(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008124
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】混銑車への電力供給方法
(51)【国際特許分類】
C21C 1/06 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
C21C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109712
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】蓮実 雄作
(72)【発明者】
【氏名】本間 穂高
【テーマコード(参考)】
4K014
【Fターム(参考)】
4K014AD06
4K014AD16
(57)【要約】
【課題】コスト面で効率よく、緊急時に停車した混銑車に対して、炉体の傾動装置を駆動させる電力を供給可能な混銑車への電力供給方法を提供する。
【解決手段】受銑口を介して溶銑を受銑する炉体と、前記炉体を傾動させる傾動装置と、を有する混銑車への電力供給方法であって、前記傾動装置を駆動させるために必要な電力を出力可能な電気自動車を前記混銑車に近接させ、前記電気自動車に搭載された二次電池から前記混銑車へ電力を供給し、前記炉体を傾動させて溶銑を払い出す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受銑口を介して溶銑を受銑する炉体と、前記炉体を傾動させる傾動装置と、を有する混銑車への電力供給方法であって、前記傾動装置を駆動させるために必要な電力を出力可能な電気自動車を前記混銑車に近接させ、前記電気自動車に搭載された二次電池から前記混銑車へ電力を供給し、前記炉体を傾動させて溶銑を払い出すことを特徴とする混銑車への電力供給方法。
【請求項2】
前記溶銑を払い出す前に、前記受銑口が真上よりも低い位置になるように前記傾動装置を駆動して前記炉体を傾動させ、溶銑を揺動させることを特徴とする請求項1に記載の混銑車への電力供給方法。
【請求項3】
前記溶銑を払い出す前に、主軸に対して第一の方向と、前記第一の方向とは逆の第二の方向とに、一定の時間間隔で前記炉体を傾動させるように前記傾動装置を駆動させることを特徴とする請求項1または2に記載の混銑車への電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、緊急時に停車した混銑車への電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トーピードカー等の混銑車の炉体内に高炉などから出銑された溶銑が装入されている状態で、停電などの緊急時にその混銑車が停止すると、混銑車の炉体内の溶銑温度が低下し、一定時間を経過すると溶銑が凝固して当該炉体内部に付着することがある。そのような凝固した溶銑からなる付着物は、当該炉体の容量を低下させ、場合によっては混銑車自体が使用不能となる場合がある。また、そのような凝固した溶銑が炉体内に付着した場合、液体状態の溶銑のみを傾動させる場合よりもより大きなエネルギーが必要となる。さらに、そのような付着により重量バランスが崩れた状態となるため、溶銑を払い出すために傾動装置を駆動して炉体を傾動させようとすると、混銑車が転倒するリスクが生じる。
【0003】
そこで、停電などで混銑車が一定時間以上停止する場合は、停止位置で傾動装置を駆動して炉体を傾動させ、その場で溶銑を払い出すなどの対応を行う必要がある。しかしながら通常は、混銑車の傾動装置の駆動は、製鋼工場での溶銑鍋への払い出し時など、特定の場所でしか行われない。そのため、混銑車自体には傾動装置を駆動させる電源が搭載されていないのが通常であり、緊急時には当該炉体を停止位置で傾動させることができない。
【0004】
一方、停電などの緊急時に備えて電力を確保する技術として、特許文献1には、蓄電池(二次電池)を予め混銑車に搭載する技術が開示されている。また、特許文献2には、電気走行車の緊急時に、給電車により給電を行う緊急充電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63-79267号公報
【特許文献2】特開2000-102102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、車軸から自己発電させて充電し、主に連結部など制御系を動作させるための技術であり、傾動装置を動作させるほどの電力供給は難しい。また、混銑車に大容量の非常用二次電池を搭載することは別途大きなスペースを確保する必要があり、かつ、非常時など発生頻度の低い場合にしか用いない二次電池を搭載するのはコスト面で効率的ではない。また、特許文献2に記載の技術は、電気走行車が充電スタンドまで走行できるように給電を行うものであり、数百トンの溶銑を含む炉体を傾動させるのに必要な電力を供給する技術ではない。
【0007】
また、緊急時に混銑車が停止した際に、大型外部バッテリーを搭載した車を出動させ、混銑車に電力を供給して傾動装置を駆動させることも考えられるが、整備に精通した人物でないと接続が簡単にできないことに加えて、通常時において大型外部バッテリーは使用されないことからコスト面で効率的ではない。
【0008】
本発明は前述の問題点を鑑み、コスト面で効率よく、緊急時に停車した混銑車に対して、炉体の傾動装置を駆動させる電力を供給可能な混銑車への電力供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のとおりである。
(1)
受銑口を介して溶銑を受銑する炉体と、前記炉体を傾動させる傾動装置と、を有する混銑車への電力供給方法であって、前記傾動装置を駆動させるために必要な電力を出力可能な電気自動車を前記混銑車に近接させ、前記電気自動車に搭載された二次電池から前記混銑車へ電力を供給し、前記炉体を傾動させて溶銑を払い出すことを特徴とする混銑車への電力供給方法。
(2)
前記溶銑を払い出す前に、前記受銑口が真上よりも低い位置になるように前記傾動装置を駆動して前記炉体を傾動させ、溶銑を揺動させることを特徴とする上記(1)に記載の混銑車への電力供給方法。
(3)
前記溶銑を払い出す前に、主軸に対して第一の方向と、前記第一の方向とは逆の第二の方向とに、一定の時間間隔で前記炉体を傾動させるように前記傾動装置を駆動させることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の混銑車への電力供給方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コスト面で効率よく、緊急時に停車した混銑車に対して、炉体の傾動装置を駆動させる電力を供給可能な混銑車への電力供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】商用電源と接続した場合の回路構成を説明するための図である。
【
図3】電気自動車から電力を供給する場合の回路構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態において、電力の供給対象となる混銑車について説明する。
【0013】
図1は、混銑車の外観を模式的に示した図である。
図1に示すように、混銑車10は、炉体11と、台車12と、傾動装置13とを備えており、高炉から出銑された溶銑を炉体11に受洗して転炉などへ溶銑を運搬する。炉体11には受洗口(図示せず)が設けられており、150~300t程度の溶銑を受洗できる容量を有している。台車12は、炉体11を高炉から出銑場まで運搬するためのものであり、レール上を走行する。
【0014】
傾動装置13は、炉体11を傾動させるための傾動用モータを備えており、炉体11を傾動させて溶銑を受洗口から排銑させる。つまり、傾動装置13は、炉体11の反対側の傾動装置13と結ぶ主軸に対して炉体11を時計回りの方向、または反時計回りの方向に傾動させ、受洗口が真上よりも低い位置になるようにして炉体11内の溶銑を排銑する。また、傾動装置13は、放熱を低減させ、溶銑の均熱化による凝固を遅らせるために、受洗口が真上よりも低い位置になるように炉体11を傾動して溶銑を揺動させたり、炉体11を時計回りの方向および反時計回りの方向に一定の時間間隔で傾動させたりすることも可能である。
【0015】
なお、傾動装置13を駆動させ、上述のように炉体11を傾動させるためには、外部からの電力が必要であり、本実施形態においては、出銑場などにある固定設備を介して電力を受電する場合のみならず、電気自動車から可搬設備を介して電力を受電する場合も対応できる。まず、固定設備を介して電力を受電する例について説明する。
【0016】
図2は、商用電源を用いて電力を供給するシステムを説明するための図である。混銑車10の傾動装置13には、接続プラグ203が設けられており、固定設備の接続コネクタ202と接続することにより、商用電源(3φ、200V)から電力が傾動装置13に供給される。
【0017】
一方、傾動装置13には、傾動用モータ204、電磁ブレーキ205、渦流ブレーキ206およびギヤグリスポンプ207が設けられており、傾動用モータ204、電磁ブレーキ205および渦流ブレーキ206に電力が供給されると、これらが駆動することによりギヤボックス208が駆動するようになっている。
【0018】
傾動用モータ204は、供給される交流電力により回転し炉体を傾動させる。電磁ブレーキ205は、供給される直流電力によりディスクブレーキを開放し炉体回転防止を解除する。渦流ブレーキ206は、供給される直流電力により回転を阻害する力を発生し炉体の傾動速度を調整する。ギヤグリスポンプ207は、ギヤボックス内の潤滑油を循環させる。ギヤボックス208は、傾動用モータの回転数を炉体傾動速度に合わせた回転数に減ずる。
【0019】
ここで、電磁ブレーキ205および渦流ブレーキ206は、直流電流によって駆動するものであるため、固定設備には、DCブレーキ用AC-DCコンバータ201が設けられている。商用電源200からの電力の一部は、DCブレーキ用AC-DCコンバータ201により交流から直流へ変換され、直流による電力が電磁ブレーキ205および渦流ブレーキ206に供給されるようになっている。
【0020】
通常時においては、混銑車10が出銑場まで走行し、出銑場にある固定設備の接続コネクタ202と傾動装置13の接続プラグとを接続し、商用電源200から電力が供給されることにより傾動装置13が駆動し、炉体11を傾動させて溶銑を払い出しする。しかしながら、地震や台風などの自然災害が発生し、倒木などによって混銑車10が走行できなくなった場合には、復旧して出銑場に到着するまで数時間以上も溶銑が炉体11に収容されたままとなる。
【0021】
そこで本実施形態では、このような緊急時においては、一般に普及している電気自動車から電力を受電することによって、溶銑が凝固する前に非常用の排銑場で溶銑を払い出すことを可能とする。次に、電気自動車から電力を受電する例について説明する。
【0022】
図3は、電気自動車を用いて電力を供給するシステムを説明するための図である。ここで、混銑車側の構成は
図2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
電気自動車300は、例えばCHAdeMO規格Ver.2.0以上に準拠し、傾動装置13を駆動させるために必要な電力として、10kW以上の電力を出力可能な電気自動車とする。なお、CHAdeMO規格では、車載の二次電池を保護する目的で、車種によっては電力の供給制限がかかっており、10kW以上の電力を供給できない車種も存在する。ここで、10kW以上の電力を出力可能とする理由は、出力が10kW未満では、溶銑を収容した炉体を傾動させるために必要な電力が不足し、炉体を傾動させることができないからである。本実施形態では、CHAdeMO規格には限定されず、他規格準拠のコネクタを用意し通信ソフト改造等を行えば、他の規格に準拠した10kW以上の電力を出力可能な電気自動車であってもよい。また、電気自動車300は、いわゆるEV(Electric Vehicle)車のみならず、傾動装置に電力を供給することが可能であれば、燃料電池車等であってもよい。
【0024】
次に、可搬設備について説明する。可搬設備は主に電気自動車のトランクなどに収納されており、電気自動車300の二次電池とCHAdeMO規格のコネクタ301とを接続し、さらに接続コネクタ306と混銑車側の接続プラグ203とを接続する。これにより電気自動車から電力が傾動装置13に供給される。但し、商用電源とは異なり、電気自動車300は直流電源であるため、インバータ、コンバータの組合せが
図2の固定設備と異なっている。
【0025】
絶縁型DC-DCコンバータ302は、電気自動車の二次電池からの電圧を、傾動用モータ用DC-ACインバータ303へ入力する電圧に調整するためのものである。傾動用モータ用DC-ACインバータ303は、交流で駆動する傾動用モータ204へ電力を供給するために、直流から交流へ変換するためのインバータである。DCブレーキ用DC-DCコンバータ304は、電磁ブレーキ205および渦流ブレーキ206へ直流電力を供給するためのものである。ギヤグリスポンプ用DC-ACインバータ305は、交流で駆動するギヤグリスポンプ207へ電力を供給するために、直流から交流へ変換するためのインバータである。
【0026】
なお、
図2及び
図3に示した混銑車側の構成以外にも、混銑車側の他の装置に対して電力を供給することも可能である。その場合、必要に応じて固定設備または可搬設備側にコンバータまたはインバータを追加したものを用いることになる。
【0027】
続いて、災害時が発生した場合に電気自動車等により電力を供給するシミュレーションを行い、炉体内での溶銑の凝固を防止できたかどうかを調査した。災害の種類としては、台風の通過で強風により混銑車(トーピードカー)の走行路線上に倒木が多数発生した場合と、製鉄所内で震度6の地震が発生し、建物の一部倒壊などにより走行不能で緊急停止した場合とを想定した。そして、強風による倒木の被害では、復旧(この場合は出銑場までの移動)までにかかる時間を5時間とし、地震による被害では、復旧までにかかる時間を10時間とした。
【0028】
また、商用電源で電力を供給する場合は、出銑場まで混銑車を移動し、出銑場の商用電源を用いて傾動装置を駆動させ、炉体内の溶銑を払い出ししたものとする。また、電気自動車または大型外部バッテリーから電力を供給する場合は、受洗鍋を搬送し、電気自動車または大型外部バッテリーからの電力により傾動装置を駆動させ、受洗鍋をクレーンで定位置に据えて炉体内の溶銑の払い出しを行ったものとする。さらに、混銑車には、150tの溶銑が収容されているものとする。シミュレーション結果を表1に示す。
【0029】
【0030】
参考例は、災害が発生していない通常時の操業を表している。この場合は出銑場の固定電源を用いて傾動装置を駆動し、炉体を傾動して溶銑の払い出しを行っており、溶銑は凝固せずに溶銑排出量は100%であった。
【0031】
実施例1は、強風による倒木で混銑車が走行不能となった場合に、製鉄所内で移動用の業務車両として使用している10kW以上の電力を出力可能な電気自動車(車種A)が直ちに到着し、さらに、受洗鍋を搬送し、クレーンで炉体の近くまで据える準備と、可搬設備を用いて電気自動車から混銑車へ電力を供給する準備とを併せて1時間で達成したシミュレーション結果である。この場合、炉体内の溶銑はまだ凝固していなかったことから、溶銑排出量は100%であり、炉体内に凝固した付着物はなかった。
【0032】
実施例2は、震度6の地震で走行不能となった場合に、製鉄所内にある実施例1と同じ電気自動車(車種A)が直ちに到着し、さらに、受洗鍋を搬送し、クレーンで炉体の近くまで据える準備と、可搬設備を用いて電気自動車から混銑車へ電力を供給する準備とを併せて1時間で達成したシミュレーション結果である。この場合、炉体内の溶銑はまだ凝固していなかったことから、溶銑排出量は100%であり、炉体内に凝固した付着物はなかった。
【0033】
実施例3は、震度6の地震で走行不能となった場合に、製鉄所内にある実施例1と同じ電気自動車(車種A)が直ちに到着したが、受洗鍋を搬送してクレーンで炉体の近くまで据えるまでの準備が実施例2よりも多くの時間がかかり、混銑車へ電力を供給する準備とを併せて1.5時間かかったシミュレーション結果である。この例では、受洗鍋をクレーンで炉体の近くに据えるまでの間、電気自動車からの電力を用いて、受銑口が真上より低い位置になるように炉体を傾け、溶銑が漏れない範囲の角度内で揺動させることで溶銑の凝固を遅らせた。その結果、溶銑の払い出しで溶銑排出量は100%であり、炉体内に凝固した付着物はなかった。
【0034】
実施例4は、震度6の地震で走行不能となった場合に、製鉄所内にある実施例1と同じ電気自動車(車種A)が直ちに到着したが、受洗鍋を搬送してクレーンで炉体の近くまで据えるまでの準備が実施例3よりもさらに多くの時間がかかり、混銑車へ電力を供給する準備とを併せて2時間かかったシミュレーション結果である。この例では、受洗鍋をクレーンで炉体の近くに据えるまでの間、電気自動車からの電力を用いて、炉体を時計回りの方向および反時計回りの方向に一定の時間間隔で傾動させ、溶銑の凝固を遅らせた。その結果、溶銑の払い出しで溶銑排出量は100%であり、炉体内に凝固した付着物はなかった。
【0035】
比較例1は、強風による倒木で混銑車が走行不能となった場合に、製鉄所外から大型外部バッテリーを準備したシミュレーション結果である。この例では、大型外部バッテリーの運搬および接続等の準備に多くの時間がかかり、受洗鍋を搬送し、クレーンで炉体の近くまで据える準備と併せて3時間かかった。混銑車へ電力を供給するまでに多くの時間を要したことから、炉体を傾動して溶銑の凝固を遅らせることもできず、溶銑の払い出しで炉体内の溶銑のうちの50%が凝固し、溶銑排出量は50%であった。
【0036】
比較例2は、強風による倒木で混銑車が走行不能となった場合に、復旧するまで待機したシミュレーション結果である。この例では、混銑車が走行可能になるまで5時間を要し、復旧後に出銑場にて溶銑の払い出しを行ったところ、炉体内の溶銑のうちの70%が凝固し、溶銑排出量は30%であった。
【0037】
比較例3は、強風による倒木で混銑車が走行不能となった場合に、10kW未満の電力しか出力できない電気自動車(車種B)が直ちに到着し、さらに、受洗鍋を搬送し、クレーンで炉体の近くまで据える準備と、可搬設備を用いて電気自動車から混銑車へ電力を供給する準備とを併せて1時間で達成したシミュレーション結果である。しかしながら、電源出力の不足により傾動装置を駆動させることができなかったため、復旧するまで待機し、混銑車が走行可能になるまで5時間を要した。その結果、復旧後に出銑場にて溶銑の払い出しを行ったところ、炉体内の溶銑のうちの70%が凝固し、溶銑排出量は30%であった。
【0038】
比較例4は、震度6の地震で走行不能となった場合に、復旧するまで待機したシミュレーション結果である。この例では、混銑車が走行可能になるまで10時間を要し、復旧後に出銑場にて溶銑の払い出しを試みたところ、炉体内の溶銑の100%が凝固し、溶銑として排出できなかった。
【0039】
以上のように本実施形態によれば、緊急時に混銑車が停止した場合であっても、製鉄所内で移動用の業務車両として使用している電気自動車から電力を供給できるようにしたので、炉体内の溶銑が凝固する前に迅速に傾動装置を駆動して炉体から溶銑を払い出しすることができる。これにより、災害時などにおいても、炉体内で溶銑が凝固することを防止することができ、混銑車が使用不能になることを簡単に防止することができる。
【0040】
(その他の実施形態)
本実施形態の開示は、以下の方法を含む。
【0041】
(方法1)
受銑口を介して溶銑を受銑する炉体と、前記炉体を傾動させる傾動装置と、を有する混銑車への電力供給方法であって、前記傾動装置を駆動させるために必要な電力を出力可能な電気自動車を前記混銑車に近接させ、前記電気自動車に搭載された二次電池から前記混銑車へ電力を供給し、前記炉体を傾動させて溶銑を払い出すことを特徴とする混銑車への電力供給方法。
【0042】
(方法2)
前記溶銑を払い出す前に、前記受銑口が真上よりも低い位置になるように前記傾動装置を駆動して前記炉体を傾動させ、溶銑を揺動させることを特徴とする方法1に記載の混銑車への電力供給方法。
【0043】
(方法3)
前記溶銑を払い出す前に、主軸に対して第一の方向と、前記第一の方向とは逆の第二の方向とに、一定の時間間隔で前記炉体を傾動させるように前記傾動装置を駆動させることを特徴とする方法1または2に記載の混銑車への電力供給方法。
【符号の説明】
【0044】
10 混銑車
11 炉体
12 台車
13 傾動装置
200 商用電源
201 DCブレーキ用AC-DCコンバータ
202、306 接続コネクタ
203 接続プラグ
204 傾動用モータ
205 電磁ブレーキ
206 渦流ブレーキ
207 ギヤグリスポンプ
208 ギヤボックス
300 電気自動車
301 コネクタ
302 絶縁型DC-DCコンバータ
303 傾動用モータ用DC-ACインバータ
304 DCブレーキ用DC-DCコンバータ
305 ギヤグリスポンプ用DC-ACインバータ