(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081218
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】プローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G01R1/067 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194676
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】390026859
【氏名又は名称】理化電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 守
(72)【発明者】
【氏名】高 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】井島 康夫
(72)【発明者】
【氏名】阿南 太希
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA22
2G011AB01
2G011AB03
2G011AB04
2G011AB06
2G011AC14
(57)【要約】
【課題】プローブピンを電子部品の端子に安定的に接触させることができるプローブを提供する。
【解決手段】プローブ(100)は外側プローブピン(1)と内側プローブピン(2)を備える。外側プローブピン(1)はピン本体(11)と先端部(12)を含む。ピン本体(11)は軸方向に延在する貫通孔(111)を有する。先端部(12)は軸方向でピン本体(11)に隣接し、貫通孔(111)と連通するとともに貫通孔(111)の反対側で開口する。内側プローブピン(2)は貫通孔(111)に挿入される。先端部(12)は内周部(122)と外周部(121)を含む。内周部(122)は、軸方向に沿って見て内側プローブピン(2)の周囲に配置される。外周部(121)は内周部(122)の周囲に配置される。内周部(122)は、先端部(12)の開口側の領域においてピン本体(11)側に向かうにつれて貫通孔(111)の軸心(C)に接近する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する貫通孔を有するピン本体と、前記軸方向で前記ピン本体に隣接し、前記貫通孔と連通するとともに前記貫通孔の反対側で開口する先端部とを含む外側プローブピンと、
前記貫通孔に挿入される内側プローブピンと、を備え、
前記先端部は、前記軸方向に沿って見て前記内側プローブピンの周囲に配置される内周部と、前記内周部の周囲に配置される外周部とを含み、
前記内周部は、少なくとも前記先端部の開口側の領域において前記ピン本体側に向かうにつれて前記貫通孔の軸心に接近する、プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブであって、
前記内周部は、前記軸方向に沿って見て円環状を有する、プローブ。
【請求項3】
請求項1に記載のプローブであって、
前記ピン本体の太さは、前記先端部の太さよりも小さい、プローブ。
【請求項4】
請求項1に記載のプローブであって、
前記外周部は、前記軸方向に沿って見て円環状を有する、プローブ。
【請求項5】
請求項1に記載のプローブであって、
前記内側プローブピンは電圧測定に用いられ、前記外側プローブピンは電流測定に用いられる、プローブ。
【請求項6】
請求項1に記載のプローブであって、さらに、
前記ピン本体から前記先端部に向かう方向を付勢方向として前記外側プローブピンを付勢するばね部材を備える、プローブ。
【請求項7】
請求項1に記載のプローブであって、さらに、
前記ピン本体から前記先端部に向かう方向を付勢方向として前記内側プローブピンを付勢するばね部材を備える、プローブ。
【請求項8】
請求項1に記載のプローブであって、
前記内側プローブピンの先端は、前記内周部内であって前記先端部の開口に対して前記軸方向の内側に位置づけられる、プローブ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のプローブを準備するステップと、
前記外側プローブピン及び前記内側プローブピンを電子部品の端子に接触させて、前記電子部品の抵抗を測定するステップと、を備える、電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電子部品の製造方法であって、
前記軸方向に沿って見て前記先端部の開口が前記端子よりも大きい、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスなどの電子部品を製造する際、電子部品の抵抗を高精度に測定する必要がある。電子部品の抵抗を高精度に測定するために、従来、ケルビン接続法(4端子法)が利用されている。ケルビン接続法によれば、配線抵抗などによる電圧降下の影響を受けずに、電子部品にかかる電圧を測定することができ、電子部品の抵抗を高精度に測定することができる。
【0003】
ケルビン接続法では、電流測定用(Force用)のプローブピン、及び電圧測定用(Sense用)のプローブピンが必要となる。例えば、特開平9-89951号公報(特許文献1)には、同軸に配置された電流測定用のプローブピン及び電圧測定用のプローブピンを含むプローブが開示されている。特許文献1において、一方のプローブピンは、管状を有している。他方のプローブピンは、棒状を有し、管状のプローブピンに挿入されている。
【0004】
特許第5060913号公報(特許文献2)には、同軸に配置された周側プローブ部及び内側プローブ部を含むプローブが開示されている。周側プローブ部は、実質的に一定の内径を有する管状導電子(プローブピン)を含む。内側プローブ部は、この管状導電子内に収容された棒状導電子(プローブピン)を含む。特許文献2では、管状導電子の端面がクラウン状に形成されている。特許文献2において、電子部品の抵抗を測定する際には、管状導電子の端面及び棒状導電子の先端が電子部品の端子に同時に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-89951号公報
【特許文献2】特許第5060913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2のプローブは、電子部品の抵抗の測定に際し、管状のプローブピンの端面及び棒状のプローブピンの先端が電子部品の端子に接触する。しかしながら、端子の大きさ及び形状は多岐にわたり、また、プローブに対して端子の位置がずれていたり、端子自体が曲がっていたりすることもある。そのため、特許文献1及び2のプローブでは、電子部品の抵抗の測定の際にプローブを端子に対して相対的に接近させたとき、プローブピンの一方又は双方が端子に接触しない事態が起こり得る。すなわち、特許文献1及び2のプローブでは、端子の状態にかかわらず、両プローブピンを端子に対して安定的に接触させ、プローブピンと端子との良好な接触を確保することは難しい。
【0007】
本開示の目的は、プローブピンを電子部品の端子に安定的に接触させることができるプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るプローブは、外側プローブピンと、内側プローブピンとを備える。外側プローブピンは、ピン本体と、先端部とを含む。ピン本体は、軸方向に延在する貫通孔を有する。先端部は、軸方向でピン本体に隣接し、貫通孔と連通するとともに貫通孔の反対側で開口する。内側プローブピンは、貫通孔に挿入される。先端部は、内周部と、外周部とを含む。内周部は、軸方向に沿って見て内側プローブピンの周囲に配置されている。外周部は、内周部の周囲に配置される。内周部は、少なくとも先端部の開口側の領域においてピン本体側に向かうにつれて貫通孔の軸心に接近する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るプローブによれば、プローブピンを電子部品の端子に安定的に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプローブの縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すプローブの縦断面の一部を拡大した図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すプローブを軸方向に沿って見たときの図である。
【
図4】
図4は、ホルダに取り付けられたプローブを示す模式図である。
【
図5A】
図5Aは、プローブが電子部品の端子に接触するときの動作を示す模式図である。
【
図5B】
図5Bは、プローブが電子部品の端子に接触するときの動作を示す模式図である。
【
図5C】
図5Cは、プローブが電子部品の端子に接触するときの動作を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るプローブの縦断面の一部を拡大した図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すプローブを軸方向に沿って見たときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本開示はそれらの例示に限定されない。
【0012】
本開示の実施形態に係るプローブは、外側プローブピンと、内側プローブピンとを備える。外側プローブピンは、ピン本体と、先端部とを含む。ピン本体は、軸方向に延在する貫通孔を有する。先端部は、軸方向でピン本体に隣接し、貫通孔と連通するとともに貫通孔の反対側で開口する。内側プローブピンは、貫通孔に挿入される。先端部は、内周部と、外周部とを含む。内周部は、軸方向に沿って見て内側プローブピンの周囲に配置されている。外周部は、内周部の周囲に配置される。内周部は、少なくとも先端部の開口側の領域においてピン本体側に向かうにつれて貫通孔の軸心に接近する(第1の構成)。
【0013】
第1の構成のプローブでは、内側プローブピンが外側プローブピンの本体の貫通孔に挿入されている。外側プローブピンの先端部は、ピン本体の貫通孔と連通し、且つ当該貫通孔の反対側に向かって開口している。この先端部の内周部のうち少なくとも先端部の開口側の領域は、ピン本体側に向かうにつれて貫通孔の軸心に接近するように構成されている。そのため、電子部品の抵抗を測定する際、内周部によって触針対象の端子を案内することができる。より具体的には、外側プローブピンの先端部を端子に対して軸方向に相対接近させると、先端部の開口から当該先端部内に端子が進入し、先端部の内周部に端子が接触する。内周部はピン本体側に向かうにつれて貫通孔の軸心に接近するため、例えば貫通孔の軸心に対して端子の中心がずれていた場合であっても、内周部に接触した端子はこの内周部に沿い、ピン本体側に向かうにしたがって当該端子の中心が貫通孔の軸心に一致するように案内される。これにより、貫通孔に挿入されている内側プローブピンに対し、端子を接触させることができる。このように、第1の構成のプローブによれば、プローブに対して端子の位置ずれ等が生じている場合であっても外側プローブピン及び内側プローブピンと端子とをセルフアライメントすることができ、外側プローブピン及び内側プローブピンを安定的に端子に接触させることができる。
【0014】
第1の構成のプローブにおいて、内周部は、軸方向に沿って見て円環状を有することが好ましい(第2の構成)。この場合、内周部に対する端子の位置ずれの方向に関係なく、端子を外側プローブピンの内周部に接触させて案内することができる。したがって、外側プローブピン及び内側プローブピンをより安定的に端子に接触させることができる。
【0015】
第1又は第2の構成のプローブにおいて、ピン本体の太さは、先端部の太さよりも小さいことが好ましい(第3の構成)。
【0016】
第3の構成によれば、外側プローブピンにおいて先端部の太さと比較してピン本体の太さが小さい。そのため、電子部品の抵抗の測定において複数のプローブピンを並列に配置するに際し、ピン本体が先端部と同等以上の太さを有する場合と比較してプローブ同士を小さい間隔で配置しやすくなる。
【0017】
第1の構成から第3の構成のいずれか1つのプローブにおいて、外周部は、軸方向に沿って見て円環状を有することが好ましい(第4の構成)。この場合、外側プローブピンを旋盤などによって容易に形成することができる。
【0018】
第1の構成から第4の構成のいずれか1つのプローブにおいて、例えば、内側プローブピンは電圧測定に用いられ、外側プローブピンは電流測定に用いられる(第5の構成)。
【0019】
第1の構成から第5の構成のいずれか1つのプローブは、さらに、ピン本体から先端部に向かう方向を付勢方向として外側プローブピンを付勢するばね部材を備えることが好ましい(第6の構成)。触針対象の端子の高さは、必ずしも一定ではなく、プローブの軸方向にばらつく場合がある。第6の構成によれば、外側プローブピンに接触する端子の高さのばらつきを、ばね部材によって吸収することができる。
【0020】
第1の構成から第6の構成のいずれか1つのプローブは、さらに、ピン本体から先端部に向かう方向を付勢方向として内側プローブピンを付勢するばね部材を備えることが好ましい(第7の構成)。第7の構成によれば、内側プローブピンに接触する端子の高さのばらつきを、ばね部材によって吸収することができる。
【0021】
第1の構成から第7の構成のいずれか1つのプローブにおいて、内側プローブピンの先端は、内周部内であって先端部の開口に対して軸方向の内側に位置づけられることが好ましい(第8の構成)。この場合、外側プローブピンの内周部によって端子が案内された後で端子を内側プローブピンに接触させることができる。
【0022】
本開示の実施形態に係る電子部品の製造方法は、第1の構成から第8の構成のいずれか1つのプローブを準備するステップと、外側プローブピン及び内側プローブピンを電子部品の端子に接触させて、電子部品の抵抗を測定するステップと、を備える(第9の構成)。
【0023】
第9の構成の製造方法では、上記プローブを用い、外側プローブピン及び内側プローブピンを安定的に端子に接触させることができるため、両プローブピンと端子との接触不良を防止でき、電子部品の抵抗を高精度に測定することができる。その結果、信頼性に優れた電子部品を製造することができる。
【0024】
第9の構成の製造方法において、軸方向に沿って見て先端部の開口が端子よりも大きいことが好ましい(第10の構成)。
【0025】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、重複する説明を繰り返さない。
【0026】
<第1実施形態>
[プローブの構成]
図1は、第1実施形態に係るプローブの縦断面図である。
図1を参照して、プローブ100は、電子部品の抵抗をケルビン接続法により測定するために使用される。プローブ100は、外側プローブピン1と、内側プローブピン2とを備える。本実施形態の例において、プローブ100は、さらに、ケース3と、第1栓部材4と、第1ばね部材5と、第2栓部材6と、スリーブ7と、第3栓部材8と、第2ばね部材9と、導線10とを備える。
【0027】
外側プローブピン1は、全体として管状を有する。外側プローブピン1は、ピン本体11と、先端部12とを含む。ピン本体11は、長尺形状を有している。ピン本体11は、貫通孔111を有する。貫通孔111は、ピン本体11の長手方向、つまり軸方向に延在し、ピン本体11を貫通している。以下、ピン本体11の軸方向を単に軸方向という。
【0028】
ピン本体11は、実質的に円筒状を有することができる。すなわち、ピン本体11の貫通孔111は、軸方向に垂直な断面(横断面)で見て円形状を有していてもよい。本実施形態の例において、ピン本体11は、小径部112a,112b及び大径部112cを含む。大径部112cの外径は、小径部112a,112bの外径と比較して大きい。大径部112cの内径は、小径部112a,112bの内径と実質的に等しい。大径部112cは、軸方向において小径部112aと小径部112bとの間に配置されている。一方の小径部112aは、大径部112cに対して先端部12側に配置され、先端部12及び大径部112cと連続する。他方の小径部112bは、大径部112cに対して小径部112aの反対側に配置され、大径部112cと連続する。小径部112a,112bの外径よりも大径部112cの外径が大きいことにより、小径部112a,112bと大径部112cとの間には段差が形成されている。
【0029】
先端部12は、軸方向でピン本体11に隣接する。先端部12は、ピン本体11の軸方向の一端部に連続して設けられている。先端部12は、ピン本体11の貫通孔111と連通するとともに貫通孔111の反対側に向かって開口する。
【0030】
先端部12は、中空形状を有している。先端部12は、外周部121と、内周部122とを含む。プローブ100を軸方向に沿った断面(縦断面)で見て、外周部121は、ピン本体11の外周面に連続している。プローブ100の縦断面視で、内周部122は、ピン本体11の内周面に連続している。外周部121は、内周部122の周囲に配置されている。
【0031】
ピン本体11の太さは、先端部12の太さよりも小さい。例えば、ピン本体11及び先端部12がともに実質的に円筒状を有する場合、ピン本体11の最大外径は先端部12の最大外径よりも小さい。
【0032】
内側プローブピン2は、外側プローブピン1と同軸に配置されている。すなわち、内側プローブピン2は、外側プローブピン1の貫通孔111に挿入され、貫通孔111と軸心Cを共有する。内側プローブピン2の一部は、外側プローブピン1の本体11から先端部12側に突出している。
【0033】
本実施形態の例において、内側プローブピン2は、ピン部材21,22を含む。ピン部材21,22は、棒状を有する。ピン部材21,22は、実質的に円柱状を有していてもよい。ピン部材21は、部材本体21aと、基部21bとを含む。部材本体21aは、主として外側プローブピン1の先端部12内に配置されている。部材本体21aの先端は、平坦面であってもよいし、球面状や錐体状であってもよい。基部21bは、外側プローブピン1の本体11内に配置されている。基部21bの太さは、部材本体21aの太さよりも大きい。そのため、部材本体21aと基部21bとの間に段差が形成されている。ピン部材22は、ピン部材21と軸方向に間隔を空けて配置されている。
【0034】
ケース3は、筒状を有する。ケース3は、典型的には円筒状を有している。ケース3は、外側プローブピン1を支持する。より具体的には、外側プローブピン1の本体11の一部がケース3内に挿入されている。本実施形態の例では、ピン本体11のうち一方の小径部11aがケース3外に配置され、他方の小径部11b及び大径部11cがケース3内に収容されている。
【0035】
ケース3の軸方向の一端部は、ピン本体11の大径部11cと小径部11bとの間の段差に当接可能なよう、他の部分と比較して縮径されている。ケース3の軸方向の他端部は、第1栓部材4によって封鎖されている。
【0036】
ケース3内において、外側プローブピン1と第1栓部材4との間には第1ばね部材5が設けられている。より具体的には、第1ばね部材5は、外側プローブピン1の大径部112cと第1栓部材4との間に配置されている。第1ばね部材5は、ピン本体11から先端部12に向かう方向を付勢方向として外側プローブピン1を付勢する。第1ばね部材5は、例えば圧縮コイルばねである。
【0037】
第2栓部材6は、外側プローブピン1の軸方向の一端部側で、ピン本体11の貫通孔111を封鎖する。第2栓部材6は、ピン本体11から先端部12へと延在している。内側プローブピン2は、第2栓部材6を貫通している。
図1に示す例では、内側プローブピン2のピン部材21が第2栓部材6を貫通している。内側プローブピン2は、外側プローブピン1及び第2栓部材6に対して軸方向に移動可能となっている。
【0038】
スリーブ7は、外側プローブピン1の貫通孔111内に配置されている。スリーブ7は、第2栓部材6に対し、軸方向に隣接して配置されている。スリーブ7は、筒状を有する。スリーブ7は、典型的には円筒状を有している。スリーブ7には、内側プローブピン2のピン部材21,22が挿入されている。ピン部材21は、その基部21bがスリーブ7の軸方向の一端部から挿入され、ピン部材22は、スリーブ7の軸方向の他端部から挿入されている。
【0039】
第3栓部材8は、外側プローブピン1の小径部11bの端部を封鎖する。第3栓部材8は、内側プローブピン2のピン部材22の後端に接触し、ピン部材22の軸方向の移動を規制する。第3栓部材8には、導線10が挿入されている。導線10は、ピン部材22から第3栓部材8及び第1栓部材4を貫通して延び、プローブ100の外部に引き出されている。
【0040】
第2ばね部材9は、内側プローブピン2のピン部材21とピン部材22との間に配置されている。第2ばね部材9は、第1ばね部材5と同じ方向を付勢方向として内側プローブピン2を付勢する。本実施形態では、第2ばね部材9により、ピン部材21が軸方向の外側に向かって付勢されている。第2ばね部材9は、例えば圧縮コイルばねである。
【0041】
プローブピン1,2、ケース3、及びばね部材5,9は、導電性を有する。プローブピン1,2、ケース3、及びばね部材5,9の材質は、例えば金属とすることができる。特に限定されるものではないが、プローブピン1,2及びケース3の材質は、例えば、ベリリウム銅、又はリン青銅である。ばね部材5,9の材質は、例えば、ステンレス鋼である。プローブピン1,2、ケース3、及びばね部材5,9には、金などのめっきが施されてもよい。
【0042】
外側プローブピン1、ケース3、及び第1ばね部材5は、互いに導通している。ケース3又はばね部材5には導線(図示略)が接続されている。電子部品の抵抗を測定する際、外側プローブピン1は、この導線、ケース3、及び第1ばね部材5を介し、テスターの電流測定用(Force用)端子又は電圧測定用(Sense用)端子に接続される。
【0043】
内側プローブピン2及び第2ばね部材9は、互いに導通している。内側プローブピン2及び第2ばね部材9は、外側プローブピン1、ケース3、及び第1ばね部材5と電気的に分離されている。電子部品の抵抗を測定する際、内側プローブピン2は、ピン部材22から延びる導線10を介し、テスターの電圧測定用端子及び電流測定用端子のうち、外側プローブピン1が接続されていない方の端子に接続される。
【0044】
栓部材4,6,8は、絶縁性を有する。栓部材4,6,8の材質は、例えば樹脂とすることができる。スリーブ7は、樹脂等の絶縁性を有する材料で構成されていてもよいし、導電性を有する材料で構成されていてもよい。スリーブ7が導電性を有する場合、外側プローブピン1と内側プローブピン2との絶縁性を確保するために、スリーブ7の少なくとも外周面に絶縁被膜が設けられることが好ましい。
【0045】
次に、
図2及び
図3を参照して、外側プローブピン1の先端部12の構成を詳細に説明する。
図2は、
図1に示すプローブ100の縦断面の一部を拡大した図である。
図2では、外側プローブピン1の先端部12及びその近傍を拡大して示す。
図3は、
図2に示すプローブ100を軸方向に沿って見たときの図である。
図3は、先端部12を開口側から見た図である。
【0046】
図2を参照して、外側プローブピン1の先端部12において、内周部122は、領域122a,122bを含む。領域122aは、先端部12において開口側に配置された領域である。領域122bは、領域122aに対してピン本体11側に配置されている。
【0047】
プローブ100の縦断面視で、領域122aは、実質的にテーパ状を有している。すなわち、領域122aは、外側プローブピン1の先端部12の開口からピン本体11側に向かうにつれて、ピン本体11の貫通孔111の軸心Cに接近する。領域122aは、プローブ100の縦断面視で直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。領域122aは、領域122bを介し、ピン本体11の内周面に接続されている。
【0048】
図3を参照して、内周部122は、軸方向に沿って見て内側プローブピン2の周囲に配置されている。内周部122は、軸方向に沿って見て円形状を有する。軸方向に沿って見て円形状を有するとは、内周部122のいずれの部分も貫通孔111の軸心Cを中心とする単一の円上に位置することをいう。軸方向の任意の位置で取得した内周部122の横断面も、軸方向に沿って見たときに円形状を有している。
【0049】
本実施形態において、内周部122は、軸方向に沿って見て円環状を有する。すなわち、軸方向視での内周部122の形状は、途中で途切れることなく連続した円形状である。軸方向に沿って見たとき、内側プローブピン2は、この内周部122によって囲まれている。内周部122の直径は、少なくとも領域122aにおいてピン本体11側(
図2)に向かうにつれて小さくなっている。内周部122の領域122aは、ピン本体11側に向かうにつれて縮径する形状を有する。領域122aは、例えば、ピン本体11の貫通孔111と軸心Cを共有する円錐面、楕円面、又は放物面等であってもよい。一方、領域122bは、実質的に一定の直径を有することができる。ただし、領域122bの直径は、必ずしも一定でなくてもよい。
【0050】
特に限定されるものではないが、外周部121も、内周部122と同様に、軸方向に沿って見て円環状を有することができる。外周部121は、例えば、その大部分において一定の直径を有する。外周部121のうちピン本体11側(
図2)の部分は、ピン本体11に向かうにつれて縮径していてもよい。外周部121は、全体にわたって一定の直径を有することもできる。
【0051】
図2に戻り、内側プローブピン2の先端は、外側プローブピン1の先端部12の内周部122内に位置づけられる。内側プローブピン2の先端は、先端部12の開口に対して軸方向の内側に位置づけられていてもよい。外側プローブピン1の先端部12のうち内周部122がピン本体11側に向かって縮径している領域、つまり開口側の領域122aの深さをD0とし、先端部12の開口から内側プローブピン2の先端までの軸方向の距離をD1としたとき、D1/D0は、例えば1/6以上であり、好ましくは1/4以上である。D1/D0は、例えば4/5以下であってもよく、1/2以下であってもよい。
【0052】
[電子部品の製造方法]
以下、プローブ100を用いた電子部品の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、準備ステップと、測定ステップとを含む。準備ステップでは、プローブ100を準備する。測定ステップでは、外側プローブピン1及び内側プローブピン2を電子部品Eの端子Tに接触させて、電子部品Eの抵抗を測定する。電子部品Eは、例えばパワーデバイス、基板、ICチップ等である。端子Tは、例えば角柱状や円柱状を有する。以下、各ステップについて説明する。
【0053】
図4は、ホルダに取り付けられたプローブ100を示す模式図である。
図4を参照して、準備ステップでは、測定対象の電子部品Eと、複数のプローブ100が準備される。電子部品Eの抵抗を測定するに際し、各プローブ100は、ホルダ50に取り付けられる。各プローブ100は、ホルダ50に設置されたリセプタクル51に挿入される。
【0054】
図4の例では、2つのプローブ100がホルダ50に取り付けられた状態で並列に配置されている。一方のプローブ100は、電子部品Eの一方の端子Tに対応する位置に配置される。他方のプローブ100は、電子部品Eの他方の端子Tに対応する位置に配置される。複数の電子部品Eの抵抗を同時に測定する場合、4つ以上のプローブ100をホルダ50に取り付けることもできる。
【0055】
各プローブ100において、例えば、外側プローブピン1を電流測定に用い、内側プローブピン2を電圧測定に用いることができる。この場合、外側プローブピン1がテスターの電流測定用(Force用)端子に電気的に接続され、内側プローブピン2がテスターの電圧測定用(Sense用)端子に電気的に接続される。ただし、外側プローブピン1が電圧測定に用いられ、内側プローブピン2が電流測定に用いられてもよい。この場合は、外側プローブピン1がテスターの電圧測定用端子に電気的に接続され、内側プローブピン2がテスターの電流測定用端子に電気的に接続される。
【0056】
測定ステップでは、各プローブ100の外側プローブピン1及び内側プローブピン2を対応する端子Tと接触させ、電子部品Eの端子T間に電流を流して端子T間の電圧を測定する。端子T間の電流及び電圧から電子部品Eの抵抗を得ることができる。
【0057】
以下、
図5A~
図5Cを参照して、各プローブ100の外側プローブピン1及び内側プローブピン2が電子部品Eの端子Tに接触するときの動作を詳細に説明する。
【0058】
電子部品Eの抵抗の測定を開始する際、外側プローブピン1及び内側プローブピン2は、電子部品Eの端子Tに対して相対的に接近する。しかしながら、端子Tの中心は、外側プローブピン1及び内側プローブピン2の軸心Cと必ずしも一致していない。外側プローブピン1及び内側プローブピン2に対して端子Tの位置ずれが生じていたり、端子Tに曲がりが生じていたりすることにより、
図5Aに示すように、外側プローブピン1及び内側プローブピン2の軸心Cに対して電子部品Eの端子Tの中心がずれている場合がある。
【0059】
軸方向に沿って見て、外側プローブピン1の先端部12の開口は、電子部品Eの端子Tよりも大きい。そのため、
図5Bに示すように、外側プローブピン1及び内側プローブピン2と電子部品Eの端子Tとが相対接近すると、外側プローブピン1の先端部12内に端子Tが進入する。これにより、先端部12の内周部122に端子Tが接触する。
【0060】
内周部122は、外側プローブピン1の本体11側に向かうにつれて軸心Cに接近している。そのため、内周部122に接触した端子Tは内周部122に沿い、ピン本体11側に向かうにしたがって端子Tの中心と軸心Cが一致するように案内される。その結果、
図5Cに示すように、外側プローブピン1及び内側プローブピン2の双方に端子Tが接触する。
【0061】
[効果]
本実施形態に係るプローブ100では、外側プローブピン1の先端部12の内周部122がピン本体11側に向かうにつれて貫通孔111の軸心Cに接近していることにより、内周部122によって電子部品Eの端子Tを案内し、外側プローブピン1及び内側プローブピン2と端子Tとをセルフアライメントすることができる。そのため、例えばプローブ100に対して端子Tの位置ずれ等が生じている場合であっても、外側プローブピン1及び内側プローブピン2を安定的に端子Tに接触させることができる。したがって、プローブピン1,2と端子Tとの接触不良を防止することができ、電子部品Eの抵抗を高精度に測定することができる。その結果、信頼性に優れた電子部品Eを製造することができる。
【0062】
本実施形態では、内周部122は、軸方向に沿って見て円環状を有する。この場合、内周部122に対する端子Tの位置ずれの方向に関係なく、端子Tを外側プローブピン1の内周部122に接触させて案内することができる。すなわち、端子Tが外側プローブピン1及び内側プローブピン2の軸心Cからどちらに偏っていたとしても、内周部122が端子Tに当接し、外側プローブピン1及び内側プローブピン2と端子Tとのセルフアライメントを行うことができる。したがって、外側プローブピン1及び内側プローブピン2をより安定的に端子に接触させることができる。
【0063】
電子部品Eの抵抗を測定する際には、複数のプローブ100が並列に配置される。仮に、外側プローブピン1において、ピン本体11が先端部12と同等以上の太さを有する場合、プローブ100同士を詰めて配置することが困難となる。特にピン本体11にはケース3が装着される場合、ピン本体11がケース3の分だけ太くなるため、プローブ100同士の間隔(軸心C同士の間隔)を広げて配置せざるを得なくなる。一方、本実施形態では、ピン本体11の太さは、先端部12の太さよりも小さい。このため、電子部品Eの抵抗の測定において複数のプローブピン100を並列に配置するに際し、プローブ100同士を比較的小さい間隔で配置することができる。
【0064】
本実施形態のプローブ100において、外周部121は、軸方向に沿って見て円環状を有する。外側プローブピン1の先端部12を金属で形成する場合、旋盤などによって容易に形成することができる。
【0065】
本実施形態のプローブ100において、外側プローブピン1は、第1ばね部材5によってピン本体11から先端部12に向かう方向を付勢方向として付勢されている。これにより、複数のプローブ100を並列に配置して、複数の端子Tに対して測定を行う場合、端子T同士で高さが異なっていても、外側プローブピン1に接触する端子T間の高さのばらつきを第1ばね部材5によって吸収することができる。また、プローブ100によって繰り返し測定を行う場合、測定ごとに端子Tの高さが異なっていても、外側プローブピン1に接触する端子Tの高さのばらつきを第1ばね部材5によって吸収することができる。
【0066】
本実施形態のプローブ100は、ばね部材5と同じ方向を付勢方向として内側プローブピン2を付勢する第2ばね部材9を備える。これにより、第1ばね部材5によって付勢された外側プローブピン1と同様に、内側プローブピン2に接触する端子Tの高さのばらつきを、ばね部材9によって吸収することができる。
【0067】
本実施形態では、内側プローブピン2の先端は、外側プローブピン1の内周部122内であって先端部12の開口に対して軸方向の内側に位置づけられている。この場合、外側プローブピン1の内周部122によって端子Tが案内された後で端子Tを内側プローブピン2に接触させることができる。これにより、内周部122による端子Tの案内が完了する前に、端子Tが内側プローブピン2と接触するのを防止することができるため、内側プローブピン2の損傷を抑制することができる。
【0068】
<第2実施形態>
図6及び
図7を参照して、第2実施形態に係るプローブ100Aについて説明する。
図6は、第2実施形態に係るプローブ100Aの縦断面の一部を拡大した図である。
図6では、外側プローブピン1A及びその近傍を拡大して示す。
図7は、
図6に示すプローブ100Aを軸方向に沿って見たときの図である。
図7は、先端部12Aを開口側から見たときの図である。プローブ100Aは、外側プローブピン1Aの先端部12Aの構成において、第1実施形態に係るプローブ100と異なる。
【0069】
図6を参照して、外側プローブピン1Aの先端部12Aの開口側の部分は、クラウン状に形成されている。外側プローブピン1Aの先端部12Aの開口側の部分は、ピン本体11側の部分から軸方向に突出する複数の突起部12aAを有する。先端部12Aは、3つ以上の突起部12aAを有することが好ましい。複数の突起部12aAは、例えば、軸心Cまわりに等間隔に配置されている。
【0070】
先端部12の内周部122は、開口側の領域122aAと、ピン本体11側の領域122bとを含む。領域122aAは、複数の突起部12aAの内周側の稜線によって構成されている。プローブ100Aの縦断面視で、稜線状の領域122aAは、実質的にテーパ状を有している。すなわち、稜線状の領域122aAは、外側プローブピン1Aの先端部12Aの開口からピン本体11側に向かうにつれて、ピン本体11の貫通孔111の軸心Cに接近する。稜線状の領域122aAは、プローブ100Aの縦断面視で直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。
【0071】
図7を参照して、内周部122Aは、軸方向に沿って見て円形状を有する。すなわち、内周部122Aは、軸方向に垂直なある1つの平面において、貫通孔111の軸心Cを中心とする単一の円上に位置する。本実施形態において、軸方向に沿って見たときの内周部122Aの形状は、断続的な円形状である。内周部122Aの直径は、少なくとも稜線状の領域122aAにおいてピン本体11側(
図6)に向かうにつれて小さくなっている。領域122aAは、ピン本体11側に向かうにつれて縮径する形状を有する。
【0072】
第2実施形態でも、内周部122Aは、少なくとも先端部12Aの開口側の領域122aAにおいてピン本体11側に向かうにつれて軸心Cに接近するように構成されている。したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の場合、触針対象の端子Tに稜線状の領域122aAを接触させることができる。このため、端子Tの表面に酸化膜などの被膜が形成されている場合であっても、稜線状の領域122aAによって端子T上の被膜を突き破り、内周部122Aを端子Tに接触させることができる。
【0073】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、電子部品Eの双方の端子Tに対して本実施形態のプローブ100,100Aを使用してもよいが、電子部品Eの一方の端子Tに対して本実施形態のプローブ100,100Aを使用し、他方の端子Tに対しては別のプローブを使用することができる。
【符号の説明】
【0074】
100,100A:プローブ
C:軸心
1,1A:外側プローブピン
11:ピン本体
11a,11b:小径部
11c:大径部
111:貫通孔
12,12A:先端部
12aA:突起部
121,121A:外周部
122,122A:内周部
2:内側プローブピン
21,22:ピン部材
3:ケース
4:第1栓部材
5:第1ばね部材
6:第2栓部材
7:スリーブ
8:第3栓部材
9:第2ばね部材