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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081204
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240611BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B65H5/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194654
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】林田 健太
(72)【発明者】
【氏名】田中 貢
(72)【発明者】
【氏名】清水 慶和
【テーマコード(参考)】
2C056
3F049
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056HA29
2C056HA34
2C056HA46
3F049AA05
3F049CA02
3F049DA14
3F049LA01
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】高速印刷を行った場合においても、インクが拍車などのメカ機構に付着したり、インクが浸透媒体に再転写されたりすることが抑制される画像記録装置を提供する。
【解決手段】画像記録装置10は、第1搬送ローラ対36と、浸透媒体Sにインクを吐出する記録ヘッド38と、記録ヘッド38よりも搬送方向の下流に位置しており、第1搬送ローラ対36によって搬送される浸透媒体Sを支持する上面22を有するヒータ39と、ヒータ39の上方に位置する第1拍車81Cと、ヒータ39よりも搬送方向の下流に位置する第2搬送ローラ対40と、を備える。第2搬送ローラ対40は、浸透媒体Sを挟持するローラ40Aおよび第2拍車40Bを有する。ローラ40Aと第2拍車40Bとが接触するニップ点A1は、ヒータ39の上面22よりも下方に位置している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが浸透可能な浸透媒体を搬送方向に搬送する第1搬送ローラ対と、
浸透媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
上記記録ヘッドよりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体を支持する上面を有するヒータと、
上記ヒータの上方に位置する第1拍車と、
上記ヒータよりも上記搬送方向の下流に位置しており、浸透媒体を搬送方向に搬送する第2搬送ローラ対と、を備えており、
上記第2搬送ローラ対は、浸透媒体を挟持するローラおよび第2拍車を有しており、
上記ローラと上記第2拍車とが接触するニップ点は、上記ヒータの上面よりも下方に位置している画像記録装置。
【請求項2】
上記インクは、
浸透媒体が上記第1拍車に到達する前に第1の乾燥が進行し、
浸透媒体が上記ヒータに到達してから上記第2拍車に到達する前までの間に上記ヒータによる加熱により第2の乾燥が進行するものである請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記記録ヘッドは、上記搬送方向に沿って並んでおり、上記インクを吐出する複数のノズルを有しており、
上記ヒータは、上記上面が加熱されるように構成されており、
上記上面における上記搬送方向の最下流に位置するヒータ下流端と上記第2拍車との間の上記搬送方向に沿った第1距離は、上記複数のノズルのうち上記搬送方向の最下流に位置する下流端ノズルと上記第1拍車との間の上記搬送方向に沿った第2距離よりも短い請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記ヒータの上方に位置しており、上記第1拍車よりも上記搬送方向の下流に位置する第3拍車を備える請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記上面における上記搬送方向の最上流に位置するヒータ上流端と上記ヒータ下流端との間の上記搬送方向に沿った第3距離は、上記第1拍車と上記第3拍車との間の上記搬送方向に沿った第4距離よりも長く、
上記第1拍車は、上記ヒータ上流端よりも上記搬送方向の下流に位置する請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記インクは、少なくとも水と樹脂微粒子と界面活性剤と色材としての顔料を含有する請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記ヒータと上下方向に対向しており、上記第1拍車を回転可能に支持するヒータカバーを更に備えており、
上記ヒータカバーの上記搬送方向に沿った第1長さは、上記ヒータの上記搬送方向に沿った第2長さよりも長い請求項1から6のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項8】
浸透媒体を搬送方向に搬送する第1搬送ローラ対と、
浸透媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
上記記録ヘッドよりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体を支持する上面を有するヒータと、
上記ヒータの上方に位置する第1拍車と、
上記ヒータと上下方向に対向しており、上記第1拍車を回転可能に支持するヒータカバーと、を備えており、
上記ヒータカバーの搬送方向に沿った第1長さは、上記ヒータの搬送方向に沿った第2長さよりも長い画像記録装置。
【請求項9】
上記ヒータよりも上記搬送方向の下流に位置しており、浸透媒体を搬送方向に搬送する第2搬送ローラ対を更に備えており、
上記第2搬送ローラ対は、浸透媒体を挟持するローラおよび第2拍車を有しており、
上記インクは、
浸透媒体が上記第1拍車に到達する前に第1の乾燥が進行し、
浸透媒体が上記ヒータに到達してから上記第2拍車に到達する前までの間に第2の乾燥が進行するものである請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
上記記録ヘッドは、上記搬送方向に沿って並んでおり、上記インクを吐出する複数のノズルを有しており、
上記ヒータは、上記上面が加熱されるように構成されており、
上記上面における上記搬送方向の最下流に位置するヒータ下流端と上記第2拍車との間の上記搬送方向に沿った第1距離は、上記複数のノズルのうち上記搬送方向の最下流に位置する下流端ノズルと上記第1拍車との間の上記搬送方向に沿った第2距離よりも短い請求項9に記載の画像記録装置。
【請求項11】
上記ヒータの上方に位置しており、上記第1拍車よりも上記搬送方向の下流に位置する第3拍車を備える請求項10に記載の画像記録装置。
【請求項12】
上記上面における上記搬送方向の最上流に位置するヒータ上流端と上記ヒータ下流端との間の上記搬送方向に沿った第3距離は、上記第1拍車と上記第3拍車との間の上記搬送方向に沿った第4距離よりも長く、
上記第1拍車は、上記ヒータ上流端よりも上記搬送方向の下流に位置する請求項11に記載の画像記録装置。
【請求項13】
上記インクは、少なくとも水と樹脂微粒子と界面活性剤と色材としての顔料とを含有する請求項9に記載の画像記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸透媒体に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体が浸透可能な紙媒体等の浸透媒体に画像を記録する画像記録装置として、例えば、特許文献1に記載されたインクジェット式の記録装置が知られている。特許文献1の記録装置は、液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドよりも搬送方向の下流に位置するヒータと、ヒータの上方に位置する上流側ローラおよび駆動ローラと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-69531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の記録装置では、印刷速度を速くすると印刷されたインクが完全に乾燥する前に装置内で搬送が行われる可能性がある。また、特許文献1に記載の記録装置では、浸透媒体を搬送方向に搬送する駆動ローラがヒータの上方に位置する。そのため、インクが完全に乾燥する前に浸透媒体が駆動ローラに接触することにより、駆動ローラがインクで汚れたり、駆動ローラに付着したインクが浸透媒体に再転写され、浸透媒体を汚す可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、高速印刷を行った場合においても、インクが拍車などのメカ機構に付着したり、インクが浸透媒体に再転写されたりすることが抑制される画像記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る画像記録装置は、インクが浸透可能な浸透媒体を搬送方向に搬送する第1搬送ローラ対と、浸透媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、上記記録ヘッドよりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体を支持する上面を有するヒータと、上記ヒータの上方に位置する第1拍車と、上記ヒータよりも上記搬送方向の下流に位置しており、浸透媒体を搬送方向に搬送する第2搬送ローラ対と、を備える。上記第2搬送ローラ対は、浸透媒体を挟持するローラおよび第2拍車を有する。上記ローラと上記第2拍車とが接触するニップ点は、上記ヒータの上面よりも下方に位置している。
【0007】
第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体がヒータの上面に対して上方へ浮き上がっても、その浸透媒体は第1拍車によって位置規制される。このため、ヒータから浸透媒体に熱が伝わりやすい。ローラと第2拍車とが接触するニップ点が、ヒータの上面よりも下方に位置するので、浸透媒体がヒータの下流端側に接触しやすい。このため、浸透媒体にヒータからの熱が伝わりやすい。したがって、浸透媒体に吐出されたインクが乾燥しやすい。第2拍車は、ヒータよりも搬送方向の下流に位置するので、ヒータの上方に位置する場合に比べて、インクの乾燥が進んだ状態で浸透媒体に接触する。このため、第2拍車にインクが付着しにくい。第2拍車と浸透媒体との接触面積は、ローラと浸透媒体との接触面積よりも小さいので、ヒータによって加熱されたインクが十分に乾燥していなくても、第2拍車にインクが付着しにくい。このため、第2拍車から浸透媒体へインクが再転写されることが抑制される。第2搬送ローラ対が設けられない場合に比べて、搬送路における記録ヘッドと対向する位置から搬送路の下流端までの距離が長くなるので、浸透媒体に吐出されたインクの乾燥時間が確保される。したがって、高速印刷を行った場合においても、インクが第2拍車などのメカ機構に付着したり、インクが浸透媒体に再転写されたりすることが抑制される。
【0008】
(2)上記インクは、浸透媒体が上記第1拍車に到達する前に第1の乾燥が進行し、浸透媒体が上記ヒータに到達してから上記第2拍車に到達する前までの間に上記ヒータによる加熱により第2の乾燥が進行するものであってもよい。
【0009】
浸透媒体に吐出されたインクが浸透媒体に浸透することにより、第1の乾燥が進行するので、第1拍車にインクが付着されることが抑制される。さらに、ヒータによる加熱によってインクの第2の乾燥が進行するので、第2拍車にインクが付着されることが抑制される。
【0010】
(3)上記記録ヘッドは、上記搬送方向に沿って並んでおり、上記インクを吐出する複数のノズルを有してもよい。上記ヒータは、上記上面が加熱されるように構成されてもよい。上記上面における上記搬送方向の最下流に位置するヒータ下流端と上記第2拍車との間の上記搬送方向に沿った第1距離は、上記複数のノズルのうち上記搬送方向の最下流に位置する下流端ノズルと上記第1拍車との間の上記搬送方向に沿った第2距離よりも短くてもよい。
【0011】
浸透媒体が第2拍車に到達するときは、既に第1の乾燥と第2の乾燥が進行しているので、第1距離が第2距離よりも短くても、インクが第2拍車に付着することが抑制される。このため、インクが第2拍車に付着することを抑制しつつ、画像記録装置を搬送方向に小型化することが容易である。
【0012】
(4)上記ヒータの上方に位置しており、上記第1拍車よりも上記搬送方向の下流に位置する第3拍車を備えてもよい。
【0013】
浸透媒体がヒータの上面に対して上方へ浮き上がっても、その浸透媒体は第3拍車によって位置規制されるので、ヒータから浸透媒体に熱がより伝わりやすい。
【0014】
(5)上記上面における上記搬送方向の最上流に位置するヒータ上流端と上記ヒータ下流端との間の上記搬送方向に沿った第3距離は、上記第1拍車と上記第3拍車との間の上記搬送方向に沿った第4距離よりも長くてもよい。上記第1拍車は、上記ヒータ上流端よりも上記搬送方向の下流に位置してもよい。
【0015】
浸透媒体がヒータの上面に到達することによって第2の乾燥の進行が始まるので、浸透媒体が第1拍車に到達したときは既に第1の乾燥と第2の乾燥の一部とが進行している。このため、インクが第1拍車に付着することが抑制される。
【0016】
(6)上記インクは、少なくとも水と樹脂微粒子と界面活性剤と色材としての顔料とを含有してもよい。
【0017】
インクが浸透媒体に浸透しやすくなる。
【0018】
(7)上記画像記録装置は、上記ヒータと上下方向に対向しており、上記第1拍車を回転可能に支持するヒータカバーを更に備えてもよい。上記ヒータカバーの上記搬送方向に沿った第1長さは、上記ヒータの上記搬送方向に沿った第2長さよりも長くてもよい。
【0019】
ヒータの上方がヒータカバーによって覆われるので、ヒータとヒータカバーとの間の空間にヒータから発生する熱が留まりやすい。このため、第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体がより効率的にヒータの熱によって加熱されるので、浸透媒体に吐出されたインクが乾燥しやすい。
【0020】
(8)本発明に係る画像記録装置は、浸透媒体を搬送方向に搬送する第1搬送ローラ対と、浸透媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、上記記録ヘッドよりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体を支持する上面を有するヒータと、上記ヒータの上方に位置する第1拍車と、上記ヒータと上下方向に対向しており、上記第1拍車を回転可能に支持するヒータカバーと、を備える。上記ヒータカバーの搬送方向に沿った第1長さは、上記ヒータの搬送方向に沿った第2長さよりも長い。
【0021】
第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体がヒータの上面に対して上方へ浮き上がっても、その浸透媒体は第1拍車によって位置規制される。ヒータの上方がヒータカバーによって覆われるので、ヒータとヒータカバーとの間の空間にヒータから発生する熱が留まりやすい。このため、第1搬送ローラ対によって搬送される浸透媒体がヒータの熱によってより効率的に加熱される。インクが浸透媒体に浸透しやすいので、インクが浸透媒体に浸透した分だけ乾燥させるインクの量が減少する。このため、浸透媒体に吐出されたインクが乾燥しやすい。したがって、高速印刷を行った場合においても、インクが第1拍車などのメカ機構に付着したり、インクが浸透媒体に再転写されたりすることが抑制される。
【0022】
(9)上記画像記録装置は、 上記ヒータよりも上記搬送方向の下流に位置しており、浸透媒体を搬送方向に搬送する第2搬送ローラ対を更に備えてもよい。上記第2搬送ローラ対は、浸透媒体を挟持するローラおよび第2拍車を有してもよい。上記インクは、浸透媒体が上記第1拍車に到達する前に第1の乾燥が進行し、浸透媒体が上記ヒータに到達してから上記第2拍車に到達する前までの間に第2の乾燥が進行するものであってもよい。
【0023】
浸透媒体に吐出されたインクが浸透媒体に浸透することにより、第1の乾燥が進行するので、第1拍車にインクが付着されることが抑制される。さらに、ヒータによる加熱によってインクの第2の乾燥が進行するので、第2拍車にインクが付着されることが抑制される。
【0024】
(10)上記記録ヘッドは、上記搬送方向に沿って並んでおり、上記インクを吐出する複数のノズルを有してもよい。上記ヒータは、上記上面が加熱されるように構成されてもよい。上記上面における上記搬送方向の最下流に位置するヒータ下流端と上記第2拍車との間の上記搬送方向に沿った第1距離は、上記複数のノズルのうち上記搬送方向の最下流に位置する下流端ノズルと上記第1拍車との間の上記搬送方向に沿った第2距離よりも短くてもよい。
【0025】
浸透媒体が第2拍車に到達するときは、既に第1の乾燥と第2の乾燥が進行しているので、第1距離が第2距離よりも短くても、インクが第2拍車に付着することが抑制される。このため、インクが第2拍車に付着することを抑制しつつ、画像記録装置を搬送方向に小型化することが容易である。
【0026】
(11)上記ヒータの上方に位置しており、上記第1拍車よりも上記搬送方向の下流に位置する第3拍車を備えてもよい。
【0027】
浸透媒体がヒータの上面に対して上方へ浮き上がっても、その浸透媒体は第3拍車によってヒータ側に押さえられるので、ヒータから浸透媒体に熱が伝わりやすい。
【0028】
(12)上記上面における上記搬送方向の最上流に位置するヒータ上流端と上記ヒータ下流端との間の上記搬送方向に沿った第3距離は、上記第1拍車と上記第3拍車との間の上記搬送方向に沿った第4距離よりも長くてもよい。上記第1拍車は、上記ヒータ上流端よりも上記搬送方向の下流に位置してもよい。
【0029】
浸透媒体がヒータの上面に到達することによって第2の乾燥の進行が始まるので、浸透媒体が第1拍車に到達したときは既に第1の乾燥と第2の乾燥の一部とが進行している。このため、インクが第1拍車に付着することが抑制される。
【0030】
(13)上記インクは、少なくとも水と樹脂微粒子と界面活性剤と色材としての顔料とを含有してもよい。
【0031】
インクが浸透媒体に浸透しやすくなる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、高速印刷を行った場合においても、インクが拍車などのメカ機構に付着したり、インクが浸透媒体に再転写されたりすることが抑制される
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る画像記録装置10の外観斜視図である。
図2図2は、上筐体31が開かれた状態の画像記録装置10の外観斜視図である。
図3図3は、ベース23に取り付けられたサイドフレーム20,21を示す斜視図である。
図4図4は、図1のIV-IV断面を示す断面図である。
図5図5は、図4のヒータ39を含む周辺の模式図である。
図6図6は、ヒータカバー81を斜め上方から視た斜視図である。
図7図7は、ヒータカバー81を斜め下方から視た斜視図である。
図8図8は、図6のVIII-VIII断面を示す断面図である。
図9図9は、図6のIX-IX断面を示す断面図である。
図10図10は、制御部122のブロック図である。
【0034】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明において、画像記録装置10において排出口33が向く向きを前向き51とし、前方の反対向きを後向き52とする。前向き51と後向き52とを合せて前後方向51,52とする。前後方向51,52と直交する上下の方向を上下方向53,54とする。前後方向51,52および上下方向53、54と直交する方向を左右方向55,56とする。上下方向53,54の上向きを上向き53とし、下向きを下向き54とする。画像記録装置10を後向き52に視て、左右方向55、56の左向きを左向き55とし、右向きを右向き56とする。
【0035】
[画像記録装置10の外観構成]
図1に示される画像記録装置10は、インクジェット記録方式でロール体37(図4参照)から引き出された記録紙Sに画像を記録する。記録紙Sは、インクが浸透可能である。記録紙Sの一例としては、例えば、普通紙、光沢紙、マット紙、及びコート紙等の記録媒体が挙げられる。「コート紙」とは、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙等のパルプを主要な構成要素とした普通紙に、平滑性、白色度、光沢度等の向上を目的として、コート剤を塗布したものを言い、具体的には、上級コート紙、中級コート紙等が挙げられる。記録紙Sは、浸透媒体の一例である。インクは、コート紙等の疎水性の記録媒体への濡れ性があるが、これに限定されるものではなく、例えば、普通紙、光沢紙、マット紙等の疎水性の記録媒体以外の記録媒体への画像記録に好適なものであってもよい。
【0036】
図1に示されるように、画像記録装置10は、筐体30を備える。筐体30は、上筐体31及び下筐体32を備える。上筐体31及び下筐体32は、全体として概ね直方体形状であって、卓上に載置可能な大きさである。以下、筐体30について説明がされるときは、上筐体31及び下筐体32が全体として直方体形状をなしている状態で説明がされる。
【0037】
筐体30は、右面30R及び左面30Lと、上面30U及び下面30Dと、前面30F及び後面30Bと、を有する。右面30R及び左面30Lは、左右方向55,56に離れて位置する。上面30U及び下面30Dは、上下方向53,54に離れて位置する。前面30F及び後面30Bは、前後方向51,52に離れて位置する。
【0038】
上筐体31は、後面30Bにおいて左右方向55,56に延びる回動軸A(図4参照)周りに回動可能に下筐体32に取り付けられている。上筐体31は、図1に示される閉位置から、前面30Fが上方へ持ち上げられるようにして回動されて、図2に示される開位置まで回動する。閉位置にいる上筐体31は、筐体30の内部空間30Aを外部に露出させない。一方、開位置にいる上筐体31は、筐体30の内部空間30Aを外部へ露出させる。なお、図2においては、筐体30の内部構造が省略されている。
【0039】
図1に示されるように、筐体30の前面30Fには、左右方向55,56へ細長に伸びる排出口33が形成されている。排出口33は、左右方向55,56の中央が、前面30Fの左右方向55,56の中央よりも右寄りに位置する。排出口33は、筐体30の内部空間30Aと外部とを連通している。排出口33を通じて、筐体30の内部空間30Aにおいて画像記録された記録紙Sが、筐体30の外部へ排出される。
【0040】
筐体30の前面30Fには、操作パネル44が設けられている。操作パネル44は、排出口33の上方に位置する。操作パネル44は、画像記録装置10を動作させたり各種設定を確定したりするための入力をユーザから受け付ける。
【0041】
図3に示されるように、筐体30の内部空間30Aには、2つのサイドフレーム20,21が設けられている。各サイドフレーム20,21は、鋼板からなる平板形状であり、支持する部材に応じた形状の切り欠きや貫通孔が適宜形成されている。2つのサイドフレーム20,21は、左右方向55,56に離れて位置する。サイドフレーム20,21は、筐体30の下面30Dをなすベース23に連結されている。サイドフレーム20,21とベース23との連結はネジ止めや溶接によりなされている。
【0042】
[画像記録装置10の内部構成]
内部空間30Aにおけるサイドフレーム20,21の間には、ロール体ホルダ35、テンショナ45、搬送部71、記録ヘッド38、ヒータ39、ヒータカバー81、支持機構116、支持部材46、CIS25、カッターユニット26が配置されている。
【0043】
図4に示されるように、内部空間30Aにおけるサイドフレーム20,21の間には、隔壁41が設けられている。隔壁41は、内部空間30Aの後側の下部に位置している。隔壁41は、下筐体32と協同してシート収容空間30Cを区画している。シート収容空間30Cは、隔壁41と下筐体32により包囲され、記録ヘッド38などから隔離された空間である。
【0044】
シート収容空間30Cには、ロール体37が収容されている。ロール体37は、芯管と長尺の記録紙Sとを有している。記録紙Sは、芯管の軸芯の周方向にロール状に芯管に巻回されている。記録紙Sは、画像記録装置10が画像を記録可能な最小幅から最大幅までの幅をとり得る。すなわち、シート収容空間30Cには、幅が異なる複数種類のロール体37が収容可能である。なお、ロール体37は、芯管を有さず、記録紙Sがロール体ホルダ35に装着可能にロール状に巻回されていてもよい。また、シート収容空間30Cには、ファンフォールド紙が収容可能であってもよい。
【0045】
ロール体ホルダ35は、シート収容空間30Cに位置している。ロール体ホルダ35には、ロール体37が装着されている。ロール体ホルダ35は、ロール体37の芯管の軸芯が左右方向55,56に沿った状態で、芯管の軸芯の周方向に回転可能にロール体37を支持している。
【0046】
ロール体ホルダ35には左右方向55,56に離れた一対のサイドガイド115が設けられている。一対のサイドガイド115は、左右方向55,56に離れた距離が変更可能である。ユーザは、ロール体ホルダ35に装着するロール体37の幅(左右方向55,56に沿った寸法)に合わせて、一対のサイドガイド115がロール体37の左右端それぞれに当接するように移動させる。一対のサイドガイド115に左右端がそれぞれ当接したロール体37は、記録紙Sの幅方向中心が搬送路43の左右方向55,56における中心となるように位置決めされる。ロール体ホルダ35は、不図示のモータから駆動力が伝達されて回転する。ロール体ホルダ35の回転に伴って、ロール体ホルダ35に支持されているロール体37も回転する。
【0047】
シート収容空間30Cは、後部において上方へ向かって開口している。詳細には、隔壁41と後面30Bとの間、すなわち、ロール体37の後端の上方に隙間42が形成されている。記録紙Sは、ロール体37の後端から上方に引き出され隙間42を介してテンショナ45へと案内される。
【0048】
テンショナ45は、内部空間30Aの後部において隔壁41よりも上方に位置する。テンショナ45は、サイドフレーム20,21に回転可能に支持されたローラである。テンショナ45は、前後方向51,52に移動可能にサイドフレーム20,21に支持されている。テンショナ45には、バネなどの付勢部材によって後向き52の付勢力が加えられている。
【0049】
搬送部71は、ロール体37から記録紙Sを引き出して前向き51(搬送方向の一例)に記録紙Sを搬送する。搬送部71は、搬送ローラ対36、第1排出ローラ対40、及び第2排出ローラ対72を有する。
【0050】
搬送ローラ対36は、テンショナ45の前方に位置する。搬送ローラ対36は、搬送ローラ36Bとピンチローラ36Aとを有する。搬送ローラ36Bは、サイドフレーム20,21に回転可能に支持されている。搬送ローラ36Bは、不図示のモータから駆動伝達されて回転することによって、ピンチローラ36Aとの間に記録紙Sをニップしつつ前向き51に記録紙Sを搬送する。搬送ローラ対36は、第1搬送ローラ対の一例である。
【0051】
第1排出ローラ対40は、搬送ローラ対36の前方に位置する。第1排出ローラ対40は、記録紙Sの下面に当接する排出ローラ40Aと記録紙Sの上面に当接する拍車40Bとを有する。排出ローラ40Aは、サイドフレーム20,21に回転可能に支持されている。排出ローラ40Aは、不図示のモータから駆動伝達されて回転することによって、拍車40Bとの間に記録紙Sをニップしつつ前向き51に記録紙Sを搬送する。拍車40Bは、第1拍車ホルダ74に回転可能に支持されている。第1排出ローラ対40は、第2搬送ローラ対の一例である。排出ローラ40Aは、ローラの一例である。拍車40Bは、第2拍車の一例である。
【0052】
第1拍車ホルダ74は、前後方向51,52、上下方向53,54、及び左右方向55,56に拡がる内部空間を有する箱型に形成されている。第1拍車ホルダ74は、下端から下向き54に突出する複数の拍車40Bを内部空間に有する。第1拍車ホルダ74の後方側の外面には、左右方向55,56に延びる第1シャフト84が着脱可能に嵌め込まれる第1嵌合部91が形成されている。第1シャフト84は、上筐体31の内壁面に固定された内部フレーム(図示せず)に固定されている。なお、第1シャフト84は、下筐体32のベース23に固定されたサイドフレーム20,21に固定されていてもよい。
【0053】
第1拍車ホルダ74は、樹脂製の材料によって形成されている。第1拍車ホルダ74の材質は、一定以上の強度および耐熱性を確保できるものであれば、特に限定されることはない。例えば、ヒータカバー81は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フェノール樹脂によって形成される。
【0054】
第2排出ローラ対72は、第1排出ローラ対40の前方に位置する。第2排出ローラ対72は、記録紙Sの下面に当接する排出ローラ72Aと記録紙Sの上面に当接する拍車72Bとを有する。排出ローラ72Aは、サイドフレーム20,21に回転可能に支持されている。排出ローラ72Aは、不図示のモータから駆動伝達されて回転することによって、拍車72Bとの間に記録紙Sをニップしつつ前向き51に記録紙Sを搬送する。拍車72Bは、第2拍車ホルダ75に回転可能に支持されている。
【0055】
第2拍車ホルダ75は、前後方向51,52、上下方向53,54、及び左右方向55,56に拡がる内部空間を有する箱型に形成されている。第2拍車ホルダ75は、下端から下向き54に突出する複数の拍車72Bを内部空間に有する。第2拍車ホルダ75の前方側の外面には、左右方向55,56に延びる第2シャフト85が着脱可能に嵌め込まれる第2嵌合部92が形成されている。第2シャフト85は、上筐体31の内壁面に固定された内部フレーム(図示せず)に固定されている。なお、第2シャフト85は、下筐体32のベース23に固定されたサイドフレーム20,21に固定されてもよい。第2拍車ホルダ75は、前後方向51,52に延びる連結部材(図示せず)によって第1拍車ホルダ74と前後方向51,52に連結されている。なお、第2拍車ホルダ75は、第1拍車ホルダ74と連結されていなくてもよい。
【0056】
第2拍車ホルダ75は、樹脂製の材料によって形成されている。第2拍車ホルダ75の材質は、一定以上の強度および耐熱性を確保できるものであれば、特に限定されることはない。例えば、ヒータカバー81は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フェノール樹脂によって形成される。
【0057】
記録ヘッド38は、搬送ローラ対36の前方であって、第1排出ローラ対40の後方に位置する。記録ヘッド38は、前後方向51、52に沿って並ぶ複数のノズル38Aを有する。複数のノズル38Aは、搬送ベルト117に支持された記録紙Sへ向かってインクを液滴として下方へ吐出する。これにより、記録紙Sの上面に画像が記録される。複数のノズル38Aのうち最も前方に位置するノズル38Aは、下流端ノズルの一例である。記録ヘッド38には、インクを貯留するタンク(図示省略)が不図示のチューブによってインクを供給可能に接続されている。
【0058】
インクとしては、水、顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、および有機溶剤を含む水性インクが用いられる。インクは、例えば、その表面張力が32mN/m以下のものが使用される。インクの表面張力は、例えば、表面張力測定装置(DY-300:協和界面科学株式会社)を用いて求められる。
【0059】
顔料は、色材として用いられる。顔料は、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)によって、水に分散可能な顔料である。顔料としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等が挙げられる。
【0060】
樹脂微粒子としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むものを用いることができる。樹脂微粒子は、例えば、モノマーとして、スチレン、塩化ビニル等を含んでもよい。樹脂微粒子は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂微粒子は、例えば、エマルジョンに含まれるものであってもよい。エマルジョンは、例えば、樹脂微粒子と、分散媒(例えば、水等)とで構成されるものである。樹脂微粒子は、分散媒に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径の範囲で分散している。樹脂微粒子としては、例えば、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系エステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート型樹脂、ポリカーボネート型樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等が挙げられるが、アクリル系樹脂であることが好ましい。樹脂微粒子としては、例えば、0℃以上200℃以下の範囲内においてガラス転移温度(Tg)を有する樹脂が用いられる。より好ましくは、ガラス転移温度(Tg)は、20℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは、30℃以上150℃以下であり、特に好ましくは、50℃以下であり、例えば、30℃以上50℃以下である。エマルジョンとしては、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)870」(Tg:71℃)、「スーパーフレックス(登録商標)150」(Tg:40℃)、ジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6760」(Tg:-28℃)、「モビニール(登録商標)DM774」(Tg:33℃)、昭和電工(株)製の「ポリゾール(登録商標)AP-3270N」(Tg:27℃)、星光PMC(株)製の「ハイロース-X(登録商標)KE-1062」(Tg:112℃)、「ハイロース-X(登録商標)QE-1042」(Tg:69℃)等が挙げられる。
【0061】
界面活性剤は、インクの表面張力を低下させるためのものである。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、またはノニオン性界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、例えば、ケイ素系界面活性剤、または、フッ素系界面活性剤が用いられてもよい。これら界面活性剤は、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」、「オルフィン(登録商標)E1006」、「オルフィン(登録商標)E1004」、「シルフェイスSAG503A」、及び「シルフェイスSAG002」等が挙げられる。インク全量における界面活性剤の含有量は、例えば、5wt%以下、3wt%以下、0.1wt%~2wt%である。粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等が挙げられる。
【0062】
有機溶剤は、水溶性の有機溶剤が用いられる。水溶性の有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,2-ブタンジオール、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、プロピレングリコール又は1,2-ブタンジオールが好ましい。その他の有機溶剤の例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1~4のアルキルアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2~6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテルなどのアルキレングリコール類の低級アルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。これらの有機溶剤のうち少なくとも1種類以上の有機溶剤がインクに含有される。インクに含有される有機溶剤のうち、25℃において液体である有機溶剤がインク全体に対して10重量パーセント以下である。
【0063】
インクは、必要に応じて、さらに、公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防腐剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、ノズル乾燥防止剤、エマルジョンなどのポリマー成分、染料等が挙げられる。
【0064】
ヒータ39は、記録ヘッド38よりも前方に位置する。ヒータ39は、前後方向51,52において記録ヘッド38と第1排出ローラ対40との間に位置している。ヒータ39は、サイドフレーム20,21に固定されている。ヒータ39は、前後方向51,52及び左右方向55,56に拡がる平板状の金属製プレート39aと、金属製プレート39aの下面に固定されたポリイミドヒータ39bと、を有する。
【0065】
金属製プレート39aの上面22は、搬送ローラ対36および搬送ベルト117によって前向き51に搬送される記録紙Sの下面を支持する。したがって、金属製プレート39aの左右方向55,56の寸法は、画像記録装置10において画像記録が可能な最大の記録紙Sの幅よりも大きい。図5に示されるように、金属製プレート39aの上面22は、排出ローラ40Aと拍車40Bとが接触するニップ点A1よりも上方に位置する。言い換えると、排出ローラ40Aと拍車40Bとが接触するニップ点A1は、金属製プレート39aの上面22よりも下方に位置する。
【0066】
ポリイミドヒータ39bは、金属製プレート39aの下面を加熱する。金属製プレート39aの下面を加熱した熱は、熱伝導によって金属製プレート39aの上面22を加熱する。これにより、記録紙Sが金属製プレート39a上を通過する間に、金属製プレート39aの熱によってインクに含まれる樹脂微粒子が溶融し、金属製プレート39aを通過した後の大気による冷却によって溶融した樹脂が硬化して顔料が記録紙Sの上面に定着する。なお、ポリイミドヒータ39bに代えて、赤外線ヒータなどのヒータによって金属製プレート39aが加熱されてもよい。
【0067】
内部空間30Aにおけるサイドフレーム20,21の間には、ヒータ39の金属製プレート39aの温度を検知する温度センサ121が配置されている。本実施形態では、2つの温度センサ121がポリイミドヒータ39bの下面に固定されている。各温度センサ121は、ポリイミドヒータ39bの温度に応じた検知信号を後述の制御部122に出力する。なお、温度センサ121は、金属製プレート39aに固定されてもよい。また、温度センサ121は、温度に応じた検知信号を出力できれば、特に限定されることはない。例えば、温度センサ121としては、赤外線温度センサが挙げられる。
【0068】
ヒータカバー81は、ヒータ39の上方に配置されている。ヒータカバー81は、ヒータ39と上下方向53,54に対向している。ヒータカバー81は、樹脂製の材料によって形成されている。ヒータカバー81の材質は、一定以上の強度および耐熱性を確保できるものであれば、特に限定されることはない。例えば、ヒータカバー81は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フェノール樹脂によって形成される。
【0069】
ヒータカバー81は、前後方向51,52、上下方向53,54、及び左右方向55,56に拡がる直方体状の内部空間81Eを有する箱型に形成されている。図6から図8に示されるように、ヒータカバー81は、上向き53に開口するカバー本体81Aと、カバー本体81Aの開口81AAを閉じる蓋壁81Bと、複数の拍車81Cと、複数の拍車クリーナ81Dと、を有する。カバー本体81Aは、内部空間81Eの前端を区画する前壁131と、内部空間81Eの後端を区画する後壁132と、内部空間81Eの下端を区画する底壁133と、内部空間81Eの左端を区間する左壁134と、内部空間81Eの右端を区画する右壁135と、を有する。
【0070】
前壁131は、前後方向51,52に厚みを有する平板状である。前壁131は、上下方向53,54及び左右方向55,56に拡がっている。前壁131の前面および後面は、上下方向53,54よりも左右方向55,56に長い矩形状である。前壁131の左右方向55,56の長さは、ヒータ39の金属製プレート39aの左右方向55,56の長さよりも長い。前壁131は、第1拍車ホルダ74の後方側の外面と前後方向51,52において重なっている。
【0071】
前壁131の下端から前向き51に延びるガイド壁136が形成されている。ガイド壁136は、上下方向53,54に厚みを有する平板状である。ガイド壁136は、前後方向51,52及び左右方向55,56に拡がっている。ガイド壁136は、前壁131の左端から右端まで至っている。ガイド壁136の上面および下面は、前後方向51,52よりも左右方向55,56に長い矩形状である。図4図5に示されるように、ガイド壁136の前端は、ヒータ39の金属製プレート39aの前端よりも前方に位置している。ガイド壁136の上面および下面は、僅かに下向き54に傾斜している。ガイド壁136は、第1拍車ホルダ74の第1嵌合部91と上下方向53,54において重なっている。
【0072】
後壁132は、前壁131の後方に位置している。後壁132は、前後方向51,52に厚みを有する平板状である。後壁132は、上下方向53,54及び左右方向55,56に拡がっている。後壁132は、前壁131と前後方向51,52に対向している。後壁132の前面および後面は、上下方向53,54よりも左右方向55,56に長い矩形状である。後壁132の左右方向55,56の長さは、ヒータ39の金属製プレート39aの左右方向55,56の長さよりも長い。
【0073】
底壁133は、前壁131の下端と後壁132の下端との間を塞いでいる。底壁133は、上下方向53,54に厚みを有する平板状である。底壁133は、前後方向51,52及び左右方向55,56に拡がっている。底壁133の上面および下面は、前後方向51,52よりも左右方向55,56に長い矩形状である。底壁133の左右方向55,56の長さは、ヒータ39の金属製プレート39aの左右方向55,56の長さよりも長い。
【0074】
底壁133には、上下方向53,54に貫通する複数の第1スリット133Aが形成されている。複数の第1スリット133Aは、前後方向51,52に延びている。複数の第1スリット133Aは、前後方向51,52及び左右方向55,56に間隔を空けて配置されている。本実施形態では、前後方向51,52に間隔を空けて3つの第1スリット133Aが配置されるとともに、左右方向55,56に間隔を空けて5つの第1スリット133Aが配置されている。第1スリット133Aの数は、拍車81Cの数に対応する。本実施形態では、複数の第1スリット133Aを通して合計15個の拍車81Cが底壁133の下方へ突出している。最も後方に位置する5個の拍車81Cは、第1拍車の一例である。最も前方に位置する5個の拍車81Cは、第3拍車の一例である。
【0075】
図5に示されるように、最も後方に位置する拍車81Cは、ヒータ後端22Bよりも前方に位置する。ヒータ後端22Bは、金属製プレート39aの上面22における後端に位置する。ヒータ後端22Bは、ヒータ上流端の一例である。最も前方に位置する拍車81Cは、ヒータ前端22Fよりも後方に位置する。ヒータ前端22Fは、金属製プレート39aの上面22における前端に位置する。ヒータ前端22Fとヒータ後端22Bとの間の前後方向51、52に沿った距離L1は、最も後方に位置する拍車81Cの中心と最も前方に位置する拍車81Cの中心との間の前後方向51、52に沿った距離L2よりも長い。距離L1は、第3距離の一例である。距離L2は、第4距離の一例である。
【0076】
ヒータ前端22Fと拍車40Bの中心との間の前後方向51、52に沿った距離L3は、最も前方に位置するノズル38Aの前端と最も後方に位置する拍車81Cの中心との間の前後方向51、52に沿った距離L4よりも短い。距離L3は、第1距離の一例である。距離L4は、第2距離の一例である。
【0077】
左壁134は、前壁131の左端と後壁132の左端と底壁133の左端との間を塞いでいる。左壁134は、左右方向55,56に厚みを有する平板状である。左壁134は、前後方向51,52及び上下方向53,54に拡がっている。
【0078】
右壁135は、前壁131の右端と後壁132の右端と底壁133の右端との間を塞いでいる。右壁135は、左右方向55,56に厚みを有する平板状である。右壁135は、前後方向51,52及び上下方向53,54に拡がっている。右壁135は、左壁134と左右方向55,56に対向している。右壁135の右面には、後向き52に延びる突出部137が形成されている。突出部137は、後壁132の後面よりも後方へ延びている。突出部137は、右壁135の右面における後端側の上部に形成されている。突出部137は、右壁135の右面から右向き56に延びて後向き52に屈曲したL字状に形成されている。突出部137の下端は、後述の第1位置にある支持機構116におけるロック部119の下ロック片119aに近接している(図6参照)。
【0079】
図8に示されるように、底壁133の上面には、上向き53に延びる複数の規制片138が形成されている。複数の規制片138は、各第1スリット133Aを左右方向55,56に挟むように配置されている。第1スリット133Aを挟む2つの規制片138は、第1スリット133Aから左右方向55,56に同一の間隔を空けて位置している。各規制片138は、前後方向51,52及び上下方向53,54に拡がる平板状である。第1スリット133Aを左右方向55,56に挟む2つの規制片138の間隔は、拍車81Cの第1回転軸81CCの軸方向長さよりも僅かに長い。
【0080】
各第1スリット133Aを挟む2つの規制片138の間には、底壁133の上面から上方へ延びる2つの第1支持片139が形成されている。2つの第1支持片139は、第1スリット133Aから左右方向55,56に同一の間隔を空けて位置している。各第1支持片139は、前後方向51,52及び上下方向53,54に拡がる平板状である。各第1支持片139には、上端に開口して下向き54に延びる第2スリット139Aが形成されている。第2スリット139Aは、第1支持片139の上端から底壁133の上面まで至っている。第2スリット139Aは、第1支持片139の前後方向51,52の中間に位置している。
【0081】
図8図9に示されるように、第1スリット133Aを挟む2つの第1支持片139の間には、底壁133の上面から上向き53に延びる2つの第2支持片140が形成されている。2つの第2支持片140は、第1スリット133Aから左右方向55,56に同一の間隔を空けて左右方向55,56に対向している。各第2支持片140は、前後方向51,52及び上下方向53,54に拡がる平板状である。各第2支持片140は、前壁131の後面から後壁132の前面まで延びている。各第2支持片140は、第1支持片139よりも上方へ延びている。第1スリット133Aを挟む2つの第2支持片140の左右方向55,56の間隔は、拍車クリーナ81Dの回転部141の軸方向長さよりも僅かに長い。第2支持片140には、上端に開口して下向き54に延びる3つの第3スリット140Aが形成されている。3つの第3スリット140Aは、前後方向51,52に等間隔に配置されている。3つの第3スリット140Aは、第2支持片140の上端から底壁133の上面まで至っている。3つの第3スリット140Aは、各第1スリット133Aを挟む2つの第1支持片139の第2スリット139Aと左右方向55,56に重なっている。
【0082】
蓋壁81Bは、内部空間81Eの上端を区画する天板部151と、天板部151の前端から下向き54に延びる前板部152と、天板部151の後端から下向き54に延びる後板部153と、天板部151の左端から下向き54に延びる左板部154と、天板部151の右端から下向き54に延びる右板部155と、を有する。
【0083】
天板部151は、上下方向53,54に厚みを有する平板状である。天板部151は、前後方向51,52及び左右方向55,56に拡がっている。天板部151は、カバー本体81Aの前壁131の上端と後壁132の上端と左壁134の上端と右壁135の上端との間を塞いでいる。すなわち、天板部151は、カバー本体81Aの開口81AAを閉じている。天板部151の前端は、カバー本体81Aの前壁131よりも前方に位置している。天板部151の後端は、カバー本体81Aの後壁132よりも後方に位置している。天板部151の左端は、カバー本体81Aの左壁134よりも左方に位置している。天板部151の右端は、カバー本体81Aの右壁135よりも右方に位置している。天板部151の上面および下面は、前後方向51,52よりも左右方向55,56に長い略矩形状である。
【0084】
前板部152は、前後方向51,52に厚みを有する平板状である。前板部152は、上下方向53,54及び左右方向55,56に拡がっている。前板部152は、天板部151の左端から右端まで至っている。前板部152は、ガイド壁136に近接する位置まで下向き54に延びている。前板部152の左右方向55,56の中間部には、下端から上向き53に凹んだ把持部152Aが形成されている。把持部152Aは、ユーザの指を引っ掛けて、ヒータカバー81を後述の覆位置から露出位置まで回動しやすくするためのものである。
【0085】
後板部153は、前後方向51,52に厚みを有する平板状である。後板部153は、上下方向53,54及び左右方向55,56に拡がっている。後板部153は、天板部151の左端から右端まで至っている。後板部153の上下方向53,54の長さは、前板部152の上下方向53,54の長さよりも短い。
【0086】
左板部154は、前板部152の左端と後板部153の左端と天板部の左端との間を塞いでいる。左板部154は、左右方向55,56に厚みを有する平板状である。左板部154及び右板部155は、前後方向51,52及び上下方向53,54に拡がっている。左板部154の上下方向53,54の長さは、前板部152の上下方向53,54の長さよりも短い。
【0087】
右板部155は、前板部152の右端と後板部153の右端と天板部の右端との間を塞いでいる。右板部155は、左右方向55,56に厚みを有する平板状である。右板部155は、前後方向51,52及び上下方向53,54に拡がっている。右板部155の上下方向53,54の長さは、前板部152の上下方向53,54の長さよりも短い。
【0088】
図6に示されるように、蓋壁81Bは、天板部151の上面に配置された複数のねじ156によってカバー本体81Aに固定されている。図8に示されるように、天板部151の下面には、下向き54に延びる複数のリブ157が形成されている。複数のリブ157は、前後方向51,52及び左右方向55,56に間隔を空けて配置されている。複数のリブ157は、規制片138を避けるように先端部が二股状に形成されている。
【0089】
ヒータカバー81には、拍車81Cと拍車クリーナ81Dが組み込まれている。拍車81Cは、各第1スリット133Aを通じて底壁133の下方へ突出した状態になるとともに、拍車81Cの第1回転軸81CCが第1支持片139および第2支持片140によって回転自在に支持される。拍車81Cは、第1スリット133Aを挟む2つの規制片138に第1回転軸81CCの軸方向の両端が近接することによって左右方向55,56に位置決めされる。
【0090】
拍車クリーナ81Dの第2回転軸142は、第2支持片140によって回転自在に支持される。拍車クリーナ81Dは、回転部141の軸方向端面が2つの第2支持片140に近接することによって左右方向55,56に位置決めされる。蓋壁81Bがカバー本体81Aにねじ156により固定されることにより、拍車81Cと拍車クリーナ81Dがカバー本体81Aの内部から脱落することが蓋壁81Bによって防止されるとともに、複数のリブ157の先端部が拍車81Cの第1回転軸81CCに上方から接触した状態になり、拍車81Cが上下方向53,54に位置決めされる。
【0091】
図4図7に示されるように、ヒータカバー81は、左右方向55,56に延びる回動軸Bを中心に回動可能にサイドフレーム20,21に取り付けられている。回動軸Bは、カバー本体81Aの後方側の端部における下部に配置されている。ヒータカバー81は、ヒータ39が外部に露出しないようにヒータ39を覆う覆位置と、ヒータ39が外部へ露出する露出位置と、の間において回動可能である。本実施形態では、上記覆位置にあるヒータカバー81は、ヒータ39の上方を覆っている(図4の実線参照)。上記露出位置にあるヒータカバー81は、下筐体32の上方の開口を通してヒータ39を外部へ露出させる(図4の破線参照)。
【0092】
覆位置のヒータカバー81の前後方向51、52に沿った長さは、ヒータ39の前後方向51、52に沿った長さよりも長い。具体的には、図5に示されるように、前壁131の前面と後壁132の後面との間の前後方向51、52に沿った長さL5は、ヒータ前端22Fとヒータ後端22Bとの間の前後方向51、52に沿った長さL1よりも長い。長さL5は、第1長さの一例である。長さL1は、第2長さの一例である。
【0093】
支持機構116は、ヒータ39と搬送ローラ対36との間に位置する。支持機構116は、記録ヘッド38の下方に位置している。支持機構116は、記録ヘッド38と上下方向53,54に対向している。支持機構116は、搬送ベルト117と、搬送ベルト117を支持する支持部118と、支持部118に形成されたロック部119と、を有する。
【0094】
搬送ベルト117は、不図示のモータから駆動伝達されてベルトが回転することによって、記録紙Sの下面を支持しつつ前向き51に記録紙Sを搬送する。支持部118は、前後方向51,52及び左右方向55,56に拡がっている。ロック部119は、支持部118の前方端部における右側端部から上向き51に延びている。図6に示されるように、ロック部119は、ヒータカバー81の突出部137の下端に近接する下ロック片119aと、突出部137の後端に近接する後ロック片119bと、を有する。なお、後ロック片119bは、省略されてもよい。下ロック片119aは、突出部137の下端に接触していてもよい。
【0095】
図4に示されるように、支持機構116は、モータ123(図10参照)が駆動されると、左右方向55,56に延びる回動軸Cを中心に回動するように構成されている。回動軸Cは、支持機構116の後方側の端部に位置している。支持機構116は、記録ヘッド38と上下方向53,54に対向する第1位置(図4の実線参照)と、前方端部が記録ヘッド38に対して離れるように回動した第2位置(図4の破線参照)と、の間において回動可能に構成されている。これにより、第1位置にある支持機構116のロック部119の下ロック片119aは、上記覆位置から上記露出位置へと移動するヒータカバー81の突出部137の下端に当接するように構成されている。その結果、ヒータカバー81の上記覆位置から上記露出位置への移動が阻害される。また、第2位置にある支持機構116のロック部119の下ロック片119aは、上記覆位置から上記露出位置へと移動するヒータカバー81の突出部137に当接しないように構成されている。その結果、ヒータカバー81の上記覆位置から上記露出位置への移動が可能である。
【0096】
支持部材46は、ヒータ39の前方に位置する。支持部材46の前部は、拍車72Bと上下方向53,54に対向している。支持部材46の後部は、拍車40Bと上下方向53,54に対向している。支持部材46は、第1排出ローラ対40によって前向き51に搬送される記録紙Sの下面を支持する。
【0097】
CIS25は、ヒータ39の前方に位置している。CIS25は、支持部材46の上方に位置する。CIS25は、前後方向51,52において第1排出ローラ対40と第2排出ローラ対72との間に位置する。CIS25は、LEDなどの光源から照射されて記録紙Sで反射された反射光が、屈折率分布型レンズによりラインセンサに集光されることによって、ラインセンサが受光した反射光の強度に応じた電気信号を出力するものである。CIS25は、記録紙Sの記録面(上面)の画像を読み取ることができる。CIS25において、左右方向55,56が読取りラインである。
【0098】
カッターユニット26は、第2排出ローラ対72の前方に位置する。カッターユニット26は、カッターキャリッジ27にカッター28が搭載されたものである。カッターキャリッジ27は、不図示のベルト駆動機構などによって、左右方向55,56に移動する。カッターキャリッジ27の移動に伴って、カッター28も左右方向55,56に移動する。カッター28の移動によって、第2排出ローラ対72と排出口33との間に位置する記録紙Sが左右方向55,56に沿って切断される。
【0099】
サイドフレーム20の左方に基板130が固定されている。基板130には、制御部122となる演算素子、通信インタフェース用のチップ、各種コネクタなどが搭載されている。基板130は、不図示のフラットケーブルなどによって記録ヘッド38やモータ、操作パネル44などと電気信号を送受信可能に接続されている。また、基板130には、不図示の電源ユニットから電力が供給される。
【0100】
図10に示されるように、制御部122は、温度センサ121から出力された検知信号に基づいて支持機構116を駆動するモータ123を制御するように構成されている。制御部122は、上筐体31が開かれたことを検知する開閉センサ124から出力された開閉信号を受信すると、支持機構116を駆動するモータの制御を開始するように構成されている。
【0101】
次に、画像記録装置10の動作について説明する。
【0102】
搬送ローラ対36の搬送ローラ36Bが回転すると、シート収容空間30Cのロール体37から隙間42を介して上向き53に記録紙Sが引き出される。ロール体37から引き出された記録紙Sは、搬送ローラ36Bとピンチローラ36Aとの間にニップされつつ前向き51に搬送される。搬送ローラ対36によって前向き51に搬送された記録紙Sは、支持機構116の支持部118で支持される。このとき、記録ヘッド38のノズル38Aからインクが下方へ吐出されることにより、記録紙Sの上面に画像が記録される。記録紙Sの上面に画像が記録された記録紙Sは、搬送ベルト117によって前向き51に搬送される。このとき、インクが記録紙Sに浸透することにより、インクの第1の乾燥が進行する。
【0103】
搬送ベルト117によって前向き51に搬送される記録紙Sは、ヒータ39の金属製プレート39aの上面22で支持される。このとき、記録紙Sは、金属製プレート39aの上面22に対して上向き53に浮き上がっても、複数の拍車81Cが記録紙Sの上面に接触することによって記録紙Sの浮き上がりが抑制される。そして、記録紙Sが金属製プレート39a上を通過する間に、金属製プレート39aの熱によって記録紙S及びインクが加熱されることにより、インクの第2の乾燥が進行する。このとき、ヒータ39の上方がヒータカバー81によって覆われるので、ヒータ39とヒータカバー81との間の空間にヒータ39から発生する熱が留まりやすい。このため、記録紙Sが効率的にヒータ39の熱によって加熱される。その結果、インクに含まれる樹脂微粒子が溶融し、その後の空気による冷却により硬化して、顔料が記録紙Sの上面に定着する。
【0104】
ヒータ39で加熱された記録紙Sは、第1排出ローラ対40の排出ローラ40Aと拍車40Bとの間にニップされつつ前向き51に搬送される。このとき、排出ローラ40Aと拍車40Bとが接触するニップ点A1が金属製プレート39aの上面22よりも下方に位置するので、記録紙Sが金属製プレート39aの上面22における前端側に接触しやすい。その結果、インクの第2の乾燥が促進される。第1排出ローラ対40によって前向き51に搬送された記録紙Sは、支持部材46によって支持される。支持部材46によって記録紙Sが支持されると、CIS25は、記録紙Sの上面(記録面)に向けて光源から光を照射し、記録紙Sで反射された反射光の強度に応じた電気信号を出力する。これにより、記録紙Sの上面(記録面)の画像がCIS25によって読み取られる。
【0105】
CIS25によって画像が読み取られた記録紙Sは、第2排出ローラ対72によって前向き51に搬送される。第2排出ローラ対72によって前向き51に搬送された記録紙Sは、前側部分が排出口33から筐体30の外部に露出した状態でカッターユニット26により左右方向55,56に沿って切断される。カッターユニット26によって切断された記録紙Sは、排出口33から排出される。
【0106】
[実施形態の作用効果]
画像記録装置10では、搬送ローラ対36によって搬送される記録紙Sがヒータ39の上面22に対して上方へ浮き上がっても、その記録紙Sは拍車81Cによって位置規制される。このため、ヒータ39から記録紙Sに熱が伝わりやすい。排出ローラ40Aと拍車40Bとが接触するニップ点A1が、ヒータ39の上面22よりも下方に位置するので、記録紙Sがヒータ39の上面22におけるヒータ前端22Fに接触しやすい。このため、記録紙Sにヒータ39からの熱が伝わりやすい。したがって、記録紙Sに吐出されたインクが乾燥しやすい。拍車40Bは、ヒータ39よりも前方に位置するので、ヒータ39の上方に位置する場合に比べて、インクの乾燥が進んだ状態で記録紙Sに接触する。このため、拍車40Bにインクが付着しにくい。拍車40Bと記録紙Sとの接触面積は、排出ローラ40Aと記録紙Sとの接触面積よりも小さいので、ヒータ39によって加熱されたインクが十分に乾燥していなくても、拍車40Bにインクが付着しにくい。このため、拍車40Bから記録紙Sへインクが再転写されることが抑制される。第1排出ローラ対40が設けられない場合に比べて、搬送路43における記録ヘッド38と対向する位置から搬送路43の下流端までの距離が長くなるので、記録紙Sに吐出されたインクの乾燥時間が確保される。したがって、高速印刷を行った場合においても、インクが拍車40Bなどのメカ機構に付着したり、インクが記録紙Sに再転写されたりすることが抑制される。
【0107】
画像記録装置10では、記録紙Sに吐出されたインクが記録紙Sに浸透することにより、第1の乾燥が進行するので、拍車81Cにインクが付着されることが抑制される。さらに、ヒータ39による加熱によってインクの第2の乾燥が進行するので、拍車40Bにインクが付着されることが抑制される。
【0108】
画像記録装置10では、記録紙Sが拍車40Bに到達するときは、既に第1の乾燥と第2の乾燥が進行しているので、図5に示されるように、距離L3が距離L4よりも短くても、インクが拍車40Bに付着することが抑制される。このため、インクが拍車40Bに付着することを抑制しつつ、画像記録装置10を前後方向51、52に小型化することが容易である。
【0109】
画像記録装置10では、記録紙Sがヒータ39の上面22に対して上方へ浮き上がっても、その記録紙Sは複数の拍車81Cによって位置規制されるので、ヒータ39から記録紙Sに熱がより伝わりやすい。
【0110】
画像記録装置10では、複数の拍車81Cのうち最も後方に位置する拍車81Cは、ヒータ後端22Bよりも前方に位置するので、記録紙Sが拍車81Cに到達したときは既に第1の乾燥と第2の乾燥の一部とが進行している。このため、インクが拍車81Cに付着することが抑制される。
【0111】
画像記録装置10では、インクは、少なくとも水と樹脂微粒子と界面活性剤とを含有する。インクの表面張力は、32mN/m以下である。このため、インクが記録紙Sに浸透しやすい。
【0112】
画像記録装置10では、樹脂微粒子のガラス転移温度が50℃以下である。このため、インクが記録紙Sに定着することが促進される。
【0113】
画像記録装置10では、インクが含有される有機溶剤のうち、25℃において液体である有機溶剤がインク全体に対して10重量パーセント以下である。このため、揮発しにくい有機溶剤の量が少ないので、記録紙Sに吐出されたインクが乾燥しやすい。
【0114】
画像記録装置10では、ヒータカバー81の前後方向51、52に沿った長さL5は、ヒータ39の金属製プレート39aの前後方向51、52に沿った長さL1よりも長い。このため、ヒータ39の上方がヒータカバー81によって覆われるので、ヒータ39とヒータカバー81との間の空間にヒータ39から発生する熱が留まりやすい。このため、搬送ローラ対36によって搬送される記録紙Sがより効率的にヒータ39の熱によって加熱されるので、記録紙Sに吐出されたインクが乾燥しやすい。
【0115】
[変形例]
画像記録装置10では、インクが浸透可能な浸透媒体としては、ロール体37から引き出される記録紙Sが用いられたが、インクが浸透可能な媒体であれば、記録紙Sに限定されない。例えば、インクが浸透可能な浸透媒体としては、カット紙、ファンフォールド紙が用いられてもよい。
【0116】
画像記録装置10では、ヒータ前端22Fと拍車40Bの後端との間の前後方向51、52に沿った距離L3は、複数のノズル38Aのうち最も前方に位置するノズル38Aの後端と、複数の拍車81Cのうち最も後方に位置する拍車81Cの後端と、の間の前後方向51、52に沿った距離L4よりも短い。このように距離L3が距離L4よりも短くても、記録紙Sが拍車40Bに到達するときは、第1の乾燥と第2の乾燥が既に進行しているので、インクが拍車40Bに付着することが抑制される。このため、インクが拍車40Bに付着することを抑制しつつ、画像記録装置10を前後方向51、52に小型化することが容易である。
【0117】
画像記録装置10では、複数の拍車81Cがヒータ39の上方に設けられたが、少なくとも1つの拍車81Cがヒータ39の上方に設けられれば足りる。
【0118】
画像記録装置10では、複数の拍車81Cのうち最も後方に位置する拍車81Cは、ヒータ後端22Bよりも前方に位置したが、ヒータ後端22Bよりも後方に位置してもよい。
【0119】
画像記録装置10では、インクの表面張力は、32mN/m以下であったが、32mN/mを越えてもよい。この場合、インクは、界面活性剤を含有しなくてもよい。
【0120】
画像記録装置10では、樹脂微粒子は、ガラス転移温度が50℃以下のものであったが、ガラス転移温度が50℃以上のものでもよい。
【0121】
画像記録装置10では、インクは、顔料を色材として含有したが、顔料を色材として含有しなくてもよい。
【0122】
画像記録装置10では、ヒータカバー81の前後方向51、52に沿った長さL5は、ヒータ39の金属製プレート39aの前後方向51、52に沿った長さL6よりも長かったが、長さL5は、長さL6よりも短くてもよい。
【0123】
画像記録装置10では、ヒータカバー81が設けられたが、ヒータカバー81は、省略されてもよい。
【0124】
画像記録装置10では、拍車40Bが設けられたが、拍車40Bは省略されてもよい。この場合、第1排出ローラ対40は省略される。
【符号の説明】
【0125】
10・・・画像記録装置
22・・・上面
22F・・・ヒータ前端(ヒータ下流端)
22B・・・ヒータ後端(ヒータ上流端)
36・・・搬送ローラ対(第1搬送ローラ対)
40・・・第1排出ローラ対(第2搬送ローラ対)
38・・・記録ヘッド
38A・・・ノズル
39・・・ヒータ
40A・・・排出ローラ(ローラ)
40B・・・拍車(第2拍車)
81・・・ヒータカバー
81C・・・拍車(第1拍車および第3拍車)
A1・・・ニップ点
L1・・・距離(第3距離)
L1・・・長さ(第2長さ)
L2・・・距離(第4距離)
L3・・・距離(第1距離)
L4・・・距離(第2距離)
L5・・・長さ(第1長さ)
S・・・記録紙(浸透媒体)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10