(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081228
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ボールねじ及びブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20240611BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20240611BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20240611BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20240611BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20240611BHJP
【FI】
F16H25/24 B
F16D65/18
F16H25/22 A
F16H25/24 K
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194688
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】徐 慧
(72)【発明者】
【氏名】田中 一宇
【テーマコード(参考)】
3J058
3J062
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA32
3J058CC63
3J058FA06
3J058FA07
3J062AA01
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA33
3J062CD04
3J062CD22
3J062CD54
3J062CD73
(57)【要約】
【課題】放熱性に優れたボールねじ、及びそのようなボールねじを備えるブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ボールねじ1は、外周面にねじ溝2aが形成されたねじ軸2と、内周面にねじ溝3aが形成されたナット3と、ねじ軸2のねじ溝2a及びナット3のねじ溝3aによって構成された転動路5に配置された複数のボール4と、を備える。ナット3は、ねじ軸2の中心線に平行なX軸方向における一方の側のねじ軸2の端部21が内側に配置された筒部31と、X軸方向における一方の側の筒部31の開口31aを覆っている蓋部32と、を含む。筒部31には、一対のピン33が設けられている。X軸方向における一方の側の蓋部32の端面32aには、X軸方向に垂直な同一平面P上に頂部34aが位置するように複数の凸部34が設けられている。複数の凸部34のそれぞれの間の領域は、Y軸方向において両側に開放されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にねじ溝が形成されたねじ軸と、
内周面にねじ溝が形成されたナットと、
前記ねじ軸の前記ねじ溝及び前記ナットの前記ねじ溝によって構成された転動路に配置された複数のボールと、を備え、
前記ナットは、
前記ねじ軸の中心線に平行な第1方向における一方の側の前記ねじ軸の端部が内側に配置された筒部と、
前記第1方向における前記一方の側の前記筒部の開口を覆っている蓋部と、を含み、
前記筒部には、回り止めが設けられており、
前記第1方向における前記一方の側の前記蓋部の端面には、前記第1方向に垂直な同一平面上に頂部が位置するように複数の凸部が設けられており、
前記複数の凸部のそれぞれの間の領域は、前記第1方向に垂直な第2方向において両側に開放されている、ボールねじ。
【請求項2】
前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を接線方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を延在方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項4】
前記頂部は、前記同一平面に含まれる面として形成されている、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項5】
請求項1に記載のボールねじと、
前記第2方向を接線方向として回転するブレーキディスクと、
前記第1方向において前記ブレーキディスクの両側に配置された一対のブレーキパッドと、
前記ねじ軸を回転させる電動モータと、
少なくとも前記ボールねじを支持しており、前記回り止めと係合された支持部材と、を備え、
前記一対のブレーキパッドの一方は、前記ブレーキディスクと前記ナットとの間に配置されている、ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ及びブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキディスクと、ブレーキディスクの両側に配置された一対のブレーキパッドと、を備えるブレーキ装置であって、電動モータによってボールねじのねじ軸が回転させられ、ボールねじのナットによって一方のブレーキパッドがブレーキディスクに押し当てられるブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなブレーキ装置では、ブレーキディスクとブレーキパッドとの間で発生した摩擦熱が、ボールねじ及び電動モータに伝導する。摩擦熱の伝導によってそれらの部品が高温になり過ぎると、グリース又は潤滑油の劣化による各部の焼付き、電動モータの磁石の減磁等、様々な不具合が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、放熱性に優れたボールねじ、及びそのようなボールねじを備えるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボールねじは、[1]「外周面にねじ溝が形成されたねじ軸と、内周面にねじ溝が形成されたナットと、前記ねじ軸の前記ねじ溝及び前記ナットの前記ねじ溝によって構成された転動路に配置された複数のボールと、を備え、前記ナットは、前記ねじ軸の中心線に平行な第1方向における一方の側の前記ねじ軸の端部が内側に配置された筒部と、前記第1方向における前記一方の側の前記筒部の開口を覆っている蓋部と、を含み、前記筒部には、回り止めが設けられており、前記第1方向における前記一方の側の前記蓋部の端面には、前記第1方向に垂直な同一平面上に頂部が位置するように複数の凸部が設けられており、前記複数の凸部のそれぞれの間の領域は、前記第1方向に垂直な第2方向において両側に開放されている、ボールねじ」である。
【0007】
上記[1]に記載のボールねじでは、ねじ軸の中心線に平行な第1方向に垂直な同一平面上に頂部が位置するように、ナットの蓋部の端面に複数の凸部が設けられており、複数の凸部のそれぞれの間の領域が、第1方向に垂直な第2方向において両側に開放されている。これにより、例えば、第2方向を接線方向として回転するブレーキディスクに、このナットによってブレーキパッドが押し当てられる構成において、複数の凸部のそれぞれの間の領域を空気が流れやすくなる。しかも、ナットの筒部に回り止めが設けられているため、複数の凸部のそれぞれの間の領域が両側に開放されている第2方向が、例えば、回転するブレーキディスクの接線方向に一致した状態が維持される。よって、上記[1]に記載のボールねじによれば、優れた放熱性を得ることができる。
【0008】
本発明のボールねじは、[2]「前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を接線方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している、上記[1]に記載のボールねじ」であってもよい。当該[2]に記載のボールねじによれば、ナットによるブレーキパッド等の部材の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0009】
本発明のボールねじは、[3]「前記複数の凸部のそれぞれは、前記第2方向を延在方向として前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している、上記[1]に記載のボールねじ」であってもよい。当該[3]に記載のボールねじによれば、ナットによるブレーキパッド等の部材の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0010】
本発明のボールねじは、[4]「前記頂部は、前記同一平面に含まれる面として形成されている、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のボールねじ」であってもよい。当該[4]に記載のボールねじによれば、ナットによるブレーキパッド等の部材の押圧を安定化することができる。
【0011】
本発明のブレーキ装置は、[5]「上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のボールねじと、前記第2方向を接線方向として回転するブレーキディスクと、前記第1方向において前記ブレーキディスクの両側に配置された一対のブレーキパッドと、前記ねじ軸を回転させる電動モータと、少なくとも前記ボールねじを支持しており、前記回り止めと係合された支持部材と、を備え、前記一対のブレーキパッドの一方は、前記ブレーキディスクと前記ナットとの間に配置されている、ブレーキ装置」である。
【0012】
上記[5]に記載のブレーキ装置では、ブレーキディスクとブレーキパッドとの間で発生した摩擦熱がボールねじのナットにおいて放熱されやすくなる。よって、上記[5]に記載のブレーキ装置によれば、各部品が高温になり過ぎることに起因して不具合が発生するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放熱性に優れたボールねじ、及びそのようなボールねじを備えるブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示されるII-II線に沿ってのボールねじの断面図である。
【
図4】
図1に示されるボールねじを備えるブレーキ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。本明細書における表現である「同心」、「等しい」には、「完全に同心」、「完全に等しい」だけでなく、一定の誤差範囲内での「実質的に同心」、「実質的に等しい」も含まれる。
[ボールねじの構成]
【0016】
図1及び
図2に示されるように、ボールねじ1は、ねじ軸2と、ナット3と、複数のボール4と、を備えている。以下、ねじ軸2の中心線に平行な第1方向をX軸方向といい、第1方向に垂直な第2方向をY軸方向といい、第1方向及び第2方向の両方向に垂直な第3方向をZ軸方向という。
【0017】
ねじ軸2の外周面には、ねじ溝2aが形成されている。ねじ溝2aは、螺旋状に延在している。ナット3の内周面には、ねじ溝3aが形成されている。ねじ溝3aは、ねじ溝2aと同一のピッチで螺旋状に延在している。ねじ軸2のねじ溝2a及びナット3のねじ溝3aは、転動路5を構成している。複数のボール4は、転動路5に配置されている。複数のボール4は、転動路5において無限循環する。
【0018】
本実施形態では、ナット3の内周面に複数の循環溝3bが形成されている。各循環溝3bは、ねじ溝3aのうちの複数の部分(例えば、略1ピッチ分の長さを有する部分)のそれぞれにおいて、当該部分の一端と他端とを繋いでいる。複数の循環溝3bは、ねじ軸2の軸方向(すなわち、X軸方向)から見た場合に、ねじ軸2の周方向において互いに異なる位置に等角度間隔で配置されている。各循環溝3bは、各循環溝3bを通るボール4がねじ軸2の外周面のねじ山を超え得る深さを有している。複数のボール4は、各循環溝3bによって一端と他端とが繋がれた部分ごとに、転動路5において無限循環する。
【0019】
なお、複数のボール4の循環方式は、上述したものに限定されず、転動路5において複数のボール4を無限循環させることができるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、複数のボール4の循環路として、転動路5の一端と他端とを繋ぐ孔が、ナット3に形成されたものであってもよい。或いは、複数のボール4の循環路として、転動路5の一端と他端とを繋ぐチューブが、ナット3と別体で設けられたものであってもよい。或いは、ナット3のうち各循環溝3bを有する部分が、コマとして別体で設けられていてもよい。或いは、複数の循環溝がねじ軸2に形成されていてもよい。或いは、ねじ軸2のうち各循環溝を有する部分が、コマとして別体で設けられていてもよい。後述するように、ボールねじ1がブレーキ装置10に適用される場合、ボール4とナット3のねじ溝3aとの接触楕円に比べ、ボール4とねじ軸2のねじ溝2aとの接触楕円が大きくなる可能性があり、ボール4がねじ軸2のねじ溝2aの溝肩に乗り上げるのを防止するために、ナット3のねじ溝3aの深さに比べ、ねじ軸2のねじ溝2aの深さを大きくする場合がある。したがって、ボール4を軌道溝から循環部に掬い出すときの移動量が小さくなるねじ軸2側での循環方式の方がナット3側での循環方式よりも好ましい場合もある。
【0020】
ナット3は、筒部31と、蓋部32と、を含んでいる。径方向における筒部31の内側には、X軸方向における一方の側(
図2では左側)のねじ軸2の端部21が配置されている。筒部31の形状は、例えば、円筒状である。蓋部32は、X軸方向における一方の側の筒部31の開口31aを覆っている。蓋部32の形状は、例えば、円板状である。本実施形態では、ナット3は、筒部31及び蓋部32が一体で形成された袋ナットである。なお、X軸方向における他方の側(
図2では右側)のねじ軸2の端部22は、軸方向における筒部31の外側に配置されており、当該端部22の外周面には、例えば、スプライン又はセレーションが形成されている。
【0021】
筒部31には、一対のピン(回り止め)33が設けられている。一例として、一対のピン33は、X軸方向における筒部31の他方の側の端部において、筒部31の外周面からZ軸方向における両側に突出しており、筒部31と一体で形成されている。各ピン33の形状は、例えば、四角柱状である。
【0022】
X軸における一方の側(
図2では左側)の蓋部32の端面32aには、複数の凸部34が設けられている。本実施形態では、複数の凸部34は、蓋部32と一体で形成されている。各凸部34の頂部34aは、X軸方向に垂直な同一平面P上に位置している。各凸部34の頂部34aは、同一平面Pに含まれる面として形成されている。
【0023】
図3に示されるように、複数の凸部34のそれぞれの間の領域R(すなわち、隣り合う凸部34の間の領域R)は、Y軸方向において両側に開放されている。本実施形態では、各凸部34は、Y軸方向を接線方向としてZ軸方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している。複数の凸部34は、同心円弧の径方向において等間隔で配置されている。複数の凸部34のそれぞれの間の領域Rのうち連続している部分については、X軸方向から見た場合に、Y軸方向における両側の当該部分の端部が端面32aの外縁に至っている。Z軸方向において隣り合う凸部34の間の領域Rについては、Y軸方向に沿って見通すことが可能である。つまり、Z軸方向において隣り合う凸部34の間の領域Rには、Y軸方向に平行な直線を通すことが可能である。
[ブレーキ装置の構成]
【0024】
図4に示されるように、ブレーキ装置10は、上述したボールねじ1と、ブレーキディスク11と、一対のブレーキパッド12,13と、電動モータ14と、支持部材15と、を備えている。ブレーキ装置10は、例えば、車両において車輪の制動に利用される電動ブレーキである。
【0025】
ブレーキディスク11は、Y軸方向を接線方向として回転する。ブレーキディスク11のうちZ軸方向においてボールねじ1のナット3と重なる各部分の回転半径は、ナット3の端面32aにおいて各凸部34が延在している各同心円弧の半径に略等しい(
図3参照)。ブレーキディスク11は、例えば、車輪の車軸に固定されている。
【0026】
一対のブレーキパッド12,13は、X軸方向においてブレーキディスク11の両側に配置されている。ブレーキパッド12は、ブレーキディスク11とボールねじ1のナット3との間に配置されている。ブレーキパッド13は、ブレーキディスク11に対してナット3とは反対側に配置されている。
【0027】
電動モータ14は、ボールねじ1のねじ軸2を回転させる。一例として、電動モータ14は、磁石を含むロータと、コイルを含むステータと、ロータの出力軸とねじ軸2の端部22とに接続された減速機と、を備えている。減速機は、例えば、遊星歯車機構によって構成されている。
【0028】
支持部材15は、ねじ軸2が回転可能となり且つナット3がX軸方向に移動可能となるように、ボールねじ1を支持している。支持部材15には、一対のピン33が配置される一対のガイド溝15aが形成されている。つまり。支持部材15は、一対のピン33と係合されている。各ガイド溝15aは、ナット3が回転不可能となり且つナット3がX軸方向に移動可能となるように、X軸方向に延在している。
【0029】
本実施形態では、支持部材15は、ボールねじ1に加え、一対のブレーキパッド12,13、及び電動モータ14を支持している。ブレーキパッド12は、X軸方向に移動可能となるように、支持部材15によって支持されている。ブレーキパッド13は、支持部材15に固定されている。
【0030】
以上のように構成されたブレーキ装置10では、電動モータ14によってねじ軸2が回転させられて、ナット3がX軸方向における一方の側(
図3では左側)に移動させられると、ブレーキパッド12がブレーキディスク11に押し当てられると共に、ブレーキディスク11がブレーキパッド13に押し当てられる。これにより、ブレーキ装置10は、制動力を発生させる。
[作用及び効果]
【0031】
ボールねじ1では、ねじ軸2の中心線に垂直な同一平面P上に頂部34aが位置するように、ナット3の蓋部32の端面32aに複数の凸部34が設けられており、複数の凸部34のそれぞれの間の領域Rが、ねじ軸2の中心線に垂直なY軸方向において両側に開放されている。これにより、Y軸方向を接線方向として回転するブレーキディスク11に、ナット3によってブレーキパッド12が押し当てられる構成において、複数の凸部34のそれぞれの間の領域Rを空気が流れやすくなり、その結果、各凸部34が放熱フィンとして機能する。しかも、ナット3の筒部31に設けられた一対のピン33が支持部材15と係合しているため、複数の凸部34のそれぞれの間の領域Rが両側に開放されているY軸方向が、回転するブレーキディスク11の接線方向に一致した状態が維持される。よって、ボールねじ1によれば、優れた放熱性を得ることができる。
【0032】
ボールねじ1では、各凸部34が、Y軸方向を接線方向としてZ軸方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している。これにより、ナット3によるブレーキパッド12の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0033】
ボールねじ1では、頂部34aが、同一平面Pに含まれる面として形成されている。これにより、ナット3によるブレーキパッド12の押圧を安定化することができる。
【0034】
ブレーキ装置10では、ブレーキディスク11と各ブレーキパッド12,13との間で発生した摩擦熱がボールねじ1のナット3において放熱されやすくなる。よって、ブレーキ装置10によれば、各部品が高温になり過ぎることに起因して不具合が発生するのを抑制することができる。
[変形例]
【0035】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、ナット3において、複数の凸部34の配置、各凸部34の形状等は、複数の凸部34のそれぞれの間の領域RがY軸方向において両側に開放されるように構成されていれば、上述したものに限定されない。
図5の(a)に示される例では、各凸部34が、Y軸方向を延在方向としてZ軸方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している。
図5の(a)に示される例では、複数の凸部34が、Z軸方向において等間隔で配置されている。
図5の(b)に示される例では、複数の凸部34が、Y軸方向を行方向とし且つZ軸方向を列方向としてマトリックス状に並んでいる。
図5の(b)に示される例では、複数の凸部34が、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおいて等間隔で配置されている。
図5の(b)に示される例では、各凸部34の形状は、四角柱状である。
【0036】
図5の(a)及び(b)に示されるいずれの例によっても、ナット3によるブレーキパッド12の押圧を安定化しつつ、優れた放熱性を得ることができる。また、
図5の(a)及び(b)に示されるいずれの例においても、複数の凸部34がY軸方向及びZ軸方向のそれぞれの方向に関して線対称に形成されているため、ナット3の製造を容易化することができる。
【0037】
また、
図6の(a)、(b)及び(c)に示されるように、端面32aに開口する凹部32bが蓋部32に形成されていてもよい。
図6の(a)に示される例では、X軸方向から見た場合に凹部32bを包囲する端面32aにおいて、各凸部34が、Y軸方向を接線方向としてZ軸方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している。
図6の(b)に示される例では、X軸方向から見た場合に凹部32bを包囲する端面32aにおいて、各凸部34が、Y軸方向を延在方向としてZ軸方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している。
図6の(c)に示される例では、X軸方向から見た場合に凹部32bを包囲する端面32aにおいて、複数の凸部34が、Y軸方向を行方向とし且つZ軸方向を列方向としてマトリックス状に並んでいる。
【0038】
図6の(a)、(b)及び(c)に示されるいずれの例においても、複数の凸部34のそれぞれの間の領域(凹部32bに対応する領域を含む)のうち連続している部分については、X軸方向から見た場合に、Y軸方向における両側の当該部分の端部が端面32aの外縁に至っている。また、
図6の(a)、(b)及び(c)に示されるいずれの例においても、Z軸方向において隣り合う凸部34の間の領域については、Y軸方向に沿って見通すことが可能である。
【0039】
また、ナット3において、蓋部32は、筒部31と別体で形成されていてもよい。その場合、ナット3は、円筒状の筒部31の一端に円板状の蓋部32が固定されたものであってもよいし、或いは、蓋部32を底壁とする有底円筒状の筒体の内側に円筒状の筒部31が固定されたものであってもよい。
【0040】
また、ナット3において、複数の凸部34は、蓋部32と別体で形成されており、蓋部32に固定されたものであってもよい。また、各凸部34の頂部34aは、同一平面P上に位置している点又は線として形成されたものであってもよい。
【0041】
また、ナット3において、一対のピン33は、筒部31と別体で形成されており、筒部31に固定されたものであってもよい。なお、回り止めとしては、少なくとも一つのピン33が筒部31に設けられていてもよい。また、回り止めとしては、少なくとも一つのガイド溝が筒部31に形成されていてもよい。その場合、支持部材15に設けられた少なくとも一つのピンが、筒部31に形成された少なくとも一つのガイド溝に配置される。つまり、筒部31に設けられる回り止めは、上述したものに限定されず、ボールねじ1が適用された装置において、ナット3が回転不可能となり且つナット3がX軸方向に移動可能となる機能を発揮し得るものであればよい。回り止めは、筒部31の少なくとも1ヶ所に設けられていればよい。回り止めが筒部31の複数ヶ所に設けられる場合、複数の回り止めは、周方向において等角度間隔で配置されていることが好ましい。
【0042】
また、ボールねじ1は、ブレーキ装置10以外の装置に適用されてもよい。
【0043】
以上、ボールねじ1は、[1]「外周面にねじ溝2aが形成されたねじ軸2と、内周面にねじ溝3aが形成されたナット3と、ねじ軸2のねじ溝2a及びナット3のねじ溝3aによって構成された転動路5に配置された複数のボール4と、を備え、ナット3は、ねじ軸2の中心線に平行な第1方向における一方の側のねじ軸2の端部21が内側に配置された筒部31と、第1方向における一方の側の筒部31の開口31aを覆っている蓋部32と、を含み、筒部31には、回り止めが設けられており、第1方向における一方の側の蓋部32の端面32aには、第1方向に垂直な同一平面P上に頂部34aが位置するように複数の凸部34が設けられており、複数の凸部34のそれぞれの間の領域Rは、第1方向に垂直な第2方向において両側に開放されている、ボールねじ1」であったが、以下のように構成されていてもよい。
【0044】
ボールねじ1は、[2]「複数の凸部34のそれぞれは、第2方向を接線方向として第1方向及び第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の同心円弧のそれぞれに沿って延在している、上記[1]に記載のボールねじ1」であってもよい。
【0045】
ボールねじ1は、[3]「複数の凸部34のそれぞれは、第2方向を延在方向として第1方向及び第2方向の両方向に垂直な第3方向に並んだ複数の直線のそれぞれに沿って延在している、上記[1]に記載のボールねじ1」であってもよい。
【0046】
ボールねじ1は、[4]「頂部34aは、同一平面Pに含まれる面として形成されている、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のボールねじ1」であってもよい。
【0047】
なお、ブレーキ装置10は、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のボールねじ1を備えていればよい。
【符号の説明】
【0048】
1…ボールねじ、2…ねじ軸、2a…ねじ溝、3…ナット、3a…ねじ溝、4…ボール、5…転動路、10…ブレーキ装置、11…ブレーキディスク、12,13…ブレーキパッド、14…電動モータ、15…支持部材、21…端部、31…筒部、31a…開口、32…蓋部、32a…端面、33…ピン(回り止め)、34…凸部、34a…頂部、P…平面、R…領域。