(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081187
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】建設計画システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240611BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240611BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20240611BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240611BHJP
【FI】
G06F30/13
G06Q50/08
G06F30/12
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194618
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】518424279
【氏名又は名称】株式会社ダイスネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋治
(72)【発明者】
【氏名】秋山 文秀
(72)【発明者】
【氏名】神田 信孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久人
(72)【発明者】
【氏名】河村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北條 秀夫
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC05
5B146DE06
5B146DE12
5B146DE16
5B146DG02
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】より利便かつ汎用性の高い技術を提供する。
【解決手段】建設計画システム200は、サーバ型コンピュータのサーバ装置110を備え、サーバ装置110のBIM管理部130内には、建物ボリューム生成モジュール132及び法規制確認モジュール134といったBIMに特化された専用のプログラムモジュールを実行するセクションが設けられている。建物ボリューム生成モジュール132は、ユーザ端末102,104等から建物の建設計画地に関する敷地情報の提供を受けると、その敷地情報に基づいて、建設計画地での建設条件に関する建設情報を外部機関160から取得し、建設計画地に建設可能な建物モデルの基本データを生成する。さらに、建物モデルについて容積率及び建蔽率のチェック及び法規制確認モジュール134による法規制チェックを行って建物モデルを補正し、最終的にチェックを通過した建物モデルを自動設計の結果として提示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のコンピュータによる、データ上で建物モデルを生成可能なプログラムの実行に伴い動作する建設計画システムであって、
建物の建設計画地に関する敷地情報、及び前記建設計画地での建設条件に関する建設情報に基づいて、前記建設計画地に建設可能な建物モデルの基本データを生成する生成手段と、
前記基本データを前記建設計画地での建設条件に適合させて補正することにより、前記建設計画地に建設可能であり、かつ前記建設条件に適合する範囲内で所定の容積率及び建蔽率の要件を満たした建物モデルの最適化データに補正する補正手段と、
前記最適化データで表される建物モデルを提示する提示手段と
を備えた建設計画システム。
【請求項2】
請求項1に記載の建設計画システムにおいて、
前記生成手段は、
データ上で前記建設計画地の敷地境界線に外接する矩形を設定するステップと、
前記矩形の内側全体に単位サイズの正方形ブロックを敷設するステップと、
前記敷地境界線からはみ出ない前記正方形ブロックの集合体の内側で面積が最大となる四角形を最大長方形として設定するステップと、
前記最大長方形に基づいて建物モデルの3次元データを生成するステップと
を通じて前記基本データを生成することを特徴とする建設計画システム。
【請求項3】
請求項2に記載の建設計画システムにおいて、
前記補正手段は、
前記建設条件の1つである日影規制に基づいて、前記最大長方形を前記建設計画地の内側に縮小して補正するステップと、
前記建設条件の1つである高さ規制に基づいて、建物モデルの高さを3次元データ上で補正するステップと、
前記建設条件の1つである斜線制限に基づいて、建物モデルの斜線面に沿う形状を3次元データ上で補正するステップと
の少なくとも1つを通じて建物モデルの前記最適化データへの補正を行うことを特徴とする建設計画システム。
【請求項4】
請求項3に記載の建設計画システムにおいて、
前記補正手段は、
前記建設条件の範囲内で許容される最大容積率及び最大建蔽率を算出するステップと、
前記最大容積率及び前記最大建蔽率の範囲内で前記建設計画地に建設可能な建物モデルの建築面積及び階数を設定するステップと
を通じて建物モデルの前記最適化データへの補正を行うことを特徴とする建設計画システム。
【請求項5】
請求項4に記載の建設計画システムにおいて、
前記補正手段は、
データ上で前記建設計画地に建物モデルを配置したとき、許容される前記最大容積率の範囲内で建築面積を追加可能な空間が敷地内にあるか否かを判定するステップと、
前記判定で追加可能な空間があった場合、当該空間に建築面積を追加するステップと
を通じて建物モデルの前記最適化データへの補正を行うことを特徴とする建設計画システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の建設計画システムが備える前記各手段を利用する建設計画システムであって、
前記敷地情報の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた前記敷地情報に基づいて、前記建設情報を取得する取得手段と、
前記敷地情報及び前記建設情報を前記所定のコンピュータに提供することで、前記生成手段による建物モデルの前記基本データの生成、前記補正手段による前記最適化データへの補正、及び前記提示手段による建物モデルの提示を実行させる提供手段と、
前記提示手段により提示された建物モデルに基づいて、建物の計画図、建設に要する費用及び工期の少なくともいずれかに関する概要情報を出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする建設計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建設計画を自動で行う建設計画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、敷地情報に対応した建築物を自動設計するCADシステムの先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術は、敷地を規定する敷地情報及び建築物タイプ情報を取得すると、取得した敷地情報に適用される集団規定情報を記憶部から抽出し、敷地上に建築可能な建築物の存在可能空間を計算した上で、その存在可能空間内で建築物を自動でCAD設計するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建築物を敷地内でどのように配置するかといった基本的な計画については、敷地形状が単純(例えば、整った矩形状等)である場合には自動設計が容易であるものの、実際に建設計画の対象となる敷地形状は様々であり、常に整った形状であるとは限らない。このため、単純な形状だけでなく特異な形状等、どのような形状の敷地にも対応できる自動設計の実現が求められているところである。
【0005】
そこで本発明は、より利便かつ汎用性の高い技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の建設計画システムを提供する。なお、以下の括弧書中の記載は参考事項や一例を示すものであり、本発明はこれに限られない。
【0007】
〔システムの中核部分〕
本発明の建設計画システムは、所定のコンピュータによるプログラムの実行に伴って動作することができる。建設計画システムを動作させるプログラムは、データ上で建物モデル(例えば、3Dモデル)を生成可能なものである。所定のコンピュータ(例えば、クラウド上のサーバ型コンピュータ)による動作は、建設計画システムの中核となる部分を構成する。
【0008】
本発明の建設計画システムは、生成手段及び補正手段の構成を備える。このうち生成手段は、建物の建設計画地に関する敷地情報(緯度・経度、住所、敷地外形等)、及び建設計画地での建設条件に関する建設情報(例えば、集団規定情報を含む各種法規制、自治体条例等のうち、取得可能な一部の情報等の設計要件)に基づいて、前記建設計画地に建設可能な建物モデルの基本データを生成する。補正手段は、基本データを建設計画地での建設条件に適合させて補正することにより、建設計画地に建設可能であり、かつ建設条件に適合する範囲内で所定の容積率及び建蔽率の要件を満たした建物モデルの最適化データに補正する。なお、敷地情報や建設情報は、建設計画システムに対して入力(例えば利用者により自発的に入力)される態様であってもよいし、システムからの要求に基づいて取得される態様であってもよい。
【0009】
また、建設計画システムは提示手段を備えることもできる。提示手段は、補正手段で補正された最適化データで表される建物モデルを提示(例えば、システムの利用者にデータとして提示)する。
【0010】
本発明の建設計画システムは、生成手段により基本となる建物モデルの基本データを生成し、そこから補正手段により補正を行うことで、最適化した建物モデルのデータとすることができる。補正は、特に所定の容積率及び建蔽率の要件を満たすことを目的として行われ、その結果、法規制等に抵触しない範囲内で容積率及び建蔽率の最適な要件を満たした建物モデルのデータを提示手段により提示することができる。
【0011】
建設計画システムの生成手段として動作するプログラムは、例えば以下のステップを含むことができる。すなわち、データ上で建設計画地の敷地境界線に外接する矩形を設定するステップ、矩形の内側全体に単位サイズの正方形ブロックを敷設するステップ、敷地境界線からはみ出ない正方形ブロックの集合体の内側で面積が最大となる四角形を最大長方形として設定するステップ、そして、最大長方形に基づいて建物モデルの3次元データを生成するステップである。
【0012】
これにより、整った矩形状の敷地だけでなく、特異な形状等あらゆる形状の敷地に対応した建物モデルの3次元データを自動設計により生成することができる。ただし、ここまでで生成された建物モデルには、法規制に基づく建設条件が考慮されていない。そこで建設計画システムは、以下のステップの少なくとも1つを通じて補正を行う。
【0013】
すなわち、補正手段として動作するプログラムは、建設条件の1つである日影規制に基づいて、最大長方形を建設計画地の内側に縮小して補正するステップ、建設条件の1つである高さ規制に基づいて、建物モデルの高さを3次元データ上で補正するステップ、及び建設条件の1つである斜線制限に基づいて、建物モデルの斜線面に沿う形状を3次元データ上で補正するステップを含むことができる。これらステップの少なくとも1つを通じて建物モデルの基本データを最適化データに補正することにより、法規制に適合した建物モデルを提示することができる。
【0014】
補正手段は、さらに以下のステップを通じて補正を行うことができる。
すなわち、建設条件の範囲内で許容される最大容積率及び最大建蔽率を算出するステップと、最大容積率及び最大建蔽率の範囲内で建設計画地に建設可能な建物モデルの建築面積及び階数を設定するステップである。
【0015】
これにより、建設条件を満たす範囲内で最適な建築面積及び階数を設定した建物モデルの最適化データを得ることができる。
【0016】
また、補正手段は以下のステップを通じて補正を行うこともできる。
すなわち、データ上で建設計画地に建物モデルを配置したとき、許容される最大容積率の範囲内で建築面積を追加可能な空間が敷地内にあるか否かを判定するステップと、先の判定で追加可能な空間があった場合、当該空間に建築面積を追加するステップである。
【0017】
例えば、ここまでの補正により建設計画地の敷地内で最適な建物モデルの配置が自動設計によって得られていたとしても、さらに敷地を有効活用した建物モデルに補正することができる。これにより、あらゆる形状の敷地に対応した自動設計としての拡張性や融通性をさらに高めることができる。
【0018】
〔システムの拡張態様〕
本発明の建設計画システムは、以下の態様に拡張することができる。
すなわち、上記の中核部分となる各手段(生成手段、補正手段、提示手段)を利用した建設計画システムの態様であり、この場合のシステムは、入力手段及び取得手段の構成を備えることができる。このうち入力手段は、建物の建設計画地に関する敷地情報の入力を受け付けるものであり、取得手段は、入力手段で受け付けた敷地情報に基づいて、建設計画地での建設条件に関する建設情報を取得するものである。
【0019】
さらに、建設計画システムは提供手段の構成を備えた態様とすることができる。提供手段は、上記の敷地情報及び建設情報を所定のコンピュータに提供することで、上記の中枢部分の動作を実行可能とする。具体的には、提供した敷地情報及び建設情報に基づいて、生成手段による建物モデルの基本データの生成、補正手段による最適化データへの補正、及び提示手段による建物モデルの提示といった中核部分の動作を実行させることができる。なお、所定のコンピュータの構成を本発明の建設計画システムが備えていることとしてもよく、この場合は上記のプログラムをシステムにおいて実行する。
【0020】
そして、建設計画システムは出力手段を備える。出力手段は、提示手段により提示された建物モデルに基づいて、建物の計画図、建設に要する費用及び工期の少なくともいずれかに関する概要情報を出力する。
【0021】
このように、拡張態様の建設計画システムは、提供手段から必要な情報を中核部分に提供し、所定のコンピュータで実行されるプログラムにより建物モデルの基本データを生成させ、さらに補正を行って最適化データを提示させることができる。このため、成果物としての建物モデルのデータ(最適化データ)を自由に取り出して活用することができ、利便性や汎用性を高めることができる。例えば、取り出した建物モデルの3次元データを中間ファイルとして出力し、他のプログラムによる用途(環境シミュレーション、コンピュータグラフィック作成、動画編集等)に転用することができる。
【0022】
また、そのようにしてシステムの中核部分に提示させた建物モデルを出力手段が活用することで、概要情報の出力の利便性も向上させることができる。すなわち、提示させた建物モデルのデータが汎用の3次元データであれば、この3次元データを例えば別の設計プログラムに転用して建物の計画図(プラン図、パース図)を描き出させたり、別の工事費試算プログラムに転用して建設に要する費用を算出させたり、別の工期計算プログラムに転用して建設に要する工期を算出させたりすることが容易になるし、それら各種プログラムのモジュールを適宜に変更することで、出力手段で出力する概要情報の内容を自由にカスタマイズすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より利便で汎用性の高い建設計画システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】建設計画システム100,200の構成例を示すブロック図である。
【
図2】建設計画システム100,200の動作概要を示すフローチャートである。
【
図3】建設計画システム100,200の自動設計を通じて得られる出力結果の概要例を示す図である。
【
図4】建設計画システム100,200それぞれの各種処理を示すシーケンス図である。
【
図5】敷地形状入力処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図6】敷地形状を手書きデータとして入力する場合の例を示す図である。
【
図7】建物面積の抽出・補正処理の手順例を示すフローチャート(1/2)である。
【
図8】建物面積の抽出・補正処理の手順例を示すフローチャート(2/2)である。
【
図9】バウンディングボックスの設定から1×1正方形ブロックを敷設するまでの処理を示した概念図である。
【
図10】ギザギザのポリゴン内で最大長方形を設定する処理の結果を示した概念図である。
【
図11】最大長方形の設定例を一般的な原理とともに示した概念図である。
【
図12】ポリゴン内の最大長方形を設定する手順をフローチャートで表した図である。
【
図13】平均地盤面を算出する処理の概念図である。
【
図14】最大許容容積率及び建蔽率の建物フットプリントを定義する処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図15】法規制チェック処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図16】法規制チェック後に定義される最良の建物フットプリントを示す図である。
【
図17】L型建物フットプリントのブロック配置処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図18】ボリューム判定処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図19】建設計画システム200を用いて実行された自動設計の結果を比較例と対比して示した図である。
【
図20】サーバ装置110のコスト算出モジュール140が実行するコスト算出処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図21】サーバ装置110の工程表作成モジュール150が実行する工程表算出処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図22】ユーザ端末102の専用アプリケーションが実行する表示処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、建設計画システムの好適な例を挙げているが、本発明の形態は例示のものに限らない。
【0026】
〔システムの構成例〕
図1は、複数の態様からなる建設計画システム100,200の構成例を示すブロック図である。
図1には建設計画システム100,200で用いる電子機器とともに、建設計画システム100,200の運用に関係するブロック構成もまた、合わせて示されている。なお、ここでは複数ある中の第1態様が建設計画システム100であり、第2態様が建設計画システム200である。以下、具体的に説明する。
【0027】
〔第1態様〕
第1態様の建設計画システム100は、例えばタブレットコンピュータ型のユーザ端末102、パーソナルコンピュータ型のユーザ端末104等の入出力デバイスを基本構成とする。第1態様の建設計画システム100は、ユーザ端末102,104に実装されたユーザインタフェース(GUI)を用いてユーザからの入力操作を受け付けたり、それらのディスプレイに出力結果を表示したりする。これらユーザ端末102,104には、第1態様の建設計画システム100の機能的要素を構成するアプリケーションソフトウェア、API(アプリケーションプログラムインターフェース)等がインストールされており、ユーザ端末102,104等において、各種のアプリケーションソフトウェア、API等を動作させることで、第1態様の建設計画システム100が機能する。なお、ユーザ端末102はスマートフォン等の形態でもよいし、ユーザ端末104がデスクトップ型パーソナルコンピュータであってもよい。
【0028】
〔第2態様〕
第2態様の建設計画システム200は、例えばサーバ型コンピュータ(以下、「サーバ装置」とする)110を基本構成とすることができる。サーバ装置110は、ユーザ端末102,104に対してはアプケーションサーバとして機能し、ユーザ端末102,104のリソース負荷を軽減する。なお、本実施形態ではサーバ装置110を第2態様の建設計画システム200の構成例としているが、サーバ型でないコンピュータ機器を用いてもよい。
【0029】
〔情報通信環境〕
複数の態様からなる建設計画システム100,200の運用には、情報通信環境(情報通信網)が好適に用いられる。情報通信環境は、例えばインターネット等のワールドオープンなネットワーク105や、LAN、VPN等のプラベートなネットワーク106等を有する。
図1の例では、ユーザ端末102,104がプライベートなネットワーク106だけに接続され、図示しないゲートウェイを通じてインターネット等のネットワーク105にアクセスする態様となっているが、特にこのような構成に限らず、例えば、ユーザ端末102,104が公衆回線を通じてインターネット等のネットワーク105にアクセス可能な態様であってもよい。また、情報通信環境は有線及び無線による回線接続を含む。
【0030】
〔所定のコンピュータ〕
第2態様の建設計画システム200を構成するサーバ装置110は、複数のデータベースDB1~DB5を有する他、複数のプログラムモジュールを実装した制御モジュール部120を有している。制御モジュール部120には、BIM管理部130(図で「BIM」と示すブロック)が構築されている。BIM管理部130は、制御モジュール部120において建物ボリューム生成モジュール132及び法規制確認モジュール134といった、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)に特化された専用のプログラムモジュールを実行するセクションである。この他に制御モジュール部120は、コスト算出モジュール140及び工程表作成モジュール150といった利用目的別に特化された専用のプログラムモジュールを実行する。
【0031】
上記の各種プログラムモジュールには、それぞれ専用の記憶領域が割り当てられている。すなわち、BIM管理部130の建物ボリューム生成モジュール132にはデータベースDB2が割り当てられ、法規制確認モジュール134にはデータベースDB3が割り当てられる。また、コスト算出モジュール140にはデータベースDB4が割り当てられ、工程表作成モジュール150にはデータベースDB5が割り当てられる。なお、データベースDB1は、建設計画システム100,200内の情報保存領域として割り当てられている。なお、データベースDB1~DB5は、物理的に同一な記憶媒体内でセクタを分けられている構成でもよい。
【0032】
〔外部機関〕
建設計画システム100,200の運用には、所定の外部機関160もまた好適に利用される。外部機関160は、例えば一般に公開されているGISデータベース162を保有しており、このGISデータベース162には、ネットワーク105を通じて建設計画システム100,200のいずれからもアクセスすることができる。GISデータベース162には、例えば地図情報、都市計画情報といった地理的情報が膨大に蓄積されている他、各種災害のハザードマップ、地盤情報等のデータが蓄積されている。
【0033】
〔動作概要〕
図2は、建設計画システム100,200の動作概要を示すフローチャートである。本実施形態では、第1態様の建設計画システム100が第2態様の建設計画システム200を使用して動作する。これら建設計画システム100,200による動作は、所望の建設計画地における建物の自動設計を柱とする。なお、ユーザ(利用者)が直接的に使用するのは第1態様の建設計画システム100であるが、その動作の過程で第2態様の建設計画システム200も好適に使用される。
【0034】
すなわち、第1態様の建設計画システム100は、ユーザ端末102,104に実装されたユーザインタフェース(GUI)を用いてユーザからのデータ入力を受け付けると(ステップS100)、外部機関160からGISデータを取得(ステップS102)した後、これらのデータを第2態様の建設計画システム200のサーバ装置110に提供し、サーバ装置110において主要な各種処理(ステップS104,S106,S108,S110)を実行させた上で、その結果をサーバ装置110側から提示させ、これをユーザ端末102,104側で表示する(ステップS112)。以下、動作概要についてさらに説明する。
【0035】
〔自動設計の流れ:第1態様側〕
ステップS100:ユーザ端末102,104において、建物の建設を計画する建設計画地に関する敷地情報の入力を受け付ける。
ステップS102:データ入力時には、合わせて敷地情報に関するGISデータを外部機関160から取得する。GISデータから建設計画地の正確な地図座標、地形、方位といった敷地情報が得られる他、建設計画地に適用される集団規定情報、各種条例といった建設条件に関する建設情報が得られる。
データ入力された敷地情報及び建設情報をサーバ装置110に提供し、以下の処理を走らせる。
【0036】
〔自動設計の流れ:第2態様側(自動設計の中核部分の動作)〕
ステップS104:サーバ装置110において、建設計画地の敷地面積から建物面積を自動で抽出し、建物モデルの基本データを生成した後、容積率及び建蔽率の要件を満たした建物モデルの最適化データに補正する。
ステップS106:補正した建物モデルの最適化データに基づき、建設計画地で建設可能な建物のボリュームを生成(建物モデルを自動設計)する。
ステップS108:自動設計した建物モデルから、建設に必要なコストを算出する(建築概算見積)。
ステップS110:また、自動設計した建物モデルから、工事工程表を作成する(自動工程作成)。
以上の処理の結果がサーバ装置110からユーザ端末102,104に返される。
【0037】
〔自動設計の流れ:第1態様側〕
ステップS112:ユーザ端末102,104において、自動設計の結果(建物プラン・建物パース等の概要、コスト概要、工期概要等)を表示する。
【0038】
〔出力結果概要〕
図3は、建設計画システム100,200の自動設計を通じて得られる出力結果の概要例を示す図である。
例えば、タブレット型のユーザ端末102を使用して自動設計の処理をサーバ装置110に実行させた場合、出力結果としてユーザ端末102の画面に建物プラン
図BP、建物パース
図PS、コスト工期表CTといった建設計画に関する概要情報が表示される。これらの概要情報は、ユーザ端末102でのGUI操作によって適宜に表示・非表示・画面切替が可能であり、閲覧の利便性に供することができる。また、自動設計の結果をユーザ端末102から第三者(例えば顧客等)に電子メール等でデータ送信することもできる。
【0039】
以上のように本実施形態では、自動設計の中核部分となる動作を第2態様の建設計画システム200が実行しつつ、ユーザインターフェース層となる部分の動作を第1態様の建設計画システム100が実行することで、ユーザに対しては、あたかも1つのシステムであるかのように動作し、入力された情報に基づいて自動設計の結果を提供することができる。
【0040】
〔処理シーケンス〕
図4は、建設計画システム100,200それぞれの各種処理を示すシーケンス図である。
図2の動作概要では、建設計画システム100,200を統合した一連の処理フローとして俯瞰的に示していたが、ここでは各動作主体別に行われる処理シーケンスが示されている。
【0041】
〔ユーザ端末処理:第1態様側〕
ステップS1:第1態様の建設計画システム100がユーザインターフェース層となり、処理シーケンスを開始する。すなわち、ユーザ端末102(104)において、データ入力を開始する。ここでは運用上のセキュリティ対策として、ユーザ認証(サインイン)の手順が設けられている。したがって、先ずユーザID及びパスワードの入力が求められる。
ステップS2:入力したユーザID及びパスワードをユーザ端末102から第2態様の建設計画システム200側のサーバ装置110に送信し、認証要求を発行する。
【0042】
〔サーバ装置処理:第2態様側〕
ステップS3:第2態様の建設計画システム200が中核部分として処理シーケンスを開始する。すなわち、サーバ装置110において、認証要求に対するユーザ認証を行う。ここでのユーザ認証のため、例えば上記のデータベースDB1には登録ユーザのリストが保存されている。
ステップS4:ユーザ認証が正常に行われると、サーバ装置110からユーザ端末102に認証通知を行う。これにより、ユーザ端末102とサーバ装置110との間で自動設計のためのセッションが確立される。
【0043】
〔ユーザ端末処理:第1態様側〕
ステップS5:ユーザ端末102において、建設計画地に関する敷地情報を入力する。
図2の動作概要では、データ入力(ステップS100)に対応した処理の開始に該当する。敷地情報の入力は、例えば敷地形状の座標データ、CADデータ、PDFデータ、画像データ等により行われるが、詳細についてはさらに後述する。
ステップS6:ユーザ端末102から外部機関160に、敷地情報の入力データを送信する。
【0044】
〔外部機関処理〕
ステップS7:外部機関160において、送信された敷地情報に基づいてGISデータベース162から地図情報を検索する。
ステップS8:外部機関160から地図情報(GISデータ)をユーザ端末102に提供する。
【0045】
〔ユーザ端末処理:第1態様側〕
ステップS9:地図情報(GISデータ)を参照し、ユーザ端末102において詳細な敷地情報を入力する。なお、敷地形状の入力についてはさらに後述する。
ステップS10:入力(確定)した敷地情報をユーザ端末102からサーバ装置110に送信する。
【0046】
〔サーバ処理:第2態様側〕
ステップS11:サーバ装置110において、送信された敷地情報に基づいて法規制確認モジュール134がデータベースDB3から建設条件(建設情報)を検索する。建設条件には、上記のように建設計画地に適用される集団規定情報、管轄する自治体の定める各種条例等が含まれる。なお、ここでの処理を外部機関160で行うこととしてもよい。
ステップS12:建設条件に関する検索結果をサーバ装置110からユーザ端末102に通知する。外部機関160で建設条件を取得した場合は、外部機関160からユーザ端末102に検索結果を通知する。
【0047】
〔ユーザ端末処理:第1態様側〕
ステップS13:ユーザ端末102において、通知された建設条件のうち、考慮すべき対象を選択して入力する。例えば、入力データの建設計画地に適用される法規制情報として建蔽率、容積率、斜線規制、高さ制限、日影規制、緑化条例、自治体(本実施形態の採用時において東京都)駐車場条例、その他地域ごとに設定された条例が一覧で通知されると、そこから考慮すべき項目をユーザ操作によって選択し、選択データとして入力する。また、ここでは駐車場、トラック停留場(バース)等の指定した台数を選択データとして入力することができる。指定した台数は、建設計画地での建物の容積率に支障がない範囲内で確保されることになる。
ステップS14:入力した選択データをユーザ端末102からサーバ装置110に送信する。
【0048】
〔サーバ処理:第2態様側〕
ステップS15:サーバ装置110において、これまでのデータをデータベースDB1に保存する。
ステップS16,S17:サーバ装置110において自動設計を開始する。ここでは、ユーザ端末102から送信された敷地情報及び建設条件に基づいて建物面積の抽出及び補正を行い、建物モデル(3次元データの建物ボリューム)を生成する。なお、建物面積の抽出・補正及び建物モデルの生成についてはさらに後述する。
ステップS18:サーバ装置110において、生成した建物モデルから建設コストの算出及び工事工程表の作成を行う。コスト算出及び工程表作成についてもさらに後述する。
ステップS19:サーバ装置110において、ここまでのデータをデータベースDB1に保存する。
ステップS20:そして、サーバ装置110からユーザ端末102に自動設計の結果をデータ送信する。
【0049】
〔ユーザ端末処理:第1態様側〕
ステップS21:ユーザ端末102において、サーバ装置110から送信されたデータを表示する。
図2の動作概要では、表示(ステップS112)に対応した処理に該当する。
【0050】
〔オプション処理〕
処理シーケンスには、以下のオプション処理を好適に追加することができる。
ステップS22:ステップS16,S17で生成した建物モデルをサーバ装置110からユーザ端末102に適宜送信する。
ステップS23:ユーザ端末102において建物モデルを確認し、所望の内容でなかった場合はユーザが再出力要求を入力する。
ステップS24:ユーザ端末102からサーバ装置110に再出力要求を送信する。再出力要求があった場合、サーバ装置110において再度ステップS16,S17を実行する。
【0051】
以上が自動設計開始から終了までの処理シーケンスであるが、以下に個別の処理の詳細について説明する。
【0052】
〔敷地形状入力〕
図5は、敷地形状入力処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、
図4の処理シーケンス中でユーザ端末102が実行するステップS5,S9に対応している。敷地形状入力処理は、ユーザ端末102に専用のアプリケーションソフトウェアとして実装されている。以下、手順例に沿って説明する。
【0053】
ステップS200:ユーザ端末102のアプリケーションは、ユーザ操作によって入力されたデータが敷地形状を表す座標データであるかを確認する。座標データであることを確認した場合(Yes)、次にステップS202に進むが、座標データ以外(No)の場合はステップS204に進む。
【0054】
〔座標データの場合〕
ステップS202:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状の入力データが座標データである場合、その座標に示されたGISデータの土地情報から敷地範囲を取得する。なお、GISデータは先の処理シーケンスにおいて外部機関160から提供されている。
【0055】
〔座標データ以外の場合〕
ステップS204:ユーザ端末102のアプリケーションは、ユーザ操作によって入力されたデータが敷地形状を表すCADデータ(例えばdxf形式)であるかを確認する。CADデータであることを確認した場合(Yes)、次にステップS206に進むが、CADデータ以外(No)の場合はステップS208に進む。なお、CADデータは、dxf形式以外であってもよい。
【0056】
〔CADデータの場合〕
ステップS206:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状の入力データがCADデータである場合、CADデータと重なり合うGISデータから敷地範囲を取得する。
【0057】
〔CADデータ以外の場合〕
ステップS208:ユーザ端末102のアプリケーションは、ユーザ操作によって入力されたデータが敷地形状を表す画像データ(例えば、PDF形式の画像データ)であるかを確認する。画像データであることを確認した場合(Yes)、次にステップS210に進むが、画像データ以外(No)の場合はステップS212に進む。
【0058】
〔PDFデータの場合〕
ステップS210:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状の入力データがPDF等の画像データである場合、取得した画像とGISデータとの重ね合わせを行って敷地形状を取得する。例えば、画面102aに表示した画像データを背景として、敷地形状をトレースした線図データを生成する処理を行う。なお、ここでは適宜、ユーザの手動入力操作を要求してもよい。
【0059】
〔PDFデータ以外の場合〕
ステップS212:ユーザ端末102のアプリケーションは、敷地形状を手書きデータとして入力する。ここでは、例えば敷地形状を印刷した紙や、プリンタで出力した紙をユーザ端末102に内蔵されたカメラ等で撮像し、画像データとして入力する。
ステップS214:ユーザ端末102のアプリケーションは、カメラによる取得画像とGISデータとの重ね合わせから敷地形状を取得する。ここでは適宜、必要なユーザ操作として、カメラによる取得画像を下書きとしてユーザ端末102のGUI上で敷地形状を表す線をなぞる(トレースする)操作入力が行われる。また、アプリケーションがカメラによる取得画像から画像認識(解析)処理を行い、敷地形状を自動算出することとしてもよい。
【0060】
ステップS216:そして、ユーザ端末102のアプリケーションは、最終的な取得画像の位置合わせ及び補正(歪み補正、解像度補正、二値化補正等)を行う。
以上の手順を実行すると、ユーザ端末102は処理シーケンスを継続する。
【0061】
〔手書きデータ入力例〕
図6は、敷地形状を手書きデータとして入力する場合の例を示す図である。
図6中(A):ユーザ端末102のアプリケーションが内蔵のカメラ102bを起動する。ユーザは、画面102aを見ながら敷地形状STが印刷等された紙CPをカメラ102bの撮像範囲に位置合わせし、適切なタイミングで撮像ボタン102cをタップする。
図6中(B):ユーザ端末102のアプリケーションは、カメラ102bによる取得画像IMに基づき、上記のようにユーザ操作等を通じて敷地形状の手書きデータDTを入力する。なお、データDTが画像認識によって自動変換されてもよい。
【0062】
〔中核部分の処理詳細〕
次に、本実施形態における自動設計の中核部分の処理について説明する。中核部分の処理は、上記のように第2態様の建設計画システム200を構成するサーバ装置110において実行される。
【0063】
〔建物面積の抽出・補正(容積率決定・建物ボリューム生成)〕
図7及び
図8は、建設計画システム200のサーバ装置110が実行する建物面積の抽出・補正処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、
図4の処理シーケンス中でサーバ装置110が実行するステップS16,S17に対応している。したがって、この処理では建設計画地の敷地内で建物面積を決定するとともに、建物の容積率を決定し、建物ボリューム(建物モデル)を生成する。
図7及び
図8の処理は、BIM管理部130の建物ボリューム生成モジュール132及び法規制確認モジュール134によって実行される。以下、手順例に沿って説明する。
【0064】
ステップS300:建物ボリューム生成モジュール132は、ユーザ端末102,104から提示された敷地形状のデータに基づいてバウンディングボックスを設定する。ここで、「バウンディングボックス」とは、敷地境界線に触れる矩形として定義されるものであり、自動設計を行う建物の配置や面積は、ここで設定したバウンディングボックスに基づいて抽出される。なお、バウンディングボックスの設定例については、さらに別の図面を参照しながら後述する。
【0065】
ステップS302:また、法規制確認モジュール134が敷地内における日影規制の範囲を算出し、敷地内に建設可能な建物の高さ規制を定める限界線(いわゆる「鳥かご」)を設定する。
ステップS304:続いて建物ボリューム生成モジュール132は、設定したバウンディングボックス内に1×1四方(m)の正方形ブロックを敷設する。なお、ブロックの敷設例についても、さらに別の図面を参照しながら後述する。
【0066】
ステップS306:建物ボリューム生成モジュール132は、敷設したブロックを基にギザギザのポリゴン(多角形)を設定する。なお、「ギザギザ」としているのは、ポリゴンの外形が正方形のブロックで形成されるためである。ここでのポリゴンの設定例についても、さらに別の図面を参照しながら後述する。
【0067】
ステップS308:次に、建物ボリューム生成モジュール132は、設定したポリゴン内の最大長方形を設定する。ここでは、ギザギザ形状をなすポリゴン内に最大面積の長方形が設定される。処理の詳細については、さらに別のフローチャートを用いて後述する。
【0068】
ステップS310:建物ボリューム生成モジュール132は、測量ポイントを使用した地形を設定する。ここでは、ユーザ端末102,104から提供された敷地内の複数の測量ポイントの高さ情報に基づいて、敷地の表面形状を表すサーフェスモデルを設定する。
【0069】
ステップS312:そして、建物ボリューム生成モジュール132は、敷地における平均地盤面の高さを算出する。なお、平均地盤面の算出については、さらに別の図面を参照しながら後述する。また、平均地盤面の算出(ステップS312)が次のステップS314の後で実行される手順であってもよい。
【0070】
ステップS314:建物ボリューム生成モジュール132は、最大許容容積率及び建蔽率の建物フットプリントを定義する処理を実行する。「建物フットプリント」は、敷地内における建物の配置を三次元データで定めるものであり、ここで定義された建物フットプリント内で実際の建物モデル(建物ボリューム)が生成される。また、ここでは法規制確認モジュール134により各種の法規制がチェックされた上で、最終的に法規制を通過し得る状態の建物フットプリントが定義される。なお、ここでの処理の詳細についても、さらに別のフローチャートを用いて後述する。
【0071】
ステップS318:建物ボリューム生成モジュール132は、法規制チェックを通過した建物フットプリントに基づいて、最大長方形を設定する。設定された最大長方形は、データベースDB2(データベースDB1でもよい。以下同じ。)に保存される。最大長方形の設定例についても、さらに別の図面を参照しながら後述する。
【0072】
〔
図8:接続記号A→A〕
ステップS320:建物ボリューム生成モジュール132は、最終決定した長方形の最長辺の取得を要求する。具体的には、データベースDB2に保存した最大長方形のデータから最長辺を取得する。
ステップS322:次に、建物ボリューム生成モジュール132は端の角度の取得を要求し、取得した角度をプロジェクトの北として設定する。なお、ここで取得する端の角度は、X-Y軸に沿った最長辺の角度を計算して求めた値である。
【0073】
ステップS324:建物ボリューム生成モジュール132は、ユーザ入力情報を確認する。具体的には、ユーザ端末102,104側から入力された敷地面積・許容容積率及び建蔽率、計画上の建物階数、建物の種類等(建物種類が倉庫の場合はバース)の情報をデータベースDB1から取得する。なお、自動設計される建物フットプリント(建物モデル)の建蔽率及び容積率は、ユーザにより入力された建蔽率及び容積率の値を超えることはできないものとする。
【0074】
ステップS326:次に、建物ボリューム生成モジュール132は、最大許容容積率及び建蔽率を算出する。具体的には、ここまでに取得したパラメータに基づき、例えば以下の要領で建設計画地における最大許容容積率及び建蔽率の面積の値を計算する。以下の例では、建物の種類を倉庫としているが、これに限られるものではない。
(1)先ず、現時点での最大容積率及び建蔽率の大きさで建物フットプリントを配置する。
(2)倉庫のタイプを取得する。タイプには、ランプタイプとボックスタイプを挙げることができ、どちらのタイプであるかによって分岐する。
【0075】
〔ランプタイプの場合〕
(3-1)バース計画を実行し、ランプ形状をシングルにするか、ダブルにするかを選択し、内側バースの片面車路とするか、中央車路とするかを決定する。
(3-2)倉庫の奥行きから確保することができるスパン数を確認する(スパン処理)。例えば、3スパン以上を確保可能であるか、確保不可であるかを確認する。なお、確保できるスパン数は、スパン割のロジックに依存するものとする。スパン割のロジックは、例えば、バース数を含めて3スパンであれば、インナーバースを含む4スパンにすることを試みるが、奥行き上、4スパンの確保が不可能である場合は、インナーバースを含む3スパンの奥行きを確保する。
(4)内側バースのバース数を決定する。例えば、1000m2~1150m2に1バースとすることを基準として、奥行き10.5m×10.5mの場合は2バースとし、奥行き10.5m×11.5mの場合は3バースとしてバース数が決定される。なお、バースに倉庫やフォークリフト乗り場、事務所へのドアがある場合、3バースなら2バースに減少し、2バースなら1バースに数が減少する。
【0076】
〔ボックスタイプの場合〕
(3-1)バース計画を実行し、バース形状を片面バースとするか、両面バースとするかを選択し、内側バースにするか、外側バースにするかを決定する。
(3-2)ここでも同様に、倉庫の奥行きから確保することができるスパン数を確認し(スパン処理)、3スパン以上を確保可能であるか、確保不可であるかを確認する。また、同様のスパン割のロジックに依存する。
(4-1)内側バースのバース数を決定する。例えば、1000m2~1150m2に1バースとすることを基準として、奥行き10.5m×10.5mの場合は2バースとし、奥行き10.5m×11.5mの場合は3バースとしてバース数が決定される。なお、バースに倉庫やフォークリフト乗り場、事務所へのドアがある場合、3バースなら2バースに減少し、2バースなら1バースに数が減少する。
(4-2)外側バースのバース数を決定する。例えば、1000m2~1150m2に1バースとすることを基準として、奥行き10.5m×10.5mの場合は外側バースを3バースとする。なお、バースに倉庫やフォークリフト乗り場、事務所へのドアがある場合、3バースなら2バースに減少し、2バースなら1バースに数が減少する。
(5)そして、ランプタイプ、ボックスタイプいずれの場合も、ここまでに決定したパラメータ(バース数)から、最大許容容積率及び建蔽率を計算する。
【0077】
ステップS328:建物ボリューム生成モジュール132は、階数に基づく最大許容建蔽率を算出する。具体的には、建物の階数と最大許容容積率に基づき、1階の最大許容建蔽率を算出する。以下に算出例を挙げる。
例) 敷地面積:10000m2
容積率:200%(20000m2)
建蔽率:60%(6000m2)
階数:2
とすると、必要階数建蔽率=10000m2(20000m2÷2階)となる。この場合、必要階数建蔽率が最大許容建蔽率の6000m2より大きいため、1階の最大許容建蔽率6000m2の容積率12000m2で2階建となる。
【0078】
〔補正処理〕
上記は基本的な算出例であるが、建物ボリューム生成モジュール132は、以下の補正処理を実行する。具体的には、法規制チェック後に導出された最大長方形の面積(建築面積)を確認し、この面積が各階の建蔽率より小さい場合、最大長方形にブロックを追加することで、建物フットプリントをL型形状に変更(補正)する。一方、最大長方形の面積が各階の建蔽率より小さくない場合は、階数の調整や容積率を減らす処理を行う。以下、手順に沿って説明する。
【0079】
ステップS330:建物ボリューム生成モジュール132は、「建築面積×階数」の値が最大許容容積率より小さいことを確認した場合(Yes)、次にステップS332を実行する。なお、逆を確認した場合(No)、ステップS332を実行せずにステップS336を実行する。
【0080】
ステップS332:建物ボリューム生成モジュール132は、建築面積が最大許容建蔽率より小さいことを確認した場合(Yes)、ステップS334に進んでL型建物フットプリントのボックス配置の処理を行う。一方、建築面積が最大許容建蔽率より小さくない場合(No)、ステップS336に進む。
【0081】
〔L型建物フットプリントの施工が必要な場合があるケース〕
ステップS334:ここでは、建物ボリューム生成モジュール132がL型建物フットプリントのボックス配置の処理を実行する。「L型建物フットプリント」は、上記のように現状で最大長方形であった建物フットプリント(建築面積)の周辺にいくつかのブロック(ボックスともいう)を追加(連結)することで、建物フットプリントをL型の形状に補正し、敷地面積を最大許容建蔽率に近付けるものである。なお、処理の詳細については、さらに別の図面を参照しながら後述する。
【0082】
〔L型建物フットプリントの施工が必要な場合がないケース〕
ステップS336:ここでは、建物ボリューム生成モジュール132は、建物階数から建蔽率を確認し、最大許容建蔽率を超える階数が指定されている場合(Yes)、ステップS340に進む。一方、最大許容建蔽率を超える階数が指定されていない場合(No)、ステップS338に進む。
【0083】
〔容積率を減らして補正〕
ステップS340:建物ボリューム生成モジュール132は、容積率を減らして最大許容建蔽率及び階数を使用する。例えば、以下のように建物フットプリントを補正する。
上記の例)
敷地面積:10000m2
容積率:200%(20000m2)
建蔽率:60%(6000m2)
の条件において、
(1)階数=2:必要階数建蔽率=10000m2で最大許容建蔽率6000m2より大きいため、最大許容建蔽率6000m2で2階建てにする(容積率を12000m2に減らす)。
(2)階数=3:必要階数建蔽率=6666.66m2で最大許容建蔽率6000m2より大きいため、最大許容建蔽率6000m2で3階建てにする(容積率を18000m2に減らす)。
【0084】
〔必要階数建蔽率以下に補正〕
ステップS338:建物ボリューム生成モジュール132は、建物フットプリントを必要階数建蔽率以下に補正する。例えば、以下のように建物フットプリントを補正する。
上記の例)
敷地面積:10000m2
容積率:200%(20000m2)
建蔽率:60%(6000m2)
の条件において、
(3)階数=4:必要階数建蔽率=5000m2で最大許容建蔽率6000m2未満であるため、建蔽率5000m2の4階建てとする(容積率は20000m2のまま)。
(4)階数=5:必要階数建蔽率=4000m2で最大許容建蔽率6000m2未満であるため、4000m2で5階建てとする(容積率は20000m2のまま)。
【0085】
ステップS342:建物ボリューム生成モジュール132は、上記のステップS334,S338,S340の補正処理で生成した建物フットプリントに基づき、法規制チェック後の最大長方形を設定する。ここで設定された最大長方形は、データベースDB2に保存される。
以上のような手順を経て、建物ボリューム生成モジュール132が建物ボリュームの自動設計を終了する。
【0086】
〔各処理詳細〕
続いて、これまでに挙げた各処理の詳細について説明する。以下では、処理の詳細をフローチャートまたは概念図により表している。
【0087】
〔バウンディングボックス設定~1×1正方形ブロック敷設まで〕
図9は、バウンディングボックスの設定から1×1正方形ブロックを敷設するまでの処理を示した概念図である。ここでは、
図7中のステップS300~S306に対応した処理が示されている。
【0088】
〔バウンディングボックス設定〕
図9中(A):建設計画地STの敷地境界線に触れる矩形(破線)がバウンディングボックスBBとして設定される。
【0089】
〔1×1正方形ブロック敷設(1)〕
図9中(B):1×1四方mの正方形ブロックBKをバウンディングボックスBB内及びその周辺にまで敷き詰めるように配置していく。
【0090】
〔1×1正方形ブロック敷設(2)〕
図9中(C):バウンディングボックスBB内が全て埋まるまで正方形ブロックBKを敷設する。バウンディングボックスBBの境界線に重なる正方形ブロックBKは残すが、その外側に配置した正方形ブロックBKは削除する。
【0091】
〔ギザギザのポリゴン設定〕
図9中(D):配置した正方形ブロックBKを二値判定し、建設計画地STの敷地境界線より完全に内側に位置する正方形ブロックBK1(図中に濃いグレーで示される)には「1」の番号を付与し、それ以外の正方形ブロックBK0には「0」の番号を付与する。したがって、敷地境界線の外側に位置(図中に白で示される)していたり、一部が敷地境界線の内側に位置するが(図中に薄いグレーで示される)、他がはみ出ていたりする正方形ブロックBK0には「0」が付与される。
このようにして、「1」の番号が付与された正方形ブロックBK1の集合体がギザギザのポリゴンPGに設定される。外縁が正方形ブロックBK1の辺で構成されているため、全体として文字通りギザギザした形状となっている。
【0092】
〔ポリゴン内の最大長方形設定〕
図10は、ギザギザのポリゴン内で最大長方形を設定する処理の結果を示した概念図である。ここでは、
図7中のステップSS308に対応した処理の結果が示されている。なお、
図10にはギザギザのポリゴンPGが太線で示されている。
【0093】
また、図示していないが、ここでは以下のような3次元的な計算も合わせて行われる。すなわち、正方形ブロックBK1を高さ方向に積み上げていき、建設を計画している建物の階数に基づいて高さ規制の限界線(鳥かご)内にある正方形ブロックBK1がどれであるかを計算する。また、高さ規制の限界線(鳥かご)の外側や、限界線と交差する建物の高さの位置に相当する正方形ブロックBK0を排除する。そして、これらの正方形ブロックBK1集合体の最も外側の境界を計算し、その結果をギザギザのポリゴンPGとして設定する。
【0094】
上記のようにして3次元空間にギザギザのポリゴンPGが設定されると、
図10中に濃いグレーで示すように、ギザギザのポリゴンPG内で面積が最大となる長方形SQmaxが設定される。この処理について、以降の図を参照してさらに説明する。
【0095】
図11は、最大長方形の設定例を一般的な原理とともに示した概念図である。
図11中(A):一般原理の説明は、便宜上、ギザギザでない矩形のポリゴンPGを用いる。ポリゴンPGの内側にセットバック(例えば2.3m)部分を考慮した線(矩形)を定義し、その内側に任意の点Gを置くと、これを重心としてセットバック線内に複数の矩形を描いていき、面積が最大となるものを計算する。
【0096】
図11中(B):より実例的には、ある得られた任意形状のポリゴンPG内に任意の点A,B,C・・・を配置していき、各点A,B,C・・・でポリゴンPG(セットバックを考慮した線)内に複数の矩形を描き、それぞれで面積が最大となる四角形SQmax1,SQmax2,SQmax3・・・を計算する。それらの中で、さらに面積が最大の四角形SQmax2を算出し、これをポリゴンPG内の最大四角形とする。
【0097】
図12は、ポリゴン内の最大長方形を設定する手順をフローチャートで表した図である。このフローチャートは、
図11中(B)に示す計算手順の概念をより詳細に表したものであり、プログラム上のステップとして表したものではない。
【0098】
ステップS700:ポリゴンPG内にランダムの点(上記の点A,B,C・・・)を配置する。以後は、配置する点別に計算手順が分岐する。
ステップS702:ある任意の点Aを重心としてポリゴンPG(上記のセットバックを考慮した線)に接する矩形SQを作成する。
ステップS704:点Aを中心に矩形SQを回転させ、点Aを重心とする複数の大きさが異なる矩形を作成していく。
ステップS706:並行して又は順次、別の任意の点Bを重心としてポリゴンPG(上記のセットバックを考慮した線)に接する矩形SQを作成する。
ステップS708:点Bを中心に矩形SQを回転させ、点Bを重心とする複数の大きさが異なる矩形を作成していく。
ステップS710,S712:他の任意の点Cについても同様に矩形SQを作成する。
特に図示していないが、さらに別の点D,E,F・・・について矩形SQを作成してもよい。
【0099】
ステップS714:これまでに作成した矩形SQの中で、最大の四角形を判別する。
ステップS716:その結果、最大四角形SQmaxを決定する。この例では、点Aで作成した矩形SQの1つがポリゴンPG内の最大四角形SQmaxに決定されている。
【0100】
〔平均地盤面の算出〕
図13は、平均地盤面を算出する処理の概念図である。
ここでは、平均地盤面の高さを「平均GL」又は「AGL」と称する。また、設計上の基準面とされる設計地盤面の高さを「設計GL」又は「SGL」と称する。
平均GL(AGL)は、建物が周囲の地面と接する高さの平均、すなわち地盤面高さ(GL)の平均値に相当する。より具体的には、平均GLは、建物が地面に接している面積、すなわち
図13中(A)に灰色で示した領域の面積を建物の外周長で除算することにより求められる。
図13中(B)に示した例では、地点aにおける地盤面高さGL
aが最も低く、地点bにおける地盤面高さGL
bが最も高いが、日影規制の検討に際しては、地盤面の高低差zの大きさに関わらず、平均GLが基準とされる。
【0101】
なお、建物に接する地盤面の高低差zが3mを超える場合には、高低差が3m以内となるように建物が分割され、部分毎に平均GLが算出される。
図13中(C)に示されるように、地盤面高さが最も低い地点aと最も高い地点bとの高低差が4mである場合には、例えば、地点aから地点aとの高低差が3mである地点cまでの部分を第1部分BP
1とし、残りの部分、すなわち地点cから地点cとの高低差が1mである地点bまでの部分を第2部分BP
2とする。そして、第1部分BP
1に対しては平均地盤面高さAGL
1が算出され、AGL
1からの高さH
1が第1部分BP
1の高さと決定される。一方、第2部分BP
2に対しては平均地盤面高さAGL
2が算出され、AGL
2からの高さH
2が第2部分BP
2の高さと決定される。
【0102】
〔最大許容容積率及び建蔽率の建物フットプリント定義〕
図14は、最大許容容積率及び建蔽率の建物フットプリントを定義する処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、
図7中のステップS314に相当する。
【0103】
ステップS800:建物ボリューム生成モジュール132は、最大長方形の長さと幅を取得する。
ステップS802:次に、建物ボリューム生成モジュール132は、建物ボリュームの高さを計算し、建設する建物の高さを明確にする。
ステップS804:そして、最大長方形の長さと幅、及び建物の高さから三次元データとして初期の建物ボリュームの寸法を所定のファイル形式(例えば、ADX形式)でデータベースDB2に書き込む。このファイル形式は、法規制確認モジュール134による法規制チェックの実行に適したファイル形式となっている。
【0104】
ステップS806:法規制確認モジュール134が初期の建物ボリュームの法規制チェックを行う。その結果、法規制に適合していなければ、不適合となった側の建物ボリュームを縮小させる(例えば、100mmずつ縮小させる)補正を行った上で建物ボリュームの寸法を更新し、法規制チェックを繰り返す。これにより、例えば
図14中の右側枠内に示す概念図のように、最大長方形SQmax内に設定されていた初期の建物ボリュームBVL’(矢印上側に示す建物モデル)が補正され、最適化した建物ボリュームBVL(矢印下側に示す建物モデル)が生成される。このときの建物ボリュームBVLが最良の建物フットプリントBFPとなる。
【0105】
なお、ここでは便宜上、ステップS806に「Yes/No」の判断分岐を示しているが、法規制に適合しない箇所があった場合、ステップS806内で法規制に適合するまで建物ボリュームの補正をループして行う。したがって、実際にはステップS806からステップS800に戻る必要はなく、ステップS806から「No」の判断分岐は、あくまで補正後に法規制チェックをリトライする意味である。
【0106】
ステップS808:そして、法規制チェックを通過すると、建物ボリューム生成モジュール132が法規制チェック通過後の建物フットプリントを定義する。
【0107】
〔法規制チェック処理〕
図15は、法規制チェック処理の手順例を示すフローチャートである。上記のように、ここでは全ての処理を
図14中のステップS808の中で完結させることができることとしている。このため、
図15の処理を一通り終了すると、
図14中のステップS808で法規制に適合する(Yes)と判断される。なお、
図15の処理がサブルーチンとして
図14の処理から呼び出されるものでもよい。
【0108】
〔日影規制チェックのループ開始〕
ステップS850:建物ボリューム生成モジュール132は、日影規制の指定があることを確認した場合(Yes)、ステップS852に進む。なお、日影規制の指定がない場合(No)、日影規制チェックのループをスキップしてステップS856に進む。
ステップS852:法規制確認モジュール134が日影規制の確認のため、データベースDB3から該当の建設計画地に対する日影規制の内容を呼び出す(日影規制ポイントの取得)。
ステップS854:現在の建物フットプリントBFP(未だ最良ではない状態)を日影規制チェックし、日影規制ポイントを通過しないポイントがあれば(No)、ステップS856に進む。
ステップS856:建物ボリューム生成モジュール132は、日影規制チェック不通過の高いポイントに近い側から建物フットプリントBFPを100mmずつ削減する。例えば、
図15中の右側上段枠内の概念図に示すように、建物フットプリントBFPを水平方向又は垂直方向に削減していく。そして、補正後の建物フットプリントBFPのファイル(ADX形式)をデータベースDB2に更新してステップS852に戻る。
【0109】
〔日影規制チェックのループ完了〕
以上の日影規制チェックをループしつつ、ステップS854で現状の建物フットプリントBFPが日影規制チェックを通過すると(Yes)、ステップS856に進む。
【0110】
〔高さ規制チェックのループ開始〕
ステップS856:次に、法規制確認モジュール134が高さ規制の確認のため、データベースDB3から該当の建設計画地に対する高さ規制の内容(高さ規制の限界線LIM(鳥かご))を呼び出す。
ステップS858:現在の建物ボリュームBVLを高さ規制チェックし、高さ規制の限界線LIMに接触する(鳥かごにぶつかる)高さになっているかを確認する。ここでは、建物ボリュームBVLが高さ規制の限界線LIMを超えるとチェック不通過(No)となり、未だ限界線LIMに接触しない高さではチェック通過(Yes)となる。その結果、未だ限界線LIMに接触していなければ(Yes)、ステップS860に進む。
ステップS860:建物ボリューム生成モジュール132は、最大長方形の建物フットプリントBFPから建物ボリュームBVLの高さを100mmずつ上げる。例えば、
図15中の右側中段枠内の概念図に示すように、最大長方形の建物フットプリントBFPから高さ方向に建物ボリュームBVLを上げていく。そして、補正後の建物フットプリントBFP(建物ボリュームBVL)のファイルをデータベースDB2に更新してステップS856に戻る。
【0111】
〔高さ規制の補正〕
以上の高さ規制チェックをループする間、ステップS860では建物ボリュームBVLが高さ規制の限界線LIMに接触するまで高さを引き上げていくが、例えば、
図15中の右側中段枠内の概念図に示すように、水平方向の片側で建物ボリュームBVLが先に限界線LIMに接触しても、反対側では未だ限界線LIMに接触しない場合、建物フットプリントBFPの位置を水平方向の反対側にずらす補正も行われる。これにより、ずらした建物フットプリントBFPの位置から引き続き建物ボリュームBVLの高さを引き上げることが可能となり、所望の容積率の確保が図られる。
【0112】
〔高さ規制チェックのループ完了〕
以上の高さ規制チェックをループしながら建物ボリュームBVLの高さを引き上げていき、やがて高さ規制の限界線LIMを超える高さに達すると、ステップS858の高さ規制チェックを通過しなくなり(No)、ステップS862に進む。
ステップS862:建物ボリューム生成モジュール132は、建物ボリュームBVLの高さを以前(例えば更新1つ前)の高さ規制チェックを通過していた値まで減らしてループを完了する。これにより、最大(規制限界)で高さ規制チェックを通過した建物フットプリントBFPの建物ボリュームBVLがデータベースDB2に更新される。
【0113】
〔斜線制限チェックのループ開始〕
ステップS864:続いて、法規制確認モジュール134が斜線制限の確認のため、データベースDB3から該当の建設計画地に対する斜線制限の法規制を呼び出す。
ステップS866:現在の建物ボリュームBVLを斜線制限チェックし、斜線面にかかっている場合(No)、ステップS868に進む。
ステップS868:建物ボリューム生成モジュール132は、例えば
図15中の右側下段枠内の概念図に示すように、斜線制限が不通過となった側の斜線面に沿って建物ボリュームBVLを100mmずつ削減していく。そして、補正後の建物ボリュームBVLのファイルをデータベースDB2に更新してステップS864に戻る。
【0114】
〔斜線制限チェックのループ完了〕
以上の斜線制限チェックをループしつつ、ステップS866で現状の建物ボリュームBVLが斜線制限チェックを通過すると(Yes)、建物ボリューム生成モジュール132が法規制チェック処理を終了する。
【0115】
〔最良の建物フットプリント定義〕
図16は、法規制チェック後に定義される最良の建物フットプリントを示す図である。これまでの処理をまとめると、以下のようになる。
(1)建設計画地STの敷地境界線に触れるバウンディングボックスBBを設定する。
(2)正方形ブロックBKを敷設し、二値判定を行う。
(3)敷地境界線の内側にギザギザのポリゴンPGを設定する。
(4)ポリゴン内の最大長方形SQmaxを設定する。
(5)最大長方形SQmaxから建物フットプリントの基本データを生成する。
(6)建物フットプリントの建築面積の抽出及び容積率の補正を行う。
(7)建物フットプリントの法規制チェックによる補正を行う。
以上の処理を経て、今回の建設計画地STにおける最大許容容積率及び望ましい建蔽率を備えた、建物フットプリントBFP(最適化データ)が定義される。
【0116】
〔L型建物フットプリントのブロック(ボックス)配置処理〕
図17は、L型建物フットプリントのブロック配置処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、
図8中のステップS334に相当する。以下、手順例に沿って説明する。
【0117】
ステップS900:建物ボリューム生成モジュール132は、ユーザにより指定されたスパンがあるか否かを確認する。ここで、スパンは建物の柱の間隔を規定する値であり、本実施形態では、ユーザ端末102,104を用いてユーザが指定することも可能となっている。そして、ユーザ指定のスパンがある場合(Yes)、建物ボリューム生成モジュール132はステップS902でユーザにより指定されたスパンをデータベースDB2から選択する。一方、指定のスパンがない場合(No)、ステップS904に進む。
【0118】
ステップS904:指定のスパンがない場合、建物ボリューム生成モジュール132は、デフォルトのスパン(例えば、10.5m×10.5mの固定スパン)とフレキシブルスパン(例えば、10m~12mの間で0.05m刻み、0.1m刻み等により任意に変動可能)とで容積率の達成度合を比較する。その結果、デフォルトのスパンの方が容積率の達成度合が良いと判断した場合(Yes)、ステップS906で固定スパンを選択する。一方、不動スパンの方が容積率の達成度合がよいと判断した場合(No)、ステップS908でフレキシブルスパンを選択する。
【0119】
ステップS910:ここでは概念図に示すように、建物ボリューム生成モジュール132は、建物フットプリントBFP内に選択したスパンSPNでブロックBLKを3次元空間に配置する。
【0120】
ステップS912:建物ボリューム生成モジュール132は、ここまでに配置したブロックBKで容積率及び建蔽率のチェックを行う。その結果、配置したブロックBKが目標の容積率及び建蔽率を超えていた場合(No)、次にステップS914に進む。一方、目標の容積率及び建蔽率を超えない場合(Yes)、ステップS915に進む。
【0121】
〔目標オーバーする場合〕
ステップS914:建物ボリューム生成モジュール132は、日影規制の影響を受ける部分から100mm単位で建物レイアウトを縮小し、ステップS910に戻ってステップS912のチェックをループする。
【0122】
〔目標オーバーしない場合〕
ステップS915:建物ボリューム生成モジュール132は、ここまでに配置したブロックBKで目標の容積率及び建蔽率を達成したかを確認する。その結果、目標を達成している場合(Yes)、建物フットプリントBFPのブロック配置を完了する。一方、目標を未達成の場合(No)、次にステップS916を実行する。
【0123】
ステップS916:建物ボリューム生成モジュール132は、ボリューム判定処理を実行する。以下、より詳細に説明する。
【0124】
〔ボリューム判定処理〕
図18は、ボリューム判定処理の手順例を示すフローチャートである。
ステップS950:建物ボリューム生成モジュール132は、現状のブロックBKの配置(建物フットプリントBFP)の容積率及び建蔽率を確認し、「最大許容容積率±α%」の範囲内で目標の容積率が確保できた場合(Yes)、ここで処理を終了する。この場合、これ以上はL型建物フットプリントのボックス配置が不可となる。一方、目標の容積率に届いていなければ(No)、次にステップS952に進む。なお、±の範囲を規定するαの値は適宜に設定可能であり、ここでは例えば±5%とするが、これに限られない。
【0125】
ステップS952:建物ボリューム生成モジュール132は、建設計画地ST内の空間検索を実行する。具体的には、現状の建物フットプリントBFPの南側、東側、西側、北側の順に空間を検索する。
【0126】
ステップS954:建物ボリューム生成モジュール132は、空間判定の結果、南側にスペースがあると判断すると(Yes)、ステップS956を実行する。一方、南側にスペースがないと判断した場合(No)、ステップS958に進む。
【0127】
〔南側にスペースありの場合〕
ステップS956:ここでは概念図に示すように、建物ボリューム生成モジュール132は、建物フットプリントBFPの南側スペースに追加ブロックABLを配置する。これにより、建物フットプリントBFPの形状は、それまでの長方形に追加ブロックABLが付加されてL型となる。
【0128】
ステップS958:建物ボリューム生成モジュール132は、空間判定の結果、東側にスペースがあると判断すると(Yes)、ステップS960を実行する。一方、東側にスペースがないと判断した場合(No)、ステップS962に進む。
【0129】
〔東側にスペースありの場合〕
ステップS960:ここでは概念図に示すように、建物ボリューム生成モジュール132は、建物フットプリントBFPの東側スペースに追加ブロックABLを配置する。このため同様に、建物フットプリントBFPの形状がそれまでの長方形からL型となる。
【0130】
ステップS962:次に、建物ボリューム生成モジュール132は空間判定の結果、西側にスペースがあると判断すると(Yes)、ステップS964を実行する。一方、西側にスペースがないと判断した場合(No)、ステップS966に進む。
【0131】
〔西側にスペースありの場合〕
ステップS964:ここでも概念図に示すように、建物ボリューム生成モジュール132は、建物フットプリントBFPの西側スペースに追加ブロックABLを配置する。この例では、先にステップS960で東側に追加ブロックABLが配置されているため、建物フットプリントBFPの形状がL型から変形した形状(例えばZ型)となっている。また、ここでは南側に追加ブロックABLが配置されていてもよいし、東側に追加ブロックABLが配置されていなくてもよい。なお、Z型の建物配置は採用の優先度を低くすることとし、なるべくL型で追加ブロックABLの配置を完成させることが好ましい。
【0132】
ステップS966:そして、建物ボリューム生成モジュール132は空間判定の結果、北側にスペースがあると判断すると(Yes)、ステップS968を実行する。一方、北側にスペースがないと判断した場合(No)、これ以上は追加ブロックABLを配置する余地がないとし、ここで処理を終了する。
【0133】
〔北側にスペースありの場合〕
ステップS968:ここでも概念図に示すように、建物ボリューム生成モジュール132は、建物フットプリントBFPの北側スペースに追加ブロックABLを配置する。この例では、先にステップS960,S964で東側と西側に追加ブロックABLが配置されているため、建物フットプリントBFPの形状がさらに変形した形状(複数のL型の組み合わせ)となっている。なお、ここでは南側に追加ブロックABLが配置されていてもよいし、東側や西側に追加ブロックABLが配置されていなくてもよい。
【0134】
以上の処理を経て、ステップS950で建物フットプリントBFPの容積率及び建蔽率が許容容積率の±α%の範囲内であることを確認するか、もしくは、容積率が最大許容容積率に達したことを確認した場合(Yes)、建物ボリューム生成モジュール132は処理を終了する。
ここで、本処理による容積率及び建蔽率の補正は、例えば以下のユーザ入力例のようになる。
敷地面積:10000m2
容積率:200%(20000m2)
建蔽率:60%(6000m2)
階数:3
上記の条件において、
延べ床面積:20000m2
1階辺りの平均床面積:6666m2(20000÷3)であったとすると、建蔽率が超過しているので、6000m2を目標として、延床面積18000m2の建物に補正することになる。
【0135】
〔自動設計による建物フットプリント例〕
図19は、建設計画システム200を用いて実行された自動設計の結果を比較例と対比して示した図である。
【0136】
〔比較例〕
図19中(A):ここでは、本実施形態の補正を行っていない自動設計の結果を比較例として示している。比較例では、建設計画地ST内に最大長方形を基本とした建物フットプリントBFP’が自動設計により得られている。この場合でも、日影規制や高さ規制、斜線制限等の法規制チェックは行われているが、建築面積の抽出及び補正が行われておらず、L型建物フットプリントのボックス配置も行われていないため、建設計画地STの敷地面積(敷地形状)を最大に利用できていないことが分かる。
【0137】
〔本実施形態〕
図19中(B):これに対し、本実施形態によれば、最大容積率及び建蔽率まで追加ブロックABLを配置した建物フットプリントBFPを定義することができる。これにより、建設計画地STの敷地面積(敷地形状)を最大に利用した自動設計の結果を得ることができる。
【0138】
〔コスト算出処理〕
図20は、サーバ装置110のコスト算出モジュール140が実行するコスト算出処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、
図4の処理シーケンス中でサーバ装置110が実行するステップS18(コスト算出)に対応している。以下、手順例に沿って説明する。
【0139】
ステップS400:コスト算出モジュール140は、データベースDB2又はDB1に保存された建物モデル(ボリュームデータ)を取り込む。なお、ここでの建物モデルは、上記の補正により最適化された建物フットプリントBFP(建物ボリュームBVL)のデータである。
ステップS402:次に、データベースDB4のコストテーブルを適宜参照してコスト算出モジュール処理を実行する。ここでの処理には、例えばサードパーティが提供するコスト算出プログラム(市販品)を好適に利用することができる。このようなプログラムは、自動設計した建物モデルに、内外装の仕上げを想定した上で見積書を自動で作成してくれる。
ステップS404:そして、算出結果をデータベースDB1に保存するとともに、ユーザ端末102に対して出力する。
以上の手順を実行すると、コスト算出モジュール140は処理シーケンスを継続する。
【0140】
〔工程表算出処理〕
図21は、サーバ装置110の工程表作成モジュール150が実行する工程表算出処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、
図4の処理シーケンス中でサーバ装置110が実行するステップS17(工事工程表作成)に対応している。以下、手順例に沿って説明する。
【0141】
ステップS500:工程表作成モジュール150は、データベースDB2又はDB1に保存された建物モデル(ボリュームデータ)を取り込む。ここでも同様に、上記の補正により最適化された建物フットプリントBFP(建物ボリュームBVL)のデータが取り込まれる。
ステップS502:次に、データベースDB5の工程テーブルを適宜参照して工程表算出モジュール処理を実行する。ここでの処理にも、例えばサードパーティが提供する適正工期算定プログラム(市販品)を好適に利用することができる。このようなプログラムは、適正工期の算出、及び工程表の作成を自動で行ってくれる。
ステップS504:そして、算出結果をデータベースDB1に保存するとともに、ユーザ端末102に対して出力する。
以上の手順を実行すると、工程表作成モジュール150は処理シーケンスを継続する。
【0142】
〔表示処理〕
図22は、ユーザ端末102の専用アプリケーションが実行する表示処理の手順例を示すフローチャートである。この処理は、
図5の処理シーケンス中でユーザ端末102が実行するステップS21(データ表示)に対応している。以下、手順例に沿って説明する。
【0143】
ステップS600:ユーザ端末102のアプリケーションは、アウトプットデータの読み出しを行う。具体的には、処理シーケンス中のステップS19でサーバ装置110から送信された結果をメモリ等に読み出す。なお、ここではデータベースDB1に保存されているデータを読み出してもよい。
【0144】
ステップS602:ユーザ操作により、建物プラン・建物パースの表示が選択された場合(Yes)、次にステップS604に進むが、それ以外(No)の場合はステップS606に進む。
【0145】
〔建物プラン・建物パース表示選択時〕
ステップS604:ユーザ端末102の画面102aに図面・概要書・パース・モデル等を表示する。表示のイメージは、ユーザ端末102がタブレット端末等のデバイスである場合は、
図3の建物パース
図PSであり、パーソナルコンピュータ(ユーザ端末104)の場合は、建物パース
図PSの他に建物プラン
図BP等も表示可能である。
【0146】
〔上記非選択時〕
ステップS606:また、ユーザ操作により、コスト表示が選択された場合(Yes)は次にステップS608に進むが、それ以外(No)の場合はステップS610に進む。
【0147】
〔コスト表示選択時〕
ステップS608:ユーザ端末102の画面102aにコスト一覧を表示する。表示のイメージは、
図3のコスト工期表CTにおいて、特にコストの部分にフォーカスしたものとなる。
【0148】
〔上記非選択時〕
ステップS610:ユーザ操作により、工程表表示が選択された場合(Yes)は次にステップS612に進むが、それ以外(No)の場合はステップS602に戻る。
【0149】
〔工程表表示選択時〕
ステップS612:ユーザ端末102の画面102aに工程表を表示する。表示のイメージは、
図3のコスト工期表CTにおいて、特に工程表の部分にフォーカスしたものとなる。
以上の手順を実行すると、ユーザ端末102は処理シーケンスに復帰して継続する。
【0150】
上述した第1態様の建設計画システム100は、例えば以下のような利用形態に供することができる。
すなわち、建設事業者の営業担当者が、モバイル機器(タブレット等)やパソコン等のユーザ端末102から入力条件と選択条件(敷地状況、道路状況、法規制、顧客要望等)を設定することで、サーバ装置110において対象の敷地に建築できる建築物モデルを形成し、平面・立面・断面図、パース、設計概要表、3Dモデル、さらに3Dモデルから抽出されるファイルに基づいて建物の概算の費用、工事工期を算出し、それらの結果をユーザ端末102で表示することができる。
これにより、対象の敷地にどのような建物を建設できるか検討するために専門家に建物の設計を依頼する必要がなく、また、設計に要する時間や費用の発生を抑えることができ、営業担当者から顧客への情報提供や提案を迅速に行うことができる。
【0151】
また、上述した第2態様の建設計画システム200は、例えば以下のような利用形態に供することができる。
すなわち、第1態様の建設計画システム100を用いた自動設計において、今回の建設計画地における敷地情報(所在地、敷地形状、周辺環境等)、及び建設計画地での建設条件(最大許容容積率・建蔽率、法規制等)に関する建設情報に基づき、所望の要件(特に容積率を向上する要求)を満たすように最適化した建物モデルのデータを提示することができる。
これにより、営業の現場においてユーザ端末102,104等から情報を入力するだけで、顧客の要望に見合った建設計画を簡便かつ迅速に立案提供することができる。また、整った敷地形状だけでなく、特異な敷地形状を持つ建設計画地であっても、事業化へのインセンティブを十分に満たした建物モデルを生成させることができ、また、顧客要望の建築計画に見合った建物モデルを自動設計により生成させることができるので、営業担当者から顧客へ提供する情報の完成度を高めることができる。
【0152】
また、本実施形態の建設計画システム100,200によれば、以下のような有用性が得られる。
(1)第1態様の建設計画システム100では、ユーザ端末102,104により敷地情報及び建設情報の入力を受け付けるだけで、後はこれらの情報を第2態様の建設計画システム200のサーバ装置110に提供し、建物モデルのボリューム生成や建物モデルの生成をリモート処理で実行させているため、処理負荷を分散することができる。
(2)自動設計や法規制チェックの中核部分を第2態様の建設計画システム200が専用のプログラム(例えば、Revit、ADS-BT)を用いて実行するため、第1態様の建設計画システム100はこれら専用プログラムに対するAPIとして動作しているだけであるため、第1態様の建設計画システム100が得られる建物モデルの汎用性が高い。
(3)専用プログラムによって生成された建物モデルは、3Dデータとして取り出すことで他のアプリケーションへの転用が容易であり、コスト算出モジュール140や工程表作成モジュール150への展開もスムーズに行うことができる。
(4)また、取り出した建物モデルの3次元データを中間ファイルとして出力し、その他のプログラムによる用途(環境シミュレーション、コンピュータグラフィック作成、動画編集等)にも転用することができる。
【0153】
(5)また、第2態様の建設計画システム200については、サーバ装置110内の各種モジュール(建物ボリューム生成モジュール132、法規制確認モジュール134、コスト算出モジュール140、工程表作成モジュール150)が適宜アップデートやモディファイされることで、第2態様の建設計画システム200から提示する建物モデルのデータだけでなく、第1態様の建設計画システム100で表示(出力)する情報の内容を自由にカスタマイズすることができる。
(6)第1態様の建設計画システム100では、敷地形状を手書きデータからも入力可能であるため、実際の営業の現場で紙ベースの敷地情報が用意できない場合であっても、これを画像データに変換して建設計画システム100,200の両方を稼働させることができる。これにより、迅速性や利便性をさらに向上することができる。
【0154】
(7)外部機関160との連携により、建設計画地に適用される集団規定情報の他に、建設計画地を管轄する自治体の定める条例を取得可能であるため、これらの情報を第2態様の建設計画システム200のサーバ装置110に提供し、集団規定情報及び条例に基づく建設条件に適合した建物モデルを生成させることができる。これにより、集団規定情報以外にも自治体の緑化条例・駐車場条例といったその他一部の条例を総合的に考慮することが可能となり、生成される建物モデルの実用性をさらに高めることができる。
【0155】
(8)第2態様の建設計画システム200は、あらゆる敷地形状に対応して最適化され、特に条件内で容積率を最大化させた建物モデル(建物フットプリント、建物ボリューム)を自動設計することができるため、よりシステムの利便性や汎用性、有用性を高めることができる。
【0156】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
一実施形態では、第1態様の建設計画システム100に対して第2態様の建設計画システム200を分離することで、全体を分散処理型の構成としているが、サーバ装置110の機能をユーザ端末102,104に全て組み込んだ構成とし、第1態様と第2態様とを統合させた1つの建設計画システムとして構成してもよい。この場合、統合型の建設計画システムは、敷地情報及び建設情報をユーザ端末102,104からサーバ装置110(所定のコンピュータ)に提供するのではなく、ユーザ端末102,104に実装された専用プログラムに提供することで、同様の処理を通じて自動設計の結果や概算コスト、工程表等の結果を得ることができる。
【0157】
第2態様の建設計画システム200を実現するに際し、サーバ装置110は、インターネット等のネットワーク105(クラウド)上に置かれていてもよい。あるいは逆に、サーバ装置110がユーザ端末102,104と同一拠点に置かれていてもよい。
【0158】
ユーザ端末102,104には、サーバ装置110から提供された建物モデルの3Dデータをアニメーション表示する機能が実装されていてもよい。この場合、自動設計された建物の外観だけでなく、建物の内部に視点カメラを移動させていくことで、建設される予定の建物を擬似的に内覧することもできる。
【0159】
一実施形態では、建物モデルとして物流倉庫を想定していたが、本発明はどのようなタイプの建物にも適用することができる。したがって、オフィスビル、集合住宅、立体駐車場等の建設を計画する場合にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0160】
100,200 建設計画システム
102,104 ユーザ端末
105,106 ネットワーク
110 サーバ装置
120 制御モジュール部
130 BIM実行部
160 外部機関