(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081183
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】紡績糸を含んだ熱可塑性樹脂複合体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B32B27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194614
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】518381846
【氏名又は名称】東洋紡せんい株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒田 修広
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】増子 祐哉
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AJ04A
4F100AJ06A
4F100AJ07A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK15B
4F100AK21A
4F100AK23B
4F100AK25A
4F100AK33B
4F100AK41B
4F100AK46B
4F100AL01B
4F100AL05A
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10B
4F100DG01A
4F100DG06A
4F100GB07
4F100GB48
4F100JA13
4F100JB16B
4F100JK02
4F100JK04
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】従来の強化繊維を引き揃えと熱可塑樹脂の一体成形を同時に行なわなければならない制約をなくして、汎用性に優れた成形品を提供すること、また、天然資源を活用して、持続可能な環境に配慮した製品を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明は、天然繊維等からなる紡績糸を引き揃えられて一列に並んで接着した紡績糸シートを作製して、その紡績糸シートを熱可塑性シートで挟むように積層して、複数のシート同士を熱圧着してなる複合積層体である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績糸と熱可塑性樹脂とを含有する複合積層体において、前記複合積層体は、紡績糸が引き揃えられて一列に並んで接着した紡績糸シート(A)と、熱可塑性シート(B)とを含む積層物が熱圧着により一体化されてなり、 前記複合積層体は、前記紡績糸シート(A)が、複数の前記熱可塑シート(B)の間において、前記紡績糸シート(A)と直接的に接するように積層配置された部分を有していることを特徴とする複合積層体。
【請求項2】
前記紡績糸が平均繊維長10~100mmの繊維からなり、複数の前記紡績糸が一方向に引き揃えられた状態で隣接する紡績糸同士が樹脂組成物により接着されてなる前記紡績糸シート(A)であることを特徴とする請求項1に記載の複合積層体。
【請求項3】
前記紡績糸が、木綿、麻、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮、木材パルプ、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセルのいずれを主たる繊維とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合積層体。
【請求項4】
糸同士を接着させる前記樹脂組成物がポリビニルアルコール、アクリル系糊剤、デンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチのいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の複合積層体。
【請求項5】
熱可塑シート(B)が、熱可塑性樹脂からなるフィルム、不織布、または織編物の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の複合積層体。
【請求項6】
熱可塑シート(B)を形成する熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびこれらの共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、共重合ポリアセタール、ポリ乳酸又はポリコハク酸ブチル、フェノキシ樹脂の少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の複合積層体。
【請求項7】
前記紡績糸シート(A)と、前記熱可塑性シート(B)の構成比率は20:80~80:20の範囲であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の複合積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の複合積層体からなる建築資材、インテリア材料、及び家電用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維で強化された繊維強化熱可塑性樹脂複合体に関する。
【0002】
FRTPの代表的な形態としては、連続した強化繊維を一方向に配列させた強化繊維基材、または連続した強化繊維を織物加工した強化繊維基材に、熱可塑性樹脂を含浸せしめたシートを積層して、プレス等で加熱及び加圧することにより目的の形状に賦形した成形品が挙げられる。これにより得られた成形品は、連続した強化繊維を用いているため優れた機械的物性に設計することが可能であり、機械的物性のばらつきも小さい。しかし、連続した強化繊維であるために3次元形状等の複雑な形状を形成することは難しく、主として平面形状に近い部材に限られる。
【0003】
そこで、各種のFRTPが提案されている。例えば、特許文献1では強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を含む不織布からなる成形体の中間体であるプリプレグシートが提案されている。また、特許文献2では、強化繊維を一方向に引き揃えた一方向強化繊維基材が2層重ねられ、該2層の一方向強 化繊維基材が、層間に介在された熱可塑性樹脂からなる結着材で互いに固着されて単位強 化繊維積層体が形成され、該単位強化繊維積層体が複数層積層された強化繊維積層体が提案されている。更に、特許文献3では、麻繊維からなる紡績糸を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂と一体成形体に成形された繊維強化熱可塑性樹脂成形体が提案されている。
【背景技術】
【0004】
繊維強化樹脂は軽くて強いことから、 自動車や飛行機、車両などの内装、電気製品、建築資材やインテリア製品などプラスチック成形品として様々な分野で用いられている。近年では、地球環境の改善や、温暖化防止のため石油資源の有効利用、持続可能な原料の使用等の意識向上からプラスチック分野でも天然繊維の使用が注目されている。また、これまでの熱硬化性樹脂からなる繊維強化樹脂は、成形後に熱処理(硬化反応)が必要であることから、高い生産性と低いコストを達成できないことから、熱硬化性樹脂に代わり成形が容易な熱可塑性樹脂を用いた繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-095716号公報
【特許文献2】特開2008-132650号公報
【特許文献3】特開2007-138361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では強化繊維を熱可塑性繊維とともに不織布に混ぜて使用しているため、強化繊維が成形体の中で不連続であり、強化繊維の強度を十分に利用できていない。また、強化繊維に炭素繊維を用いているのでリサイクル性が悪く、また持続可能な天然資源の活用はできていなかった。特許文献2では、 強化繊維基材として強化繊維を一方向に引き揃える操作とそれを2層に積層する操作と熱可塑性樹脂で該層間に結着する操作を同時に行う必要がある。別々に行うと引き揃えられた強化繊維がバラバラになってしまうためである。このためこの後の成形方法に制約があり、この方法で作られる成形品の汎用性も限定されたものであった。また、特許文献3では、強化繊維に麻を使っており、持続可能な天然資源を活用することはできるが、これについても紡績糸の引き揃えと熱可塑性フィルムとの積層圧着を同時に行うことが必須のため成形方法に制約があり、できる成形品も限定されたものであった。
【0007】
本発明では、従来の強化繊維を引き揃えと熱可塑樹脂の一体成形を同時に行なわなければならない制約をなくして、汎用性に優れた成形品を提供すること、また、天然資源を活用して、持続可能な環境に配慮した製品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天然繊維等からなる紡績糸を引き揃えられて一列に並んで接着した紡績糸シートを作製して、その紡績糸シートを熱可塑性シートで挟むように積層して、複数のシート同士を熱圧着してなる複合積層体である。
【0009】
(1)紡績糸と熱可塑性樹脂とを含有する複合積層体において、前記複合積層体は、紡績糸が引き揃えられて一列に並んで接着した紡績糸シート(A)と、熱可塑性シート(B)とを含む積層物が熱圧着により一体化されてなり、 前記複合積層体は、前記紡績糸シート(A)が、複数の前記熱可塑シート(B)の間において、前記紡績糸シート(A)と直接的に接するように積層配置された部分を有していることを特徴とする複合積層体である。
【0010】
(2)前記紡績糸が平均繊維長10~100mmの繊維からなり、複数の前記紡績糸が一方向に引き揃えられた状態で隣接する紡績糸同士が樹脂組成物により接着されてなる前記紡績糸シート(A)であることを特徴とする複合積層体である。
【0011】
(3)前記紡績糸が、木綿、麻、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮、木材パルプ、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセルのいずれを主たる繊維とすることを特徴とする複合積層体である。
【0012】
(4)糸同士を接着させる前記樹脂組成物がポリビニルアルコール、アクリル系糊剤、デンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチのいずれかを主成分とすることを特徴とする複合積層体である。
【0013】
(5)熱可塑シート(B)が、熱可塑性樹脂からなるフィルム、不織布、または織編物の少なくともいずれかであることを特徴とする複合積層体である。
【0014】
(6)熱可塑シート(B)を形成する熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、およびこれらの共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、共重合ポリアセタール、ポリ乳酸又はポリコハク酸ブチル、フェノキシ樹脂の少なくとも1種類からなることを特徴とする複合積層体である。
【0015】
(7)前記紡績糸シート(A)と、前記熱可塑性シート(B)の構成比率は20:80~80:20の範囲であることを特徴とする複合積層体である。
【0016】
(8)前記複合積層体からなる建築資材、インテリア材料、及び家電用材料である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複合積層体であれば、成形品の製造において面積、形状、厚みが容易にコントロールでき、また、製品の使用後においては、成形品の素材の分離がしやすくリサイクル性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1における複合積層体において紡績糸シート(A)と熱可塑シート(B)の積層順を示した図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1で得た複合積層体の横断面を示したものである。
【
図3】
図3は、本発明の実施例2における複合積層体において紡績糸シート(A)と熱可塑シート(B)の積層順を示した図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例3における複合積層体において紡績糸シート(A)と熱可塑シート(B)の積層順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0020】
紡績糸を引き揃えられて一列に並んで接着した紡績糸シート(A)を作製して、その紡績糸シートを熱可塑性シートで挟むように積層して熱圧着することで形成するFRTPである。
【0021】
紡績糸シートAは、紡績糸が引き揃えられて一列に並んで接着してなることが特徴である。紡績糸に毛羽があることで、隣接する糸同士の間に適度の空間を保ちながら容易に接着することができる利点がある。また本発明によれば、紡績糸を接着させるための糊材は必ずしも熱可塑性樹脂を用いる必要がない。隣接する糸同士の間に適度の空間があるため、熱可塑性シートと圧着したときに熱可塑性樹脂が紡績糸間に浸透して接着性を高めることができるためである。もし、紡績糸の代わりに毛羽が無いフィラメントを用いた場合は、糸同士を接着させるには、糸同士を密着させる必要があり、糸を非常に高密度に引き揃えないとシートにできない。また、接着剤の付着量が多くなり、非常に硬いシートとなり取り扱い性が低下する。更には、接着剤の付着量が多いため熱可塑性のものでないと、熱可塑性シートと積層したときの接着性が低下する等の問題が起こりやすい。
【0022】
本発明の紡績糸シートAは、糸条を一方向に一列に引き揃えた状態で樹脂組成物により隣接する糸条同士が接着されていることを特徴とする。具体的には、本発明のシート状物は、厚み方向には糸条が積層されず、一方向に延びた糸条が横方向に一列に並列配置して互いに樹脂接着することにより一つの層を形成してシート状物になったものであり、一方向に延びた糸条が束状又は厚み方向に積層されて接着したものは含まれない。糸条を一方向に一列に引き揃えた状態は、例えばクリールから引き出された複数本の糸条が引き揃えられてビームに巻き取られることで、糸条が長手方向に引き揃えられて横方向に並列して配列されることにより得られる。本発明では、これらの引き揃えられた糸条が2000~20000本横方向に並列された状態で、樹脂含浸を行い、隣接する糸条同士を接着させることでシートを形成していることが好ましい。
【0023】
前記紡績糸を構成する繊維としては、天然繊維やセルロース繊維が好ましく、具体的には天然繊維においては、木綿やカポック等の種子毛繊維、麻、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮の靭皮繊維、竹繊維や木材パルプ、羊毛、カシミヤ等の獣毛繊維が挙げられる。セルロース繊維としては、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等の再生繊維等が挙げられる。より好ましくは、木綿、麻、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮の靭皮、木材パルプ、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセルが好ましい。使用する糸条の繊維長(天然繊維の場合は有効繊維長)が10~100mmであることが必要である。好ましくは20~60mmであり、より好ましくは25mm~50mmである。繊維長が上記範囲未満になると、シートが綺麗に経糸に沿って縦裂きできずに斜めに裂けやすくなる。また、上記範囲を超えると、紡績が難しくなったり、糸条同士の接着性が低下し易くなる。
【0024】
また、糸条表面に存在する長さ1mm以上の毛羽数は、糸長10mあたり、300~2000個が好ましく、より好ましくは500~1600個である。毛羽数をこの範囲にすることにより、糸-糸間にある樹脂と毛羽が絡み合って、実用レベルの接着強度を得ることができる。糸長10m当たりの長さ1mm以上の毛羽数が上記範囲未満の場合は、接着強度が低くなって、不必要なときに裂けやすくなり、上記範囲を超えると、糸自身の強度が低下し易くなるおそれがある。糸条表面に存在する長さ3mm以上の毛羽数は、糸長10mあたり、10~150個であることが好ましい。
【0025】
上記繊維を用いた糸条は、毛羽がある紡績糸が好ましい。糸条がフィラメント糸であると、出来上がったシート状物に実用上十分な強度を持たせることが難しいおそれがある。しかし、紡績糸であれば、フィラメントと混紡した長短複合糸であっても構わない。これらの糸条を2種類以上混紡したものや混撚したものであってもよい。また、これらの糸は、単糸、双糸、三子糸あるいは4本以上の糸を撚り合わせたものでもよい。糸条の総繊度としては、特に制限されないが、英式番手換算で通常5~240番手、好ましくは7~200番手、より好ましくは7~100番手、更に好ましくは9~80番手である。また、紡績糸の撚係数は、2.8~5.5であることが好ましい。撚係数が2.8未満になると糸の強力が低下しやすくなり、5.5を超えると糸-糸間の接着強度が低下しやすくなる
【0026】
糸条に樹脂を含浸させる手段としては、糸条に樹脂液を含浸させる工程、脱水工程、乾燥工程を経ることにより行うことができる。以下、この一例における各工程を説明する。樹脂の含浸方法としては、糸条を一方向に一列に引き揃えてシート状にした状態で樹脂液に含浸する方法が好ましい。そうすることでテンションむらがなく、糸に対して均一で、また糸条間に十分に樹脂を含ませることができる。これにより均一で強固なシートを作ることができる。糸条を樹脂含浸させるためには、糸条と樹脂液とを接触させるために従来使用されている機械を利用することができる。かかる機械としては、例えばスラッシャー糊付機、整経糊付機、ローラ糊付機、スプレー糊付機等の糊付機を用いることができるが、表面が均一なシートにするためにスラッシャー糊付機や整経糊付機で行うことが好ましい。特に好ましくはスラッシャー糊付機である。樹脂液を含浸された糸は、次に脱水工程に供される。脱水の方法としては、特に限定されず、エアー脱水、遠心脱水、マングル脱水等を用いることができる。
【0027】
上記脱水後の糸は、その後乾燥工程に供される。乾燥方法としては、シリンダー乾燥、熱風乾燥、高周波誘電加熱、自然乾燥等の方式を採用することができるが、シリンダー乾燥が好ましい。シリンダー乾燥を行うと、シートの表面が平滑で厚みの均一なシートを作ることができる。上記乾燥温度および乾燥時間は、乾燥方法や糸の種類によって異なるが、例えば、熱風乾燥であれば80~140℃で2~120分間であり、シリンダー乾燥であれば80~120℃で0.5~3分間である。このようにして本発明のシート状物を得ることができる。
【0028】
通常の織物でサイジングするのは、製織時に織機の運動によって受ける大きな張力や摩擦などの外力に対して経糸が耐えられるようにするためである。また通常、製織した後には付着しているサイジング剤を簡単に除去できることが必要であり、そのため、サイジング剤には精練除去性も要求される。これに対して、本発明のシート状物は、製織を行わないため、糸条同士を接着するための樹脂組成物には、必ずしも毛羽伏せや抱合力、平滑性の向上効果が要求されない。そのため、本発明では糊剤と言わず樹脂組成物と呼んでいる。しかし、十分な接着効果を有していれば、通常の経糸糊剤を本発明における樹脂組成物として用いても一向に構わない。
【0029】
本発明で使用する樹脂組成物としては、ポリビニルアルコール、アクリル酸エステル、デンプン、加工デンプン、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロース化合物、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、エポキシ樹脂系等を用いることができる。好ましくは、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、デンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチを用いることができる。上記デンプンとしては、例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の生澱粉、α化澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、グラフト化澱粉、カルボキシメチル化澱粉等の加工澱粉が挙げられる。糸条の主たる繊維がセルロース繊維の場合には、ポリビニルアルコール、デンプン、カルボキシメチルセルロースのうち少なくとも一種を主成分とするものを用いることが好ましい。また、糸条の主たる繊維がポリエステル繊維である場合には、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、EVA、アクリル酸エステル系のうち少なくとも一つを主成分にすることが好ましい。尚、本発明における主成分とは、一方向に引き揃えられた糸条に付着させた後、溶媒分を除去したシート状物に付着した樹脂組成物のうち50重量%以上を占めるものを言う。
【0030】
本発明で使用する樹脂組成物として特に好ましいものは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールを配合することにより、隣接する糸条間の接着性を高めることができる。また、糸条の強度および抱合力を向上させることができる。上記ポリビニルアルコールとしては、従来の織物用糊剤に用いられている公知のものを使用することができる。
【0031】
上記ポリビニルアルコールの平均ケン化度は、通常60~99モル%、好ましくは65~99モル%、特に好ましくは70~90モル%である。平均ケン化度が低すぎると、樹脂液の粘度が低くなり、繊維への付着率が低下する傾向があり、平均ケン化度が高すぎると、糊液の粘度が高くなり、繊維への付着性が不安定となることから作業性が悪くなる傾向がある。なお、上記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定される値である。また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、通常100~6000、好ましくは200~5000、特に好ましくは300~4500である。平均重合度が低すぎると、繊維への接着力が不充分となる傾向があり、平均重合度が高すぎると、糊液とした時の粘度が高くなり作業性が悪くなる傾向がある。なお、上記の平均重合度は、JIS K 6726 3.7に準拠して測定される値である。上記ポリビニルアルコールは、未変性ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールのいずれを用いてもよく、変性種、変性量、平均ケン化度、平均重合度が互いに異なる2種以上のものを併用してもよい。
【0032】
上記ポリビニルアルコールとしては、固体のポリビニルアルコールを水で溶解させた液体状のポリビニルアルコールを用いると、糊液に直接配合することができる点で好ましいが、固形状のものも用いることもできる。不揮発分におけるポリビニルアルコールの配合割合は、不揮発分として、通常0.1~99.999重量%、好ましくは10~99.99重量%、より好ましくは30~99.9重量%である。
【0033】
また、樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般に織物用糊剤に配合されている配合剤、例えば、平滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、防黴剤等を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。樹脂組成物は、溶媒に溶解させて樹脂液として用いられることが好ましい。溶媒としては、通常は水であるが、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~4の低級アルコールを用いてもよい。また、これらは、単独でもしくは2種類以上併せて用いることができる。
【0034】
上記樹脂液の調製方法としては、特に制限はなく、公知一般の方法を採用することができる。例えば、溶媒と樹脂組成物とを配合し、ミキサー等で撹拌しながら、必要に応じて加熱することにより樹脂液を得ることができる。また、樹脂組成物は、前記の各成分を予め混合し、一剤とした状態で溶媒と配合してもよく、また、それぞれの成分を個別に溶媒に配合して溶解させてもよい。
【0035】
樹脂組成物として液体状のものを用いる場合は、上記調製の際の樹脂液温度としては、通常60℃以下、好ましくは15~50℃、より好ましくは20~45℃とすればよい。固体状の糊剤を用いる場合は、繊維用糊剤の成分を溶媒に分散させた後、80~95℃で30~60分間、加熱撹拌するのが好ましい。
【0036】
本発明のシート状物における樹脂の付着率は、糸の種類や太さによって異なるため特に限定されないが、通常0.1~80重量%、好ましくは1.0~50重量%、より好ましくは5.0~30重量%である。付着率が少なすぎると、糸条間の接着力が不足する傾向があり、付着率が多すぎると、シート状物が硬くなり過ぎたり、重くなりすぎたりしやすい。尚、「付着率」とは、樹脂付け前の糸条の重量に対する、糸条に付着した樹脂組成物の重量の割合を言う。
【0037】
熱可塑シート(B)は、熱可塑性樹脂からなるフィルム、不織布、または織編物の少なくともいずれかを用いることができる。熱可塑性シート(B)の製造方法は特に限定されないが、フィルムの場合であれば、例えば、Tダイキャスト法、カレンダー法、プレス法などの公知の溶融成膜方法を採用することができる。不織布の場合は、スパンボンドやメルトブローン、ニードルパンチ、スパンレース、サーマルボンド等の手法が例示されるが、目的に応じて適宜選択すればよい。更に、織編物の場合は、 紡績糸の紡績方法としては、例えば、リング紡績、オープンエンド紡績、結束紡績(例えば、ムラタボルテックススピナー)等の各種方法が挙げられる。中でも、リング紡績は、紡績糸の表面毛羽を後述する適正な数に調整しやすく、風合いも良いことから好ましい。より好ましくはコーマ糸である。また、紡績糸を前述した各種方法で精紡する前に、一般的な方法により、混打綿、カード、コーマ、練条、粗紡等の各種処理を施すことができる。編物の場合は、丸編のシングルニットでもダブルニットでも、経編みのトリコット、ラッシェルのいずれでも構わない。織物であれば、平織機、ドビー機、ジャガード機のいずれを用いてもよい。具体的には、丸編機(ヨコ編機)としては天竺編(平編)、ベア天竺編、ウエルト天竺編、フライス編(ゴム編)、パール編、片袋編、スムース編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等の編組織を有するものが挙げられる。経編物としては、シングルデンビー編、開目デンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、トリコット編、ハーフトリコット編、ラッセル編、ジャガード編等の編組織を有するものが挙げられる。 織物としては、例えば、平織、綾織(ツイル)、朱子織、多重織、ドビー織、ジャガード織等の織組織を有するものが挙げられる。
【0038】
熱可塑性シート(B)の目付は、10~300g/m2であることが好ましく、より好ましくは30~250g/m2であり、更に好ましくは50~200g/m2である。目付を上記範囲とすることにより、樹脂成形品に好適な複合積層体にすることができる。熱可塑性シート(B)の厚みは、0.05~1.5mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがより好ましい。厚みを上記範囲とすることにより、目的とする成形品に合致した複合積層体にすることができる。
【0039】
熱可塑性シート(B)を形成する熱可塑性樹脂としては、フィルム化できる熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、環状ポリオレフィン(COP)樹脂、環状オレフィン・コポリマー(COC)樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン(PS)樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、アクリロニトリル-ブチレン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)、スチレン/ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン/イソプレン共重合体(SIR)、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体(SIBR)、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン共重合体(SIS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体(SEPS)等のポリスチレン系樹脂;ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリシクロヘキセレンジメチレンテレフタレート(PCT)樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール(POM)樹脂;ポリカーボネート(PC)樹脂;ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド6C樹脂、ポリアミド9C樹脂、ポリアミド6樹脂とポリアミド66樹脂の共重合体(ポリアミド6/66樹脂)、ポリアミド6樹脂とポリアミド12樹脂の共重合体(ポリアミド6/12樹脂)等の脂肪族ポリアミド(PA)樹脂;ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミドMXD10樹脂、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂、ポリアミド10T樹脂等の芳香環を有する構造単位と芳香環を有さない構造単位からなる半芳香族ポリアミド(PA)樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂;ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂;液晶ポリエステル(LCP)樹脂;ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等のポリエーテル芳香族ケトン樹脂;ポリエーテルイミド(PEI)樹脂;ポリアミドイミド(PAI)樹脂;熱可塑性ポリイミド(TPI)樹脂;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂等を例示することができる。上記熱可塑性樹脂から選ばれる相溶性のある2種以上の熱可塑性樹脂同士の混合物、すなわちポリマーアロイ等も使用できる。これらのなかでも熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリアミド(PA)樹脂、半芳香族ポリアミド(PA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂および熱可塑性ポリイミド(TPI)樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
複数の前記熱可塑性シート(B)の間において、前記紡績糸シート(A)と直接的に接するように積層配置する部分が含まれている。熱可塑性重視複合体の最小例としては、前記熱可塑性シート(B)2枚の間に1層のみ紡績糸シート(A)が設けられたものである。具体的には、熱可塑性重視複合体の中に複数の熱可塑性シート(B)の間において、紡績糸シート(A)が、熱可塑性シート(B)と直接的に接するように積層配置された部分を有していればよい。それによって、上述したように複合積層体の機械的物性を向上させることができる。もっとも、本発明においては、第1の実施形態のように、熱可塑性シート(B)も、複数の紡績糸シート(A)の間において、熱可塑性シート(B)と直接的に接するように積層配置された部分を有することが好ましい。
【0041】
本発明の複合積層体を製造するときに複数の前記熱可塑性シート(B)と前記紡績糸シート(A)を積層してから熱圧着により一体化される。この一体化は、積層されたシートを熱圧着して単に接合するだけでも構わないが、機械的物性をさらに一層向上させるために、熱可塑性シートが溶融して、紡績糸シートの紡績糸間に熱可塑性樹脂が浸透して固着されたものが好ましい。より好ましくは、真空環境で熱圧着させることで、紡績糸間の空隙をなくしてボイドをできるだけ軽減するのがよい。具体的には、熱可塑性シートが織編物や不織布のような熱可塑性繊維でできている場合は、熱可塑性繊維が溶融して繊維形状が消失するだけの強い熱圧着をさせることが好ましい。熱圧着の条件としては、真空環境で金型温度を熱可塑性樹脂(繊維)の融点より20℃以上100℃以下の範囲で高い温度に設定しする。また、プレス圧力は1MPa~10Mpaで処理することが好ましい。
【0042】
本発明において、積層物全体の積層数は、特に限定されないが、好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上、好ましくは15層以下、より好ましくは9層以下である。積層物の積層数が上記範囲内にある場合、複合積層体の機械的物性をより一層向上させることができる。
【0043】
なお、積層物に含まれる前記紡績糸シート(A)の数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、好ましくは7以下、より好ましくは4以下である。積層物に含まれる熱可塑性シート(B)の数が上記範囲内にある場合、複合積層体の機械的物性をより一層向上させることができる。紡績糸シート(A)の複数枚を積層物内に積層する場合は、紡績糸の方向を全ての紡績糸シートで同じにしてもよいし、所望の引張強度や曲げ強度になるように、45°、90°、135°等、シート面で回転させたものを組み合わせて積層させてもよい。
【0044】
また、積層物に含まれる前記熱可塑性シート(B)の数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。積層物に含まれるシート(B)の数が上記範囲内にある場合、複合積層体の機械的物性をより一層向上させることができる。
【0045】
複合積層体の引張強度は好ましくは10Mpa以上5Gpa以下で、より好ましくは75Mpa以上1Gpa以下である。積層物全体の引張強度が上記範囲内にある場合、車両や建材などの強度が求められる用途に展開ができるが、引張強度を高めるには積層枚数を増やす必要があり、コストや生産工程数が上がる。
【0046】
また、複合積層体の曲げ強度は好ましくは10Mpa以上5Gpa以下で、より好ましくは50Mpa以上1Gpa以下である。積層物全体の曲げ強度が上記範囲内にある場合、車両や建材などの強度が求められる用途に展開ができるが、曲げ強度を高めるには積層枚数を増やす必要があり、コストや生産工程数が上がる。また、曲性を必要とする用途での加工性も難しくなりやすい。
【0047】
本発明において、積層物全体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下である。積層物全体の厚みが上記範囲内にある場合、複合積層体の機械的物性をより一層向上させることができる。
【0048】
複合積層体の目付は好ましくは250g/m2以上5,000g/m2以下で、より好ましくは500g/m2以上3,000g/m2以下である。積層物全体の目付が上記範囲内にある場合、複合積層体の機械的物性をより一層向上させることができる。目付が低過ぎる場合は引張強度や曲げ強度が低下する。目付が厚すぎる場合は強度も向上し加工性が困難となり、コストや生産工程数が上がる。
【0049】
本発明の複合積層体は、軽量で柔軟性があるため、建築資材、インテリア材料、家電材料等に好適に用いることができる。
【実施例0050】
次に、実施例を以下に挙げて本発明の効果を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各性能評価は以下の方法により行った。
【0051】
<英式番手>
JIS L 1095 9.4.2に準じて、見掛け綿番手を測定し、これを英式番手とした。
【0052】
<紡績糸の撚係数>
JIS L1095 9.15.1 A法に準じて撚り数を求め、下記式に基づき撚係数Kを算出した。
撚係数K=[T]/[NE]1/2
(上記式中、[T]は撚り数(回/2.54cm)、[NE]は英式番手である。)
【0053】
<FRTP試験片の作製>
JIS K7151に準じて、各項目に則した試験片を採取した。
【0054】
<引張強度>
JIS K7164準拠してn=5で測定し、算術平均値を引張強度とした。
試験条件として、試験片厚さ:1.6mm、試験速度:1mm/min、チャック間距離:150mmにて試験を行った。
【0055】
<曲げ強度>
JIS K7017準拠してn=5で測定し、算術平均値を引張強度とした。
試験条件として、試験片厚さ:1.6mm、試験速度:5mm/min、支点間距離:68mmにて試験を行った。
【0056】
<樹脂付着量>
出来上がったシート状物を経10.0cm×緯10.0cmの正方形に採取して、恒温BOX内で120℃×3時間、乾燥させた後秤量瓶に入れて、シリカゲル入りデシケータで室温まで冷却したのち、秤量瓶ごと秤量して、シート状物の絶乾重量Aを測定した。その後、樹脂成分の除去処理を行って洗浄したのち、更に先と同じ絶乾処理を行い、樹脂成分が除かれた糸条の絶乾重量Bを測定して、下記式により樹脂付着量を算出した。
樹脂付着量(重量%)=(A-B)/A×100
尚、本実施例の場合、下記の精練処理にて除去処理を行ったが、樹脂の種類により酵素処理や溶剤処理等、適切な方法で樹脂を除けばよい。精練処理:苛性ソーダ2g/L、非イオン活性剤1g/L(ノニオンHC)の水溶液に浴比1:100で浸漬しながら、70℃にて1時間撹拌処理を行い、その後イオン交換水で洗浄する。尚、精練により分解された糸条及び繊維は全てフィルターで回収して全繊維重量を測定する。
【0057】
(実施例1)
紡績糸として、Riaz Textile Mills社製(パキスタン)英式番手20番手、撚り係数K=4.05を用いた。前記紡績糸を津田駒工業製整経機TW1000Sに仕掛け、糸本数560本×整経長380ydを整経用ビームに巻き上げた。同様に合計14本作成した。次いで、整経されたビームを14本重ねて、津田駒工業製糊付機HS-20に仕掛け、温度50℃の樹脂液に浸漬後、糸条を分割せずにシリンダー乾燥部130℃にて乾燥を行い、隣接する7840本の糸同士が接着した状態で、巻取部でシート状のまま巻き取ることで、紡績糸が引き揃えられて一列に並んで接着した紡績糸シート(A-1)を作製した。(以下、一方向紡績糸シートという)出来上がったシートは巾1700mm、密度117本/inch、目付171g/m2となった。完成したシート状物の樹脂付着量は22.79重量%であった。
【0058】
積層する熱可塑性シート(B-1)として前田工繊製ポリプロピレンスパンボンド不織布「スプリップ ナチュラルSP-1150E」(目付150g/m2)を用いた。一方向紡績糸シートと熱可塑性シートを600mm×600mm四方にカットし、一方向紡績糸シートを6枚、熱可塑性シートを6枚準備した。最外層を熱可塑性シートとし一方向紡績糸シートの積層パターン0°/90°として
図1のように積層した。この時の一方向紡績糸シートは53質量%と熱可塑シートは47質量%である。(混率の表示について要確認)次いで、北川精機製真空プレス装置を用いて、成形金型600mm×600mmに前記積層体をセットし真空環境で金型温度200℃、プレス圧力2.0MPaで10分成形し、その後、プレス圧力はそのままで金型温度を冷却させた。金型温度45℃で真空を解除し、プレスを解き、積層体を取り出した。熱可塑性シートのポリプロピレンが溶融し、一方向紡績糸シート間に含侵し、板状のFRTPができた。出来上がったFRTPは600mm×600mm、厚み1.6mm、目付1895g/m2、引張強度 95MPa、曲げ強度 64MPaとなった。
【0059】
(実施例2)
融点167℃、MFR(メルトフローレート)44g/10minであるポリ乳酸系重合体をスパンボンド紡糸口金から溶融紡糸し、冷却装置にて紡糸糸条を冷却した後、引き続きエアサッカーにて延伸細化し、繊径15μm、目付50g/m2のウェブを捕集ネット上に作製した。続いて一対の金属フラットロールを用い、下ロール温度60℃、上ロール温度130℃で熱圧着処理を行って生分解性不織布の熱可塑性シート(B-2)を得た。実施例1の一方向紡績糸シート(A-1)と前記生分解性熱可塑性シート(B-2)を各々600mm×600mm四方にカットし、一方向紡績糸シートを7枚、熱可塑性シートを20枚準備した。最外層を熱可塑性シート1枚とし一方向紡績糸シートの積層パターン45°疑似等方で
図2のように積層した。最外層を除く積層部の熱可塑性シートは3枚ずつ挟んだ。この時の一方向紡績糸シートは54質量%、熱可塑シートは46質量%である。次いでプレス成型は実施例1同様の工程で実施した。熱可塑性シートのポリ乳酸が溶融し、一方方向紡績糸シート間に含侵し、板状のFRTPができた。出来上がったFRTPは600mm×600mm、厚み1.6mm、目付2190g/m2、引張強度 80MPa、曲げ強度 80MPaとなった。
【0060】
(実施例3)
実施例1と同じ一方向紡績糸シート(A-1)と実施例2と同じ熱可塑性シート(B-2)を用いて、各々のシートを600mm×600mm四方にカットし、一方向紡績糸シートを7枚、熱可塑性シートを20枚準備した。最外層を熱可塑性シート1枚とし一方向紡績糸シートの積層パターンを0°/90°として
図3のように積層した。最外層を除く積層部の熱可塑性シートは3枚ずつ挟んだ。この時の一方向紡績糸シートは54質量%、熱可塑シートは46質量%である。(混率の表示について要確認)次いでプレス成型は実施例1同様の工程で実施した。熱可塑性シートのポリ乳酸が溶融し、一方向紡績糸シート間に含侵し、板状のFRTPができた。出来上がったFRTPは600mm×600mm、厚み1.6mm、目付2178g/m2、引張強度 100MPa、曲げ強度 100MPaとなった。
【表1】
本発明の複合積層体は、紡績糸のシートと熱可塑性樹脂との複合を別工程で行うため、従来のプレプリグの製造方法に比べて様々な製造方式に対応できる。また本発明の複合積層体は軽量で柔軟性があるため、建築資材、インテリア材料、家電材料等様々な用途に適用できる可能性がある。