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特開2024-81166タッチプローブのキャリブレーション方法
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  • 特開-タッチプローブのキャリブレーション方法 図1
  • 特開-タッチプローブのキャリブレーション方法 図2
  • 特開-タッチプローブのキャリブレーション方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081166
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】タッチプローブのキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240611BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01B5/00 P
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194559
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉克
【テーマコード(参考)】
2F062
3C029
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062AA04
2F062BC57
2F062CC23
2F062CC27
2F062DD21
2F062DD23
2F062EE01
2F062EE62
2F062HH01
2F062HH11
2F062HH21
2F062JJ04
3C029BB02
(57)【要約】
【課題】NC制御された工作機械の機上にてタッチプローブのセンサ位置ズレを校正できるキャリブレーション方法の提供を目的とする。
【解決手段】タッチプローブのキャリブレーション方法であって、前記タッチプローブに有するスタイラスを所定の送り速度で対象物に接触させ、前記スタイラスが対象物に接触したトリガー信号に基づいて、前記対象物のスキップ座標値を取得するステップと、次に前記スタイラスを前記対象物から後退させ、前記トリガー信号がOFFになるOFF座標値を取得するステップを有し、前記OFF座標値とスキップ座標値の差分からオーバーシュート量を補正することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチプローブのキャリブレーション方法であって、
前記タッチプローブに有するスタイラスを所定の送り速度で対象物に接触させ、前記スタイラスが対象物に接触したトリガー信号に基づいて、前記対象物のスキップ座標値を取得するステップと、
次に前記スタイラスを前記対象物から後退させ、前記トリガー信号がOFFになるOFF座標値を取得するステップを有し、
前記OFF座標値とスキップ座標値の差分からオーバーシュート量を補正することを特徴とするタッチプローブのキャリブレーション方法。
【請求項2】
前記対象物は、NC制御された工作機械に有するワークのチャック部端面又は工作機械に装着された工具、あるいはワークであり、前記工作機械の機上にて自動でキャリブレーションを行うことを特徴とする請求項1記載のタッチプローブのキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械におけるワークのチャック部端面、各種工具の位置、ワークの基準面等の対象物の位置の計測をする際に用いられるタッチプローブのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においてはワークの機械加工に際し、高精度な加工を実行するために加工基準となる位置や、工具等の位置等をタッチプローブ等の位置センサを用いて、予め計測して補正を行うことが必要となる。
【0003】
タッチプローブに有するスタイラス(接触子)を計測対象となる対象物に向けて前進させて、スタイラスがこの対象物に接触したことで出力されるトリガー信号にて対象物の位置を計測することが行われているが、スタイラスが対象物に向けて前進する際に、実際にこのスタイラスの先端球等が対象物に接触してからトリガー信号にて停止するまでの間に惰走してしまう距離(オーバーシュート量)が発生する。
このオーバーシュート量は、タッチプローブの先端球の芯ズレ、タッチプローブのセンサ特性、タッチプローブの接触方向の違い、環境温度の変化等の多くの要因がある。
したがって、このキャリブレーションは機械加工を行う直前にて実行されるのが好ましい。
【0004】
従来のリングゲージを用いた校正方法では、スタイラス軸をリングゲージ中心に合せる必要があり、その調整作業が必要となる。
また、校正用のリングゲージの取付け、取外し作業も問題になる。
例えば、特許文献1には主軸と対象物との位置関係を位置決め可能な機械を用いて、回転軸を制御して被計測治具を複数位置に割り出すことで、被計測治具の3次元空間上の割出位置を計測して位置計測センサのキャリブレーションを行うことが開示されている。
この場合であっても、被計測治具を用いて予め初期位置を計測する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-83729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、NC制御された工作機械の機上にてタッチプローブのセンサ位置ズレを校正できるキャリブレーション方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タッチプローブのキャリブレーション方法であって、前記タッチプローブに有するスタイラスを所定の送り速度で対象物に接触させ、前記スタイラスが対象物に接触したトリガー信号に基づいて、前記対象物のスキップ座標値を取得するステップと、次に前記スタイラスを前記対象物から後退させ、前記トリガー信号がOFFになるOFF座標値を取得するステップを有し、前記OFF座標値とスキップ座標値の差分からオーバーシュート量を補正することを特徴とする。
ここで、スタイラスを後退させる方法としては、所定のピッチで繰り返し離れる方向に後退させたり、徐々に後退させる等してトリガー信号がOFFになる後退量を取得できれば、どのような方法でもよい。
【0008】
ここで、前記対象物は、NC制御された工作機械に有するワークのチャック部端面又は工作機械に装着された工具、あるいはワークであり、前記工作機械の機上にて自動でキャリブレーションを行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るタッチプローブのキャリブレーション方法は、工作機械の主軸や工具軸の端面、工具長の基準位置、ワークの加工位置等にスタイラスを接触させ、トリガー信号によりそのスキップ座標値と、その後に離れる方向に操作を行い、トリガー信号がOFFとなるOFF座標値とからオーバーシュート量と基準位置を計測できるので必要に応じて加工前に機上にて自動的にキャリブレーションを行うことができるので、工作機械の環境温度変化、時系列的な変化等にも容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るキャリブレーション方法の原理図を示す。
図2】オーバーシュート量の計測結果を示す。
図3】オーバーシュート量の平均値及び2σのバラツキの値をグラフに示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るキャリブレーションの説明図を図1に示す。
スタイラスの先端球をワーク等の対象物に対してスタイラスの軸方向、あるいは、それとは直角方向に前進させ、先端球が接触したことで出力されるトリガー信号により、スタイラスが停止するスキップ座標値Aと、徐々にスタイラスの先端球を対象物から引き離し、トリガー信号がOFFになる座標値Bとの差分からオーバーシュート量を計測する。
【0012】
オーバーシュート量をシムを用いた場合と、本発明に係るプログラム上での計測との2種で計測し、比較した結果を図2及び図3に示す。
図2(b)に示すように、位置制御されたスタイラスの先端球を2主軸対向旋盤の一方の主軸端面に向けてaの方向、及びそれに対してそれぞれb=90°,c=180°,d=270°回転させた向きにて端面に接触させる場合とスタイラス軸方向(Z軸方向)に接触させる場合の5つの計測を実施した。
スタイラスの送り速度は50mm/minとした。
図2(a)に示したシムとプログラム上の測定方法は下記のとおりである。
シム:シムプレートを用いてスタイラス球がチャック端面に接触する位置を計測し、その位置をZ0とする。
スキップ送りで取得されたZ座標の絶対値がオーバーシュート量となる。
プログラム:スキップ送りでチャック端面に接触させた状態からプローブのトリガー信号がOFFになるまで徐々に(1μmずつ繰り返し)プローブを引き離す。
スキップ座標値とトリガーがOFFになった座標値の差分がオーバーシュート量となる。
図2(a)には、n=10回の計測結果(単位mm)、図3のグラフに平均値と2σのバラツキ範囲を示す。
オーバーシュート量はスタイラスの接触方向の影響も多少あるが、接触方向を一定にすると2σにて3μm以内であった。
シムプレートを用いて計測したオーバーシュート量と本発明に係るプログラム上(機上)にて求めたオーバーシュート量を比較すると、その差分は最大で6μmであり、一般的な機械加工の精度においては、充分に実用可能である。
図1
図2
図3