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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081099
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20240610BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240610BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240610BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20240610BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20240610BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C08L9/06
C08K3/04
C08K3/36
C08L57/02
C08K5/103
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008305
(22)【出願日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2022194168
(32)【優先日】2022-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BB01
3D131BC33
3D131EA10U
3D131EB07U
4J002AC081
4J002AC083
4J002BA012
4J002DA036
4J002DJ016
4J002EH057
4J002FD016
4J002FD027
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、前記ゴム組成物は、下記式(1)を満たし、前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、下記式(2)~(3)を満たすタイヤ。
(1)シリカの含有量/カーボンブラックの含有量>1
(2)(可塑剤総量/LR)×100>50
(3)S×T<300
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、
前記ゴム組成物は、下記式(1)を満たし、
前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、下記式(2)~(3)を満たすタイヤ。
(1)シリカの含有量/カーボンブラックの含有量>1
(2)(可塑剤総量/LR)×100>50
(3)S×T<300
【請求項2】
前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、及び、前記トレッドの厚みT(mm)が、下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
S×T<200
【請求項3】
前記樹脂が、芳香族系石油樹脂である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記エステル系可塑剤が、アシルグリセロールを含む請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項5】
前記スチレンブタジエンゴムが、乳化重合スチレンブタジエンゴムである請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物が、液状ゴムを含む請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム組成物におけるシリカの含有量/カーボンブラックの含有量が、4.0以上である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)が、35.0質量%以下である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項9】
前記シリカの平均粒子径が18nm以下である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム組成物における可塑剤総量が、前記ゴム成分100質量部に対して、110質量部以下である請求項1又は2記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
路面に接触するトレッド部において、単位面積当たりの接地圧力の低い乗用車用タイヤや多目的スポーツ車用タイヤでは、良好な耐摩耗性、ウェットグリップ性能、及び低燃費性の両立が要求されており、特に良好な耐摩耗性が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、耐摩耗性に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、前記ゴム組成物は、下記式(1)を満たし、前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、下記式(2)~(3)を満たすタイヤである。
(1)シリカの含有量/カーボンブラックの含有量>1
(2)(可塑剤総量/LR)×100>50
(3)S×T<300
【発明の効果】
【0005】
本発明は、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、前記ゴム組成物は、上記式(1)を満たし、前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、上記式(2)~(3)を満たすタイヤであるので、耐摩耗性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のタイヤは、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、前記ゴム組成物は、上記式(1)を満たし、前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、上記式(2)~(3)を満たす。前記タイヤは、耐摩耗性に優れている。
【0007】
前述の効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、前記ゴム組成物は、上記式(1)を満たし、前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、上記式(2)~(3)を満たすタイヤとすることにより、以下のことが起こると考えられる。
[1]トレッドを構成するゴム組成物において、シリカを高充填すると、シリカの凝集による分散不良が発生し、スチレンブタジエンゴムとの相互作用が小さくなるため、耐摩耗性が悪化する傾向があるが、樹脂を配合すると、樹脂は粘着性がありゴム成分と馴染みやすいため、混練時にシリカを補足し、シリカの分散性を向上させることができ、シリカの分散性が向上することにより、スチレンブタジエンゴムとシリカとの結合が増加すると考えられる。
[2]カーボンブラックの含有量をシリカの含有量よりも少なくすることで、多量のシリカによって十分に拘束されたスチレンブタジエンゴムのポリマー鎖にカーボンブラックが絡みつく状態になると考えられる。
[3]カーボンブラックの表面に存在するカルボキシル基とエステル系可塑剤のエステル基とが相互作用するため、エステル系可塑剤がカーボンブラックの表面を覆い、ゴム成分や樹脂への親和性を更に向上させ、これにより、スチレンブタジエンゴムが十分にシリカに固定されていても、ポリマー鎖とカーボンブラックとが絡み合うことが可能となると考えられる。
[4]樹脂及びエステル系可塑剤はどちらも極性を有するため親和性が高く、樹脂及びエステル系可塑剤に吸着されたシリカの分散性も向上すると考えられる。
[5]可塑剤総量とトレッドのランド比が上記式(2)を満たすものとすることにより、すなわち、可塑剤総量の増加に伴い、トレッドのランド比を増加させることにより、走行時に遠心力によって可塑剤が接地面方向に移行しようとするが、トレッドのランド比を大きくすることでトレッド陸部への可塑剤の集中を抑制できると考えられる。
[6]ゴム成分中の総スチレン量とトレッドの厚みが上記式(3)を満たすものとすることにより、ゴム中の蓄熱が抑えられるため、ゴム中の蓄熱によって生じる可塑剤や樹脂の運動性の増加を抑制でき、可塑剤の移動を抑制できると考えられる。
上記[1]~[6]により、多量のシリカのネットワークに、カーボンブラック、エステル系可塑剤、樹脂が均一に分散され、かつ、走行中も変化が起こりにくくなる状態を達成できることから、耐摩耗性を向上させることができると考えられる。
以上の作用により、耐摩耗性に優れたタイヤを提供できると推察される。
【0008】
このように、本発明は、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、前記ゴム組成物は、式(1)「シリカの含有量/カーボンブラックの含有量>1」を満たし、前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、式(2)「(可塑剤総量/LR)×100>50」、式(3)「S×T<300」を満たすタイヤの構成にすることにより、耐摩耗性に優れたタイヤを提供するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)~(3)のパラメータは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、耐摩耗性に優れたタイヤを提供することであり、そのための解決手段として前記パラメータを満たすような構成としたものである。
【0009】
本発明のタイヤは、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成される。
【0010】
本明細書において、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が1万より大きく、架橋に寄与する成分であり、JIS K 6229:2015に準拠した方法で、ゴム組成物を24時間アセトン抽出した場合に抽出されないポリマー成分がゴム成分に該当する。
【0011】
上記ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0012】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0013】
上記ゴム組成物において、ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)は、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、更に好ましくは15.0質量%以上、特に好ましくは20.0質量%以上であり、また、好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは50.0質量%以下、更に好ましくは40.0質量%以下、より更に好ましくは35.0質量%以下、特に好ましくは30.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0014】
ここで、ゴム成分中の総スチレン量は、ゴム成分全量中に含まれるスチレン部の合計含有量(単位:質量%)であり、Σ(各ゴム成分の含有量×各ゴム成分中のスチレン量/100)で算出できる。例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量40質量%のSBRが85質量%、スチレン量25質量%のSBRが5質量%、スチレン量0質量%のBRが10質量%である場合、ゴム成分中の総スチレン量は、35.25質量%(=85×40/100+5×25/100+10×0/100)である。
【0015】
なお、各ゴム成分中のスチレン量は、核磁気共鳴(NMR)法によって測定できる。
また、ゴム成分中の総スチレン量について、本明細書の実施例では、上述の計算式に沿って算出しているが、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(Py-GC/MS)等により、タイヤから分析してもよい。
【0016】
上記ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム(SBR)を含有するゴム成分を含む。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できるが、効果がより良好に得られるという観点から、乳化重合スチレンブタジエンゴムが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ゴム成分のスチレン量は、H-NMR測定により算出される。
【0018】
SBRのビニル量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ゴム成分のビニル量は、H-NMR測定により算出される。
【0019】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、(株)ENEOSマテリアル等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0020】
なお、上述のSBRのスチレン量は、SBRが1種である場合、当該SBRのスチレン量を意味し、複数種である場合、平均スチレン量を意味する。
SBRの平均スチレン量は、{Σ(各SBRの含有量×各SBRのスチレン量)}/全SBRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量40質量%のSBRが85質量%、スチレン量25質量%のSBRが5質量%である場合、SBRの平均スチレン量は、39.2質量%(=(85×40+5×25)/(85+5))である。
【0021】
また、上述のSBRのビニル量はSBR中におけるブタジエン部の総質量を100としたときのビニル結合の割合であり(単位:質量%)、ビニル量[質量%]+シス量[質量%]+トランス量[質量%]=100[質量%]となる。SBRが1種である場合、当該SBRのビニル量を意味し、複数種である場合、平均ビニル量を意味する。
SBRの平均ビニル量は、Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])×各SBRのビニル量[質量%]}/Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])}で算出でき、例えば、ゴム成分100質量部中、スチレン量40質量%、ビニル量30質量%のSBRが75質量部、スチレン量25質量%、ビニル量20質量%のSBRが15質量部、残り10質量部がSBR以外である場合、SBRの平均ビニル量は、28質量%(={75×(100[質量%]-40[質量%])×30[質量%]+15×(100[質量%]-25[質量%])×20[質量%])}/{75×(100[質量%]-40[質量%])+15×(100[質量%]-25[質量%])}である。
【0022】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ、カーボンブラック等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記官能基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0025】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0026】
上記ゴム組成物は、SBR以外の他のゴム成分を含んでもよい。
他のゴム成分として、例えば、SBR以外の他のジエン系ゴムが挙げられる。他のジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、上記以外のゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、イソプレン系ゴム、BRが好ましい。
【0027】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0028】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
BRのシス量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、上限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ゴム成分のシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0030】
なお、上述のBRのシス量は、BRが1種である場合、当該BRのシス量を意味し、複数種である場合、平均シス量を意味する。
BRの平均シス量は、{Σ(各BRの含有量×各BRのシス量)}/全BRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、シス量:90質量%のBRが20質量%、シス量:40質量%のBRが10質量%である場合、BRの平均シス量は、73.3質量%(=(20×90+10×40)/(20+10))である。
【0031】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0032】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0033】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0034】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
ゴム成分は、オイルで伸展された油展ゴム、樹脂で伸展された樹脂伸展ゴムであってもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、油展ゴムが好ましい。
なお、油展ゴムに使用されるオイル、樹脂伸展ゴムに使用される樹脂は、後述の可塑剤で説明したものと同様である。また、油展ゴム中のオイル分、樹脂伸展ゴム中の樹脂分は特に限定されないが、通常、ゴム固形分100質量部に対して10~50質量部程度である。
【0036】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0037】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0038】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは150m/g以上、更に好ましくは170m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは220m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
【0039】
シリカの平均粒子径は、好ましくは24nm以下、より好ましくは18nm以下、更に好ましくは16nm以下、特に好ましくは15nm以下であり、また、好ましくは6nm以上、より好ましくは9nm以上、更に好ましくは12nm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
なお、本明細書において、シリカの平均粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察が用いられる。具体的には、シリカ粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、粒子の形状が球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状又は棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には中心部からの平均粒径を粒子径とし、微粒子100個の粒径の平均値を平均粒子径とする。
【0041】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、90質量部以上、好ましくは95質量部以上、更に好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0042】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0043】
シランカップリング剤としては、例えば、エボニック社、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0044】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、また、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0045】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましく、120m/g以上が更に好ましく、135m/g以上が特に好ましい。また、上記NSAは、250m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましく、160m/g以下が更に好ましく、150m/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0047】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、80ml/100g以上が好ましく、90ml/100g以上がより好ましく、100ml/100g以上が更に好ましく、110ml/100g以上が特に好ましい。また、上記DBP吸油量は、200ml/100g以下が好ましく、170ml/100g以下がより好ましく、150ml/100g以下が更に好ましく、125ml/100g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量は、JIS K6217-4:2001に準拠して求められる。
【0048】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0049】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、15質量部以上、好ましくは17質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0050】
上記ゴム組成物は、シリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))、カーボンブラックの含有量(ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部))が、下記式(1)を満たす。
(1)シリカの含有量/カーボンブラックの含有量>1
式(1)の下限は、好ましくは1.5超、より好ましくは3.5超、更に好ましくは5.5超である。式(1)の上限は特に限定されないが、好ましくは20.0未満、より好ましくは15.0未満、更に好ましくは8.0未満である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
上記ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック以外の他のフィラー(充填剤)を含んでもよい。他のフィラー(充填剤)としては、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー;難分散性フィラー等が挙げられる。
【0052】
ゴム成分100質量部に対する充填剤の総量(充填剤の合計含有量)は、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、特に好ましくは130質量部以上であり、また、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、更に好ましくは200質量部以下、特に好ましくは150質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0053】
上記ゴム組成物において、充填剤100質量%中のシリカ含有率は、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0054】
上記ゴム組成物は、可塑剤を含有する。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、重量平均分子量(Mw)が1万以下の成分であり、JIS K 6229:2015に準拠した方法で、ゴム組成物を24時間アセトン抽出した場合に抽出される成分を指す。なお、可塑剤としては、常温(25℃)で液状の液体可塑剤と、常温(25℃)で固体の固体可塑剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上記ゴム組成物において、可塑剤総量(液体可塑剤及び固体可塑剤の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上、特に好ましくは80質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは150質量部以下、特に好ましくは110質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤総量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルや樹脂の量も含まれる。
【0056】
上記可塑剤としては、オイル、エステル系可塑剤、樹脂、液状ポリマー、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0058】
上記ゴム組成物において、固体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0059】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、アシルグリセロールを含まない植物油、テレビン油等の天然物由来の精油及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。なお、ライフサイクルアナリシスの観点から、ゴム混合用ミキサーや自動車エンジンなどで使用されたあとの潤滑油を適宜用いても良い。
【0060】
上記オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0061】
上記ゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、オイルの含有量には、後述のアシルグリセロールを含む植物油の量は含まれない。
【0062】
上記エステル系可塑剤としては、例えば、アシルグリセロールを含む植物油、リン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族多塩基酸エステル、トリメリット酸エステル、酢酸エステル及びリシノール酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むものを好適に使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという点から、アシルグリセロールを含む植物油、リン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族多塩基酸エステルが好ましい。更にリンの使用量を抑えられる点から、アシルグリセロールを含む植物油、脂肪族多塩基酸エステルが好適である。
【0063】
上記化合物のSP値は、8.0以上であることが好ましく、8.3以上であることがより好ましく、8.5以上であることが特に好ましい。また、該SP値は、9.5以下であることが好ましく、9.0以下であることがより好ましく、8.8以下であることが更に好ましい。上記範囲のSP値にすることで、SBR等のジエン系ゴムとの相溶性が確保され、効果がより好適に得られる傾向がある。ここでSP値とは、ハンセン(Hansen)の数式を用いて算出される溶解度パラメータを意味する。
【0064】
上記化合物の凝固温度は、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-80℃以上である。また、該凝固温度は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、凝固温度は、下記方法で測定される値である。
試料をアルミニウムセルの中に密閉し、当該アルミニウムセルを示差走査熱量測定器((株)島津製作所製、DSC-60A)のサンプルホルダーに挿入した後、当該サンプルホルダーを窒素雰囲気下10℃/分で150℃まで加熱しながら吸熱ピークを観察し、得られた吸熱ピークが凝固点(凝固温度)である。
【0065】
本明細書において、植物油とは、例えば、あまに油、なたね油、べに花油、大豆油、コーン油、綿実油、米油、トール油 、ごま油、えごま油、ひまし油、桐油、パイン油、パインタール油、ひまわり油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、落花生油、グレープシード油、木ろう等が挙げられる。さらに、植物油としては、前記油を精製した精製油(サラダ油など)、前記油をエステル交換したエステル交換油、前記油を水素添加した硬化油、前記油を熱重合させた熱重合油、前記油を酸化させた酸化重合油、食用油等として利用したものを回収した廃食用油等も挙げられる。なお、植物油は常温(25℃)で液体であっても固体であっても良い。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
なかでも、植物油としては、アシルグリセロールを含む植物油が好ましく、アシルグリセロールがより好ましく、トリアシルグリセロールが特に好ましい。なお、本明細書中において、アシルグリセロールとは、グリセリンの持つヒドロキシ基とカルボン酸とがエステル結合をした化合物を指す。アシルグリセロールとしては、特に限定されず、1-モノアシルグリセロールでもよく、2-モノアシルグリセロールでもよく、1,2-ジアシルグリセロールでもよく、1,3-ジアシルグリセロールでもよく、トリアシルグリセロールでもよい。さらに、アシルグリセロールは、単量体でもよく、2量体でもよく、3量体以上の多量体であってもよい。なお、2量体以上のアシルグリセロールは、熱重合や酸化重合等によって得ることができる。また、アシルグリセロールは常温(25℃)で液体であっても固体であっても良い。
【0067】
ゴム組成物中に前記アシルグリセロールが含まれているか確認する方法としては、特に限定されないが、H-NMR測定によって確認することができる。例えば、トリアシルグリセロールを配合したゴム組成物を常温(25℃)で24時間重クロロホルムに浸漬し、ゴム組成物を除いた後、室温下でH-NMRを測定し、テトラメチルシラン(TMS)のシグナルを0.00ppmとした場合、5.26ppm付近、4.28ppm付近、4.15ppm付近のシグナルが観測され、該シグナルはエステル基の酸素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子由来のシグナルと推測される。なお、この段落における「付近」とは、±0.10ppmの範囲とする。
【0068】
前記カルボン酸としては、特に限定されず、不飽和脂肪酸であっても、飽和脂肪酸であっても良い。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸等の一価不飽和脂肪酸や、リノール酸、リノレン酸等の多価不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0069】
上記リン酸エステルとしては、リン酸と、炭素数1~12のモノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのモノ、ジ又はトリエステルなど、公知のリン酸エステル系可塑剤を使用できる。具体的には、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0070】
上記フタル酸エステルとしては、フタル酸と炭素数1~13程度のアルコールとのジエステルなど、公知のフタル酸エステル系可塑剤を使用できる。具体的には、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0071】
上記脂肪族多塩基酸エステルとしては、例えば、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族三塩基酸エステル等が挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られるという点から、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル等の脂肪族二塩基酸エステルが好ましい。
【0072】
このような脂肪族二塩基酸エステルのなかでも、下記式(1)で表される化合物を特に好適に使用できる。
【化1】
〔式(1)中、R11は、2価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。R12及びR13は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐のアルキル基、又は-(R14-O)-R15(n個のR14は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐のアルキレン基を表す。R15は、分岐若しくは非分岐のアルキル基を表す。nは整数を表す。)で表される基を表す。〕
【0073】
11の2価の飽和又は不飽和炭化水素基は、分岐、非分岐のいずれでもよく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基などが挙げられる。前記飽和又は不飽和炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは6~10である。具体的には、アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基など、アルケニレン基として、ビニレン基、1-プロペニレン基、2-プロペニレン基など、アリーレン基として、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基など、が挙げられる。
【0074】
12及びR13について、分岐若しくは非分岐のアルキル基の炭素数は、好ましくは1~15、下限はより好ましくは4以上、上限はより好ましくは10以下である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、等が挙げられる。
【0075】
12及び13の-(R14-O)-R15で表される基について、R14の分岐若しくは非分岐のアルキレン基の炭素数は、1~3が好ましい。R15の分岐若しくは非分岐のアルキル基炭素数は、好ましくは1~10、下限はより好ましくは2以上、上限はより好ましくは6以下である。該アルキレン基、該アルキル基の具体例としては、前記と同様のものが挙げられる。整数nは、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
【0076】
なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、R11は、アルキレン基であることが好ましく、R12及び13は、少なくとも1つが分岐のアルキル基であることが好ましく、両方が当該基であることがより好ましい。
【0077】
上記式(1)で表される脂肪族二塩基酸エステルの好適例としては、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、ジn-ブチルアジペート、ジイソブチルアジペートの他、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート等の前記-(R14-O)-R15で表される基を有するビス(アルコキシアルコキシアルキル)アジペート、等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸と炭素数8~13の飽和脂肪族アルコールとのトリエステル等、公知のトリメリット酸エステル系可塑剤を使用できる。具体的には、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ-n-オクチル-n-デシルトリメリレート等が挙げられる。
【0079】
上記酢酸エステルとしては、酢酸とモノ又はポリグリセリンとのエステル等、公知の酢酸エステル系可塑剤を使用できる。具体的には、グリセリルトリアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、ポリグリセリンの重合度2~4、アセチル化率50~100%のポリグリセリン酢酸エステル等が挙げられる。
【0080】
上記リシノール酸エステルとしては、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレートなどのアルキルアセチルリシノレート(アルキル基:炭素数1~10)等、公知のリシノール酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0081】
上記エステル系可塑剤は、上記化合物以外に、他の成分を含むものでもよい。他の成分としては、上記化合物以外の公知の可塑剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテル、等が挙げられる。
【0082】
上記エステル系可塑剤100質量%中の上記化合物の含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。上記含有率で上記化合物を配合することで、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0083】
上記エステル系可塑剤は、例えば、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP、凝固温度-70℃以下、引火点204℃、SP値8.1、Mw435)、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート(DOS、凝固温度-62℃、引火点222℃、SP値8.4、Mw427)、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP、凝固温度-51℃、引火点218℃、SP値8.9、Mw391)、ビス[2-(2-ブトキシエトキシエチル)エチル]アジペート(BXA、凝固温度-19℃、引火点207℃、SP値8.7、Mw435)等が挙げられる。なかでも、ゴム成分との相溶性に優れ、引火点が200℃以上であり、重量平均分子量が400以上と高いことからDOS、TOP、BXAが好適である。
【0084】
上記エステル系可塑剤としては、例えば、大八化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
また、上記植物油としては、例えば、日清オイリオ(株)、J-オイルミルズ(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、ミヨシ油脂(株)、ボーソー油脂(株)等の製品を使用できる。
【0085】
また、上記ゴム組成物は、上述の可塑剤として、エステル系可塑剤を含む。
該エステル系可塑剤のなかでも、アシルグリセロールを含む植物油、リン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族多塩基酸エステルが好ましく、アシルグリセロールを含む植物油、脂肪族多塩基酸エステルがより好ましく、アシルグリセロールを含む植物油、DOS、TOP、BXAが更に好ましい。
【0086】
上記ゴム組成物において、エステル可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0087】
上記樹脂としては、常温(25℃)で固体であっても(固体樹脂)、液体であってもよく(液状樹脂)、特に限定されないが、タイヤ配合物として、通常用いられる樹脂(レジン)等を使用できるが、耐摩耗性の観点から、芳香族系石油樹脂が好適に用いられる。
上記芳香族系石油樹脂としては、芳香環を有する石油樹脂が挙げられ、例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等が挙げられる。これらの固体樹脂は、水素添加物(水素添加された樹脂)であってもよい。樹脂は、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。
【0088】
上記フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール系樹脂が特に好ましい。アルキルフェノール系樹脂としては、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるアルキルフェノールアルデヒド縮合樹脂;アルキルフェノールと、アセチレンなどのアルキンとを反応させて得られるアルキルフェノールアルキン縮合樹脂;これらの樹脂を、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどの化合物を用いて変性した変性アルキルフェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、アルキルフェノールアルキン縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノールアセチレン縮合樹脂が特に好ましい。
【0089】
アルキルフェノール系樹脂を構成するアルキルフェノールとしては、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なかでも、t-ブチルフェノール等の分枝状アルキル基を有するフェノールが好ましく、t-ブチルフェノールが特に好ましい。
【0090】
上記クマロンインデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン、インデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、フェノール、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0091】
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を構成モノマーとして含むポリマーであり、テルペン化合物を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。
【0092】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。
【0093】
上記テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0094】
上記スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。上記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。なかでも、固体状のα-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
【0095】
上記アクリル樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0096】
上記ロジン樹脂としては、芳香環を有する、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂(ロジン誘導体)等が挙げられる。
【0097】
上記ジシクロペンタジエン系樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、ジシクロペンタジエン(DCPD)を含む樹脂であり、樹脂100質量%中のジシクロペンタジエン由来単位の含有量が50質量%以上のポリマーが挙げられる。具体的には、ジシクロペンタジエン系樹脂としては、石油のC5留分から抽出されたシクロペンタジエンを二量体化したジシクロペンタジエンを主原料に製造された芳香環を有する石油樹脂が挙げられる。ジシクロペンタジエン系樹脂は、水添ジシクロペンタジエン系樹脂(水素添加されたジシクロペンタジエン系樹脂)でもよい。
【0098】
上記フェノール系樹脂としては、例えば、コレシン(BASF社製)、タッキロール(田岡化学工業(株)製)等が挙げられる。クマロンインデン樹脂としては、例えば、クマロン(日塗化学(株)製)、エスクロン(新日鉄化学(株)製)、ネオポリマー(新日本石油化学(株)製)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、例えば、Sylvatraxx(登録商標) 4401 (クレイトン社製)等が挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、TR7125(アリゾナケミカル社製)、TO125(ヤスハラケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0099】
樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、クレイトン社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0100】
ここで、上記ゴム組成物は、上述の可塑剤として、樹脂を含む。
上記樹脂のなかでも、固体樹脂が好ましく、25℃で固体の芳香族系石油樹脂が好ましく、25℃で固体の、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、及びこれらの水素添加物がより好ましく、25℃で固体のフェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、及びこれらの水素添加物が更に好ましく、25℃で固体のクマロンインデン樹脂及びその水素添加物が特に好ましい。
【0101】
上記樹脂の軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下、特に好ましくは120℃以下である。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、上記樹脂(レジン)の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0102】
上記液状ポリマーは、常温(25℃)で液体状態の(共)重合体であり、例えば、液状ゴム等を使用できる。液状ポリマーは、水素添加されていてもよく、水素添加されていなくてもよいし、カルボキシ基等の官能基によって変性されていてもよく、変性されていなくてもよい。また、液状ポリマーが共重合体である場合、各モノマーのランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0103】
上記液状ゴムとしては、例えば、25℃で液状の、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
【0104】
上記液状ゴムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×10~1.0×10であることが好ましく、3.0×10~8.5×10であることがより好ましい。また、該液状ジエン系ポリマーのMwの下限又は上限は、4500、8500でもよい。
なお、本明細書において、液状ゴムのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0105】
上記液状ゴムとしては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0106】
上記ゴム組成物は、可塑剤として、液状ゴムを含むことが好ましく、該液状ゴムの含有量としては、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0107】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
上記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0109】
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
上記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0111】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
上記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0113】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
上記ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0115】
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に架橋剤として用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
上記ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは1.8質量部以上であり、また、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2.8質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0117】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
上記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは7.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0119】
上記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0120】
上記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0121】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0122】
上記ゴム組成物は、トレッド(特に、走行時に路面に接する部分(キャップトレッド))に使用される。
【0123】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得る。
【0124】
上記タイヤは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物から作製されたトレッドを備え、該ゴム組成物における可塑剤総量(ゴム成分100質量部に対する可塑剤総量(質量部))、該トレッドのランド比LR(%)が、下記式(2)を満たす。
(2)(可塑剤総量/LR)×100>50
(可塑剤総量/LR)×100の右辺は、好ましくは51超、より好ましくは53超、更に好ましくは70超、より更に好ましくは100超、特に好ましくは120超であり、また、好ましくは200未満、より好ましくは170未満、更に好ましくは150未満、特に好ましくは140未満である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0125】
なお、本明細書において、上記タイヤが空気入りタイヤの場合、ランド比(LR)は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から計算される。非空気入りタイヤの場合、正規内圧を必要とせずに、同様に測定できる。
【0126】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0127】
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を意味し、「正規リム」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250KPa以上)を指す。なお、250KPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0128】
「正規荷重」とは、前記したタイヤが基づいている規格を含む規格体系における各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、タイヤに負荷されることが許容される最大の質量を指しており、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表 “TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は、以下の計算により、正規荷重WLを求める。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt
WL=0.000011×V+175
WL:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm
Dt:タイヤ外径(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0129】
接地形状は、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることにより得ることができるため、タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。このとき、5つの接地形状について、該輪郭の溝で途切れた部分を滑らかに繋ぎ、得られる形状を仮想接地面とする。
【0130】
ランド比(LR)は、厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/(5つの接地形状から仮想接地面の面積の平均値)×100(%)で計算される。
【0131】
上記トレッドのランド比LR(%)は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上であり、また、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0132】
上記タイヤは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物から作製されたトレッドを備え、該ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、該トレッドの厚みT(mm)が、下記式(3)を満たす。
(3)S×T<300
S×Tは、好ましくは290未満、より好ましくは260未満、更に好ましくは230未満、より更に好ましくは200未満であり、また、好ましくは30超、より好ましくは50超、更に好ましくは100超、特に好ましくは150超である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0133】
本明細書において、トレッドの厚み(T)とは、タイヤ使用前(新品)の、各トレッドの厚み、すなわち、トレッド表面(タイヤ外表面)からバンド層などの補強層の外面までの厚み、のうち、厚みが最大となる部分での厚みを意味する。例えば、トレッドがキャップトレッドとベーストレッドの2層構造である場合には、キャップトレッドとベーストレッドの合計厚みのうち、厚みが最大となる部分での厚みを意味する。トレッドが3層以上の構造であっても同様に、トレッド部の合計厚みのうち、厚みが最大となる部分での厚みを意味する。トレッド表面上の各点における厚みは、当該点におけるトレッド表面の法線に沿って計測される値であり、トレッドの厚みTは各点における厚みの最大値である。なお、本発明において、トレッド部は、キャップゴム層の1層のみで形成されていてもよく、キャップゴム層の内側にベースゴム層を設けて、2層にされていてもよく、また、3層でもよく、4層以上であってもよい。
【0134】
上記トレッドの厚みT(mm)は、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは5.5mm以上、更に好ましくは6.0mm以上であり、また、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは9.5mm以下、更に好ましくは9.0mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0135】
上記タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)、オールシーズンタイヤ、等として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用タイヤ、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)に好適に使用できる。なお、乗用車用タイヤとは、四輪以上で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであって、その最大負荷能力(正規荷重)が1400kg以下のものを指す。
【実施例0136】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0137】
以下に示す各種薬品を用いて各表に従って配合等を変化させて得られるタイヤを検討し、下記評価方法に基づいて算出した結果を各表に示す。
【0138】
SBR1:HP755B(株式会社ENEOSマテリアル製、S-SBR、スチレン含量:40質量%、ビニル含量:40質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部を含む油展品)
SBR2:ESBR1723(株式会社ENEOSマテリアル製、E-SBR、スチレン含量:24質量%、ビニル含量:17質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部を含む油展品)
SBR3:下記製造例1で製造されるS-SBR、スチレン含量:40質量%、ビニル含量:40質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイルを含まない非油展品
SBR4:HPR830E(株式会社ENEOSマテリアル製、S-SBR、スチレン含量:40質量%、ビニル含量:40質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分10質量部を含む油展品)
SBR5:ESBR1502(株式会社ENEOSマテリアル製、E-SBR、スチレン含量:24質量%、ビニル含量:17質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイルを含まない非油展品)
カーボンブラック:シースト9(東海カーボン株式会社製、NSA:142m/g、DBP吸油量:115ml/100g)
シリカ1:ZEOSIL 1165MP(ソルベイ社製、NSA:160m/g、平均粒子径:17nm)
シリカ2:ZEOSIL Premium 200MP(ソルベイ社製、NSA:220m/g、平均粒子径:14nm)
シランカップリング剤:Si69(エボニック社製、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ポリスルフィド)
樹脂1:SYLVATRAXX4401(KRATON社製、α-メチルスチレン樹脂)
樹脂2:コレシン(BASF社製、フェノール系樹脂)
樹脂3:V-120(日塗化学(株)製、クマロンインデン樹脂)
エステル系可塑剤1:DOS(大八化学工業株式会社製、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、SP値:8.4)
エステル系可塑剤2:ひまわり油(日清オイリオ(株)製)
エステル系可塑剤3:大豆油(日清オイリオ(株)製)
液状ゴム:L-SBR-820(クラレ社製、液状SBR、Mw:8500)
オイル:VIVATEC500(H&R社製)
酸化亜鉛:亜鉛華1号(三井金属鉱業株式会社製)
ステアリン酸:ステアリン酸「椿」(日油社製)
老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業株式会社製、N-(1,3-ジメチルブチル)-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:サンノックN(大内新興化学工業株式会社製)
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学工業株式会社製)
加硫促進剤1:ノクセラーDM-P(大内新興化学工業株式会社製、ジベンゾチアジルジスルフィド)
加硫促進剤2:ノクセラーD(大内新興化学工業株式会社製、1,3-ジフェニルグアニジン)
【0139】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込む。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始する。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達する。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(単量体)と、オリゴマー成分との混合物を変性剤として加えて反応を行う。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加する。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥してSBR3を得る。
【0140】
<試験用タイヤの製造>
各表に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得る。次に、得られる混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。
得られる未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、次いで、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造する。
【0141】
各表に従って配合を変化させた組成物により得られる試験用タイヤを想定して、下記の耐摩耗性の評価方法に基づいて、算出した結果を各表に示す。
なお、基準配合は、以下のとおりとする。
表1:配合1-1
表2:配合2-1
【0142】
<耐摩耗性>
試験用タイヤを車両に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを評価し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し下記の式により指数化する(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(1mm溝深さが減るときの走行距離)÷(基準配合のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
本発明(1)は、トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドは、スチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂と、エステル系可塑剤とを含むゴム組成物で構成され、
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記カーボンブラックの含有量が15質量部以上であり、
前記ゴム組成物は、下記式(1)を満たし、
前記ゴム組成物における可塑剤総量及び前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、並びに、前記トレッドのランド比LR(%)及び厚みT(mm)が、下記式(2)~(3)を満たすタイヤである。
(1)シリカの含有量/カーボンブラックの含有量>1
(2)(可塑剤総量/LR)×100>50
(3)S×T<300
【0146】
本発明(2)は、前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)、及び、前記トレッドの厚みT(mm)が、下記式を満たす本発明(1)記載のタイヤである。
S×T<200
【0147】
本発明(3)は、前記樹脂が、芳香族系石油樹脂である本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
【0148】
本発明(4)は、前記エステル系可塑剤が、アシルグリセロールを含む本発明(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤである。
【0149】
本発明(5)は、前記スチレンブタジエンゴムが、乳化重合スチレンブタジエンゴムである本発明(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤである。
【0150】
本発明(6)は、前記ゴム組成物が、液状ゴムを含む本発明(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤである。
【0151】
本発明(7)は、前記ゴム組成物におけるシリカの含有量/カーボンブラックの含有量が、4.0以上である本発明(1)~(6)のいずれかに記載のタイヤである。
【0152】
本発明(8)は、前記ゴム成分中の総スチレン量S(質量%)が、35.0質量%以下である本発明(1)~(7)のいずれかに記載のタイヤである。
【0153】
本発明(9)は、前記シリカの平均粒子径が18nm以下である本発明(1)~(8)のいずれかに記載のタイヤである。
【0154】
本発明(10)は、前記ゴム組成物における可塑剤総量が、前記ゴム成分100質量部に対して、110質量部以下である本発明(1)~(9)のいずれかに記載のタイヤである。