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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081216
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/24 20060101AFI20240611BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240611BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01D11/24 B
H05K5/02 E
G01S7/481 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194674
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 大海
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 創
【テーマコード(参考)】
4E360
5J084
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB51
4E360AB64
4E360CA03
4E360EA05
4E360EA24
4E360EA29
4E360EB02
4E360ED07
4E360ED24
4E360ED30
4E360FA02
4E360FA13
4E360FA20
4E360GA12
4E360GA29
4E360GB99
4E360GC08
5J084AA05
5J084AB01
5J084BA04
5J084BA36
(57)【要約】
【課題】屋外使用に好適なセンサ装置を提供すること。
【解決手段】本開示の1つの態様に係るセンサ装置1は、屋外の構造物2に設置されるセンサ装置1であって、柔軟性、及び耐候性を有するフィルム状の回路基板にセンサ140が実装された電気回路モジュール10と、電気回路モジュール10を包む柔軟性を有するフィルム状の外装材30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外の構造物に設置されるセンサ装置であって、
柔軟性を有するフィルム状の回路基板にセンサが実装された電気回路モジュールと、
前記電気回路モジュールを包む柔軟性、及び耐候性を有するフィルム状の外装材と、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記構造物は、電柱、又は照明器具を支持するポールである、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
電力を蓄電する蓄電デバイスを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記蓄電デバイスは、
前記電気回路モジュールに設けられ、前記外装材に包まれている
ことを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記電気回路モジュールに電力を供給する発電モジュールを備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記発電モジュールは、環境発電デバイスを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記発電モジュールは、柔軟性を有するフィルム状であり、
前記電気回路モジュールとともに前記外装材に包まれることにより一体化されている、又は、前記電気回路モジュールを包む前記外装材とは別の柔軟性、及び耐候性を有するフィルム状の外装材によって包まれている
ことを特徴とする請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記電気回路モジュールを包む前記外装材を、前記構造物の設置面に固定する固定部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記電気回路モジュールは、
前記回路基板の曲げを規制する1枚以上の補助板を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記補助板の数が複数枚であり、
前記複数枚の補助板は、それぞれ、
曲げを規制する方向において前記回路基板と同じ、又は前記回路基板以上の長さを有し、
曲げを規制する方向と直行する方向に並べて配置されている
ことを特徴とする請求項9に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、施工現場に電力を供給するとともに、気象関連情報を出力する多機能型仮設柱を開示する。この特許文献1には、多機能型仮設柱が施工現場の気候要素情報を検出する検出センサを備えること、及び、検出センサの作動に要する電力は、施工現場に電力を供給する仮設分電盤ボックスから供給されること、が記載されている。
特許文献2は、複数の既設構築物に取り付けられた複数のマルチセンサを備える災害情報システムを開示する。この特許文献2には、既設構築物には電柱が含まれること、電柱に取り付けられたマルチセンサの電源は当該電柱から供給されること、が記載されている。また特許文献2には、マルチセンサがシート型振動センサを含むこと、シート型振動センサが柔軟性を有するシート状のセンサであること、も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-76454号公報
【特許文献2】特開2020-119231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のIoT(Internet of Things)の進歩、及び応用範囲の拡大により、屋外におけるセンシングの需要が高まっている。しかしながら、特許文献1、及び特許文献2に示されたセンサは、屋外における使用の点において改善の余地があった。
【0005】
本開示は、屋外使用に好適なセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、屋外の構造物に設置されるセンサ装置であって、柔軟性を有するフィルム状の回路基板にセンサが実装された電気回路モジュールと、前記電気回路モジュールを包む柔軟性、及び耐候性を有するフィルム状の外装材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記構造物は、電柱、又は照明器具を支持するポールである、ことを特徴とする。
【0008】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、電力を蓄電する蓄電デバイスを備えることを特徴とする。
【0009】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記蓄電デバイスは、前記電気回路モジュールに設けられ、前記外装材に包まれていることを特徴とする。
【0010】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記電気回路モジュールに電力を供給する発電モジュールを備えることを特徴とする。
【0011】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記発電モジュールは、環境発電デバイスを含むことを特徴とする。
【0012】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記発電モジュールは、柔軟性を有するフィルム状であり、前記電気回路モジュールとともに前記外装材に包まれることにより一体化されている、又は、前記電気回路モジュールを包む前記外装材とは別の柔軟性、及び耐候性を有するフィルム状の外装材によって包まれていることを特徴とする。
【0013】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記電気回路モジュールを包む前記外装材を、前記構造物の設置面に固定する固定部を備えることを特徴とする。
【0014】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記電気回路モジュールは、前記回路基板の曲げを規制する1枚以上の補助板を備えることを特徴とする。
【0015】
本開示の1つの態様に係るセンサ装置は、上記センサ装置において、前記補助板の数が複数枚であり、前記複数枚の補助板は、それぞれ、曲げを規制する方向において前記回路基板と同じ、又は前記回路基板以上の長さを有し、曲げを規制する方向と直行する方向に並べて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示の1つの態様によれば、屋外使用に好適なセンサ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す斜視図である。
図2】センサ装置の設置状態の一例を示す模式図である。
図3】電気回路モジュールの電気的構成の一例を示す概略図である。
図4】センサの構成の一例を模式的に示す図である。
図5】発電モジュールの電気的構成の一例を示す概略図である。
図6】電気回路モジュールの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図7】本開示の変形例に係るセンサ装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.実施形態
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な形態を説明する。
なお、図面において、各部の寸法、及び縮尺が実際と適宜に異なる場合があり、また、理解を容易にするために模式的に示している部分を含む場合がある。
以下の説明において、本開示を限定する旨の特段の記載がない限り、本開示の範囲は以下の説明に記載された形態に限られない。また、本開示の範囲は当該形態の均等の範囲を含む。
【0019】
[全体構成]
図1は、本実施形態のセンサ装置1の構成の一例を示す斜視図である。図2は、センサ装置1の設置状態の一例を示す模式図である。
センサ装置1は、屋外の構造物2に設置され、周囲の情報を検出する、柔軟性を有したフィルム状の装置である。具体的には、センサ装置1は、図1に示すように、周囲の情報を検出するセンサ140を含む電気回路モジュール10と、電力以外のエネルギーを電力に変換する発電モジュール20と、発電モジュール20の電力を電気回路モジュール10へ供給するための電力ケーブル25と、柔軟性を有するフィルム状の外装材30と、を含む。電気回路モジュール10、及び発電モジュール20は、いずれも、柔軟性を有したフィルム状であり、また、外装材30は袋状である。電気回路モジュール10、発電モジュール20、及び電力ケーブル25が1つの外装材30に包み込まれることにより、それぞれが一体化され、また、全体的にフィルム状を成している。発電モジュール20が電気回路モジュール10と一体化されることにより、装置の取り扱いが容易となる。
【0020】
なお、本開示において、「フィルム状」は、平面的な広さに対して厚みが薄い形状を指し、例えば材質や透明性といった形状以外の性質を限定するものではない。また、形状の点において、「フィルム状」と「シート状」とは同義である。
本開示において、「柔軟性」は、外力によって容易に変形する性質を指し、外力が取り去られた後に元の形状に復元する復元力の有無を限定するものではない。
本開示において、「可撓性」は、柔軟性を有し、かつ、外力が取り去られた後に元の形状に復元する復元力を有する性質を指す。
【0021】
構造物2は、定常的、又は半定常的に屋外に存在する適宜の物体である。係る構造物2の好適な例は、図2に示すように、地面3に立設された柱状体である。係る柱状体の代表例には、照明器具、標識、又は看板を支持する各種のポール、及び電柱などが挙げられる。照明器具の代表例には、街路灯、防犯灯、及び道路灯などが挙げられる。
一般に、電柱、及び照明器具を支持するポールには、電力を伝送する装置や配線などが設置されている。したがって、センサ装置1が電柱、及び、照明器具を支持するポールに設置されることで、センサ装置1が当該電力を電気回路モジュール10の動作電力に利用することもできる。
【0022】
また、構造物2の他の好適な例は、トンネル、及び橋梁といった道路に係る構築物であり、その他の好適な例は、ビル及び住宅といった建築物である。
構造物2において、センサ装置1の設置面は曲面を含んでもよいし、曲面を含まなくてもよい。
【0023】
本開示において、電気回路モジュール10、発電モジュール20、及び外装材30は、いずれも高い柔軟性を有する。したがって、例えば構造物2が円柱であり、設置面が曲面を含む場合であっても、センサ装置1がその曲面に沿って柔軟に曲がり、設置面に隙間を生じることなく密着する。また、センサ装置1が厚みの薄いフィルム状であり、かつ設置面に密着するため、例えば、後述する処理装置100による演算処理において、当該設置面をセンシングにおける基準点と見做して検出信号を処理することも可能になる。
【0024】
また、センサ装置1が発電モジュール20を備えるため、周囲に電源が存在しない場所でも、センサ装置1を設置して使用できる。
【0025】
[電気的構成]
図3は、電気回路モジュール10の電気的構成の一例を示す概略図である。
電気回路モジュール10は、処理装置100と、記憶装置110と、インターフェース装置120と、通信装置130と、上述したセンサ140と、電源部150と、を含み、それぞれがバスに接続されている。
【0026】
処理装置100は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの1又は複数のプロセッサーを含む。処理装置100の機能の一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路によって構成されてもよい。
記憶装置110は、処理装置100が読み取り可能な記録媒体である。記憶装置110は、例えば、不揮発性メモリーと揮発性メモリーとを含む。不揮発性メモリーは、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。
【0027】
インターフェース装置120は、互いに信号を送受可能に外部機器が接続される装置である。インターフェース装置120は、適宜の外部機器を接続するためのコネクタ端子、及び、外部機器と処理装置100との間で送受される信号を処理するインターフェース回路などのハードウェアを含む。
通信装置130は、情報を伝送するネットワークにアクセスし、このネットワークを介して外部の通信機器と通信する送受信デバイスを含むハードウェアである。通信装置130は、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、及び、通信モジュールとも呼ばれる。本実施形態の通信装置130は、無線通信インターフェース回路130Aと、アンテナ130Bとを備え、無線通信方式により外部の通信機器と通信する。なお、通信装置130は、有線接続用のコネクタ端子と、当該コネクタ端子に対応する有線通信インターフェース回路とを備え、有線通信方式により外部の通信機器と通信してもよい。また、通信装置130は、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号、及びGPS(Global Positioning System)信号の少なくとも1つを受信するための受信装置であってもよい。
【0028】
センサ140は、周囲の適宜の情報を検出するデバイスであり、検出動作に基づく検出信号を処理装置100に出力する。センサ140の数、及び種類は、センサ装置1の用途、又は目的によって適宜に選択される。すなわち、センサ140の数は1つでも複数でもよい。センサ140の数が複数である場合、幾つか又は全部のセンサ140の種類が異なってもよい。センサ140の種類には、測距センサ、電波センサ、イメージセンサ、レーザーセンサ、傾きセンサ、振動センサ、環境・気象センサなどが挙げられる。環境・気象センサは、気温、湿度、気圧、風速、風向、及び二酸化炭素濃度といった気象、及び環境に係る少なくとも1つの物理量を検出するセンサである。
【0029】
電源部150は、電気回路モジュール10の動作電力の基となる電源と、当該動作電力を各部に供給するハードウェアを含む。本実施形態の電源部150は、上記発電モジュール20によって発電された電力、及び、当該電力を蓄電した電力を電源に用いるために、蓄電デバイス150Aと、電力切替回路150Bと、充電回路150Cと、を備える。
【0030】
蓄電デバイス150Aは、発電モジュール20から供給される電力を蓄電するデバイスであり二次電池を含む。二次電池の種類は適宜である。好適な種類は、電池の小型化が可能なものであり、例えば、ニッケル-カドミウム蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池、及びリチウム電池などである。リチウム電池には、例えば、バナジウムリチウム二次電池、マンガンリチウム二次電池、コバルトチタンリチウム二次電池、及びマンガンチタンリチウム二次電池などが用いられ得る。
【0031】
電力切替回路150Bは、蓄電デバイス150Aの蓄電電力と、発電モジュール20から供給される電力との間で、電気回路モジュール10の各部に供給する動作電力を切り替える回路である。電力切替回路150Bは、動作電力の切替を能動的に行ってもよいし、上記処理装置100の制御に基づいて受動的に行ってもよい。
充電回路150Cは、発電モジュール20から供給される電力によって蓄電デバイス150Aを充電する回路である。充電回路150Cは、充電動作を能動的に行ってもよいし、上記処理装置100の制御に基づいて受動的に行ってもよい。
【0032】
なお、電力切替回路150Bによる動作電力の切替、及び、充電回路150Cによる充電のそれぞれの動作アルゴリズムは、センサ装置1の用途、目的、設置環境、二次電池の種類、及び発電モジュール20の種類といった種々の要素に応じて設定される。
本実施形態では、電力切替回路150Bは、発電モジュール20の発電量が所定値を下回った場合に、動作電力を蓄電デバイス150Aの蓄電電力に切り替える。これにより、発電モジュール20の発電量が、電気回路モジュール10の動作に必要な電力を下回る場合でも、蓄電デバイス150Aの蓄電電力により電気回路モジュール10の動作を継続できる。
【0033】
本実施形態の電気回路モジュール10において、上述の記憶装置110は、電気回路モジュール10を制御するためのプログラムPRを予め記憶する。そして、処理装置100がプログラムPRを実行することによって、取得部101、処理部102、及び出力部103として機能する。
【0034】
取得部101は、センサ140から検出信号を取得する制御を実行する機能部である。
処理部102は、取得部101によって取得された検出信号に基づいて演算処理を実行することにより適宜の情報を特定する機能部である。
出力部103は、処理部102によって特定された情報を、インターフェース装置120、及び通信装置130の少なくとも一方から外部の機器に出力する制御を実行する機能部である。なお、処理装置100は、電力切替回路150Bによる動作電力の切替を制御する機能部、及び、充電回路150Cによる充電動作を制御する機能部を備えてもよい。
【0035】
図4は、センサ140の構成の一例を模式的に示す図である。
同図に示すセンサ140は、ToF(Time of Flight)センサである。ToFセンサは、光を照射することによって、対象物Aまでの距離Bを検出する測距センサの一例である。ToFセンサとして構成されたセンサ140は、発光部140Aと、受光部140Bと、タイミング発生回路140Cと、時間計測回路140Dと、を備える。
【0036】
発光部140Aは、一定方向にレーザ光を参照光L1として放射する発光デバイス140A1と、発光デバイス140A1の参照光L1を制御する第1光学系140A2と、を含む。発光デバイスには、例えば近赤外のレーザ光を照射する半導体レーザが用いられる。また、半導体レーザには、例えば、基板の上面から垂直にレーザ光を放射する垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)が用いられる。
受光部140Bは、参照光L1が対象物Aによって反射された光である反射光L2を検出する受光デバイス140B1と、受光デバイス140B1に反射光L2を集めるための第2光学系140B2と、を含む。受光デバイス140B1には、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、又はSPAD(Single Photon Avalanche Diode)などが用いられる。
タイミング発生回路140Cは、発光部140Aと受光部140Bとにタイミング信号を送ることによって、発光部140Aの発光動作と受光部140Bの受光動作とを同期させる回路である。
時間計測回路140Dは、発光部140Aの発光タイミングから対象物Aに参照光L1が反射されて受光部140Bに到達するまでの時間、すなわち光の飛行時間(Time of Flight)を計測する回路である。飛行時間の計測結果に基づいて、センサ140から対象物Aまでの距離Bが検出される。
【0037】
かかる構成のセンサ140を含むセンサ装置1の応用例の1つには、歩行者、及び車両などの往来物の検出がある。この応用例では、図2に示すように、往来する場所に存在する柱状の構造物2にセンサ装置1が設置される。そして、センサ装置1は、検出の対象物Aである往来物までの距離Bをセンサ140によって検出し、検出結果を含む信号を外部の機器に通信装置130、及びインターフェース装置120の少なくとも1つから出力する。
また、センサ装置1において、検出された距離Bに基づいて、処理装置100が各種の判定処理を行い、判定結果を外部の機器に出力してもよい。判定処理の例としては、往来物の通過検知、及び、距離Bに基づく往来物の種別判定などが挙げられる。種別判定について詳細には、センサ装置1が道路脇の構造物2に設置された場合、センサ装置1から道路の車道までの距離Bthよりも検出結果の距離Bが近いときには、車道を走行する車両以外(例えば歩行者など)が往来物であると特定できる。
外部の機器の一例には、屋外の照明器具の点滅を、往来物の交通量などに基づいて制御する装置などが挙げられる。
【0038】
ToFセンサを含むセンサ装置1によれば、赤外線センサなどに比べて発光部140Aの光が拡がる範囲が狭いことから誤検知が抑えられる。また、発光部140Aの発光デバイス140A1に用いる半導体レーザの出力を抑えることにより、歩行者などの人に対する安全性も担保される。
【0039】
図5は、発電モジュール20の電気的構成の一例を示す概略図である。
本実施形態の発電モジュール20は、環境発電と呼ばれる発電方法によって電力を生じるモジュールであり、環境発電デバイス200と、環境発電回路210とを含む。なお、環境発電はエナジーハーベスティングとも呼ばれる。
環境発電デバイス200は、環境中の運動エネルギー、光エネルギー、及び熱エネルギーの少なくとも1つの微小なエネルギーを電気エネルギーに変換する、すなわち環境発電するデバイスを含む。係るデバイスは、例えば、振動発電デバイス、太陽電池、TEC(ThermoElectric Cooling module)、TEG(Thermoelectric Generator)、及び熱電変換素子などである。なお、環境発電デバイス200は、互いに異なる種類の複数のデバイスを含んでもよい。
環境発電回路210は、環境発電デバイス200によって発電された電力の電圧値を変換するものである。変換後の電力は、図1に示した電力ケーブル25を通じて電気回路モジュール10へ供給される。なお、環境発電回路210の機能に相当する回路を、電気回路モジュール10が備えてもよい。
【0040】
発電モジュール20が環境発電により発電するため、環境に優しい電源が得られる。
【0041】
[構造的構成]
図6は、電気回路モジュール10の構成の一例を概略的に示す平面図である。
電気回路モジュール10は、第1回路基板180と、この第1回路基板180に実装された複数の回路部品182と、を備える。複数の回路部品182は、図3に示した各機能部を実現するための各種の電気部品、及び電子部品を含み、例えば、ICチップ、半導体素子、電子部品、二次電池、センサ140、及び、電力ケーブル25を接続するためのコネクタなどの部品を含む。
【0042】
第1回路基板180は柔軟性を有するフィルム状であり、本実施形態では、フレキシブルプリント配線板(フレキシブル基板とも呼ばれる)が用いられる。第1回路基板180は、ポリイミドなどの樹脂材を主材とする薄膜状の電気的絶縁性を有するベースフィルムを備え、このベースフィルムの表面に、上述の回路部品182、回路部品182同士を接続する多数の配線180A、及び、多数のランド180Bなどが設けられる。ベースフィルムの表面には、アンテナ130Bに対応するフィルムアンテナを形成してもよい。なお、図6において、回路部品182、配線180A、及びランド180Bは適宜に省略して描かれている。また、第1回路基板180は可撓性を有してもよい。
【0043】
本実施形態の第1回路基板180は、図6に示すように、1枚以上の補助板184を備える。本実施形態において、補助板184の枚数は複数枚であり、各補助板184が第1方向C1と直交する方向に適宜の間隔をあけて第1回路基板180の表面、又は裏面に並べて配置されている。第1方向C1は、第1回路基板180の曲げ変形を禁止すべき方向であり、複数の補助板184は、それぞれ当該第1方向C1への曲げを規制する部材である。
具体的には、複数の補助板184は、第1方向C1において第1回路基板180と同じ、又はそれ以上の長さを有する矩形状を成し、かつ、剛性を有する板状の部材である。そして、曲げ応力に弱い回路部品182、及び、剛性が高い回路部品182は、第1回路基板180の実装面のうち、いずれかの補助板184で覆われる箇所に配置される。これにより、曲げによる回路部品182の破損が防止され、センサ装置1の信頼性が高められる。加えて、第1方向C1以外の方向への第1回路基板180の曲げが剛性の高い回路部品182によって阻害されることもない。
【0044】
なお、本実施形態の第1回路基板180は、長辺180HAと短辺180HBとを有する矩形状であり、長辺180HAが第1方向C1に設定されている。しかしながら、第1回路基板180の形状、及び、第1回路基板180における第1方向C1の方向は適宜である。
【0045】
また、補助板184の枚数、第1方向C1と直交する方向の長さ(すなわち幅)、厚み、及び材質は適宜である。
ただし、補助板184の幅が長くなるほど、及び、補助板184同士の間隔が狭くなるほど、第1方向C1と直交する方向に第1回路基板180が曲がり難くなり、設置面の曲率に沿って曲がり難くなる。また、補助板184の厚みが厚くなるほど、重量、及び、設置面からの回路部品182の突出量も大きくなる。また、補助板184の材質は低導電性又は絶縁性を有することが好ましく、本実施形態ではFR4(Flame Retardant Type 4)が用いられている。
【0046】
発電モジュール20は、上述の通り、柔軟性を有するフィルム状である。具体的には、図1に示すように、発電モジュール20は、第2回路基板200Aと、当該第2回路基板200Aに形成され、互いに直列又は並列に接続された複数(図示例では3つ)の太陽電池素子200Bと、を含み、第2回路基板200Aが第1回路基板180と同様に柔軟性を有するフィルム状であり、本実施形態では、フレキシブルプリント配線板が用いられる。また、発電モジュール20は、複数の太陽電池素子200Bのそれぞれによって発電された電力を外部に取り出すための集電線(図示せず)を含み、この集電線に電力ケーブル25が接続される。
【0047】
外装材30は、柔軟性、及び耐候性を有するフィルム状であり、また袋状に構成されており、電気回路モジュール10、発電モジュール20、及び電力ケーブル25を内部に包み込むことにより一体化する。本実施形態の外装材30は、2枚のフィルム材を有し、各フィルムの間に、電気回路モジュール10、発電モジュール20、及び電力ケーブル25が配置された状態で、各フィルムの縁部がヒートシール等により融着されることで、これらを内部に封止する。外装材30のフィルム材には、耐候性、及び耐水性を有する樹脂材(例えば、フッ素樹脂)が用いられる。なお、外装材30には、センサ140に対応する箇所に検出窓などを適宜に設けてもよい。
【0048】
また、センサ装置1において、外装材30には、構造物2の設置面に固定するための固定部40が設けられる。好適な固定部40は、ネジ、鋲、及び釘などの外装材30を貫通する部材を固定に用いない部材、換言すれば、固定のための開口を袋状の外装材30に生じさせることがない部材である。係る固定部40によれば、袋状の外装材30が密封性を有する場合に、その密封性が固定部40によって損なわれることがない。好適な固定部40の例には、接着剤、粘着剤、吸着盤、磁石、及び、バンドなどが挙げられる。固定部40は、センサ装置1の裏面の適宜の範囲に設けられてもよい。図1の例では、外装材30の略全面に、固定部40である接着剤が塗布されている場合を示している。
固定部40が構造物2に巻き付くバンドである場合、バンドによる固定構造はセンサ装置1をその表面から構造物2に押し付けて固定する構造でもよい。また、バンドは、構造物2に巻き付けられたセンサ装置1の端部同士を連結することにより固定するものでもよい。バンドの材質は適宜であるが、少なくとも屋外使用に対して十分な耐蝕性などの特性を有する材質が用いられる。
【0049】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0050】
本実施形態のセンサ装置1は、屋外の構造物2に設置される装置であって、柔軟性を有するフィルム状の第1回路基板180にセンサ140が実装された電気回路モジュール10と、電気回路モジュール10を包む柔軟性、及び耐候性を有するフィルム状の外装材30と、を備える。
この構成によれば、電気回路モジュール10が外装材30によって包まれることで、屋外の使用環境から十分に保護される。また、電気回路モジュール10、及び外装材30が柔軟性を有するフィルム状であるため、構造物2の設置面が曲面を含む場合でも、曲面に合わせて曲がり、設置面に隙間無く設置できる。
【0051】
本実施形態において、構造物2は、電柱、又は照明器具を支持するポールである。
この構成によれば、センサ装置1は、電柱、及び照明器具を支持するポールに付設されている、電力を伝送する装置や配線などから電気回路モジュール10の動作電力を得ることができる。
【0052】
本実施形態のセンサ装置1は、電力を蓄電する蓄電デバイス150Aを備える。
この構成によれば、蓄電デバイス150Aの電力を用いて電気回路モジュール10を動作せることができるため、周囲に電源が存在しない場所にもセンサ装置1を設置できる。
【0053】
本実施形態において、蓄電デバイス150Aは、電気回路モジュール10に設けられ、外装材30に包まれている。
この構成によれば、蓄電デバイス150Aも電気回路モジュール10と同様に外装材30によって保護される。
【0054】
本実施形態のセンサ装置1は、電気回路モジュール10に電力を供給する発電モジュール20を備える。
この構成によれば、発電モジュール20の電力を用いて電気回路モジュール10を動作せることができるため、周囲に電源が存在しない場所にもセンサ装置1を設置できる。
また、発電モジュール20の電力によって蓄電デバイス150Aを充電することにより、発電モジュール20の発電量が少ない場合でも、蓄電デバイス150Aの蓄電電力により電気回路モジュール10を動作させることができる。
【0055】
本実施形態のセンサ装置1において、発電モジュール20は、環境発電デバイス200を含む。
この構成によれば、環境に優しい電源が得られる。
【0056】
本実施形態のセンサ装置1において、発電モジュール20は、柔軟性を有するフィルム状であり、電気回路モジュール10とともに外装材30に包まれることにより一体化されている。
この構成によれば、発電モジュール20が電気回路モジュール10と一体化されることにより、装置の取り扱いが容易となる。これに加えて、発電モジュール20も柔軟性を有するフィルム状であるため、電気回路モジュール10と同様に、構造物2の設置面が曲面を含む場合でも、当該曲面に合わせて曲がり、設置面との間に隙間を生じること無く設置できる。
【0057】
本実施形態のセンサ装置1は、電気回路モジュール10を包む外装材30を、構造物2の設置面に固定する固定部40を備える。
この構成によれば、固定部40を用いてセンサ装置1を構造物2に固定して設置できる。
【0058】
本実施形態のセンサ装置1は、第1回路基板180の曲げを規制する1枚以上の補助板184を備える。
この構成によれば、第1回路基板180の曲げによる回路部品182の破損が防止され、センサ装置1の信頼性が高められる。
【0059】
本実施形態のセンサ装置1は、補助板184の数が複数枚であり、前記複数枚の補助板は、それぞれ、曲げを規制する方向である第1方向C1において第1回路基板180と同じ、又は第1回路基板180以上の長さを有し、曲げを規制する方向である第1方向C1と直行する方向に並べて配置されている。
この構成によれば、第1回路基板180の実装面のうち補助板184で覆われる箇所に、曲げ応力に弱い、又は、剛性が高い回路部品182を配置することで、当該回路部品182の破損を防止でき、センサ装置1の信頼性を高めることができる。加えて、第1方向C1以外の方向への第1回路基板180の曲げが、剛性の高い回路部品182によって阻害されることもない。
【0060】
2.変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0061】
(1)上述したセンサ装置1において、電気回路モジュール10と、発電モジュール20とは、互いに別の外装材30に包まれてもよい。
この構成によれば、電気回路モジュール10と、発電モジュール20との設置位置を互いに独立して調整できる。これにより、図7に示すように、センサ装置1が円柱状の構造物2に巻き付けるように設置される場合、電気回路モジュール10の周方向Eの位置をセンサ140と対象物Aとの位置関係に応じて調整でき、また、発電モジュール20の周方向Eの位置を発電の効率に応じて調整できる。
なお、本変形例に係るセンサ装置1において、電気回路モジュール10を包む外装材30と、発電モジュール20を包む外装材30との間を電力ケーブル25が延びる。この場合において、センサ装置1の設置後に、外装材30に包まれた電気回路モジュール10をと、別の外装材30に包まれた発電モジュール20と、電力ケーブル25と、をフィルム材などで覆ってもよい。
【0062】
(2)上述したセンサ装置1において、センサ装置1の中でも比較的面積が大きな環境発電デバイス200と外装材30とは、いずれも透明であってもよい。
この構成によれば、センサ装置1の設置によって、構造物2の設置面の表示が環境発電デバイス200によって覆われた場合でも、設置面の表示の視認性を確保できる。
【0063】
(3)上述したセンサ装置1において、外装材30には適宜の意匠が施されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…センサ装置、2…構造物、10…電気回路モジュール、20…発電モジュール、30…外装材、40…固定部、140…センサ、150A…蓄電デバイス、180…第1回路基板(回路基板)、184…補助板、200…環境発電デバイス、200A…第2回路基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7