(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081180
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】被検査物の検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/896 20060101AFI20240611BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01N21/896
G01N21/84 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194605
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】502231904
【氏名又は名称】株式会社仲久
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】仲田 吉儀
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051AC01
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB02
2G051CB05
2G051CC07
2G051DA03
2G051DA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被検査物の欠陥の検査を自動化した被検査物の検査システムを提供する。
【解決手段】被検査物2を保持して検査域4に搬送するためのロボット装置32と、検査域4に向けて第1方向の第1コリメート光10を照射する第1光源8と、検査域4の上方に配設されたカメラ手段6と、被検査物4の良否を判定する良否判定手段を含むパソコン44とを備えた被検査物の検査システム。ロボット装置32は、検査域4において被検査物2を第1方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、カメラ手段6は、被検査物2の複数の傾斜角度位置に対応する屈折及び/又は反射する光を撮像する複数の第1撮像画像情報を取得し、パソコン44の良否判定手段は、カメラ手段6からの複数の第1撮像画像情報に基づいて被検査物2の良否を判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を保持して検査域に搬送するためのロボット装置と、前記検査域に向けて第1方向の第1コリメート光を照射する第1光源と、前記検査域の上方に配設されたカメラ手段と、前記被検査物の良否を判定する良否判定手段と、を備え、
前記ロボット装置は、前記検査域において前記被検査物を前記第1方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、前記カメラ手段は、前記被検査物の複数の傾斜角度位置に対応する屈折及び/又は反射する光を撮像する複数の第1撮像画像情報を取得し、前記良否判定手段は、前記カメラ手段からの前記複数の第1撮像画像情報に基づいて前記被検査物の良否を判定することを特徴とする被検査物の検査システム。
【請求項2】
前記ロボット装置は、前記第1コリメート光の前記第1方向を基準にして0~45度の角度範囲において前記被検査物を傾斜させ、前記カメラ手段は、0~45度の傾斜角度範囲内において3つ以上の第1撮像画像情報を取得し、前記良否判定手段は、前記3つ以上の第1撮像画像情報の少なくとも一つに不良画像情報があると不良と判定することを特徴とする請求項1に記載の被検査物の検査システム。
【請求項3】
前記検査域に向けて前記第1方向に対して直角である第2方向の第2コリメート光を照射する第2光源を更に含んでおり、前記第1光源を利用する第1検査期間においては、前記ロボット装置は、前記検査域において前記被検査物を前記第1方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、前記カメラ手段は、前記被検査物の複数の傾斜角度位置に対応する屈折及び/又は反射する光を撮像する前記複数の第1撮像画像情報を取得し、また前記第2光源を利用する第2検査期間においては、前記ロボット装置は、前記検査域において前記被検査物を前記第2方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、前記カメラ手段は、前記被検査物の複数の傾斜角度位置に対応する屈折及び/又は反射する光を撮像する複数の第2撮像画像情報を取得し、前記良否判定手段は、前記カメラ手段からの前記複数の第1撮像画像情報及び前記複数の第2撮像画像情報に基づいて前記被検査物の良否を判定することを特徴とする請求項1に記載の被検査物の検査システム。
【請求項4】
前記ロボット装置は、前記第2コリメート光の前記第2方向を基準にして0~45度の角度範囲において前記被検査物を傾斜させ、前記カメラ手段は、0~45度の傾斜角度範囲内において3つ以上の第2撮像画像情報を取得し、前記良否判定手段は、前記3つ以上の第1撮像画像情報及び前記3つ以上の第2撮像画像情報の少なくとも一つに不良画像情報があると不良と判定することを特徴とする請求項3に記載の被検査物の検査システム。
【請求項5】
前記カメラ手段のレンズの前面側には、赤色光のみを通すバンドパスフィルタが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の被検査物の検査システム。
【請求項6】
前記ロボット装置に関連して、検査すべき前記被検査物を収容する被検査物収容トレイ、良判定の前記被検査物を収容する良品収容トレイ及び不良判定の前記被検査物を収容する不良品収容トレイが配設され、前記ロボット装置は、前記被検査物収容トレイに収容された前記被検査物を取り出して前記検査域に搬送し、検査後の良品を前記検査域から前記良品収用トレイに搬出し、また検査後の不良品を前記検査域から前記不良品収容トレイに搬出することを特徴とする請求項1に記載の被検査物の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスなどの表面又は内部の欠陥(例えば、傷、異物)を検査する被検査物の検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガラスなどの被検査物の表面又は内部の欠陥(表面に付いた傷やその表面又は内部に存在する異物など)を検査するのにコリメート光を利用した検査方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この検査方法では、例えば、矩形状の被検査部材を検査する場合、この被検査部材の一辺に対向して照明光源を配置し、この照明光源からのコリメート光を被検査部材の一辺に向けて照射し、このように照射した検査光は、被検査部材の表面及び内部を通して進むようになる。
【0003】
このとき、被検査物の表面や内部に欠陥(例えば、傷や異物など)があると、この欠陥に当たって光のみが屈折及び/又は反射して進行方向が変わり、この屈折及び/又は反射した光を上方から目視することによって、被検査物に欠陥(例えば、傷、異物など)があることを容易に知ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】傷・異物検査用照明「ローアングル照明 LA-0」の商品紹介パンフレット(https://www.nacacue.co.jp/naca_admin/wp-content/uploads/2019/04/LA-0_catalogue_J.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の検査方法では、コリメート光を利用しているものの、その検査は目視でもって行っており、それ故に、作業者中心の作業となり、被検査物の欠陥の検査作業を自動的に行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、被検査物の欠陥の検査を自動化した被検査物の検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被検査物の検査システムは、被検査物を保持して検査域に搬送するためのロボット装置と、前記検査域に向けて第1方向の第1コリメート光を照射する第1光源と、前記検査域の上方に配設されたカメラ手段と、前記被検査物の良否を判定する良否判定手段と、を備え、
前記ロボット装置は、前記検査域において前記被検査物を前記第1方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、前記カメラ手段は、前記被検査物の複数の傾斜角度位置に対応する屈折及び/又は反射する光を撮像する複数の第1撮像画像情報を取得し、前記良否判定手段は、前記カメラ手段からの前記複数の第1撮像画像情報に基づいて前記被検査物の良否を判定することを特徴とする。
【0008】
このような検査システムにおいては、第1光源からの第1コリメート光の第1方向を基準にして0~45度の角度範囲において被検査物を傾斜させ、カメラ手段は、0~45度の傾斜角度範囲内において3つ以上の第1撮像画像情報を取得するようにするのが好ましく、このように異なる傾斜状態の複数の第1撮像画像情報を取得することによって、被検査物の良否をより正確に判定することができる。
【0009】
また、検査域に向けて第1方向に対して直角である第2方向の第2コリメート光を照射する第2光源を設け、第1検査期間においては、検査域において被検査物を第1方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、また第2光源を利用する第2検査期間においては、この検査域において被検査物を第2方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、第1方向の傾斜時の複数の第1撮像画像情報と第2方向の傾斜時の複数の第2撮像画像情報に基づいて被検査物の良否を判定することによって、検査物の良否を更に正確に判定することができる。
【0010】
また、この第2コリメート光の第2方向を基準にして0~45度の角度範囲において被検査物を傾斜させるようにし、0~45度の傾斜角度範囲内において3つ以上の第2撮像画像情報を取得するようにするのが好ましく、このような場合、良否判定手段は、3つ以上の第1撮像画像情報及び3つ以上の第2撮像画像情報の少なくとも一つに不良画像情報が含まれていると不良と判定するようになる。
【0011】
更に、カメラ手段のレンズの前面側に赤色光のみを通すバンドパスフィルタを配設するのが好ましく、このように構成することにより、被検査物からの屈折及び/又は反射する光を高精度に検知することができ、また光源以外からの光線を受けることなく、例えば室内の通常照明の下での検査が可能となる。
【0012】
更にまた、ロボット装置に関連して、被検査物収容トレイ、良品収容トレイ及び不良品収容トレイを配設するのが好ましく、このように構成することにより、このロボット装置により、被検査物収容トレイに収容された被検査物を取り出して検査域に搬送し、検査後の良品を良品収用トレイに搬出し、また検査後の不良品を不良品収容トレイに搬出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被検査物の検査システムによれば、第1光源は、検査域に向けて第1方向の第1コリメート光を照射し、ロボット装置は、検査域において被検査物を第1方向に対して斜めに傾斜させるように移動させ、カメラ手段は、被検査物の複数の傾斜角度位置に対応する屈折及び/又は反射する光の複数の第1撮像画像情報を取得するので、被検査物の複数の角度状態における屈折及び/又は反射した光の第1撮像画像情報を取得することができる。そして、良否判定手段は、カメラ手段からの複数の第1撮像画像情報に基づいて被検査物の良否を判定するので、人間の目視によらずに被検査物の良否を判定することができ、またその良否判定も正確に行うことができ、被検査物の欠陥検査の自動化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従う被検査物の検査システムの第1の実施形態の検査原理を説明するための図であって、
図1(a)は、この検査原理を説明する簡略側面図、
図1(b)は、この検査原理を説明する簡略平面図。
【
図2】被検査物を傾斜させて検知する場合を説明する簡略側面図。
【
図3】本発明に従う被検査物の検査システムの第2の実施形態の検査原理を説明するための簡略平面図。
【
図4】第2の実施形態の検査システムを具現化した一例を簡略的に示す斜視図。
【
図5】
図4の検査システムの制御系を簡略的に示すブロック図。
【
図6】
図5の制御系による部品の検査の流れの全体を示すフローチャート。
【
図7】
図5の制御系における部品の検査・判定の流れを示すフローチャート。
【
図8】
図8は、
図4の検査システムのカメラ手段によって取得した撮像画像情報であって、
図8(a)は、良品と判定された撮像画像情報の一例を示す図、
図8(b)は、不良品と判定された撮像画像情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う被検査物の検査システムの実施形態について説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、被検査物の検査システムの第1の実施形態の検査原理について説明する。
【0016】
図1及び
図2を参照して、第1の実施形態の検査システムにおける検査原理を説明すると、被検査物2を検査する検査域4の情報にカメラ手段6が配設され、またこの検査域4の横方向に第1光源8が配設される。被検査物2が例えば正方形状であるとすると、この正方形状の一辺(
図1(a)及び
図2において右辺)に対向して第1光源8が配設される。第1光源8は、図示していないが、検査光を照射する複数のLEDと、これらLEDからの光をコリメート光にするレンズ系を含み、第1光源8からの第1コリメート光10は、被検査物2の一側面12に対して直角に、換言すると被検査物2の表面に平行に第1方向(
図1(b)において左方向)に進行する。この第1光源8からの第1コリメート光10は、その幅が被検査物2の幅とほぼ同一又はこの幅よりも少し大きくする(
図1(b)参照)するのが好ましく、またその高さが被検査物2の厚さとほぼ同一又はこの厚さよりも少し厚くする(
図1(a)参照)のが好ましく、このような幅の第1コリメート光10とすることにより、この第1コリメート光10を用いて被検査物2の全体を検査することができる。
【0017】
この被検査物2(例えば、ガラス製品)に欠陥(傷、異物など)があると、この欠陥によってコリメート光10が屈折及び/又は反射され、屈折及び/又は反射された光がカメラ手段6に導かれる。例えば、
図1(a)に示すように、被検査物2の表面に例えば傷14aが存在していると、第1光源8からのコリメート光10の一部は、この傷14aによって屈折及び/又は反射され、この傷14aからの光16a(屈折光及び/又は反射光)は、矢印16aで示すようにカメラ手段6に導かれる。また、被検査物2の内部に例えば異物14bが存在していると、第1光源18からのコリメート光10の一部は、この異物14bによって屈折及び/又は反射され、この異物14bからの光16b(屈折光及び/又は反射光)は、矢印16bで示すようにカメラ手段6に導かれる。
【0018】
このような場合、被検査物2からの光16a,16b(屈折光及び/又は反射光)は、被検査物2の傷14aや異物14bの形状によって必ずしもカメラ手段6に向けて屈折及び/又は反射されるものではなく、この傷14aや異物14bからの光16a,16bがカメラ手段6に導かれるようにするには、
図2に示すように構成するのが好ましい。
【0019】
図2において、この場合、カメラ手段6は固定的に設置され、被検査物2が第1コリメート光10の進行方向である第1方向を基準にして矢印20で示す方向に一点鎖線2Aで示すように傾斜させながら検査するのが好ましい。更に説明すると、この被検査物2の傾きは、例えば0~45度の角度範囲で傾斜させ、そして、この傾斜角度範囲において、カメラ手段6により複数の第1撮像画像情報を取得する、例えば少なくとも3つ以上の第1撮像画像情報を取得して検査するのが好ましい。
【0020】
一例として、例えば0~40度の角度範囲において10度傾斜する毎に第1撮像画像情報を取得する、具体的には、0度、10度、20度、30度及び40度の傾斜角度位置において第1撮像画像情報を取得し、合わせて5つの第1撮像画像情報を取得して検査することができる。
【0021】
他の例として、例えば0~40度の角度範囲において20度傾斜する毎に第1撮像画像情報を取得する、具体的には、0度、20度及び40度の傾斜角度位置において第1撮像画像情報を取得し、合わせて3つの第1撮像画像情報を取得して検査するようにしてもよく、或いは、例えば0~45度の角度範囲において15度傾斜する毎に第1撮像画像情報を取得する、具体的には、0度、15度、30度及び45度の傾斜角度位置において第1撮像画像情報を取得し、合わせて4つの第1撮像画像情報を取得して検査するようにしてもよい。このように、被検査物2の傾斜角度範囲及び画像情報を取得する傾斜角度間隔については、検査目的などに合わせて適宜設定することができる。
【0022】
図3は、第2の実施形態の検査システムにおける検査原理を示している。この第2の実施形態においては、被検査物2が例えば正方形状であるとすると、この正方形状の一辺(
図1及び
図2において右辺)に対向して第1光源8が配設され、更に正方形状の隣接する他辺に対向して第2光源22が配設される。第1光源8は、上述したように、被検査物2の一辺(一側面12)に向けて第1コリメート光10を照射し、この被検査物2の一側面12に対して直角に第1方向(
図3において左方)に進行する。また、第2光源22は、上述した第1光源8と同様の構成のものでよく、被検査物2の一辺に隣接する他辺(他側面24)に向けて第2コリメート光26を照射し、この被検査物2の他側面24に対して直角に第2方向(
図3において上方向)に進行する。
【0023】
この第2の実施形態においても、カメラ手段6は固定的に設置され、被検査物2が第1コリメート光10の進行方向である第1方向を基準にして上述したように傾斜させながら検査し、またこの被検査物2が第2コリメート光26の進行方向である第2方向を基準にして、第1方向のときと同様に傾斜させながら検査するようにするのが好ましい。即ち、この被検査物2の第1方向を基準にする傾きは、例えば0~45度の角度範囲で傾斜させ、この傾斜角度範囲において、カメラ手段6により複数(好ましくは、少なくとも3つ以上)の第1撮像画像情報を取得し、またこの被検査物2の第2方向を基準にする傾きについても、例えば0~45度の角度範囲で傾斜させ、この傾斜角度範囲において、カメラ手段6により複数(好ましくは、少なくとも3つ以上)の第2撮像画像情報を第1方向と同様にして取得するのが好ましい。
【0024】
上述の第1又は第2の実施形態の検査システムは、ガラス部品の表面の傷や付着物、ガラス部品の内部に存在する異物、ガラスやプラスチック部品の表面コーティングの傷などの検査に広く適用することができ、光源からのコリメート光を利用して被検査物の欠陥を正確に検知することができる。
【0025】
上述の第2実施形態の検査システムの原理を実際の検査システムとして具現化すると、例えば
図4に示すような構成となる。尚、この第2の実施形態の具現化した検査システム例において、
図3の検査システムの原理と同一の部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0026】
図4において、この具現化システム例においては、被検査物2を把持して後述する如く搬送するのにロボット装置32が用いられる。このロボット装置32としては、例えば株式会社デンソーウェーブから市販されている垂直多関節ロボット(6軸タイプ:VP6242)を用いることができる。このロボット装置32は、検査台(図示せず)などに設置されるロボット本体34を備え、このロボット本体34の先端部に一対の把持部材36が設けられ、被検査物2は、一対の把持部材36に把持されて検査域4などに搬送され、また検査域4において一対の把持部材36に保持された状態で所要の通りに傾斜される。
【0027】
検査域2に向けて第1コリメート光10を照射するように第1光源8が配設され、またこの検査域2に向けて第2コリメート光(図示せず)を照射するように第2光源22が配設される。第1光源8は、被検査物2の一側面(
図3における一側面12に対応する側面)に対して直角となるように第1方向から第1コリメート光10を照射し、また第2光源22は、被検査物2の隣接する他側面(
図3における他側面24に対応する面)に対して直角となるように第2方向(即ち、第1方向に対して直角となる方向)から第2コリメート光(図示せず)を照射する。尚、第1光源8及び第2光源22は、例えばコリメート光を照射する光源ユニットから構成され、図示してしないが、取付台などに取り付けられて所定高さに設置される。
【0028】
カメラ手段6は、この検査域4の上方に配置され、支持脚(図示せず)などに取り付けられる。このカメラ手段6のレンズ部38の前面側には、赤色光のみを通すバンドパスフィルタ40が設けられ、このようにバンドパスフィルタ40を設けることにより、被検査物2から屈折及び/又は反射する光を高精度に検知することができ、また第1及び第2光源8,22以外からの光線を受けることがなく、例えば室内の通常照明の下でも被検査物2の検査が可能となる。尚、このカメラ手段6は、例えばCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどの撮像素子から構成することができる。
【0029】
この検査システム全体を制御するコントローラ42としてパソコン44が用いられ、このパソコン44(コントローラ42)の指令信号によってロボット装置32、カメラ手段6、第1光源8及び第2光源22などが所要の通りに制御される。また、システム電源として電源装置46が設けられ、この電源装置46からの電力がパソコン44、第1光源8及び第2光源22に供給され、カメラ手段6にはパソコン44から電力が供給される。尚、ロボット装置32へは、図示しない別電源から給電される。
【0030】
このパソコン44には表示装置(図示せず)が接続され、この表示装置に表示された操作画面(図示せず)が操作手段48(
図5参照)として機能する。この操作画面には、例えばメインボタン、スタートボタン及び停止ボタン(いずれも図示せず)などが表示され、メインボタンは、システム全体を作動させるためのメインスイッチ50(
図5参照)として機能し、スタートボタンは、被検査物2の検査を開始させるためのスタートスイッチ52(
図5参照)として機能し、停止ボタンは、被検査物2の検査を停止させるための停止スイッチ54(
図5参照)として機能する。
【0031】
この検査システムでは、被検査物2を自動的に検査処理するために、被検査物収容トレイ56、良品収容トレイ58及び不良品収容トレイ60が配設され、例えば検査域4の片側に被検査物収容トレイ56が配置され、この検査域4の他側に良品収容トレイ58及び不良品収容トレイ60が配置される。被検査物収容トレイ56には、検査すべき被検査物2が収容され、良品収容トレイ58には、後述する良否検査で良品と判定された被検査物2が収容され、不良品収用トレイ60には、後述する良否検査で不良品と判定された被検査物2が収容され、この被検査物2は、ロボット装置32に保持された状態で検査域4の片側の被検査物収容トレイ56から検査域4を通してその他側の良品収用トレイ58又は不良品収容トレイ60に搬送される。
【0032】
この実施形態の検査システムでは、コントローラ42(例えば、パソコン44)は、制御手段62、画像処理手段64、画像情報比較手段66、不良数カウント演算手段68、良否判定手段70、良品信号生成手段72及び不良品信号生成手段74を備えている。制御手段62は、ロボット装置32、カメラ手段6、第1光源8及び第2光源22を後述する如く作動制御し、画像処理手段64は、カメラ手段6からの撮像画像情報を所要の通りに演算処理し、画像情報比較手段66は、次のようにして判定基準値と比較して欠陥の有無を判定する。
【0033】
コントローラ42は、更にメモリ手段76を含んでおり、このメモリ手段76に欠陥の有無判定の基準となる判定基準値が登録されている。カメラ手段6からの撮像画像情報を画像処理手段64により所要の通り演算処理すると、
図8(a)及び(b)に示すような検査画像情報が得られる。これら検査画像情報において白色で示される点乃至線又はこれらの集まった集合部(この明細書において「白色部」とも称する。)は、被検査物2の欠陥から屈折及び/又は反射された光であり、これら白色部は、被検査物2の欠陥の大きさにほぼ対応したものとなる。
【0034】
この実施形態においては、画像情報比較手段66は、例えば画像処理手段64により処理された検査画像情報により認識された白色部を抽出し、抽出した白色部の面積を演算し、この白色部の面積和とメモリ手段76に登録された判定基準値とを比較し、この白色部の面積和が判定基準値よりも大きいと検査画像情報に欠陥が存在していると判定し、この白色部の面積和が判定基準値以下であると検査画像情報に欠陥が存在していないと判定する。
【0035】
この画像情報比較手段66による欠陥有無の判定として他の適宜の方法を適用する、或いは他の方法と併用することもでき、例えばこの白色部の面積の上位3つ(又は例えば上位5つ)の合計面積と判定基準値とを比較するようにしてもよく、この場合、画像情報比較手段66は、これらの白色部の合計面積が判定基準値よりも大きいと検査画像情報に欠陥が存在していると判定し、これらの白色部の合計面積が判定基準値以下であると検査画像情報に欠陥が存在していないと判定する。
【0036】
不良数カウント演算手段68は、後述するようにして検査画像情報の不良数をカウントし、画像情報比較手段66にて検査画像情報に欠陥が含まれていると不良数を一つカウントアップし、検査画像情報に欠陥が含まれていないと不良数がカウントアップされることはない。また、良否判定手段70は、不良数カウント演算手段68のカウント数に基づいて被検査物2の良否を判定し、このカウント数が「ゼロ(零)」である(換言すると、検査画像情報に欠陥が存在するものが含まれていない)と良品判定をし、このカウント数が「1」以上である(換言すると、検査画像情報に欠陥が存在するものが少なくとも1つ以上含まれている)と不良品判定をする。
【0037】
良品判定の場合、良品信号生成手段72は、この良品判定に基づいて良品信号を生成する一方、不良品判定の場合、不良品信号生成手段74は、この不良品信号に基づいて不良品信号を生成する。尚、これらの手段62~74による上述した機能は、例えば動作プログラムによって達成され、このような動作プログラムは、例えばメモリ手段76に登録される。
【0038】
メモリ手段76には、判定基準値に加えて、ロボット装置34の一対の把持部材36をホーム位置に位置付けるためのホーム位置動作情報、一対の把持部材36を検査トレイ(被検査物収容トレイ56)位置に移動させるための検査トレイ位置動作情報、一対の把持部材36を検査位置(検査域4)に移動させるための検査位置動作情報、一対の把持部材36を良品トレイ(良品収用トレイ58)位置に移動させるための良品トレイ位置動作情報、一対の把持部材36を不良品トレイ(不良品収用トレイ60)位置に移動させるための不良品トレイ位置動作情報が登録されている。
【0039】
このメモリ手段76には、更に、ロボット装置32の一対の把持部材34が被検査物2を把持するための部品把持動作情報、一対の把持部材34による被検査物2の把持を解除するための部材解除動作情報及び一対の把持部材34により被検査物2を保持した状態において検査域4にて所要の通りに傾斜させるための検査動作情報が登録され、更には不良数カウント演算手段68により演算されたカウント数、即ち不良数カウント情報が記憶される。
【0040】
図4及び
図5に示す検査システムによる被検査物2の検査は、例えば
図6に示すフローチャートに沿って行われる。主として
図5及び
図6を参照して、被検査物2の検査を行うには、メインスイッチ50(例えば、液晶画面のメインボタン)を操作してオンにし(ステップS1)、検査システム全体を作動させる。次いで、スタートスイッチ52(例えば、液晶画面のスタートボタン)を操作してオンにし、被検査物2の検査を開始させる。
【0041】
このようにして被検査物2の検査を開始すると、ロボット装置32が作動して一対の把持部材36が被検査物収容トレイ56まで移動され(ステップS3)、一対の把持部材36は、被検査物収容トレイ56に収容された被検査物2の一つを把持し(ステップS4)、把持した被検査物2を検査域4(検査位置)に搬送する(ステップS5)。そして、このように搬送された被検査物2に対して検査・判定が所要の通りに行われる(ステップS6)。この検査・判定については、
図7を参照して後に説明する。
【0042】
被検査物2の検査・判定によって良品と判定される(即ち、良否判定手段70が良品と判定する)と、ステップS7からステップS8に進み、良品信号生成手段72は良品信号を生成し、制御手段62は、この良品信号に基づいてロボット装置32を作動させ、一対の把持部材36に保持した被検査物2を良品収容トレイ58に搬送し(ステップS9)、その後一対の把持部材36を開いて被検査物2の把持状態を解除し(ステップS10)、このようにして被検査物2の良品が良品収容トレイ58に収容される。
【0043】
一方、被検査物2の検査・判定によって不良品と判定される(即ち、良否判定手段70が不良品と判定する)と、ステップS7からステップS11に進み、不良品信号生成手段74は不良品信号を生成し、制御手段62は、この不良品信号に基づいてロボット装置32を作動させ、一対の把持部材36に保持した被検査物2を不良品収容トレイ60に搬送し(ステップS12)、その後一対の把持部材36を開いて被検査物2の把持状態を解除し(ステップS13)、このようにして被検査物2の不良品が不良品収容トレイ60に収容される。
【0044】
このように被検査物2が良品収容トレイ58又は不良品収容トレイ60に収容された後は、ロボット装置32の一対の把持部材36がホーム位置に復帰され(ステップS14)、被検査物収容トレイ56に収容された被検査物2全てに対する検査が終了すると、ステップS15を経て被検査物2に対する検査が終了するが、被検査物収容トレイ56に被検査物2が残っている場合、ステップS15からステップS3に戻り、残りの被検査物2に対する検査が上述したようにして行われる。
【0045】
次に、
図7を参照して、被検査物2の検査・判定について説明する。被検査物2の検査・判定は、第1コリメート光10による第1方向からの検査が行われる(ステップS6-1)。第1コリメート光10による検査・判定を行う場合、第1光源8が点灯され(ステップS6-2)、第1光源8からの第1コリメート光10が検査域4に被検査物2に照射され、更にカメラ手段6のオンとなって撮像可能な状態となる(ステップS6-3)。
【0046】
この実施形態では、被検査物2の傾斜角度が例えば0度、10度、20度、30度及び40度の5つの傾斜角度位置において第1撮像画像情報を取得するように構成され、このような場合、次のようにして5つの第1撮像画像情報が取得される。具体的には、第1回目の検査として傾斜角度0度のときには、ステップS6-4からステップS6-5に進み、カメラ手段6は検査域4の被検査物2(傾斜角度0度)の一つ目の第1撮像画像情報を取得し、カメラ手段6によって傾斜角度10度、20度、30度及び40度の全ての第1撮像画像情報が取得されるまでステップS6-4からステップS6-6が繰り返し遂行される。
【0047】
このようにして5つの第1撮像画像情報を取得すると、ステップS6-6からステップS6-7に進み、画像処理手段64は、取得した5つ全ての第1撮像画像情報について一つずつ所定の画像処理を行い、画像情報比較手段66は、画像処理した第1撮像画像情報の一つずつに対してメモリ手段76の判定基準値との比較を行い(ステップS6-8)、そして、不良数カウント演算手段68は、これら5つの第1撮像画像情報のうち欠陥有りのものの数をカウントし、この不良数カウント値がメモリ手段76に登録され(ステップS6-9)、このようにして被検査物2に対する第1方向の検査が終了する(ステップS6-10)。
【0048】
このようにして第1方向の検査が終了すると、次に第2方向の検査が行われる(ステップS6-11)。この第2方向の検査は、第1方向の検査と同様に次のように行われる。即ち、第2方向の検査においては、第2光源22が点灯され(ステップS6-12)、第2光源22からの第2コリメート光(図示せず)が検査域4に被検査物2に照射され、カメラ手段6は、被検査物2の傾斜角度が例えば0度、10度、20度、30度及び40度の5つの傾斜角度位置において第2撮像画像情報を取得する(ステップS6-14)。このとき、第1方向の検査と同様に、第1回目の検査として傾斜角度0度のときには、ステップS6-13からステップS6-14に進み、カメラ手段6は検査域4の被検査物2(傾斜角度0度)の一つ目の第2撮像画像情報を取得し、カメラ手段6によって傾斜角度10度、20度、30度及び40度の全ての第2撮像画像情報が取得されるまでステップS6-13からステップS6-15が繰り返し遂行される。
【0049】
このようにして5つの第2撮像画像情報を取得すると、ステップS6-15からステップS6-16に進み、画像処理手段64は、取得した5つ全ての第2撮像画像情報について一つずつ所定の画像処理を行い、画像情報比較手段66は、画像処理した第2撮像画像情報の一つずつに対してメモリ手段76の判定基準値との比較を行い(ステップS6-17)、そして、不良数カウント演算手段68は、これら5つの第2撮像画像情報のうち欠陥有りのものの数をカウントし、この不良数カウント値がメモリ手段76に登録され(ステップS6-18)、このようにして被検査物2に対する第2方向の検査が終了する(ステップS6-19)。このように第1方向からの第1コリメート光による検査と第2方向からの第2コリメート光による検査とを行うので、被検査物の欠陥の検査をより正確に行うことができる。
【0050】
尚、この実施形態では、カメラ手段6により取得した5つの第1撮像画像情報(第2撮像画像情報)について一つずつ所定の画像処理を行い、画像情報比較手段66は、画像処理した第1撮像画像情報(第2撮像画像情報)の一つずつに対してメモリ手段76の判定基準値との比較を行っているが、このように処理することに代えて、カメラ手段6により第1撮像画像情報(第2撮像画像情報)を取得した段階で、画像処理手段64によりこの第1撮像画像情報(第2撮像画像情報)を画像処理した後に、画像情報比較手段66により判定基準値と比較するようにしてもよい。
【0051】
以上、本発明に従う被検査物の検査システムの実施形態について説明した、本発明はこれら実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0052】
2 被検査物
4 検査域
6 カメラ手段
8 第1光源
10 第1コリメート光
22 第2光源
26 第2コリメート光
32 ロボット装置
42 コントローラ
44 パソコン
56 被検査物収容トレイ
58 商品収容トレイ
60 不良品収容トレイ
64 画像処理手段
66 画像情報比較手段
70 良否判定手段
72 良品信号生成手段
74 不良品信号生成手段