(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081200
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】測定装置及び検査装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240611BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240611BHJP
G01N 21/3586 20140101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L21/66 C
G01N21/01 D
G01N21/3586
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194644
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】日高 康弘
(72)【発明者】
【氏名】キム インギ
【テーマコード(参考)】
2G059
4M106
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB16
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG08
2G059HH05
2G059KK01
2G059MM01
4M106AA01
4M106BA05
4M106BA09
4M106CA04
4M106CA09
4M106DH16
4M106DH32
4M106DH39
4M106DH40
(57)【要約】
【課題】電場の大きさと方向の測定精度を向上させることができる測定装置及び検査装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る測定装置1は、パルスレーザ光PLをポンプ光PL1とトリガー光PL2とに分離する第1ビームスプリッタ11と、ポンプ光PL1を分散させる回折格子13と、ポンプ光PL1で試料30を照明する照明光学系14と、試料30から放射された電磁波EHを集光する集光光学系15と、遅延機構17で光路長を変化させたトリガー光PL2の入射した時刻毎に、電磁波EHを検出する時間領域検出器18と、電磁波EHを、振幅変調素子12の駆動周波数でロックイン検出を行うコントローラ19と、を備え、コントローラ19は、検出された電磁波EHの時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、測定部分36の電場の大きさと方向を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光をポンプ光とトリガー光とに分離する第1ビームスプリッタと、
前記ポンプ光の光路に配置された振幅変調素子と、
前記ポンプ光を分散させる回折格子と、
分散された前記ポンプ光が試料の測定部分に集光するように、前記ポンプ光で前記試料を照明する照明光学系と、
前記ポンプ光で照明された前記試料から放射された電磁波を集光する集光光学系と、
前記トリガー光の光路長を変化させる遅延機構と、
前記遅延機構で前記光路長を変化させた前記トリガー光の入射した時刻毎に、前記集光光学系で集光された前記電磁波を検出する時間領域検出器と、
前記時間領域検出器で検出された前記電磁波を、前記振幅変調素子の駆動周波数でロックイン検出を行うコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、検出された前記電磁波の時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、前記測定部分の電場の大きさと方向を取得する、
測定装置。
【請求項2】
前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、
前記照明光学系は、
前記回折格子によって分散された前記ポンプ光が入射するコリメータレンズと、
前記ポンプ光と、前記電磁波とを分離する第2ビームスプリッタと、
前記第2ビームスプリッタと、前記試料との間に配置された軸外し放物面鏡であって、分散された前記ポンプ光を前記測定部分に集光する前記軸外し放物面鏡と、
を含み、
前記集光光学系は、
前記軸外し放物面鏡と、
前記第2ビームスプリッタと、
前記電磁波を集光する集光レンズと、
を含み、
前記回折格子で分散された前記ポンプ光は、前記コリメータレンズを透過して平行光となり、
前記平行光に変換された前記ポンプ光は、前記第2ビームスプリッタを透過して前記軸外し放物面鏡によって前記測定部分に集光され、
前記試料から放射された前記電磁波は、前記軸外し放物面鏡で反射して平行光となり、
前記平行光に変換された前記電磁波は、前記第2ビームスプリッタで反射して前記集光レンズによって前記光伝導アンテナに集光される、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記照明光学系及び前記集光光学系は、前記軸外し放物面鏡と、前記第2ビームスプリッタと、の間に配置されたガルバノミラーをさらに含み、
前記ガルバノミラーは、前記ポンプ光を前記試料上で走査させる、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記遅延機構は、長さの異なる光ファイバーを光スイッチで切り替えることにより、前記トリガー光の光路長を変化させる、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、
前記光伝導アンテナは、材料として、低温成長ガリウムヒ素を含み、
前記パルスレーザ光は、800nm以上1550nm以下の波長であって、1ps以下のパルス幅を含み、
前記コントローラは、フィルタリングすることにより、100GHz以上10THz以下の前記周波数帯域を用いる、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記試料は、半導体装置の製造工程の途中におけるシリコンウェハを含み、
前記シリコンウェハの表面に、半導体デバイスの少なくとも一部の構造が形成されている、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項7】
前記トリガー光の波長を変換する2次高調波発生器をさらに備え、
前記パルスレーザ光は、1000nm以上の波長を含み、
前記照明光学系は、前記ポンプ光を前記シリコンウェハの裏面から入射させ、
前記集光光学系は、前記シリコンウェハの前記裏面から出射した前記電磁波を前記時間領域検出器に集光する、
請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記パルスレーザ光は、1100nm以上の波長を含み、
前記ポンプ光を入射させた前記試料で発生する前記電磁波は、前記ポンプ光の2光子吸収で発生する光キャリアに起因する、
請求項6に記載の測定装置。
【請求項9】
1100nm以上の波長を含むパルスレーザ光をポンプ光とトリガー光とに分離する第1ビームスプリッタと、
前記ポンプ光の光路に配置された振幅変調素子と、
前記ポンプ光が試料となるシリコンウェハの測定部分に集光するように、前記ポンプ光で前記シリコンウェハを照明する照明光学系と、
前記ポンプ光で照明された前記シリコンウェハから2光子吸収を経て放射された電磁波を集光する集光光学系と、
前記トリガー光の光路長を変化させる遅延機構と、
前記遅延機構で前記光路長を変化された前記トリガー光の入射した時刻毎に、前記集光光学系で集光された前記電磁波を検出する時間領域検出器と、
前記時間領域検出器で検出された前記電磁波を、前記振幅変調素子の駆動周波数でロックイン検出を行うコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、検出された前記電磁波の時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、前記測定部分の電場の大きさと方向を取得する、
測定装置。
【請求項10】
前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、
前記照明光学系は、
コリメータレンズと、
前記ポンプ光と、前記電磁波とを分離する第2ビームスプリッタと、
前記第2ビームスプリッタと、前記シリコンウェハとの間に配置された軸外し放物面鏡であって、前記ポンプ光を前記測定部分に集光する前記軸外し放物面鏡と、
を含み、
前記集光光学系は、
前記軸外し放物面鏡と、
前記第2ビームスプリッタと、
前記電磁波を集光する集光レンズと、
を含み、
前記ポンプ光は、前記コリメータレンズを透過して平行光となり、
前記平行光に変換された前記ポンプ光は、前記第2ビームスプリッタを透過して前記軸外し放物面鏡によって前記測定部分に集光され、
前記シリコンウェハから放射された前記電磁波は、前記軸外し放物面鏡で反射して平行光となり、
前記平行光に変換された前記電磁波は、前記第2ビームスプリッタで反射して前記集光レンズによって前記光伝導アンテナに集光する、
請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記照明光学系及び前記集光光学系は、前記軸外し放物面鏡と、前記第2ビームスプリッタと、の間に配置されたガルバノミラーをさらに有し、
前記ガルバノミラーは、前記ポンプ光を前記シリコンウェハ上で走査させる、
請求項10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記遅延機構は、長さの異なる光ファイバーを光スイッチで切り替えることにより、前記トリガー光の光路長を変化させる、
請求項9に記載の測定装置。
【請求項13】
前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、
前記光伝導アンテナは、材料として、低温成長ガリウムヒ素を含み、
前記パルスレーザ光は、1100nm以上1550nm以下の波長であって、1ps以下のパルス幅を含み、
前記コントローラは、フィルタリングすることにより、100GHz以上10THz以下の前記周波数帯域を用いる、
請求項9に記載の測定装置。
【請求項14】
パルスレーザ光をポンプ光とトリガー光とに分離する第1ビームスプリッタと、
前記ポンプ光の光路に配置された振幅変調素子と、
前記ポンプ光を第1ポンプ光と第2ポンプ光とに分離する第3ビームスプリッタと、
前記第1ポンプ光が試料の測定部分に集光するように、前記第1ポンプ光で前記試料を第1面側から照明する第1照明光学系と、
前記第2ポンプ光が前記試料の前記測定部分に集光するように、前記第2ポンプ光で前記試料を前記第1面の反対側の第2面側から照明する第2照明光学系と、
前記第1ポンプ光及び前記第2ポンプ光で照明された前記試料から放射された電磁波を集光する集光光学系と、
前記トリガー光の光路長を変化させる遅延機構と、
前記遅延機構で前記光路長を変化させた前記トリガー光の入射した時刻毎に、前記集光光学系で集光された前記電磁波を検出する時間領域検出器と、
前記時間領域検出器で検出された前記電磁波を、前記振幅変調素子の駆動周波数でロックイン検出を行うコントローラと、
を備え、
前記第1照明光学系における前記第1ポンプ光の光路長は、前記第2照明光学系における前記第2ポンプ光の光路長と同じであり、
前記コントローラは、検出された前記電磁波の時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、前記測定部分の電場の大きさと方向を取得する、
測定装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかの測定装置を備え、
前記測定装置が取得した前記電場の大きさと方向から前記試料の電気的接触を検査する、
検査装置。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかの測定装置を備え、
前記測定装置が取得した前記電場の大きさと方向から前記試料に含まれたドーピング物質存在比、絶縁膜厚み、空乏層厚み、内部歪、及び、アニール後の活性化の少なくともいずれかを検査する、
検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造において、パルスレーザを半導体デバイスに照射し、励起された電子によって放射される電磁波を計測することにより、半導体デバイスの内部電場を評価する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-74954号公報
【特許文献2】特許第4001373号公報
【特許文献3】特開2006-24774号公報
【特許文献4】米国特許第5420595号公報
【特許文献5】特許第5804362号公報
【特許文献6】特許第5822194号公報
【特許文献7】特開2013-76618号公報
【特許文献8】特許第6286863号公報
【特許文献9】特許第5547868号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Murakami, H. et.al., Microelectronics Reliability 49 (2009) 1116-1126.
【非特許文献2】Yamashita, M. et. al., APPLIED PHYSICS LETTERS 94, 191104 (2009).
【非特許文献3】Oron, D. et.al, OPTICS EXPRESS vol. 13, No. 5, 1468 (2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料の内部の電場を高精度で測定することができる測定装置が所望されている。
【0006】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、電場の大きさと方向の測定精度を向上させることができる測定装置及び検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の測定装置は、パルスレーザ光をポンプ光とトリガー光とに分離する第1ビームスプリッタと、前記ポンプ光の光路に配置された振幅変調素子と、前記ポンプ光を分散させる回折格子と、分散された前記ポンプ光が試料の測定部分に集光するように、前記ポンプ光で前記試料を照明する照明光学系と、前記ポンプ光で照明された前記試料から放射された電磁波を集光する集光光学系と、前記トリガー光の光路長を変化させる遅延機構と、前記遅延機構で前記光路長を変化させた前記トリガー光の入射した時刻毎に、前記集光光学系で集光された前記電磁波を検出する時間領域検出器と、前記時間領域検出器で検出された前記電磁波を、前記振幅変調素子の駆動周波数でロックイン検出を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、検出された前記電磁波の時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、前記測定部分の電場の大きさと方向を取得する。
【0008】
上記測定装置において、前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、前記照明光学系は、前記回折格子によって分散された前記ポンプ光が入射するコリメータレンズと、前記ポンプ光と、前記電磁波とを分離する第2ビームスプリッタと、前記第2ビームスプリッタと、前記試料との間に配置された軸外し放物面鏡であって、分散された前記ポンプ光を前記測定部分に集光する前記軸外し放物面鏡と、を含み、前記集光光学系は、前記軸外し放物面鏡と、前記第2ビームスプリッタと、前記電磁波を集光する集光レンズと、を含み、前記回折格子で分散された前記ポンプ光は、前記コリメータレンズを透過して平行光となり、前記平行光に変換された前記ポンプ光は、前記第2ビームスプリッタを透過して前記軸外し放物面鏡によって前記測定部分に集光され、前記試料から放射された前記電磁波は、前記軸外し放物面鏡で反射して平行光となり、前記平行光に変換された前記電磁波は、前記第2ビームスプリッタで反射して前記集光レンズによって前記光伝導アンテナに集光されてもよい。
【0009】
上記測定装置において、前記照明光学系及び前記集光光学系は、前記軸外し放物面鏡と、前記第2ビームスプリッタと、の間に配置されたガルバノミラーをさらに含み、前記ガルバノミラーは、前記ポンプ光を前記試料上で走査させてもよい。
【0010】
上記測定装置において、前記遅延機構は、長さの異なる光ファイバーを光スイッチで切り替えることにより、前記トリガー光の光路長を変化させてもよい。
【0011】
上記測定装置において、前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、前記光伝導アンテナは、材料として、低温成長ガリウムヒ素を含み、前記パルスレーザ光は、800nm以上1550nm以下の波長であって、1ps以下のパルス幅を含み、前記コントローラは、フィルタリングすることにより、100GHz以上10THz以下の前記周波数帯域を用いてもよい。
【0012】
上記測定装置において、前記試料は、半導体装置の製造工程の途中におけるシリコンウェハを含み、前記シリコンウェハの表面に、半導体デバイスの少なくとも一部の構造が形成されてもよい。
【0013】
上記測定装置において、前記トリガー光の波長を変換する2次高調波発生器をさらに備え、前記パルスレーザ光は、1000nm以上の波長を含み、前記照明光学系は、前記ポンプ光を前記シリコンウェハの裏面から入射させ、前記集光光学系は、前記シリコンウェハの前記裏面から出射した前記電磁波を前記時間領域検出器に集光してもよい。
【0014】
上記測定装置において、前記パルスレーザ光は、1100nm以上の波長を含み、前記ポンプ光を入射させた前記試料で発生する前記電磁波は、前記ポンプ光の2光子吸収で発生する光キャリアに起因してもよい。
【0015】
一実施形態の測定装置は、1100nm以上の波長を含むパルスレーザ光をポンプ光とトリガー光とに分離する第1ビームスプリッタと、前記ポンプ光の光路に配置された振幅変調素子と、前記ポンプ光が試料となるシリコンウェハの測定部分に集光するように、前記ポンプ光で前記シリコンウェハを照明する照明光学系と、前記ポンプ光で照明された前記シリコンウェハから2光子吸収を経て放射された電磁波を集光する集光光学系と、前記トリガー光の光路長を変化させる遅延機構と、前記遅延機構で前記光路長を変化された前記トリガー光の入射した時刻毎に、前記集光光学系で集光された前記電磁波を検出する時間領域検出器と、前記時間領域検出器で検出された前記電磁波を、前記振幅変調素子の駆動周波数でロックイン検出を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、検出された前記電磁波の時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、前記測定部分の電場の大きさと方向を取得する。
【0016】
上記測定装置において、前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、前記照明光学系は、コリメータレンズと、前記ポンプ光と、前記電磁波とを分離する第2ビームスプリッタと、前記第2ビームスプリッタと、前記シリコンウェハとの間に配置された軸外し放物面鏡であって、前記ポンプ光を前記測定部分に集光する前記軸外し放物面鏡と、を含み、前記集光光学系は、前記軸外し放物面鏡と、前記第2ビームスプリッタと、前記電磁波を集光する集光レンズと、を含み、前記ポンプ光は、前記コリメータレンズを透過して平行光となり、前記平行光に変換された前記ポンプ光は、前記第2ビームスプリッタを透過して前記軸外し放物面鏡によって前記測定部分に集光され、前記シリコンウェハから放射された前記電磁波は、前記軸外し放物面鏡で反射して平行光となり、前記平行光に変換された前記電磁波は、前記第2ビームスプリッタで反射して前記集光レンズによって前記光伝導アンテナに集光してもよい。
【0017】
上記測定装置において、前記照明光学系及び前記集光光学系は、前記軸外し放物面鏡と、前記第2ビームスプリッタと、の間に配置されたガルバノミラーをさらに有し、前記ガルバノミラーは、前記ポンプ光を前記シリコンウェハ上で走査させてもよい。
【0018】
上記測定装置において、前記遅延機構は、長さの異なる光ファイバーを光スイッチで切り替えることにより、前記トリガー光の光路長を変化させてもよい。
【0019】
上記測定装置において、前記時間領域検出器は、光伝導アンテナを含み、前記光伝導アンテナは、材料として、低温成長ガリウムヒ素を含み、前記パルスレーザ光は、1100nm以上1550nm以下の波長であって、1ps以下のパルス幅を含み、前記コントローラは、フィルタリングすることにより、100GHz以上10THz以下の前記周波数帯域を用いてもよい。
【0020】
一実施形態の測定装置は、パルスレーザ光をポンプ光とトリガー光とに分離する第1ビームスプリッタと、前記ポンプ光の光路に配置された振幅変調素子と、前記ポンプ光を第1ポンプ光と第2ポンプ光とに分離する第3ビームスプリッタと、前記第1ポンプ光が試料の測定部分に集光するように、前記第1ポンプ光で前記試料を第1面側から照明する第1照明光学系と、前記第2ポンプ光が前記試料の前記測定部分に集光するように、前記第2ポンプ光で前記試料を前記第1面の反対側の第2面側から照明する第2照明光学系と、前記第1ポンプ光及び前記第2ポンプ光で照明された前記試料から放射された電磁波を集光する集光光学系と、前記トリガー光の光路長を変化させる遅延機構と、前記遅延機構で前記光路長を変化させた前記トリガー光の入射した時刻毎に、前記集光光学系で集光された前記電磁波を検出する時間領域検出器と、前記時間領域検出器で検出された前記電磁波を、前記振幅変調素子の駆動周波数でロックイン検出を行うコントローラと、を備え、前記第1照明光学系における前記第1ポンプ光の光路長は、前記第2照明光学系における前記第2ポンプ光の光路長と同じであり、前記コントローラは、検出された前記電磁波の時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、前記測定部分の電場の大きさと方向を取得する。
【0021】
一実施形態の検査装置は、上記測定装置を備え、前記測定装置が取得した前記電場の大きさと方向から前記試料の電気的接触を検査する。
【0022】
一実施形態の検査装置は、上記測定装置を備え、前記測定装置が取得した前記電場の大きさと方向から前記試料に含まれたドーピング物質存在比、絶縁膜厚み、空乏層厚み、内部歪、及び、アニール後の活性化の少なくともいずれかを検査する。
【発明の効果】
【0023】
本開示により、電場の大きさと方向の測定精度を向上させることができる測定装置及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態1に係る測定装置を例示した構成図である。
【
図2】実施形態1に係るシリコン内を透過する光の波長と厚さとの関係を例示したグラフである。
【
図3】実施形態1に係る試料を例示した断面図である。
【
図4】実施形態1に係る試料の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
【
図6】比較例に係る試料の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
【
図7】実施形態1に係る測定装置において、検出された電磁波の時間領域波形を例示したグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は光電流を示す。
【
図8】実施形態1に係る測定装置において、検出された電磁波の周波数領域波形を例示したグラフであり、横軸は周波数を示し、縦軸は検出電力を示す。
【
図9】実施形態1に係るポンプ光のパルス幅と、ポンプ光で誘起されることにより放射された電磁波の時間領域における波長との関係を例示した図である。
【
図10】実施形態2に係る測定装置を例示した構成図である。
【
図11】実施形態3に係る試料を例示した断面図である。
【
図12】実施形態3に係る試料の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
【
図13】実施形態3の別の例に係る試料の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
【
図14】実施形態3の別の例に係る測定装置において、2光子吸収によるポンプ光の吸収過程を例示した図である。
【
図16】LTEMによってテラヘルツ波を測定される半導体デバイスを例示した断面図である。
【
図17】極短パルスの半導体デバイスへの照射時にテラヘルツ波が放射される説明を例示した図である。
【
図18】極短パルスの半導体デバイスへの照射時にテラヘルツ波が放射される説明を例示した図である。
【
図19】トランジスタの構造を例示した断面図である。
【
図20】テンポラルフォーカシングの説明を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び、簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0026】
(実施形態の概要)
実施形態の概要を説明する。本実施形態は、一例として、半導体デバイスを含む半導体装置の製造において、半導体装置の内部の電場を評価するために、パルスレーザを半導体装置に照射し、励起された電子等の光キャリアによって放射される電磁波を測定する技術に関する。
【0027】
半導体装置の製造の現場において、20年ほど前までは、回路パターンの微細化が唯一の進化軸であり、駆動速度の向上や消費電力低減に加え、低コスト化も微細化により同時に実現することができた。しかし、微細化の技術的な困難度が高まり、半導体デバイスの3次元構造化に加えて、High-K/Low-Kなどの新材料の導入、歪の意図的な付加による電子移動度の向上など、物性をコントロールすることによる性能向上の寄与が近年、特に高まっている。これらの要因により、研究開発でのプロセス構築、及び、量産時の歩留まり向上の両面において、高精度かつ高スループットの物性の測定が必要不可欠になってきている。
【0028】
例を挙げると、イオン注入プロセスにおけるドーパントの量や空間的分布、アニール後の再活性化状態、SiGeの選択的エピタキシャル成長工程における内部歪量などの測定がある。しかし、これらは、物理的な測定装置であるOCD(OOptical Critical Dimension)やCD-SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)等では評価することが困難である。また、蛍光X線や質量分析等を用いた化学的計測方法では、精度はあるもののスループット面での対応が難しく、破壊検査となることもしばしばである。
【0029】
これに対して、別のアプローチである電気的特性検査としては、基本的な構成要素であるMOS(Metal-Oxide-Silicon)構造のトランジスタ検査があり、プローブを電気的に接続してC-V特性などの電気特性評価を行っている。これらは、半導体デバイスの直接的な性能評価である。LADA(Laser-assisted device alteration)やOBIRCH(Optical Beam Induced Resistance Change)などは、光を入射されることで、不良確認に加えて、不良に対するマージンや高抵抗のデバイス内の位置も特定することができる。
【0030】
ただし、全て接触式の検査であるため、配線層やパッドが形成された半導体後工程でなければ不可能な検査である。これらの電気的特性評価を半導体前工程において非接触で確認することができ、その結果から半導体内部に形成される空乏層や反転領域の広がり等を正確に解析できれば、イオン注入やアニールなどのプロセスに速やかにフィードバックが可能である。よって、開発期間や製造サイクルタイムの短縮に非常に有効であるが、未だそのニーズを満たす確立した測定技術は存在しない。
【0031】
そのようなニーズを実現するために提案されているのが、特許文献1~3に記載されているように、LTEM(Laser-induced Terahertz Emission Microscope)である。特許文献4で示されているように、電場が存在する半導体等の物質にパルスレーザを照射することで、テラヘルツ帯域(主に、100GHz~10THzの周波数帯域)を含む電磁波が発生する。テラヘルツ帯域の電磁波をテラヘルツ波と呼ぶ。
【0032】
下記の(1)式に示すように、電流の変化により誘起されたテラヘルツ波ETHzは、光キャリアの数の変化Δnと、光キャリアの移動速度vの変化Δvと、に比例し、パルスレーザの時間幅Δtに反比例する。
【0033】
【0034】
これを応用して、測定対象となる半導体装置にフェムト秒などの極短パルスのパルスレーザ光を走査させる。光励起により発生した電子及び正孔を含む光キャリアは、半導体装置内の電場で加速されることで電磁波を発生する。発生した電磁波を検出することで、測定対象の内部電場分布を解析により求める。このように、LTEMは、測定対象の内部の電場を測定することができる革新的な技術である。LTEMの適用例として、トランジスタ内のp-n接合付近に発生するビルトイン電場による光キャリアの加速の測定等があげられる。LTEMは、既に太陽電池の検査において製品化されている。
【0035】
LTEMの問題点として、放射されるテラヘルツ波の強度が弱く感度が低いことがあげられる。感度を向上させるために、特許文献5に示すように、外部バイアス電圧をかけることや、特許文献6に示すように、追加のテラヘルツ波を照射して内部の電場を強めることなども行われている。
【0036】
また、非特許文献1には、LTEMの構成の一例が記載されている。
図15は、LTEMを例示した構成図である。
図16は、LTEMによるテラヘルツ波の測定対象となる半導体装置を例示した断面図である。
図17~
図18は、極短パルスの半導体装置への照射時にテラヘルツ波が放射される説明を例示した図である。非特許文献1及び
図15~
図18に示すように、測定対象である半導体装置の構造と放射されるテラヘルツ波との関係が調査されている。p-n接合に電気的に接続された配線がアンテナの役割をし、テラヘルツ波の強度が大きくなることが分かっている。ただし、検査時における外部バイアスの印加は、本来の利点である非接触測定ではなくなることを意味する。
【0037】
また、測定対象の半導体装置の検査のために配線を追加することも現実的には困難である。このため、検出感度を高める本質的な解にはなっていない。また、特許文献7及び8に示すように、光学部材を用いた光学的な構成により発生したテラヘルツ波を無駄なく検出しようという光学構成も提案されている。しかしながら、これらは、2、3倍検出光量が増える程度で、感度の大幅な向上には結びついていない。
【0038】
また、実際の半導体装置の製造現場での測定及び検査を想定すると、半導体ウェハの表面にトランジスタ及び金属の配線層を形成した後工程で測定を行う必要もある。よって、半導体ウェハの裏面よりパルスレーザ光を入射させ、放射されたテラヘルツ波も同様に裏面から検出する必要がある。非特許文献1及び2に示すように、このような場合に、当該トランジスタにパルスレーザ光を到達させるためには、パルスレーザ光は、シリコン等の半導体ウェハを透過する1000nm以上の波長を有する必要がある。しかし、そのような波長では、トランジスタで吸収されるパルスレーザ光は少なくなり、発生する光キャリア数が減って、放射されるテラヘルツ波の強度も小さくなってしまう。
【0039】
さらに、トランジスタに至るまでのパルスレーザ光の経路でも、パルスレーザ光の吸収により光キャリアが発生する。例えば、
図19に示すような構造を有するトランジスタを考えると、測定対象以外の物質界面での電界による加速や、フォトデンバー効果による拡散電場によりテラヘルツ波が発生しうる。それらのテラヘルツ波が計測の阻害要因になることは容易に想像できる。なお、
図19は、半導体装置のトランジスタの構造を例示した断面図である。
図19に示すように、通常は、ゲート(Gate)付近のソース及びドレインが測定対象となる。しなしながら、それ以外の境界付近にもポテンシャルの変化による電場が発生する。そして、光キャリアの加速によるテラヘルツ波が発生する。
【0040】
半導体製造工程において、LTEM技術を適用した測定及び検査を実現するためには、測定対象付近から発生するテラヘルツ光のみを測定する必要がある。このような空間的に分解能が高い測定方法として、テンポラルフォーカシング(Temporal Focusing)をLTEMに適用した新たな測定方法を提案する。テンポラルフォーカシングは、生物観察において用いられているパルスレーザの照明方法である。テンポラルフォーカシングについての詳細は、特許文献9や非特許文献3に記載されている。
図20は、テンポラルフォーカシングを例示した説明図である。
図20に示すように、極短パルスを回折格子で波長ごとに分離させ、分離した光が再び1点に集光するような光学系とする。そうすると、焦点付近では、パルス幅(パルスの持続時間)が短くなる。一方、焦点から外れた領域では、パルス幅が長くなる。基本的には、多光子励起顕微鏡に対しての照明技術であり、
図20に示すように、測定対象に対しての深さ方向の分解能を向上させることができる。
【0041】
LTEMにおいて、テンポラルフォーカシングを用いて照明した場合を考えると、照明光学系の焦点付近でのみ極短パルス光となる。焦点以外では、焦点付近よりも長いパルス光になる。よって、焦点以外では、焦点付近でのパルス幅と比較して長い時間レーザが照明される。このため、焦点以外においてパルス光の吸収により発生した光キャリアから発生した電磁波の波長は、焦点付近においてパルス光の吸収により発生した光キャリアから発生した電磁波の波長よりも長くなる。
【0042】
ここで、LTEMは、時間領域の波形での電場の変化を測定することができる。よって、そのフーリエ変換により、電場の周波数領域の波形も得られる。よって、LTEMは、周波数のフィルタをかけることで、照明光学系の焦点付近で発生した光キャリアに起因する電磁波のみの情報を取り出すことができる。
【0043】
(実施形態1)
次に、実施形態1の測定装置を説明する。本実施形態の測定装置は、半導体装置の製造において、半導体装置の内部の電場を非接触で高速に測定する。本実施形態の測定装置は、半導体装置等の試料の測定部分の電場の大きさと方向を測定する。半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成された半導体デバイスとを含む。半導体装置の表面側に半導体デバイスが形成されている。半導体装置の裏面側に半導体基板が配置されている。測定装置は、半導体基板の裏面側から、半導体基板に対して、透過力の高い赤外線のパルスレーザ光を照射する。
【0044】
パルスレーザ光は、半導体装置の表面の半導体デバイス付近で焦点を結ぶようにする。照明光学系は、焦点位置でパルス幅が最小となるように、入射角ごとに異なる波長のパルスレーザ光を透過させる。これにより、パルスレーザ光の焦点付近でのみ最小のパルス幅に相当する短い時間で半導体基板が励起され、電子及びホール対を含む光キャリアが形成され、さらに、半導体装置の内部電場をうけて、光キャリアが加速されることにより誘起された電磁波が放射される。
【0045】
放射された電磁波は、パルスレーザ光をビームスプリッタで分岐した光をトリガー光とする光伝導アンテナで検出される。トリガー光には遅延機構が設けられ、検出された電磁波の時間領域波形を測定することができる。時間領域波形をフーリエ変換して電磁波の周波数領域波形をもとめ、パルスレーザ光の最小のパルス幅に相当する周波数成分を解析する。これにより、パルスレーザ光が焦点付近以外で吸収されたことに起因する電磁波の影響を取り除き、焦点付近で吸収されたことに起因する電磁波を検出する。このように、本実施形態の測定装置は、効率的で精度の高い測定を実現することができる。以下、図面を参照して測定装置の詳細を説明する。
【0046】
図1は、実施形態1に係る測定装置を例示した構成図である。
図1に示すように、測定装置1は、フェムト秒レーザ10、第1ビームスプリッタ11、振幅変調素子12、回折格子13、照明光学系14、集光光学系15、2次高調波発生器16、遅延機構17、時間領域検出器18及びコントローラ19を備えている。測定装置1は、試料30の内部の電場の大きさと方向を測定する。例えば、測定装置1は、試料30の内部のビルトイン電場を測定する。
【0047】
フェムト秒レーザ10は、パルスレーザの一例である。パルスレーザは、パルスレーザ光PLを生成する。なお、パルスレーザは、パルスレーザ光PLを生成すれば、フェムト秒レーザ10に限らない。パルスレーザによって生成されたパルスレーザ光PLは、800nm以上1550nm以下の波長を含む。また、パルスレーザ光PLは、1000nm以上の波長を含んでもよいし、1100nm以上1550nm以下の波長を含んでもよい。また、パルスレーザ光PLは、1ps以下のパルス幅を含んでもよい。
【0048】
図2は、実施形態1に係るシリコン内を透過する光の波長と厚さとの関係を例示したグラフである。
図2は、シリコン内の光の透過率が1/e
2となる厚みを示している。
図2に示すように、試料30がシリコン(Silicon)を含む場合には、パルスレーザ光PLのシリコンに対する透過率が確保できるように、1000nm以上の波長のフェムト秒レーザ10を用いることが望ましい。
【0049】
第1ビームスプリッタ11は、フェムト秒レーザ10等のパルスレーザで生成されたパルスレーザ光PLを、ポンプ光PL1とトリガー光PL2とに分離する。第1ビームスプリッタ11は、例えば、ハーフミラーである。第1ビームスプリッタ11で分離したポンプ光PL1は、振幅変調素子12に入射する。第1ビームスプリッタ11で分離したトリガー光PL2は、2次高調波発生器16に入射する。
【0050】
振幅変調素子12は、ポンプ光PLの光路に配置されている。振幅変調素子12は、コントローラ19の駆動信号により駆動する。振幅変調素子12は、コントローラ19によってロックイン検出が行われる際の駆動周波数を出力してもよい。振幅変調素子12は、ロックイン検出のためにポンプ光PL1を変調してもよい。ポンプ光PL1は、振幅変調素子12を介して回折格子13に入射する。
【0051】
回折格子13は、ポンプ光PL1を分散させる。例えば、回折格子13は、ポンプ光PL1に含まれる波長毎に回折する方向が変わるように、ポンプ光PL1を分散させる。
図1では、理解の助けになるように、分散されたポンプ光PL1を、異なるハッチングを施された4本の太線で示しているが、分散される波長が4つであることを示すものではない。回折格子13で分散されたポンプ光PL1は、照明光学系14におけるコリメータレンズ20に入射する。
【0052】
照明光学系14は、分散されたポンプ光PLが試料30の測定部分に集光するように、ポンプ光PL1で試料30を照明する。照明光学系14は、コリメータレンズ20、第2ビームスプリッタ21、ミラー22及び軸外し放物面鏡23を含んでいる。照明光学系14は、さらに、ミラー及びレンズ等の他の光学部材を含んでもよい。
【0053】
コリメータレンズ20は、回折格子13に一方の焦点が位置するように配置されている。コリメータレンズ20は、回折格子13によって分散されたポンプ光PLが入射する。コリメータレンズ20は、回折格子13によって分散されたポンプ光PL1を平行光に変換する。具体的には、コリメータレンズ20は、回折格子13によって分散された各波長のポンプ光PL1を平行光に変換する。コリメータレンズ20で平行光に変換されたポンプ光PL1は、第2ビームスプリッタ21に入射する。
【0054】
第2ビームスプリッタ21は、ポンプ光PL1と、後述する電磁波EHとを分離する。例えば、第2ビームスプリッタ21は、表面にITO膜等がコーティングされている。第2ビームスプリッタ21は、入射したポンプ光PL1を透過させる。第2ビームスプリッタ21を透過したポンプ光PL1は、ミラー22に入射する。
【0055】
ミラー22は、入射したポンプ光PL1を反射する。ミラー22で反射したポンプ光PL1は、軸外し放物面鏡23に入射する。
【0056】
軸外し放物面鏡23は、集光部材の一例である。集光部材は、ポンプ光PLが試料30の測定部分に集光するようにポンプ光PL1を集光すれば、レンズ等の他の光学部材でもよい。軸外し放物面鏡23は、第2ビームスプリッタ21と、試料30との間に配置されている。軸外し放物面鏡23は、焦点が試料30の測定部分に位置するように配置されている。軸外し放物面鏡23は、入射した分散されたポンプ光PL1を試料30の測定部分に集光する。
【0057】
このように、照明光学系14において、回折格子13で分散されたポンプ光PL1は、コリメータレンズ20を透過して平行光となる。平行光に変換されたポンプ光PL1は、第2ビームスプリッタ21を透過してミラー22に入射する。ミラー22で反射したポンプ光PL1は、軸外し放物面鏡23によって試料30の測定部分に集光される。
【0058】
試料30は、例えば、ステージ40上に載置されている。試料30は、基板31及び基板31上に形成された半導体デバイス32を含む。
【0059】
図3は、実施形態1に係る試料30を例示した断面図である。
図3には、試料30の各位置に置ける電場ポテンシャルを示している。
図3に示すように、試料30は、基板31及び半導体デバイス32を含む。このように、試料30は、半導体装置でもよい。基板31は、半導体(Semiconductor)を含む。半導体デバイス32は、金属(Metal)を含むゲート金属33、及び、酸化膜(Oxide)を含む絶縁体34を有している。よって、半導体装置は、基板31、絶縁体34及びゲート金属33を含むMOS構造を有している。
【0060】
ここで、測定部分36は、例えば、空乏層35である。なお、測定部分36は、試料30の内部であれば、空乏層35に限らず、基板31及び不純物層等、試料30の内部の他の部分でもよい。試料30は、半導体装置の製造工程の途中におけるシリコンウェハを含んでもよい。シリコンウェハの表面に、半導体デバイス32の少なくとも一部の構造が形成されてもよい。半導体装置の製造工程によっては、ゲート金属33の上層に金属配線層が形成され、表面側からは、ポンプ光PL1が空乏層35まで到達させることができない場合がある。
【0061】
そこで、ステージ40に載置させた試料30の基板31の裏面からポンプ光PL1を入射させ、空乏層35付近でポンプ光PLを集光させる。ここで、
図2で示したように、試料30に対する透過率が確保できるように、フェムト秒レーザ10によって生成された1000nm以上の波長を含むポンプ光PL1を入射させる。また、ポンプ光PL1は、テンポラルフォーカシングで集光されている。ポンプ光PL1は、試料30内で吸収される。このとき、電子と正孔対の光キャリアが形成される。光キャリアは、ポンプ光PL1の焦点位置の領域Iの他、焦点以外の領域IIでも生成される。領域Iは、測定部分36を含む。
【0062】
基板31等を含む試料30の内部では、各層のバンド構造の違いにより、ビルトイン電場が発生する。よって、試料30の内部に電場ポテンシャルが形成される。これにより、光キャリアが、電場ポテンシャルの低い方へ加速され、その結果、誘起された電磁波EHが放射される。放射された電磁波EHは、テラヘルツに達する周波数を有する。よって、電磁波EHをテラヘルツ波とも呼び、電磁波EThzと呼ぶ場合もある。
【0063】
図4は、実施形態1に係る試料30の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
図4に示すように、テンポラルフォーカシングによって試料30をポンプ光PL1で照明した場合に、焦点位置の領域Iで光キャリアが生成する他、焦点以外の領域IIにおいても光キャリアが生成する。ポンプ光PLは、裏面から入射されるので、領域IIの光キャリアは、領域Iの光キャリアよりも先に発生する。テンポラルフォーカシングでも、焦点以外で発生する光キャリアの数が減るわけではない。しかしながら、焦点以外の領域IIでは、長い時間をかけて光キャリアが生成されるため、誘起される電磁波EHの波長が長くなり、強度も低くなる。
【0064】
図5は、比較例に係る試料30を例示した断面図である。
図6は、比較例に係る試料30の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
図5及び
図6に示すように、比較例では、ポンプ光PL1をテンポラルフォーカシングで照明しない例である。この場合には、ポンプ光PL1のNAの中の光は、すべて同じ波長域である。比較例では、領域IIの方が空間的には広い範囲で光キャリアが生成される。しかしながら、領域IIの時間幅は短く、領域Iの時間幅と同等となっている。比較例では、焦点位置の領域Iの時間幅と、領域IIの時間幅とが同等なので、領域Iからの電磁波EHと、領域IIからの電磁波EHと、を区別するのが困難である。よって、測定部分36の電場の大きさと方向を測定することが困難である。
【0065】
図1に戻り、放射された電磁波EHは、試料30の基板31の裏面より射出される。試料30の裏面より射出された電磁波EHは、集光光学系15の軸外し放物面鏡23に入射する。
【0066】
集光光学系15は、ポンプ光PLで照明された試料30から放射された電磁波EHを集光する。集光光学系15は、軸外し放物面鏡23、ミラー22、第2ビームスプリッタ21及び集光レンズ24を含む。したがって、第2ビームスプリッタ21、ミラー22及び軸外し放物面鏡23は、照明光学系14及び集光光学系15を兼ねている。集光光学系15は、さらに、ミラー及びレンズ等の他の光学部材を備えてもよい。
【0067】
軸外し放物面鏡23は、入射した電磁波EHを平行光に変換する。平行光に変換された電磁波EHは、ミラー22に入射する。
【0068】
ミラー22は、入射した電磁波EHを反射する。ミラー22で反射した電磁波EHは、第2ビームスプリッタ21に入射する。
【0069】
第2ビームスプリッタ21は、ポンプ光PL1と、電磁波EHとを分離する。例えば、第2ビームスプリッタ21は、入射した電磁波EHを反射させる。第2ビームスプリッタ21で反射した電磁波EHは、集光レンズ24に入射する。
【0070】
集光レンズ24は、焦点が光伝導アンテナ25に位置するように配置されている。集光レンズ24は、電磁波EHを時間領域検出器18に集光する。時間領域検出器18は、例えば、光伝導アンテナ25を含む。試料30から放射された電磁波EHは、軸外し放物面鏡23で反射して平行光となる。平行光に変換された電磁波EHは、第2ビームスプリッタ21で反射して集光レンズ24によって光伝導アンテナ25に集光される。
【0071】
2次高調波発生器16は、第1ビームスプリッタ11で分離したトリガー光PL2が入射する。2次高調波発生器16は、トリガー光PL2の波長を変換してもよい。トリガー光PL2を2次高調波発生器16に通過させる理由は、光伝導アンテナ25として一般的に利用される低温成長ガリウムヒ素(Low Temperature GaLllium arsenide、LT-GaAsと呼ぶ。)で効率的に光キャリアを発生させて、光伝導アンテナ25での電磁波EHの検出感度を高めるためである。
【0072】
遅延機構17は、トリガー光PL2の光路長を変化させる。これにより、遅延機構17は、光伝導アンテナ25へのトリガー光PL2の到達時間を変更させる。遅延機構17は、複数のミラーを含んでもよい。遅延機構17は、ミラー間の距離を変化させることにより、トリガー光PL2の光路長を変化させてもよい。また、遅延機構17は、長さの異なる光ファイバーを光スイッチで切り替えることにより、トリガー光PL2の光路長を変化させてもよい。
【0073】
時間領域検出器18は、遅延機構17で光路長を変化させたトリガー光PL2の入射した時刻毎に、集光光学系15で集光された電磁波EHを検出する。時間領域検出器18は、光伝導アンテナ25及び検流計26を含む。光伝導アンテナ25は、前述したように、材料として、低温成長ガリウムヒ素を含む。光伝導アンテナ25は、トリガー光PL2が入射したタイミングで、電磁波EHの電場の大きさと方向を検出する。光伝導アンテナ25は、遅延機構17を駆動させながら、トリガー光PL2の到達するタイミングを変えて複数回、電磁場EHの電場の大きさと方向を検出する。
【0074】
試料30の表面に半導体デバイス等が形成されている場合には、照明光学系14は、ポンプ光PL1をシリコンウェハの裏面から入射させる。集光光学系15は、シリコンウェハの裏面から放射された電磁波EHを時間領域検出器18に集光する。時間領域検出器18は、ポンプ光PL1をシリコンウェハの裏面から入射させて発生した電磁波EHのうち、裏面から放射された電磁波EHを検出する。
【0075】
図7は、実施形態1に係る測定装置1において、検出された電磁波EHの時間領域波形を例示したグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は光電流を示す。
図7に示すように、時間領域検出器18は、トリガー光PL2の入射した時刻毎に、電磁波EHを検出する。具体的には、光伝導アンテナ25は、集光された電磁波EHによって光キャリアを発生させる。検流計26は、発生した光キャリアを検出する。これにより、時間領域検出器18は、電磁波EHの時間領域波形を検出することができる。電磁波EHの時間領域波形を、電磁波EHの生波形とも呼ぶ。
【0076】
ポンプ光PL1は、振幅変調素子12で変調されてもよい。コントローラ19は、時間領域検出器18で検出された電磁波EHを、振幅変調素子12の駆動周波数でロックイン検出を行う。つまり、コントローラ19は、時間領域検出器18における検流計26の出力のうち、振幅変調素子12での変調周波数のみをバンドパスフィルタで抽出するようなロックイン検出を行う。これにより、コントローラ19は、微弱な信号から高精度な電磁波EHの振幅波形を検出することができる。
【0077】
図8は、実施形態1に係る測定装置1において、検出された電磁波EHの周波数領域波形を例示したグラフであり、横軸は周波数を示し、縦軸は検出電力を示す。
図8に示すように、コントローラ19は、電磁波EHの時間領域波形をフーリエ変換することで、周波数領域の電磁波波形を取得することができる。
【0078】
このように、コントローラ19は、検出された電磁波EHの時間領域波形をフーリエ変換し、得られた周波数波形における所定の周波数帯域をフィルタリングすることによって、試料30の測定部分36の電場の大きさと方向を取得する。フィルタリングは、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用してもよい。ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用される電磁波の周波数は、例えば、100GHz以上10THz以下である。すなわち、コントローラ19は、フィルタリングすることにより、100GHz以上10THz以下の前記周波数帯域を用いてもよい。
【0079】
ここで、ポンプ光PL1は、
図20に示すようなテンポラルフォーカシングとなっている。測定部分36である焦点付近でのみ短いパルス幅となる。このため、発生した電磁場EHの周波数波形で、主に、高周波数側のみを利用するバンドパスフィルタを適用すれば、測定部分36から放射された電磁波EHだけの情報を取得することができる。
【0080】
図9は、実施形態1に係るポンプ光PL1のパルス幅と、ポンプ光PL1で誘起されることにより放射された電磁波EHの時間領域における波長との関係を例示した図である。
図9に示すように、ポンプ光PLのパルス幅は、放射された電磁場EHの周波数の上限と等しい。ポンプ光PL1のパルス幅は、電磁波EHの波長とほぼ等しい。パルス光PL1が照射された間だけ電流が流れるからである。
【0081】
検出した電磁波EHの周波数領域波形において、高周波数側のみを利用するバンドパスフィルタを適用する遮断周波数を設定する。ポンプ光PL1と発生する電磁波EHとの時間領域波長は、
図9のような関係がある。そこで、ポンプ光PL1のパルス幅をΔT
pumpとすると、それに対応する電磁波EHの上限周波数は、1/ΔT
pumpと定義できる。このため、高周波数側の遮断周波数を、1/ΔT
pumpと設定することができる。低周波側の遮断周波数は、信号のシグナルノイズレシオや計測時間を考慮して適切な値を設定する。
【0082】
試料30から放射された電磁波EHの空間的な分布を検出する場合には、
図1に示すように、試料30をX軸方向及びY軸方向に移動しながら測定する。この場合、測定時間短縮のために、遅延機構17を時間領域の振幅が大きい1点から数点に絞って計測することも可能である。
【0083】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の測定装置1は、回折格子13で分散されたポンプ光PL1がテンポラルフォーカシングによって集光する試料30の測定部分36のみで光キャリアを短い時間内に発生させる。よって、測定装置1は、検出した電磁波EHの周波数解析を組み合わせることにより、試料30の測定部分36のみの電場の大きさと方向を取得することができる。これにより、測定装置1は、試料30の深さ方向の分解能を向上させることができるとともに、試料30の測定部分36以外からの電磁波EHの混入を低減させることができる。したがって、測定装置1は、測定精度を向上させ、計測時間を短縮することができる。
【0084】
また、試料30の測定部分36以外の箇所のパルス幅が長くなるため、パルスレーザ光PLによる試料30の損傷を低減させることができる。さらに、測定装置1は、小さいNAでも深さ方向の分解能を向上させることができ、多重反射による影響を低減させることができる。
【0085】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る測定装置を説明する。
図10は、実施形態2に係る測定装置を例示した構成図である。
図10に示すように、本実施形態の測定装置2は、前述の測定装置1におけるミラー22の代わりにガルバノミラー27を有している。すなわち、照明光学系14及び集光光学系15は、軸外し放物面鏡23と、第2ビームスプリッタ21と、の間に配置されたガルバノミラーをさらに含んでいる。ガルバノミラーは、ポンプ光PL1を試料30上で走査させる。
【0086】
測定装置2は、試料30を載置するステージ40が固定された状態でも、ポンプ光PL1を試料30に対して走査させることができる。よって、測定装置2は、試料30から放射された電磁波EHのX軸方向及びY軸方向の分布を測定することができる。本実施形態におけるこれ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0087】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る測定装置を説明する。本実施形態の測定装置は、試料30内で2光子吸収を発生させる。フェムト秒レーザ10から生成されたパルスレーザ光PLが1100nm以上の波長を含む場合には、パルスレーザ光PLは、通常では、シリコン内で吸収されない。しかしながら、2光子吸収という3次の非線形現象により、パルスレーザ光PLがシリコンに吸収される場合がある。2光子吸収の発生確率は、パルスレーザ光PLの強度の2乗に比例する。このため、2光子吸収は、強度が大きくなるパルスレーザ光PLの焦点付近でのみ発生する。よって、2光子吸収を起因とした光キャリアは、パルスレーザ光PLの焦点付近の測定部分36で発生する。測定部分36以外での2光子吸収を起因とした光キャリアの発生確率は非常に低い。
【0088】
図11は、実施形態3に係る試料30を例示した断面図である。
図12は、実施形態3に係る試料30の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
図11及び
図12に示すように、領域Iでの光キャリア数の時間的変化は非常に大きく、領域I以外での光キャリア数の時間的変化は非常に小さい。さらに、ポンプ光PL1の波長が1100nm以上であるため、ポンプ光PL1がシリコンで吸収されない。よって、測定部分36に到達するポンプ光PL1の強度は非常に強いという利点もある。2光子吸収は、テンポラルフォーカシングで集光しない場合でも発生する。よって、測定装置3は、回折格子13を備えなくてもよい。つまり、測定装置3は、第1ビームスプリッタ11、振幅変調素子12、照明光学系14、集光光学系15、遅延機構17、時間領域検出器18、及び、コントローラ19を備えている。測定装置3は、これ以外のレンズ及びミラー等の光学部材を含んでもよい。
【0089】
ここで、パルスレーザ光PL及びポンプ光PL1は、1100nm以上の波長を含む。照明光学系14は、コリメータレンズ20、第2ビームスプリッタ21、及び、軸外し放物面鏡23を含む。軸外し放物面鏡23は、ポンプ光PL1を測定部分36に集光する。集光光学系15は、軸外し放物面鏡23、第2ビームスプリッタ21、及び、集光レンズ24を含む。集光光学系15は、ポンプ光PL1で照明されたシリコンウェハから2光子吸収を経て放射された電磁波EHを集光する。
【0090】
本実施形態において、ポンプ光PL1は、コリメータレンズ20を透過して平行光となる。平行光に変換されたポンプ光PL1は、第2ビームスプリッタ21を透過して軸外し放物面鏡23によって測定部分36に集光される。シリコンウェハから放射された電磁波EHは、軸外し放物面鏡23で反射して平行光となる。平行光に変換された電磁波EHは、第2ビームスプリッタ21で反射して集光レンズ24によって光伝導アンテナ25に集光する。
【0091】
図13は、実施形態3の別の例に係る試料30を例示した断面図である。
図14は、実施形態3の別の例に係る試料30の領域Iと領域IIで発生する光キャリアを例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、発生する光キャリアの数を示す。
図13及び
図14に示すように、2光子吸収は、テンポラルフォーカシングにより集光されたポンプ光PL1でも発生する。前述したように、2光子吸収は、テンポラルフォーカシングしない場合でも発生するが、テンポラルフォーカシングと組み合わせることにより、さらに領域を絞った電磁波EHの測定が可能となり、測定精度及び位置分解能を向上させることができる。
【0092】
本実施形態によれば、ポンプ光PL1を入射させた試料30で発生する電磁波EHは、ポンプ光PLの2光子吸収で発生する光キャリアに起因する。2光子吸収を用いると、焦点付近でのみ電子及びホール対等の光キャリアが発生するため、測定部分36までの高い透過率と、多数の光キャリアの発生とが両立する。さらに、基板31上に半導体デバイス32を形成する前のフロントエンドの状態であれば、基板31の第1面側及び第2面側からポンプ光PL1を入射させてもよい。これにより、測定部分36でのみポンプ光PL1の強度を高めることもできる。基板31の第1面側は、例えば、基板31の表面であり、第2面側は、基板の裏面である。
【0093】
試料30がフロントエンドの状態の場合には、測定装置は、第1ビームスプリッタ11、振幅変調素子12、第3ビームスプリッタ、第1照明光学系、第2照明光学系、集光光学系15、遅延機構17、時間領域検出器18及びコントローラ19を備えてもよい。
【0094】
第3ビームスプリッタは、ポンプ光PL1を、第1ポンプ光と第2ポンプ光とに分離する。第1照明光学系は、第1ポンプ光が試料30の測定部分36に集光するように、第1ポンプ光で試料30を第1面側から照明する。第2照明光学系は、第2ポンプ光が試料30の測定部分36に集光するように、第2ポンプ光で試料30を第1面の反対側の第2面側から照明する。集光光学系15は、第1ポンプ光及び第2ポンプ光で照明された試料30から放射された電磁波EHを集光する。
【0095】
ここで、第1照明光学系における第1ポンプ光の光路長は、第2照明光学系における第2ポンプ光の光路長と同じである。第1ビームスプリッタ11、振幅変調素子12、遅延機構17、時間領域検出器18及びコントローラ19は、前述の測定装置1及び2と同様である。
【0096】
以上、本開示に係る実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1~3の各構成は、相互に組み合わせることができる。また、上記実施形態1~3のいずれかの測定装置を備え、測定装置が取得した電場情報から試料30の電気的接触を検査する検査装置も、実施形態の技術思想の範囲である。さらに、上記実施形態1~3のいずれかの測定装置を備え、測定装置が取得した電場情報から試料30に含まれたドーピング物質存在比、絶縁膜厚み、空乏層厚み、内部歪、及び、アニール後の活性化の少なくともいずれかを検査する検査装置も実施形態の技術思想の範囲である。
【符号の説明】
【0097】
1、2、3、3a 測定装置
10 フェムト秒レーザ
11 第1ビームスプリッタ
12 振幅変調素子
13 回折格子
14 照明光学系
15 集光光学系
16 2次高調波発生器
17 遅延機構
18 時間領域検出器
19 コントローラ
20 コリメータレンズ
21 第2ビームスプリッタ
22 ミラー
23 軸外し放物面鏡
24 集光レンズ
25 光伝導アンテナ
26 検流計
27 ガルバノミラー
30 試料
31 基板
32 半導体デバイス
33 ゲート金属
34 絶縁体
35 空乏層
36 測定部分
40 ステージ
EH 電磁波
PL パルスレーザ光
PL1 ポンプ光
PL2 トリガー光