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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081198
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ステント及び送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/90 20130101AFI20240611BHJP
   A61M 29/02 20060101ALI20240611BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20240611BHJP
【FI】
A61F2/90
A61M29/02
A61F2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194642
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕史
(72)【発明者】
【氏名】澤田 賢志
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097DD09
4C097DD10
4C097MM09
4C267AA42
4C267AA44
4C267AA47
4C267AA53
4C267AA54
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB26
4C267CC08
4C267CC09
4C267CC10
4C267GG06
4C267GG08
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
4C267GG32
(57)【要約】
【課題】血管等の生体管腔内に留置した後に回収可能な構成を有し、かつ留置時に血流の阻害や血栓を発生させるリスクを低減すること。
【解決手段】ステント1は、線状構成要素で構成される環状の拡張部10と、先端部は軸方向で隣接する拡張部10の基端と接続し、基端部は拡張部10の基端から基端側に向かって徐々に縮径するように集約して血管Bv等の生体管腔の中心からずれた位置に配置される連結部20と、連結部20の基端部から軸方向に沿って基端側に延在し、ステント1を生体内から回収する回収デバイス200により捕捉される回収部30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔に配置されるステントであって、
線状構成要素で構成される環状の拡張部と、
先端部は軸方向で隣接する前記拡張部の基端と接続し、基端部は前記拡張部の基端から基端側に向かって徐々に縮径するように集約して前記生体管腔の中心からずれた位置に配置される連結部と、
前記連結部の前記基端部から軸方向に沿って基端側に延在し、前記ステントを生体内から回収する回収デバイスにより捕捉される回収部と、
を備える、ステント。
【請求項2】
前記拡張部は、基端側に凸となる少なくとも1以上の第1湾曲部と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第2湾曲部と、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを接続する少なくとも1以上の線状の第1接続部と、で構成される波形状の線状構成要素を環状とした環状構造を有し、
前記連結部は、前記拡張部の前記第1湾曲部と接続する、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記連結部は、軸方向に長い複数の線状部材で構成され、
複数の前記線状部材の先端部は前記拡張部の複数の前記第1湾曲部と個々に接続し、複数の前記線状部材の基端部は、前記生体管腔の管腔壁付近に集約される、請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記拡張部は、前記環状構造を少なくとも先端側に有し、
前記連結部は、基端側に凸となる少なくとも1以上の第3湾曲部と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第4湾曲部と、前記第3湾曲部と前記第4湾曲部とを接続する少なくとも1以上の線状の第2接続部と、を有し、
前記連結部は、先端側から基端側に向かって前記第3湾曲部及び前記第4湾曲部の数が段階的に減少する多段構造を有し、
先端に位置する前記第4湾曲部は、軸方向先端側で隣接する前記拡張部の前記第1湾曲部と接続し、基端に位置する前記第4湾曲部は、軸方向先端側で隣接する前記連結部の前記第3湾曲部と接続し、
前記連結部の基端に位置する前記第3湾曲部は、前記生体管腔の管腔壁付近に配置される、請求項2に記載のステント。
【請求項5】
前記ステントは、前記第1接続部及び前記連結部によって囲まれた第1セルと、前記第1セルとセル面積の異なる第2セルを周面に有する、請求項2~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項6】
前記回収部は、前記連結部の前記基端部と接続して軸方向に延びる延在部と、前記延在部の基端から先端側に向かってU字状に屈曲する係合部と、を備える、請求項1~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項7】
前記係合部は、前記生体管腔の管腔壁から離隔する方向に屈曲する、請求項6に記載のステント。
【請求項8】
前記係合部は、前記生体管腔の管腔壁面に沿って配置される、請求項6に記載のステント。
【請求項9】
前記回収部は、前記回収デバイスと磁気吸着可能に構成される、請求項1~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項10】
前記回収部及び/又は前記拡張部は、X線造影性を有するマーカー部を備える、請求項1~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項11】
前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部の形成数は、少なくとも2つ以上である、請求項2~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項12】
前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部の形成数は、何れも2つ以上20以下である、請求項2~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項13】
前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部の形成数は、何れも4以上8以下である、請求項2~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項14】
内頚動脈の頸動脈洞に配置され、前記拡張部により前記頸動脈洞にある圧受容器に機械的刺激を付与する、請求項1~4の何れか1項に記載のステント。
【請求項15】
請求項1に記載のステントを生体内の留置位置まで送達して留置する送達デバイスであって、
前記送達デバイスは、内腔を有するカテーテルと、前記カテーテルに対して軸方向に相対移動可能であって前記ステントが装着される装着部を有する送達部材と、で構成され、
前記装着部は、前記ステントの前記連結部の外形に合わせて形成された傾斜面を有し前記連結部を支持する支持部と、前記支持部の前記傾斜面から軸方向先端側に延びて前記ステントに挿通される支柱部と、前記支柱部の先端に設けられ、前記ステントの前記拡張部の先端側と接触する押え部と、を有する、送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント及び該ステントを生体内に留置するための送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、血管等の生体管腔内に一定期間留置した後、生体管腔の内壁を損傷せずにカテーテル中に格納して体外へ回収可能とするため、縮拡径自在な円筒状の本体部と、本体部に続いて設けられ縮拡径自在な常態時に拡径してテーパ状となる尾部と、尾部に続いて設けられた線条束と、線条束の後端に続いて設けられた線条束の曲げ又は折り曲げによって形成された係合部とを備え、1本又は複数本の線条を螺旋状に撚り組んで組み紐構造に形成されたステントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-55330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のステントは、血管内に留置された状態においてテーパ状の尾部から延びる係合部は血管の中心軸上に位置するため、血流が阻害され血流障害の発生リスクが高まる可能性がある。また、特許文献1のステントは、血管の中心に係合部が配置されることで血栓が発生し易い。例えばステントを血栓の形成が促進され易い血管の分岐部近傍に留置する場合、血栓の発生リスクを増大し兼ねない。
【0005】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、血管等の生体管腔内に留置した後に回収可能な構成を有し、かつ留置時に血流の阻害や血栓を発生させるリスクを低減できるステント及び該ステントを生体内に留置するための送達デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の構成により達成される。
【0007】
(1)生体管腔に配置されるステントであって、線状構成要素で構成される環状の拡張部と、先端部は軸方向で隣接する前記拡張部の基端と接続し、基端部は前記拡張部の基端から基端側に向かって徐々に縮径するように集約して前記生体管腔の中心からずれた位置に配置される連結部と、前記連結部の前記基端部から軸方向に沿って基端側に延在し、前記ステントを生体内から回収する回収デバイスにより捕捉される回収部と、を備える、ステント。
【0008】
(2)前記拡張部は、基端側に凸となる少なくとも1以上の第1湾曲部と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第2湾曲部と、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とを接続する少なくとも1以上の線状の第1接続部と、で構成される波形状の線状構成要素を環状とした環状構造を有し、前記連結部は、前記拡張部の前記第1湾曲部と接続する、上記(1)に記載のステント。
【0009】
(3)前記連結部は、軸方向に長い複数の線状部材で構成され、複数の前記線状部材の先端部は前記拡張部の複数の前記第1湾曲部と個々に接続し、複数の前記線状部材の基端部は、前記生体管腔の管腔壁付近に集約される、上記(1)又は(2)に記載のステント。
【0010】
(4)前記拡張部は、前記環状構造を少なくとも先端側に有し、前記連結部は、基端側に凸となる少なくとも1以上の第3湾曲部と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第4湾曲部と、前記第3湾曲部と前記第4湾曲部とを接続する少なくとも1以上の線状の第2接続部と、を有し、前記連結部は、先端側から基端側に向かって前記第3湾曲部及び前記第4湾曲部の数が段階的に減少する多段構造を有し、先端に位置する前記第4湾曲部は、軸方向先端側で隣接する前記拡張部の前記第1湾曲部と接続し、基端に位置する前記第4湾曲部は、軸方向先端側で隣接する前記連結部の前記第3湾曲部と接続し、前記連結部の基端に位置する前記第3湾曲部は、前記生体管腔の管腔壁付近に配置される、上記(1)又は(2)に記載のステント。
【0011】
(5)前記ステントは、前記第1接続部及び前記連結部によって囲まれた第1セルと、前記第1セルとセル面積の異なる第2セルを周面に有する、上記(2)~(4)の何れかに記載のステント。
【0012】
(6)前記回収部は、前記連結部の前記基端部と接続して軸方向に延びる延在部と、前記延在部の基端から先端側に向かってU字状に屈曲する係合部と、を備える、上記(1)~(5)の何れかに記載のステント。
【0013】
(7)前記係合部は、前記生体管腔の管腔壁から離隔する方向に屈曲する、上記(6)に記載のステント。
【0014】
(8)前記係合部は、前記生体管腔の管腔壁面に沿って配置される、上記(6)に記載のステント。
【0015】
(9)前記回収部は、前記回収デバイスと磁気吸着可能に構成される、上記(1)~(8)の何れかに記載のステント。
【0016】
(10)前記回収部及び/又は前記拡張部は、X線造影性を有するマーカー部を備える、上記(1)~(9)の何れかに記載のステント。
【0017】
(11)前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部の形成数は、少なくとも2つ以上である、上記(2)又は(5)の何れかに記載のステント。
【0018】
(12)前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部の形成数は、何れも2つ以上20以下である、上記(2)又は(5)の何れかに記載のステント。
【0019】
(13)前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部の形成数は、何れも4以上8以下である、上記(2)又は(5)の何れか1項に記載のステント。
【0020】
(14)内頚動脈の頸動脈洞に配置され、前記拡張部により前記頸動脈洞にある圧受容器に機械的刺激を付与する、上記(1)~(13)の何れかに記載のステント。
【0021】
(15)上記(1)~(14)の何れかのステントを生体内の留置位置まで送達して留置する送達デバイスであって、前記送達デバイスは、内腔を有するカテーテルと、前記カテーテルに対して軸方向に相対移動可能であって前記ステントが装着される装着部を有する送達部材と、で構成され、前記装着部は、前記ステントの前記連結部の外形に合わせて形成された傾斜面を有し前記連結部を支持する支持部と、前記支持部の前記傾斜面から軸方向先端側に延びて前記ステントに挿通される支柱部と、前記支柱部の先端に設けられ、前記ステントの前記拡張部の先端側と接触する押え部と、を有する、送達デバイス。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態のステントによれば、血管等の生体管腔内に留置した後に回収可能な構成を有し、かつ留置時に血流の阻害や血栓を発生させるリスクを低減することができる。
【0023】
また、本発明の一実施形態の送達デバイスは、ステントの外形に合わせて連結部を支持する傾斜面を有するため、ステントを支柱部に挿通した状態で支持部と押え部との間に配置してステントの両端側を保持した状態で留置位置まで脱落せずに送達できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るステントの展開図である。
図2】第1実施形態に係るステントの側面図である。
図3A】血管保持部の第1湾曲部及び第2湾曲部の位置関係を示す概略斜視図である。
図3B】血管保持部を軸方向先端側(正面側)から見たときの第1湾曲部及び第2湾曲部の位置関係を示す図である。
図4A】第1実施形態に係るステントの第1セルを示す図である。
図4B】第1実施形態に係るステントの第2セルを示す図である。
図5】送達デバイスの構成図である。
図6図5に示した送達デバイスでステント留置時の状態を示す構成図である。
図7A】送達デバイスの操作部に形成される摺動孔の形態を示す図である。
図7B】送達デバイスの操作部に形成される摺動孔の他の形態を示す図である。
図7C】送達デバイスの操作部に形成される摺動孔の他の形態を示す図である。
図8A】回収デバイスの形態を示す構成図である。
図8B】回収デバイスの他の形態を示す構成図である。
図8C】回収デバイスの他の形態を示す構成図である。
図9A】第1実施形態に係るステントの留置時の動作を示す図である。
図9B】第1実施形態に係るステントの留置時の動作を示す図である。
図9C】第1実施形態に係るステントの留置時の動作を示す図である。
図9D】第1実施形態に係るステントの留置時の動作を示す図である。
図9E】第1実施形態に係るステントの留置時の動作を示す図である。
図9F】第1実施形態に係るステントの留置時の動作を示す図である。
図10A】第1実施形態に係るステントの変形例を示す展開図である。
図10B】第1実施形態に係るステントの他の変形例を示す展開図である。
図11】第1実施形態に係るステントの他の変形例を示す展開図である。
図12】第2実施形態に係るステントの展開図である。
図13A】第2実施形態に係るステントの第1セルを示す図である。
図13B】第2実施形態に係るステントの第2セルを示す図である。
図14A】第3実施形態に係るステントの展開図である。
図14B】第3実施形態に係るステントの変形例を示す展開図である。
図15】第4実施形態に係るステントの展開図である。
図16】第4実施形態に係るステントの変形例を示す展開図である。
図17】第4実施形態に係るステントの他の変形例を示す展開図である。
図18】第4実施形態に係るステントの他の変形例を示す展開図である。
図19】第5実施形態に係るステントの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0026】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状等について、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0027】
本明細書において、説明の便宜上、以下の方向について定義する。図1において、「長軸方向」は、ステント1の長手方向(図中左右方向)であって、ステント1の中心軸Cに沿う方向とする。「径方向」は、ステント1の中心軸Cに対して離隔又は接近する方向とする。「周方向」は、ステント1の中心軸Cを基準軸とした回転方向とする。なお、ステント1の中心軸Cは、拡張部の中心軸と一致する。ここで、本実施形態においては、拡張部を血管保持部10として説明する。
【0028】
図1において、「先端」は、血管保持部10が設けられ血管Bvへ挿入する側(図中右側)とし、先端と反対側(図中左側の回収部30が配置される側)を「基端」とする。
【0029】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0030】
本実施形態に係るステント1は、血管Bv等の生体管腔内に留置され、狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するため狭窄部位や閉塞部位を拡張して血管Bvの内腔を確保したり、血管Bv等の生体管腔の刺激対象部位(例えば血管Bvの圧受容器)に機械的刺激を付与して迷走神経に作用して所定の疾患を治療するために刺激対象部位を管腔壁(血管壁)内側から拡張して押圧して刺激したりする医療用具である。
【0031】
以下の実施形態において、ステント1は、総頚動脈から分岐した内頚動脈の入り口付近の頸動脈洞に留置され、頸動脈洞にある圧受容器に機械的刺激を付与して心臓血管中枢にインパルスを送り、心臓血管中枢から副交感刺激を介して心拍数を減少させ血圧を効果的に低下させる治療(所謂、圧受容器反射を利用した降圧治療)に使用する器具として説明する。
【0032】
[第1実施形態]
図1図4を参照しながら、第1実施形態のステント1の構成について説明する。
【0033】
図1又は図2に示すように、第1実施形態に係るステント1は、先端側に配置される血管保持部10と、血管保持部10の基端に接続される連結部20と、連結部20の基端に接続される回収部30と、を備える。図1に示すように、ステント1の血管保持部10はP1部分であり、連結部20はP2部分であり、回収部30はP3部分である。ステント1は、線状構成要素により拡張及び収縮可能に形成された中空部材であり、血管Bv内に留置された際に拡張して血管Bvを血管壁内側から押圧して機械的刺激を付与する。
【0034】
ステント1は、後述の送達デバイス100を用いて血管Bv内の所定箇所に留置できる。また、ステント1は、血管Bv内に留置された後、後述の回収デバイス200を用いて生体外に取り除くことができる。
【0035】
〈拡張部〉
本実施形態における拡張部である血管保持部10は、図1図2に示すように、線状構成要素で構成される環状構造を有する。血管保持部10は、少なくとも基端側に環状構造を有する。
【0036】
環状構造は、基端側に凸となる少なくとも1以上の第1湾曲部11と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第2湾曲部12と、第1湾曲部11と第2湾曲部12とを接続する少なくとも1以上の線状の第1接続部13と、で構成される。
【0037】
第1湾曲部11の一方の端部は、周方向で隣り合う一方の第1接続部13の端部と接続し、第1湾曲部11の他方の端部は、周方向で隣り合う他方の第1接続部13の端部と接続する。また、第2湾曲部の一方の端部は、周方向で隣り合う一方の第1接続部13の端部と接続し、第2湾曲部12の他方の端部は、周方向で隣り合う他方の第1接続部13の端部と接続する。環状構造は、周方向に第1湾曲部11、第1接続部13、第2湾曲部12の順で交互に配置した波形状を呈する。
【0038】
血管保持部10は、図3A図3Bに示すように、第1接続部13の両端に配置される第1湾曲部11と第2湾曲部12の中心軸Cを周回する周方向の位相がずれて配置される。すなわち、第1湾曲部11は、中心軸Cの径方向に少なくとも2以上の第1の頂点部11´を形成し、第2湾曲部12は、中心軸Cの径方向に少なくとも2以上の第2の頂点部12´を形成し、第1の頂点部11´と第2の頂点部12´は中心軸Cを周回する周方向及び中心軸Cの長軸方向にずれて配置される。血管保持部10は、図3Bに示すように、軸方向先端側(正面側)から見ると、第1湾曲部11を結んで画定される図形A1と、第2湾曲部12を結んで画定される図形A2は共に四角形(図中の一点鎖線)であり、各四角形の頂点位置、すなわち、第1の頂点部11´と第2の頂点部12´を結ぶと八角形(図中点線)になる。
【0039】
血管保持部10は、第1湾曲部11と第2湾曲部12の位置が周方向にずれて配置されることで、第1の頂点部11´と第2の頂点部12´が突出して配置され、血管壁との接触点を増やすことができる。そのため、血管保持部10は、血管Bv内に留置した際、一般的な円筒形状及び位相のずれていないステント等と比べて血管Bvへの刺激箇所が増大され、血管Bvは異方向に伸展して血管Bv内の刺激対象部位となる圧受容器に対し効率的に機械的刺激を付与できる。
【0040】
血管保持部10の基端側に形成される第1湾曲部11は、図1に示すように、連結部20と個々に接続される。そのため、血管保持部10は、血管Bvに留置した際、ステント1の基端側(P2部分及びP3部分)に突出した部位が無い構成となる。すなわち、ステント1の基端側は中心軸Cの周方向の一部にステント1が無い構成となり、ステント1の先端側は中心軸Cの全周方向にステント1を有する構成となって、斜切直円柱(一端を斜めに切り落とした直円柱)状の立体となる。したがって、ステント1を血管Bvに留置した際、付近の他の血管Bvに被らない。ステント1は、図9A図9Fに示すような内頚動脈の頸動脈洞に留置した際、総頚動脈から分岐する外頚動脈に血管保持部10の一部が被ることを防止できる。
【0041】
第1湾曲部11及び第2湾曲部12の形成数は、何れも少なくとも1以上、好ましくは2以上、より好ましくは2以上20以下、更に好ましくは4以上8以下とした構成にすることができる。このような構成により、血管Bvを内側から適切に保持して機械的刺激を効果的に付与することができる。
【0042】
〈連結部〉
連結部20は、図1図2に示すように、先端が血管保持部10の基端(第1湾曲部11)と接続し、基端が回収部30の基端と接続する。連結部20は、軸方向に延びる複数の線状部材21で構成することができる。連結部20は、図1に示すように、接続先となる血管保持部10の基端の第1湾曲部11が4つあるため、4本の線状部材で構成される。
【0043】
連結部20は、図2に示すように、先端部20aは軸方向で隣接する血管保持部10の基端の第1湾曲部11と接続し、基端部20bは血管保持部10の基端から基端側に向かって徐々に縮径するように中心軸Cから径方向で離れるように集約して血管Bvの中心からずれた位置に配置される。すなわち、連結部20の基端部20bのそれぞれは、血管Bvの中心からずれた位置に集約される。
【0044】
連結部20の基端部は、少なくとも血管Bvの中心からずらして配置される。これは、血管Bvの中心に配置することの弊害(血流の阻害や血栓を発生させるリスク等)を低減させるためであり、血管Bvの中心から径方向に離れるほどその効果は大きく、血管壁付近に配置するのが好ましい。
【0045】
〈回収部〉
回収部30は、連結部20の基端部20bから軸方向に沿って基端側に延在し、ステント1を生体内から回収する回収デバイス200により捕捉される。回収部30は、回収デバイス200で回収可能な形状及び機能を備えている。
【0046】
回収部30は、連結部20の基端部20bと接続して軸方向に延びる延在部31と、延在部31の基端から先端側に向かってU字状に屈曲する係合部32と、を備えて構成できる。係合部32は、回収デバイス200の捕捉部220と係合可能なようにフック形状を呈している。係合部32の形状は、U字状に限らず、回収デバイス200の捕捉部220の形態に合わせて係合し易い任意の形状とすることができる。
【0047】
回収部30は、回収デバイス200による回収容易性を考慮し、係合部32の向きを血管Bvの血管壁から離隔する方向に屈曲させるのが好ましい。これにより、係合部32の先端が血管壁から離隔できるため、回収デバイス200による捕捉が容易となる。
【0048】
回収部30は、係合部32を血管Bvの血管壁面に沿って配置することもできる。これにより、回収部30は、係合部32が血管壁面に均等に触れた状態となるため、血流を阻害し得る血管Bvの径方向に突出した部位が無い構成にできる。
【0049】
また、回収部30は、回収デバイス200と磁気吸着可能に構成することもできる。回収部30は、延在部31及び/又は係合部32に、回収デバイス200と磁気吸着可能な磁性部33を設けることができる。磁性部33は、回収デバイス200に設けられた磁性部材と磁極の異なる磁石若しくは磁性部材を磁石としたときに磁気吸着可能な磁性体(強磁性体等)等の磁気吸着体で構成できる。
【0050】
回収部30は、X線造影性を有するマーカー部40を設けることができる。これにより、ステント1は、留置する際の位置決めや送達デバイス100に対する配置位置を、モダリティ(血管造影装置等の各種画像診断装置)等を用いて生体外から確認しながら調整できる。なお、マーカー部40は、回収部30のみならず、血管保持部10や連結部20にも設けることができる。血管保持部10にマーカー部40を設置する場合、ステント1の全容を把握し易くするため、ステント1の基端側に位置する回収部30と反対側に位置する第2湾曲部12に設けるのが好ましい。第2湾曲部12は、血管保持部10を構成する湾曲部であればよく、1か所でもよいし、複数個所にマーカー部40を設置してもよい。
【0051】
図4A図4Bには、ステント1の周面に形成される開口部位であるセル50(第1セル51、第2セル52)が示されている。ステント1は、図4Aに示すように、血管保持部10の第1接続部13と連結部20によって囲まれた第1セル51が周面に形成される。ステント1は、図4Bに示すように、血管保持部10の第1接続部13と連結部20によって囲まれ、第1セル51とセル面積の異なる第2セル52が周面に形成される。図4Aに示す第1セル51と、図4Bに示す第2セル52とを比較すると、第2セル52の方が第1セル51よりもセル面積が大きい。このように、ステント1は、セル面積の異なるセル50を周面に有するため、もしステント1が分岐部にかかる場合においてもセル面積が均一な形態と比べて良好な血流通過性が得られるし、そもそも分岐部にステント1のストラットが被るリスクを低減できる。
【0052】
ステント1は、円筒形状の基材の各寸法(外径、内径、軸方向長さ等)をレーザー加工し、所望の大きさや形状に形成される。ステント1は、圧縮された状態(収縮状態)から元の形状(拡張状態)への復元力(自己拡張力)を有する。そのため、基材は、チタンニッケル合金等の形状記憶能を有し、かつ生体適合性を有する超弾性合金が好ましい。しかしながら、必要に応じて、高分子材料や他の金属材料を好適に使用できる。高分子材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の含フッ素ポリマーである。金属材料は、例えば、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛-タングステン合金等が挙げられる。また、ステント表面は求める性能を付与するような表面処理がなされていてもよい。例えば、パリレンやポリテトラフルオロエチレン等の樹脂素材、高分子材料もしくは生体材料から成る抗血栓性コーティングや細胞非接着性コーティング等が挙げられる。
【0053】
ステント1は、レーザーで基材を加工して作製したレーザーカット型であるため、1本又は複数本の線条を編み込んだ編み込み型と比べてデザインの自由度が高く、所望の外形に成形し易い。そのため、回収部30を血管壁付近に配置可能な形状に容易に加工することができる。また、レーザーカット型は、編み込み型よりもラジアルフォースが高く調整もし易い。
【0054】
ステント1は、以下の送達デバイス100を使用して血管Bv内に留置できる。
【0055】
〈送達デバイス〉
送達デバイス100は、図5図6に示すように、カテーテル110と、送達部材120と、操作部130と、で構成される。送達デバイス100は、経皮的に生体内に挿入されるイントロデューサー等の導入デバイスを用いて血管Bv内に導入できる。
【0056】
カテーテル110は、内腔を有する管状の長尺部材で構成されるカテーテル本体111を備える。カテーテル本体111の基端側の外周面には、送達部材120に対しカテーテル本体111を相対移動する際に操作するレバー部112が設けられる。また、カテーテル110の先端には、X線造影性を有するマーカー部113が設けられている。
【0057】
レバー部112は、カテーテル本体111の外表面から軸方向と交差して外周面から離れる方向に延びるように設けられ、先端の一部が操作部130の摺動孔132から突出する。術者は、レバー部112の摺動孔132から突出した部分を摘まみ、摺動孔132に沿って摺動すると、送達部材120に対しカテーテル110を相対移動させることができる。
【0058】
送達部材120は、カテーテル110の基端の挿入口114を通じて挿入され、ステント1を留置位置まで送達する。送達部材120は、長尺な本体121の先端に設けられ、ステント1を装着する装着部122と、本体121の基端に設けられ、送達部材120をカテーテル110に挿入する際に把持される把持部123を備える。
【0059】
装着部122は、ステント1の連結部20が支持可能なように連結部20の外形に合わせて形成された傾斜面122eを有する支持部122aと、本体121よりも小径で支持部122aの傾斜面122eから軸方向先端側に延びる支柱部122bと、支柱部122bの先端に設けられステント1の血管保持部10の先端側と接触する押え部122cと、支持部122aに設けられるマーカー部122dと、で構成される。
【0060】
ステント1は、装着部122に対し、連結部20の外表面と支持部122aの傾斜面122eとを接触させ、支柱部122bをステント1の内部に挿通させ、血管保持部10の先端と押え部122cとを接触させた状態で装着される。これにより、ステント1は、支柱部122bに挿通した状態で支持部122aと押え部122cとの間に配置されるため、両端側が保持され、搬送中の脱落が防止できる。また、ステント1は、支柱部122bに挿通した状態で装着部122に装着されるため、搬送時の径方向へのずれが抑制され、搬送中にステント1がカテーテル110の内腔に引っ掛かることなくスムーズに送達できる。
【0061】
把持部123の先端には、後述の操作部130の第2嵌合部131に挿入して嵌合される第1嵌合部124が設けられている。第1嵌合部124は、送達部材120をカテーテル110に挿入し、装着部122に装着されたステント1の留置姿勢及び留置位置を調整した後、第2嵌合部131に嵌合される。これにより、ステント1の留置姿勢を固定した状態で血管Bv内に留置できる。なお、図5図6には、凸状の第1嵌合部124を凹状の第2嵌合部131に挿入し嵌合する形態を示している、両者の形状を逆転させることもできる。その場合、第1嵌合部124は凹状となり、第2嵌合部131は凸状となる。
【0062】
操作部130は、生体外に配置され、術者により操作される。操作部130の基端には、送達部材120の第1嵌合部124と嵌合する第2嵌合部131が設けられている。操作部130の上面には、カテーテル110を引き込み操作する際のレバー部112の摺動方向を案内する摺動孔132が形成されている。
【0063】
図7A図7Cは、摺動孔132の形態が示されている。摺動孔132は、図7Aに示すような軸方向に沿って直線状に形成した形態、図7Bに示すような軸方向に沿って左右にジグザグ状に形成した形態、図7Cに示すような階段状に形成した形態とできる。これら形態のうち、図7B図7Cに示す形態とすれば、レバー部112の移動距離に対してカテーテル110の移動距離が少なくできるため、カテーテルの移動距離を細かく調整でき有効である。なお、摺動孔132の形態は、図7A図7Cに示す形態に限定されない。
【0064】
送達デバイス100は、先行して留置位置付近まで送達されたカテーテル110にステント1を装着した送達部材120を挿入し、押え部122cとマーカー部122dの位置からステント1の留置位置を調整し、図5に示す状態とする。この際、把持部123の第1嵌合部124は、第2嵌合部131に嵌合される。その後、レバー部112を引き込み操作すると、カテーテル110は、送達部材120に対して基端側に相対移動し、装着部122が血管Bv内に露出する。すると、ステント1は、自己拡張により収縮状態から元の形状に復元する。ステント1は、留置位置の血管Bvの血管壁を押圧して機械的刺激を付与したまま留置される。なお、ステント1の留置時の動作については、後段にて詳述する。
【0065】
ステント1は、以下の回収デバイス200を使用して生体内(血管Bv内)から回収できる。
【0066】
〈回収デバイス〉
図8A図8Cには、ステント1を生体内から回収する回収デバイス200の形態が示されている。
【0067】
回収デバイス200は、血管Bv内に留置されたステント1を回収するためのデバイスである。回収デバイス200は、ステント1の基端側に設けられた回収部30の係合部32と係合してステント1を生体内から回収可能な構成及び機能を有する。
【0068】
図8Aに示すように、回収デバイス200は、長尺な本体部210と、本体部210の先端に設けられる環状の捕捉部220と、を備えた構成とすることができる。図8Bに示すように、回収デバイス200は、長尺な本体部210と、本体部210の先端に設けられ径方向に所定間隔で広がる複数の環状部からなる捕捉部220と、を備えた構成とすることができる。図8Cに示すように、回収デバイス200は、長尺な本体部210と、本体部210の先端に設けられ径方向に広がる網状の捕捉部220と、を備えた構成とすることができる。また、回収デバイス200は、回収するステント1を引き込むための内腔を有する長尺な回収用カテーテル230を備える。
【0069】
回収デバイス200は、図8A図8Cに示した何れの形態であっても、捕捉部220とステント1の係合部32とが係合し、ステント1を回収できる。また、回収デバイス200は、係合部32に磁気吸着性を持たせ、捕捉部220にも磁気吸着性を持たせることで、係合部32との係合に加えて磁気吸着により回収部30を捕捉できる。捕捉部220に磁気吸着性を持たせる場合、捕捉部220自体を磁気吸着体で形成してもよいし、磁気吸着体を捕捉部220の外表面若しくは内部に形成してもよい。なお、回収デバイス200形態は、ステント1が回収可能な構成及び機能を有していれば、図8A図8Cに示す形態に限定されない。
【0070】
[動作]
次に、第1実施施形態に係るステント1の留置時の動作について図9A図9Fを適宜参照しながら説明する。図9A図9Fに示す動作は、総頚動脈から分岐した内頚動脈の頸動脈洞にステント1を留置する際の動作を示している。なお、ステント1を留置する箇所は、内頚動脈に限定されず、治療目的に応じて患者の生体管腔内に適宜留置できる。
【0071】
図9Aに示すように、術者は、イントロデューサー等の導入デバイスを介し、ガイドワイヤGに沿って送達デバイス100のカテーテル110を血管Bv内に挿入する。カテーテル110の先端にはマーカー部113が設けられているため、術者は、マーカー部113の位置をモダリティで撮像した医用画像を確認しながら挿入できる。この時点で図のようにガイドワイヤGは抜去してもよいし、留置したままでもよい。
【0072】
次に、術者は、図9Bに示すように、送達部材120の装着部122にステント1を装着し、カテーテル110の基端側から挿入して留置位置付近までステント1を送達する。
【0073】
次に、術者は、図9Cに示すように、送達部材120のマーカー部122dの位置からステント1の留置位置を調整する。ステント1の留置位置の調整が終わると、術者は、把持部123の第1嵌合部124を第2嵌合部131に嵌合させて送達部材120の位置を固定する。
【0074】
次に、術者は、図9Dに示すように、カテーテル110のレバー部112を基端側に引いてカテーテル110の引き込み操作を行い、カテーテル110の先端を基端側に後退させる。カテーテル110は、引き込み操作により送達部材120に対して基端側に相対移動し、装着部122が血管Bv内に露出する。これにより、ステント1は、自己拡張して収縮状態から元の形状(拡張状態)に復元する。
【0075】
そして、術者は、ステント1が拡張したことを確認すると、図9Eに示すように、カテーテル110及び送達部材120を生体内から抜去する。これにより、ステント1は、図9Fに示すように目的の留置位置となる頸動脈洞に留置される。血管Bv内に留置されたステント1は、血管壁を内側から押圧して刺激対象部位となる頸動脈洞の圧受容器に機械的刺激を付与した状態を維持したまま留置される。これにより、ステント1から機械的刺激を受けた圧受容器は、舌咽神経を介して心臓中枢に作用し、自律神経を介して心拍数を抑制して血圧を低下させることができる。すなわち、迷走神経反射を利用した降圧治療を実現できる。また迷走神経の刺激による炎症反応の制御を介した治療に応用可能である。上述した実施形態においては、予め血管Bv内にカテーテル110を配置しておき、その基端からステント1が装着された送達部材120を導入するものであったが、カテーテル110内にステント1や送達部材120が装填された組立体を血管Bv内に導入するものであってもよい。
【0076】
第1実施形態のステント1は、図10A図10Bに示すように、第1湾曲部11、第2湾曲部12及びこれらに接続される第1接続部13の数を任意に設定できる。
【0077】
図10Aに示すように、ステント1は、変形例として第1湾曲部11及び第2湾曲部12を5つずつ配置した構成とすることができる。図10Aに示すステント1は、第1湾曲部11及び第2湾曲部12を結んで画定される図形は共に五角形となる。第1湾曲部11を頂点とした五角形と、第2湾曲部12を頂点とした五角形は、周方向で位相がずれているため、軸方向から見たときに各五角形の頂点位置を結ぶと十角形になる。
【0078】
図10Bに示すように、ステント1は、変形例として第1湾曲部11及び第2湾曲部12を6つずつ配置した構成とすることができる。図10Bに示すステント1は、第1湾曲部11及び第2湾曲部12を結んで画定される図形は共に六角形となる。第1湾曲部11を頂点とした六角形と、第2湾曲部12を頂点とした六角形は、周方向で位相がずれているため、軸方向から見たときに各六角形の頂点位置を結ぶと十二角形になる。
【0079】
図10A図10Bに示した形態は、図1に示した形態と比べて血管壁への接触点の数が増えるため、より効果的に血管Bvに機械的刺激を付与できる。
【0080】
第1実施形態のステント1は、図11に示すように、他の変形例として血管保持部10の環状構造を軸方向に連続して配置することもできる。図11に示すように、ステント1は、血管保持部10を軸方向に拡張すれば、血管Bvへの機械的刺激を付与する領域を血管Bvの走行方向に沿って拡大できる。また、血管保持部10を軸方向に拡張することで、一般的なステントのように血管Bvの狭窄部位を効果的に拡張しつつ、血管壁に機械的刺激を付与することもできる。
【0081】
以上のように、第1実施形態のステント1は、血管Bvの血管壁を内側から押圧するように保持する血管保持部10と、血管保持部10の基端の第1湾曲部11と接続して基端が血管Bvの中心からずれた位置(好ましくは血管壁付近)に配置される連結部20と、連結部20の基端部から軸方向に沿って基端側に延在してステント1を生体内から回収する回収デバイス200により捕捉される回収部30と、を備える。これにより、ステント1は、生体内に留置した後、所定のタイミングで回収デバイス200を用いて生体外に取り出すことができる。
【0082】
また、血管保持部10は、第1接続部13の両端に配置される第1湾曲部11と第2湾曲部12の中心軸Cを周回する周方向の位相がずれて配置される。そのため、ステント1は、血管Bv内に留置した際、血管Bvへの刺激箇所を増やすことができ、血管Bvは異方向に伸展され刺激対象部位となる圧受容器に効果的な機械的刺激を付与できる。
【0083】
次に、本発明に係るステント1の改変例となる第2実施形態~第5実施形態について説明する。なお、以下の各形態の説明では、主に前述した形態との相違点について説明し、他の形態と同等の機能を有する構成要件については同一又は関連する符号を付して詳細な説明を省略し、特に言及しない。また、構成、部材、及び使用方法等については、各形態と同様のものとしてよい。さらに、第1実施形態~第5実施形態に示す形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で任意に組み合わせて実施することもできる。
【0084】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るステント1Aについて図12図13Bを適宜参照しながら説明する。
【0085】
第2実施形態のステント1Aは、血管保持部10Aと、連結部20Aと、回収部30Aと、を備える。図12に示すように、ステント1Aの血管保持部10はP1部分であり、連結部20はP2部分であり、回収部30はP3部分である。ステント1Aは、連結部20Aの形状が第1実施形態のステント1と相違する。
【0086】
血管保持部10Aは、図12に示すように、第1湾曲部11、第2湾曲部12及び第1接続部13で構成される環状構造を少なくとも先端側に有する。
【0087】
連結部20Aは、基端側に凸となる少なくとも1以上の第3湾曲部22と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第4湾曲部23と、第3湾曲部22と第4湾曲部23とを接続する少なくとも1以上の線状の第2接続部24と、を有する。連結部20Aは、先端側から基端側に向かって第3湾曲部22及び第4湾曲部23の数が段階的に減少する多段構造を有する。図11に示すように、連結部20Aは、血管保持部10Aと接続する先端側から基端側に向かって第3湾曲部22及び第4湾曲部23の数が3つ、2つ、1つと段階的に減少している。
【0088】
連結部20Aの先端に位置する第4湾曲部23は、軸方向先端側で隣接する血管保持部10Aの第1湾曲部11と接続し、基端に位置する第4湾曲部23は、軸方向先端側で隣接する連結部20Aの第3湾曲部22と接続する。連結部20Aの基端に位置する第3湾曲部22は、血管Bvの血管壁付近に配置される。基端に位置する第3湾曲部22は、回収部30Aと接続する。
【0089】
回収部30Aは、血管壁付近に配置された第3湾曲部22から軸方向に延在して設けられる。回収部30Aは、血管Bvの中心からずれた位置(好ましくは血管壁付近)に配置される。
【0090】
ステント1Aの周面には、開口部位であるセル50A(第1セル51A、第2セル52A)が形成される。ステント1Aは、図13Aに示すように、血管保持部10Aの第1接続部13と連結部20によって囲まれた第1セル51Aが周面に形成される。ステント1Aは、図13Bに示すように、血管保持部10の第1接続部13と連結部20によって囲まれた第2セル52Aが周面に形成される。
【0091】
第1セル51Aと第2セル52Aは、共にステント1の周面に形成され、セル面積が異なる。図13Aに示す第1セル51Aと、図13Bに示す第2セル52Aとを比較すると、第2セル52Aの方が第1セル51Aよりもセル面積が大きい。このように、ステント1Aは、セル面積の異なるセル50Aを周面に有するため、血流の通過性を良好にできる。
【0092】
以上のように、第2実施形態のステント1Aは、血管Bvの血管壁を内側から押圧するように保持する血管保持部10と、基端側に凸となる少なくとも1以上の第3湾曲部22と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第4湾曲部23と、第3湾曲部22と第4湾曲部23とを接続する少なくとも1以上の線状の第2接続部24と、で構成され、先端側から基端側に向かって第3湾曲部22及び第4湾曲部23の数が段階的に減少する多段構造を有する連結部20Aを備える。連結部20Aの基端部は、血管Bvの中心からずれた位置(好ましくは血管壁付近)に配置され、軸方向に沿って基端側に延在してステント1Aを生体内から回収する回収デバイス200により捕捉される回収部30が接続される。これにより、ステント1Aは、生体内に留置した後、所定のタイミングで回収デバイス200を用いて生体外に取り出すことができる。
【0093】
また、血管保持部10Aは、第1接続部13の両端に配置される第1湾曲部11と第2湾曲部12の中心軸Cを周回する周方向の位相がずれて配置される。そのため、ステント1Aは、血管Bv内に留置した際、血管Bvへの刺激箇所を増やすことができ、血管Bvは異方向に伸展され刺激対象部位となる圧受容器に効果的な機械的刺激を付与できる。
【0094】
[第3実施形態]
第3実施形態に係るステント1Bについて、図14A図14Bを適宜参照しながら説明する。
【0095】
第3実施形態のステント1Bは、図14A図14Bに示すように、血管保持部10Bと、連結部20Bと、回収部30Bと、を備える。図14A図14Bに示すように、ステント1Bの血管保持部10はP1部分であり、連結部20はP2部分であり、回収部30はP3部分である。
【0096】
ステント1Bは、図14A図14Bに示すように、一部を血管壁側に向けて変形して突出させた突出部60(図中の点線で囲まれた部位)を備える点、及び付属ユニット70を備える点が他の実施形態と相違する。図14Aは、第1実施形態のステント1に付属ユニット70を複数設けた形態が示されており、図14Bには、第2実施形態のステント1Aに付属ユニット70を複数設けた形態が示されている。
【0097】
突出部60は、血管保持部10Bの一部を血管壁側に変形して構成される。突出部60は、血管保持部10Bの第2湾曲部12や、血管保持部10の第1接続部13に接続される基端側又は先端側に凸の付属ユニット70を血管壁側に変形して構成することができる。突出部60として機能し得る第2湾曲部12や付属ユニット70は、少なくとも1以上を変形させることで血管壁への接触点を増加させることができる。
【0098】
付属ユニット70は、基部71と、基部71の基端から延びる一対の脚部72aで構成され、脚部72aの各基端が周方向で隣り合う第1接続部13と個々に接続される両脚部72と、を有するV字形状を呈する。付属ユニット70の設置数や配置位置は特に制限されず、血管Bvを効果的に刺激できるように適宜設定できる。
【0099】
以上のように、第3実施形態のステント1Bは、血管保持部10が、血管壁側に向けて一部を変形して突出させた突出部60を備えているため、突出部60を備えていない構成と比べて血管Bvへの接触点が増加でき、血管Bvは異方向に伸展され血管Bvに対してより効果的に機械的刺激を付与できる。また、ステント1は、付属ユニット70を設けることで、血管Bvに対する刺激箇所をさらに増大させることができる。
【0100】
[第4実施形態]
第4実施形態に係るステント1Cについて図15図18を適宜参照しながら説明する。
【0101】
第4実施形態のステント1Cは、図15に示すように、血管保持部10Cと、連結部20Cと、回収部30Cと、を備える。図15図18に示すように、ステント1Cの血管保持部10はP1部分であり、連結部20はP2部分であり、回収部30はP3部分である。ステント1Cは、血管保持部10Cの形状が他の実施形態と相違する。
【0102】
血管保持部10Cは、環状構造を有し、血管保持部10Cの先端に位置する先端保持部10Caと、環状構造を有し、血管保持部10Cの基端に位置する基端保持部10Cbと、先端保持部10Caと基端保持部10Cbとを連結する線状のリンク部14と、を備える。また、血管保持部10Cは、先端保持部10Caの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数と、基端保持部10Cbの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数は同数である。
【0103】
リンク部14は、先端保持部10Caと、基端保持部10Cbとの間に接続される少なくとも1以上の線状部材であり、より具体的には、先端保持部10Caの第1湾曲部11と、基端保持部10Cbの第2湾曲部12との間に接続される少なくとも1以上の線状部材である。リンク部14が、先端保持部10Caの第1湾曲部11と、基端保持部10Cbの第2湾曲部12との間に接続されることで、リンク部14を結んで画定される図形と、先端保持部10Caの第2湾曲部12を結んで画定される図形、又は、基端保持部10Cbの第1湾曲部11を結んで画定される図形は、互いに略同一の面積を有する四角形であり、かつ、周方向で位相がずれているため、軸方向先端側(正面側)から見たときに各四角形の頂点位置を結ぶと八角形になる。したがって、ステント1Cが拡張した際、血管壁との接触点が増え、血管壁と接触して血管Bvに機械的刺激を付与できる。また、リンク部14により、血管Bvへの刺激箇所が線状となって増大され、効率的に機械的刺激を付与できる。
【0104】
リンク部14は、図15図18に示す形態とすることができる。
【0105】
リンク部14の形態としては、図15に示すように、軸方向に延びる複数の線状部材で構成できる。リンク部14は、図15に示すように、4本の線状部材で構成され、先端保持部10Caの4つの第1湾曲部11と、軸方向に隣り合う基端保持部10Cbの4つの第2湾曲部12とを個々に連結される。
【0106】
リンク部14は、図16に示すように、中心軸Cと異なる方向にねじれて延在して形成できる。リンク部14は、図16に示すように、4本の線状部材で構成され、先端保持部10Caの4つの第1湾曲部11と、周方向で位相がずれた基端保持部10Cbの4つの第2湾曲部12とを個々に連結される。これにより、リンク部14による刺激箇所が血管Bvの軸方向でねじれた位置となるため、血管Bvに効果的な機械的刺激を付与することができる。
【0107】
リンク部14は、図17に示すように、軸方向に延びる複数の線状部材により、接続対象となる先端保持部10Caの第1湾曲部11と基端保持部10Cbの第2湾曲部12との間を接続した構成とできる。リンク部14は、図17に示すように、2本の線状部材を1組として構成され、先端保持部10Caの4つの第1湾曲部11と、軸方向に隣り合う基端保持部10Cbの4つの第2湾曲部12とを個々に連結する。これにより、リンク部14による刺激箇所が増加され、血管Bvに効果的な機械的刺激を付与することができる。
【0108】
なお、リンク部14の1組の本数は、2本に限らず、3本以上でもよい。また、図17に示したリンク部14は、第1湾曲部11や第2湾曲部12との接続部分で分岐した後、各線状部材が軸方向に平行に延在する形状としたが、接続対象となる第1湾曲部11と第2湾曲部12との間で各線状部材を個々に直接接続してもよい。
【0109】
また、ステント1Cは、図18に示すように、拡張時に血管壁に向かって部分的に突出するように変形する変形部14aを、リンク部14に設けることもできる。変形部14aは、ステント1Cの留置前の状態(収縮状態)では、送達デバイス100のカテーテル110の内腔との接触により変形しない。この際、リンク部14は、図18に示す点線部分のように略直線状の線形が維持される。変形部14aは、ステント1Cの留置後の状態(拡張状態)では、図18に示すようにステント1Cの拡張に追従して血管壁側に突出するように変形する(図中の実線部分)。これにより、リンク部14が血管壁に接触した際、血管Bvへの刺激性がより高まり効果的に機械的刺激を付与できる。
【0110】
以上のように、第4実施形態のステント1Cは、環状構造を有する先端保持部10Caと、同じく環状構造を有する基端保持部10Cbとの間に、軸方向に延在するリンク部14を備えている。リンク部14は、図15に示すような軸方向に延びる少なくとも1以上の線状部材、図16に示すような中心軸Cと異なる方向にねじれて延在する線状部材、図17に示すような接続対象となる先端保持部10Caの第1湾曲部11と基端保持部10Cbの第2湾曲部12との間を接続する複数の線状部材で構成できる。これにより、ステント1Cは、先端保持部10Caの第1湾曲部11及び第2湾曲部12と、基端保持部10Cbの第1湾曲部11及び第2湾曲部12とで血管Bvの異なる位置に機械的刺激を付与できると共に、リンク部14でも血管Bvに機械的刺激を付与できる。
【0111】
また、ステント1Cは、図18に示すように拡張時に血管壁に向かって部分的に突出するように変形する変形部14aをリンク部14に設けることで、血管Bvへの刺激性がより高まり効果的に血管Bvに機械的刺激を付与できる。
【0112】
[第5実施形態]
第5実施形態に係るステント1Dについて図19を参照しながら説明する。
【0113】
第5実施形態のステント1Dは、図19に示すように、血管保持部10Dと、連結部20Dと、回収部30Dと、を備える。図19に示すように、ステント1Dの血管保持部10はP1部分であり、連結部20はP2部分であり、回収部30はP3部分である。
【0114】
ステント1Dは、図19に示すように、血管保持部10Dは、環状構造を有し、血管保持部10Dの先端に位置する先端保持部10Daと、環状構造を有し、血管保持部10Dの基端に位置する基端保持部10Dbと、先端保持部10Daと基端保持部10Dbとを連結する線状のリンク部14と、を備える。
【0115】
血管保持部10Dは、先端保持部10Daの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数と、基端保持部10Dbの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数は異なる。ステント1Dは、図19に示すように、先端保持部10Daの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の数が共に3つであり、基端保持部10Dbの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の数が共に6つである。なお、先端保持部10Daの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数と、基端保持部10Dbの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数は、任意に設定することができる。
【0116】
リンク部14は、図19に示すように、複数の線状部材で構成され、先端保持部10Daの6つの第1湾曲部11のうちの一つと、軸方向に隣り合う基端保持部10Dbの3つの第2湾曲部12のうちの一つとを個々に連結される。
【0117】
以上のように、第5実施形態のステント1Dは、先端保持部10Daの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数と、基端保持部10Dbの第1湾曲部11及び第2湾曲部12の周方向の数が異なる構成となる。そのため、ステント1Dは、先端保持部10Daの血管壁への接触点と基端保持部10Dbの血管壁への接触点の数も異なる。したがって、ステント1Dは、先端保持部10Daによる刺激箇所の数や位置と、基端保持部10Dbによる刺激箇所の数や位置を、血管Bvの形状等に合わせて任意に設定可能となり、血管Bvに適切な機械的刺激を付与することができる。
【0118】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係るステント1は、線状構成要素で構成される環状の拡張部(血管保持部10)と、先端部は軸方向で隣接する血管保持部10の基端と接続し、基端部は血管保持部10の基端から基端側に向かって徐々に縮径するように集約して血管Bv等の生体管腔の中心からずれた位置に配置される連結部20と、連結部20の基端部から軸方向に沿って基端側に延在し、ステント1を生体内から回収する回収デバイス200により捕捉される回収部30と、を備える。
【0119】
このような構成により、ステント1は、生体内に留置した後、回収デバイス200を用いて回収部30と係合して捕捉できるため、所定のタイミングで生体外に取り出すことができる。また、回収部30が接続される連結部20の基端部は、血管Bvの中心から外れた位置にあるため、血流の阻害や血栓を発生させるリスクが低減される。
【0120】
本実施形態に係るステント1において、血管保持部10は、基端側に凸となる少なくとも1以上の第1湾曲部11と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第2湾曲部12と、第1湾曲部11と第2湾曲部12とを接続する少なくとも1以上の線状の第1接続部13と、で構成される波形状の線状構成要素を環状とした環状構造を有し、連結部20は、血管保持部10の第1湾曲部11と接続するように構成してもよい。
【0121】
このような構成により、血管保持部10の基端に位置する第1湾曲部11の全てが連結部20と接続されるので、ステント1の基端側(P2部分及びP3部分)に突出した部位が無い構成となる。すなわち、ステント1の基端側は中心軸Cの周方向の一部にステント1が無い構成となり、ステント1の先端側は中心軸Cの全周方向にステント1を有する構成となって、ステント1は斜切直円柱(一端を斜めに切り落とした直円柱)状の立体となる。そのため、ステント1を血管Bvに留置した際、付近の他の血管Bvと被らない。したがって、ステント1を内頚動脈の頸動脈洞に留置する場合、総頚動脈から分岐する外頚動脈に血管保持部10の一部が被ることなく留置できる。
【0122】
本実施形態に係るステント1において、連結部20は、軸方向に長い複数の線状部材で構成され、複数の線状部材の先端部は血管保持部10の複数の第1湾曲部11と個々に接続し、複数の線状部材の基端部は、血管Bvの血管壁付近に集約されるように構成してもよい。
【0123】
また、本実施形態に係るステント1Aにおいて、血管保持部10Aは、環状構造を少なくとも先端側に有し、連結部20Aは、基端側に凸となる少なくとも1以上の第3湾曲部22と、先端側に凸となる少なくとも1以上の第4湾曲部23と、第3湾曲部22と第4湾曲部23とを接続する少なくとも1以上の線状の第2接続部24と、を有し、連結部20Aは、先端側から基端側に向かって第3湾曲部22及び第4湾曲部23の数が段階的に減少する多段構造を有し、先端に位置する第4湾曲部23は、軸方向先端側で隣接する血管保持部10Aの第1湾曲部11と接続し、基端に位置する第4湾曲部23は、軸方向先端側で隣接する連結部20Aの第3湾曲部22と接続し、連結部20Aの基端に位置する第3湾曲部22は、血管Bvの血管壁付近に配置されるように構成してもよい。
【0124】
このような構成により、血管保持部10、10Aの基端に位置する第1湾曲部11の全てが連結部20や連結部20Aと接続されるので、ステント1の基端側(P2部分及びP3部分)に突出した部位が無い構成となる。すなわち、ステント1の基端側は中心軸Cの周方向の一部にステント1が無い構成となり、ステント1の先端側は中心軸Cの全周方向にステント1を有する構成となって、ステント1は斜切直円柱(一端を斜めに切り落とした直円柱)状の立体となる。そのため、ステント1、1Aを血管Bvに留置した際、付近の他の血管Bvと被らないように留置することができる。また、連結部20、20Aの基端に位置する第3湾曲部22は、血管壁付近に集約又は配置されるため、連結部20、20Aに接続される回収部30、30Aも血管壁付近に配置できる。したがって、ステント1、1Aを血管Bvに留置した際、回収部30、30Aによる血流の阻害や血栓を発生させるリスクが低減される。
【0125】
本実施形態に係るステント1、1Aは、第1接続部13及び連結部20によって囲まれた第1セル51、51Aと、第1セル51とセル面積の異なる第2セル52、52Aを周面に有する構成としてもよい。
【0126】
このような構成により、ステント1、1Aの周面に形成された第1セル51、51Aと第2セル52、52Aのセル面積が異なるため、セル面積が均一な形態と比べて良好な血流通過性が得られる。
【0127】
本実施形態に係るステント1において、回収部30は、連結部20の基端部と接続して軸方向に延びる延在部31と、延在部31の基端から先端側に向かってU字状に屈曲する係合部32と、を備える構成としてもよい。
【0128】
このような構成により、回収部30は、連結部20の基端側に接続される延在部31及び係合部32を有するフック形状を呈するため、回収デバイス200の捕捉部220と容易に係合することができる。
【0129】
本実施形態に係るステント1において、係合部32は、血管Bvの血管壁から離隔する方向に屈曲するように構成してもよいし、血管Bvの血管壁面に沿って配置してもよい。
【0130】
このような構成により、係合部32は、血管Bvの血管壁から離隔するように屈曲させることで、回収デバイス200による回収作業を容易にできる。また、係合部32を血管Bvの血管壁に沿って配置すると、血管Bvの径方向に突出せず配置できるため、血栓の発生リスクが低減される。
【0131】
本実施形態に係るステント1において、回収部30は、回収デバイス200と磁気吸着可能に構成してもよい。
【0132】
このような構成により、係合部32と捕捉部220との係合に加えて磁気吸着されるため、回収作業中のステント1の脱落が防止されステント1を確実に回収することができる。
【0133】
本実施形態に係るステント1において、回収部30及び/又は血管保持部10は、X線造影性を有するマーカー部40を備えた構成としてもよい。
【0134】
このような構成により、ステント1を血管Bvに留置する際にモダリティ等を用いて位置確認ができるため、精度良く所望の位置に留置することができる。
【0135】
本実施形態に係るステント1において、第1湾曲部11及び第2湾曲部12の形成数は、少なくとも1以上、好ましくは2以上、より好ましくは2以上20以下、更に好ましくは4以上8以下とした構成としてもよい。
【0136】
このような構成により、ステント1は、血管Bvを内側から適切に保持して機械的刺激を効果的に付与することができる。
【0137】
本実施形態に係る送達デバイス100は、ステント1を生体内の留置位置まで送達して留置するデバイスであって、内腔を有するカテーテル110と、カテーテル110に対して軸方向に相対移動可能であってステント1が装着される装着部122を有する送達部材と120、で構成され、装着部122は、ステント1の連結部20の外形に合わせて形成された傾斜面122eを有し連結部20を支持する支持部122aと、支持部122aの傾斜面122eから軸方向先端側に延びてステント1に挿通される支柱部122bと、支柱部122bの先端に設けられ、ステント1の血管保持部10の先端側と接触する押え部と122c、を有する。
【0138】
このような構成により、ステント1を装着部122に装着する際、連結部20の外表面と支持部122aの傾斜面122eとを接触させ、支柱部122bをステント1の内部に挿通させ、血管保持部10の先端と押え部122cとを接触させた状態で装着される。これにより、ステント1は、支柱部122bに挿通した状態で支持部122aと押え部122cとの間に配置されるため、両端側が保持され、搬送中の脱落が防止できる。また、ステント1は、支柱部122bに挿通した状態で装着部122に装着されるため、搬送時の径方向へのずれが抑制され、搬送中にステント1がカテーテル110の内腔に引っ掛かることなくスムーズに送達できる。
【符号の説明】
【0139】
1、1A~1D ステント
10、10A~10D 血管保持部(拡張部)、
10Ca,10Da 先端保持部、
10Cb、10Db 基端保持部、
11 第1湾曲部、
11´ 第1の頂点部、
12 第2湾曲部、
12´ 第2の頂点部、
13 第2接続部、
14 リンク部(14a 変形部)、
20、20A~20D 連結部、
21 線状部材、
22 第3湾曲部、
23 第4湾曲部、
24 第2接続部
30、30A~30D 回収部、
31 延在部、
32 係合部、
33 磁性部、
34 角部、
35 押付部、
36 指掛け部、
40、113、122d マーカー部、
50、50A セル、
51、51A 第1セル、
52、52B 第2セル、
60 突出部、
61 第1カバー部、
62 第2カバー部、
70 付属ユニット、
71 基部、
72 両脚部(72a 脚部)、
73 第3カバー格納部、
74 第4カバー格納部、
100 送達デバイス、
110 カテーテル、
120 送達部材、
122 装着部(122a 支持部、122b 支柱部、122c 押え部、122e 傾斜面)、
200 回収デバイス、
Bv 血管、
C 中心軸。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19