(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081162
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20240611BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
H04R3/04 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194554
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香川 真哉
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩
【テーマコード(参考)】
2G064
5D220
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD18
2G064CC03
2G064CC30
5D220BC01
(57)【要約】
【課題】センサーが出力する信号の所定の周波数帯域における感度の悪化を改善すること。
【解決手段】移動体検出システム1は、センサー2と、センサー2から出力される信号から、所定の周波数帯域の信号を抽出するフィルター3と、センサー2から出力される信号から、フィルター3によって抽出された帯域とは異なる、所定の周波数帯域の信号を抽出するフィルター4と、フィルター3によって抽出された信号を増幅するアンプ5と、フィルター4によって抽出された信号を増幅するアンプ6と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーと、
前記センサーから出力される信号から、所定の周波数帯域の信号を抽出する第1フィルターと、
前記センサーから出力される信号から、前記第1フィルターによって抽出された帯域とは異なる、所定の周波数帯域の信号を抽出する第2フィルターと、
前記第1フィルターによって抽出された信号を増幅する第1増幅部と、
前記第2フィルターによって抽出された信号を増幅する第2増幅部と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第1増幅部によって増幅された信号と、前記第2増幅部によって増幅された信号と、を合成する合成部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1増幅部のゲインと、前記第2増幅部のゲインとは、異なることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1フィルターは、前記センサーから出力される信号から、所定の周波数以下の帯域の信号を抽出し、
前記第2フィルターは、前記センサーから出力される信号から、所定の周波数以上の帯域の信号を抽出することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1フィルターにより抽出される帯域と、前記第2フィルターにより抽出される帯域と、の間の帯域の信号を抽出する第3フィルターをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第3フィルターにより抽出された信号を増幅する第3増幅部をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1増幅部のゲインと、前記第2増幅部のゲインと、前記第3増幅部のゲインとは、異なっていることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサーは、振動を検出し、検出した振動を信号として出力することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記センサーは、圧電素子を有する、圧電型センサーであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記センサーから出力される信号に基づいて、移動体の移動を検出する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御部は、移動を検出した移動体を種別に分類することを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーを備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電(ピエゾ)素子を用いたセンサーにおいて、センサー上部に錘を付加することで、局所的な周波数範囲の感度向上が見込めることは、周知の事実である。しかしながら、感度向上がみられる周波数帯域以上の高域側では、感度変化が小さい帯域、逆に感度が悪化する帯域があり、これらの感度差が、しばしば問題になることがある。なお、出願人は、錘を用いたセンサーについて、特許出願を行っている(特許文献1参照。)。
【0003】
出願人は、振動センサーを用いて、車両等の移動体を検出するシステムについて、特許出願を行っている(特許文献2参照。)。車両通過について発生する振動には、数kHzの振動レベルも含まれており、この周波数帯は、車両の車種判別において、有意義な情報である。上述した高域側での感度が悪化する問題の改善策の一つとして、感度が悪化する周波数を基準として、アンプのゲインを調整することが考えられる。しかしながら、感度を上げた帯域において、波形がクリップする問題が生じる。このため、ゲイン調整は、非常に難しい。また、車両の観測地点により、発生する振動の周波数特性、道路を伝わる周波数特性が異なることも、ゲイン調整の難しさの要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-012660号公報
【特許文献2】特開2022-022822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、センサーが出力する信号の所定の周波数帯域において、感度が悪いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、センサーが出力する信号の所定の周波数帯域における感度の悪化を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明のシステムは、センサーと、前記センサーから出力される信号から、所定の周波数帯域の信号を抽出する第1フィルターと、前記センサーから出力される信号から、前記第1フィルターによって抽出された帯域とは異なる、所定の周波数帯域の信号を抽出する第2フィルターと、前記第1フィルターによって抽出された信号を増幅する第1増幅部と、前記第2フィルターによって抽出された信号を増幅する第2増幅部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1増幅部は、第1フィルターによって抽出された、所定の周波数帯域の信号を増幅する。また、第2増幅部は、第2フィルターによって抽出された、第1フィルターによって抽出された帯域とは異なる、所定の周波数帯域の信号を増幅する。これにより、各増幅部が、異なったゲインで信号を増幅することができる。このため、感度が悪い周波数帯域の信号を適切なゲインで増幅することによって、信号の所定の周波数帯域における感度の悪化を改善することができる。
【0009】
また、感度が悪い帯域のみ、増幅部のゲインを上げることができるので、感度が良い帯域で、信号の波形がクリップすることを防止することができる。
【0010】
第2の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記第1増幅部によって増幅された信号と、前記第2増幅部によって増幅された信号と、を合成する合成部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第3の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記第1増幅部のゲインと、前記第2増幅部のゲインとは、異なることを特徴とする。
【0012】
第4の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記第1フィルターは、前記センサーから出力される信号から、所定の周波数以下の帯域の信号を抽出し、前記第2フィルターは、前記センサーから出力される信号から、所定の周波数以上の帯域の信号を抽出することを特徴とする。
【0013】
第5の発明のシステムは、第4の発明のシステムにおいて、前記第1フィルターにより抽出される帯域と、前記第2フィルターにより抽出される帯域と、の間の帯域の信号を抽出する第3フィルターをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
第6の発明のシステムは、第5の発明のシステムにおいて、前記第3フィルターにより抽出された信号を増幅する第3増幅部をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
第7の発明のシステムは、第6の発明のシステムにおいて、前記第1増幅部のゲインと、前記第2増幅部のゲインと、前記第3増幅部のゲインとは、異なっていることを特徴とする。
【0016】
第8の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記センサーは、振動を検出し、検出した振動を信号として出力することを特徴とする。
【0017】
第9の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記センサーは、圧電素子を有する、圧電型センサーであることを特徴とする。
【0018】
第10の発明のシステムは、第1の発明のシステムにおいて、前記センサーから出力される信号に基づいて、移動体の移動を検出する制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
第11の発明のシステムは、第10の発明のシステムにおいて、前記制御部は、移動を検出した移動体を種別に分類することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、信号の所定の周波数帯域における感度の悪化を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る移動体検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】一次の同一周波数のフィルターを用いて、信号を分割し、合成を行ったシミュレーションの波形である。
【
図4】一次の同一周波数のフィルターを用いて、信号を分割し、合成を行ったシミュレーションの波形である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明のシステムを、移動体である車両の移動を検出し、移動を検出した車両を、小型車、大型車等の種別に分類する移動体検出システムに適用した場合について説明する。ただし、本発明は、センサーを備えるシステムに適用可能である。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る移動体検出システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、移動体検出システム1は、センサー2、フィルター3、4、アンプ5、6、加算回路7、パーソナルコンピューター(以下、「PC」という。)8を備える。センサー2は、例えば、道路等に設置される。センサー2は、道路等を走行する車両の振動を検出し、検出した振動を信号として出力する。センサー2は、例えば、圧電(ピエゾ)素子を有する、圧電型センサーである。なお、移動体検出システム1においては、センサー2は、振動を検出し、検出した振動を信号として出力できればよく、圧電型センサーに限られない。
【0024】
フィルター3、4は、センサー2から出力された信号から、所定の周波数帯域の信号を抽出する。具体的には、フィルター3(第1フィルター)は、センサー2から出力された信号から、所定の周波数以下の帯域の信号を抽出するローパスフィルター(LPF: Low Pass Filter)である。フィルター4(第2フィルター)は、センサー2から出力された信号から、所定の周波数以上の帯域の信号を抽出するハイパスフィルター(HPF: High Pass Filter)である。従って、フィルター3によって抽出される周波数帯域と、フィルター4によって抽出される周波数帯域とは、異なる。
【0025】
アンプ5、6は、信号を増幅する。アンプ5(第1増幅部)は、所定のゲインで、フィルター3によって抽出された信号を増幅する。アンプ5のゲインは、フィルター3によって抽出された信号のレベルに応じて、設定される。アンプ6(第2増幅部)は、所定のゲインで、フィルター4によって抽出された信号を増幅する。アンプ6のゲインは、フィルター4によって抽出された信号のレベルに応じて、設定される。このように、アンプ5、6のゲインは、フィルター3、4によって抽出された信号のレベルに応じて、設定されるため、アンプ5、6のゲインは、異なる。
【0026】
加算回路7(合成部)は、アンプ5によって増幅された信号と、アンプ6によって増幅された信号と、を合成する。PC8(制御部)は、センサー2から出力される信号に基づいて、移動体である車両の移動を検出する。具体的には、PC8は、センサー2から出力され、加算回路7によって合成された信号に基づいて、移動体である車両の移動を検出する。PC8は、移動を検出した移動体である車両を種別に分類する。例えば、PC8は、車両を、種別として、大型車、小型車に分類する。移動体の移動の検出、及び、種別への分類については、出願人による出願である特願2022-001969等を参照されたい。
【0027】
なお、本実施形態では、PC8が、移動体の検出、移動体の種別への分類を行う場合について説明した。これに限らず、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System on Chip)等が、移動体の検出、移動体の種別への分類を行うようになっていてもよい。PC8が、移動体の検出、移動体の種別への分類を行う場合、PC8に搭載されているCPU等が、プログラムに従って、移動体の検出、移動体の種別への分類を行うことは言うまでもない。
【0028】
また、本実施形態において、センサー2、フィルター3、4、アンプ5、6、加算回路7、PC8が、それぞれ、別筐体に収容され、移動体検出システム1が、構成されていてもよい。また、センサー2、フィルター3、4、アンプ5、6、加算回路7、PC8に替わるCPU等が、一つの筐体に収容され、移動体検出システム1が、一体化されていてもよい。
【0029】
図2(a)は、フィルター3等を示す図である。
図2(b)は、フィルター4等を示す図である。フィルター3は、例えば、抵抗R、コイルLから構成されている。フィルター4は、例えば、コンデンサCから構成されている。図示するように、センサー2は、共通であるが、アンプ5、6は、共通ではなく、異なるゲインが設定される。なお、フィルター3は、ローパスフィルター(LPF: Low Pass Filter)であればよく、また、フィルター3は、ハイパスフィルター(HPF: Hight Pass Filter)であればよく、その構成は、問わない。
【0030】
図3及び
図4は、一次の同一周波数のフィルターを用いて、信号を分割し、合成を行ったシミュレーションの波形である。
図3は、同一ゲインでの合成結果を示している。
図4は、異なるゲインでの合成結果を示している。
図3に示すように、同一ゲインでの合成の場合、元の信号と合成後の信号との間で、位相変化はみられない。
図4に示すように、異なるゲインでの合成の場合、元の信号と合成後の信号との間で、若干の位相差が生じている。しかしながら、移動体検出システム1では、AIによる信号解析が想定されるため、フィルターの定数を変更しない限り、一定の変化となるため、大勢に影響はないと考えられる。
【0031】
なお、本実施形態では、フィルター3(LPF)、フィルター4(HPF)の2種類でフィルターが構成されている。これに限らず、必要な周波数帯域に応じて、3種類以上のフィルターで構成されていてもよい。例えば、3種類のフィルターで構成される場合、フィルター3は、所定の周波数(例えば、A)以下の帯域の信号を抽出する。フィルター4は、フィルター3が抽出する所定の周波数(例えば、A)よりも大きい周波数(例えば、B>A)以上の帯域の信号を抽出する。そして、3つの目のフィルターは、フィルター3により抽出される帯域(例えば、A以下の帯域)と、フィルター4により抽出される帯域(例えば、B以上の帯域)と、の間の帯域(AとBとの間の帯域)の信号を抽出する。3つ目のフィルターは、バンドパスフィルター(BPF: Band Pass Filter)である。また、フィルターが3種類で構成される場合は、アンプも3つとなる。フィルターが4種類以上で構成される場合は、バンドパスフィルター及びアンプが増設されればよい。
【0032】
本実施形態では、センサーとしての感度を周波数に関係なく、一律に管理するのではなく、まず、ゲイン調整前に、感度レベルで大きな差が生じている周波数で、フィルター3(LPF)、フィルター4(HPF)で信号の帯域を分割する。そして、それぞれの帯域で適切なアンプ5、6のゲインを設定する。アンプ5、6で増幅された信号は、加算回路7で合成され、一つの信号に戻される。これにより、音源を増やすことなく、高感度域のクリップ、低感度改善のそれぞれの問題を解決することができる。フィルターが挿入されることによる位相の問題は、一次の構成とすることで、影響を最小限とし、分割、合成が可能となる。
【0033】
以上説明したように、アンプ5(第1増幅部)は、フィルター3(第1フィルター)によって抽出された、所定の周波数帯域の信号を増幅する。また、アンプ6(第2増幅部)は、フィルター4(第2フィルター)によって抽出された、フィルター3(第1フィルター)によって抽出された帯域とは異なる、所定の周波数帯域の信号を増幅する。これにより、各アンプ5、6(増幅部)が、異なったゲインで信号を増幅することができる。このため、感度が悪い周波数帯域の信号を適切なゲインで増幅することによって、信号の所定の周波数帯域における感度の悪化を改善することができる。
【0034】
また、感度が悪い帯域のみ、増幅部のゲインを上げることができるので、感度が良い帯域で、信号の波形がクリップすることを防止することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、センサーを備えるシステムに好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0037】
1 移動体検出システム
2 センサー
3 フィルター(第1フィルター)
4 フィルター(第2フィルター)
5 アンプ(第1増幅部)
6 アンプ(第2増幅部)
7 加算回路(合成部)
8 PC(制御部)