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特開2024-81107紫外線硬化型インクジェットインキ及び印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081107
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】紫外線硬化型インクジェットインキ及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240610BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20240610BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240610BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240610BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/101
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41J2/01 129
B41J2/01 501
C09D133/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128935
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022193896
(32)【優先日】2022-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉川 卓視
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FC01
2C056HA44
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA09
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB46
2H186FB58
4J038EA001
4J039AD21
4J039BA18
4J039BA19
4J039BC12
4J039BC20
4J039BE26
4J039BE27
4J039EA01
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】硬化性と吐出安定性とが両立しており、更には印刷物の強度にも優れた紫外線硬化型インクジェットインキを提供する。
【解決手段】着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する紫外線硬化型インクジェットインキであって、前記重合性化合物中65質量%以上が、多官能重合性化合物であり、前記多官能重合性化合物、及び/または、前記多官能重合性化合物以外の重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)を含み、オリゴマーの含有量、及び、特定の構造を有する重合性化合物の含有量がそれぞれ一定量以下に制限され、更に、前記光重合開始剤が、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと、その他アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と、を含む、紫外線硬化型インクジェットインキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する紫外線硬化型インクジェットインキであって、
前記重合性化合物中65質量%以上が、多官能重合性化合物であり、
前記多官能重合性化合物、及び/または、前記多官能重合性化合物以外の重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)を含み、
前記重合性化合物が、オリゴマーを含まないか、前記オリゴマーの含有量が、前記重合性化合物中5質量%以下であり、
前記重合性化合物が、下記一般式(C)で表される化合物を含まないか、前記下記一般式(C)で表される化合物の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下であり、
前記光重合開始剤が、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと、前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と、を含む、紫外線硬化型インクジェットインキ。

一般式(C): CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-CO-CH=CH2

(一般式(C)中、nは2~10の整数を表す。)
【請求項2】
前記重合性化合物(A)の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中10~60質量%である、請求項1記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
【請求項3】
前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドの含有量と、前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)の含有量との総量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中8~20質量%である、請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
【請求項4】
前記光重合開始剤が、更に、ベンゾフェノン系光重合開始剤及びチオキサントン系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェットインキを基材上に吐出する工程と、前記基材に対し、紫外線照射手段から紫外線を照射する工程、とを含む、印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紫外線硬化型インクジェットインキ、及び、当該紫外線硬化型インクジェットインキを用いる印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の印刷業界では、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式等の有版印刷方式に代わって、版を使用することなく印刷を行うことができるデジタル印刷方式の採用が急速に進んでいる。その理由として、デジタル印刷方式では製版が不要であるため低コストかつ短時間で印刷物が得られること、従来の有版印刷機と比べ印刷装置が小型かつ安価であること、印刷に従事する者の技量によらず均一な印刷物を容易に得ることができること、等が挙げられる。
【0003】
なかでも、デジタル印刷方式の一種であるインクジェット印刷方式は、印刷装置のサイズ及びコスト、印刷時のランニングコスト、フルカラー化の容易性、高い印刷速度、等、他のデジタル印刷方式と比べて様々な面で優れており、特に産業印刷業界での利用が進んでいる。
【0004】
インクジェット印刷方式で使用されるインキは、水型、油型、溶剤型、活性エネルギー線硬化型等、多岐に渡る。なかでも、近年では、プラスチック及びガラス等の非吸収性の基材にも適用できること、乾燥(硬化)時間の速さ、印刷物の強度等の特性から、活性エネルギー線硬化型、特に紫外線(UV)硬化型のインキに対する需要が高まっている。
【0005】
また近年、インクジェットヘッドの技術革新が進み、20kHz以上の高周波数で吐出することが可能なインクジェットヘッドも販売されている。更に、これらのインクジェットヘッドを、基材の幅以上の長さになるように1つまたは複数設置するとともに、上記紫外線硬化型のインキと組み合わせた、紫外線硬化型インクジェットラインプリンターも販売されている。当該紫外線硬化型インクジェットラインプリンターでは、インクジェットヘッドの下方に搬送されてきた基材に対し、紫外線硬化型のインキを1回だけ吐出し、印刷画像形成を完了させる。
【0006】
上記紫外線硬化型インクジェットラインプリンターにおいては、インクジェットヘッドから基材上に吐出された紫外線硬化型のインキ(紫外線硬化型インクジェットインキ)を、当該インクジェットヘッドよりも下流側に設置された紫外線の発生源から照射される、当該紫外線の照射によって、十分に硬化させる必要がある。また、印刷画像には、印字率の大きい画像(例えば、ベタ画像(基材全体にインキが付与された画像))だけではなく、印字率の小さい画像(例えば淡色の画像)も存在する。そのため、どちらの画像が印刷された場合であっても、当該印刷に使用された紫外線硬化型のインキを十分に硬化させることが重要となる。
【0007】
以上の観点から、紫外線硬化型インクジェットインキでは、硬化性に優れる重合性化合物、及び、紫外線により、当該重合性化合物の重合反応の起点となるラジカル等を有効に発生することができる光重合開始剤を配合することが重要となる。例えば、重合性基数の多い重合性化合物を利用すること、及び光重合開始剤を多量に配合することが考えられる。
【0008】
しかしながら、インクジェットヘッドから円滑かつ安定的に吐出させるためには、紫外線硬化型インクジェットインキを低粘度に設計することが好ましい。そのためには、低粘度の重合性化合物を使用したり、光重合開始剤の量を少なくしたりしてインキを設計する必要がある。そのため、一般に粘度が高い重合性基数の多い重合性化合物の使用、及びインキの高粘度化の要因となる光重合開始剤の多量の配合には、限界がある。
【0009】
それに対して、常温下で液体である光重合開始剤を使用した場合には、ある程度の量を使用したとしても、紫外線硬化型インクジェットインキの粘度上昇を抑えることが可能となる。このような、常温下で液体である光重合開始剤の一例として、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の一種であるエトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(以下、本明細書では「EO-TPO」ともいう)が存在する。
【0010】
しかしながら本発明者らが検討を進めたところ、単にEO-TPOを使用しただけでは、上述した、様々な種類の画像に対する硬化性と、吐出時の安定性の確保との両立が難しいことが判明した。
【0011】
EO-TPOを使用した紫外線硬化型インクジェットインキの具体例が開示されている文献として、例えば特許文献1では、ベンゾイルアルキルホスフィネート(EO-TPOを含む)、及び/または、ビスアシルホスフィンオキサイド(後述するビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等)と、ベンジルアクリレートとを含む、硬化性及び接着性(基材密着性)に優れたインキが開示されている。しかしながら、特許文献1では吐出安定性については考慮されていない。本発明者らが行った追試験においては、当該吐出安定性の不良が確認された(詳細は後述)。
【0012】
また、特許文献2では、低粘度、低臭気、高硬化性等の特性を有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインキとして、アミン変性オリゴマー、特定のジアクリレート化合物、EO-TPO、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-[1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン]等を含むインキが開示されている。しかしながら特許文献2においても、吐出安定性についての検討は不十分である。
【0013】
以上のように、硬化性と吐出安定性とが両立しており、更には印刷物(インキ膜)の強度にも優れた紫外線硬化型インクジェットインキは、これまでに存在しない状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2022-525271号公報
【特許文献2】国際公開第2022/024706号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、硬化性と吐出安定性とが両立しており、更には印刷物(インキ膜)の強度にも優れた紫外線硬化型インクジェットインキ、並びに、当該紫外線硬化型インクジェットインキを用いる印刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、下記に示す構成を有する紫外線硬化型インクジェットインキを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち本発明の実施形態は、以下の[1]~[5]に関する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されず、様々な実施形態を含む。
[1]着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する紫外線硬化型インクジェットインキであって、
前記重合性化合物中65質量%以上が、多官能重合性化合物であり、
前記多官能重合性化合物、及び/または、前記多官能重合性化合物以外の重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)を含み、
前記重合性化合物が、オリゴマーを含まないか、前記オリゴマーの含有量が、前記重合性化合物中5質量%以下であり、
前記重合性化合物が、下記一般式(C)で表される化合物を含まないか、前記下記一般式(C)で表される化合物の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下であり、
前記光重合開始剤が、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと、前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と、を含む、紫外線硬化型インクジェットインキ。

一般式(C): CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-CO-CH=CH2

(一般式(C)中、nは2~10の整数を表す。)
[2]前記重合性化合物(A)の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中10~60質量%である、[1]記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[3]前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドの含有量と、前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)の含有量との総量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中8~20質量%である、[1]または[2]に記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[4]前記光重合開始剤が、更に、ベンゾフェノン系光重合開始剤及び/または、チオキサントン系光重合開始剤を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェットインキを基材上に吐出する工程と、前記基材に対し、紫外線照射手段から紫外線を照射する工程、とを含む、印刷物の製造方法。
【0018】
なお本願の開示は、2022年12月5日に出願された特願2022-193896号に記載の主題と関連しており、その全ての開示内容は引用によりここに援用される。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、硬化性と吐出安定性とが両立しており、更には印刷物(インキ膜)の強度にも優れた紫外線硬化型インクジェットインキ、並びに、当該紫外線硬化型インクジェットインキを用いる印刷物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。また、特にことわりのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0021】
上述の通り、本発明の一実施形態は、紫外線硬化型インクジェットインキ(以下、単に「本発明のインキ」ともいう)に関し、着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する紫外線硬化型インクジェットインキであって、前記重合性化合物中65質量%以上が、多官能重合性化合物であり、前記多官能重合性化合物、及び/または、前記多官能重合性化合物以外の重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)を含み、
前記重合性化合物が、オリゴマーを含まないか、前記オリゴマーの含有量が、前記重合性化合物中5質量%以下であり、
前記重合性化合物が、上記一般式(C)で表される化合物を含まないか、前記上記一般式(C)で表される化合物の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下であり、
前記光重合開始剤が、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと、前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と、を含むことを特徴とする。
【0022】
インクジェットに限らず紫外線硬化型インキに共通して求められる特性の一つに硬化性がある。また上述した通り、印刷される画像には様々な種類が存在し、その全ての画像で、印刷に使用された紫外線硬化型のインキを十分に硬化させることが重要となる。すなわち、紫外線硬化型インキでは、印字率の大きい画像の印刷物の表面や印字率の小さい画像の印刷物に対する硬化性(以下、「表面硬化性」と呼ぶ)と、上記印字率の大きい画像の印刷物の内部に対する硬化性(以下、「内部硬化性」と呼ぶ)とに大別される硬化性の両立が、求められることになる。
【0023】
一方、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、短波長の紫外線だけではなく、400~450nm付近の紫外線も吸収し、ラジカルを発生させることができる材料である。一般に、長波長の紫外線ほど、インキ膜内部にまで到達しやすいため、上記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、当該インキ膜の内部硬化性向上に有効な材料として知られている。また上述した、表面硬化性と内部硬化性との両立の観点から、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤と、当該アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤との併用が、よく行われている。上記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤として使用される、α-ヒドロキシアミン系光重合開始剤やベンゾフェノン系光重合開始剤は、200~350nmの紫外線を強く吸収する性質を有し、インキ膜の表面硬化性向上に有効な材料である。
【0024】
ところで、インキ膜表面での硬化においては、当該インキ膜付近に存在する酸素による重合阻害(酸素阻害)が発生する。そのため、表面硬化性と内部硬化性との両立のために、上述した表面硬化性向上に有効な光重合開始剤を、一定量インキ中に添加することが好適である。しかしながら、その場合、インキ膜表面で、照射した紫外線の大部分が消費されてしまうため、当該インキ膜内部まで紫外線が浸透しづらくなり、内部硬化性が悪下する恐れがあった。
【0025】
また上述した光重合開始剤の多くは、常温下で固体である。表面硬化性と内部硬化性との両立のためには、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤と、当該アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤との併用が有効ではあるものの、このように大量の光重合開始剤を紫外線硬化型インクジェットインキに配合してしまうと、当該インキが高粘度化してしまい、吐出安定性の悪化を招く恐れがある。
【0026】
そこで、上述した課題を解決すべく本発明者らが鋭意要因調査を進めた結果、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、並びに、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する二官能重合性化合物(A)(以下、単に重合性化合物(A)ともいう)を組み合わせて用い、更に、上記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)(以下、単に光重合開始剤(B)ともいう)を併用することで、表面硬化性と内部硬化性との両立が実現でき、更には吐出安定性も向上することが明らかとなった。その詳細なメカニズムは不明であるが、本発明者らは以下のように推測している。
【0027】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤として一般に知られている、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、及び、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドは、両方とも分子構造中に芳香族環(ベンゼン環)を3つ有している。それに対し、EO-TPOの分子構造中には、芳香族環(ベンゼン環)は2つしかなく、代わりにエチレンオキサイド基を有している。芳香族環および中・長鎖状炭化水素基は、ともに疎水性が強く、CH/π相互作用と呼ばれる弱い親和力も働く。そのため、芳香族環は、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基と親和性を有すると考えられる。それに対して、エチレンオキサイド基と分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基との親和性は、芳香族環の場合と比べて弱いと考えられる。そのため、上記列挙したアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を、重合性化合物(A)と混合した際、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、及び、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドは、上記重合性化合物(A)と相溶するのに対し、EO-TPOは、当該重合性化合物(A)と相溶しにくいことが推測される。
【0028】
その結果、基材上に着弾した本発明のインキの液滴では、EO-TPOが当該液滴の表面に配向しており、その状態で紫外線を照射することで、上記EO-TPOがラジカルを発生させ、インキ膜の表面硬化性をも向上させていると考えられる。一方で、光重合開始剤(B)(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイドやビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド)は、重合性化合物(A)との相溶性が高く、インキ液滴内に均一に存在しているため、主にインキ膜の内部硬化性の向上に寄与していると推測される。
【0029】
なお、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、一般にフォトブリーチング効果を示す。フォトブリーチング効果とは、分解後の光重合開始剤に紫外線の吸収機能が消失し、インキ膜内部への紫外線透過性が向上する効果である。上述した通り、本発明のインキでは、EO-TPOが当該インキの液滴表面に配向しているため、光重合反応の進行とともに、当該エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドがフォトブリーチング効果を発現し、インキ膜内部に紫外線が浸透しやすくなることで、光重合開始剤(B)の反応性が更に向上すると考えられる。その結果、本発明では、従来のインキでは実現できなかった、内部硬化性の一層の向上、及び、当該内部硬化性と表面硬化性との両立が可能となると考えられる。
【0030】
なお、本発明者らが検討したところ、一般式(C)で表される化合物の含有量を、紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下とすることで、インキの表面硬化性が安定的に向上できることが判明した。これは、一般式(C)で表される化合物を一定量以上使用してしまうと、インキに対するEO-TPOの相溶性が高まり、当該EO-TPOがインキ液滴の表面に配向しなくなるためだと推測される。
【0031】
また本発明のインキでは、EO-TPOと重合性化合物(A)との親和性が弱いために、双方の間で分子間相互作用が生じにくいと考えられる。結果として、本発明のインキでは、当該分子間相互作用に起因した非ニュートニアン性の発現が抑えられ、吐出安定性も向上する。
【0032】
ただし、オリゴマーの含有量が前記重合性化合物中5質量%より多い場合、吐出安定性が悪化する可能性がある。詳細な理由は不明であるが、一般にオリゴマーには、ウレタン結合、エステル結合といった、分子間相互作用を形成しやすい結合及び官能基を複数有していることが要因の一つとして考えられる。また、上述した一般式(C)で表される化合物の場合と同様に、一定量以上のオリゴマーの使用は、EO-TPOの相溶性の高まりによると考えられる、表面硬化性の低下にも寄与する恐れがある。
【0033】
なお、前記重合性化合物中の多官能重合性化合物の含有量が65質量%より少ない場合、インキ膜の強度が大きく低下する恐れがある。これは前記重合性化合物中の多官能重合性化合物の量が減ることで、インキ膜中の架橋密度が低下することによると推測される。
【0034】
以上のように、本発明のインキの構成によれば、上述した効果を同時にかつ良好なレベルで両立することが可能となる。
【0035】
続いて以下に、本発明のインキを構成する各成分について、詳細に説明する。
【0036】
<重合性化合物>
本発明のインキにおける重合性化合物とは、後述する光重合開始剤等から発生するラジカル等の開始種により重合または架橋反応を生起し、当該重合性化合物を含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0037】
上記重合性化合物としては、上述した特性を有するものであれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができる。なお「オリゴマー」及び「ポリマー」とは、モノマーが複数個結合した重合体であり、両者は重合度によって分類される。すなわち本明細書では、前記重合度が2~5であるものを「オリゴマー」と呼び、6以上であるものを「ポリマー」と呼ぶ。
【0038】
本発明では、薄膜及び厚膜の硬化性に優れる点で、ラジカル重合性の重合性化合物(ラジカル重合性化合物)が好ましく使用できる。また、当該ラジカル重合性化合物が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、アリル基、ビニル基(ただし、ビニルエーテル基及びアリル基を除く)、不飽和カルボン酸基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び/またはビニルエーテル基を含む化合物が好適に使用できる。なお本願において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を指す。
【0039】
更に本発明では、上記ラジカル重合性化合物が、単官能重合性化合物であっても、二官能以上の多官能重合性化合物であってもよい。また、重合性化合物を1種のみ使用してもよいし、反応速度、インキ膜の物性、インキの物性等を調整する目的で、2種以上の重合性化合物を混合して用いることもできる。重合性化合物中の単官能重合性化合物の割合が大きいと、インキ膜は柔軟になりやすい。重合性化合物中の多官能重合性化合物の割合が大きいと、薄膜及び厚膜の硬化性並びに硬化後のインキ膜の強度が向上する傾向がある。上述した通り、本発明のインキの場合は、薄膜及び厚膜の硬化性並びに硬化後のインキ膜の強度をともに向上させる観点から、前記重合性化合物中の多官能重合性化合物の含有量は65質量%以上であればよい。上記含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0040】
本願において「単官能」とは、1分子中に重合性基を1つのみ有する化合物を指す。また「二官能」「三官能」は、それぞれ、1分子中に重合性基を2つまたは3つ有する化合物を指し、二官能以上を総称して「多官能」と呼ぶこととする。
【0041】
(重合性化合物(A))
本発明のインキは、少なくとも重合性化合物として、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)を含む。上述した通り、重合性化合物(A)をEO-TPOとともに使用することで、基材上に着弾した液滴の表面にEO-TPOが配向する。その状態で紫外線を照射することで、EO-TPOがラジカルを発生させ、インキ膜の表面硬化性をも向上させることが期待される。
【0042】
上記重合性化合物(A)は、1つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とのみからなる化合物である。上記鎖状炭化水素基は、炭素原子及び水素原子のみから構成され、他の元素は含まない。上記重合性化合物(A)において、上記鎖状炭化水素基は、例えば、炭素数4~12のアルキル基、又は炭素数4~12のアルキレン基であってよい。これらの基は、それぞれ(メタ)アクリロイルオキシ基と結合し、アルキル(メタ)アクリレート、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート等を形成する。一方、上記鎖状炭化水素基は、炭素数4~12の直鎖構造を有する基又は分岐構造を有する基であるため、環構造は含まない。すなわち、例えば、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、複素環構造等の環構造を構成する炭素原子が含まれる鎖状炭化水素基は、その炭素数が4~12であったとしても、上記「炭素数4~12の鎖状炭化水素基」には含まれない。従って、例えば、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートといった環構造を含む化合物は、上記「重合性化合物(A)」には含まれない。
【0043】
上述した、EO-TPOとの親和性の弱さ、及び、分子構造中に芳香族環を多数有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤との親和性の強さが好適なものとなることで、上述したメカニズムが良好に機能し、内部硬化性、表面硬化性、吐出安定性、印刷物の強度の全てが特段に優れたインキが得られる。このような理由から、上記鎖状炭化水素基の炭素数は4~12であることが好ましく、5~8であることが特に好ましい。また、同様の理由から、上記鎖状炭化水素基の最大鎖長は3~12であることが好ましく、4~10であることがより好ましく、5~8であることが特に好ましい。
【0044】
なお、鎖状炭化水素基が分岐構造を持たない場合、上記「最大鎖長」は、当該鎖状炭化水素基の炭素数と同一である。一方、鎖状炭化水素基が分岐構造を有する場合、上記「最大鎖長」は当該分岐構造を除外してカウントした炭素数のうち、最も大きい数を指す。例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートの場合、炭素数は8であり、最大鎖長は6である。
【0045】
上記重合性化合物(A)として、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能重合性化合物、及びイソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の単官能重合性化合物が挙げられる。
【0046】
なお本願において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/またはメタクリレートを指す。また本願において「EO」とは「エチレンオキサイド」を指し、「PO」とは「プロピレンオキサイド」を指す。
【0047】
上記列挙した化合物の中でも、薄膜及び厚膜の硬化性に優れ、かつ、強度の高いインキ膜が得られる観点から、多官能重合性化合物を使用することが好ましい。一方で、当該重合性基の数が1~2である場合、十分量のEO-TPOがインキ液滴表面に配向してから重合反応が開始するため、表面硬化性及び内部硬化性のバランスに優れたインキとなる。したがって、膜厚によらず、表面硬化性及び内部硬化性に優れ、また強度にも優れるインキ膜が得られる、という観点から、重合性化合物(A)は、単官能重合性化合物(単官能モノマーともいう)、及び二官能重合性化合物(二官能モノマーともいう)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。特に、重合性化合物(A)は、少なくとも二官能重合性化合物を含むことが好ましい。
【0048】
また、上記硬化性の観点からは、重合性基が全てアクリロイル基である化合物を使用することが好適である。したがって、一実施形態において、重合性化合物(A)は、アクリロイル基を2つ有する二官能モノマーを含むことが好ましい。更にその中でも、吐出安定性に優れるインキとなるという観点から、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,8-オクタンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。吐出安定性、並びに、薄膜及び厚膜の硬化性を、どちらも高いレベルで両立できる点から、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが特に好ましい。また、上述した、鎖状炭化水素基の好適な炭素数及び最大鎖長を考慮すると、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つを使用することが最も好ましい。
【0049】
本発明のインキ中に含まれる、重合性化合物(A)の量は、10~60質量%であることが好ましく、15~50質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることが更に好ましく、20~40質量%であることが特に好ましい。重合性化合物(A)の量が上記範囲内であれば、上述したEO-TPOの液滴表面への配向を促すことができ、薄膜及び厚膜の硬化性に優れたインキが得られる。またインキの吐出安定性が向上する観点からも、重合性化合物(A)の量を上記範囲内に収めることが好適である。
【0050】
また、上述したEO-TPOの液滴表面への配向の効果を好適に発現させる観点から、重合性化合物(A)は、本発明のインキ中のEO-TPOの含有量に対して、2~25倍量含まれることが好ましく、4~20倍量含まれることがより好ましく、6~15倍量含まれることが特に好ましい。
【0051】
(その他重合性化合物)
本発明のインキは、上記重合性化合物(A)で表される化合物以外の重合性化合物(以下「その他重合性化合物」と呼ぶ)を含んでもよい。ただし上述の通り、下記一般式(C)で表される化合物の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下であり(含まなくてもよい)、オリゴマーの含有量が前記重合性化合物中5質量%以下である(含まなくてもよい)ことが好ましい。
【0052】

一般式(C): CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-CO-CH=CH2
【0053】
上記一般式(C)中、nは2~10の整数を表す。
【0054】
(一般式(C)で表される化合物)
上記一般式(C)で表される化合物の具体例として、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、及び、4以上の連結したエチレンオキサイド基の両末端にアクリロイル基を有する化合物(ポリエチレングリコール(エチレンオキサイド基数≧4)ジアクリレート)等が挙げられる。
【0055】
本発明のインキが、上記一般式(C)で表される化合物を含む場合、ジエチレングリコールジアクリレート、及び/または、トリエチレングリコールジアクリレートが、吐出安定性や、インキ膜の薄膜及び厚膜の硬化性に特段に優れたインキが得られることから好ましく使用される。
【0056】
また、吐出安定性や、インキ薄膜及びインキ厚膜の硬化性の両立の観点から、上記一般式(C)で表される化合物を含む場合、その含有量は、インキ全量中10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
【0057】
(オリゴマー)
本発明のインキがオリゴマーを含む場合、薄膜及び厚膜の硬化性や、強度に優れたインキ膜が得られる点から、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましく使用できる。また同様の理由により、オリゴマーに含まれる重合性基の数は、1分子あたり1~15であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~2であることが特に好ましい。更に、吐出安定性の観点から、オリゴマーの重量平均分子量は400~10,000であることが好ましく、500~5,000であることが特に好ましい。
【0058】
なお上記重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(以下GPC)により求めることができる。具体的には、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を備えたGPC(例えば、東ソー社製「HLC-8320GPC」)にて、展開溶媒にDMFを使用して測定されたポリスチレン換算分子量として得られる値である。
【0059】
上記(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとして、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。またオリゴマーは、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の官能基を有していてもよい。
【0060】
本発明のインキが、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の官能基を有するオリゴマーを含む場合、その重量平均分子量は、100~2,000であることが好ましく、300~1,600であることが特に好ましい。オリゴマーの重量平均分子量が上記範囲内であれば、吐出安定性と、インキ膜の強度との両立が可能となる。
【0061】
また、吐出安定性や、インキ膜の強度の観点から、上記オリゴマーを含む場合、その含有量は、インキ全量中3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
上記一般式(C)で表される化合物、及び、オリゴマー以外の、その他重合性化合物として、上記重合性化合物(A)とは異なる、単官能重合性化合物(単官能モノマーともいう)又は多官能重合性化合物(多官能モノマーともいう)を含んでよい。
例えば、単官能モノマーとして、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、5-メチル-3-ビニルオキサゾリジン-2-オン、アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0063】
また、二官能モノマーの例として、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール(EO基数≧4)ジメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性(プロポキシ化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
なかでも、表面硬化性と内部硬化性との両立の観点から、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルからなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルからなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが特に好ましい。
【0064】
また、三官能モノマーの例として、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性(エトキシ化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(プロポキシ化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
また、四官能モノマーの例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
また、五官能モノマーの例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0067】
また、六官能モノマーの例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
本発明のインキが、上記列挙したような、上記一般式(C)で表される化合物、及び、オリゴマー以外の、その他重合性化合物を含む場合、その含有量は、インキ全量中5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であること特に好ましい。
【0069】
一実施形態において、本発明のインキを構成する重合性化合物は、上記重合性化合物(A)に加えて、プロピレンオキサイド基(PO基)を有する重合性化合物を含むことが好ましい。一般に、プロピレンオキサイド基を有する重合性化合物を一定量含むインキは、硬化性及び吐出安定性が向上する。また、プロピレンオキサイド(PO)基は、構造自体はエチレンオキサイド(EO)基と類似しているが、当該EO基とは異なり、疎水性が強い。そのため、PO基を有する重合性化合物の含有量を制御することが好ましい。具体的にはPO基を有する重合性化合物の含有量に対する、重合性化合物(A)の含有量の比を調整することが好ましい。上記比を適切に調整した場合、上記PO基を有する重合性化合物が、上述した、EO-TPOの配向、及び、分子構造中に芳香族環を多数有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の均一化を阻害することを抑制し、吐出安定性を好適な状態に保ちつつ、内部硬化性、表面硬化性、印刷物の強度の全てが特段に優れたインキが容易に得られると考えられる。
このような観点から、PO基を有する重合性化合物の含有量に対する、重合性化合物(A)の含有量の比は、0.1~2.2であることが好ましく、0.3~1.6であることがより好ましく、0.6~1.3であることが特に好ましい。
【0070】
また、同様の理由により、本発明のインキでは、PO基を有する重合性化合物の含有量に対する、EO-TPOの含有量の比が、0.05~0.8であることが好ましく、0.08~0.65であることがより好ましく、0.1~0.4であることが特に好ましい。
【0071】
一実施形態において、重合性化合物として、重合性化合物(A)と好ましく併用できるPO基を有する重合性化合物は、主鎖に対する置換基としてPO基を有する(メタ)アクリレートの単官能モノマー及び多官能モノマーのいずれであってよい。他の実施形態において、PO基が主鎖に組込まれた(PO変性の)(メタ)アクリレートの単官能モノマー及び多官能モノマーのいずれであってもよい。
【0072】
具体例として、PO変性(プロポキシ化)2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、PO変性(プロポキシ化)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性(プロポキシ化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
なかでも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び、PO変性(プロポキシ化)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の化合物を好適に使用することできる。
【0073】
一実施形態において、本発明のインキを構成する重合性化合物は、重合性化合物(A)に加えて、上記PO基を有する重合性化合物を含むことが好ましい。上記PO基を有する重合性化合物の含有量は、インキ全量中5~75質量%であることが好ましく、7~60質量%であることがより好ましく、9~52質量%であることがさらに好ましい。
他の実施形態において、本発明のインキを構成する重合性化合物は、重合性化合物(A)に加えて、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルの含有量は、インキ全量中5~45質量%であることが好ましく、8~38量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
さらに他の実施形態において、本発明のインキを構成する重合性化合物は、重合性化合物(A)に加えて、PO基を有する重合性化合物と(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルとを含むことが好ましい。PO基を有する重合性化合物と(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルとの含有量(合計量)は、インキ全量中10~80質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましい。
【0074】
<光重合開始剤>
本発明のインキは、光重合開始剤として、EO-TPOと、当該EO-TPOとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)を含む。上述した通り、光重合開始剤(B)、EO-TPO、及び、重合性化合物(A)を併用することで、内部硬化性と表面硬化性との両立が可能となり、更にはインキの吐出安定性も向上する。
【0075】
なお、本願における「エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド」には、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドの多量体(以下、本明細書では「EO-TPO多量体」ともいう)も含まれるものとする。
【0076】
EO-TPOは市販されているものを使用することができ、具体的には、IGM社製「Omnirad TPO-L」、「OMNIPOL TP」、Lambson社製「Speedcure TPO-L」、Hubei Gurun Technology社製「GR-TPO-L」 等が挙げられる。なお、OMNIPOL TPはEO-TPO多量体である。
【0077】
また光重合開始剤(B)として、例えば、IGM RESINS社製の「Omnirad TPO」、「Omnirad 819」等が挙げられる。また、国際公開第2017/086224号及び国際公開第2020/049378号に記載されているアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤や、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウムを使用することもできる。なお、これらの光重合開始剤(B)は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
EO-TPOの配合量は、本発明のインキ中1~14質量%であることが好ましく、2~12質量%であることが更に好ましく、4~10質量%であることが特に好ましい。EO-TPOの配合量が上記範囲内であれば、内部硬化性、表面硬化性、印刷物の強度の全てを両立することが可能となる。
【0079】
また、EO-TPOの配合量の場合と同様の理由により、光重合開始剤(B)の配合量は、本発明のインキ中1~12質量%であることが好ましく、2~11質量%であることが更に好ましく、4~10質量%であることが特に好ましい。
【0080】
更に、内部硬化性、表面硬化性、印刷物の強度の全てが特段に優れたインキを得ることが容易となる点から、EO-TPOの含有量と、光重合開始剤(B)の含有量との総量は、本発明のインキ中8~20質量%であることが好ましく、8~14質量%であることが特に好ましい。
【0081】
加えて、内部硬化性、表面硬化性、印刷物の強度の全てを両立するという観点から、上記光重合開始剤(B)の配合量に対する、上記EO-TPOの配合量の比率を、0.4~3.0とすることが好適である。
【0082】
本発明では、EO-TPOと光重合開始剤(B)との2種のみがインキに使用されてもよいし、硬化性及び塗膜柔軟性を更に向上させるため、これら以外の光重合開始剤(以下、「その他光重合開始剤」とも呼ぶ)が更に併用されてもよい。
【0083】
その他光重合開始剤の具体例として、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、アルキルアミノアセトフェノン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等が挙げられる。なお、これらのその他光重合開始剤は、上記列挙したうちの1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記ベンゾフェノン系光重合開始剤は、市販されているものを使用することができ、例えば、IGM RESINS社製の「Omnirad BP」、「Omnirad BMS」、「Ominirad 4PBZ」、「OMNIRAD EMK」、「Esacure 1001M」、Rahn AG社製の「GENOPOL BP-1」「GENOPOL BP-2」等が挙げられる。
【0085】
また上記チオキサントン系光重合開始剤の市販品の例として、IGM RESINS社製の「Omnirad ITX」、「Omnirad DETX」、「Omnipol TX」、「Omnipol BL 728」(ただし当該Omnipol BL 728は、Omnipol TXを主成分とする高分子光重合開始剤の混合物である)等が挙げられる。
【0086】
また上記ヒドロキシアセトフェノン系開始剤の市販品の例として、IGM RESINS社製の「Omnirad 127」、「Omnirad 184」、「Ominirad 1173」、「Omnirad 2959」、「Esacure KIP150」、「Esacure KIP160」、「Esacure ONE」等が挙げられる。
【0087】
また上記アルキルアミノアセトフェノン系開始剤の市販品の例として、IGM RESINS社製の「Omnirad 907」、「Omnirad 369」、「Omnirad 379」等が挙げられる。
【0088】
また上記オキシムエステル系開始剤の市販品の例として、BASF社製の「IRGACURE OXE01」、「IRGACURE OXE02」、「IRGACURE OXE04」等が挙げられる。
【0089】
上記列挙したもの以外にも、その他光重合開始剤として、例えばIGM RESINS 社製の「Omnirad 651」、「Omnirad MBF」等が使用できる。
【0090】
なかでも、表面硬化性と内部硬化性との両立の観点から、その他光重合開始剤として、ヒドロキシアセトフェノン系開始剤、アルキルアミノアセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、及び、チオキサントン系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上を好ましく使用でき、ベンゾフェノン系光重合開始剤、及び/または、チオキサントン系光重合開始剤が特に好ましく使用できる。
【0091】
その他光重合開始剤としてベンゾフェノン系光重合開始剤を使用する場合、その配合量は、本発明のインキ全量に対して0.5~4質量%であることが好ましく、1~3質量%であることが特に好ましい。また、その他光重合開始剤としてチオキサントン系光重合開始剤を使用する場合、その配合量は、本発明のインキ全量に対して0.1~4質量%であることが好ましく、0.2~2質量%であることが特に好ましい。ベンゾフェノン系光重合開始剤やチオキサントン系光重合開始剤の配合量を上記範囲内とすることで、本発明のインキの、表面硬化性及び内部硬化性が、好適なバランスを維持しながら、ともに特段に優れたものとなる。
【0092】
<着色剤>
本発明のインキは、着色剤を含む。上記着色剤として、従来既知の染料及び顔料が使用できるが、本発明では、印刷物の発色性(白色のインキの場合は隠蔽性、メタリックインキの場合は光輝性)、並びに、インキの保存安定性及び吐出安定性が向上する観点から、顔料を使用することが好適である。
【0093】
上記顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えば下記のカラーインデックス名で表される、有機顔料または無機顔料が使用できる。例えば、レッド顔料として、C.I.ピグメントレッド5、7、12、17、48(Ca)、48(Mn)、49:2、57(Ca)、57:1、112、122、123、147、149、150、166、168、176、177、178、184、188、202、209、242、255、264、266、269、282等;バイオレット顔料として、C.I.ピグメントバイオレット19等;オレンジ顔料として、C.I.ピグメントオレンジ5、13、34、38、43、61、62、64等;ブルー顔料として、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60、C.I.バットブルー4、60等;グリーン顔料として、C.I.ピグメントグリーン7、26,36、50、58等;イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、139、147、150、151、154、155、180、185、213等;ブラック顔料として、C.I.ピグメントブラック1、7等;並びに、ホワイト顔料として、C.I.ピグメントホワイト6、18、21等;メタリック顔料として、C.I.ピグメントメタル1、2等が、希望する色再現性及び発色性に応じて、任意に使用できる。なお上記列挙した顔料は、2種類以上を併用してもよい。
【0094】
上記顔料の平均粒子径(D50)は、50~500nmであることが好ましく、100~400nmであることがより好ましい。D50がこの範囲内であると、発色性、隠蔽性または光輝性、並びに、インキの保存安定性及び吐出安定性が優れる。更に、表面硬化性及び内部硬化性の悪化を抑制することも可能となる。なお上記D50とは、体積基準でのメジアン径を表し、インキを酢酸エチル等で200~1000倍に希釈したのち、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製「ナノトラックUPA-EX150」)にて測定することができる。
【0095】
また、インキ中の顔料の含有量は、当該インキの色及び使用目的により適宜選択されるが、例えば、当該インキ全量に対して0.1~30質量%であることが好ましい。また、発色性、隠蔽性または光輝性、並びに、インキの保存安定性及び吐出安定性の観点から、白色のインキ及びメタリックインキの場合を除き、上記顔料の含有量は、0.5~15質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることが更に好ましい。一方で白色のインキの場合は、上記顔料の含有量が5~30質量%であることがより好ましく、15~25質量%であることが更に好ましい。またメタリックインキの場合は、上記顔料の含有量が0.5~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることが更に好ましい。
【0096】
なお、求められる用途や画質に応じて、本発明のインキを、顔料の含有量が少ない淡色(例えば、ライトイエロー色、ライトマゼンタ色、ライトシアン色、ライトブラック色)のインキとすることもできる。その際、上記列挙した顔料を、淡色インキの着色剤として使用することができる。
【0097】
<顔料分散樹脂>
本発明のインキが顔料を含む場合、当該顔料の初期分散性、保存安定性、並びに、インキの吐出安定性を向上させるために、顔料分散樹脂を使用することができる。上記顔料分散樹脂は、市販されているものを使用することもできるし、従来既知の方法で合成したものを使用することもできる。市販品の具体的な例として、味の素ファインテクノ社製「アジスパー-PB-821」、「アジスパー-PB-822」、ビックケミー社製「BYKJET-9150」、「BYKJET-9151」、「BYKJET-9152」、ルーブリゾール社製「ソルスパース32000」、「ソルスパース39000」、「ソルスパースJ180」「ソルスパースJ200」等が挙げられる。また、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の酸基含有重合性化合物;アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有重合性化合物;並びに、上記列挙した、本発明のインキに使用可能な重合性化合物;を共重合させた樹脂を、顔料分散樹脂として用いてもよい。
【0098】
上記顔料分散樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であることが好ましく、10,000~50,000であることがより好ましく、15,000~30,000であることが更に好ましい。上記範囲内であれば、重合性化合物に対する顔料分散樹脂の相溶性が良好となり、インキの保存安定性及び吐出安定性が向上する。また、顔料分散樹脂による印刷物の光沢性低下が抑制され、発色性、隠蔽性または光輝性が良化する。
【0099】
なお、重量平均分子量の測定方法は上述したオリゴマーの場合と同様である。
【0100】
白色インキである場合を除き、顔料分散樹脂の添加量は、顔料の総量に対して、20~120質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましい。また白インキの場合は、顔料分散樹脂の添加量は、顔料の総量に対して1~100質量%であることが好ましく、3~50質量%であることがより好ましい。上記配合量の範囲で使用することで、顔料の初期分散性及び保存安定性に優れた顔料分散体を得ることができる。
【0101】
<その他の成分>
本発明のインキには、上記成分以外に、重合禁止剤、表面調整剤、有機溶剤、水、及び、その他添加剤を併用することができる。
【0102】
(重合禁止剤)
経時での保存安定性を高め吐出安定性が向上できる点、表面硬化性と内部硬化性とのバランスを整えることができる点、更には、印刷物の硬化しわや経時でのカールが抑制できる点から、本発明のインキには、重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤として、ヒンダードフェノール系化合物、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、フェノチアジン系化合物、リン系化合物、及び、ニトロソフェニルヒドロキシルアミン系化合物が、好適に使用される。具体的には、4-メトキシフェノール、t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジクミルフェノチアジン、トリフェニルホスフィン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩等が挙げられる。上述した、重合禁止剤による効果を好適に発現させることができる点から、重合禁止剤の含有量は、本発明のインキ全量に対して0.01~2質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
【0103】
(表面調整剤)
本発明のインキには、吐出安定性の向上、基材に対する濡れ広がり性の改善、密着性の向上、及び、ハジキの防止を目的として、表面調整剤を添加することが好ましい。表面調整剤として、例えば、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等が使用できる。これらの中でも、吐出安定性の向上、表面張力低下能、密着性の向上、及び、重合性化合物に対する相溶性の観点から、シリコーン系表面調整剤を使用することが好ましく、ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤を使用することが特に好ましい。
【0104】
シリコーン系表面調整剤を使用する場合、その含有量は、インキ中0.1~5.0質量%であることが好ましい。含有量を0.1質量%以上にすることにより、基材に対する濡れ広がり性を容易に向上でき、密着性も向上する。一方、含有量を5.0質量%以下にすることより、インキの保存安定性、吐出安定性を確保することが容易となる。
【0105】
(有機溶剤、水)
本発明のインキでは、吐出安定性の向上、当該インキの低粘度化、基材に対する濡れ広がり性及び密着性の向上のために、有機溶剤及び/または水を使用してもよい。有機溶剤及び/または水を含む場合、インキ全量中0.01~30質量%であることが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることが更に好ましい。また、吐出安定性、乾燥性、並びに、基材に対する濡れ広がり性及び密着性の点から、有機溶剤を使用する場合は、沸点が140~300℃であるものを用いることが好ましい。
【0106】
有機溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、アルキレングリコールジアセテート類、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、アルカンジオール類、ラクタム類、ラクトン類、その他含窒素系溶剤、その他含酸素系溶剤が使用できる。
【0107】
なかでも、上述した、有機溶剤使用による効果が好適に発現する観点から、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましく、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及び、ジエチレングリコールジエチルエーテルから選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0108】
(その他の成分)
本発明のインキには、必要に応じて、上述した成分以外に、紫外線吸収剤、褪色防止剤、その他高分子化合物等を使用してもよい。これらの成分は、それぞれ従来既知のものを任意に用いることができる。
【0109】
<インキの製造方法>
本発明のインキは、従来既知の方法によって製造することができる。例えば、以下のように製造できるが、インキの製造方法は以下に限定されるものではない。まず始めに、着色剤、重合性化合物(一部は後述するインキ調製時に使用する)、並びに、必要に応じて顔料分散樹脂、表面調整剤、重合禁止剤、有機溶剤及び/または水等を混合した後、ペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって分散処理を行い、着色剤分散体を調製する。
【0110】
次いで、得られた着色剤分散体に対して、所望のインキ特性を有するように、重合性化合物の残部、EO-TPO及び光重合開始剤(B)を含む光重合開始剤、並びに、必要に応じて表面調整剤、重合禁止剤、有機溶剤及び/または水等を添加し、よく混合したのち、フィルター等で濾過し粗大粒子を濾別し、インキとする。
【0111】
着色剤分散体を製造する場合、当該着色剤分散体は着色剤を3~50質量%含むことが好ましく、5~40質量%含むことがより好ましく、10~30質量%含むことが特に好ましい。
【0112】
また着色剤分散体の製造時に使用する重合性化合物として、二官能モノマーを使用することが好ましい。当該二官能モノマーは、重合性化合物(A)であってもよい。また着色剤分散体及び当該着色剤分散体を使用して製造したインキの保存安定性、粘度、並びに、吐出安定性の点から、当該二官能モノマーが、重合性化合物(A)であるか、EO鎖またはPO鎖を主骨格としたモノマーであることが好ましい。なかでも、保存安定性及び吐出安定性の点から、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0113】
<印刷物の製造方法>
本発明の一実施形態は、本発明のインキを使用した印刷物の製造方法に関する。上記印刷物の製造方法として、例えば、基材上に当該インキを吐出する工程(工程1)、及び、吐出したインキを備えた基材に対し、紫外線照射手段から紫外線を照射する工程(工程2)、を含む方法が挙げられる。
【0114】
なお本発明では、基材上の同一箇所に、同一のインクジェットヘッドから同一のインキを複数回吐出及び付与する方法、すなわち、当該基材上の同一箇所に、上記工程1を複数回施す方法(マルチパス印刷方式)を採用してもよい。しかし本発明の場合は、上述した本発明の効果が十分に発揮される点から、基材上の同一箇所に、同一のインクジェットヘッドから同一のインキを1回だけ吐出及び付与する方法、すなわち、当該基材上の同一箇所に、上記工程1を1回だけ施す方法(ワンパス印刷方式)を採用することが好ましい。
【0115】
上記ワンパス印刷方式は、例えば、ラインプリンター等を用いることで実施することができる。その際の印刷速度は、生産性及び良好な品質を有する印刷層を得るという観点から、20~150m/分とすることが好ましく、30~100m/分とすることが特に好ましい。
【0116】
<基材>
本発明のインキを用いた印刷物の製造方法において使用される基材として、樹脂フィルム基材または紙基材が好ましく使用できる。また上記樹脂フィルム基材として、厚さが10~90μmであり、かつ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、及び、ナイロンからなる群から選択される材質を含むものが好ましく選択される。一方、上記紙基材として、コート紙、アート紙、ラミネート紙等が好ましく選択される。本発明のインキは、上記列挙した基材によって形成されるパッケージの印刷用に好適に使用され、特に、食品包装用である当該パッケージの印刷用として好適である。
【0117】
上記「ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、及び、ナイロンからなる群から選択される材質を含むもの」には、多層構造を有し、かつ、上記ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びナイロンからなる群から選択された材質からなる層を少なくとも1つ以上有する樹脂フィルム基材(積層フィルム基材)も含むものとする。また、パッケージの強度向上、酸素遮断等を目的として、上記積層フィルムを構成する層の中に、AL(アルミニウム箔)、VM(真空蒸着)フィルム(アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルム等)等からなる層があってもよい。
【0118】
<インキ吐出手段>
本発明のインキはインクジェット記録用に好適に使用できる。従って、工程1におけるインキの吐出工程では、インクジェットヘッドを用いる。
【0119】
インクジェットヘッドから吐出される、本発明のインキのドロップボリュームは2pl以上50pl以下であることが好ましく、3pl以上20pl以下であることが更に好ましい。またインクジェットヘッドの設計解像度は600dpi以上であることが好ましい。上記条件を満たすインクジェットヘッドとして、具体的には、京セラ社製KJ4A-AA、KJ4A-TA、KJ4A-RH、富士フイルム社製Samba G3L、セイコーエプソン社製S3200、S1600、S800、I3200、I1600、コニカミノルタ社製KM1024i、KM1024、リコー社製MH5320、MH5340、MH5240、MH5440等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。
【0120】
また、本発明のインキが適切な粘度となるよう、インクジェットヘッドに備えられたヒーター等の加温装置で、当該インキを加温しながら吐出することができる。連続的にインキを安定して吐出するという観点から、吐出時のインキの粘度が20mPa・s以下となるように加温することが好ましく、15mPa・s以下となるように加温することが更に好ましい。
【0121】
<紫外線照射手段>
上記工程2で使用する紫外線照射手段として、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザーランプ、キセノンランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)等を使用することができる。
【0122】
<紫外線発光ダイオード>
上記紫外線照射手段のうち、UV-LEDは、照射される紫外線波長幅が狭い、小型化が容易である、等の特徴を有する。そのためインキ中に含まれる光重合開始剤及び着色剤の特性に合わせて、UV-LEDの照射波長や使用方法をある程度任意に調整することができる。工程2において使用するUV-LEDのピーク波長は、280~420nmであることが好ましく、320~410nmであることが更に好ましく、340~400nmであることが特に好ましい。
【0123】
またUV-LEDは、その小ささゆえに複数個並べて設置することができる。そのため、複数個のLEDを並べ、基材に対する照射強度を高めて使用することができる。なおその際、ピーク波長の異なる複数のUV-LEDを並べて使用してもよい。また工程2において、後述する紫外線ランプ等のUV-LED以外の紫外線照射手段と、UV-LEDとを併用してもよい。
【0124】
<紫外線ランプ>
上記紫外線照射手段として、UV-LED以外の紫外線照射手段(紫外線ランプ)を使用する場合、UV-A領域の紫外線を効率的に発光させインキ被膜の内部まで十分に照射光を到達させることができるという観点から、メタルハライドランプが好ましく使用される。なお、上述したUV-LEDと組み合わせて使用することもできる。
【0125】
工程2において、基材上での紫外線の最高照度は2W/cm2以上であることが好ましく、3mW/cm2以上であることがより好ましい。また、基材上に照射する際の積算光量は、インキ中に含まれる着色剤、重合性化合物や光重合開始剤の種類及び含有量によっても異なるが、100mJ/cm2以上とすることが好ましく、150mJ/cm2以上とすることがより好ましく、200mJ/cm2以上とすることが更に好ましい。
【0126】
更に、上記工程1の終了後、工程2が開始されるまでの時間(インキが基材に付着した後、紫外線の照射を開始するまでの時間)は、0.03~3秒とすることが好ましく、0.04~2.5秒とすることがより好ましく、0.06~2秒とすることが更に好ましい。これにより、表面硬化性及び内部硬化性のバランスに優れた本発明のインキに対し、上記条件で紫外線を照射することで、当該インキのドット形成性が良好になり、インキ同士が混色することもなく、良好な品質を有する印刷物を得ることができる。
【0127】
<インキセット>
本発明の一実施形態では、色が異なるインキを複数用意し、インキセットとして使用してもよい。なお、インキセットを構成するすべてのインキが、上述した本発明のインキの要件を満たすことが好ましい。
【0128】
インキセットを使用して印刷物を製造する場合、当該インキセットを構成するインキの数だけ上記工程1を行ったのち、上記工程2を行ってもよい。別法として、当該インキセットを構成するインキの一部について連続して工程1を行ったのちに工程2を行い、更に、残りの(未吐出の)インキについて工程1及び工程2を続けて行ってもよい。しかし本発明の一実施形態である印刷物の製造方法では、上述した表面硬化性と内部硬化性とのバランスに優れるという本発明のインキの特性を最大限活かす観点から、上記工程1を行うごとに、上記工程2を行うことが好ましい。
【0129】
<仮硬化>
「上記工程1を行うごとに、上記工程2を行う」とは、インキが基材に着弾したのち、次のインキが着弾する前に、前記紫外線照射手段から紫外線を照射して上記基材上のインキを部分的に硬化させることを指し、一般には「仮硬化」と呼ばれる。本発明において仮硬化を行う場合、当該仮硬化に使用する紫外線照射手段は、UV-LEDであることが好ましい。また、上記仮硬化における、基材上での紫外線の最高照度は2~20W/cm2であることが好ましく、5~15W/cm2であることがより好ましい。
【0130】
<本硬化>
一方、上述した仮硬化に対し、インキセットを構成する全てのインキを基材上に吐出した後に、当該基材上のインキを完全に硬化させるために実施する工程2は、一般に「本硬化」と呼ばれる。すなわち、インキセットを用いた印刷物の製造において工程2を複数回行う場合、最後に行う工程2は仮硬化ではなく本硬化である。本硬化は、上記した2W/cm2以上の最高照度、及び100mJ/cm2以上の積算光量で行うことができる。
【実施例0131】
以下に、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。また特に断らない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を表す。
【0132】
<1>インキ1~67の製造
インキ作製に先立ち、ブラック顔料分散体を作製した。顔料(Orion Engineered Carbons社「Special Black 350」)20部、顔料分散樹脂(ルーブリゾール社製「ソルスパース32000」)10部、及び、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA、Miwon社製「Miramer M222」)70部を、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌混合した後、横型サンドミルで約1時間分散することによって、ブラック顔料分散体を作製した。
次いで、下表1に記載した配合となるよう、上記で作製したブラック顔料分散体に、重合性化合物、光重合開始剤、表面調整剤を順次撹拌しながら加え、上記光重合開始剤が溶解するまで穏やかに混合した。そして、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去することでブラック色のインキを得た。なお、各原料の添加順は順不同であってよい。
【0133】
【表1】
【0134】
【表1】
【0135】
【表1】
【0136】
【表1】
【0137】
【表1】
【0138】
表1に記載した原料名の詳細は、以下に示すとおりである。
<重合性化合物(A)>
・ビスコート#195:1,4-ブタンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・ビスコート#230:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・ビスコート#260:1,9-ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・CD595:1,10-デカンジオールジアクリレート(Sartomer社製)
・SR341:3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート(Sartomer社製)
・IBA:イソブチルアクリレート(東亞合成社製)
・INNA:イソノニルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・LA:ラウリルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
<その他重合性化合物>
(一般式(C)で表される化合物)
・Photomer 4050:ポリエチレングリコール200ジアクリレート(EO基数=4~5)(IGM RE SINS社製)
・Photomer 4054:ポリエチレングリコール400ジアクリレート(EO基数≒9)(IGM RE SINS社製)
(オリゴマー)
・Ebecryl LEO 10552:アミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、3.5官能、重量平均分子量1,000(Allnex社製)
・CN371:アミン変性アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、2官能、重量平均分子量1,600(Sartomer社製)
(その他)
・Miramer M222:ジプロピレングリコールジアクリレート(Miwon社製)
・SR9003:プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer社製)
・VEEA:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製)
・アロニックスM-350:トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(東亞合成社製)
・ビスコート#192:2-フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・ビスコート#160:ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・NVC:N-ビニルカプロラクタム(BASF社製)
・4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
<光重合開始剤>
・Omnirad TPO-L:エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(IGM RESINS社製)
・Omnipol TP:(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド多量体(IGM RESINS社製)
・Omnirad TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(IGM RESINS社製)
・Omnirad 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(IGM RESINS社製)
・Omnirad BMS:[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメ タン(IGM RESINS社製)
・ESACURE 1001M:1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン
・Omnipol BL 728:ポリブチレングリコール-ビス(9-オキソ-9H-チオキサンテニロキシ)アセテート(数平均分子量660)を主成分とする高分子光重合開始剤の混合物(IGM RESINS社製)
・Omnirad DETX:2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン(IGM RESINS社製)
・ESACURE ONE:オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-[1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン](IGM RESINS社製)
・ESACURE KIP160:1,1-(オキシジ-4,1-フェニレン)ビス(2-ヒドロキシ-メチルプロパン-1-オン)(IGM RESINS社製)
・Omnirad 379:2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(IGM RESINS社製)
<その他添加剤>
・TEGO GLIDE 432:ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤(エボニック社製)
・BYK-331:ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤(ビックケミー社製)
・BYK-UV 3510:ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤(ビックケミー社製)
・TEGORAD 2300:ポリエーテル変性シリコーンアクリレート(エボニック社製)
・BYK-350:アクリル系表面調整剤(ビックケミー社製)
【0139】
<2>印刷物の作製
上記で作製したインキを使用し、以下のように印刷物を製造した。
基材を搬送できるコンベヤの上部に京セラ社製インクジェットヘッド(解像度600dpi×600dpi)を設置し、更に、基材の搬送方向に対して下流側に、本硬化用紫外線ランプ(GEW社製240W/cm2メタルハライドランプ)を搭載したインクジェット印刷装置(トライテック社製「OnePassJET」)を準備したのち、上記インクジェットヘッドに、上記で製造したインキをそれぞれ充填した。次いで、リンテック社製PET基材「PET50(K2411)」をコンベヤ上に固定したのち、当該コンベヤを50m/minの速度で駆動させ、上記PET基材がインクジェットヘッドの設置部を通過する際に、吐出液滴量14plの印字条件で画像を印刷した。そして、インキの吐出後も、そのままコンベヤを同じ速度で駆動させ、PET基材が本硬化用紫外線ランプの設置部を通過する際に、紫外線の照射を行い、印刷物を作製した。
なお、積算光量が200mJ/cm2になるようにあらかじめ本硬化用紫外線ランプの出力を調整した。また、上記画像として、印字率100%のベタ画像、印字率25%の淡トーンベタ画像の印刷を行った。
【0140】
[実施例1~57、比較例1~10]
上記で作製したインキ及び印刷物を使用して、以下に示す評価を行った。評価結果は、表1に示した通りであった。
【0141】
<薄膜表面硬化性評価>
上記方法により作製した、印字率25%の淡トーンベタ画像印刷物の表面を綿棒で擦り、当該綿棒に未硬化状態のインキが付着するかどうかを確認した。インキが付着した場合は、上記インクジェット印刷装置のコンベヤに印刷物を固定し、インキの印刷を行わずに、本硬化用紫外線ランプの照射のみを行ったのち、再度、綿棒で擦った際のインキの付着の有無を確認した。この所作を繰り返し、綿棒に未硬化状態のインキが付着しなくなるまでに要した通過回数を確認した。評価基準は下記の通りとし、2点以上を実用可能とした。
(評価基準)
4:通算1回通過させた時点で(追加での紫外線照射を必要とすることなく)、綿棒に未硬化状態のインキが付着しなくなった
3:通算2回通過させた(追加で1回紫外線照射を行った)時点で、綿棒に未硬化状態のインキが付着しなくなった
2:通算3回通過させた(追加で2回紫外線照射を行った)時点で、綿棒に未硬化状態のインキが付着しなくなった
1:綿棒に未硬化状態のインキが付着しなくなるまで、紫外線ランプの照射を通算4回以上通過させる(追加で3回以上紫外線照射を行う)必要があった
【0142】
<厚膜内部硬化性評価>
上記方法により作製した、印字率100%のベタ画像印刷物にカッターで切り込みを入れて切り込みに対して交差するようにニチバン社製セロハンテープ(幅18mm)をしっかり貼り付けた。そして、セロハンテープの端を持ち、60度の角度を保ちながら瞬間的に引き剥がし、当該セロハンテープを剥がした後の当該セロハンテープの粘着面を目視で評価することにより内部硬化性の評価を行った。当該セロハンテープの粘着面にインキが付着した場合は、上記インクジェット印刷装置のコンベヤに印刷物を固定し、インキの印刷を行わずに、本硬化用紫外線ランプの照射のみを行ったのち、再度セロハンテープへのインキの付着有無を確認した。この所作を繰り返し、セロハンテープにインキが付着しなくなるまでに要した通過回数を確認した。評価基準は下記の通りとし、2点以上を実用可能とした。
(評価基準)
4:通算1回通過させた時点で(追加での紫外線照射を必要とすることなく)、セロハンテープに未硬化状態のインキが付着しなくなった
3:通算2回通過させた(追加で1回紫外線照射を行った)時点で、セロハンテープに未硬化状態のインキが付着しなくなった
2:通算3回通過させた(追加で2回紫外線照射を行った)時点で、セロハンテープに未硬化状態のインキが付着しなくなった
1:セロハンテープに未硬化状態のインキが付着しなくなるまで、紫外線ランプの照射を通算4回以上通過させる(追加で3回以上紫外線照射を行う)必要があった
【0143】
<インキ膜強度評価>
上記方法により作製した、印字率100%ベタ画像印刷物の表面をコインで擦過し、印刷物に傷がつくかどうかを確認した。傷がついた場合は、上記インクジェット印刷装置のコンベヤに印刷物を固定し、インキの印刷を行わずに、本硬化用紫外線ランプの照射のみを行ったのち、再度、コインで擦過した際の印刷物の傷の有無を確認した。この所作を繰り返し、印刷物に傷がつかなくなるまでに要した通過回数を確認した。評価基準は下記の通りとし、2点以上を実用可能とした。
(評価基準)
4:通算1回通過させた時点で(追加での紫外線照射を必要とすることなく)、コイン擦過による傷がつかなかった
3:通算2回通過させた(追加で1回紫外線照射を行った)時点で、コイン擦過による傷がつかなかった
2:通算3回通過させた(追加で2回紫外線照射を行った)時点で、コイン擦過による傷がつかなかった
1:コイン擦過による傷がつかなくなるまで、紫外線ランプの照射を通算4回以上通過させる(追加で3回以上紫外線照射を行う)必要があった
【0144】
<吐出安定性評価>
温度調整が可能なインクジェットヘッド(東芝テック社製「CA4」、ノズル数318本)を設置した治具に、上記で作製したインキそれぞれ充填した。次いで、吐出時のインキ粘度が8~9mPa・sになるようにヘッドの温度をコントロールし、インキが吐出されていないノズルがないことを確認したのち、6kHzの駆動周波数でインキの連続吐出を行った。そして、60分間の連続吐出後に吐出不能になったノズルの数(ノズルロス数)を確認することで、吐出安定性の評価を行った。評価基準は下記の通りとし、2点以上を実用可能とした。
(評価基準)
4:ノズルロス数が2本以下であった
3:ノズルロス数が3~5本であった
2:ノズルロス数が6~10本であった
1:ノズルロス数が11本以上であった
【0145】
評価の結果、重合性化合物(A)、EO-TPO、光重合開始剤(B)を含み、オリゴマーの含有量、多官能重合性化合物の含有量、一般式(C)で表される化合物の含有量に関する規定を満たす実施例1~57では、評価を行った全ての項目で実用可能な品質を有していることが確認できた。
【0146】
一方、比較例1では、重合性化合物(A)を含まないことからEO-TPOが表面に配向しにくく、薄膜表面硬化性が実用レベルに至らない結果となり、またそれに伴い、インキ膜強度も悪化したと考えられる。また、重合性化合物(A)を含む場合と比べて、重合性化合物とEO-TPOとの間で分子間相互作用が発生したことに起因したと考えられる、吐出安定性の低下も確認された。
【0147】
また、比較例2、3のインキは、一般式(C)で表される化合物を15質量%超含んでおり、インキとEO-TPOとの相溶化によると考えられる、薄膜表面硬化性、インキ膜強度、吐出安定性が悪下する結果となった。
【0148】
更に比較例4~6では、多官能重合性化合物の量が、重合性化合物全量中65質量%未満であったことから、インキ膜中の架橋密度が低下し、厚膜内部硬化性、薄膜表面硬化性、インキ膜強度の全てに劣るインキとなった。
【0149】
加えて、オリゴマーを5質量%以上含む比較例7、8では、薄膜表面硬化性、インキ膜強度、吐出安定性が実用に適さないレベルであった。このうち吐出安定性に関しては、比較例1の場合と同様、オリゴマーとEO-TPOとの間での分子間相互作用の発生によると考えられる。なお、比較例7は、上述した特許文献1の実施例に記載されたインク7を再現したものであり、比較例8は、特許文献2の実施例に記載されたインキのうち、もっとも本発明のインキに近い構成を有する比較例7のインキを、可能な範囲で再現したものである。
【0150】
一方、比較例9はEO-TPOを含まない系であり、インキ膜表面で発生するラジカルが減少することで表面硬化性が低下する、またそれに伴いインキ膜強度も低下する、という結果となった。また、上記と同様の理由で吐出安定性も低下したものと考えられる。また比較例10は、光重合開始剤(B)を含まないことから、比較例9とは逆に、インキ膜内部で発生するラジカルが減少してしまい、厚膜内部硬化性が低下する結果となり、またそれに伴いインキ膜強度も悪化する結果となった。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する紫外線硬化型インクジェットインキであって、
前記重合性化合物中65質量%以上が、多官能重合性化合物であり、
前記多官能重合性化合物、及び/または、前記多官能重合性化合物以外の重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)と、プロピレンオキサイド基を有する重合性化合物とを含み、
前記プロピレンオキサイド基を有する重合性化合物の含有量に対する、前記重合性化合物(A)の含有量の比が、0.3~2.2であり、
前記重合性化合物が、オリゴマーを含まないか、前記オリゴマーの含有量が、前記重合性化合物中5質量%以下であり、
前記重合性化合物が、下記一般式(C)で表される化合物を含まないか、前記下記一般式(C)で表される化合物の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下であり、
前記光重合開始剤が、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと、芳香族環を3つ有し、前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と、を含む、紫外線硬化型インクジェットインキ。

一般式(C): CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-CO-CH=CH2

(一般式(C)中、nは2~10の整数を表す。)
【請求項2】
前記重合性化合物(A)の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中10~60質量%である、請求項1記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
【請求項3】
前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドの含有量と、前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)の含有量との総量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中8~20質量%である、請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
【請求項4】
前記光重合開始剤が、更に、ベンゾフェノン系光重合開始剤及びチオキサントン系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェットインキを基材上に吐出する工程と、前記基材に対し、紫外線照射手段から紫外線を照射する工程、とを含む、印刷物の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
すなわち本発明の実施形態は、以下の[1]~[5]に関する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されず、様々な実施形態を含む。
[1]着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する紫外線硬化型インクジェットインキであって、
前記重合性化合物中65質量%以上が、多官能重合性化合物であり、
前記多官能重合性化合物、及び/または、前記多官能重合性化合物以外の重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)と、プロピレンオキサイド基を有する重合性化合物とを含み、
前記プロピレンオキサイド基を有する重合性化合物の含有量に対する、前記重合性化合物(A)の含有量の比が、0.3~2.2であり、
前記重合性化合物が、オリゴマーを含まないか、前記オリゴマーの含有量が、前記重合性化合物中5質量%以下であり、
前記重合性化合物が、下記一般式(C)で表される化合物を含まないか、前記下記一般式(C)で表される化合物の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下であり、
前記光重合開始剤が、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと、芳香族環を3つ有し、前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と、を含む、紫外線硬化型インクジェットインキ。

一般式(C): CH2=CH-CO-(O-CH2CH2n-O-CO-CH=CH2

(一般式(C)中、nは2~10の整数を表す。)
[2]前記重合性化合物(A)の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中10~60質量%である、[1]記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[3]前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドの含有量と、前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)の含有量との総量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中8~20質量%である、[1]または[2]に記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[4]前記光重合開始剤が、更に、ベンゾフェノン系光重合開始剤及び/または、チオキサントン系光重合開始剤を含む、[1]または[2]に記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[5][1]または[2]に記載の紫外線硬化型インクジェットインキを基材上に吐出する工程と、前記基材に対し、紫外線照射手段から紫外線を照射する工程、とを含む、印刷物の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0150
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0150】
一方、比較例9はEO-TPOを含まない系であり、インキ膜表面で発生するラジカルが減少することで表面硬化性が低下する、またそれに伴いインキ膜強度も低下する、という結果となった。また、上記と同様の理由で吐出安定性も低下したものと考えられる。また比較例10は、光重合開始剤(B)を含まないことから、比較例9とは逆に、インキ膜内部で発生するラジカルが減少してしまい、厚膜内部硬化性が低下する結果となり、またそれに伴いインキ膜強度も悪化する結果となった。
なお以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する紫外線硬化型インクジェットインキであって、
前記重合性化合物中65質量%以上が、多官能重合性化合物であり、
前記多官能重合性化合物、及び/または、前記多官能重合性化合物以外の重合性化合物が、(メタ)アクリロイル基と、分岐していてもよい炭素数4~12の鎖状炭化水素基とを有する重合性化合物(A)を含み、
前記重合性化合物が、オリゴマーを含まないか、前記オリゴマーの含有量が、前記重合性化合物中5質量%以下であり、
前記重合性化合物が、下記一般式(C)で表される化合物を含まないか、前記下記一般式(C)で表される化合物の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中15質量%以下であり、
前記光重合開始剤が、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドと、前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドとは異なるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と、を含む、紫外線硬化型インクジェットインキ。

一般式(C): CH 2 =CH-CO-(O-CH 2 CH 2 n -O-CO-CH=CH 2
(一般式(C)中、nは2~10の整数を表す。)

[2]前記重合性化合物(A)の含有量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中10~60質量%である、[1]記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[3]前記エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイドの含有量と、前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)の含有量との総量が、前記紫外線硬化型インクジェットインキ中8~20質量%である、[1]または[2]に記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[4]前記光重合開始剤が、更に、ベンゾフェノン系光重合開始剤及びチオキサントン系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェットインキ。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェットインキを基材上に吐出する工程と、前記基材に対し、紫外線照射手段から紫外線を照射する工程、とを含む、印刷物の製造方法。