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特開2024-81191伝熱パネルの溶接装置及び伝熱パネルの溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081191
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】伝熱パネルの溶接装置及び伝熱パネルの溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20240611BHJP
   B23K 9/127 20060101ALI20240611BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20240611BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B23K9/04 A
B23K9/127 508Z
B23K9/00 501H
F28F1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194623
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森川 裕介
(72)【発明者】
【氏名】前田 圭佑
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081YH02
4E081YX05
(57)【要約】
【課題】肉盛溶接を行う際に省人化することができる伝熱パネルの溶接装置を提供する。
【解決手段】長手方向D1に伝熱パネルに対して相対的に移動し、伝熱パネルとの間でアークを発生させる溶接トーチ7と、アーク中に溶加材を供給する溶加材供給部と、溶接トーチ7の長手方向D1における相対移動方向前側で伝熱パネルの表面形状を計測するレーザセンサ8と、溶接トーチ7と伝熱パネルとの相対移動を制御する制御部6と、を備え、制御部6は、長手方向へ相対移動を行って肉盛溶接を行う工程中に、レーザセンサ8によって得られた表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在する伝熱管の表面の頂部に対する側部に接続された板状のフィンを介して複数の該伝熱管が前記長手方向と直交する方向へ並列に設けられた伝熱パネルの表面に対して、アーク溶接によって肉盛溶接する伝熱パネルの溶接装置であって、
前記長手方向に前記伝熱パネルに対して相対的に移動し、前記伝熱パネルとの間でアークを発生させる溶接トーチと、
前記アーク中に溶加材を供給する溶加材供給部と、
前記溶接トーチの前記長手方向における相対移動方向前側で前記伝熱パネルの表面形状を計測する形状計測装置と、
前記溶接トーチと前記伝熱パネルとの相対移動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記長手方向へ前記相対移動を行って肉盛溶接を行う工程中に、前記形状計測装置によって得られた前記表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、該修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行う伝熱パネルの溶接装置。
【請求項2】
前記形状計測装置は、前記溶接トーチの前記長手方向における相対移動方向前側に取り付けられたレーザセンサを備えている請求項1に記載の伝熱パネルの溶接装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記形状計測装置によって得られた前記表面形状のうち予め定められた特定の検出点に基づいて前記修正溶接目標位置を演算し、
前記検出点の位置は、肉盛溶接の工程に応じて選定される請求項1に記載の伝熱パネルの溶接装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記フィンの表面に肉盛溶接を行うフィン肉盛溶接工程、前記伝熱管の頂部を除く側表面に肉盛溶接を行う側表面肉盛溶接工程、及び、前記伝熱管の頂部に肉盛溶接を行う頂部肉盛溶接工程に応じて、前記検出点の位置を変更する請求項3に記載の伝熱パネルの溶接装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記フィン肉盛溶接工程において、前記伝熱管と前記フィンとを接続する隅肉溶接部と前記伝熱管の表面との交差位置を第1の交差位置とし、かつ、前記フィンを挟んで該第1の前記検出点に向かい合う他の前記隅肉溶接部と他の前記伝熱管の表面との他の交差位置を第2の交差位置とし、前記第1の交差位置と前記第2の交差位置との間に前記検出点を設定する請求項4に記載の伝熱パネルの溶接装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記側表面肉盛溶接工程において、前記伝熱管の表面と直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部との交差位置を前記検出点とする請求項4に記載の伝熱パネルの溶接装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記頂部肉盛溶接工程において、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部の頂点を前記検出点とする請求項4に記載の伝熱パネルの溶接装置。
【請求項8】
長手方向に延在する伝熱管の表面の頂部に対する側部に接続された板状のフィンを介して複数の該伝熱管が前記長手方向と直交する方向へ並列に設けられた伝熱パネルの表面に対して、アーク溶接によって肉盛溶接する伝熱パネルの溶接方法であって、
前記長手方向に前記伝熱パネルに対して相対的に移動し、前記伝熱パネルとの間でアークを発生させる溶接トーチと、
前記アーク中に溶加材を供給する溶加材供給部と、
前記溶接トーチの前記長手方向における相対移動方向前側で前記伝熱パネルの表面形状を計測する形状計測装置と、
を用い、
前記長手方向へ相対移動を行って肉盛溶接を行う工程中に、前記形状計測装置によって得られた前記表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、該修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行う伝熱パネルの溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱パネルの溶接装置及び伝熱パネルの溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラに用いられる火炉壁などには、内部に水や蒸気が流通する長尺の伝熱管とフィンとが交互に溶接で接続された伝熱パネルが用いられる。この伝熱パネルの表面には、燃料燃焼時に発生する燃焼ガスに含まれる硫化物による腐食への対策として、インコネル(登録商標)等の固溶強化型ニッケル基合金を含む耐腐食材料や高クロム含有合金を含む耐腐食材料など肉盛溶接されているものがある(特許文献1)。上記のような伝熱パネルは形状が複雑であり、製作時の溶接による変形によって設計通りの形状となっていない場合がある。特許文献2には、レーザ変位計を用いて伝熱パネルの形状を計測する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-214071号公報
【特許文献2】特開2016-151533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2は、肉盛溶接を行う前の伝熱パネルの形状を計測するものであり、肉盛溶接時の熱変形について何ら考慮されていない。肉盛溶接時の熱変形に対応するには、例えば、肉盛溶接を行っている最中に作業者が目視で熱変形による変位を把握し、溶接狙い位置(溶接目標位置)を修正する必要がある。しかし、作業者の作業環境や人工費を考えると、省人化することが好ましい。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、伝熱パネルに肉盛溶接を行う際に省人化することができる伝熱パネルの溶接装置及び伝熱パネルの溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る伝熱パネル(10)の溶接装置(1)は、長手方向(D1)に延在する伝熱管(10a)の表面の頂部に対する側部に接続された板状のフィン(10b)を介して複数の該伝熱管(10a)が前記長手方向(D1)と直交する方向へ並列に設けられた伝熱パネル(10)の表面に対して、アーク溶接によって肉盛溶接する伝熱パネル(10)の溶接装置であって、前記長手方向(D1)に前記伝熱パネル(10)に対して相対的に移動し、前記伝熱パネル(10)との間でアークを発生させる溶接トーチ(7)と、前記アーク中に溶加材(7a)を供給する溶加材供給部と、前記溶接トーチ(7)の前記長手方向(D1)における相対移動方向前側で前記伝熱パネル(10)の表面形状を計測する形状計測装置(8)と、前記溶接トーチ(7)と前記伝熱パネル(10)との相対移動を制御する制御部(6)と、を備え、前記制御部(6)は、前記長手方向(D1)へ前記相対移動を行って肉盛溶接を行う工程中に、前記形状計測装置(8)によって得られた前記表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、該修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行う。
【0007】
本開示の一態様に係る伝熱パネル(10)の溶接方法は、長手方向(D1)に延在する伝熱管(10a)の表面の頂部に対する側部に接続された板状のフィン(10b)を介して複数の該伝熱管(10a)が前記長手方向(D1)と直交する方向へ並列に設けられた伝熱パネル(10)の表面に対して、アーク溶接によって肉盛溶接する伝熱パネル(10)の溶接方法であって、前記長手方向(D1)に前記伝熱パネル(10)に対して相対的に移動し、前記伝熱パネル(10)との間でアークを発生させる溶接トーチ(7)と、前記アーク中に溶加材(7a)を供給する溶加材供給部と、前記溶接トーチ(7)の前記長手方向(D1)における相対移動方向前側で前記伝熱パネル(10)の表面形状を計測する形状計測装置(8)と、を用い、前記長手方向(D1)へ前記相対移動を行って肉盛溶接を行う工程中に、前記形状計測装置(8)によって得られた前記表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、該修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行う。
【発明の効果】
【0008】
伝熱パネルに肉盛溶接を行う際に省人化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る伝熱パネルの溶接装置を示した斜視図である。
図2】溶接トーチ周りを示した側面図である。
図3】伝熱パネルを示した斜視図である。
図4】伝熱パネル上に形成された肉盛溶接部の一部を示した斜視図である。
図5】伝熱パネル上に形成された肉盛溶接部の一部を上方から見た斜視図である。
図6】伝熱パネル上に肉盛溶接部が形成された横断面図である。
図7】肉盛溶接時にレーザセンサのレーザ光が照射された状態を示した横断面図である。
図8】レーザセンサの計測範囲を示した説明図である。
図9】フィン肉盛溶接工程前の伝熱パネルの要部を示した横断面図である。
図10】フィン肉盛溶接工程を終えた状態の伝熱パネルを示した横断面図である。
図11】側表面肉盛溶接工程前の伝熱パネルの要部を示した横断面図である。
図12】側表面肉盛溶接工程を終えた状態の伝熱パネルを示した横断面図である。
図13】頂部肉盛溶接工程前の伝熱パネルの状態を示した横断面図である。
図14】頂部肉盛溶接工程を終えた状態の伝熱パネルを示した横断面図である。
図15】頂部肉盛溶接工程前の伝熱パネルの要部を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
以下の説明で、上方や上面などの上と下は鉛直方向での上や下を示すものとする。
【0011】
図1には、本実施形態に係る伝熱パネルの溶接装置1が示されている。溶接装置1は、平行に並べられた2本のレール2を備えている。レール2間には、作業空間が形成されており、伝熱パネルが上面に設置される架台3が水平に設けられている。架台3の上方を跨ぐように、門型走行装置としてガントリ5が設けられている。ガントリ5の両側に設けられた各脚部5aは、対応する各レール2上を図示しないボールねじやラック&ピニオンなどの移動装置により走行する。これにより、ガントリ5が進行方向である長手方向D1に移動できるようになっている。脚部5aの走行は、制御部6による指令によって制御される。
【0012】
制御部6は、図示のようにガントリ5に設けられていても良いし、ガントリ5とは別の位置に設置しても良い。制御部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0013】
ガントリ5の幅方向すなわち長手方向D1に直交する方向にわたって設けられた梁部5bには、複数の溶接トーチ7が設けられている。溶接トーチ7は、図1では4つとされているが、2つや3つであっても良く、また、5つ以上であっても良い。図示しないが、各溶接トーチ7は、梁部5bの延在方向(すなわちガントリ5の幅方向)に沿ってアクチュエータによって変位可能とされている。各溶接トーチ7の位置と移動速度は、制御部6によって制御される。また、各溶接トーチ7への給電量や溶接ワイヤの送給速度等は、制御部6によって制御される。
【0014】
各溶接トーチ7によって、アーク溶接が行われる。アーク溶接としては、例えば、MIG(Metal Active Gas)溶接やTIG(Tungsten Inert Gas)溶接が用いられる。
図2には、MAG溶接を採用した場合の溶接トーチ7の要部が示されている。同図に示すように、溶接トーチ7の中心軸線上にワイヤ電極(溶加材)7aが設けられている。ワイヤ電極7aとなるワイヤ金属は、図示しない溶加材供給部から制御部6の指令によって供給される。ワイヤ電極7aには、制御部6の指令によって給電される。これにより、ワイヤ電極7aの先端と伝熱パネル10との間にアークACが形成される。アークAC内でワイヤ電極7aが溶けて伝熱パネル10上に滴下して溶接ビードWBが形成される。ワイヤ電極7aのワイヤ金属が溶けて滴下される位置が肉盛溶接目標位置(肉盛溶接狙い位置)となる。溶接ビードWBの厚さtは、所定範囲内となるように管理される。例えば、溶接ビードWBの厚さtは、伝熱パネル10の耐腐食に必要な厚さである1mm以上5mm以下とされる。
【0015】
溶接トーチ7の長手方向D1における移動方向の前方には、レーザセンサ(形状計測装置)8が設けられている。レーザセンサ8は、溶接トーチ7と共に固定されており、溶接トーチ7と同期して移動する。レーザセンサ8は、長手方向D1に直交する幅方向に広がるシート状のレーザ光LSを出射する。レーザセンサ8は、レーザ光LSの反射光を得ることによって伝熱パネル10の外表面の形状を計測する。レーザセンサ8は、制御部6に対して計測データを送信するとともに、制御部6との間で各種データを送受信する。
【0016】
制御部6は、PMC(Pulse Multi Control)機能を備えていても良い。PMCを利用することで、使用するワイヤ金属の滴下速度(溶滴速度)を制御することができる。例えば、パルス(電流変化)が1回発生すると溶滴が1回発生し、パルス(電流変化)が2回発生すると溶滴も2回発生する。つまり、パルス(電流変化)を増加させると溶滴回数も増加することから、溶滴速度が向上する。溶滴速度が向上すると母材(伝熱パネル10)上における溶滴の間隔が短くなるため、溶接品質を維持したまま、溶接トーチ7の移動速度(溶接速度)を向上させることができる。
【0017】
本実施形態では、肉盛溶接材料すなわちワイヤ電極7aの材料として、固溶強化型ニッケル基合金や高クロム含有合金やクロム―ニッケル含有合金などが適用されるが、以下の記載はより高価な材料として、例えばインコネル(登録商標)とされた固溶強化型ニッケル基合金を含む材料としたものを用いて説明をする。
【0018】
図3には、伝熱パネル10が示されている。伝熱パネル10は、長手方向D1に延在する複数の伝熱管10aを備えている。各伝熱管10aは所定間隔をおいて長手方向D1に直交する方向へ並列状態で配列されており、各伝熱管10aの間には板状のフィン10bが接続されている。フィン10bは、伝熱管10aの表面の頂部(水平方向に設置した伝熱管10aの横断面で最も高い位置)に対する側部(水平方向に設置した伝熱管10aの横断面で水平方向へ張り出した位置)に対して隅肉溶接によって固定されている。これにより、伝熱管10aの横断面が例えば円形とされている場合には、各フィン10bは、伝熱管10aの横断面における高さ中央に位置するように接続されている。
【0019】
図3において、各伝熱管10aの端部には、冷却空気(冷却媒体)を各伝熱管10aの内部へ供給するための冷却配管14が接続されている。各冷却配管14には、図示しないファンから供給される冷却空気が導かれる。冷却空気は、溶接トーチ7による肉盛溶接時に供給される。なお、冷却配管14は、全ての肉盛溶接による冷却が終了すると伝熱管10aから取り外される。
【0020】
制御部6は、各溶接トーチ7及び各レーザセンサ8を伝熱パネル10に対して自動送りする。自動送りする速度は一定とされることが好ましい。ただし、肉盛溶接の工程に応じて自動送り速度を変化させても良い。
【0021】
図4及び図5には、伝熱パネル10の表面上に形成された肉盛溶接部20が示されている。肉盛溶接部20は、複数の溶接ビードWBが積層された状態で形成されている。各溶接ビードWBは、伝熱管10aが延在する長手方向D1に沿って設けられている。
【0022】
各伝熱管10aとフィン10bとは、長手方向D1に沿って設けられた隅肉溶接部22によって固定されている。隅肉溶接部22の側方のフィン10bの表面上には、第1溶接ビードWB1が形成されている。第1溶接ビードWB1は、隅肉溶接部22に側部の一部分が重なるように長手方向D1に沿って設けられている。第1溶接ビードWB1のフィン10bからの高さ(より具体的には最大高さ)は、隅肉溶接部22のフィン10bからの高さにつながるような高さとされている。第1溶接ビードWB1の高さは、隅肉溶接部22の高さと同等まで厚くされてもよい。
【0023】
第1溶接ビードWB1の側方(図5において第1溶接ビードWB1の右側)のフィン10bの表面上には、第2溶接ビードWB2が形成されている。第2溶接ビードWB2は、第1溶接ビードWB1に側部の一部分(例えば、溶接ビードWBの幅の約半分)が重なるように長手方向D1に沿って設けられている。また、第2溶接ビードWB2の他方の側部は、他方の隅肉溶接部22に一部分が重なるように設けられている。図5及び図6では、第1溶接ビードWB1が重ねられる隅肉溶接部22と第2溶接ビードWB2が重ねられる隅肉溶接部22は、同一のフィン10bの表面に形成され、かつ対向する伝熱管10aのそれぞれを接続する別個の隅肉溶接部22である。
【0024】
隅肉溶接部22及び第1溶接ビードWB1(又は第2溶接ビードWB2)の表面上の一部には、第3溶接ビードWB3が形成されている。第3溶接ビードWB3は、隅肉溶接部22及び第1溶接ビードWB1(又は第2溶接ビードWB2)に跨がるように、かつ伝熱管10aの側部の表面の一部を覆うように設けられている。
【0025】
第4溶接ビードWB4は、第3溶接ビードWB3の表面上の一部を覆うように、かつ伝熱管10aの側部の表面の一部を覆うように設けられている。
【0026】
第5溶接ビードWB5は、第4溶接ビードWB4の表面上の一部を覆うように、かつ伝熱管10aの側部の表面の一部を覆うように設けられている。
【0027】
第6溶接ビードWB6は、第5溶接ビードWB5表面上の一部を覆うように、かつ伝熱管10aの側部の表面の一部を覆うように設けられている。
【0028】
第7溶接ビードWB7は、第6溶接ビードWB6表面上の一部を覆うように、かつ伝熱管10aの頂部の表面を覆うように設けられている。第7溶接ビードWB7は、伝熱管10aの頂部に形成されるため、これにより伝熱管10aの表面すべてを肉盛溶接することで肉盛溶接部20が形成される。
【0029】
図5に示すように、伝熱管10aの頂部に形成された第7溶接ビードWB7を中央に、第6溶接ビードWB6、第5溶接ビードWB5、第4溶接ビードWB4、第3溶接ビードWB3が、長手方向D1に直交する方向に対称に設けられている。なお、第1溶接ビードWB1(又は第2溶接ビードWB2)と第7溶接ビードWB7との間の溶接ビードの数は、伝熱管10aの表面を隙間なく覆うことができれば、本実施形態のように4つ(第3~第6溶接ビード)に限定されるものではなく、1以上3以下であっても、5以上であっても良い。溶接ビードWBの幅の半分程度が重なるように、各溶接ビードWBが上下方向に積層されることが好ましい。
【0030】
なお、図6に示すように、第2溶接ビードWB2を省略し、第1溶接ビードWB1のみでフィン10b及び両側の隅肉溶接部22を覆うようにしても良い。以下では、図6に示した溶接ビードWB1,WB3,WB4,WB5,WB6,WB7を例として説明する。
【0031】
次に、上述した溶接装置1を用いて上述した伝熱パネル10上に肉盛溶接する工程について説明する。
伝熱パネル10は、肉盛溶接を行う前に、隅肉溶接によって複数の伝熱管10aと複数のフィン10bとが接続されている。これにより、隅肉溶接部22(図4参照)が形成される。この状態すなわち肉盛溶接前の伝熱パネル10に対して、設定溶接目標位置が設定され、制御部6の記憶部に格納される。伝熱パネル10は、図1に示した溶接装置1の架台3上に水平に設置される。
【0032】
そして、制御部6の指令によって、ガントリ5を長手方向D1に走行させつつ溶接トーチ7で肉盛溶接を行う。肉盛溶接は、長手方向D1に沿って第1溶接ビードWB1から第7溶接ビードWB7まで順に行う。すなわち、伝熱パネル10のフィン10b側の表面から上方の伝熱管10a側の表面に向かって各溶接ビードWBが積層されるように肉盛溶接が行われる。肉盛溶接は、複数の溶接トーチ7を用いて並列的に行われる。肉盛溶接時には、図3に示したように、冷却配管14から伝熱管10aの内部へ冷却空気を供給して伝熱パネル10の冷却を行う。
【0033】
図7に示されているように、肉盛溶接を行う場合は、レーザセンサ8によって溶接トーチ7による肉盛溶接が行われる直前の伝熱パネル10の形状が計測される。
制御部6には、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置が記憶部に格納されている。設定溶接目標位置は、肉盛溶接を行う前の伝熱パネル10の形状に基づいて設定される。このように、設定溶接目標位置は、肉盛溶接によって熱変形を受けていないことを前提としているため、実際に肉盛溶接を行っている工程中に伝熱パネル10が熱変形を生じると、設定溶接目標位置は所望の溶接狙い位置からずれることになる。制御部6は、この設定溶接目標位置とレーザセンサ8によって計測した肉盛溶接直前の伝熱パネルの形状との偏差を演算し、設定溶接目標位置を修正して修正溶接目標位置を算出する。制御部6は、溶接トーチ7のワイヤ電極7aの位置が修正溶接目標位置を通過するように、溶接トーチ7を駆動するアクチュエータを制御して適正な溶接位置で肉盛溶接を行う。
【0034】
図8には、肉盛溶接時に行われる計測例が示されている。図8の左側には、レーザセンサ8によって計測された検出画面が示されている。検出画面には、伝熱パネル10の表面形状が示されており、伝熱管10aの一部の形状や肉盛溶接による溶接ビードWBの形状が確認できる。レーザセンサ8の検出画面は、肉盛溶接を行う直前の伝熱パネル10の形状に相当し、現在までの肉盛溶接による熱変形を反映した形状となっている。
【0035】
図8において破線で囲った範囲がレーザセンサ8による検出範囲SAである。肉盛溶接工程に応じて検出範囲SAを視野範囲よりも限定することによって、検出点SPの検出精度を上げることができる。検出点SPは、肉盛溶接工程に応じて特定の位置に予め指定されており、修正肉盛溶接目標位置を指定する際に基準となる位置である。
図8の右側には、伝熱パネル10の横断面に対する検出範囲SAと検出点SPが示されている。同図では、第4溶接ビードWB4と伝熱管10aとの交差位置が検出点SPとされている。
【0036】
次に、肉盛溶接の工程に応じた検出点SPの選定について説明する。肉盛溶接の工程(以下のグループ1~3)に応じて、検出点SPの選定が制御部6にプログラムされている。
<グループ1:フィン肉盛溶接工程>
フィン10b上に肉盛溶接を行って第1溶接ビードWB1を形成するフィン肉盛溶接工程では、制御部6は、レーザセンサ8から得られる伝熱パネル10の表面形状から検出点SPを以下のように選定する。
【0037】
図9に示すように、隅肉溶接部22と伝熱管10aの表面との交差位置を第1の交差位置CP1とし、かつ、フィン10bを挟んで第1の交差位置CP1に向かい合う他の隅肉溶接部22と他の伝熱管10aの表面との他の交差位置を第2の交差位置CP2とする。そして、フィン10b上における交差位置CP1,CP2間の中間位置を検出点SPとする。
【0038】
上述のように交差位置CP1,CP2を用いて検出点SPを選定した理由は以下の通りである。
レーザセンサ8によって得られた表面形状から検出点SPを抽出する際には、形状上の変曲点が誤差なく検出しやすい。フィン10b上に肉盛溶接を行う際には、形状上の変曲点としては、隅肉溶接部22とフィン10bとの交差位置WP1、又は、隅肉溶接部22と伝熱管10aの表面との交差位置(すなわちCP1,CP2)が挙げられる。隅肉溶接部22とフィン10bとの交差位置WP1は、隣の隅肉溶接部22とフィン10bとの交差位置との距離W2が近くなるので検出する位置精度が低下するおそれがある。そこで、対向する隅肉溶接部22と伝熱管10aとの交差位置を第1の交差位置CP1及び第2の交差位置CP2として交差位置間の距離W1(>W2)を大きくとって検出する位置精度を向上させることとした。
なお、検出点SPとしては、第1の交差位置CP1と第2の交差位置CP2との中間位置を用いることとしたが、本開示はこれに限定されるものではなく、交差位置CP1,CP2間の内分点を用いても良い。
上述のように検出点SPを得て、設計肉盛溶接目標位置を修正した後に修正肉盛溶接目標位置を定めて肉盛溶接を行う。これにより、第1溶接ビードWB1を形成することによって、図10に示した形状の伝熱パネル10を得る。
【0039】
<グループ2:側表面肉盛溶接工程>
フィン肉盛溶接の後に、伝熱管10aの頂部を除く側表面に肉盛溶接を行う側表面肉盛溶接工程が行われる。具体的には、図6に示した伝熱パネル10の形状の場合には、第3溶接ビードWB3,第4溶接ビードWB4、第5溶接ビードWB5及び第6溶接ビードWB6が形成される。
【0040】
側表面肉盛溶接工程では、制御部6は、レーザセンサ8から得られる伝熱パネル10の表面形状から検出点SPを以下のように選定する。
図11に示すように、伝熱管10aの表面と直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部(同図では第3溶接ビードWB3)との交差位置を検出点SPとする。
【0041】
伝熱管10aの側表面に肉盛溶接する際には、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部(具体的には、第1溶接ビードWB1又は第3溶接ビードWB3又は第4溶接ビードWB4又は第5溶接ビードWB5)が存在するので、この肉盛溶接部と伝熱管10aの表面との交差位置を検出点SPとすることが好ましい。
溶接目標位置としては、検出点SPとしても良いし、矢印A1で示したように、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部側に所定距離だけシフトした位置を修正溶接目標位置としても良い。
【0042】
図12のように側表面肉盛溶接工程によって第6溶接ビードWB6まで形成した後に、同一の伝熱管10aの反対側の側表面に対して同様に第3溶接ビードWB3から第6溶接ビードWB6まで順次肉盛溶接を行う(図13)。
【0043】
<グループ3:頂部肉盛溶接工程>
図13のように同一の伝熱管10aに対して両側表面の肉盛溶接が終了すると、次に、伝熱管10aの頂部に肉盛溶接を行う頂部肉盛溶接工程が行われる。具体的には、図14に示すように、第7溶接ビードWB7が形成される。
【0044】
頂部肉盛溶接工程では、図15に示すように、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部(同図の場合において第6溶接ビードWB6)の頂点を検出点SPとする。
【0045】
上述のように検出点SPを選定した理由は以下の通りである。
伝熱管10aの頂部に肉盛溶接する際に、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部(第6溶接ビードWB6)と伝熱管10aの表面との交差位置WP2を検出点とすると、同一の伝熱管10aの他の側面に形成された対向する肉盛溶接部(第6溶接ビードWB6)と伝熱管10aの表面との交差位置WP2との距離W3が近くなり検出する位置精度が低下するおそれがある。そこで、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部(第6溶接ビードWB6)の頂点を検出点SPとして用いることが好ましい。また、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部(第6溶接ビードWB6)の頂点は、伝熱管10aの頂点よりも高い位置となりレーザセンサ8に近い位置となるため、レーザセンサ8による検出がしやすいという利点もある。
【0046】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
溶接トーチ7の長手方向D1における移動方向前側にレーザセンサ8を設け、肉盛溶接を行う前の伝熱パネル10の長手方向D1に直交する二次元の表面形状を得ることとした。これにより、肉盛溶接によって熱変形が伝熱パネル10に生じたとしても、熱変形後の形状を肉盛溶接の直前に計測することができる。
そして、計測した表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行うこととした。肉盛溶接によって生じた熱変形に応じて修正溶接目標位置が決定されることになるので、所望の溶接狙い位置からのずれが抑制されて溶接品質を向上させることができる。
また、制御部によって自動肉盛溶接が実現されることになり、人工費の低減が可能となる。
【0047】
レーザセンサ8は、溶接トーチ7の長手方向D1における移動方向前側に取り付けられている。これにより、溶接トーチ7とレーザセンサ8との相対位置を一定とした状態で計測が行われるので、正確な計測を行うことができる。
【0048】
レーザセンサ8によって得られた表面形状のうち予め定められた特定の検出点SPに基づいて修正溶接目標位置を演算することとした。そして、肉盛溶接の工程に応じて、レーザセンサ8によって得られる表面形状が異なるので、肉盛溶接の工程に応じて検出点SPを選定することとした。これにより、肉盛溶接の工程に応じた適切な検出点SPを用いることができ、溶接品質を向上させることができる。
【0049】
フィン肉盛溶接工程と、側表面肉盛溶接工程と、頂部肉盛溶接工程とは、レーザセンサ8によって得られる伝熱パネル10の表面形状が大きく異なるので、それぞれの工程に応じた検出点SPを選定することとした。これにより、検出点SPの誤差を可及的に小さくでき、溶接品質を向上させることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、静止した伝熱パネル10に対して溶接トーチ7及びレーザセンサ8が移動する構成として説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、伝熱パネル10と溶接トーチ7及びレーザセンサ8とが相対移動すれば良く、例えば、静止した溶接トーチ7及びレーザセンサ8に対して伝熱パネル10を移動させる構成としても良し、伝熱パネル10と溶接トーチ7及びレーザセンサ8とをそれぞれ移動方向が交差する方向に移動させる構造としても良い。
【0051】
また、レーザセンサ8で伝熱パネル10の形状を検出して修正溶接目標位置を再設定する間隔(例えば移動距離)は、溶接ビードWBの長手方向D1に対する蛇行が所定範囲内に収まるように設定することが好ましい。例えば、設定間隔が短い場合は、僅かな歪みにも過敏に対応してしまい溶接ビードWBが細かく蛇行するおそれがある。一方で、設定間隔が長い場合は、歪みに対応できず、溶接ビードWBが蛇行し、適切な溶接ができないおそれがある。
【0052】
以上説明した各実施形態に記載の伝熱パネルの溶接装置及び伝熱パネルの溶接方法は、例えば以下のように把握される。
【0053】
本開示の第1態様に係る伝熱パネルの溶接装置(1)は、長手方向(D1)に延在する伝熱管(10a)の表面の頂部に対する側部に接続された板状のフィン(10b)を介して複数の該伝熱管が前記長手方向と直交する方向へ並列に設けられた伝熱パネル(10)の表面に対して、アーク溶接によって肉盛溶接する伝熱パネルの溶接装置であって、前記長手方向に前記伝熱パネルに対して相対的に移動し、前記伝熱パネルとの間でアークを発生させる溶接トーチ(7)と、前記アーク中に溶加材(7a)を供給する溶加材供給部と、前記溶接トーチの前記長手方向における相対移動方向前側で前記伝熱パネルの表面形状を計測する形状計測装置(8)と、前記溶接トーチと前記伝熱パネルとの相対移動を制御する制御部(6)と、を備え、前記制御部は、前記長手方向へ前記相対移動を行って肉盛溶接を行う工程中に、前記形状計測装置によって得られた前記表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、該修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行う。
【0054】
溶接トーチの長手方向における相対移動方向前側に形状計測装置を設け、肉盛溶接を行う前の伝熱パネルの表面形状を得ることとした。これにより、肉盛溶接によって熱変形が伝熱パネルに生じたとしても、熱変形後の形状を肉盛溶接の直前に計測することができる。
そして、計測した表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行うこととした。肉盛溶接によって生じた熱変形に応じて修正溶接目標位置が決定されることになるので、溶接品質を向上させることができる。
また、制御部によって自動肉盛溶接が実現されることになり、人工費の低減が可能となる。
【0055】
本開示の第2態様に係る伝熱パネルの溶接装置は、前記第1態様において、前記形状計測装置は、前記溶接トーチの前記長手方向における相対移動方向前側に取り付けられたレーザセンサ(8)を備えている。
【0056】
形状計測装置は、溶接トーチの長手方向における相対移動方向前側に取り付けられたレーザセンサを備えている。これにより、溶接トーチとレーザセンサとの相対位置を一定とした状態で計測が行われるので、正確な計測を行うことができる。レーザセンサとしては、長手方向に直交する方向に広がりを持ったシート状のレーザ光を発振するものが好ましい。これにより、伝熱管に直交する方向で所定幅の範囲を同時に計測できる。
【0057】
本開示の第3態様に係る伝熱パネルの溶接装置は、前記第1態様又は前記第2態様において、前記制御部は、前記形状計測装置によって得られた前記表面形状のうち予め定められた特定の検出点(SP)に基づいて前記修正溶接目標位置を演算し、前記検出点の位置は、肉盛溶接の工程に応じて選定される。
【0058】
形状計測装置によって得られた表面形状のうち予め定められた特定の検出点に基づいて修正溶接目標位置を演算することとした。そして、肉盛溶接の工程に応じて、形状計測装置によって得られる表面形状が異なるので、肉盛溶接の工程に応じて検出点を選定することとした。これにより、肉盛溶接の工程に応じた適切な検出点を用いることができ、溶接品質を向上させることができる。
【0059】
本開示の第4態様に係る伝熱パネルの溶接装置は、前記第3態様において、前記制御部は、前記フィンの表面に肉盛溶接を行うフィン肉盛溶接工程、前記伝熱管の頂部を除く側表面に肉盛溶接を行う側表面肉盛溶接工程、及び、前記伝熱管の頂部に肉盛溶接を行う頂部肉盛溶接工程に応じて、前記検出点の位置を変更する。
【0060】
フィン肉盛溶接工程と、側表面肉盛溶接工程と、頂部肉盛溶接工程とは、形状計測装置によって得られる表面形状が大きく異なるので、それぞれの工程に応じた検出点を選定することとした。
【0061】
本開示の第5態様に係る伝熱パネルの溶接装置は、前記第4態様において、前記制御部は、前記フィン肉盛溶接工程において、前記伝熱管と前記フィンとを接続する隅肉溶接部(22)と前記伝熱管の表面との交差位置を第1の交差位置(CP1)とし、かつ、前記フィンを挟んで該第1の前記検出点に向かい合う他の前記隅肉溶接部と他の前記伝熱管の表面との他の交差位置を第2の交差位置(CP2)とし、前記第1の交差位置と前記第2の交差位置との間に前記検出点を設定する。
【0062】
形状計測装置によって得られた表面形状から検出点を抽出する際には、形状上の変曲点が誤差なく検出しやすい。フィン上に肉盛溶接を行う際には、形状上の変曲点としては、隅肉溶接部とフィンとの交差位置、又は、隅肉溶接部と伝熱管の表面との交差位置が挙げられる。隅肉溶接部とフィンとの交差位置は、隣の隅肉溶接部とフィンとの交差位置との距離が近くなるので誤検出や位置精度が低下するおそれがある。そこで、対向する隅肉溶接部と伝熱管との交差位置を第1の交差位置及び第2の交差位置とし、交差位置間の距離を大きくとり位置精度を向上させることとした。検出点としては、第1の交差位置と第2の交差位置との間に検出点を設定する。例えば、交差位置間の中間位置を検出点とすることが好ましい。
【0063】
本開示の第6態様に係る伝熱パネルの溶接装置は、前記第4態様において、前記制御部は、前記側表面肉盛溶接工程において、前記伝熱管の表面と直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部との交差位置を前記検出点とする。
【0064】
伝熱管の側表面に肉盛溶接する際には、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部が存在するので、この肉盛溶接部と伝熱管の表面との交差位置を検出点とすることが好ましい。
【0065】
本開示の第7態様に係る伝熱パネルの溶接装置は、前記第4態様において、前記制御部は、前記頂部肉盛溶接工程において、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部の頂点を前記検出点とする。
【0066】
伝熱管の頂部に肉盛溶接する際に、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部と伝熱管の表面との交差位置を検出点とすると、同一の伝熱管の他の側面に形成された対向する肉盛溶接部と伝熱管の表面との交差位置と近くなり誤検出のおそれがある。そこで、直近に肉盛溶接を行った肉盛溶接部の頂点を検出点として用いることとした。
【0067】
本開示の伝熱パネルの溶接方法は、長手方向に延在する伝熱管の表面の頂部に対する側部に接続された板状のフィンを介して複数の該伝熱管が前記長手方向と直交する方向へ並列に設けられた伝熱パネルの表面に対して、アーク溶接によって肉盛溶接する伝熱パネルの溶接方法であって、前記長手方向に前記伝熱パネルに対して相対的に移動し、前記伝熱パネルとの間でアークを発生させる溶接トーチと、前記アーク中に溶加材を供給する溶加材供給部と、前記溶接トーチの前記長手方向における相対移動方向前側で前記伝熱パネルの表面形状を計測する形状計測装置と、を用い、前記長手方向へ前記相対移動を行って肉盛溶接を行う工程中に、前記形状計測装置によって得られた前記表面形状に基づいて、肉盛溶接前に予め設定された設定溶接目標位置を修正した修正溶接目標位置を演算し、該修正溶接目標位置を用いて肉盛溶接を行う。
【符号の説明】
【0068】
1 溶接装置
2 レール
3 架台
5 ガントリ
5a 脚部
5b 梁部
6 制御部
7 溶接トーチ
7a ワイヤ電極(溶加材)
8 レーザセンサ(形状計測装置)
10 伝熱パネル
10a 伝熱管
10b フィン
14 冷却配管(冷却媒体供給部)
20 肉盛溶接部
22 隅肉溶接部
AC アーク
D1 長手方向
SA 検出範囲
SP 検出点
CP1 第1の交差位置
CP2 第2の交差位置
WB 溶接ビード
WB1 第1溶接ビード
WB2 第2溶接ビード
WB3 第3溶接ビード
WB4 第4溶接ビード
WB5 第5溶接ビード
WB6 第6溶接ビード
WB7 第7溶接ビード
t 溶接ビードの厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15