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特開2024-81195ゴルフボール用ゴム組成物及びゴルフボール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081195
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ゴルフボール用ゴム組成物及びゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20240611BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240611BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240611BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20240611BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A63B37/00 512
C08L21/00
C08K5/09
C08K5/42
C08K5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194635
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 潤
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AA021
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BB151
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EK007
4J002EK037
4J002EK047
4J002EV258
4J002EW048
4J002FD147
4J002FD156
4J002FD318
4J002GC01
(57)【要約】
【課題】ゴム成形物の金型への接着を低減し得ると共に、得られたゴム成形物の反発性等の諸性能を維持することができるゴルフボール用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記(a)~(d)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)架橋開始剤、及び
(d)アニオン界面活性剤
を含有し、上記(d)成分の配合量が上記(a)成分100質量部に対して0.1~12質量部であることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物、及びこれを用いたゴルフボールを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(d)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)架橋開始剤、及び
(d)アニオン界面活性剤
を含有し、上記(d)成分の配合量が上記(a)成分100質量部に対して0.1~12質量部であることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項2】
上記(d)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して0.3~6質量部である請求項1記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項3】
上記(d)成分が、スルホン酸型アニオン界面活性剤である請求項1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項4】
上記スルホン酸型アニオン界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩である請求項3記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項5】
上記ゴム組成物の加熱成形物がゴルフボール用コアである請求項1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
【請求項6】
コアと該コアを被覆する単層又は複数層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記コアが、請求項1記載のゴム組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールに関し、特に、1層以上コア及び1層以上のカバーからなるゴルフボールのコア材料として好適に用いられるゴルフボール用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボール用のゴム成形物は、反発性と打撃時の耐久性とを兼ね備えるために、一般的には、ポリブタジエンゴムを主成分としたゴム組成物を金型内に投入して加熱することにより所望の成形物を得ている。上記ゴム組成物は、より具体的には、ポリブタジエンゴムを主成分とする基材ゴムのほか、アクリル酸やメタクリル酸などの不飽和カルボン酸又はその金属塩、有機過酸化物等のラジカル開始剤、更には、アクリル酸やメタクリル酸などの酸を使用する場合は更に酸化亜鉛等の中和金属源を配合するものである。このようなゴム組成物を加熱成形すると、成形物と金型とが強固に接着することが知られており、このため、ゴルフボールの生産事業者は、金型内にフッ素系樹脂製のコーティングを施したり、金型表面に離型剤を、その都度塗布することで成形物を金型から取り出す工夫を施している。
【0003】
しかしながら、金型表面への離型剤を、その都度塗布する方法では、毎回の離型剤の費用負担が加算されると共に、塗布作業のためのゴルフボールの生産性が全体的に低下する問題がある。また、金型へフッ素系樹脂をコーティングする方法では、離型性を維持するために、フッ素樹脂がコーティングされた金型を定期的に掛け換える必要がある。このための掛け換えの費用だけでなく、掛け換え作業中の予備の金型を準備する費用も発生してしまう。
【0004】
そこで、ゴム組成物に各種の界面活性剤等の離型剤を配合することが検討されるが、この場合、離型剤の配合によりゴム成形物の物性が低下するおそれがある。なお、特許文献1には、アニオン界面活性剤の存在下に、有機溶媒中に酸化亜鉛を分散させながら、該有機溶媒中でアクリル酸および高級脂肪酸を該酸化亜鉛と反応させる微細なアクリル酸亜鉛の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、特許文献1のアクリル酸亜鉛及び高級脂肪酸亜鉛の混合物をコア用ゴム組成物に用いることが記載されている。しかし、これらの文献では、アクリル酸亜鉛のゴム中の分散性や加硫時の反応性、容器への付着や粉砕時の飛散性に対する改善効果は記載されているものの、アニオン界面活性剤によるゴム組成物の加硫時の離形改善効果については全く示唆されておらず、また、離型性を目的とした添加量の適正範囲については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-202747号公報
【特許文献2】特開平11-9720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴム成形物の金型への接着を低減し得ると共に、得られたゴム成形物の反発性等の諸性能を維持することができるゴルフボール用ゴム組成物及びこれを用いたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ゴルフボール用コアのゴム組成物の配合成分を、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(c)架橋開始剤、及び(d)アニオン界面活性剤の上記(a)~(d)成分を必須成分とすることにより、ゴム成形物の物性を大きく変化させることなくゴム成形物の金型への接着を低減し得ることを知見した。即ち、フッ素系樹脂をコーティングした金型を用いても、定期的に金型を掛け換える頻度が低減し、生産効率や費用を削減することができると共に、得られたゴム成形物の反発性等の諸性能を維持することができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記のゴルフボール用ゴム組成物及びゴルフボールを提供する。
1.下記(a)~(d)の各成分、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)架橋開始剤、及び
(d)アニオン界面活性剤
を含有し、上記(d)成分の配合量が上記(a)成分100質量部に対して0.1~12質量部であることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物。
2.上記(d)成分の配合量が、上記(a)成分100質量部に対して0.3~6質量部である上記1記載のゴルフボール用ゴム組成物。
3.上記(d)成分が、スルホン酸型アニオン界面活性剤である上記1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
4.上記スルホン酸型アニオン界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩である上記3記載のゴルフボール用ゴム組成物。
5.上記ゴム組成物の加熱成形物がゴルフボール用コアである上記1又は2記載のゴルフボール用ゴム組成物。
6.コアと該コアを被覆する単層又は複数層のカバーとを有するゴルフボールであって、上記コアが、上記1記載のゴム組成物により形成されることを特徴とするゴルフボール。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴルフボール用ゴム組成物によれば、ゴム成形時にゴム成形物が金型へ接着することを低減することができ、このため、ゴルフボールの生産性が高くなり、また、得られたゴム成形物の反発性等の低下がなく、諸性能を良好に維持することができる。
【0010】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボール用ゴム組成物は、下記(a)~(d)の各成分を含有することを特徴とする。
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤として、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)架橋開始剤、及び
(d)アニオン界面活性剤
【0011】
上記(a)成分の基材ゴムについては、特に制限されるものではないが、特にポリブタジエンを用いることが好適である。
【0012】
上記のポリブタジエンは、そのポリマー鎖中に、シス-1,4-結合を60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有することが好適である。ポリブタジエン分子中の結合に占めるシス-1,4-結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0013】
また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2-ビニル結合の含有量としては、そのポリマー鎖中に、通常2%以下、好ましくは1.7%以下、更に好ましくは1.5%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0014】
上記ポリブタジエンは、(ML1+4(100℃))が、好ましくは20以上、より好ましくは30以上であり、上限としては、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下である。
【0015】
なお、上記のムーニー粘度とは、回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間は4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0016】
上記ポリブタジエンは、希土類元素系触媒やVIII族金属化合物触媒を用いて合成したものを使用することができる。
【0017】
なお、基材ゴム中には、上記ランタン系列希土類元素化合物とは異なる触媒にて合成されたポリブタジエンゴムを配合してもよい。また、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を配合してもよく、これら1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0018】
ゴム全体に占める上記ポリブタジエンの割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、基材ゴムの100質量%、即ち基材ゴムの全てが上記ポリブタジエンであってもよい。
【0019】
次に、(b)成分は共架橋剤であり、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。この不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8個であることが好適であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。上記の不飽和カルボン酸の金属として具体的には、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられ、特に亜鉛が好ましい。従って、共架橋剤としては、アクリル酸亜鉛が最も好ましい。
【0020】
(b)成分の配合量は、上記(a)成分の基材ゴム100質量部に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、上限としては、好ましくは65質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは55質量部以下である。上記配合量が上記範囲より少ないと、軟らかくなり過ぎて反発性が悪いものとなり、上記範囲より多いと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなるとともに、脆く耐久性に劣るものとなる。
【0021】
(b)成分の共架橋剤は、平均粒度3~30μmを有することが好ましく、より好ましくは5~25μm、更に好ましくは8~15μmである。上記共架橋剤の平均粒度が3μm未満では、ゴム組成物中で凝集しやすく、アクリル酸同士の反応性が向上してしまい、基材ゴム同士の反応性が減少してしまうため、ゴルフボールの反発性能を十分に得られないことがある。上記共架橋剤の平均粒度が30μmを超えると、共架橋剤粒子が大きくなり過ぎてしまい、得られるゴルフボールの特性のバラツキが大きくなる。
【0022】
(c)成分は架橋開始剤であり、該架橋開始剤としては、有機過酸化物を使用することが好適であり、特に、1分間半減期温度が110~185℃である有機過酸化物を用いることが好適である。このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。そのほかの市販品としては、「パーヘキサC-40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、または、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。
【0023】
(c)成分の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0024】
次に、(d)成分は、アニオン界面活性剤であり、一般的には、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型の分類に大別されるが、本発明では、スルホン酸型アニオン界面活性剤を用いることが好適である。スルホン酸型アニオン界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホこはく酸及びその金属塩、アルカンスルホン酸及びその金属塩、α-オレフィンスルホン酸及びその金属塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその金属塩、アルキル(分岐鎖)ベンゼンスルホン酸及びその金属塩、ナフタレンスルホン酸金属塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸及びその金属塩、N-メチル-N-アシルタウリン及びその金属塩などが例示される。これらのうち、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその金属塩を用いることが特に好ましい。
【0025】
(d)成分の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上であり、より好ましくは0.5質量以上、さらに好ましくは0.6質量部以上であり、上限値としては、12質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。(d)成分の配合量が多すぎると、ゴム成形物の金型への接着を低減させる効果が大きくなるが、反発性や硬度などのゴム物性が大きく低下してしまう。また、(d)成分の配合量が少なすぎると、ゴム成形物の金型への接着を低減させることができず、生産性低下及びコスト高を招くことになる。
【0026】
上述した(a)~(d)の各成分の他には本発明の効果を妨げない限り、例えば、充填材、老化防止剤及び有機硫黄化合物などの各種添加物を配合することができる。
【0027】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填材の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることができる。また、この配合の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0028】
老化防止剤としては、特に制限はないが、例えば、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール)、4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tertブチルフェノール)、2,2-メチレンビス(4-エチル-6-tertブチルフェノール)などのフェノール系老化防止剤が挙げられ、市販品としてはノクラックNS-6、同NS-30、同NS-5(大内新興化学工業(株)製)等を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0029】
有機硫黄化合物としては、特に制限はないが、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ジフェニルポリスルフィド類、ハロゲン化チオフェノール類、又はそれらの金属塩等を挙げることができる。具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、及び/又はジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0030】
有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、上限として、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下であることが推奨される。有機硫黄化合物の配合量が多すぎると、ゴム組成物の加熱成形物の硬さが軟らかくなりすぎてしまう場合があり、一方、少なすぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
【0031】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形または射出成形し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、約100~200℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させ、製造することができる。
【0032】
また、上述した配合により、加硫硬化後のゴルフボール用ゴム成形物は、表面と中心との硬度差が大きな硬度傾斜を有することができる。上記のゴルフボール用ゴム成形物をゴルフボール用コアとして採用することにより、ゴルフボールの良好なスピン特性を維持しつつ、耐久性を高めることができる。
【0033】
上記コア(加熱成形物)における初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷した時の圧縮硬度(変形量)については、特に制限はないが、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.3mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、上限としては、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.5mm以下、更に好ましくは5.0mm以下であることが推奨される。上記の値よりも大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎるため、反発性も低下することがある。また、上記の値よりも小さすぎると、低スピン効果を得られず、打感が硬くなってしまうことがある。
【0034】
コアの直径としては、特に制限はなく製造するゴルフボールの層構造にも依るが、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上であり、上限として、好ましくは41mm以下、より好ましくは40mm以下である。コアの直径がこの範囲を逸脱すると、ボールの初速が低くなり、あるいは適切なスピン特性を得られない場合がある。
【0035】
コアの反発性(コア初速)については、上記(d)成分のアニオン界面活性剤のゴム組成物を配合しないゴム組成物と比較して、その反発性が大幅に低下しないことが望ましい。具体的には、コアを空気砲弾の手段を用いてスチール板に向けて45m/sで発射させたとき、その跳ね返り速度を計測し、コア初速と跳ね返り速度との比率である反発係数を求める。この反発係数が、上記(d)成分のアニオン界面活性剤のゴム組成物を配合しない組成物の反発係数を基準値(指数表示で1.000)とした場合、この基準の反発係数との差が指数表示で0.002以内、好ましくは0.001以内となるように、上記(d)成分を含むゴム組成物を作製することが望ましい。
【0036】
上記ゴム組成物は、上述したようにゴルフボール用コアとして使用することが好適である。また、本発明のゴルフボールは、コアと、1層または複数層のカバーとを具備する構造を有することが好適である。
【実施例0037】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
〔実施例1~6、比較例1,2〕
下記表1に示すポリブタジエンを主成分とするゴム配合によりゴム組成物を調整した後、直径40.40mmの半球状金型を用いて155℃で20分間加硫を行い、コアを作製する。
【0039】
【表1】
【0040】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR700」
(ENEOS社製、ハイシスポリブタジエンゴム/Nd触媒重合)
・酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛3種」(堺化学社製)
・有機硫黄化合物:ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩、富士フィルム和光純薬工業社製・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・老化防止剤:商品名「ノクラックNS-6」(ヒンダードフェノール系老化防止剤:大内新興化学工業社製)
・水:蒸留水
・有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製、純度100%)
・ドデシルベンゼンスルホン酸Na:富士フィルム和光純薬工業社製
・シリコーンオイル:商品名「KF-96」(信越化学工業社製)
【0041】
上記の各実施例及び各比較例のコアについて、下記の方法により、圧縮変形量(たわみ量)、反発性及び離型性を評価する。その結果を表2に示す。
【0042】
コアの圧縮変形量(たわみ量)
コアについて、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までの対象球体の圧縮変形量(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求める。
【0043】
反発性(反発係数)
コアを空気砲弾によりスチール板に向けて45m/sで発射させたとき、その跳ね返り速度を計測し、該コアの反発係数を求める。反発係数は、コア初速と跳ね返り速度との比率である。比較例1のコアの反発係数を「1.000」としたときの指数表示で表2に記載する。
【0044】
離型性
上記の各例のゴム組成物について、表面をテフロン(登録商標)樹脂でコーティングした直径40.40mmの半球状金型の上下一対を使用して加熱成形を行う。即ち、各例のゴム組成物を評価用ゴムとして円筒形に成形し、その後、上記金型に入れ、155℃20分の条件で加熱成形を行う。加熱成形後に、上記金型を開いて、各例のゴム成形物を手で取り出す。手で取れなくなるまで加熱成形を繰り返し行い、その回数をもって繰り返し離型回数とする。比較例1の繰り返し離型回数を「1.0」としたときの指数表示で表2に記載する。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示すように、ドデシルベンゼンスルホン酸Naを添加した実施例1~6のゴム成形物(コア)は、ドデシルベンゼンスルホン酸Naを添加しない比較例1と比べて、成形物の離型性が向上し、繰返し離型回数が増えていることが分かる。また、実施例1~6のコアの物性(たわみ量及び反発性)についてもほぼ物性を示しており、物性の低下は見られない。
離型剤としてシリコーンオイルを添加した比較例2については、比較例1より離型性が僅かに改善するが、その改善効果は大きいものではない。また、コア物性の変化が大きくなってしまう。