IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジースキャン オーウーの特許一覧

特開2024-81143高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット、ホドスコープ及びシステム
<>
  • 特開-高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット、ホドスコープ及びシステム 図1
  • 特開-高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット、ホドスコープ及びシステム 図2
  • 特開-高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット、ホドスコープ及びシステム 図3
  • 特開-高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット、ホドスコープ及びシステム 図4
  • 特開-高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット、ホドスコープ及びシステム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081143
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット、ホドスコープ及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/00 20060101AFI20240610BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240610BHJP
   G01T 5/00 20060101ALI20240610BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01T1/00 A
B32B5/24
G01T5/00
G01T1/20 G
G01T1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023203500
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】22211276
(32)【優先日】2022-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523454913
【氏名又は名称】ジースキャン オーウー
【氏名又は名称原語表記】GScan OU
【住所又は居所原語表記】Maealuse tn 2/1, Mustamae linnaosa, 12618 Tallinn, Estonia
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】キースキ マディス
(72)【発明者】
【氏名】レッペ トヌ
(72)【発明者】
【氏名】パスツゥク ヴィタリ
(72)【発明者】
【氏名】ストゥビス ヤーン
(72)【発明者】
【氏名】マギ マルト
(72)【発明者】
【氏名】ミッコール マッツ
(72)【発明者】
【氏名】インガルト アーネ
【テーマコード(参考)】
2G188
4F100
【Fターム(参考)】
2G188AA25
2G188CC16
2G188CC23
2G188DD05
2G188EE39
4F100AB01A
4F100AB01D
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AP00A
4F100AP00D
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA22
4F100DC02A
4F100DC02D
4F100DD05A
4F100DD05D
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG10A
4F100DG10D
4F100DJ01A
4F100DJ01D
4F100GB51
4F100GB61
4F100JN13B
4F100JN13C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高エネルギー粒子をトラッキングするための検出器ユニットを提供する。
【解決手段】検出器ユニット100は、第1の面102A及び第2の面102Bを有する第1のパネル102と;第1の支持部材106と;第1の面108A及び第2の面108Bを有する第2のパネル108と;第2の支持部材112と;複数の第1ファイバ114及び複数の第2ファイバ116とを備える。第1のパネルは第2のパネルの上に積層される。第1ファイバは第1のパネルの平行溝に、第2ファイバは第2のパネルの平行溝に配置される。高エネルギー粒子をトラッキングするためのホドスコープ及びシステムも開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギー粒子をトラッキングするための検出器ユニットであって、
・ 第1の面と、第1の面の反対側の面である第2の面とを有する第1のパネルと;
・ 前記第1のパネルの前記第1の面と前記第2の面との間に配置された第1の支持部材と;
・ 第1の面と、第1の面の反対側の面である第2の面とを有する第2のパネルと;
・ 前記第2のパネルの前記第1の面と前記第2のパネルの前記第2の面との間に配置された第2の支持部材と;
・ 前記第1のパネルの前記第2の面に配置された複数の第1ファイバと;
・ 前記第2のパネルの前記第2の面に配置された複数の第2ファイバと;
を備え、
・ 前記第1のパネルは、前記第1のパネルの前記第2の面と前記第2のパネルの前記第2の面とが互いに対向するように、前記第2のパネルの上に積層され;
・ 前記複数の第1ファイバは、前記第1のパネルに配置される2層以上の第1ファイバを含み;
・ 前記複数の第2ファイバは、前記第2のパネルに配置される2層以上の第2ファイバを含み;
・ 前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材はハニカム構造又は発泡構造を有し、発泡体、プラスチック、紙、木質材料、金属材料、複合材料、又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つから選択される材料で作製される;
検出器ユニット。
【請求項2】
・ 前記第1のパネルの前記第2の面は、第1の組の平行溝を含み;
・ 前記第2のパネルの前記第2の面は、第2の組の平行溝を含み;
・ 前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内に前記複数の第1ファイバが配置され;
・ 前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内に前記複数の第2ファイバが配置され;
・ 前記第1の組の平行溝及び前記第2の組の平行溝は、長さ方向に構成され、互いに対して角度が付いており;
・ 前記2層以上の第1ファイバは、前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内にインターロック様に配置され;
・ 前記2層以上の第2ファイバは、前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内にインターロック様に配置される;
請求項1に記載の検出器ユニット。
【請求項3】
前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバの直径は、0.2ミリメートルから10ミリメートルの範囲内である、請求項1又は2に記載の検出器ユニット。
【請求項4】
前記第1のパネルに形成された前記第1の組の平行溝及び前記第2のパネルに形成された前記第2の組の平行溝のピッチは、それぞれ0.2mm~10mmの範囲内である、請求項2又は3に記載の検出器ユニット。
【請求項5】
前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバは、シンチレーションファイバである、請求項1から4のいずれかに記載の検出器ユニット。
【請求項6】
前記第1の組の平行溝と前記第2の組の平行溝との間の角度は、45度から135度の範囲内である、請求項1から5のいずれかに記載の検出器ユニット。
【請求項7】
前記第1の組の平行溝は前記第2の組の平行溝に直交している、請求項1から5のいずれかに記載の検出器ユニット。
【請求項8】
前記第1のパネルの前記複数の第1ファイバ及び前記第2のパネルの前記複数の第2ファイバは、それぞれ、少なくとも2つのファイバマットによって形成される、請求項1から7のいずれかに記載の検出器ユニット。
【請求項9】
前記第1のパネルの前記第2の面と前記第2のパネルの前記第2の面とは互いに接触している、請求項1から8のいずれかに記載の検出器ユニット。
【請求項10】
前記複数の第1ファイバの第1の端に第1のミラーを配置し、前記複数の第2ファイバの第1の端に第2のミラーを配置した、請求項1から9のいずれかに記載の検出器ユニット。
【請求項11】
前記第1のパネル及び前記第2のパネルの各々は、
・ 0.2平方メートル(m2)から10平方メートル(m2)の範囲の面積を持つ正方形の形状;
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ長方形の形状;
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ三角形の形状;
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ楕円形の形状;
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ、2次元的又は3次元的に湾曲した形状;
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ円形の形状;
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ六角形の形状;
のいずれかから選択される、請求項1から10のいずれかに記載の検出器ユニット。
【請求項12】
高エネルギー粒子をトラッキングするためのホドスコープであって、
・ それぞれ請求項1から11のいずれかに記載の少なくとも2つの検出器ユニットであって、積層配置される少なくとも2つの検出器ユニットと;
・ 前記少なくとも2つの検出器ユニットを支持する支持構成と;
を備える、ホドスコープ。
【請求項13】
前記支持構成は、
・ 前記少なくとも2つの検出器ユニットをそれぞれ通過する複数のロッドと;
・ 前記少なくとも2つの検出器ユニットを保持する複数のクランプと;
を備える、請求項12に記載の支持構成。
【請求項14】
高エネルギー粒子をトラッキングするためのシステムであって、
・ 請求項11又は12に記載のホドスコープを少なくとも2つと;
・ 前記少なくとも2つのホドスコープに組み合わされ、試料を分析するために検出データを受信するプロセッサと;
を備える、システム。
【請求項15】
前記少なくとも2つのホドスコープは、試料を収容する空間を有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
断層撮影システムである、請求項14又は15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される事項(以下、本開示という)は、高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニットに関する。本開示はまた、高エネルギー粒子のトラッキングのためのホドスコープ(hodoscope)に関する。本開示はまた、高エネルギー粒子のトラッキングのためのシステムに関する。
【背景】
【0002】
粒子をトラッキングすることは古くから知られている。通常、高エネルギー粒子と地球大気の衝突によって生成された粒子は直線的に移動するが、磁場が存在すると、荷電粒子は進路を変え、曲線的に移動する。注目すべきことに、これらの検出器では、運動量の大きい粒子は直線状に、運動量の小さい粒子は螺旋状に移動する。
【0003】
粒子の特性や種類を決定するためのトラッキングシステムは既に確立されている。従来のトラッキングシステムは、粒子の経路を決定し、粒子をトラッキングし、粒子のエネルギーを測定する。しかし従来のシステムでは、広範囲の高エネルギー粒子の運動エネルギースペクトルを分離することができなかった。従来のトラッキングシステムは、効果的な運転のために高い電圧の供給と定期的なメンテナンスが必要であった。
【0004】
このため、従来のトラッキングシステムに伴う上述の欠点を克服する必要性が存在する。
【摘要】
【0005】
本開示は、高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニットを提供しようとするものである。本開示はまた、高エネルギー粒子のトラッキングのためのホドスコープを提供しようとするものである。本開示はまた、高エネルギー粒子のトラッキングのためのシステムを提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術で遭遇した問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供することである。
【0006】
第1の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、高エネルギー粒子をトラッキングするための検出器ユニットを提供する。この検出器ユニットは、
・ 第1の面と、第1の面の反対側の面であり第1の組の平行溝を有する第2の面とを有する第1のパネルと;
・ 前記第1のパネルの前記第1の面と前記第2の面との間に配置された第1の支持部材と;
・ 第1の面と、第1の面の反対側の面であり第2の組の平行溝を有する第2の面とを有する第2のパネルと;
・ 前記第2のパネルの前記第1の面と前記第2のパネルの前記第2の面との間に配置された第2の支持部材と;
・ 前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内に配置された複数の第1ファイバと;
・ 前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内に配置された複数の第2ファイバと;
を備え、
前記第1のパネルは、前記第1のパネルの前記第2の面と前記第2のパネルの前記第2の面とが互いに対向するように、前記第2のパネルの上に積層され;
前記第1の組の平行溝及び前記第2の組の平行溝は、長さ方向に構成され、互いに対して角度が付いており;
前記複数の第1ファイバは、前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内にインターロック様に配置される2層以上の第1ファイバを含み;
前記複数の第2ファイバは、前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内にインターロック様に配置される2層以上の第2ファイバを含み;
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材はハニカム構造又は発泡構造を有し、発泡体、プラスチック、紙、木質材料、金属材料、複合材料、又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つから選択される材料で作製される。
【0007】
第2の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、高エネルギー粒子をトラッキングするためのホドスコープを提供する。このホドスコープは、
・ それぞれ前記第1の捉え方に従う少なくとも2つの検出器ユニットであって、互いに間隔を空けて積み重ねられた、少なくとも2つの検出器ユニットと;
・ 前記少なくとも2つの検出器ユニットを間隔を空けて支持する支持構造と;
を備える。
【0008】
第3の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、高エネルギー粒子をトラッキングするためのシステムを提供する。このシステムは、
・ それぞれ前記第2の捉え方に従う少なくとも2つのホドスコープと;
・ 前記少なくとも2つのホドスコープに組み合わされ、試料を分析するために検出データを受信するプロセッサと;
を備える。
【0009】
第3の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、高エネルギー粒子をトラッキングするための検出器ユニットを提供する。この検出器ユニットは、
第1の面と、第1の面の反対側の面である第2の面とを有する第1のパネルと;
・ 前記第1のパネルの前記第1の面と前記第2の面との間に配置された第1の支持部材と;
第1の面と、第1の面の反対側の面である第2の面とを有する第2のパネルと;
・ 前記第2のパネルの前記第1の面と前記第2のパネルの前記第2の面との間に配置された第2の支持部材と;
・ 前記第1のパネルの前記第2の面に配置された複数の第1ファイバと;
・ 前記第2のパネルの前記第2の面に配置された複数の第2ファイバと;
を備え、
前記第1のパネルは、前記第1のパネルの前記第2の面と前記第2のパネルの前記第2の面とが互いに対向するように、前記第2のパネルの上に積層され;
前記複数の第1ファイバは、前記第1のパネルに配置される2層以上の第1ファイバを含み;
前記複数の第2ファイバは、前記第2のパネルに配置される2層以上の第2ファイバを含み;
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材はハニカム構造又は発泡構造を有し、発泡体、プラスチック、紙、木質材料、金属材料、複合材料、又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つから選択される材料で作製される。
【0010】
実施形態によっては、本開示の実施形態は、以下のような検出器ユニットを提供する。
・ 前記第1のパネルの前記第2の面は、第1の組の平行溝を含み;
・ 前記第2のパネルの前記第2の面は、第2の組の平行溝を含み;
・ 前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内に前記複数の第1ファイバが配置され;
・ 前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内に前記複数の第2ファイバが配置され;
・ 前記第1の組の平行溝及び前記第2の組の平行溝は、長さ方向に構成され、互いに対して角度が付いており;
・ 前記2層以上の第1ファイバは、前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内にインターロック様に配置され;
・ 前記2層以上の第2ファイバは、前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内にインターロック様に配置される。
【0011】
本開示の実施形態は、従来技術における前述の問題を実質的に除去するか、又は少なくとも部分的に解決し、高エネルギー粒子のトラッキング精度及び散乱角を可能にする。また前記検出器ユニットは、低密度の材料で構成され、重量を低減し、構造材を通過する荷電粒子の初期軌道からの固有の散乱を低減する。
【0012】
本願に開示されるものの更なる側面や利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と共に解釈される、添付図面及び例示的実施形態の詳細説明によって明らかにされよう。
【0013】
当然ながら、本願に開示されるものの特徴は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本願の開示の範囲から逸脱することなく様々に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
前述した概要と以下の例示的実施形態の詳細説明は、添付の図面と合わせて読むことでより理解されることになる。本願に開示されるものを説明する目的で、本願に開示されるもの(以下、本開示という)の例示的構成を図面に示す。ただし、本開示はここで記載される特定の方法及び手段に限定されるものではない。また、当業者であれば、図面は正確な縮尺率で描かれていないことも理解されよう。同じ構成要素は可能な限り同一番号で示すようにした。
以下、本開示の実施形態を、例として次の図面を参照しながら説明する。
図1】本開示の一実施形態による、高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニットの透視図である。
図2】本開示の一実施形態による、高エネルギー粒子のトラッキングのためのホドスコープの透視図である。
図3】本開示の一実施形態による、インターロック式に配列されたファイバの配列を示す正面図である。
図4】本開示の一実施形態による、高エネルギー粒子をトラッキングするシステムの透視図である。
図5】本開示の一実施形態による、高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニットの透視図である。 添付の図面において、下線付きの番号は、その番号が書かれている場所のアイテム又はその番号に隣接するアイテムを表わすのに使用される。下線無しの番号は、その番号を繋ぐ線によって特定されるアイテムに関連付けられる。番号に下線が無く矢印を伴って書かれている場合、その番号は矢印が示す汎用アイテムを特定するのに使用される。
【実施形態の詳細説明】
【0015】
次に、本願の開示事項の例示的実施形態とそれを実装し得る方法を詳述していく。本願の開示事項を実装する幾つかの方法が説明されているが、本願の開示事項を実装又は実施する他の実施形態も可能であることは、当業者には理解されよう。
【0016】
第1の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、高エネルギー粒子をトラッキングするための検出器ユニットを提供する。この検出器ユニットは、
・ 第1の面と、第1の面の反対側の面であり第1の組の平行溝を有する第2の面とを有する第1のパネルと;
・ 前記第1のパネルの前記第1の面と前記第2の面との間に配置された第1の支持部材と;
・ 第1の面と、第1の面の反対側の面であり第2の組の平行溝を有する第2の面とを有する第2のパネルと;
・ 前記第2のパネルの前記第1の面と前記第2のパネルの前記第2の面との間に配置された第2の支持部材と;
・ 前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内に配置された複数の第1ファイバと;
・ 前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内に配置された複数の第2ファイバと;
を備え、
・ 前記第1のパネルは、前記第1のパネルの前記第2の面と前記第2のパネルの前記第2の面とが互いに対向するように、前記第2のパネルの上に積層され;
・ 前記第1の組の平行溝及び前記第2の組の平行溝は、長さ方向に構成され、互いに対して角度が付いており;
・ 前記複数の第1ファイバは、前記第1のパネルの前記第1の組の平行溝内にインターロック様に配置される2層以上の第1ファイバを含み;
・ 前記複数の第2ファイバは、前記第2のパネルの前記第2の組の平行溝内にインターロック様に配置される2層以上の第2ファイバを含む。
【0017】
第2の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、高エネルギー粒子をトラッキングするためのホドスコープを提供する。このホドスコープは、
・ それぞれ前記第1の捉え方に従う少なくとも2つの検出器ユニットであって、互いに間隔を空けて積み重ねられた、少なくとも2つの検出器ユニットと;
・ 前記少なくとも2つの検出器ユニットを間隔を空けて支持する支持構造と;
を備える。
【0018】
第3の捉え方によれば、本開示の一実施形態は、高エネルギー粒子をトラッキングするためのシステムを提供する。このシステムは、
・ それぞれ前記第2の捉え方に従う少なくとも2つのホドスコープと;
・ 前記少なくとも2つのホドスコープに組み合わされ、試料を分析するために検出データを受信するプロセッサと;
を備える。
【0019】
本開示は、高エネルギー粒子のトラッキングのための前述の検出器ユニット、高エネルギー粒子のトラッキングのための前述のホドスコープ、及び高エネルギー粒子のトラッキングのための前述のシステムを提供する。検出器ユニットは、1.0mmファイバで100-200um、直径0.5mmファイバで50-100umの空間分解能までの感度で位置検出を行うことができるように構成され、また、1.0mmファイバで約1ミリラジアンの飛跡分解能を提供するように構成される。さらに、このシステムはユーザーフレンドリーで、運用コストが低く、物理的にコンパクトである。本システムは、散乱に基づく宇宙線トモグラフィーの性能を向上させ、二次電子ビームをより効果的に利用することを可能にする。本システムは、特許出願PCT/EP2019/05533に開示された方法と組み合わせて使用することができる。
【0020】
本開示を通じて、「検出器ユニット」という用語は、高エネルギー粒子のトラッキングと検出を可能にするアセンブリを表す。通常、検出器ユニットは、高エネルギー粒子がそこを通過する際の経路を特定するように構成されている。宇宙空間から地球に到達する高エネルギー粒子は、主に陽子、水素の原子核、ヘリウムの原子核、及びそれよりも重い原子核である。これらの高エネルギー粒子が地球に到着すると、上層大気中の原子核と衝突し、それによって多くの粒子、主にパイ中間子が生成される。荷電パイ中間子は徐々に崩壊し、ミューオンと呼ばれる粒子を放出する。ミューオンは物質との相互作用がほとんどないため、大気を通過して地中に侵入することができる。一般に、ミューオンは、光速の約0.994倍の平均速度で地球に到達する。おおよそ、1分間に1個のミューオンが、(地表の法線の方向とは無関係に)1cm2の面積を通過する。物質とほとんど相互作用しないこれらの高エネルギー粒子は、停止する前に何メートルもの高密度の物質を通り抜けることができる。高エネルギー粒子は検出器ユニットを容易に通過する。有益なことに、検出器ユニットは、高エネルギー粒子の移動経路を検出するように構成されている。
【0021】
本明細書で使用する「第1のパネル及び第2のパネル」という用語は、検出器ユニットの本体を形成するように構成された中空の(又は任意に半中空の)筐体を指す。実施形態によっては、第1のパネル及び第2のパネルは、長方形、正方形、円形、楕円形、又は任意の多角形である。実施形態によっては、宇宙空間から到来した高エネルギー粒子は、まず第1のパネルに衝突し、第2のパネルを通って出て行く。第1のパネルと第2のパネルのそれぞれは、第1の面と第2の面を有する。好適には、第1のパネル及び第2のパネルの第1の面は外側の面であり、第1のパネル及び第2のパネルの第2の面は内側の面である(と考えることとする)。第1のパネルと第2のパネルとは、互いに重ねられている。つまり、第1のパネルと第2のパネルの内面(第2の面)は、互いの上に配置される。すなわち、第1のパネルの第2の面と第2のパネルの第2の面とは、典型的なセットアップでは互いに対向し、互いに接触している。実施形態によっては、第1のパネル及び第2のパネルは、アクリル、ポリ塩化ビニルなどから作製された積層体から構成される。さらに、第1のパネルの内面には第1の組の平行溝が、第2のパネルの内面には第2の組の平行溝が、それぞれ形成されている。
【0022】
本明細書で使用する「第1の組の平行溝及び第2の組の平行溝」という用語は、複数の第1ファイバ及び複数の第2ファイバが配列できるような通路であって、第1のパネル及び第2のパネルの端から端への形成された通路を表す。これらの平行溝は、複数の第1ファイバ及び第2ファイバが直線状に配置されることを可能にし、また如何なる重なりも防止する。実施形態によっては、第1の組の平行溝と第2の組の平行溝はチャネル(経路)を形成する。チャネルの形状は、半円形の断面、矩形断面、正方形断面のいずれかであってもよい。実施形態によっては、第1のパネル及び第2のパネルにそれぞれ形成される第1の組の平行溝及び第2の組の平行溝のピッチは、0.2mm~10mmの範囲内であるか、又はそれ以上であってもよい。本明細書で使用する「ピッチ」という用語は、隣接する平行溝の中心間の距離を表す。第1のパネル及び第2のパネルにそれぞれ形成される第1の組の平行溝及び第2の組の平行溝のピッチは、それぞれ0.2、0.6、0.8、1、2、1.6mmのいずれかから0.6、0.8、1、2、1.6、2mmのいずれかまでであってもよい。
【0023】
実施形態によっては、第1の組の平行溝と第2の組の平行溝との間の角度は45°から135°の範囲にある。すると、第2の組の平行溝の上に配置された第1の組の平行溝は、45°から135°の範囲の角度であることが理解されよう。第1の組の平行溝と第2の組の平行溝との間の角度は、それぞれ45°,55°,65°,75°,85°,95°,105°,115°,125oのいずれかから,55°,65°,75°,85°,95°,105°,115°,125°,135oのいずれかまでであってもよい。実施形態によっては、第1の組の平行溝は第2の組の平行溝と直交している。つまり、第1の組の平行溝は第2の組の平行溝に対して90°の角度で配置されている。直交配置は、有益なことに、複数の第1ファイバと複数の第2ファイバとの間の間隙を最小にすることができ、高エネルギー粒子の効果的なトラッキングを可能とする。また、直交配置により、2次元平面上の位置分解能をx方向とy方向で等しく最大化することができる。
【0024】
本明細書で使用される「第1ファイバ及び第2ファイバ」という用語は、高エネルギー粒子がその運動エネルギーを部分的に蓄積し、蓄積したエネルギーを可視光子に変換するファイバのセットを指す。好適には、第1の組の平行溝には複数の第1ファイバが配置され、第2の組の平行溝には複数の第2ファイバが配置される。これら第1ファイバ及び第2ファイバは、コア及びクラッドから構成される。コアは、第1ファイバ及び第2ファイバの長さ方向に沿って延びるガラス又はプラスチックの円柱であり、コアに沿って光を導くように構成される。クラッドは、コアを取り囲む低い屈折率を提供する。第1ファイバ及び第2ファイバのコアは、可視光又は紫外線の所望の閃光を発生するように配置された複数の蛍光ドーパントの組み合わせを有する。実施形態によっては、前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバはシンチレーションファイバである。この点に関して、シンチレーションファイバは、高エネルギー粒子が検出プレートに衝突するときにシンチレーション光を生成するように設計されている。また、自己吸収を最小限に抑えて光子を導くように設計されている。実施形態によっては、前記シンチレーションファイバは、高エネルギー粒子が衝突したときに青色又は緑色の光を発生する。
【0025】
実施形態によっては、前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバは、プラスチック、ガラス、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択される。実施形態によっては、前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバは、プラスチックから作製される。実施形態によっては、前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバは、ガラスから作製される。実施形態によっては、前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバは、プラスチックとガラスから作製される。
【0026】
実施形態によっては、前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバの直径は、0.2ミリメートルから10ミリメートルの範囲内である。前記複数の第1ファイバ及び前記複数の第2ファイバの直径は、例として、0.2、0.6、0.8、1.2、1.6ミリメートルのいずれから0.6、0.8、1.2、1.6、2ミリメートルのいずれかまで、あるいは10ミリメートルまでであってもよい。実施形態によっては、第1の組の平行溝及び第2の組の平行溝の直径は、それぞれ複数の第1ファイバと複数の第2ファイバに相補的である。
【0027】
本明細書で使用される用語「インターロック様」とは、複数の第1ファイバ及び複数の第2ファイバが最密構造となる配置を言う。このとき、複数の第1ファイバ及び複数の第2ファイバは、ファイバ間の空間を埋めることにおいて最も効率的に配置・積層される。インターロック様に配置された複数の第1ファイバ及び第2ファイバの各々は、そこでの移動を防止する。実施形態によっては、第1のパネルの複数の第1ファイバ及び第2のパネルの複数の第2ファイバはそれぞれ、ファイバマットを形成する。第1のパネルの複数の第1ファイバ及び第2のパネルの複数の第2ファイバのそれぞれのインターロック様構造が、ファイバマットを形成することが理解されよう。本明細書で使用する「ファイバマット」という用語は、マットを形成するような複数の第1ファイバ(実施形態によっては複数の第2ファイバも)の配置を指す。実施形態によっては、ファイバマットは、一方向に向いた複数のファイバを有する1枚の板も表すことができる。
【0028】
有益であることに、検出器ユニットは、高エネルギー粒子の位置を2次元的に高精度で特定することを可能とする。
【0029】
本明細書で使用される用語「第1の支持部材及び第2の支持部材」は、第1のパネル及び第2のパネルの第1の面及び第2の面をそれぞれ保持するように構成された構造を指す。実施形態によっては、支持部材は、第1のパネル及び第2のパネルの第1の面と第2の面との間の位置合わせの役割も果たすように構成される。この位置合わせは、第1のパネルと第2のパネルとが互いに効率的に積み重なるのを助ける。第1の支持部材は、第1のパネルの第1の面と第2の面との間に配置され、第2の支持部材は、第2のパネルの第1の面と第2の面との間に配置される。支持部材は、検出器ユニットに対する強度を許容するように構成される。
【0030】
第1の支持部材及び第2の支持部材は、発泡体、プラスチック、木材、金属、複合材料、紙、又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つから選択される材料で作製される。実施形態によっては、前記支持部材は発泡体から作られる。実施形態によっては、前記支持部材はプラスチックから作られる。実施形態によっては、前記支持部材は木材から作られる。実施形態によっては、前記支持部材は金属から作られる。実施形態によっては、前記支持部材は複合材料から作られる。前記支持部材を製造するために使用される材料は、検出器ユニットの全体重量を低減すると同時に、その強度を提供するように選択される。実施形態によっては、第1の支持部材及び第2の支持部材には、低密度材料(有益には低Z材料で構成される)が選択される。このような低密度(又は低Z)材料を選択する技術的効果は、検出器ユニットが高密度材料ほどミューオンと干渉しないことである。それによって検出器ユニットからの散乱の可能性が減少するため、検出精度が向上する。第1の支持部材及び第2の支持部材はハニカム構造を有する。これに関して、第1の支持部材及び第2の支持部材は、第1の面と第2の面との間にハニカム構造又は発泡構造を有する。本明細書で使用される用語「ハニカム構造」は、第1の面と第2の面との間に挟まれた中空のセル又はチューブを指す。この中空セルは柱状又は六角形状である。構造材を通過するミューオンの多重散乱効果を小さくするためには、構造材は軽く少ない方がよい。ハニカム構造は、最小重量と最小材料を達成するために使用される材料の量を減らすために有益である。またハニカム構造体は、積層体よりも、耐荷重性及び荷重伝達性に優れる。
【0031】
実施形態によっては、第1のパネルと第2のパネルの各々は、以下のいずれかから選択される。
・ 0.2平方メートル(m2)から10平方メートル(m2)の範囲の面積を持つ正方形の形状。
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ長方形の形状。
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ三角形の形状。
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ楕円形の形状。
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ湾曲した形状。
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ円形の形状。
・ 0.2m2から10m2の範囲の面積を持つ六角形の形状。
【0032】
第1のパネル及び第2のパネルは、0.2、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4mのいずれかから、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4、10mまでの面積のいずれかでありうる、正方形の形状を有する。
【0033】
第1のパネル及び第2のパネルは、0.2、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4mのいずれかから、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4、10mのいずれかまでの面積のいずれかでありうる、三角形の形状を有する。
【0034】
第1のパネル及び第2のパネルは、0.2、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4mのいずれかから、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4、10mのいずれかまでの面積のいずれかでありうる、楕円形の形状を有する。
【0035】
第1のパネル及び第2のパネルは、0.2、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4mのいずれかから、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4、10mのいずれかまでの面積のいずれかでありうる、湾曲した形状を有する。
【0036】
第1のパネル及び第2のパネルは、0.2、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4mのいずれかから、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4、10mのいずれかまでの面積のいずれかでありうる、円形の形状を有する。
【0037】
第1のパネル及び第2のパネルは、0.2、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4mのいずれかから、0.8、1.4、2、2.6、3.2、3.8、4.4、5、5.6、6.2、6.8、7.4、8、8.6、9.4、10mのいずれかまでの面積のいずれかでありうる、六角形の形状を有する。
【0038】
本開示はまた、上述の高エネルギー粒子のトラッキングのためのホドスコープに関する。上記に開示された様々な実施形態及び変形例は、高エネルギー粒子トラッキング用ホドスコープに準用される。
【0039】
本明細書で使用する「ホドスコープ」という用語は、高エネルギー粒子を検出し、高エネルギー粒子の軌道を決定するように構成された装置を表す。ここでは、少なくとも2つの検出器ユニットが、高エネルギー粒子を検出し、高エネルギー粒子の軌道を決定するように配置される。注目すべきは、少なくとも2つの検出器ユニットが、間隔をあけて積み重ねられることである。本明細書で使用される「支持構成」という用語は、ホドスコープ(例えば少なくとも2つの検出器ユニット)を一定の位置に保持、支持するためのラックを指す。この支持構成は、少なくとも2つの検出器ユニットを、互いに間隔をあけて配置するように受容する。これら少なくとも2つの検出器ユニットは、各々が対称的に互いの上に配置されるような向きにされる。
【0040】
実施形態によっては、この支持構成は次の要素を備える。
・ それぞれ少なくとも2つの検出器ユニットを通過する複数のロッド。
・ 少なくとも2つの検出器ユニットを互いに間隔をあけて平行に保持する複数のクランプ。
【0041】
この点に関して、本明細書で使用される「ロッド」という用語は、少なくとも2つの検出器ユニットを貫通してそれらを整列させる垂直部材を指す。本明細書で使用する「クランプ」という用語は、少なくとも2つの検出器ユニットを離間した態様で把持するか、固定するか、又は係合する要素を指す。上記複数のクランプは、複数のロッドと協働する金属製又はプラスチック製のクランプである。具体的には、これら複数のロッドは、複数のクランプに押し込まれてしっかりと保持され、引き出されて解放される。特に、上記複数のクランプは、少なくとも2つの検出器ユニットの連結と連結解除、及び少なくとも2つの検出器ユニットの作動位置での固定を補助する。上記少なくとも2つの検出器ユニットは、上記複数のロッドに取り付けられる。実施形態によっては、上記複数のロッドは、金属、木材、プラスチック、セラミックなどから作製される。実施形態によっては、上記複数のクランプは、金属、木材、プラスチック、セラミックなどから作製される。
【0042】
実施形態によっては、上記2つの検出器ユニットは、間隔を空けて配置する必要はない。上側の検出器ユニットの底面は、下側の検出器ユニットの上面と物理的に接触することができ、ファイバ層は依然として離間した態様である。機械的には、すべてのパネルを互いに直接接触させて積み重ねることが可能である。実施形態によっては、ホドスコープは、ファイバマットからの集光を感知するように動作可能な複数のフォトセンサを備える。本明細書で使用される「フォトセンサ」という用語は、光の距離、不在、又は存在を決定するために使用される装置を指す。ここでは、1つ又は複数のフォトセンサが、複数の第1ファイバ及び複数の第2ファイバから放射される光を感知するように配置される。このフォトセンサは光子1個の感知能力を有してもよい。実施形態によっては、上記複数のフォトセンサはシリコン光電子増倍管(SiPM)であってもよい。典型的には、SiPMは、ガイガーモードで動作する単一光子アバランシェフォトダイオード(Single-Photon Avalanche Diode - SPAD)のアレイであり、単一光子のような極めて弱い光も検出できるように設計されている。ここでは、複数のSPADが並列に接続されてSiPMを形成している。SiPMは、センサーに当たった光子の数に比例した出力として電流を生成する。有益なことに、SiPMは高い利得、非常に速い応答、短い回復時間を有する。
【0043】
実施形態によっては、上記ホドスコープは、第1のパネル及び第2のパネルに配置された複数のミラーをさらに備える。これら複数のミラーは、光をフォトセンサに向けて反射するように、ファイバマットの反対側に配置される。好適には、複数のミラーの各々は、複数の第1ファイバ及び複数の第2ファイバによって生成された光を反射するように配置される。反射された光はフォトセンサに向かって進み、検出される。一例では、ミラーは各ファイバの第1の端に配置され、フォトセンサは各ファイバの第2の端に配置される。ミラーは、第1の端から第2の端に向かって光子を反射するように配置されている。このため、第1の端に向かう光子も反射して戻ってくるので、検出されることができる。従って、フォトセンサによる光子検出の信号対雑音比が改善する。つまり、複数の第1ファイバの第1の端に第1のミラーを配置し、複数の第2ファイバの第1の端に第2のミラーを配置する。複数の第1ファイバのそれぞれの第2の端にはセンサー(各ファイバにつき1つのセンサー)が配置され、複数の第2ファイバのそれぞれの第2の端にはセンサー(各ファイバにつき1つのセンサー)が配置されている。
【0044】
本開示はまた、上述の高エネルギー粒子トラッキングシステムに関する。上記に開示された様々な実施形態及び変形は、高エネルギー粒子トラッキングシステムに準用される。
【0045】
前述のシステムは、高エネルギー粒子の高いトラッキング精度(約1ミリラジアン)を可能にする。さらに、特許出願PCT/EP2019/05533に開示された方法と組み合わせて少なくとも3つの検出器プレートを使用することで、高エネルギー粒子の運動量推定及びフラックス推定も可能になる。有益なことに、本システムは、高エネルギー粒子の散乱効果を低減/最小化するべく、軽量化されている。さらに、本システムはモジュラー設計であり、より大きなシステムを設計するために使用することができる。さらに、システムの設計は非常にコンパクトであるため、屋内での応用が可能であり、スペースが非常に限られている場所でも利用できる。
【0046】
本明細書で使用する「プロセッサ」という用語は、システムの動作を制御するように構成されたハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせを指す。プロセッサは、いくつかの複雑な処理タスクを実行する。プロセッサは、システムの他の構成要素に無線及び/又は有線で通信可能に結合される。実施形態によっては、プロセッサは、プログラマブルデジタルシグナルプロセッサ(DSP)として実装されてもよい。別の例では、プロセッサは、クラウドコンピューティングサービスを提供するクラウドサーバを介して実装されてもよい。実施形態によっては、プロセッサは、通信ネットワークを用いて少なくとも2つのホドスコープに通信可能に結合される。通信ネットワークは、有線ネットワーク、無線ネットワーク、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、無線ネットワーク及び電気通信ネットワークが挙げられるが、これらに限定されるものではない。プロセッサは、高エネルギー粒子をトラッキングするように構成された少なくとも2つのホドスコープに、これらを制御することが可能なように結合されている。
【0047】
実施形態によっては、上記少なくとも2つのホドスコープは、試料を収容するボリューム(空間)を有する。これら少なくとも2つのホドスコープは、離間して配置されることが理解されよう。典型的には、少なくとも2つのホドスコープの間の空間がそのボリュームを形成し、当該ボリュームは試料を決定するために試料を配置するために利用される。一般的に、物質はそれぞれ、高エネルギー粒子に対して異なる散乱密度を有する。散乱パラメータに基づいて試料を決定することができる。例えば、原子番号92のウランをボリュームに入れる。システムは、ボリューム内で得られた散乱角度又は計算された散乱角度(ボリューム内で決定)に基づいて試料を特定する。
【0048】
実施形態によっては、検出器ユニットは、1つのパネルの両側(パネルの面又は内部)にファイバがあるように形成される。
【0049】
実施形態によっては、検出器ユニットでは、ファイバが配置されるべきパネルの面に目印のみが適用されるかもしれない。例えば、パネル/パネルの面にファイバの配置場所を示す線が引かれてもよい。
【0050】
実施形態によっては、このシステムは、互いに対して垂直に配置されたホドスコープのペアに、これらを制御できるように結合されたプロセッサを備える。
【0051】
実施形態によっては、検出器ユニットは1つのパネルのみで構成される。
【0052】
実施形態によっては、ファイバマットは、複数のファイバが同じ方向に配列したものである。現在の機械設計では、パネルの面上の2層のファイバのアセンブリとして製造される。これにより、1次元の検出分解能が可能になる。
【0053】
実施形態によっては、検出器ユニット、又は2方向に配列された複数のファイバは、2次元の検出・分解能を実現する。現在の機械設計では、2枚のパネルを持つファイバマットを直交させて配置することになる。
【0054】
実施形態によっては、複数のファイバの2つのグループが互いに対して斜めに配置されるような、2つのパネルを用いる。この2つのファイバマットは、原則として1つのパネルに組み立てることができる。一方の面にファイバを一方向に配置し、同じパネルの他方の面に、それとは直交する方向にファイバを配置する。これにより、2次元の検出・分解能を実現する。
【0055】
実施形態によっては、このシステムにおいて、第1のパネルの複数の第1のファイバ及び第2のパネルの複数の第2のファイバを有する検出器ユニットは、位置感知型2次元粒子検出器を形成する。
【0056】
実施形態によっては、第1のパネルの複数の第1ファイバ及び第2のパネルの複数の第2ファイバは、それぞれ、少なくとも2つのファイバマットによって形成される。ファイバマットは、言い換えれば、複数のファイバから構成されていると考えることができる。すなわち、複数の第1ファイバからなる第1のファイバマットと複数の第2ファイバからなる第2のファイバマットである。
【0057】
本システムは、セキュリティ用途(小包、個人の荷物、車両、人間、トラック又は貨物コンテナなど、核廃棄物バレル、原子力施設の画像化など)の断層撮影スキャナに使用することができる。または本システムは、実質的に断層撮影システムそのものである。また本システムは、放射線測定(コンクリート橋などのインフラ、建物、その他の放射線測定など)のための望遠鏡として利用することもできる。
【0058】
まとめると、高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニットが提供される。検出器ユニットは、第1の面と、第1の面の反対側となる第2の面とを有する第1のパネルを有する。このパネルは典型的には長方形であり、第1の面と第2の面との間には距離dがある。この距離と面は、第1のパネルの第1の面と第2の面の間に配される第1の支持部材で満たされる体積を規定する。このようにして、正確な測定結果を得るのに役立つ堅牢な検出器ユニットが得られる。
【0059】
第1のパネルに加えて、検出器ユニットは、第1のパネルと構造的に類似した第2のパネルを有する。第2のパネルは、第1の面と、第1の面の反対側となる第2の面と、第2のパネルの第1の面と第2の面との間に配される第2の支持部材とを有する。第1のパネルと第2のパネルは構造的に類似している(又は同じ)ので、製造が容易である。(従って、製造の観点から、)必要なパネルは1種類だけである。
【0060】
第1のパネルの第2の面には複数の第1ファイバが配置され、第2のパネルの第2の面には複数の第2ファイバが配置されている。第1のパネルは、第1のパネルの第2の面と第2のパネルの第2の面とが互いに対向するように、第2のパネルの上に積層される。第2の面が互いに向かい合っているので(そして好ましくは互いに接触しているので)、第1のファイバと第2のファイバとの間の距離は最小となる。これにより、ミューオンが第1のパネルと第2のパネルを通過する際の正確な位置検出が保証される。実際、パネルのスタックを通過するミューオンの「xy」座標を正確に得ることができる。
【0061】
上記複数の第1ファイバは、第1のパネルに配置された2層以上の第1ファイバから構成され、上記複数の第2ファイバは、第2のパネルに配置された2層以上の第2ファイバから構成される。ファイバ層の間には隙間がないか非常に小さいため、パネルを通過するミューオンのほとんどが検出されることを確かにする。第1の支持部材及び第2の支持部材は、ハニカム構造又は発泡構造を有し、発泡体、プラスチック、紙、木質材料、金属材料、複合材料、又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つから選択される材料で作製される。
[図面の詳細説明]
【0062】
図1を参照すると、本開示の実施形態による、高エネルギー粒子のトラッキングのための検出器ユニット100の透視図が示されている。図示されるように、検出器ユニット100は、第1の面102Aと、第1の面102Aとは 反対側の第2の面102Bとを有する第1のパネル102を備える。第1のパネル102の第2の面102Bは、互いに平行な複数の溝104の組である第1の組を有する。また第1のパネル102は、第1の面102Aと第2の面102Bとの間に配置される第1の支持部材106を有する。検出器ユニット100は、第1の面108Aと、第1の面108Aとは反対側の第2の面108Bとを有する第2のパネル108を備える。第2のパネル108の第2の面108Bは、互いに平行な複数の溝110の組である第2の組を有する。また第2のパネル108は、第1の面108Aと第2の面108Bとの間に配置される第2の支持部材112を有する。検出器ユニット100は、第1のパネル102の第1の組の平行溝104に配置される複数の第1ファイバ114と、第2のパネル108の第2の組の平行溝110に配置される複数の第2ファイバ116とをさらに備える。
【0063】
第1のパネル102は、第1のパネル102の第2の面102Bと第2のパネル108の第2の面108Bとが互いに対向するように、第2のパネル108上に積層される。第1の組の平行溝104及び第2の組の平行溝110は、長さ方向に構成され、互いに対して角度が付いている。複数の第1ファイバ114は2層以上の第1ファイバを含む。これらのファイバは、第1のパネル102の第1の組の平行溝104内で、互いにインターロック様に配される。複数の第2ファイバ116も2層以上の第2ファイバを含む。これらのファイバは、第2のパネル102の第2の組の平行溝1110内で、互いにインターロック様に配される。図3を参照されたい。さらに、第1の組の平行溝104は、第2の組の平行溝110と直交している。
【0064】
図2を参照すると、本開示の一実施形態による、高エネルギー粒子のトラッキングのためのホドスコープ200の透視図が示されている。図示されるように、ホドスコープ200は、少なくとも2つの検出器ユニット202を備える。この例では3つの検出器ユニット202A、202B、202C(総称して202と呼ぶ)が存在し、これらは間隔をあけて積層されている。ホドスコープは、少なくとも2つの検出器ユニット202を互いに離間した形態で支持する支持構造204を備える。支持構造204は、少なくとも2つの検出器ユニット202を貫通する複数のロッド206と、少なくとも2つの検出器ユニット202を離間した形態で互いに平行に保持する複数のクランプ208とを備える。
【0065】
ホドスコープ202は、少なくとも2つの検出器ユニット202に配置された複数のミラー210をさらに備える。さらに、ホドスコープ202は、少なくとも2つの検出器ユニット202からの光の集まりを感知するように動作可能な複数のフォトセンサ212をさらに備える。
【0066】
図3を参照すると、本開示のある実施形態による、インターロック式302に配列されたファイバ300の配列の正面図が示されている。図示のように、ファイバ300は、第1のパネル304と第2のパネル306との間に配置された2層以上のファイバを含む。図には示されていないが、ファイバが、第2のパネル306の面上に配置された2層以上のファイバの層を含むこともあり得る。第1の層308(破線で示す)は、ファイバはそれぞれ隣接して配置されており、ファイバはそれぞれ互いに接続している。第2の層310(破線で示す)は第1の層308の上に配置されており、第2の層310のファイバは、第1の層308の間の空間に配置されている。
【0067】
図4を参照すると、本開示の実施形態による、高エネルギー粒子のトラッキングのためのシステム400の透視図が示されている。図示のように、システム400は、402と総称される少なくとも2つのホドスコープ402A及び402Bを備える。本システムは、少なくとも2つのホドスコープ402に動作可能に結合され、試料を分析するために検出されたデータを受信するプロセッサ404をさらに備える。さらに、少なくとも2つのホドスコープ402は、そこに試料を収容するための空間406を備える。実施形態によっては、システムは、互いに対して垂直に配置された2つのホドスコープのペアに結合されて共に動作可能なプロセッサを備える。
【0068】
図5を参照すると、検出器ユニット500の透視図が示されている。検出器ユニットは、第1のパネル502と第2のパネル508とを備える。第1のパネル502の第2の面には、複数の第1ファイバ514が配置されている。複数の第1ファイバ514は、図示のようにインターロック様に配置されている。同様に、複数の第2ファイバ516が第2のパネル508の第2の面上にインターロック様に配列されている。図示されているように、複数の第1ファイバ514は複数の第2ファイバ516に対して直角をなしている。複数の第1ファイバの少なくとも一部は、複数の第2ファイバと接触している。図には、複数の第1ファイバの第1の端部に配置された第1のミラー564が示されている。第1のミラー564は太線で描かれ、ファイバの(第1の)端部が見えるように半透明で図示されている。同様に、第2のミラー566が複数の第2ファイバ516の第1の端部に配置されている。このようにして、光子は第1の端部から第2の端部に向かって反射される。第1の組のセンサー574は、第1の組のファイバの第2の端部に配置されている。第2のセンサー(検出器の後ろ、図では見えない)は、第2ファイバの第2の端部に配置されている。このシステムにおいて、第1のパネルの複数の第1ファイバ及び第2のパネルの複数の第2ファイバを有する検出器ユニットは、位置感知型2次元粒子検出器を形成する。
【0069】
前述した本開示の実施形態の変更は、添付の特許請求の範囲に定義される開示範囲から逸脱しない限り可能である。本開示を記述及び請求するのに使用される「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「在る」等の表現は、非限定的に解釈されることを意図したものであり、明示されない項目や部品、要素等が存在してもよい。単数表現もまた、複数に関連するものと解釈されるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】