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動させ、前記駐車基準線に対する前記車両中心線の角度を、予め規定した規定角度以下にさせる向き制御部と、
前記駐車基準線に対する前記車両中心線の角度が前記規定角度以下となった前記車両を向きを変えずに斜め前方又は斜め後方に斜行させ、前記車両を前記駐車基準線上に移動させる位置制御部と、
前記駐車基準線上に移動した前記車両を、前記駐車基準線に沿って直線状に前進又は後進させ、前記駐車領域に進入させる進入制御部と、
を有する、駐車支援装置。
【請求項2】
前記位置制御部は、
前記駐車基準線上に位置し、前記駐車領域の前記車両が進入する進入口から予め定めた距離以上離れた地点を位置制御後地点とし、前記位置制御後地点に向けて前記車両を斜行させる、請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記位置制御部は、
前記駐車基準線上に位置し、前記駐車領域の前記車両が進入する進入口から予め定めた距離以上離れ、前記車両の車輪の向きであるステアリング角度の限界範囲内の斜行により移動できる地点のうち、前記駐車領域に最も近い地点を位置制御後地点とし、前記位置制御後地点に向けて前記車両を斜行させる、請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記位置制御後地点は、
車両センサの検出精度及び前記車両の制動性能に応じて設定される、請求項2又は3に記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者が運転操作を行わなくてもコンピュータによる制御により自動走行する自動運転車(以下、単に車両とも称する)の開発が進んでいる。このような車両では、車道からはみ出さずに目標経路に沿って自動的に走行する自動走行技術の他にも、予め決められた車庫(以下、駐車領域とも称する)に自動的に駐車させる自動駐車技術の開発も進んでいる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、後退走行で車両を駐車領域に駐車させる自動駐車技術が開示されており、周辺情報に基づいて駐車領域を検出し、設定位置から駐車領域内の目標位置まで移動する円弧の目標経路を算出して、その目標経路に沿って車両を駐車させることが開示されている。また、特許文献2には、前進走行で車両を駐車領域に駐車させる自動駐車技術が開示されており、最小回転半径以上の2つの円弧を接続したS字カーブの目標経路を生成することが開示されている。このような特許文献1,2はいずれも、駐車領域に車両を進入させる際には、車両の中心点と全長方向とを示す車両中心線が、駐車領域の中心点と駐車領域への車両の進入方向とを示す駐車基準線上に位置するように、車両の向きを変えながら移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-187229号公報
【特許文献2】特開2021-194962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2では、例えば、全長の長い車両を、大きく向きを変えながら曲線的に駐車領域に向けて移動させると、車両の全長が長い分、当該車両の向きを正確に変えることが難しいことから、駐車領域の駐車基準線上に車両の車両中心線を位置させることが困難である。そして、このような全長の長い車両については、当該車両の向きが駐車領域の駐車基準線から少しでも傾いていると、駐車領域に向けて車両を近づけていった際に、車両と駐車領域とのずれが次第に大きくなってゆくため当該車両が駐車領域からはみ出し易く、駐車領域に車両を正確に駐車し難いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、全長が長い車両であっても、自動走行によって駐車領域に車両を正確に駐車させることができる駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駐車支援装置は、直線状に前方又は後方に移動すること、向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動すること、及び、向きを変えずに斜め前方又は斜め後方に斜行することが可能な車両を、駐車領域に自動で駐車させる駐車支援装置であって、前記駐車領域の中心点を通り前記駐車領域の長手方向に延びた前記車両の進入方向を示す直線である駐車基準線を特定し、前記車両の中心点を通り前記車両の全長方向に沿った直線である車両中心線を特定する特定部と、前記駐車基準線と前記車両中心線とに基づいて、前記車両を向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動させ、前記駐車基準線に対する前記車両中心線の角度を、予め規定した規定角度以下にさせる向き制御部と、前記駐車基準線に対する前記車両中心線の角度が前記規定角度以下となった前記車両を向きを変えずに斜め前方又は斜め後方に斜行させ、前記車両を前記駐車基準線上に移動させる位置制御部と、前記駐車基準線上に移動した前記車両を、前記駐車基準線に沿って直線状に前進又は後進させ、前記駐車領域に進入させる進入制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動することで、駐車基準線に対する車両中心線の角度を規定角度以下にした後に、車両の向きを変えずに斜め前方又は斜め後方に斜行することで、車両を駐車基準線上に移動させるようにしており、車両の向きを変える移動と、車両を駐車基準線上に位置させる移動とをそれぞれ別々に行わせるようにした。これにより、駐車基準線に対して車両の向きがずれることを抑制することができ、全長が長い車両であっても、自動走行によって駐車領域に車両を正確に駐車させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る駐車支援装置を有する車両の回路構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)は、駐車支援処理を開始する前の車両の初期状態を示す概略図であり、(b)は、駐車支援処理時における車両の向き制御後の状態を示す概略図であり、(c)は、駐車支援処理時における車両の位置制御後の状態を示す概略図であり、(d)は、駐車支援処理時における車両の進入制御後の状態を示す概略図である。
【
図3】(a)は、向き制御時の車両の動きを説明するための概略図であり、(b)は、位置制御時の車両の動きを説明するための概略図である。
【
図4】(a)は、位置制御後地点が駐車領域から近いときの車両の進入制御について説明するための概略図であり、(b)は、位置制御後地点が駐車領域から遠いときの車両の進入制御について説明するための概略図である。
【
図5】駐車支援処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面について本発明の一実施の形態を詳述する。以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(1)<本実施形態に係る駐車支援装置の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る駐車支援装置3は、車両1に設けられており、車両1に備える車両制御装置2を制御し、運転者による操作なしに自動で車両1の前進、後進、操舵及び停車を行わせることによって、予め決められた駐車領域に車両1を自動走行により駐車させる装置である。
【0012】
ここで、車両1としては、例えば、製鉄所内において鋼板等の運搬に使用する、全長が長い産業用車両(大型キャリア)を例に以下説明する。このような車両1は、全長方向に沿って複数の車輪が配置されており、それぞれの車輪のステアリング角度(車両1の方向に対する車両1の車輪の向き)を変更可能な構成を備えている。ステアリング角度を適宜操作することで、(i)車両1の方向に対して車輪を平行にすることで、車両1が前方又は後方に移動した場合に、車両1を直線状に前方又は後方に移動させるようにしたり、(ii)車両1の前方に設けられた一部の車輪と、後方に設けられた一部の車輪とを逆方向に傾けることで、車両1が前方又は後方に移動した場合に、車両1を向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動させるようにしたり、(iii)車両1の全ての車輪を、車両1の方向に対して同じ方向に傾けることで、車両1を向きを変えずに斜め前方又は斜め後方に移動させるようにしたり(この(iii)の動作を、以下では斜行と称する)させることができる。
【0013】
即ち、車両1は、(i)(ii)のようなステアリング角度の操作をすることで、一般的な乗用車等のように、直進したり、車両1の向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動する右折走行又は左折走行が行える他、(iii)のようなステアリング角度の操作をすることで、一般的な乗用車等では行えない斜行走行をすることもできる。
【0014】
なお、車両1の中には、全ての車輪のステアリング角度を90[deg](即ち、車両1の方向に対して垂直)にすることで、車両1の向きを変えずに横方向に移動する横行走行(単に横行とも称される)ができるものが存在するが、横行は、ステアリング角度を90[deg]とした、斜行の一種であると考えることができるため、以下の説明では、横行と言う用語は用いず、斜行に含めて説明を行うものとする。
【0015】
また、本実施形態に係る車両1は、運転席に着座した運転手による、ハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダル等の操作によって走行が可能な構成を有するとともに、運転手による操作なしに、車両制御信号による車両制御装置2の制御に基づいて、予め定めた走行経路に従って駐車領域近傍まで移動する自動走行が可能な構成を有する。かかる構成に加えて、車両1は、駐車領域近傍まで移動すると、駐車支援装置3によって駐車支援処理を実行することにより車両制御装置2を制御し、運転手の操作なしに自動走行によって駐車領域に自動駐車される。
【0016】
始めに、車両1の走行を制御する車両制御装置2について説明する。車両制御装置2は、車両センサ21と経路情報取得部22とステアリング装置23とブレーキ装置24と車速制御装置25とを備えている。車両制御装置2は、車両センサ21で得られた検出結果や、経路情報取得部22で取得した駐車領域の位置情報等を駐車支援装置3に出力する。また、車両制御装置2は、駐車支援装置3から受け取った車両制御信号に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25が制御され、予め決められた駐車領域に車両1を自動走行により駐車させる。
【0017】
車両センサ21は、例えば、3軸加速度センサ(Gセンサ)やジャイロセンサ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ、車両1の現在位置を測位するGPS等の測位センサ、カメラ画像やミリ波レーダ、赤外線レーダ等により車両1から周囲の物体までの距離や方向を検出する物体検出センサ等の各種センサからなり、これら複数のセンサから得られた検出結果に基づいて、地図データ上における車両1の現在の位置及び向きを特定する。
【0018】
経路情報取得部22は、地図データ等を記憶しており、例えば、運転手による入力操作等によって、地図データ上で駐車領域の位置を示す駐車位置情報が入力されると、車両1が位置する現地点を出発地点として、当該出発地点から駐車領域近傍までの経路を算出し、出発地点から駐車領域近傍までの経路情報を取得する。これにより、車両制御装置2は、経路情報に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25を制御し、経路情報で示した走行経路に沿って現地点から駐車領域近傍まで車両1を自動走行させる。
【0019】
ステアリング装置23は、運転席に設けられたハンドルの操作に応じて車両1に設けられた車輪のステアリング角度を変え、車両1の進行方向を変えさせる。ステアリング装置23は、例えば、前方又は後方に設けられた一部の車輪のステアリング角度を変えることで、一般的な乗用車等のように、直進だけでなく、車両1の向きを変えながら曲線状に進む右折走行又は左折走行を行わせることができる。これに加えて、本実施形態に係るステアリング装置23は、車両1の全ての車輪のステアリング角度を同じ向きに変えることで、車両1に、一般的な乗用車等では行えない、車両1の向きを変えないまま斜め前方又は斜め後方に進む斜行走行を行わせることができる。
【0020】
ブレーキ装置24は、車両1の車輪に制動力を与えるための装置であり、走行している車両1の車輪に対して適切なタイミングで適切な強度の制動力を与えることで、車両1の移動速度を調整したり、車両1を所望の地点に停止させる。
車速制御装置25は、図示しない内燃機関や電動モータ等の駆動装置から与えられる駆動力を制御し、車両1を前方又は後方に向けて所定の走行速度で走行させる。
【0021】
駐車支援装置3は、後述する駐車支援処理を行う際に、ステアリング装置23を制御して車輪のステアリング角度を変え、ブレーキ装置24を制御して車両1の車輪に制動力を与え、車速制御装置25を制御して車両1の走行速度を調節することで、駐車領域の最適な位置に車両1を自動駐車させる。
【0022】
本実施形態に係る駐車支援装置3は、特定部31と記憶部32と向き制御部33と位置制御部34と進入制御部35とを備えており、後述する駐車支援処理を実行することによって、
図2(a)に示すように、駐車領域ER1の近傍に配置した車両1を、
図2(b)、(c)及び(d)に示すように、自動走行により順序だてて移動させることにより駐車領域ER1内に収まるように自動駐車させることができる。
【0023】
ここで、
図2(a)~(d)において、CA1は、車両1の車両中心点Oを通り、かつ、当該車両1の全長方向に沿った(好ましくは、車両1の幅方向の中央を貫通する)直線である車両中心線を示している。この車両中心線CA1は、車両1の中心点と車両1の全長方向との関係を示すものである。CA2は、車両1を駐車させる駐車領域ER1の中心点である駐車目標地点Gを通り、かつ、当該駐車領域ER1の長手方向に延びた直線である駐車基準線を示している。この駐車基準線CA2は、駐車領域ER1の駐車目標地点Gに代表される当該駐車領域ER1への車両1の進入方向を示すものである。
図2におけるx軸は、駐車領域ER1の駐車基準線CA2に平行な方向を示しており、y軸は、駐車基準線方向x軸と直交する方向を示しており、駐車領域ER1の幅方向に対応する。
【0024】
また、
図2(a)に示す点Aは、駐車支援処理が実行される前の初期状態(即ち、予め定めた走行経路に従って駐車領域ER1近傍まで自動走行で移動してきた後の状態)のときに、車両中心点Oが位置する初期地点を示し、
図2(a)及び(b)に示す点Bは、後述する向き制御によって、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度を規定角度以下にして、駐車基準線CA2に車両中心線CA1が略平行となるように移動させたときに、車両中心点Oが位置する地点(以下、向き制御後地点とも称する)を示す。
図2(b)及び(c)に示す点Cは、後述する位置制御によって車両1が駐車基準線CA2上に位置したときに、車両中心点Oが位置する地点(以下、位置制御後地点とも称する)を示す。
【0025】
駐車支援装置3は、向き制御処理、位置制御処理及び進入制御処理で構成される駐車支援処理を実行することにより、車両1の車両中心線CA1が駐車領域ER1の駐車基準線CA2と略平行となった状態で車両1を駐車基準線CA2上に位置させることで、その後に車両1を駐車領域ER1に収める動作を行うにあたって、単純な前進又は後進をするだけで、駐車領域ER1の駐車目標地点Gにほぼ位置合わせができる状態(移動に伴い微調整がいるにしても、位置合わせが破綻する可能性が低い状態)にしており、車両1の全長が長いといえども、車両1が駐車領域ER1の進入口E1や側壁に当たったり、車両1が駐車領域ER1の枠内からはみ出したりすることなく、当該駐車領域ER1内に収まるように、車両1を駐車領域ER1に自動駐車させることができる。以下、駐車支援装置3の各構成について順番に説明する。
【0026】
特定部31は、駐車領域解析部38と車両位置解析部39とを備え、車両1を駐車領域ER1に自動駐車させる駐車支援処理に必要となる各種情報を取得する。この場合、駐車領域解析部38は、例えば、地図データ上で駐車領域ER1の位置を示した駐車位置情報を、車両制御装置2の車両センサ21や経路情報取得部22から受け取る。
【0027】
駐車領域解析部38は、駐車位置情報に基づいて地図データ上での駐車領域ER1の外郭形状等を解析し、地図データ上における駐車領域ER1の駐車目標地点G(駐車領域ER1の略中央の位置に設定され、車両1の中心位置が到達すべき目標位置となる地点)の位置と、駐車領域ER1の進入口E1の位置と、駐車領域ER1の駐車基準線CA2の位置と、当該駐車基準線CA2の延長線の方向(駐車基準線CA2の向き)とを特定し、得られた結果を駐車領域解析情報として、向き制御部33、位置制御部34及び進入制御部35に出力する。なお、駐車領域ER1の進入口E1とは、車両1が駐車領域ER1に駐車する際に、当該車両1が初めに駐車領域ER1内に進入し始める領域である。
【0028】
車両位置解析部39は、車両制御装置2の車両センサ21で得られた検出結果を当該車両センサ21から取得し、当該検出結果に基づいて、地図データ上における車両1の現在位置、車両中心点Oの現在位置、当該車両1の車両中心線CA1の現在位置、及び、当該車両中心線CA1の現在の延長線の方向(車両中心線CA1の向き)を特定し、得られた結果を車両位置解析情報として、向き制御部33、位置制御部34及び進入制御部35に出力する。
【0029】
記憶部32は、車両制御装置2の車両センサ21や経路情報取得部22から受け取った各種情報や、駐車領域解析部38で得られた駐車領域解析情報、車両位置解析部39で得られた車両位置解析情報等の特定した結果や各種検出結果を記憶する。
【0030】
向き制御部33は、駐車領域解析部38で得られた駐車領域解析情報と、車両位置解析部39で得られた現在の車両位置解析情報とを特定部31から受け取ると、駐車領域解析情報と車両位置解析情報とに基づいて、駐車領域ER1の駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の現在の角度を求め、求めた角度が予め規定した規定角度以下であるか否かを判定する。向き制御部33に規定される規定角度は、車両中心線CA1が駐車基準線CA2に対して大きく傾いているか否かの判断基準となるものであり、例えば、車両中心線CA1が駐車基準線CA2と略平行になっていると見なせる±2[deg]以下の範囲内の角度が規定角度として予め設定されていることが望ましい。
【0031】
向き制御部33は、例えば、
図2(a)に示すように、駐車領域ER1の進入口E1から所定距離離れた位置において、車両中心線CA1が駐車基準線CA2と略平行になっていると見なせないほど駐車基準線CA2に対して大きく傾いていると、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度が規定角度より大きいとの判定結果を得、当該判定結果に基づいて、車両1の向きを変えさせて、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度を規定角度以下にする向き制御処理を実行する。
【0032】
具体的には、向き制御部33は、向き制御処理として、
図2(a)及び(b)に示すように、駐車基準線CA2に対して傾いている車両中心線CA1を規定角度以下の角度にさせるときの車両1の移動地点となる向き制御後地点Bや、当該向き制御後地点Bに向けて車両1を移動させる際のステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度等を求め、これを向き制御用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。
【0033】
これにより、車両1は、駐車支援装置3から受け取った向き制御用の車両制御信号に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25を制御し、車両1の一部の車輪のステアリング角度を変えることで、
図2(a)及び(b)に示すように、車両中心線CA1が駐車基準線CA2に対して規定角度より大きな角度で傾いている初期状態から、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度が規定角度以下の状態になるまで向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動する。
【0034】
位置制御部34は、駐車領域解析部38で得られた駐車領域解析情報と、車両位置解析部39で得られた現在の車両位置解析情報とを特定部31から受け取ると、駐車領域解析情報と車両位置解析情報とに基づいて、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の位置を特定し、車両中心線CA1が駐車基準線CA2から規定距離以下の距離にあるか否かを判定する。ここで、車両中心線CA1と駐車基準線CA2との距離とは、車両中心点Oから駐車基準線CA2に垂線を降ろした時の垂線の長さを意味する。位置制御部34に規定される規定距離は、駐車基準線CA2に対して規定角度以下にある車両中心線CA1が、駐車基準線CA2から大きく離れているか否かの判断基準となるものであり、例えば、車両1が駐車基準線CA2上に位置していると見なせる±200[mm]以下の範囲内の距離が規定距離として設定されていることが望ましい。
【0035】
位置制御部34は、例えば、
図2(b)に示すように、車両中心線CA1が当該駐車基準線CA2から規定距離よりも離れている場合、車両中心線CA1が当該駐車基準線CA2から大きく離れているとの判定結果を得、当該判定結果に基づいて、車両1の向きを変えずに車両中心線CA1が駐車基準線CA2から規定距離以下に位置するように車両1を斜行させる位置制御処理を実行する。
【0036】
具体的には、位置制御部34は、位置制御処理として、
図2(b)及び(c)に示すように、駐車基準線CA2から離れた車両中心線CA1を、斜行によって当該駐車基準線CA2から規定距離以下の距離にさせるときの車両1の移動地点となる位置制御後地点Cや、当該位置制御後地点Cまで車両1を移動させる際の斜行用のステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度等を求め、これを位置制御用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。
【0037】
これにより、車両1は、駐車支援装置3から受け取った位置制御用の車両制御信号に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25を制御し、
図2(b)及び(c)に示すように、車両1の全ての車輪のステアリング角度を同じ方向に変えることで、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度を規定角度以下に維持したまま、車両中心線CA1が駐車基準線CA2から規定距離以下になる位置まで、車両1の向きを変えずに斜行する。
【0038】
進入制御部35は、駐車領域解析部38で得られた駐車領域解析情報と、車両位置解析部39で得られた現在の車両位置解析情報とを特定部31から受け取ると、駐車領域解析情報と車両位置解析情報とに基づいて、駐車基準線CA2に沿って車両1を前進又は後進させることにより駐車領域ER1の枠内に車両1を駐車させる進入制御処理を実行する。
【0039】
具体的には、進入制御部35は、進入制御処理として、
図2(c)及び(d)に示すように、駐車基準線CA2に対して車両中心線CA1の角度が規定角度以下にあり、かつ、車両中心線CA1が駐車基準線CA2から規定距離以下に位置している車両1を、当該駐車基準線CA2に沿って直線的に前進又は後進させ、駐車領域ER1の進入口E1から駐車領域ER1内に駐車させる進入経路や、当該進入経路に沿って車両1を移動させる際のステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度等を求め、これを進入制御用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。
【0040】
これにより、車両1は、駐車支援装置3から受け取った進入制御用の車両制御信号に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25を制御し、
図2(c)及び(d)に示すように、駐車領域ER1の進入口E1から駐車領域ER1に進入し、車両中心点Oが駐車目標地点Gに位置するように当該駐車領域ER1内に駐車する。
【0041】
(2)<向き制御処理>
次に、上述した駐車支援処理の向き制御処理について詳細を説明する。ここでは、駐車基準線方向xと、当該駐車基準線方向xと直交する駐車領域ER1の幅方向yとを含む平面をxy平面とし、
図2(a)~(d)に示した駐車領域ER1内の駐車目標地点Gのxy平面での座標を(xg,yg,θg)として説明する。角度θg[rad]は、駐車基準線方向xに対する駐車基準線CA2の角度であり、ここでは、駐車基準線CA2の延線方向が駐車基準線方向xであるため、角度θg=0[rad]となる。xgは駐車基準線方向xでの位置を示し、ygは幅方向yでの位置を示している。本実施形態では、説明を容易にするため、駐車目標地点Gの座標を原点とし、xg=0、yg=0とする。
【0042】
図3(a)は、向き制御時の車両1の動きを説明するための概略図である。ここでは、初期状態のときの車両中心点Oの位置を示す初期地点Aを、xy平面での座標で(xa,ya,θa)と表す。角度θa[rad]は、駐車基準線方向xに対する車両中心線CA1の角度である。また、ここでは、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1を規定角度以下にする向き制御後の、車両中心点Oの位置を示す向き制御後地点Bを、xy平面での座標で(xb,yb,θb)と表す。角度θb[rad]は、駐車基準線方向xに対する車両中心線CA1の角度を、車両1の回転半径Raの角度で表しており、ここでは、車両中心線CA1と駐車基準線CA2とが平行となるように、向き制御を行うものとし、角度θb=0[rad]とする。
【0043】
ここで、車両1の車輪のうち、車両中心線CA1の方向から傾けた車輪のステアリング角度をφaとし、当該ステアリング角度φaで車両1を前進又は後進させたときの車両1の回転半径Raは、下記の式(1)から求めることができる。
【0044】
Ra = L/tan(φa) …(1)
【0045】
上記の式(1)中、Lは、車両1の車両中心点Oと、ステアリング角度φaを変える最端の車輪との距離(ホイール間距離とも称する)である。ステアリング角度φaは反時計回りを正とする。
【0046】
図3(a)において、車両1aは向き制御前の初期状態の車両1を示し、車両1bは向き制御後の車両1を示しており、
図3(a)中、上側から下側への車両1aの移動を後進とし、
図3(a)では、一例として、車両1aを後進させて向きを変える例を示している。なお、向き制御前の初期状態の車両1aと向き制御後の車両1bとを特に区別する必要がない場合は、単に車両1として説明する。
【0047】
向き制御後地点Bの座標(xb,yb,θb)は、初期地点Aの座標(xa,ya,θa)と、車両1の回転半径Raとから、下記の式(2a)、(2b)及び(2c)のように表すことができる。
【0048】
xb = xa - Ra ・ sin(θa) …(2a)
yb = ya - Ra ・ (1-cos(θa)) …(2b)
θb = 0 …(2c)
【0049】
向き制御部33は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と現在の車両位置解析情報とに基づいて、初期地点Aの座標(xa,ya,θa)を求める。向き制御部33は、予め記憶しておいた車両1のホイール間距離Lと、求めた初期地点Aの座標(xa,ya,θa)と、予め規定した向き制御後地点Bに関する制約条件(後述する)とに基づいて、上述した式(1)、(2a)、(2b)及び(2c)から、制約条件を満たした向き制御後地点Bの座標(xb,yb,θb)と向き変更用のステアリング角度φaとを求める。
【0050】
ここで、向き制御後地点Bが駐車領域ER1に近すぎると、駐車領域ER1に衝突する危険がある。一方、向き制御後地点Bが駐車領域ER1から離れすぎると、位置制御処理により車両1を斜行させる際に必要以上に斜行させることになるため非効率的となる。
【0051】
そこで、向き制御部33は、制約条件として、向き制御後地点Bが駐車領域ER1に近すぎるybの位置を下限値として規定し、向き制御後地点Bが駐車領域ER1に遠すぎるybの位置を上限値として規定しておき、これら上下限値の範囲内でybを選定する。具体的には、向き制御後地点Bが駐車基準線CA2に近くなることが、車両1の最終的な移動距離が少なくなり効率的であることから、本実施形態に係る向き制御部33は、始めに、ステアリング装置23のステアリング角度の限界範囲内で車両1を駐車基準線CA2に近づける方向に向けて、車両1を向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動させることにより、ybが下限値に最も近くなる、向き制御後地点Bを特定する。このようにして、向き制御部33は、特定した向き制御後地点Bの座標(xb,yb,θb)と、車両1を前進又は後進させるかと、そのときの向き変更用のステアリング角度φaとを求めることができる。
【0052】
なお、向き制御部33は、ステアリング装置23のステアリング角度の限界範囲内で、予め規定した上下限値の範囲でybを特定できなかったときには、ステアリング装置23のステアリング角度の限界範囲内で車両1を上限値から駐車基準線CA2と遠ざかる方向に向けて、車両1を向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動させることにより、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度が規定角度以下となる向き制御後地点Bを特定する。このようにして、向き制御部33は、上下限値の範囲でybを特定できなかったときでも、上限値よりも遠く離れた地点で、向き制御後地点Bの座標(xb,yb,θb)と、車両1を前進又は後進させるかと、そのときの向き変更用のステアリング角度φaとを求めることができる。
【0053】
なお、
図3(a)において、車両1を前進(
図3(a)中、車両1を上側に移動)させて駐車基準線CA2から離れた位置で駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度θa[rad]をゼロにするときには、車両1の向きと反対向きにステアリング角度φaの向きを設定する。一方、車両1を後進(
図3(a)中、車両1を下側に移動)させて駐車基準線CA2に近づけた位置で駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度θa[rad]をゼロにするときには、車両1の向きと同じ方向にステアリング角度φaの向きを設定すればよい。すなわち、車両1を前進させるときには、角度θaとステアリング角度φaは逆符号となり、一方、車両1を後進させるときには、角度θaとステアリング角度φaは同符号となる。
【0054】
向き制御部33は、初期地点Aの座標(xa,ya,θa)と、向き制御後地点Bの座標(xb,yb,θb)と、車両1を前進又は後進させるかと、向き変更用のステアリング角度φaとから、当該ステアリング角度φaで初期地点Aから向き制御後地点Bまで車両1を移動させる際の走行速度及びブレーキ操作を算出し、向き変更用のステアリング角度φa、ブレーキ操作及び走行速度等を示す向き制御用の車両制御信号を生成する。なお、ステアリング角度φaで初期地点Aから向き制御後地点Bまで車両1を移動させる際の走行速度及びブレーキ操作は、例えば、車両1の移動距離や、向き変更用のステアリング角度φaの値、走行速度、ブレーキ操作との関係を予め規定した操作情報を記憶しておくことで、車両1の移動距離や、向き変更用のステアリング角度φaに基づいて当該操作情報から算出することができる。
【0055】
(3)<位置制御処理>
次に、上述した駐車支援処理において、向き制御処理後に行われる位置制御処理について以下説明する。
図3(b)は、位置制御時の車両1の動きを説明するための概略図である。
図3(b)において、車両1bは位置制御前の車両1を示し、車両1cは位置制御後の車両1を示している。
図3(b)中、上側から下側への車両1aの移動を後進と称するものとし、
図3(b)では、一例として、車両1bを後進させて位置制御する例を示している。なお、位置制御前の車両1bと位置制御後の車両1cとを特に区別する必要がない場合は、単に車両1として説明する。
【0056】
ここでは、車両1が斜行することによって、車両中心線CA1が駐車基準線CA2から規定距離以下となった場合の、斜行後の車両中心点Oの位置を位置制御後地点Cとし、位置制御後地点Cをxy平面の座標で(xc,yc,θc)と表す。角度θc[rad]は、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度であり、ここでは、位置制御処理では車両1の向きは変わらず、角度θbと角度θcは同じ値となるため、角度θc=0[rad]となる。
【0057】
また、車両中心線CA1が斜行によって駐車基準線CA2から規定距離以下となる位置制御後地点Cを、ここでは車両中心線CA1が駐車基準線CA2上に位置する地点とすると、基準となる駐車基準線CA2からの幅方向yでの距離がゼロとなり、yc=0となる。
【0058】
以上より、位置制御後地点Cのxy平面での座標(xc,yc,θc)は、斜行によって車両1を駐車基準線CA2上に位置させる際の斜行用のステアリング角度φbと、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度が規定角度以下となっている位置制御前の向き制御後地点Bの座標(xb,yb,θb)とから、下記の式(3a)、(3b)及び(3c)のように表すことができる。
【0059】
xc = xb - yb/tan(φb) …(3a)
yc = 0 …(3b)
θc = 0 …(3c)
【0060】
ここで、ステアリング角度φbは、車両1を斜行させる際に前進させているか、後進させているか、向き制御後地点Bが駐車基準線CA2の左側に位置するか、右側に位置するか、によって異なってくるが、車両1bを前進させながら斜行させる場合は、ステアリング角度φbはybと逆符号となり、車両1bを後進させながら斜行させる場合は、ステアリング角度φbはybと同符号となる。
【0061】
この場合、位置制御部34は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と現在の車両位置解析情報とに基づいて、上記の式(3a)、(3b)及び(3c)から、位置制御後地点Cの座標(xc,yc,θc)と、向き制御後地点Bにある車両中心点Oを位置制御後地点Cまで斜行させる斜行用のステアリング角度φbとを求める。
【0062】
ここで、位置制御部34により生成した位置制御用の車両制御信号に基づいて車両1を向き制御後地点Bから位置制御後地点Cまで斜行によって移動させた場合、実際には、車両センサ21の検出精度や、車両1自体の制動性能等によって、位置制御部34によって求めた位置制御後地点Cに車両1を正確に停止させることが困難な場合がある。このため、実際に車両1が停止する位置は、位置制御後地点Cから若干ずれてしまうことがある。
【0063】
この際、
図4(a)に示すように、位置制御後地点Cが駐車領域ER1の進入口E1に近すぎると、車両1から進入口E1までの距離L1が短くなるため、例えば、全長が長い車両1を位置制御後地点Cからずれた斜行地点C´から駐車領域ER1の進入口E1に進入させようとした場合、車両1のステアリング角度を大きく変える必要も生じ、車両1の走行経路も短距離で曲線的に大きく変化する進入経路になってしまうおそれがあることから、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度も変化し、駐車領域ER1への車両1の進入方向がずれてしまう可能性が生じる。
【0064】
そのため、位置制御部34は、位置制御後地点Cを決定する際、車両1の全長の長さや、ステアリング装置23の性能、車両1の制動性能、車両センサ21の検出精度等を考慮し、駐車基準線方向と略平行なx軸方向において進入口E1から所定距離以上離れた地点に位置制御後地点Cが設定されるよう、進入口E1から位置制御後地点Cまでの距離の下限値を規定しておくことが望ましい。なお、この下限値は、車両1の制動性能が高く、車両1の停止精度が高ければ下限値を小さく設定し、車両1の制動性能が低く、停止精度が低ければ、下限値を大きく設定することが望ましい。
【0065】
一方、
図4(b)に示すように、位置制御後地点Cが駐車領域ER1の進入口E1から遠すぎると、車両1から進入口E1までの距離L2が長くなるため、斜行地点C´´からの車両1の走行距離も不必要に長くなり、効率性が低下してしまう。そのため、位置制御部34は、位置制御後地点Cを決定する際、駐車基準線方向xにおいて進入口E1からなるべく近い方が望ましい。
【0066】
以上、位置制御部34は、位置制御後地点Cを求める際、駐車領域ER1の進入口E1から予め規定した下限値以上離れた距離のうち、ステアリング装置23が変更可能なステアリング角度の限界範囲内で当該進入口E1に最も近い地点を位置制御後地点Cとして選定することが望ましい。
【0067】
具体的には、位置制御部34は、斜行用のステアリング角度の最大値(以下、最大ステアリング角度とも称する)をφmaxとし、駐車領域ER1の進入口E1から位置制御後地点Cまでの距離の下限値をxminとすると、下記の式(4)及び(5)の不等式を満足し、かつ、上記の式(3a)で表されるxcを求めればよい。なお、下記の式(5)の0は、駐車目標地点Gの駐車基準線方向xのx座標であるxgを意味しており、0-xcは、位置制御後地点Cから駐車目標地点Gまでの距離となる。
【0068】
-φmax ≦ φb ≦ +φmax …(4)
0 - xc ≧ xmin …(5)
【0069】
この場合、位置制御部34は、上記のxcを求めると、向き制御後地点Bにある車両1を最大ステアリング角度で前方に斜行させた場合に、求めたxcが上記の式(5)を満たすか否かを調べ、上記の式(5)を満たしたと判定したときには、xc = -xminとして、下記の式(6a)から、車両1を前方に向けて斜行させるときのステアリング角度φbを求める。
【0070】
φb = -tan-1(yb/(xb+xmin)) …(6a)
【0071】
一方、位置制御部34は、向き制御後地点Bにある車両1を最大ステアリング角度で前方に斜行させた場合に、求めたxcが上記の式(5)を満たさないと判定すると、向き制御後地点Bにある車両1を最大ステアリング角度で後方に斜行させた場合に、上記の式(5)を満たすか否かを調べる。その結果、位置制御部34は、求めたxcが上記の式(5)を満たすと判定すると、下記の式(6b)から、車両1を後方に向けて斜行させるときのステアリング角度φbを最大ステアリング角度とする。ここで、sign(・)はカッコ内の符号が正のときには+1、負とときは-1を返す関数である。
【0072】
φb = sign(yb)×φmax …(6b)
【0073】
また、位置制御部34は、向き制御後地点Bにある車両1を最大ステアリング角度で後方に斜行させた場合に、上記の式(5)を満たさないと判定すると、xc = -xminとして、下記の式(6c)から、車両1を後方に向けて斜行させるときのステアリング角度φbを求める。
【0074】
φb = +tan-1(yb/(xb+xmin)) …(6c)
【0075】
位置制御部34は、向き制御後地点Bの座標(xb,yb,θb)と位置制御後地点Cの座標(xc,yc,θc)と斜行用のステアリング角度φbとから、当該斜行用のステアリング角度φbで現在の向き制御後地点Bから次の位置制御後地点Cまで車両1を移動させる際の走行速度及びブレーキ操作を算出し、斜行用のステアリング角度φb、ブレーキ操作及び走行速度等を示す位置制御用の車両制御信号を生成する。なお、斜行用のステアリング角度φbで現在の向き制御後地点Bから次の位置制御後地点Cまで車両1を移動させる際の走行速度及びブレーキ操作は、上述した向き制御部33と同様に、例えば、車両1の移動距離や、斜行用のステアリング角度φbの値、走行速度、ブレーキ操作との関係を予め規定した操作情報を記憶しておくことで、車両1の移動距離や、斜行用のステアリング角度φbに基づいて当該操作情報から算出することができる。
【0076】
(4)<進入制御処理>
次に、上述した駐車支援処理において、位置制御処理後に行われる進入制御処理について以下説明する。進入制御部35は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と現在の車両位置解析情報とに基づいて、駐車領域ER1の駐車目標地点Gの位置と、位置制御後地点Cに到達した車両1の現在の車両中心点Oの位置とを認識し、位置制御後地点Cに到達した車両1を、駐車基準線CA2に沿って前進又は後進させて進入口E1から駐車領域ER1内に進入させる進入経路を求める。
【0077】
進入制御部35は、求めた進入経路に沿って車両1を移動させてゆき車両中心点Oが駐車目標地点Gに合うように車両1を駐車目標地点Gに停止させる、ステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度を求め、これらを進入制御用の車両制御信号として、車両制御装置2に出力して車両1の移動を制御する。
【0078】
なお、進入制御部35は、進入制御用の車両制御信号を生成する際、位置制御処理後の車両1が停止している現在位置が位置制御後地点Cからずれている認識すると、車両中心線CA1を駐車基準線CA2上に沿って真っ直ぐに配置させた状態で、駐車領域ER1の進入口E1から駐車領域ER1内に車両1を進入させる進入経路や、当該進入経路に沿って車両1を移動させるステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度を求める。これにより、進入制御部35は、駐車領域ER1内に車両1を進入させるときに、駐車領域ER1の進入口E1の周囲や駐車領域ER1の側壁に車両1が衝突することを防止することができる。
【0079】
なお、現在の位置制御後地点Cから駐車目標地点Gまで車両1を移動させる際の走行速度及びブレーキ操作は、上述した向き制御部33と同様に、例えば、車両1の移動距離や、駐車領域ER1に進入する際のステアリング角度の値、走行速度、ブレーキ操作との関係を予め規定した操作情報を記憶しておくことで、車両1の移動距離やステアリング角度に基づいて当該操作情報から算出することができる。
【0080】
(5)<本実施形態に係る駐車支援処理手順>
次に、
図5に示すフローチャートを用いて、上述した駐車支援処理について以下説明する。駐車支援装置3は、車両センサ21から受け取った検出結果に基づいて、車両1が駐車領域ER1の近傍に移動したと判断すると、駐車支援処理を開始し、開始ステップからステップS1に移る。
【0081】
ステップS1において、向き制御部33は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と車両位置解析情報とに基づいて、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の現在の角度を求め、当該角度が規定角度以下であるか否かを判定する。ステップS1において肯定結果が得られると、このことは、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の現在の角度が規定角度以下であること、すなわち、車両中心線CA1が駐車基準線CA2と並走していると見なせることを表しており、このとき、駐車支援装置3は、次のステップS3に移る。
【0082】
これに対して、ステップS1において否定結果が得られると、このことは、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の現在の角度が規定角度よりも大きいこと、すなわち、車両中心線CA1が駐車基準線CA2に対して大きく傾いていることを表しており、このとき、駐車支援装置3は、次のステップS2に移る。
【0083】
ステップS2において、向き制御部33は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と現在の車両位置解析情報とに基づいて、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度が規定角度以下となる、向き制御後地点B、当該向き制御後地点Bまで、向きを変えながら曲線状に車両1を移動させる際の向き変更用のステアリング角度φa、ブレーキ操作及び走行速度を求め、これらを向き制御用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。
【0084】
これにより、向き制御部33は、向き制御用の車両制御信号に基づいて車両制御装置2を制御し、ステアリング角度を向き変更用のステアリング角度φaに設定し、当該向き変更用のステアリング角度φaで車両1を前進又は後進させ、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度を規定角度以下にし、次のステップS3に移る。
【0085】
ステップS3において、位置制御部34は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と現在の車両位置解析情報とに基づいて、車両中心線CA1と駐車基準線CA2との距離を求め、当該距離が規定距離以下であるか否かを判定する。ステップS3において肯定結果が得られると、このことは、車両中心線CA1と駐車基準線CA2との距離が規定距離以下であること、すなわち、車両中心線CA1が駐車基準線CA2上に位置していると見なせることを表しており、このとき、駐車支援装置3は、次のステップS5に移る。
【0086】
これに対して、ステップS3において否定結果が得られると、このことは、車両中心線CA1と駐車基準線CA2との距離が規定距離よりも大きいこと、すなわち、車両中心線CA1が駐車基準線CA2上に位置していないことを表しており、このとき、駐車支援装置3は、次のステップS4に移る。
【0087】
ステップS4において、位置制御部34は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と現在の車両位置解析情報とに基づいて、車両1を斜行させて車両中心線CA1と駐車基準線CA2との距離が規定距離以下になる、位置制御後地点Cの位置、当該位置制御後地点Cまで車両1を斜行させる際の斜行用のステアリング角度φb、ブレーキ操作及び走行速度を求め、これらを位置制御用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。
【0088】
これにより、位置制御部34は、位置制御用の車両制御信号に基づいて車両制御装置2を制御し、ステアリング角度を斜行用のステアリング角度φbに設定し、当該斜行用のステアリング角度φbで車両1を前方又は後方に斜行させ、車両中心線CA1と駐車基準線CA2との距離を規定距離以下にし、次のステップS5に移る。
【0089】
ステップS5において、進入制御部35は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と現在の車両位置解析情報とに基づいて、位置制御後地点Cに到達した車両1を、駐車領域ER1の進入口E1から駐車領域ER1内に進入させる進入経路を求め、次のステップS6に移る。
【0090】
ステップS6において、進入制御部35は、進入経路に沿って車両1を移動させてゆき車両中心点Oが駐車目標地点Gに合うように車両1を駐車目標地点Gに停止させる、ステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度を求め、これらを進入制御用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。
【0091】
これにより、進入制御部35は、進入制御用の車両制御信号に基づいて車両制御装置2を制御し、進入経路に従ってステアリング角度を調整させながら駐車基準線CA2に沿って車両1を移動させてゆき、当該車両1を駐車目標地点Gに停車させ、上述した駐車支援処理手順を終了する。
【0092】
(6)<作用及び効果>
以上の構成において、駐車支援装置3は、車両1を駐車させる駐車領域ER1の位置及び向きを検出した検出結果に基づいて、駐車領域ERの中心点である駐車目標地点Gの位置と、駐車領域ER1への車両1の進入方向と、を示す駐車基準線CA2を特定する。また、駐車支援装置3は、車両センサ21で車両1の現在の位置及び向きを検出した検出結果に基づいて、車両1の中心点である車両中心点Oの位置と、車両1の全長方向と、を示す車両中心線CA1を特定する。
【0093】
駐車支援装置3は、駐車基準線CA2及び車両中心線CA1に基づいて、ステアリング角度を設定して車両1を前進又は後進させることにより車両1の向きを変えさせて、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度を規定角度以下にさせる。また、駐車支援装置3は、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度が規定角度以下の車両1のステアリング角度を、斜行用のステアリング角度に設定することにより、車両1の向きを変えずに前方又は後方にそのまま斜行させ、当該車両1を駐車基準線CA2上に移動させる。その後、駐車支援装置3は、駐車基準線CA2上に移動させた車両1を、駐車基準線CA2に沿って直線状に前方又は後方に移動させることにより駐車領域ER1に進入させ、駐車領域ER1内に車両1を停車させる。
【0094】
このように、駐車支援装置3では、駐車基準線CA2に対する車両中心線CA1の角度を規定角度以下にした後に、別の動作として車両1の向きを変えずにそのまま斜行によって車両1を駐車基準線CA2上に移動させるようにし、車両1の向きを変える移動と、車両1を駐車基準線CA2上に位置させる移動とをそれぞれ別々に行わせるようにした。これにより、駐車支援装置3は、車両1の向き制御を行う際に、車両1の位置を同時に変える制約がない分、車両1の向き制御を正確に行え、駐車基準線CA2に対する車両1の向きのずれを抑制することができ、全長が長い車両であっても、自動走行によって駐車領域に車両を正確に駐車させることができる。
【0095】
このように、駐車支援装置3は、駐車基準線CA2に対する車両1の向きのずれを抑制し、車両1を駐車領域ER1に正対させた状態で駐車領域ER1に進入させることができるので、例えば、駐車領域ER1の周囲が鉄骨等の構造物で囲われている場合でも、周囲の構造物に車両1が衝突することなく、駐車させることが可能となる。
【0096】
また、位置制御部34は、駐車基準線CA2上に位置し、かつ、駐車領域ER1の進入口E1から予め定めた距離に位置制御後地点Cの下限値を設定し、ステアリング装置23におけるステアリング角度の限界範囲内であって、かつ、下限値以上離れた地点のうち駐車領域ER1に最も近い地点を位置制御後地点Cと設定する。そして、位置制御部34は、車両1が向き制御後地点Bから位置制御後地点Cまで斜行する際の斜行用のステアリング角度φbと、当該斜行用のステアリング角度φbで車両1を進ませる進行方向(前進又は後進)とを決定する。
【0097】
これにより、駐車支援装置3は、駐車領域ER1から近すぎず、かつ遠すぎない最適な位置制御後地点Cに車両1を斜行により移動させることができるので、例えば、位置制御後地点Cにおいて車両1を完全に駐車領域ER1に正対できなかったとしても、駐車領域ER1の周囲の構造物等に車両1を衝突させることなく、車両1のステアリング角度を調整しながら位置制御後地点Cから駐車領域ER1内に精度よく進入させることができる。
【0098】
(7)<他の実施形態>
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、車両制御装置2に設けた車両センサ21及び経路情報取得部22を、駐車支援装置3に設ける等、
図1とは回路の配置構成を変えた駐車支援装置としてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態においては、駐車位置情報に基づいて地図データ上での駐車領域ER1の外郭形状等を駐車領域解析部38によって解析し、地図データ上における駐車領域ER1の駐車目標地点Gの位置と、駐車領域ER1の進入口E1の位置と、駐車領域ER1の駐車基準線CA2の位置と、当該駐車基準線CA2の延線方向(駐車基準線CA2の向き)とを駐車領域解析部38で特定した結果を駐車領域解析情報とした場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、駐車領域解析部38は、地図データ等を解析することなく、予め特定された駐車目標地点Gの位置と、駐車領域ER1の進入口E1の位置と、駐車領域ER1の駐車基準線CA2の位置と、当該駐車基準線CA2の延線方向(駐車基準線CA2の向き)とを、駐車領域解析情報として、車両制御装置2や、その他外部の装置から取得するようにしてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態においては、向き制御部33により向き制御用の車両制御信号を生成して車両制御装置2に出力した後に、位置制御部34により位置制御用の車両制御信号を生成し、当該位置制御用の車両制御信号を車両制御装置2に出力した後に、進入制御部35により進入制御用の車両制御信号を生成する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、駐車支援装置3は、向き制御部33により向き制御用の車両制御信号を生成し、位置制御部34により位置制御用の車両制御信号を生成し、進入制御部35により進入制御用の車両制御信号を生成した後に、これら向き制御用の車両制御信号と位置制御用の車両制御信号と進入制御用の車両制御信号とを一括して車両制御装置2に出力するようにしてもよい。
【0101】
この場合、位置制御部34は、向き制御用の車両制御信号に基づいて車両1が移動したときの向き制御後地点Bと車両中心線CA1の位置及び向きを仮想的に求め、仮想的に求めたこれら情報に基づいて位置制御用の車両制御信号を生成する。また、進入制御部35は、位置制御用の車両制御信号に基づいて車両1が移動したときの位置制御後地点Cと車両中心線CA1の位置及び向きを仮想的に求め、仮想的に求めたこれら情報に基づいて進入制御用の車両制御信号を生成する。
【符号の説明】
【0102】
1 車両
2 車両制御装置
3 駐車支援装置
31 特定部
33 向き制御部
34 位置制御部
35 進入制御部