(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081173
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】磁気記録媒体及び磁気記録装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/706 20060101AFI20240611BHJP
G11B 5/673 20060101ALI20240611BHJP
G11B 5/70 20060101ALI20240611BHJP
G11B 5/716 20060101ALI20240611BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20240611BHJP
G11B 5/82 20060101ALI20240611BHJP
G11B 5/738 20060101ALI20240611BHJP
G11B 5/31 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G11B5/706
G11B5/673
G11B5/70
G11B5/716
G11B5/02 S
G11B5/82
G11B5/738
G11B5/31 A
G11B5/31 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194583
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】長村 燎
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕治
(72)【発明者】
【氏名】前田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】高岸 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】成田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】栗原 幸佑
【テーマコード(参考)】
5D006
【Fターム(参考)】
5D006BB01
5D006BB08
5D006BB09
5D006CA03
5D006CB01
5D006CB04
5D006DA03
5D006FA09
(57)【要約】
【課題】記録密度の向上が可能な磁気記録媒体及び磁気記録装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、磁気記録媒体は、第1~第3磁性領域を含む。第2磁性領域は、第3磁性領域と第1磁性領域との間にある。第1磁性領域におけるCo原子濃度に対するPt原子濃度の第1組成比、及び、第3磁性領域におけるCo原子濃度に対するPt原子濃度の第3組成比は、第2磁性領域におけるCo原子濃度に対するPt原子濃度の第2組成比よりも高い。第2磁性領域と第1磁性領域との間の第1方向に沿う距離は、第3磁性領域と第2磁性領域との間の第1方向に沿う距離よりも長い。または、第1磁性領域は第2磁性領域から離れ、第3磁性領域は第2磁性領域と接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁性領域と、
第2磁性領域と、
第3磁性領域と、
を備え、
前記第2磁性領域は、前記第3磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向において、前記第3磁性領域と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域における第1Co原子濃度に対する前記第1磁性領域における第1Pt原子濃度の第1組成比は、前記第2磁性領域における第2Co原子濃度に対する前記第2磁性領域における第2Pt原子濃度の第2組成比よりも高く、
前記第3磁性領域における第3Co原子濃度に対する前記第3磁性領域における第3Pt原子濃度の第3組成比は、前記第2組成比よりも高く、
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間の前記第1方向に沿う第1距離は、前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間の前記第1方向に沿う第2距離よりも長い、または、前記第1磁性領域は前記第2磁性領域から離れ、前記第3磁性領域は前記第2磁性領域と接する、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間の第1交換結合強度は、前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間の第2交換結合強度よりも低い、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第1交換結合強度の前記第2交換結合強度に対する比は、0.1以上0.6以下である、請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記第1磁性領域の第1異方性磁界の前記第2磁性領域の第2異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下である、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記第3磁性領域の第3異方性磁界の前記第2異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下である、請求項4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記第1異方性磁界の前記第3異方性磁界に対する比は、0.9以上1.1以下である、請求項5に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間に設けられた非磁性の第1中間領域をさらに備えた、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
第1磁性領域と、
第2磁性領域と、
第3磁性領域と、
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間に設けられた第1中間領域と、
前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間に設けられた第2中間磁性領域と、
を備え、
前記第2磁性領域は、前記第3磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向において、前記第3磁性領域と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域における第1Co原子濃度に対する前記第1磁性領域における第1Pt原子濃度に対する第1組成比は、前記第2磁性領域における第2Co原子濃度に対する前記第2磁性領域における第2Pt原子濃度に対する第2組成比よりも高く、
前記第3磁性領域における第3Co原子濃度に対する前記第3磁性領域における第3Pt原子濃度に対する第3組成比は、前記第2組成比よりも高く、
前記第1磁性領域、前記第2磁性領域及び前記第3磁性領域は、グラニュラ磁性領域であり、
前記第2中間磁性領域は、連続磁性領域であり、
前記第1中間領域は、非磁性である、磁気記録媒体。
【請求項9】
第1磁性領域と、
第2磁性領域と、
第3磁性領域と、
を備え、
前記第2磁性領域は、前記第3磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向において、前記第3磁性領域と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域の第1異方性磁界は、前記第2磁性領域の第2異方性磁界よりも大きく、
前記第3磁性領域の第3異方性磁界は、前記第2異方性磁界よりも大きく、
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間の前記第1方向に沿う第1距離は、前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間の前記第1方向に沿う第2距離よりも長い、または、前記第1磁性領域は前記第2磁性領域から離れ、前記第3磁性領域は前記第2磁性領域と接する、磁気記録媒体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の磁気記録媒体と、
磁気ヘッドと、
を備え、
前記第3磁性領域と前記磁気ヘッドとの間に前記第1磁性領域が位置する、磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録媒体及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを用いて、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記録媒体に情報が記録される。磁気記録媒体において、記録密度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】X. Bai and J. -G. Zhu, "Effective Field Analysis of Segmented Media for Microwave-Assisted Magnetic Recording," in IEEE Magnetics Letters, vol. 8, pp. 1-4, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、記録密度の向上が可能な磁気記録媒体及び磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、磁気記録媒体は、第1磁性領域、第2磁性領域及び第3磁性領域を含む。前記第2磁性領域は、前記第3磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向において、前記第3磁性領域と前記第1磁性領域との間にある。前記第1磁性領域における第1Co原子濃度に対する前記第1磁性領域における第1Pt原子濃度の第1組成比は、前記第2磁性領域における第2Co原子濃度に対する前記第2磁性領域における第2Pt原子濃度の第2組成比よりも高い。前記第3磁性領域における第3Co原子濃度に対する前記第3磁性領域における第3Pt原子濃度の第3組成比は、前記第2組成比よりも高い。前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間の前記第1方向に沿う第1距離は、前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間の前記第1方向に沿う第2距離よりも長い。または、前記第1磁性領域は前記第2磁性領域から離れ、前記第3磁性領域は前記第2磁性領域と接する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(c)は、磁気記録媒体の特性を例示するグラフである。
【
図3】
図3(a)~
図3(c)は、磁気記録媒体の特性を例示するグラフである。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、磁気記録媒体の特性を例示するグラフである。
【
図5】
図5は、磁気記録媒体の特性を例示するグラフである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
【
図16】
図16(a)及び
図16(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る磁気記録媒体80は、磁気ヘッド110と共に用いられる。磁気記録媒体80及び磁気ヘッド110は、磁気記録装置150に含まれる。磁気ヘッド110により、磁気記録媒体80の磁化が制御される。これにより、磁気記録媒体80に情報が記録される。磁気ヘッド110は、記録された情報を再生可能で良い。
【0008】
図1に示すように、磁気記録媒体80は、第1磁性領域81、第2磁性領域82及び第3磁性領域83を含む。第1磁性領域81、第2磁性領域82及び第3磁性領域83は、記録層80Rに含まれる。
【0009】
第2磁性領域82は、第3磁性領域83から第1磁性領域81への第1方向D1において、第3磁性領域83と第1磁性領域81との間にある。第1方向D1をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。第1磁性領域81、第2磁性領域82及び第3磁性領域83は、X-Y平面に対して実質的に平行である。これらの領域は層状である。
【0010】
第1磁性領域81の磁化、第2磁性領域82の磁化、及び、第3磁性領域の磁化は、第1方向D1に沿う。磁気記録媒体80は、垂直磁化媒体である。
【0011】
例えば、第1磁性領域81、第2磁性領域82及び第3磁性領域83は、グラニュラ磁性領域である。例えば、高密度の記録が可能である。
【0012】
図1に示すように、磁気記録媒体80は、非磁性基板85S及び中間層84を含んで良い。非磁性基板85Sと第1磁性領域81との間に第3磁性領域83が設けられる。非磁性基板85Sと第3磁性領域83との間に中間層84が設けられる。中間層84は、例えば軟磁性である。非磁性基板85Sは、例えば、SiO
2(例えば、ガラス)、Al系合金、セラミック及び樹脂よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。中間層84は、例えば、CoZrNb、CoB、CoTaZr、FeSiAl、FeTaC、CoTaC、NiFe、Fe、FeCoB、FeCoN、及び、FeTaNよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0013】
図1に示すように、実施形態において、第3磁性領域83と磁気ヘッド110との間に第1磁性領域81が位置する。
【0014】
3つの磁性領域において、組成が互いに異なる。3つの磁性領域の組成比が、互いに異なる。3つの磁性領域のそれぞれにおける組成比は、例えば、平均の組成比でも良い。
【0015】
第1磁性領域81における第1Co原子濃度に対する、第1磁性領域81における第1Pt原子濃度の比(Pt/Co)を第1組成比とする。第1組成比の第1方向D1における平均を第1平均値AC1とする。第1磁性領域81における第1組成比の最高値と最小値との間の差を第1差ΔC1とする。
【0016】
例えば、第1差ΔC1の第1平均値AC1に対する第1比(ΔC1/AC1)は、0.2以下である。すなわち、第1磁性領域81において、組成比は20%以内で変化して良い。第1比は、0.4以下でも良い。
【0017】
第2磁性領域82における第2Co原子濃度に対する、第2磁性領域82における第2Pt原子濃度の比(Pt/Co)を第2組成比とする。第2組成比の第1方向D1における平均を第2平均値AC2とする。第2磁性領域82における第2組成比の最高値と最小値との間の差を第2差ΔC2とする。
【0018】
例えば、第2差ΔC2の第2平均値AC2に対する第2比(ΔC2/AC2)は、0.2以下である。すなわち、第2磁性領域82において、組成比は20%以内で変化して良い。第2比は、0.4以下でも良い。
【0019】
第3磁性領域83における第3Co原子濃度に対する、第3磁性領域83における第3Pt原子濃度の比(Pt/Co)を第3組成比とする。第3組成比の第1方向D1における平均を第3平均値AC3とする。第3磁性領域83における第3組成比の最高値と最小値との間の差を第3差ΔC3とする。
【0020】
例えば、第3差ΔC3の第3平均値AC3に対する第3比(ΔC3/AC3)は、0.2以下である。すなわち、第3磁性領域83において、組成比は20%以内で変化して良い。第3比は、0.4以下でも良い。
【0021】
実施形態においては、第1組成比は、第2組成比よりも高い。第3組成比は、第2組成比よりも高い。例えば、実施形態において、第1平均値AC1は、第2平均値AC2よりも高い。第3平均値AC3は、第2平均値AC2よりも高い。
【0022】
図1に示すように、第2磁性領域82と第1磁性領域81との間の第1方向D1に沿う距離を第1距離d1とする。第3磁性領域83と第2磁性領域82との間の第1方向D1に沿う距離を第2距離d2とする。実施形態において、第1距離d1は、第2距離d2よりも長い。または、第1磁性領域81は第2磁性領域82から離れ、第3磁性領域83は第2磁性領域82と接する。
【0023】
このような構成により、高い面記録密度が得られることが分かった。
図1に示すように、記録層80Rの一方の面に磁気ヘッド110が対向する。磁気ヘッド110から記録磁界が記録層80Rに印加される。このとき、例えば、磁気ヘッド110から交番磁界が記録層80Rに印加されても良い。交番磁界は例えば高周波磁界である。例えば、MAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)が実施されて良い。磁気ヘッド110が印加する記録磁界及び交番磁界は、第1磁性領域81を通過して第2磁性領域82及び第3磁性領域83に届く。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録媒体を提供できる。
【0024】
実施形態においては、上記のように、第1距離d1が第2距離d2よりも長い。これにより、高い面記録密度が得られる。これは、3つの磁性領域の磁気特性(交換結合を含む特性)が適正に設定されることが原因であると考えられる。
【0025】
第1距離d1が第2距離d2よりも長いことで、交換結合強度が異なる。例えば、第2磁性領域82と第1磁性領域81との間の第1交換結合強度は、第3磁性領域83と第2磁性領域82との間の第2交換結合強度よりも低い。
【0026】
例えば、第1磁性領域81が第2磁性領域82から離れ、第3磁性領域83は第2磁性領域82と接する場合も、第1交換結合強度は、第2交換結合強度よりも低い。
【0027】
上記のように、3つの磁性領域のそれぞれにおける組成(例えば平均の組成比)が、互いに異なる。Co原子濃度に対するPt原子濃度の比(Pt/Co)が高いと、磁性領域における異方性磁界Hkが大きくなる。この比が低いと、磁性領域における異方性磁界Hkが小さくなる。3つの磁性領域のそれぞれにおける異方性磁界(例えば平均の異方性磁界)が違いに異なる。
【0028】
例えば、1つの磁性領域の異方性磁界は、第1方向D1における異方磁界の平均として良い。第1磁性領域81の異方性磁界の第1方向D1における平均を、第1平均異方性磁界Hk1とする第2磁性領域82の異方性磁界の第1方向D1における平均を、第2平均異方性磁界Hk2とする。第3磁性領域83の異方性磁界の第1方向D1における平均を、第3平均異方性磁界Hk3とする。
【0029】
実施形態において、第1磁性領域81の異方性磁界は、第2磁性領域82の異方性磁界よりも大きい。第3磁性領域83の異方性磁界は、第2磁性領域82の異方性磁界よりも大きい。例えば、実施形態において、第1平均異方性磁界Hk1は、第2平均異方性磁界Hk2よりも大きい。第3平均異方性磁界Hk3は、第2平均異方性磁界Hk2よりも大きい。これにより、高い面記録密度が得られる。
【0030】
以下、磁気記録媒体80に関するシミュレーション結果の例について説明する。シミュレーションにおいては、磁性領域の異方性磁界(第1平均異方性磁界Hk1、第2平均異方性磁界Hk2及び第3平均異方性磁界Hk3)が変更される。異方性磁界は、上記の組成比を反映している。シミュレーションにおいては、さらに、第1交換結合強度Jex1及び第2交換結合強度Jex2が変更される。交換結合強度は、上記の距離と関係する。距離が長い場合に、交換結合強度は低くなる。
【0031】
図2(a)~
図2(c)、
図3(a)~
図3(c)、
図4(a)~
図4(c)、及び、
図5は、磁気記録媒体の特性を例示するグラフである。
これらの図は、異方性磁界及び交換結合強度を種々に変化させたときに適正に記録再生動作が可能な面記録密度との関係を例示している。
【0032】
図2(a)~
図2(c)においては、第1交換結合強度Jex1は第2交換結合強度Jex2よりも低い。この例では、第1交換結合強度Jex1は、第2交換結合強度Jex2の0.1倍以上0.6倍以下である。
図2(a)~
図2(c)は、第1距離d1が第2距離d2よりも長い場合に対応する。
図2(a)の横軸は、Hk1/Hk2である。
図2(b)の横軸は、Hk3/Hk2である。
図2(c)の横軸は、Hk1/Hk3である。これらの図の縦軸は、面記録密度ADCである。
【0033】
図3(a)~
図3(c)においては、第1交換結合強度Jex1は第2交換結合強度Jex2と実質的に同じである。この例では、第1交換結合強度Jex1は、第2交換結合強度Jex2の0.9倍以上1.1倍以下である。
図3(a)~
図3(c)は、第1距離d1が第2距離d2と実質的に同じ場合に対応する。
図3(a)の横軸は、Hk1/Hk2である。
図3(b)の横軸は、Hk3/Hk2である。
図3(c)の横軸は、Hk1/Hk3である。これらの図の縦軸は、面記録密度ADCである。
【0034】
図4(a)~
図4(c)においては、第1交換結合強度Jex1は第2交換結合強度Jex2よりも高い。この例では、第1交換結合強度Jex1は、第2交換結合強度Jex2の1倍を超え、20倍以下である。
図4(a)~
図4(c)は、第1距離d1が第2距離d2よりも短い場合に対応する。
図4(a)の横軸は、Hk1/Hk2である。
図4(b)の横軸は、Hk3/Hk2である。
図4(c)の横軸は、Hk1/Hk3である。これらの図の縦軸は、面記録密度ADCである。
【0035】
図2(a)~
図2(c)に示すように、第1交換結合強度Jex1が第2交換結合強度Jex2よりも低い場合、0.9~1.0の高い面記録密度ADCが得られる条件が存在する。これに対して、
図3(a)~
図3(c)に示すように、第1交換結合強度Jex1が第2交換結合強度Jex2と実質的に同じ場合、面記録密度ADCは、0.8以下である。
図4(a)~
図4(c)に示すように、第1交換結合強度Jex1が第2交換結合強度Jex2よりも高い場合、面記録密度ADCは、0.8以下である。
【0036】
このように、第1交換結合強度Jex1が第2交換結合強度Jex2よりも低いことで、高い面密度が得られる。例えば、第1交換結合強度Jex1は、第2交換結合強度Jex2の0.1倍以上0.6倍以下である。高い面密度が得られる。
【0037】
例えば、第1磁性領域81と磁気ヘッド110との間の距離は、第2磁性領域82と磁気ヘッド110との間の距離よりも短く、第3磁性領域83と磁気ヘッド110との間の距離よりも短い。磁気ヘッド110による記録動作において、第1磁性領域81の磁化は、他の磁性領域の磁化よりも反転し易い。反転した第1磁性領域81の磁化が、低い第1交換結合強度Jex1により、第2磁性領域82に伝わる。例えば、小さい第2平均異方性磁界Hk2を有する第2磁性領域82の磁化は、大きい第1平均異方性磁界Hk1を有する第1磁性領域81の磁化の影響により、効果的に反転する。一方、第2交換結合強度Jex2が高いことで、小さい第2平均異方性磁界Hk2を有する第2磁性領域82の磁化を第3磁性領域83に伝えることができる。例えば、第3磁性領域83の第3平均異方性磁界Hk3が高い場合においても、高い第2交換結合強度Jex2により、第2磁性領域82の磁化が第3磁性領域83に伝えられる。これにより、高い面密度が得られると考えられる。
【0038】
図2(a)に示すように、Hk1/Hk2が1.4以上1.7以下のときに、高い面記録密度ADCが得られる。
図2(b)に示すように、Hk3/Hk2が1.4以上1.7以下のときに、高い面記録密度ADCが得られる。
図2(c)に示すように、Hk1/Hk3が0.9以上1.1以下のときに、高い面記録密度ADCが得られる。
【0039】
図5の横軸は、交換結合比JRである。交換結合比JRは、第1交換結合強度Jex1の第2交換結合強度Jex2に対する比である。
図5においては、Hk1>Hk2であり、Hk3>Hk2である。
図5に示すように、交換結合比JRが0.1以上0.6以下のときに高い面記録密度が得られる。
【0040】
実施形態において、例えば、第1交換結合強度の第2交換結合強度に対する比は、0.1以上0.6以下であることが好ましい。これにより、高い面記録密度が得られる。
【0041】
実施形態において、第1磁性領域81の異方性磁界の第2磁性領域82の異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下であることが好ましい。例えば、第1平均異方性磁界Hk1の第2平均異方性磁界Hk2に対する比(Hk1/Hk2)は、1.4以上1.7以下であることが好ましい。これにより、高い面記録密度が得られる。第3磁性領域83の異方性磁界の第2磁性領域82の異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下であることが好ましい。例えば、第3平均異方性磁界Hk3の第2平均異方性磁界Hk2に対する比(Hk3/Hk2)は、1.4以上1.7以下であることが好ましい。これにより、高い面記録密度が得られる。第1磁性領域81の異方性磁界の第3磁性領域83の異方性磁界に対する比は、0.9以上1.1以下であることが好ましい。例えば、第1平均異方性磁界Hk1の第3平均異方性磁界Hk3に対する比(Hk1/Hk3)は、例えば、0.9以上1.1以下であることが好ましい。これにより、高い面記録密度が得られる。
【0042】
実施形態において、第1平均異方性磁界Hk1は、例えば、19000Oe以上であることが好ましい。第1平均異方性磁界Hk1は、25000Oe以下で良い。第2平均異方性磁界Hk2は、例えば、11000Oe以上15000Oe以下であることが好ましい。第3平均異方性磁界Hk3は、例えば、18000Oe以上であることが好ましい。第3平均異方性磁界Hk3は、25000Oe以下で良い。
【0043】
このように、実施形態に係る磁気記録媒体80において、第1磁性領域81、第2磁性領域82、及び、第3磁性領域83は、以下の条件を満たしても良い。
第1磁性領域81の異方性磁界は、第2磁性領域82の異方性磁界よりも大きい。第3磁性領域83の異方性磁界は、第2磁性領域82の異方性磁界よりも大きい。例えば、第1磁性領域81の異方性磁界の第1方向D1における平均は、第1平均異方性磁界Hk1である。例えば、第1磁性領域81における異方性磁界の最高値と最小値との間の第1差の第1平均異方性磁界Hk1に対する第1比は、0.2以下である。第2磁性領域82の異方性磁界の第1方向D1における平均は、第2平均異方性磁界Hk2である。例えば、第2磁性領域82における異方性磁界の最高値と最小値との間の第2差の第2平均異方性磁界Hk2に対する第2比は、0.2以下である。第3磁性領域83の異方性磁界の第1方向D1における平均は、第3平均異方性磁界Hk3である。例えば、第3磁性領域83における異方性磁界の最高値と最小値との間の第3差の第3平均異方性磁界Hk3に対する第3比は、0.2以下である。
【0044】
第1平均異方性磁界Hk1は、第2平均異方性磁界Hk2よりも大きい。第3平均異方性磁界Hk3は、第2平均異方性磁界Hk2よりも大きい。第2磁性領域82と第1磁性領域81との間の第1方向D1に沿う第1距離d1は、第3磁性領域83と第2磁性領域82との間の第1方向D1に沿う第2距離d2よりも長い。または、第1磁性領域81は第2磁性領域82から離れ、第3磁性領域83は第2磁性領域82と接する。
【0045】
第1磁性領域81の第1厚さt1(
図1参照)は、例えば、4nm以上10nm以下である。第2磁性領域82の第2厚さt2(
図1参照)は、例えば、1nm以上6nm以下である。第3磁性領域83の第3厚さt3(
図1参照)は、例えば、4nm以上10nm以下である。これらの厚さは、第1方向D1方向に沿う長さである。
【0046】
第1距離d1は、例えば、0.1nm以上0.6nm以下である。第2距離d2は、例えば0nm以上0.5nm以下である。
【0047】
図6は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
図6に示すように、実施形態に係る磁気記録媒体80Aにおいて、3つの磁性領域の少なくとも1つは、複数の磁性膜を含む。これを除く磁気記録媒体80Aにおける構成は、磁気記録媒体80の構成と同様で良い。
【0048】
図6に示すように、第1磁性領域81は、複数の第1磁性膜81fを含む。複数の第1磁性膜81fは、第1方向D1に沿って並ぶ。複数の第1磁性膜81fの1つから、複数の第1磁性膜81fの別の1つへの方向は、第1方向D1に沿う。
【0049】
第2磁性領域82は、複数の第2磁性膜82fを含む。複数の第2磁性膜82fの1つから、複数の第2磁性膜82fの別の1つへの方向は、第1方向D1に沿う。第3磁性領域83は、複数の第3磁性膜83fを含む。複数の第3磁性膜83fの1つから、複数の第3磁性膜83fの別の1つへの方向は、第1方向D1に沿う。
【0050】
複数の第1磁性膜81fの間で、組成比の差は、例えば、20%以内である。複数の第2磁性膜82fの間で、組成比の差は、例えば、20%以内である。複数の第3磁性膜83fの間で、組成比の差は、例えば、20%以内である。
【0051】
図7は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、実施形態に係る磁気記録媒体80Bは、第1中間領域91n及び第2中間領域92nをさらに含む。これを除く磁気記録媒体80Bの構成は、磁気記録媒体80または磁気記録媒体80Aの構成と同様で良い。
【0052】
磁気記録媒体80Bにおいて、第1中間領域91nは、第2磁性領域82と第1磁性領域81との間に設けられる。第1中間領域91nは、非磁性である。第2中間領域92nは、第3磁性領域83と第2磁性領域82との間に設けられる。第2中間領域92nは、非磁性である。
【0053】
第1中間領域91n及び第2中間領域92nは、例えば、Ru、Pt及びCよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1中間領域91nの厚さが第1距離d1に対応する。第2中間領域92nの厚さが第2距離d2に対応する。
【0054】
図8は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、実施形態に係る磁気記録媒体80Cは、第1中間領域91nを含む。磁気記録媒体80Cにおいて、第2磁性領域82は、第3磁性領域83と接する。これを除く磁気記録媒体80Cの構成は、磁気記録媒体80または磁気記録媒体80Aの構成と同様で良い。
【0055】
磁気記録媒体80Cにおいて、第2距離d2は、0である。第2磁性領域82が第3磁性領域83と接することで、第1交換結合強度は、第2交換結合強度よりも低くなる。
【0056】
図9は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
図9に示すように、実施形態に係る磁気記録媒体80Dは、第1中間領域91n及び第2中間磁性領域92mをさらに含む。これを除く磁気記録媒体80Dの構成は、磁気記録媒体80または磁気記録媒体80Aの構成と同様で良い。
【0057】
第1中間領域91nは、第2磁性領域82と第1磁性領域81との間に設けられる。第1中間領域91nは、非磁性である。第2中間磁性領域92mは、第3磁性領域83と第2磁性領域82との間に設けられる。第2中間磁性領域92mは、連続磁性領域である。第2中間磁性領域92mは、例えば、Cr、Pt及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つと、Coと、を含む。第1中間領域91nの厚さが第1距離d1に対応する。第2中間磁性領域92mの厚さが第2距離d2に対応する。
【0058】
磁気記録媒体80Dにおいて、第1距離d1は、第2距離d2と同じでも良く、短くても良く、長くても良い。非磁性膜と磁性膜との違いにより、交換結合強度の差が得られる。磁気記録媒体80Dにおいて、第1交換結合強度は、第2交換結合強度よりも低い。
【0059】
磁気記録媒体80Dにおいて、第2磁性領域82及び第3磁性領域83は、グラニュラ磁性領域である。第2中間磁性領域92m、第2磁性領域82及び第3磁性領域83は、例えば電子顕微鏡像により特定できる。第1磁性領域81もグラニュラ磁性領域で良い。
【0060】
このように、磁気記録媒体80Dは、第1磁性領域81、第2磁性領域82、第3磁性領域83、第1中間領域91n及び第2中間磁性領域92mを含む。第1中間領域91nは、第2磁性領域82と第1磁性領域81との間に設けられる。第2中間磁性領域92mは、第3磁性領域83と第2磁性領域82との間に設けられる。第2中間磁性領域92mは、連続磁性領域である。第1中間領域91nは、非磁性である。
【0061】
図10は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
図10に示すように、実施形態に係る磁気記録媒体80Eは、第1連続磁性領域95mを含む。これを除く磁気記録媒体80Eの構成は、磁気記録媒体80または磁気記録媒体80Aの構成と同様で良い。
【0062】
磁気記録媒体80Eにおいて、第1磁性領域81は、第3磁性領域83と第1連続磁性領域95mとの間に設けられる。第1連続磁性領域95mは、例えばCr、Pt及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つと、Coと、を含む。第1連続磁性領域95mは、例えば、キャップ層である。第1連続磁性領域95mが設けられることで、例えば、高い記録特性が得られる。
【0063】
磁気記録媒体80Eにおいて、第1磁性領域81は、グラニュラ磁性領域である。第2磁性領域82及び第3磁性領域83も、グラニュラ磁性領域で良い。
【0064】
図11は、第1実施形態に係る磁気記録媒体を例示する模式的断面図である。
図11に示すように、実施形態に係る磁気記録媒体80Fにおいて、上記の記録層80Rの他に別の記録層80RAが設けられる。これを除く磁気記録媒体80Fの構成は、上記の任意の磁気記録媒体の構成と同様で良い。
【0065】
別の記録層80RAと、記録層80Rとの間に、非磁性基板85Sが設けられる。別の記録層80RAは、別の第1磁性領域81A、別の第2磁性領域82A、及び、別の第3磁性領域83Aを含む。別の第1磁性領域81Aと、第1磁性領域81と、の間に非磁性基板85Sが設けられる。別の第1磁性領域81Aと、非磁性基板85Sとの間に、別の第2磁性領域82Aが設けられる。別の第2磁性領域82Aと非磁性基板85Sとの間に、別の第3磁性領域83Aが設けられる。別の第3磁性領域83Aと非磁性基板85Sとの間に、別の中間層84Aが設けられて良い。
【0066】
磁気記録媒体80Fにおいては、非磁性基板85Sの2つの面のそれぞれに記録層が設けられる。別の磁気ヘッド110Aが、別の第1磁性領域81Aに対向する。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態は、磁気記録装置150に係る。
図12は、第2実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図12に示すように、磁気ヘッド110は、第1実施形態に係る磁気記録媒体(例えば、磁気記録媒体80など)と共に用いられる。この例では、磁気ヘッド110は、記録部60及び再生部70を含む。磁気ヘッド110の記録部60により、磁気記録媒体80に情報が記録される。再生部70により、磁気記録媒体80に記録された情報が再生される。
【0068】
磁気記録媒体80は、例えば、非磁性基板85Sと、非磁性基板85Sの上に設けられた記録層80Rと、を含む。記録層80Rの磁化80Mが記録部60により制御される。
【0069】
再生部70は、例えば、第1再生磁気シールド72a、第2再生磁気シールド72b、及び磁気再生素子71を含む。磁気再生素子71は、第1再生磁気シールド72aと第2再生磁気シールド72bとの間に設けられる。磁気再生素子71は、記録層80Rの磁化80Mに応じた信号を出力可能である。
【0070】
図12に示すように、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。磁気ヘッド110により、任意の位置において、記録層80Rの磁化80Mに対応する情報が制御される。磁気ヘッド110により、任意の位置において、記録層80Rの磁化80Mに対応する情報が再生される。
【0071】
既に説明したように、磁気記録装置150において、第3磁性領域83と磁気ヘッド110との間に、第1磁性領域81が位置する(
図1参照)。磁気ヘッド110は、記録動作が可能である。記録動作において、磁気ヘッド110から交番磁界が磁気記録媒体80(記録層80Rとの間)に印加される。磁気ヘッド110から記録磁界が磁気記録媒体80(記録層80R)に印加される。
【0072】
図13は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図13は、磁気ヘッド110を例示している。磁気ヘッド110は、第1磁極31、第2磁極32及び磁気素子20を含む。磁気素子20は、第1磁極31と第2磁極32との間に設けられる。
【0073】
例えば、磁気素子20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23及び第4磁性層24を含む。第1磁性層21は、第1磁極31と第2磁極32との間に設けられる。第2磁性層22は、第1磁性層21と第2磁極32との間に設けられる。第3磁性層23は、第2磁性層22と第2磁極32との間に設けられる。第4磁性層24は、第3磁性層23と第2磁極32との間に設けられる。
【0074】
例えば、磁気素子20は、第1非磁性層41、第2非磁性層42、第3非磁性層43、第4非磁性層44及び第5非磁性層45を含む。第1非磁性層41は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第2非磁性層42は、第1磁性層21と第2磁性層22との間に設けられる。第3非磁性層43は、第2磁性層22と第3磁性層23との間に設けられる。第4非磁性層44は、第3磁性層23と第4磁性層24との間に設けられる。第5非磁性層45は、第4磁性層24と第2磁極32との間に設けられる。
【0075】
1つの例において、第1非磁性層41は、Cu、Au、Cr、V、Al及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2非磁性層42は、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3非磁性層43は、Cu、Au、Cr、V、Al及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第4非磁性層44は、Cu、Au、Cr、V、Al及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第5非磁性層45は、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。このような構成において、例えば、安定した交番磁界が得やすい。
【0076】
図13に示すように、記録動作において、磁気素子20に電流icが供給される。電流icは、第1磁極31から第2磁極32へ流れる。電子流jeは、第2磁極32から第1磁極31へ流れる。
【0077】
図14は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図14は、ヘッドスライダを例示している。
磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159に設けられる。ヘッドスライダ159は、例えばAl
2O
3/TiCなどを含む。ヘッドスライダ159は、磁気記録媒体の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0078】
ヘッドスライダ159は、例えば、空気流入側159A及び空気流出側159Bを有する。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159の空気流出側159Bの側面などに配置される。これにより、磁気ヘッド110は、磁気記録媒体の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0079】
図15は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図16(a)及び
図16(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図15に示すように、実施形態に係る磁気記録装置150においては、ロータリーアクチュエータが用いられる。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mに装着される。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mにより矢印ARの方向に回転する。スピンドルモータ180Mは、駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。磁気記録装置150は、記録媒体181を含んでもよい。記録媒体181は、例えば、SSD(Solid State Drive)である。記録媒体181には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。例えば、磁気記録装置150は、ハイブリッドHDD(Hard Disk Drive)でも良い。
【0080】
ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180に記録する情報の、記録及び再生を行う。ヘッドスライダ159は、薄膜状のサスペンション154の先端に設けられる。ヘッドスライダ159の先端付近に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0081】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ159の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がバランスする。ヘッドスライダ159の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の間の距離が、所定の浮上量となる。実施形態において、ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180と接触しても良い。例えば、接触走行型が適用されても良い。
【0082】
サスペンション154は、アーム155(例えばアクチュエータアーム)の一端に接続されている。アーム155は、例えば、ボビン部などを有する。ボビン部は、駆動コイルを保持する。アーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられる。ボイスコイルモータ156は、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、駆動コイル及び磁気回路を含む。駆動コイルは、アーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、永久磁石及び対向ヨークを含む。永久磁石と対向ヨークとの間に、駆動コイルが設けられる。サスペンション154は、一端と他端とを有する。磁気ヘッドは、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端に接続される。
【0083】
アーム155は、ボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アーム155は、ボイスコイルモータ156により回転及びスライドが可能である。磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能である。
【0084】
図16(a)は、磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
図16(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0085】
図16(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びる。支持フレーム161は、軸受部157から延びる。支持フレーム161の延びる方向は、ヘッドジンバルアセンブリ158の延びる方向とは逆である。支持フレーム161は、ボイスコイルモータ156のコイル162を支持する。
【0086】
図16(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びたアーム155と、アーム155から延びたサスペンション154と、を有している。
【0087】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ159が設けられる。ヘッドスライダ159に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0088】
実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが設けられたヘッドスライダ159と、サスペンション154と、アーム155と、を含む。ヘッドスライダ159は、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端と接続される。
【0089】
サスペンション154は、例えば、信号の記録及び再生用のリード線(図示しない)を有する。サスペンション154は、例えば、浮上量調整のためのヒーター用のリード線(図示しない)を有しても良い。サスペンション154は、例えば発振素子などのためのリード線(図示しない)を有しても良い。これらのリード線と、磁気ヘッドに設けられた複数の電極と、が電気的に接続される。
【0090】
磁気記録装置150において、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。信号処理部190は、信号処理部190の入出力線は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に接続される。
【0091】
実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドと、可動部と、位置制御部と、信号処理部と、を含む。可動部は、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とする。位置制御部は、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合わせする。信号処理部は、磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。
【0092】
例えば、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。上記の可動部は、例えば、ヘッドスライダ159を含む。上記の位置制御部は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158を含む。
【0093】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1磁性領域と、
第2磁性領域と、
第3磁性領域と、
を備え、
前記第2磁性領域は、前記第3磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向において、前記第3磁性領域と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域における第1Co原子濃度に対する前記第1磁性領域における第1Pt原子濃度の第1組成比は、前記第2磁性領域における第2Co原子濃度に対する前記第2磁性領域における第2Pt原子濃度の第2組成比よりも高く、
前記第3磁性領域における第3Co原子濃度に対する前記第3磁性領域における第3Pt原子濃度の第3組成比は、前記第2組成比よりも高く、
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間の前記第1方向に沿う第1距離は、前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間の前記第1方向に沿う第2距離よりも長い、または、前記第1磁性領域は前記第2磁性領域から離れ、前記第3磁性領域は前記第2磁性領域と接する、磁気記録媒体。
【0094】
(構成2)
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間の第1交換結合強度は、前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間の第2交換結合強度よりも低い、構成1に記載の磁気記録媒体。
【0095】
(構成3)
前記第1交換結合強度の前記第2交換結合強度に対する比は、0.1以上0.6以下である、構成2に記載の磁気記録媒体。
【0096】
(構成4)
前記第1磁性領域の第1異方性磁界の前記第2磁性領域の第2異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下である、構成1~3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【0097】
(構成5)
前記第3磁性領域の第3異方性磁界の前記第2異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下である、構成4に記載の磁気記録媒体。
【0098】
(構成6)
前記第1異方性磁界の前記第3異方性磁界に対する比は、0.9以上1.1以下である、構成5に記載の磁気記録媒体。
【0099】
(構成7)
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間に設けられた非磁性の第1中間領域をさらに備えた、構成1~6のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【0100】
(構成8)
前記第1磁性領域、前記第2磁性領域及び前記第3磁性領域は、グラニュラ磁性領域である、構成1~7のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【0101】
(構成9)
前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間に設けられ第2中間磁性領域をさらに備え、
前記第2中間磁性領域は、連続磁性領域である、構成8に記載の磁気記録媒体。
【0102】
(構成10)
第1磁性領域と、
第2磁性領域と、
第3磁性領域と、
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間に設けられた第1中間領域と、
前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間に設けられた第2中間磁性領域と、
を備え、
前記第2磁性領域は、前記第3磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向において、前記第3磁性領域と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域における第1Co原子濃度に対する前記第1磁性領域における第1Pt原子濃度に対する第1組成比は、前記第2磁性領域における第2Co原子濃度に対する前記第2磁性領域における第2Pt原子濃度に対する第2組成比よりも高く、
前記第3磁性領域における第3Co原子濃度に対する前記第3磁性領域における第3Pt原子濃度に対する第3組成比は、前記第2組成比よりも高く、
前記第1磁性領域、前記第2磁性領域及び前記第3磁性領域は、グラニュラ磁性領域であり、
前記第2中間磁性領域は、連続磁性領域であり、
前記第1中間領域は、非磁性である、磁気記録媒体。
【0103】
(構成11)
第1連続磁性領域をさらに備え、
前記第1磁性領域は、前記第3磁性領域と前記第1連続磁性領域との間に設けられた、構成8~10のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【0104】
(構成12)
第1磁性領域と、
第2磁性領域と、
第3磁性領域と、
を備え、
前記第2磁性領域は、前記第3磁性領域から前記第1磁性領域への第1方向において、前記第3磁性領域と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域の第1異方性磁界は、前記第2磁性領域の第2異方性磁界よりも大きく、
前記第3磁性領域の第3異方性磁界は、前記第2異方性磁界よりも大きく、
前記第2磁性領域と前記第1磁性領域との間の前記第1方向に沿う第1距離は、前記第3磁性領域と前記第2磁性領域との間の前記第1方向に沿う第2距離よりも長い、または、前記第1磁性領域は前記第2磁性領域から離れ、前記第3磁性領域は前記第2磁性領域と接する、磁気記録媒体。
【0105】
(構成13)
前記第1異方性磁界の前記第2異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下である、構成12に記載の磁気記録媒体。
【0106】
(構成14)
前記第3異方性磁界の前記第2異方性磁界に対する比は、1.4以上1.7以下である、構成13に記載の磁気記録媒体。
【0107】
(構成15)
前記第1異方性磁界の前記第3異方性磁界に対する比は、0.9以上1.1以下である、構成14に記載の磁気記録媒体。
【0108】
(構成16)
前記第1異方性磁界は、19000Oe以上であり、
前記第2異方性磁界は、11000Oe以上15000Oe以下であり、
前記第3異方性磁界は、18000Oe以上である、構成12~15のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【0109】
(構成17)
非磁性基板と、
中間層と、
をさらに備え、
前記非磁性基板と前記第1磁性領域との間に前記第3磁性領域が設けられ、
前記非磁性基板と前記第3磁性領域との間に前記中間層が設けられ、
前記中間層は軟磁性である、構成1~16のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【0110】
(構成18)
構成1~17のいずれか1つに記載の磁気記録媒体と、
磁気ヘッドと、
を備え、
前記第3磁性領域と前記磁気ヘッドとの間に前記第1磁性領域が位置する、磁気記録装置。
【0111】
(構成19)
前記磁気ヘッドは記録動作が可能であり、
前記記録動作において、前記磁気ヘッドから交番磁界が前記磁気記録媒体に印加され、前記磁気ヘッドから記録磁界が前記磁気記録媒体に印加される、構成18に記載の磁気記録装置。
【0112】
(構成20)
前記磁気ヘッドは、
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた磁気素子と、
を含み、
前記磁気素子は、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第3磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第4磁性層と、
を含む、構成18または19に記載の磁気記録装置。
【0113】
実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録媒体及び磁気記録装置が提供できる。
【0114】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0115】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気ヘッド及び磁気記録装置に含まれる、磁極、磁気素子、磁性層、非磁性層、及び制御部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0116】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0117】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記録装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0118】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
20:磁気素子、 21~24:第1~第4磁性層、 31、32:第1、第2磁極、 41~45:第1~第5非磁性層、 60:記録部、 70:再生部、 71:磁気再生素子、 72a、72b:第2再生磁気シールド、 80、80A~80F:磁気記録媒体、 80M:磁化、 80R、80RA:記録層、 81、81A:第1磁性領域、 82、82A:第2磁性領域、 83、83A:第3磁性領域、 81f~83f:第1~第3磁性膜、 84、84A:中間層、 85:媒体移動方向、 85S:非磁性基板、 91n:第1中間領域、 92m:第2中間磁性領域、 92n:第2中間領域、 95m:第1連続磁性領域、 110、110A:磁気ヘッド、 150:磁気記録装置、 154:サスペンション、 155:アーム、 156:ボイスコイルモータ、 157:軸受部、 158:ヘッドジンバルアセンブリ、 159:ヘッドスライダ、 159A:空気流入側、 159B:空気流出側、 160:ヘッドスタックアセンブリ、 161:支持フレーム、 162:コイル、 180:記録用媒体ディスク、 180M:スピンドルモータ、 181:記録媒体、 190:信号処理部、 AR:矢印、 D1:第1方向、 d1、d2:第1、第2距離、 ic:電流、 je:電子流、 t1~t3:第1~第3厚さ