(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081085
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】経路算出装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B60W30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194543
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 政典
(72)【発明者】
【氏名】大橋 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 周佑
(72)【発明者】
【氏名】西村 伸哉
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD09
3D241CE04
(57)【要約】
【課題】ステアリング角度の急激な変化を抑制した緩やかな移動経路を算出することができる経路算出装置を提供する。
【解決手段】経路算出装置は、始点Sから中間点Hまでを結び、かつ複数の制御点T,U,E,Fで定義されるベジェ曲線を、始点Sから中間点Hまでの候補中間経路として算出した後、車両1の走行性能と駐車領域ER1とに関して予め定めた制約条件を、候補中間経路が満たすか否かを判定する。経路算出装置は、制約条件を満たした候補中間経路について、当該候補中間経路内に含む曲線の曲率最大値に関する評価値Jを算出し、得られた評価値Jに基づいて当該曲率最大値が最小となる候補中間経路を中間経路TP1として決定し、中間経路TP1と直線経路TP2とを、車両1の現在位置から駐車領域ER1までの車両1の移動経路TPとして算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が現在地点から駐車領域まで移動する際の移動経路を算出する経路算出装置であって、
前記駐車領域の駐車目標地点を通り前記駐車領域の長手方向に延びた前記車両の進入方向を示す直線状の駐車基準線を特定し、前記車両に対して予め定めた前記車両の基準点を通り前記車両の全長方向に沿った直線状の車両中心線を特定する特定部と、
前記特定部から得られた結果に基づいて、前記車両の現在地点を始点とし、前記駐車領域内の駐車目標地点を終点として、前記始点から前記終点までの前記車両の移動経路を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
前記特定部で得られた結果に基づいて、前記駐車基準線に沿って直線状に前進又は後進するだけで前記車両が前記駐車領域に進入できる地点として中間点を決定し、前記始点から前記中間点までの間で前記車両が移動可能な領域の中から1つ以上の制御点を設定し、
前記制御点に基づいて定義され、前記始点から前記中間点までを結んだベジェ曲線を、前記始点から前記中間点までの候補中間経路として算出し、
前記候補中間経路が、前記駐車領域への前記車両の駐車に関して予め定めた制約条件を満たすか否かを判断し、
前記制約条件を満たした前記候補中間経路について、前記候補中間経路内に含む曲線の曲率最大値を含む評価値を算出し、前記評価値が最小となる前記候補中間経路を中間経路として決定し、
前記中間経路と、前記中間点から前記終点までを直線で結んだ直線経路とを、前記車両の現在位置から前記駐車領域までの前記車両の移動経路として算出する、経路算出装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記始点から前記終点に向かう側に、前記始点から離れた前記車両中心線上の点と、前記終点から前記始点に向かう側に、前記中間点から離れた前記駐車基準線上の点とを、それぞれ前記制御点として設定して前記ベジェ曲線を算出する、請求項1に記載の経路算出装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記始点から前記終点に向かう側に、前記始点から離れた前記車両中心線上の点を第1制御点とし、
前記始点から前記終点に向かう側に、前記始点から前記第1制御点までの距離だけ前記第1制御点から離れた前記車両中心線上の点を第2制御点とし、
前記終点から前記始点に向かう側に、前記中間点から離れた前記駐車基準線上の点を第4制御点とし、
前記終点から前記始点に向かう側に、前記中間点から前記第4制御点までの距離だけ前記第4制御点から離れた前記駐車基準線上の点を第3制御点として設定し、
前記第1制御点、前記第2制御点、前記第3制御点及び前記第4制御点で定義される前記ベジェ曲線を算出する、請求項1に記載の経路算出装置。
【請求項4】
前記制約条件は、
前記車両の走行性能に関する制約条件として、前記候補中間経路内にある曲線の曲率最大値が、前記車両の向きを変えるステアリング角度の限界範囲内であることを定め、
前記駐車領域に関する制約条件として、前記車両が前記駐車領域に進入する際に前記駐車領域の境界に衝突しない条件を定める、請求項1に記載の経路算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者が運転操作を行わなくてもコンピュータによる制御により自動走行する自動運転車(以下、単に車両とも称する)の開発が進んでいる。このような車両では、車道からはみ出さずに目標経路に沿って自動的に走行する自動走行技術の他にも、予め決められた車庫(以下、駐車領域とも称する)に自動的に駐車させる自動駐車技術の開発も進んでいる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両が移動する始点から終点までを複数の領域に分割し、領域ごとに車両の移動経路を4次以上の多項式で表し、さらに各領域の接続点で曲率や曲率の変化量等が連続となる制約や、操舵角及び走行速度の上限制約、移動範囲の制約の下、始点から駐車場内の終点までの移動距離が最小となる車両の移動経路を求める方法が開示されている。また、特許文献2には、前進走行で車両を駐車領域に駐車させる自動駐車技術が開示されており、最小回転半径以上の2つの円弧を接続したS字カーブの移動経路を生成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/217315号
【特許文献2】特開2021-194962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、運転効率を重視し、車両の移動距離を最小にした移動経路を算出しており、車両の向きを変えるステアリング角度を急激に変化させるような移動経路になるおそれもある。また、特許文献2では、2つの円弧を組み合わせた移動経路であり、2つの円弧の接点で曲率が不連続となるため、2つの円弧の接点でステアリング角度を急激に変化させる必要がある。このように、車両のステアリング角度を急激に変化させる必要がある移動経路が算出されると、例えば、全長の長い車両を横幅が狭い駐車領域に正確に駐車させる必要がある場合、車両の制動性能や旋回性能によってはステアリング角度を急激に変化させても車両が移動経路から外れてしまうおそれもあり、車両を移動経路に沿って正確に移動し難い可能性もある。そのため、なるべくステアリング角度の急激な変化を抑制した緩やかな曲線でなる移動経路を算出することが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、ステアリング角度の急激な変化を抑制した緩やかな移動経路を算出することができる経路算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の経路算出装置は、車両が現在地点から駐車領域まで移動する際の移動経路を算出する経路算出装置であって、前記駐車領域の駐車目標地点を通り前記駐車領域の長手方向に延びた前記車両の進入方向を示す直線状の駐車基準線を特定し、前記車両に対して予め定めた前記車両の基準点を通り前記車両の全長方向に沿った直線状の車両中心線を特定する特定部と、前記特定部から得られた結果に基づいて、前記車両の現在地点を始点とし、前記駐車領域内の駐車目標地点を終点として、前記始点から前記終点までの前記車両の移動経路を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、前記特定部で得られた結果に基づいて、前記駐車基準線に沿って直線状に前進又は後進するだけで前記車両が前記駐車領域に進入できる地点として中間点を決定し、前記始点から前記中間点までの間で前記車両が移動可能な領域の中から1つ以上の制御点を設定し、前記制御点に基づいて定義され、前記始点から前記中間点までを結んだベジェ曲線を、前記始点から前記中間点までの候補中間経路として算出し、前記候補中間経路が、前記駐車領域への前記車両の駐車に関して予め定めた制約条件を満たすか否かを判断し、前記制約条件を満たした前記候補中間経路について、前記候補中間経路内に含む曲線の曲率最大値を含む評価値を算出し、前記評価値が最小となる前記候補中間経路を中間経路として決定し、前記中間経路と、前記中間点から前記終点までを直線で結んだ直線経路とを、前記車両の現在位置から前記駐車領域までの前記車両の移動経路として算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、始点から中間点を経由して終点まで移動する車両の移動経路として、車両のステアリング角度の急激な変化を抑制した緩やかな移動経路を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る経路算出装置を有する車両の回路構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)は、移動経路を算出する前の車両の初期状態を示す概略図であり、(b)は、算出された移動経路を示す概略図であり、(c)は、移動経路に沿って車両が駐車領域まで移動して駐車領域に駐車した駐車完了後の状態を示す概略図である。
【
図3】経路算出処理を説明するための概略図である。
【
図4】経路算出処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】(a)は、シミュレーションにより求めた移動経路を示す概略図であり、(b)は、(a)に示した移動経路に沿って車両を移動させる際のステアリング角度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面について本発明の一実施の形態を詳述する。以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(1)<本実施形態に係る経路算出装置の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る経路算出装置4が設けられる車両1には、車両制御装置2と駐車支援装置3とが設けられている。駐車支援装置3は、車両制御装置2を制御し、運転者による操作なしに自動で車両1の前進、後進、操舵及び停車を行わせることによって、予め決められた駐車領域に車両1を自動走行により駐車させる装置である。
【0012】
ここで、車両1としては、例えば、公道を走行する一般的な乗用車等の他に、工場敷地内を走行する、全長が長い産業用車両(大型キャリア)も適用することができる。車両1は、複数の車輪が配置されており、例えば、車両の前方に設けた車輪のステアリング角度(車両1の方向に対する車両1の車輪の向き)を変更可能な構成を備えている。ステアリング角度を適宜操作することで、車両1の車輪を傾けることで、車両1が前方又は後方に移動した場合に、車両1の向きを変えながら曲線状に前方又は後方に移動させることができる。
【0013】
また、本実施形態に係る車両1は、運転席に着座した運転手による、ハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダル等の操作によって走行が可能な構成を有するとともに、運転手による操作なしに、車両制御信号による車両制御装置2の制御に基づいて、予め定めた走行経路に従って駐車領域近傍まで移動する自動走行が可能な構成を有する。かかる構成に加えて、車両1は、駐車領域近傍まで移動すると、駐車支援装置3により車両制御装置2を制御し、運転手の操作なしに自動走行によって駐車領域に自動駐車される。
【0014】
始めに、車両1の走行を制御する車両制御装置2について説明する。車両制御装置2は、車両センサ21と経路情報取得部22とステアリング装置23とブレーキ装置24と車速制御装置25とを備えている。車両制御装置2は、車両センサ21で得られた検出結果や、経路情報取得部22で取得した駐車領域の位置情報等を駐車支援装置3に出力する。また、車両制御装置2は、駐車支援装置3から受け取った車両制御信号に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25が制御され、予め決められた駐車領域に車両1を自動走行により駐車させる。
【0015】
車両センサ21は、例えば、3軸加速度センサ(Gセンサ)やジャイロセンサ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ、車両1の現在位置を測位するGPS等の測位センサ、カメラ画像やミリ波レーダ、赤外線レーダ等により車両1から周囲の物体までの距離や方向を検出する物体検出センサ等の各種センサからなり、これら複数のセンサから得られた検出結果に基づいて、地図データ上における車両1の現在の位置及び向きを特定する。
【0016】
経路情報取得部22は、地図データ等を記憶しており、例えば、運転手による入力操作等によって、地図データ上で駐車領域の位置を示す駐車位置情報が入力されると、車両1が位置する現地点を出発地点として、当該出発地点から駐車領域近傍までの経路を算出し、出発地点から駐車領域近傍までの経路情報を取得する。これにより、車両制御装置2は、経路情報に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25を制御し、経路情報で示した走行経路に沿って現地点から駐車領域近傍まで車両1を自動走行させる。
【0017】
ステアリング装置23は、運転席に設けられたハンドルの操作や、自動走行に係る制御に応じて車両1に設けられた車輪のステアリング角度を変え、車両1の進行方向を変えさせる。ステアリング装置23は、例えば、前方に設けられた車輪のステアリング角度を変えることで、直進の他に、車両1の向きを変えながら曲線状に移動させることができる。
【0018】
ブレーキ装置24は、車両1の車輪に制動力を与えるための装置であり、走行している車両1の車輪に対して適切なタイミングで適切な強度の制動力を与えることで、車両1の移動速度を調整したり、車両1を所望の地点に停止させる。
【0019】
車速制御装置25は、図示しない内燃機関や電動モータ等の駆動装置から与えられる駆動力を制御し、車両1を前方又は後方に向けて所定の走行速度で走行させる。
【0020】
駐車支援装置3は、車両1が現在地点から駐車領域ER1まで移動する際の移動経路TPを算出する機能部である。駐車支援装置3は、自動走行する際に、後述する経路算出装置4で移動経路を算出し、算出した移動経路に従って車両1を移動させるように、ステアリング装置23を制御して車輪のステアリング角度を変え、ブレーキ装置24を制御して車両1の車輪に制動力を与え、車速制御装置25を制御して車両1の走行速度を調節することで、駐車領域の最適な位置に車両1を自動駐車させる。
【0021】
駐車支援装置3は、経路算出装置4と車両制御信号生成部34とを備えている。経路算出装置4は、特定部31と記憶部32と算出部33とを備えており、後述する経路算出処理を実行することにより、
図2(a)及び(b)に示すように、駐車領域ER1の近傍に配置した車両1を駐車領域ER1まで移動させる移動経路TPを算出する。これにより、駐車支援装置3は、車両制御信号生成部34で生成した車両制御信号により車両1を制御することで、
図2(c)に示すように、車両1を自動走行により、経路算出装置4で算出した移動経路TPに沿って移動させ、駐車領域ER1に自動駐車させることができる。
【0022】
ここで、
図2(a)~(c)において、CA1は、車両1に対して予め定めた当該車両1の車両基準点Oを通り、かつ、当該車両1の全長方向に沿った(好ましくは、車両1の幅方向の中央を貫通する)直線状の車両中心線を示している。この車両中心線CA1は、車両1の基準点位置と車両1の全長方向との関係を示すものである。CA2は、車両1を駐車させる駐車領域ER1内の駐車目標地点である終点Gを通り、かつ、当該駐車領域ER1の長手方向に延びた直線状の駐車基準線を示している。この駐車基準線CA2は、駐車領域ER1の駐車目標地点(以下、単に終点と称する)Gに代表される当該駐車領域ER1への車両1の進入方向を示すものである。なお、
図2におけるx軸は、駐車領域ER1の駐車基準線CA2に平行な方向を示しており、y軸は、駐車基準線方向であるx軸方向と直交する方向を示しており、駐車領域ER1の幅方向に対応する。
【0023】
また、
図2(a)に示す点Sは、車両1が駐車領域ER1に自動駐車を開始する前の状態(すなわち、予め定めた走行経路に従って駐車領域ER1近傍まで自動走行、又は、運転手による手動走行で移動してきた後の状態)のときに、車両基準点Oが位置する始点を示す。ここで、車両の基準点Oとは、車両の位置を特定する際に、基準位置として用いる点であり、固定された車輪間の中央とすると計算が容易であるため、車両1が一般的な乗用車である場合には左右の後輪間の中央となり、車両1が大型キャリアである場合には車両の中央になる。
図2(b)及び(c)に示す点Hは、車両1が始点Sから終点Gに向けて移動してゆく際に車両基準点Oが通過する地点であり、終点Gから延びる駐車基準線CA2上に位置する中間点を示す。
【0024】
中間点Hは、駐車基準線CA2に沿って直線状に前進又は後進するだけで、車両1が駐車領域ER1に進入できる地点として決定される。より具体的には、中間点Hは、車両1が始点Sから終点Gに向かう際に、車両1の車両中心線CA1が駐車基準線CA2上に位置して車両1が駐車領域ER1の進入口と正対する位置である。ここで、正対とは、車両基準点Oが駐車基準線CA2上に位置し、かつ、車両1の全長方向と駐車基準線CA2の方向とが一致している状態を意味する。 中間点Hは、終点Gに近い地点に設定した方が、移動経路TPの曲率を小さくすることができ、移動経路TPを車両1のステアリング角度の急激な変化を抑制できる経路にすることができるため、好ましい。その一方で、中間点Hが終点Gに近すぎると、中間点Hから終点Gに車両1が移動する際に、終点Gに合うように車両1の進行を微修正する必要が生じた場合に、車両1が駐車領域ER1の幅方向y(駐車基準線方向xと直交する方向)の境界に衝突する危険が大きくなってしまう。そのため、経路算出装置4は、後述する経路算出処理によって始点Sから終点Gまでの移動経路TPを算出する際には、中間点Hの位置、言い換えると、中間点Hと終点Gとの直線距離HG[m]を適切に設定することが望ましい。
【0025】
経路算出装置4は、経路算出処理を実行することにより、車両基準点Oの現在地点である始点Sから中間点Hまでを結んだ曲線が緩やかな移動経路(以下、中間経路と称する)TP1と、中間点Hから終点Gまでを結んだ直線に延びる移動経路(以下、直線経路と称する)TP2とでなる移動経路TPを算出する。以下、経路算出装置4の各構成について順番に説明する。
【0026】
特定部31は、駐車領域ER1の終点(ここでは中心点)Gを通り駐車領域ER1の長手方向に延びた車両1の進入方向を示す直線状の駐車基準線CA2を特定し、車両基準点Oを通り車両1の全長方向に沿った直線状の車両中心線CA1を特定する機能部である。より具体的には、特定部31は、駐車領域解析部38と車両位置解析部39とを備え、車両1を駐車領域ER1に自動駐車させる際に必要となる各種情報を取得する。この場合、駐車領域解析部38は、例えば、地図データ上で駐車領域ER1の位置を示した駐車位置情報を、車両制御装置2の車両センサ21や経路情報取得部22から受け取る。
【0027】
駐車領域解析部38は、駐車位置情報に基づいて地図データ上での駐車領域ER1の外郭形状等を解析し、地図データ上における駐車領域ER1の終点G(駐車領域ER1の略中央の位置に設定され、車両1の中心位置が到達すべき目標位置となる地点)の位置と、駐車領域ER1の駐車基準線CA2の位置と、を特定し、得られた結果を駐車領域解析情報として、算出部33に出力する。
【0028】
車両位置解析部39は、車両制御装置2の車両センサ21で得られた検出結果を当該車両センサ21から取得し、当該検出結果に基づいて、地図データ上における車両1の現在位置、車両1に対して予め定めた車両基準点Oの現在位置、及び、当該車両1の車両中心線CA1の現在位置を特定し、得られた結果を車両位置解析情報として、算出部33に出力する。
【0029】
記憶部32は、車両制御装置2の車両センサ21や経路情報取得部22から受け取った各種情報の他、駐車領域解析部38で得られた駐車領域解析情報、車両位置解析部39で得られた車両位置解析情報、算出部33で得られた算出結果等を記憶する。また、記憶部32には、中間経路TP1を算出する際に用いる各種演算式や、地図データ上で後述する直線距離HG[m]の値を選択する選択手法、地図データ上で車両1が移動する領域内から後述する制御点を選択する選択手法、移動経路TPを求める際に使用する制約条件(後述する)等も記憶されており、必要に応じてこれら情報を算出部33に出力する。
【0030】
算出部33は、特定部31から得られた結果に基づいて、車両1の現在地点を始点Sとし、駐車領域ER1の中心にある駐車目標地点を終点Gとして、始点Sから終点Gまでの車両1の移動経路TPを算出する機能部である。より具体的には、算出部33は、駐車領域解析部38で得られた駐車領域解析情報と、車両位置解析部39で得られた現在の車両位置解析情報とを特定部31から受け取ると、駐車領域解析情報と車両位置解析情報とに基づいて、経路算出処理を実行することにより始点Sから中間点Hを通過して終点Gまでの移動経路TPを算出する。
【0031】
この場合、算出部33は、駐車領域解析情報と車両位置解析情報とに基づいて、地図データの2次元平面上で始点S及び終点Gの座標を特定すると、予め定めておいた直線距離HG[m]に基づいて、終点Gから始点Sに向かう側に、終点Gから直線距離HG[m]以上離れた地点を駐車基準線CA2上に選択することで、その点を中間点Hとして決定する。なお、本実施形態では、説明を容易にするため、
図2に示すように、x軸を駐車基準線CA2の方向、y軸を駐車基準線CA2と直交する方向とした座標系で説明する。
【0032】
算出部33には、例えば、駐車基準線CA2上で終点Gから最も近くに中間点Hを選択可能な最小直線距離[m]と、駐車基準線CA2上で終点Gから最も離れて中間点Hを選択可能な最大直線距離[m]とが予め設定されており、最小直線距離[m]から最大直線距離[m]までの範囲の中から、終点Gから中間点Hまでの直線距離HG[m]を選択し、当該直線距離HG[m]から中間点Hの座標を特定する。なお、最小直線距離[m]から最大直線距離[m]までの範囲で直線距離HG[m]を選択する方法としては、例えば、予め定めた単位距離[m]を用い、終点Gから近い最小直線距離[m]から単位距離[m]を順次加算してゆき、終点Gから次第に単位距離[m]ごとに長くなる直線距離HG[m]を最大直線距離[m]まで順番に設定し、その中から最適な直線距離HG[m]を選択する。
【0033】
算出部33は、選択した直線距離HG[m]に基づいて中間点Hの位置を決定すると、地図データの2次元平面上において、始点Sから中間点Hまでの間で車両1が移動可能な領域に1つ以上の制御点を設定する。本実施形態では、算出部33によって制御点を設定する際は、例えば、地図データの2次元平面上で始点Sから中間点Hまで車両1が移動可能な領域の中から、予め設定されている個数の制御点P1,P2,…を選択する。
【0034】
具体的には、算出部33は、地図データの2次元平面上で始点Sから中間点Hまでの間で車両1が移動可能な領域を認識し、当該領域をメッシュ状に等間隔に区分けし、区分けした区画の端点を、制御点P1,P2,…が選択可能な候補箇所とし、これら候補箇所の中から定められた数の制御点P1,P2,…を選択する。なお、1区画において制御点P1,P2,…を選択する候補箇所としては、例えば、車両1の始点Sと中間点Hを対角線とした長方形よりy軸方向に少し広い長方形を車両1が移動可能な領域として、その領域を等間隔に複数領域に区分けして、それら各領域の端点を制御点P1,P2,…の候補箇所とすればよい。
【0035】
算出部33は、始点Sの座標と、中間点Hを特定する直線距離HG[m]の値と、制御点P1,P2,…の座標とに基づいて、始点Sから中間点Hまでを結び、かつ制御点P1,P2,…に基づいて定義されるベジェ曲線の座標集合{(xi,yi)}を、下記の式(1)に示すようなベジェ曲線関数f(・)を用いて算出する。算出部33は、離散的な座標集合{(xi,yi)}で表されるベジェ曲線を候補中間経路とする。
【0036】
{(xi,yi)} = f(S,P1, P2,…,HG) …(1)
【0037】
算出部33は、候補中間経路を表す座標集合{(xi,yi)}を引数として、例えば、車両1が駐車領域ER1の左右の境界と衝突しない条件を定めた衝突制約条件(第1制約条件とも称する)と、候補中間経路に含まれる曲線の曲率最大値に関する条件を定めた曲率最大値制約条件(第2制約条件とも称する)とを満足しているか否かを、下記の式(2)に示すような制約式g(・)で確認する。
【0038】
g({(xi,yi)})≦ 0 …(2)
【0039】
算出部33は、候補中間経路が上記の式(2)に示す制約条件を満たしていると判断すると、候補中間経路を表す座標集合{(xi,yi)}を引数として、下記の式(3)に示すような評価関数h(・)を用いて、候補中間経路内の良否を表す評価値Jを算出する。候補中間経路の良否を表す評価項目が複数存在する場合には、それらの評価項目の重み付き和を評価値Jとすることができる。例えば、本実施形態では、算出部33は、ステアリング操作の少ない経路にするための評価項目として曲率の最大値、駐車領域ER1の左右の境界に車両1が衝突する危険性を少なくするための評価項目として駐車領域ER1内の候補中間経路と駐車基準線CA2との距離の最大値を用い、下記の式(3)によって、候補中間経路を表す座標集合{(xi,yi)}を引数として計算し、それらの評価項目の重み付き和を評価値Jとしている。
【0040】
J = h({xi,yi}) …(3)
【0041】
その後、算出部33は、地図データの2次元平面上で、選択可能な直線距離HG[m]と、始点Sから中間点Hまで車両1が移動可能な領域内からその他選択可能な制御点P1,P2,…とを順番に選択し、同様にして、始点Sの座標と、新たに選択した直線距離HG[m]の値と、新たに選択した制御点P1,P2,…の座標とに基づいて、新たな制御点P1,P2,…で定義されるベジェ曲線の座標集合{(xi,yi)}を、上記の式(1)に示したベジェ曲線関数f(・)を用いて算出し、新たに算出したベジェ曲線を次の候補中間経路とする。
【0042】
算出部33は、新たに得た候補中間経路を表す座標集合{(xi,yi)}を引数として、上記の式(2)に示した制約式g(・)を用いて、新たに得た候補中間経路に関して制約条件(ここでは衝突制約条件及び曲率最大値制約条件)を満足しているか否かを判断する。
【0043】
そして、算出部33は、上記の式(2)で表される制約条件を満たしている、新たに得た候補中間経路について、当該候補中間経路を表す座標集合{(xi,yi)}を引数として、上記の式(3)に示す評価関数h(・)を用いて、新たな候補中間経路の良否を評価する評価値Jを算出する。
【0044】
このようにして算出部33は、駐車基準線CA2上で選択可能な終点Gからの直線距離HG[m]と、各直線距離HG[m]で変わる中間点Hの位置ごとに選択可能な2次元平面上での制御点P1,P2,…とについてそれぞれ未探索の候補が無くなるまで、(i)候補中間経路を表す座標集合{(xi,yi)}の算出処理と、(ii)当該候補中間経路の制約条件を満たすか否かの判断処理と、(iii)制約条件を満たした候補中間経路の評価値Jの算出処理との一連の処理を実行する。
【0045】
算出部33は、得られた複数の評価値Jに基づいて、評価値Jが最小の候補中間経路を選択し、この候補中間経路を、始点Sから中間点Hまで車両1が移動する最終的な中間経路TP1として決定し、中間経路TP1を表す座標集合と、当該中間経路TP1を算出した中間点Hから終点Gまでの直線に延びる直線経路TP2を表す座標集合とを、車両1が移動する移動経路TPとして記憶部32に記憶させるとともに、当該移動経路TPを車両制御信号生成部34に出力する。
【0046】
車両制御信号生成部34は、経路算出装置4から受け取った移動経路TPの座標集合に基づいて、当該移動経路TPに沿って始点Sから中間点Hを経由して終点Gまで車両1を移動させる際のステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度等を過去のデータから求め、これを自動駐車用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。
【0047】
これにより、車両1は、車両制御信号生成部34から受け取った自動駐車用の車両制御信号に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25を制御し、車両1の車輪のステアリング角度を変えて前進又は後進することで、駐車領域ER1の進入口と車両1が正対する中間点Hまで移動する。その後、車両1は、自動駐車用の車両制御信号に基づいて、ステアリング装置23、ブレーキ装置24及び車速制御装置25を制御し、中間点Hから駐車基準線CA2に沿ってほぼ直線的に当該駐車領域ER1の終点Gに向かって進み、
図2(c)に示すように、車両基準点Oが終点Gに位置するように当該駐車領域ER1内に駐車する。
【0048】
(2)<経路算出処理>
次に、
図3を用いて、上述した経路算出処理について詳細を説明する。
図3では、点T,U,E,Fが、上述した制御点P1,P2,…に相当しており、算出部33が4つの点T,U,E,Fを制御点として選択した場合を例に経路算出処理について説明する。また、ここでは、点Tを第1制御点Tと称し、点Uを第2制御点Uと称し、点Eを第3制御点Eと称し、点Fを第4制御点Fと称し、始点Sから終点Gに向かう制御点として、第1制御点、第2制御点、第3制御点及び第4制御点を順に設定する例について説明する。これら第1制御点T、第2制御点U、第3制御点E及び第4制御点Fを特に区別しない場合には、単に制御点T,U,E,Fと称して説明する。
【0049】
第1制御点Tは、始点Sから終点Gに向かう側に、始点Sから距離ST[m]離れた車両中心線CA1上の点であり、第2制御点Uは、始点Sから終点Gに向かう側に、始点Sから第1制御点Tまでの距離ST[m]だけ第1制御点Tから離れた車両中心線CA1上の点である。
【0050】
一方、第4制御点Fは、終点Gから始点Sに向かう側に、中間点Hから距離FH[m]離れた駐車基準線CA2上の点であり、第3制御点Eは、終点Gから始点Sに向かう側に、中間点Hから第4制御点Fまでの距離FH[m]だけ第4制御点Fから離れた駐車基準線CA2上の点である。
【0051】
算出部33は、上記の式(1)に相当する、下記の式(1)´に示すように、始点Sの座標及び制御点T,U,E,Fの座標を特定する距離ST,FH[m]と、中間点Hの座標を特定する直線距離HG[m]とを引数として、候補中間経路を表す座標集合{(xi,yi)}を算出する。
【0052】
{(xi,yi)} = f(ST,FH,HG) …(1)´
【0053】
算出部33では、上記の式(1)´を用いることで、決定変数が距離ST,FH[m]と、直線距離HG[m]の3つのみとなり、候補中間経路を算出する時間の短縮化を図ることができる。また、算出部33では、始点Sと第1制御点Tとの距離と、第1制御点Tと第2制御点Uとの距離とをいずれも距離ST[m]として等しくし、かつ、第4制御点Fと中間点Hとの距離と、第3制御点Eと第4制御点Fとの距離とをいずれも距離FH[m]として等しくすることで、始点Sでの曲率と中間点での曲率とを連続的にすることができる。このようになる理由を以下説明する。一般的に制御点の数がN点のベジェ曲線は下記の式(4)のように表される。
【0054】
【0055】
上記の式(4)のP(t)はベジェ曲線であり、tは、0~1までの値であって、t=0は始点Sを表し、t=1は中間点Hを表し、tを0~1まで徐々に変えることで、始点Sから中間点Hまでの曲線が求まることを表す。P
iは、始点Sの座標と、制御点T,U,E,Fの座標と、中間点Hの座標と、である。Nは、ベジェ曲線を決める始点Sと制御点T,U,E,Fと中間点Hとの点の合計個数を表している。
図4の例では、始点Sと制御点T,U,E,Fと中間点Hとの6点でベジェ曲線が決まるため、N=6となる。
【0056】
上記の式(4)中、下記の式(4)´は、(N-1)個の中から、iを選ぶ組合せの数である。実際のソフトウェアプログラムでは、tの値は0~1までの等間隔の離散値とし(例えば、t={0, 0.01, 0.02,…,1})、このtに対応する離散的な座標集合{(xi,yi)}={(x(0),y(0)),(x(0.01),y(0.01)),…} を算出し、候補中間経路を表す座標集合とする。
【0057】
【0058】
図3に示すように、ベジェ曲線は、始点Sと制御点T,U,E,Fと中間点Hとの6点で決まり、N=6とした場合、上記の式(4)は下記の式(5)のように表される。
【0059】
【0060】
上記の式(5)の1階微分と2階微分とを求めると、それぞれ下記の式(6)と式(7)のように表される。
【0061】
【0062】
【0063】
始点Sでのベジェ曲線の1階微分と2階微分の値を求めると、下記の式(8)のようになる。
【0064】
【0065】
従って、第1制御点Tを始点Sでの車両1の進行方向の車両中心線CA1上に取れば、上記の式(8)の1階微分の式より、ベジェ曲線の始点Sにおける接線は車両1の進行方向と一致する。さらに、第2制御点Uも車両1の進行方向の車両中心線CA1上に取り、第1制御点Tと第2制御点Uとの距離を、始点Sと第1制御点Tとの距離ST[m]と等しい距離ST[m]にすれば、始点Sでのベジェ曲線の2階微分の値がゼロになるため、ベジェ曲線の曲率もゼロとなる。これにより、算出部33は、車両1において始点Sでステアリング角度を変える必要がなく、車両1を進行方向に移動させるに従って徐々にステアリング角度を変えてゆくような候補中間経路を算出することができる。
【0066】
また、中間点Hでも同様に、中間点Hを基準にして第4制御点Fと第3制御点Eとを駐車基準線CA2上で終点Gから離れる方向に取り、第3制御点Eと第4制御点Fとの距離を、中間点Hと第4制御点Fとの距離FH[m]と等しい距離FH[m]にすれば、ペジェ曲線の中間点Hにおける接線が駐車基準線CA2の方向を向き、かつ、中間点Hでのベジェ曲線の2階微分の値がゼロになるため、ベジェ曲線の曲率もゼロとなる。これにより、算出部33は、車両1において中間点Hでステアリング角度を変える必要がなく、車両1を中間点Hからそのまま真っ直ぐ進めさせれば終点Gにたどり着ける候補中間経路を算出することができる。
【0067】
算出部33は、上記のようにして候補中間経路を算出すると、当該候補中間経路を表す座標集合を引数として、上記の式(2)に示すような制約式g(・)により制約条件を満たすか否かを判断する。上記の式(2)で表される第1制約式は、例えば、車両1が有するステアリング角度には上限があるため、候補中間経路に含む曲線の曲率最大値が、車両1が有するステアリング角度の限度範囲内であることを制約する制約式となる。候補中間経路に含まれる曲線の曲率κ(t)は、候補中間経路の1階微分と2階微分より、下記の式(9)と式(10)から計算できる。
【0068】
【0069】
【0070】
従って、算出部33は、上記の式(5)より算出した候補中間経路の座標集合を用いて上記の式(9)及び式(10)から候補中間経路の曲率κ(t)を算出し、算出した曲率κ(t)の絶対値が予め設定した、車両1が有するステアリング角度の限度値maxΚ以下であるか否かを、下記の式(11)で確認する。
【0071】
【0072】
また、例えば、駐車領域ER1には幅方向yに境界があることから、車両1が駐車領域ER1の幅方向yの境界に衝突せずに駐車される必要がある。上記の式(2)で表される第2制約式は、下記の式(12)に示すように、車両1の先頭が駐車領域ER1内に進入した際(式(12)の左辺第2項)、先頭のy座標と駐車基準線CA2との距離(式(12)の右辺第1項)に上限値を制約する制約式である。
【0073】
【0074】
上記の式(12)において、Lpは駐車領域ER1の長手方向の長さであり、(xg,yg)は終点Gの座標であり、ここでは、駐車領域のER1の中心としている。また、bool(・)はカッコ内の条件式が真であれば1、偽であれば0を返す関数である(
図2に示すように、駐車基準線CA2とx軸方向は並行としている)。また、Lcは車両1の長手方向の長さ(全長)、θ(t)は車両1の向きであり、車両基準点Oは車両1の中心としている。maxYは車両1の先頭と駐車基準線CA2との距離の上限値であり、駐車領域ER1の横幅と車両1の横幅から算出される値である。さらに、上記の式(12)に含まれる下記の式(13)の変数は、車両1の端部(先頭)の座標を表している。すなわち、上記の式(12)では、車両1の先頭が駐車領域ER1の幅方向yの境界に衝突しないようにする制約としている。
【0075】
【0076】
算出部33は、上記の式(11)及び式(12)の制約式を満たした候補中間経路のうち、当該候補中間経路に含まれる曲線の曲率最大値max(κ(t))を含む評価値Jが最も小さい候補中間経路を、下記の式(14)に示す評価関数に基づいて選定する。算出部33は、下記の式(14)から算出される評価値Jが最も小さい候補中間経路を、曲率最大値max(κ(t))が最も小さくステアリング角度の急激な変化を抑制した緩やかな中間経路TP1であると決定する。
【0077】
【0078】
ここで、駐車領域ER1内では、なるべく車両1が駐車基準線CA2に近い方が、駐車領域ER1の幅方向yの境界に車両1が衝突する可能性が低くなる。そこで、上記の式(14)では、曲率最大値max(κ(t))と、上記の式(14)の左辺の第2項の最大値を重みW1,W2を掛けて合計した値を評価値Jとしている。
【0079】
算出部33は、このようにして始点Sから中間点Hまでを結んだ中間経路TP1を算出し、得られた中間経路TP1と、当該中間点Hから終点Gまでを結んだ直線に延びる直線経路TP2とを、車両1の現在位置から駐車領域ER1までの車両1の移動経路TPとして算出し、当該移動経路TPの座標集合を車両制御信号生成部34に出力する。
【0080】
車両制御信号生成部34は、経路算出装置4から取得した移動経路TPに沿って車両1を移動させてゆき車両基準点Oが終点Gに合うように車両1を終点Gに停止させる、ステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度を求め、これらを自動駐車用の車両制御信号として、車両制御装置2に出力して車両1の移動を制御する。なお、移動経路TPに沿って始点Sから中間点Hを介して終点Gまで車両1を移動させる際の走行速度及びブレーキ操作は、例えば、車両1の中間点Hや終点Gまでの移動距離や、駐車領域ER1に進入する際のステアリング角度の値、走行速度、ブレーキ操作との関係を予め規定した操作情報を記憶しておくことで、車両制御信号生成部34によって、車両1の移動距離やステアリング角度に基づいて当該操作情報から算出することができる。
【0081】
(3)<本実施形態に係る経路算出処理手順>
次に、
図4に示すフローチャートを用いて、上述した経路算出処理について以下説明する。経路算出装置4は、車両センサ21から受け取った検出結果に基づいて、車両1が駐車領域ER1の近傍に移動したと判断すると、経路算出処理を開始し、開始ステップからステップS1に移る。
【0082】
ステップS1において、算出部33は、特定部31から受け取った駐車領域解析情報と車両位置解析情報とに基づいて、制御点P1,P2,…の座標と、中間点Hの座標を特定する直線距離HG(
図4中、単に距離HGと表記)[m]の値とについて初期値を設定する。この場合、算出部33は、初期値の設定として、駐車領域解析情報から取得した地図データの2次元平面上において、駐車基準線CA2上で終点Gから直線距離HG[m]を設定可能な最小直線距離[m]及び最大直線距離[m]の範囲の中から、例えば、最小直線距離[m]を直線距離HG[m]として選択して、選択した最小直線距離[m]を終点Gからの直線距離HG[m]の初期値として設定する。
【0083】
また算出部33は、初期値の設定として、地図データの2次元平面上で、始点Sから、直線距離HG[m]で決定される中間点Hまでの間で車両1が移動可能な領域を、メッシュ状に等間隔に区分けし、区分けされた区画の端点を、制御点P1,P2,…を選択可能な候補箇所として設定する。そして、算出部33は、これら候補箇所の中から予め定められた数の制御点P1,P2,…を任意に選択し、最初に選択した制御点P1,P2,…の座標を初期値として設定する。
【0084】
ステップS2において、算出部33は、始点Sの座標と、ステップS1で初期値として選択した制御点P1,P2,…の座標と、同じく初期値として選択した直線距離HG[m]の値とを用い、上記の式(1)に示すベジェ曲線関数f(・)に基づいて、始点Sから中間点Hまでを結び、かつ制御点P1,P2,…で定義されるベジェ曲線の座標集合{(xi,yi)}を算出し、次のステップS3に移る。
【0085】
ステップS3において、算出部33は、候補中間経路として算出したベジェ曲線が上記の式(2)に示すような制約条件を満たすか否かを判断する。ステップS3において、肯定結果が得られると、このことは、ベジェ曲線が上記式(2)に示すような制約条件を満たしていること、すなわち、候補中間経路であるベジェ曲線内にある曲線の曲率最大値が車両1のステアリング角度の限界範囲内であり、かつ、車両1が駐車領域ER1に進入する際に駐車領域ER1の左右の境界に衝突しない条件を満たしていることを表しており、このとき算出部33は、次のステップS4に移る。
【0086】
ステップS4において、算出部33は、上記の式(3)に基づいて、候補中間経路として算出したベジェ曲線に関して評価値Jを算出し、次のステップS5に移る。
ステップS5において、算出部33は、既に評価値Jが算出されていれば、他の評価値Jと比較して、ステップS4で算出した評価値Jが最小値であるか否かを判断する。この場合、算出部33は、これまでに評価値Jが算出されていないことから、初期値に基づいてステップS4で算出した評価値Jを最小値であるとして肯定結果を得、次のステップS6に移る。ステップS6において、算出部33は、ステップS5で最小値と判断された評価値Jと、当該評価値Jを求めたベジェ曲線の座標集合{(xi,yi)}とを最適値として記憶部32に記憶させ、次のステップS7に移る。
【0087】
一方、上述したステップS3で否定結果が得られると、このことは、ベジェ曲線が上記の式(2)に示すような制約条件を満たしていないこと、すなわち、候補中間経路であるベジェ曲線内にある曲線の曲率最大値が車両1のステアリング角度の限界範囲を超えているか、又は、車両1が駐車領域ER1に進入する際に駐車領域ER1の左右の境界に衝突してしまう可能性が高いことを表しており、このとき算出部33は、次のステップS7に移る。
【0088】
また、上述したステップS5において否定結果が得られると、このことは、ステップS4で算出した評価値Jが最小値でないこと、すなわち、既に最小値の他の評価値Jが記憶部32に記憶されていることを表しており、このとき、算出部33は、ステップS4で算出した評価値Jと、該評価値Jを求めたベジェ曲線の座標集合{(xi,yi)}とを最適値としては記憶部32に記憶させずに、次のステップS7に移る。
【0089】
ステップS7において、算出部33は、制御点P1,P2,…と、中間点Hの座標を特定する直線距離HG[m]の値とについて、地図データの2次元平面上で選択可能な候補箇所でベジェ曲線を算出していない未探索の候補があるか否かを判断する。ステップS7で肯定結果が得られると、このことは、制御点P1,P2,…の座標と、中間点Hの座標を特定する直線距離HG[m]の値とのうち、いずれかに地図データの2次元平面上にベジェ曲線を算出していない未探索の候補があることを表しており、このとき、算出部33は、次のステップS8に移る。
【0090】
算出部33は、例えば、地図データの2次元平面上で制御点P1,P2,…を選択可能な候補箇所のうち、ベジェ曲線を算出していない未探索の制御点P1,P2,…の座標があるとステップS7で判断した場合には、ステップS8において当該未探索の制御点P1,P2,…の座標を選択する。一方、算出部33は、例えば、駐車基準線CA2上で終点Gから最小直線距離[m]以上、最大直線距離[m]以下の範囲を区分けした単位距離[m]のうち、ベジェ曲線を算出していない未探索の直線距離HG[m]の値があるとステップS7で判断した場合には、ステップS8において未探索の直線距離HG[m]の値を選択する。
【0091】
算出部33は、ステップS8において、未探索の制御点P1,P2,…の座標と、未探索の直線距離HG[m]の値との中から、順番に制御点P1,P2,…の座標又は直線距離HG[m]の値を選択すると、再び上述したステップS2に戻り、選択した未探索の制御点P1,P2,…の座標や、選択した未探索の直線距離HG[m]の値とを用い、上記の式(1)に示すベジェ曲線関数f(・)に基づいて、始点Sから中間点Hまで制御点P1,P2,…で定義されるベジェ曲線の座標集合{(xi,yi)}を算出し、次のステップS3に移る。
【0092】
なお、未探索の制御点P1,P2,…の座標と、未探索の直線距離HG[m]の値との中から、順番に制御点P1,P2,…の座標又は直線距離HG[m]の値を選択する方法としては、例えば、始めに直線距離HG[m]の値を最小直線距離[m]として、当該直線距離HG[m]の値を最小直線距離[m]としたときに、地図データの2次元平面上で制御点P1,P2,…を選択可能な候補箇所を順番に選択し、直線距離HG[m]の値を最小直線距離[m]としたときに、選択可能な制御点P1,P2,…でそれぞれ定義される複数のベジェ曲線を算出するようにしてもよい。
【0093】
この場合、算出部33は、直線距離HG[m]の値を最小直線距離[m]としたときに地図データの2次元平面上で制御点P1,P2,…を選択可能な候補箇所全てについてベジェ曲線を算出し終えると、次に、最小直線距離[m]に単位距離[m]を加算した距離を直線距離HG[m]として選択し、地図データの2次元平面上で制御点P1,P2,…を選択可能な候補箇所を選択してベジェ曲線を算出してゆく。
【0094】
また、その他、未探索の制御点P1,P2,…の座標と、未探索の直線距離HG[m]の値との中から、順番に制御点P1,P2,…の座標又は直線距離HG[m]の値を選択する方法としては、未探索の制御点P1,P2,…の座標と、未探索の直線距離HG[m]の値との中から、所定の回数だけ任意に選択してゆき、任意に選択した直線距離HG[m]と制御点P1,P2,…を用いてベジェ曲線を算出するようにしてもよい。
【0095】
このようにして、算出部33は、制御点P1,P2,…の座標と直線距離HG[m]の値とについて未探索の候補がなくなり、ステップS7において否定結果が得られるまで、上述したステップS2、S3、S4、S5、S6、S7及びS8の処理を繰り返す。
【0096】
一方、算出部33は、制御点P1,P2,…の座標と直線距離HG[m]の値とについて未探索の候補がなくなり、ステップS7において否定結果が得られると、次のステップS9に移り、最適値として記憶部32に記憶した、始点Sから中間点Hまでのベジェ曲線である候補中間経路を中間経路TP1として、当該中間経路TP1と、中間経路TP1の中間点Hから終点Gまでの直線経路TP2とを移動経路TPとして算出して、上述した経路算出処理を終了する。
【0097】
これにより駐車支援装置3では、経路算出装置4により算出した移動経路TPの座標集合を車両制御信号生成部34に出力し、車両制御信号生成部34によって当該移動経路TPに沿って車両1を移動させるためのステアリング角度、ブレーキ操作及び走行速度を求め、これらを自動駐車用の車両制御信号として車両制御装置2に出力する。車両1は、自動駐車用の車両制御信号に基づいて車両制御装置2を制御し、移動経路TPに従ってステアリング角度を調整させながら中間点Hに移動し、駐車基準線CA2に沿って中間点Hから終点Gまで移動し、当該終点Gに停車することができる。
【0098】
(4)<作用及び効果>
以上の構成において、経路算出装置4は、駐車領域ER1内に規定した終点Gを通り駐車領域ER1の長手方向に延びた車両1の進入方向を示す直線状の駐車基準線CA2を特定し、車両基準点Oを通り車両1の全長方向に沿った直線状の車両中心線CA1を特定する。また、経路算出装置4は、車両1を駐車基準線CA2に沿って直線状に前進又は後進させ、駐車領域ER1に進入可能な中間点Hから終点Gまでの直線距離HG[m]を選択することで中間点Hの位置を決め、始点Sから当該中間点Hまで車両1が移動可能な領域の中から複数の制御点P1,P2,…を設定する。
【0099】
経路算出装置4は、始点Sから中間点Hまでを結び、かつ複数の制御点P1,P2,…で定義されるベジェ曲線を、始点Sから中間点Hまでの候補中間経路として算出した後、車両1の走行性能と駐車領域ER1とに関して予め定めた制約条件を、候補中間経路が満たすか否かを判断する。経路算出装置4は、制約条件を満たした候補中間経路について、当該候補中間経路内に含む曲線の曲率最大値を含む評価値Jを算出し、得られた評価値Jが最小となる候補中間経路を中間経路TP1として決定する。
【0100】
そして、経路算出装置4は、始点Sから中間点Hまでを結んだ中間経路TP1と、当該中間点Hから終点Gまでを結んだ直線に延びる直線経路TP2とを、車両1の現在位置から駐車領域ER1までの車両1の移動経路TPとして算出する。
【0101】
このように、経路算出装置4は、候補中間経路内に規定された曲線の曲率最大値を含む評価値Jに基づいて、制約条件を満たした複数の候補中間経路の中から評価値Jが最小となる中間経路TP1を求めることで、始点Sから中間点Hを経由して終点Gまで移動する車両1の移動経路TPとして、車両1のステアリング角度の急激な変化を抑制した緩やかな移動経路TPを算出することができる。
【0102】
(5)<検証試験>
次に、上述した経路算出処理を実行したシミュレーションの結果について説明する。ここでは、全長が18.2[m]、車幅が3.4[m]でなる大型キャリアを車両1とし、長手方向の長さが11.03[m]、幅が3.8[m]でなる駐車領域ER1の中心点(終点G)に対して、当該車両1を駐車領域ER1の幅方向の左右境界に衝突させずに駐車させることを目標に、経路算出処理のシミュレーションを行った。
【0103】
また、ここでは、車両1の中心点を車両基準点Oとして設定し、車両基準点Oが駐車領域ER1の終点Gから25[m]離れ、駐車基準線CA2からy軸方向に1.0[m]ずれ、車両1の向きが駐車基準線CA2に対して10[deg]傾いている状態を車両1の初期状態とし、駐車領域ER1の駐車目標地点である終点Gまでの移動経路TPを、上述した経路算出装置4を用いてシミュレーションにより算出した。
【0104】
この際、制約条件としては、車両1の走行性能に関する制約である式(11)と、駐車領域ER1の境界に関する制約である式(12)とを用いた。また、式(12)における、移動経路のy座標の上限値maxYは、0.05[m]に設定し、ステアリング角度の限度値maxΚは、50[deg]に設定した。評価関数は式(14)を用い、重みW1=20,W2=1とした。決定変数は、距離STの値を2.0[m]とし、距離FHの値を1.5[m]とし、直線距離HGの値を14.5[m]とした。
【0105】
以上の条件で経路算出処理を行った結果、
図5(a)に示すような移動経路が算出された。また、
図5(a)に示す移動経路に沿って車両1を移動させたときの車両1のステアリング角度(タイヤ角度)は、
図5(b)に示すような波形となった。
【0106】
図5(a)では、算出した移動経路に加えて、車両1の初期状態と、車両1の先頭の軌跡についても併記している。ステアリング角度の限度値maxΚは50[deg]であり、それに相当する曲率最大値を設定しているが、
図5(b)に示すように、ステアリング角度は、限度値maxΚの範囲内に収まっている。また、車両1の始点Sと中間点Hでは、ステアリング角度がゼロとなっている(ステアリング角度は曲率と一対一に対応し、曲率がゼロのときにはステアリング角度もゼロとなる)。
【0107】
このようにして、上述した経路算出処理によって移動経路を算出することができるので、曲率最大値に関する評価値Jに基づいて、制約条件を満たした複数の候補中間経路の中から曲率最大値が最小となる中間経路を求めることで、始点Sから中間点Hを経由して終点Gまで移動する車両1の移動経路として、車両1のステアリング角度の急激な変化を抑制した緩やかな移動経路を算出することができる。
【0108】
(6)<他の実施形態>
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、車両制御装置2に設けた車両センサ21及び経路情報取得部22を、駐車支援装置3に設ける等、
図1とは回路の配置構成を変えた駐車支援装置としてもよい。
【0109】
また、上述した実施形態においては、駐車位置情報に基づいて地図データ上での駐車領域ER1の外郭形状等を駐車領域解析部38によって解析し、地図データ上における駐車領域ER1の終点Gの位置と、駐車領域ER1の駐車基準線CA2の位置を駐車領域解析部38で特定した結果を駐車領域解析情報とした場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、駐車領域解析部38は、地図データ等を解析することなく、予め特定された終点Gの位置と、駐車領域ER1の駐車基準線CA2の位置とを、駐車領域解析情報として、車両制御装置2や、その他外部の装置から取得するようにしてもよい。
【0110】
また、上述した実施形態においては、車両1の走行性能に関する第1制約条件として、車両1のステアリング角度の限度値maxΚを規定して旋回性能に関する制約条件を規定したが、例えば、車両1の制動性能に関する制約条件としてもよい。また、上述した実施形態においては、駐車領域ER1に関する第2制約条件として、駐車領域ER1のy軸方向の左右境界に関する制約条件を規定したが、例えば、駐車領域ER1の長手方向奥側等のその他境界に関する制約条件としてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 車両
4 経路算出装置
31 特定部
32 記憶部
33 算出部
TP1 中間経路
TP2 直線経路
TP 移動経路