(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081190
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】照明装置およびこれを用いたディスプレイ
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240611BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240611BHJP
F21Y 105/16 20160101ALN20240611BHJP
【FI】
F21S2/00 484
F21Y115:10 700
F21Y105:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194622
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】吉井 克昌
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA14
3K244BA20
3K244BA26
3K244BA31
3K244BA32
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244DA25
3K244FA13
3K244FA14
3K244GA02
(57)【要約】
【課題】 薄型化を図りつつ輝度と広がり(拡散)を制御可能な照明装置を提供する。
【解決手段】 本発明のバックライト構造100は、回路基板110と、回路基板110上に配置されたリフレクタ120と、リフレクタ120上に配置された拡散板130とを含む。リフレクタ120は、複数の開口部140を含み、開口部140の中央の貫通孔142内に側面発光型のLED50が配置される。開口部140の内壁は、LED50の周囲に対向するように配置された傾斜した反射面144と、その上方に配置された直立した反射面148とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの側面から側方に光を出射する光源と、
2次元状に配置された複数の開口部を含み、各開口部には、前記光源を配置するための貫通孔と、前記光源から出射された光を反射する内壁とが形成されたリフレクタとを含み、
前記内壁は、前記光源に対向する傾斜した反射部と、前記傾斜した反射部上に形成される直立した反射部とを含む、照明装置。
【請求項2】
前記傾斜した反射部は、前記光源を配置する基板の主面に対して傾斜した反射面を有し、前記直立した反射部は、前記主面に対して概ね直立した反射面を含む、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記傾斜した反射部の前記主面からの高さは、前記光源の前記主面からの高さよりも大きい、請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記傾斜した反射部は、湾曲した反射面を含む、請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記リフレクタは、隣接する開口部の境界に平坦な頭頂面を含む、請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記開口部の平面視は、矩形状であり、前記傾斜した反射部は、四角錘状の凹部を形成する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項7】
前記開口部の平面視は、円形状であり、前記傾斜した反射部は、円錐状の凹部を形成する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項8】
照明装置はさらに、前記反射部材上に拡散板を含む、請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1つに記載の照明装置と、液晶パネルとを含み、前記照明装置は、液晶パネルの直下から液晶パネルを照明するバックライト構造として機能する、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関し、特に液晶パネル等のバックライトに用いられる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルのバックライトには、エッジタイプと、ローカルディミング用の直下型タイプとがある。直下型タイプは、液晶パネルの裏面に複数のLED等の光源を2次元的に配置し、光源を選択的に駆動することで液晶パネル直下の領域を照明し、その輝度を調整する。例えば、特許文献1は、2次元状の反射シートに形成された複数の開口内に光源と反射レンズをそれぞれ配置し、反射レンズによって光源からの光を側方に反射させ、反射レンズによって反射された光を上方に反射させる薄型の発光装置を開示している。また、特許文献2は、複数の矩形状の開口が格子状に形成されたリフレクタと、リフレクタの各開口内に配置されたLEDとを含む、液晶パネル用のバックライト装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2016/208484号公報
【特許文献2】特開2021-180179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1(A)、(B)は、従来の直下型タイプのバックライト構造の概略構成を示している。回路基板10上には、一定の間隔で複数のLED光源20が取り付けられ、LED光源20の上方には、LED光源20から出射された光Lを拡散させるための拡散板30が配置される。
【0005】
図1(A)のように拡散板30とLED光源20との間の距離ODを小さくすると、拡散板30に入射する光が不均一となり、領域Aにおいて輝度ムラが生じてしまう。これを避けるため、
図1(B)のように距離ODを大きくすると、バックライト構造の厚みに影響し、薄型化の障害になってしまう。
【0006】
近年、
図2に示すような側面発光型のLED(例えば、OSRAM製 E1515)が実用化されている。側面発光型のLED50は、例えば、矩形状の上面52、底面54、上面52と底面54とを接続する4つの側面56を含む表面実装型のパッケージから構成され、底面54に形成された電極が回路基板10の電極にはんだ等によって接続される。パッケージ内には、複数の発光素子(例えば、発光ダイオード)が内蔵され、各発光素子の光軸は、対応する4つの側面56に対して概ね直角であり、かつ上面52または底面54と概ね平行である。図の例では、2つの発光素子の発光点58が1つの側面56に示されている。側面発光型のLED50が駆動されたとき、4つの側面56の発光点58から光軸方向に一定の放射角で光(例えば、白色光)が出射される。
【0007】
図3(A)は、従来の格子型のリフレクタの概略構成を示す平面図である。同図に示すリフレクタ60は、格子状に配置された複数の矩形状の開口62を含み、各開口62の中央には、側面発光型のLEDを配置するための矩形状の貫通孔64が形成される。1つの開口62は、概ね四角錘状の窪みを形成し、すなわち、中央の貫通孔64から表面まで延在する4つの傾斜した反射面66が形成される。リフレクタ60は、例えば、発泡ポリカーボネート等を一体成形して形成される。側面発光型のLED50の各側面から出射された光は、傾斜した反射面66によって反射、散乱され、上方の拡散板に入射される。
【0008】
図3(B)は、従来の別のリフレクタの概略構成を示す平面図、
図3(C)は、
図3(B)のX-X線断面の拡大図である。同図に示すリフレクタ70は、格子状に配置された複数の矩形状の開口72を含み、各開口72の中央には、側面発光型のLEDを配置するための矩形状の貫通孔74が形成される。1つの開口72は、概ね矩形状の窪みを形成し、すなわち、中央の貫通孔64から水平方向に延びる平坦な面76と、平坦な面76に接続された山形形状の反射部78とが形成される。山形形状の反射部78は、開口72の矩形状の境界に沿うように位置する。側面発光型のLED50の各側面から出射された光は、反射部78によって反射、散乱され、上方の拡散板90に入射される。
【0009】
側面発光型のLED50は、光軸方向が鉛直方向の通常のLEDと異なり、光軸方向が水平方向であり、側面発光型のLED50の側面から出射された光は、リフレクタ60/70よって、より側方に向けて広がるように反射、拡散される。それ故、側面発光型のLED50と拡散板90との間の距離ODを小さくし、バックライト構造の薄型化を図ることが可能である。
【0010】
しかしながら、側面発光型のLED50とリフレクタ60/70との組み合わせには、次のような課題がある。側面発光型のLED50の側面からの出射光は、リフレクタ60/70の反射面66や山形形状の反射部78によって広範囲に反射、散乱されると、光漏れ(halo)が大きくなってしまう。
【0011】
図4は、リフレクタと拡散板の放射特性のシミュレーション結果であり、
図4(A)は、拡散が広い場合、
図4(B)は、拡散が狭い場合を模式的に示している。拡散特性(halo)は、リフレクタからの放射分布、すなわちリフレクタの形状が支配的となる。つまり、
図4(A)に示すように、LED50から出射された光がリフレクタ60/70で反射されて拡散板90の下部を照射するとき、拡散板90への放射分布P1が広い場合には、拡散板90からの放射分布P2が広くなり、液晶パネルを通してみた時の光漏れ(halo)が大きくなる。他方、
図4(B)に示すように、リフレクタ60/70で反射された拡散板90の下部の放射分布P1が狭い場合には、拡散板90からの放射分布P2が狭くなり、光漏れ(halo)が小さくなる。このように、リフレクタからの放射特性が最終的な光の広がり、haloを決定する。
【0012】
図4Aは、リフレクタを用いたときの光漏れによる輝度ムラの例示であり、
図4Bは、リフレクタを用いないときの輝度ムラの例示である。このように、傾斜した反射面64や山形形状の反射部76のリフレクタ60/70を用いると、LED50からの放射光の広がりを狭くすることができるので光漏れを抑えることができる一方で、LED50の出射光の広がりを狭くしすぎると輝度ムラが顕著になるという相反する課題がある。また、リフレクタを用いない場合には、LED50の放射光の広がる範囲が最大となるため光漏れがさらに悪化してしまう。さらに山形形状等の傾斜構造以外にも矩形形状やお椀形状のリフレクタが存在するが、これらのリフレクタでは、面内の輝度分布を均一に保ちながら適度に広がりを制御する機能を両立させることは困難である。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、薄型化を図りつつ輝度と広がり(拡散)を制御可能な照明装置およびこれを用いたディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る照明装置は、少なくとも1つの側面から側方に光を出射する光源と、2次元状に配置された複数の開口部を含み、各開口部には、前記光源を配置するための貫通孔と、前記光源から出射された光を反射する内壁とが形成されたリフレクタとを含み、前記内壁は、前記光源に対向する傾斜した反射部と、前記傾斜した反射部上に形成される直立した反射部とを含む。
【0015】
ある態様では、前記傾斜した反射部は、前記光源を配置する基板の主面に対して傾斜した反射面を有し、前記直立した反射部は、前記主面に対して概ね直立した反射面を含む。ある態様では、前記傾斜した反射部の前記主面からの高さは、前記光源の前記主面からの高さよりも大きい。ある態様では、前記傾斜した反射部は、湾曲した反射面を含む。ある態様では、前記リフレクタは、隣接する開口部の境界に平坦な頭頂面を含む。ある態様では、前記開口部の平面視は、矩形状であり、前記傾斜した反射部は、四角錘状の凹部を形成する。ある態様では、前記開口部の平面視は、円形状であり、前記傾斜した反射部は、円錐状の凹部を形成する。ある態様では、照明装置はさらに、前記反射部材上に拡散板を含む。
【0016】
本発明に係るディスプレイは、上記記載の照明装置と、液晶パネルとを含み、前記照明装置は、液晶パネルの直下から液晶パネルを照明するバックライト構造として機能する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開口部の内壁が傾斜した反射面と直立した反射面とを含み、傾斜した反射面が光源に対向するようにしたので、照明装置の薄型化を図りつつ輝度と広がりを細かく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の直下型バックライト構造の概略構成を示す図である。
【
図2】側面発光型のLEDの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3(A)、(B)は、従来の格子型のリフレクタの概略平面図、
図3(C)は、
図3(B)のX-X線の拡大断面図である。
【
図4】リフレクタと拡散板の放射特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4A】リフレクタがあるときの輝度分布の例示である。
【
図4B】リフレクタがないときの輝度分布の例示である。
【
図5】
図5(A)は、本発明の実施例に係るバックライト構造の概略断面を示す図、
図5(B)は、比較例としてのバックライト構造の概略断面を示す図である。
【
図6】本発明の実施例に係る格子型のリフレクタの概略平面図である。
【
図7】傾斜構造のリフレクタの光学特性を説明する図である。
【
図8】矩形形状のリフレクタの光学特性を説明する図である。
【
図9】本実施例のリフレクタの光学特性を説明する図である。
【
図10】本実施例のリフレクタと既存のリフレクタとの光学特性を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の照明装置は、液晶ディスプレイ等の直下型のバックライト構造や、空間を照明する装置などに適用することができる。また、本発明の照明装置は、パッケージの側面から光を出射する側面発光型のLED等を光源に用いる。
【実施例0020】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図5(A)は、本発明の実施例のバックライト構造の概略断面を示す図、
図5(B)は、比較例のバックライト構造の概略断面を示す図、
図6は、本発明の実施例に係る格子型のリフレクタの概略構成を示す平面図である。
【0021】
バックライト構造100は、側面発光型のLED50、回路基板110、回路基板110上に取り付けられたリフレクタ120、リフレクタ120上に取り付けられた拡散板130を含んで構成される。バックライト構造100は、透過型の液晶パネルの直下に配置され、液晶パネルを照明する。
【0022】
側面発光型のLED50は、特に限定されないが、例えば、
図2に示すような矩形状のパッケージ内に複数の発光素子を備え、側面56の発光点58から白色光を放射する。発光点58を通る発光素子の光軸は、側面56に対して概ね直交し、あるいは回路基板120の主面と平行であり、発光素子は、光軸から一定の放射角で光を出射する。1つの側面56から光を出射する発光素子の数は、1つまたは複数であり、特に限定されない。側面発光型のLED50の底面54には、表面実装用の電極が形成され、この電極は、回路基板120上の駆動回路等に電気的に接続される。
【0023】
リフレクタ120は、
図6に示すように、格子状または2次元状に配置された複数の矩形状の開口部140を含むように構成される。リフレクタ120は、例えば、白色のポリカーボネートなどのアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などを射出成型あるいはプレス成型して一体に成型される。
【0024】
開口部140の中央には、側面発光型のLED50を配置するための矩形状の貫通孔142が形成される。貫通孔142の縦横のアスペクト比は、側面発光型のLED50のパッケージの上面または底面の縦横のアスペクト比、あるいは開口部140の上縁の縦横のアスペクト比に応じて決定される。貫通孔142内に配置された側面発光型のLED50は、回路基板120に電気的に接続され、駆動回路によって駆動される。
【0025】
貫通孔142の各辺は、それぞれ4つの傾斜した反射面144に接続され、4つの傾斜した反射面144によって概ね四角錘の窪みが形成される。傾斜した反射面144の高さH1(回路基板120の主面Sからの高さ)は、側面発光型のLED50の発光点58の高さよりも大きく、あるいは、LED50の上面52の高さ(回路基板120の主面Sからの高さ)よりも大きい。また、側面発光型のLED50の側面56と反射面144との間の距離L(発光点58の光軸方向の距離)は、側面56から一定の放射角で出射された光の大部分が反射面144で反射されるように選択される。こうして、4つの傾斜した反射面144は、側面発光型のLED50の周囲を取り囲み、側面56に対向するように配置される。
【0026】
4つの傾斜した反射面144は、反射面144を取り囲むように形成された平坦な反射面146に接続され、平坦な反射面146はさらに4つの直立した反射面148に接続される。4つの直立した反射面148は、回路基板120の主面Sに対して概ね直角であり、4つの直立した反射面148は、開口部140の上縁の矩形を規定する。開口部140の上縁の矩形の開口幅W1は、傾斜した反射面144によって規定される最大の開口幅よりも大きく、開口部140の回路基板120の主面Sからの高さH2は、傾斜した反射面144の高さH1よりも大きい。
【0027】
このように、本実施例のリフレクタ120の各開口部140の内壁は、傾斜した反射面144と、平坦な反射面146と、直立した反射面148とを含むように構成される。また、
図6に示すように、リフレクタ120の頭頂部には、開口部140の境界に形成された隔壁150が形成される。隔壁150は、幅Dの平坦な表面を有し、隣接する開口部140を分離する。
【0028】
本実施例のリフレクタ120は、輝度低下を抑えながらも光の拡散を細かく制御することを可能にする。開口部140は、下部に四角錘状の傾斜した反射面144を有し、上部に矩形状の直立の反射面148を有することで、傾斜した反射面144が側面発光型のLED50から出射された光の輝度を確保しつつ広がりを制御し、直立の反射面148が光の広がりを制御する。
【0029】
図7(A)は、開口部の傾斜構造を変化させた例を模式的に示し、
図7(B)は、傾斜構造を変化させたときの輝度(縦軸)と広がり角(横軸)との関係を示すグラフである。
図7(A)の左側のLED50Aは、両側の傾斜構造の傾斜角が55度、中央のLED50Bは、左側の傾斜角が55度であり、右側の傾斜角が47度、右側のLED50Cは、両側の傾斜構造の傾斜角が47度の例を示している。その結果、
図7(B)に示すように、両側の傾斜角が最も大きいLED50Aで光の広がりが最も抑えられ、かつ輝度が最も大きくなり、次いでLED50B、LED50Cの順に広がりが抑えられていることがわかる。
【0030】
開口部の傾斜構造によって広がりおよび輝度を制御することが可能であるが、実際には、傾斜構造は、底部の開口幅W2(貫通孔の幅)、上縁の開口幅W1、高さH2の構造上の制約によって設計可能な傾斜角が制限されるため、傾斜構造の傾斜角だけで放射分布の細かい制御を行うことは難しい。
【0031】
図8(A)は、矩形状の開口部の開口幅を変化させた例を模式的に示し、
図8(B)は、開口幅を変化させたときの輝度(縦軸)と広がり角(横軸)との関係を示すグラフである。
図8(A)に示すように、開口幅W1=3mm、開口幅W1=4mm、開口幅W1=5mm、開口幅W1=7mmを変化させた結果、
図8(B)に示すように、開口幅が最も小さいとき、広がり角が最も抑制され、かつ輝度が最も高くなり、開口幅が大きくなるにつれ、広がりが大きくなり、かつ輝度が大きく低下することがわかる。このように、矩形状の開口部の開口幅よって広がりを制御することは可能であるが、輝度の変化が大きくなり、実際には、開口幅だけで放射分布の細かい制御を行うことは難しい。
【0032】
本実施例のリフレクタは、傾斜した反射面144と直立した反射面148との2段構成とすることで、開口部の傾斜角と開口幅をそれぞれ選択ないし調整することができ、構造上の制約による設計上の制約を受けつつ、放射分布の細かい制御を行うことができる。
【0033】
なお、
図5(B)に示す比較例のリフレクタ130Aは、下部に直立した反射面、上部に傾斜した反射面を有するものであり、これは、本実施例のリフレクタ130と反射構造を反転させたものである。このような反射構造を逆転させたリフレクタ130Aは、直立した反射面が側面発光型のLED50に対向するため輝度が上がらない。それ故、リフレクタ130Aは、本実施例のバックライト構造に適用されるものではないことに留意すべきである。
【0034】
次に、本実施例のバックライト構造の詳細について説明する。
図9(A)は、本実施例のバックライト構造の概略断面を示し、
図9(B)は、下部の傾斜した反射面144による傾斜構造を変えないで、上部の直立した反射面148による矩形状の開口幅W1を変えたときのシミュレーション結果を示すグラフである。また、比較例として、開口部が単一の傾斜構造のリフレクタの結果を破線で示している。例えば、H1=2mm、H2=4mm、W2=3mm、W3=1.5mm、反射面144の傾斜角は約50度であり、開口幅W1を、7.5mm~9.5mmの範囲で変化させた。また、隣接するLED50の間隔は、10.755mmである。
【0035】
図示するように、広がり角が比較的大きい領域R1では、開口幅W1の変化による広がり角と輝度に大きな変化は見られない。つまり、領域R1は、開口幅W1による影響は少なく、傾斜した反射面144の影響が支配的であり、傾斜した反射面144によって輝度を確保しかつ広がり角が制御されていることがわかる。一方、広がり角が比較的小さい領域R2では、開口幅W1が大きくなるにつれ、広がりが大きくなり、かつ輝度が低下していることがわかる。
【0036】
このように実施例のリフレクタ100では、開口部140が傾斜した反射面144と直立した反射面148とを含むハイブリッドの反射構造を有するので、傾斜した反射面144の傾斜角によって制御された輝度を確保しつつ広い角度の放射を制御し、直立した反射面148の開口幅W1によって狭い角度の広がりを制御することができる。
【0037】
図10は、本実施例のリフレクタ120と、従来構造のリフレクタとの放射特性の比較結果を示すグラフである。横軸は放射角度、縦軸は輝度である。開口部の傾斜構造の場合、広がり角が絞られ、輝度が高くなり、開口部が矩形形状の場合、広がり角が大きくなり、輝度が低下する。これに対し、本実施例のハイブリッド構造(傾斜構造と矩形形状の組合せ)は、傾斜構造により輝度を確保しつつ広がり角を抑え、矩形形状を持ちながらも広がりを抑え、かつ輝度低下を抑えていることがわかる。
【0038】
次に、リフレクタ120の頭頂部に形成される、開口部の境界に形成された隔壁150について説明する。
図6に示すように、開口部140は、幅Dの平坦な表面を有する隔壁150によって隣接する開口部から分離される。隔壁150は、隣接する開口部内のLED50の境界に当たる部分であり、隣接するLED50の発光が重なる領域でもあり、重なりが大きいと輝度ムラを生じさせ、重なりが小さいと格子状のムラの原因となる。本実施例では、隔壁150の幅Dを調整することで、そのような輝度ムラの発生を抑制することが可能である。
【0039】
本実施例のリフレクタの隔壁150の幅Dを変えたときの放射光の広がり方を光学シミュレーションで確認した。その結果、幅Dが小さくなるほど照度分布の広がりが大きくなっていることが分かった。このことは、リフレクタの上半分の直立した矩形構造の反射面が放射光の広がり幅に対して支配的であることを示しており、幅Dの設定により容易に広がりを制御可能であることを意味する。例えば、特許文献1の山形形状の反射部は、このような幅Dで規定する平坦な表面の隔壁150を備えるものでない。また、特許文献1では、側面に放射された光の一部がリフレクタに照射することなく直接光学フィルムに照射されており、リフレクタ構造の単純な変更だけでは広がりの制御が容易でないことが分かる。広がりを制御することによって光漏れ(halo)と輝度ムラの最適化を容易に実施可能である点は本実施例のリフレクタ構造の特徴でもある。
【0040】
このように本実施例によれば、リフレクタ120の各開口部の内壁を、傾斜した反射面と直立した反射面とを含むハイブリッドの反射構造にすることにより、既存のリフレクタの反射構造(傾斜構造、矩形構造の単体)に対して輝度低下を抑え、側面発光型LEDからの放射分布を細かく制御することが可能である。これにより、側面発光型LEDのピッチ変更やLCDサイズの変更があっても設計対応が容易となる。
【0041】
上記実施例では、リフレクタ120の開口部140が直線状の反射面144を有するようにしたが、反射面144は、例えば、お椀型または凹面鏡のように湾曲した形状であってもよい。また、上記実施例では、矩形状の開口部内に傾斜した反射面144による四角錘状の凹部を形成したが、これに限らず、矩形状の開口部内に傾斜した反射面144による円錐状の凹部を形成するようにしてもよい。この場合、開口部140の中央には、円形状の貫通孔が形成される。
【0042】
上記実施例では、透過型液晶パネルに使用されるバックライト構造を例示したが、本発明は、バックライト構造に限定されず、空間を照明する他の照明装置にも適用される。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。